第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社の経営方針は、「ESGを中核に据え、持続的な成長を実現するため、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の充実・強化を図る。特に「ヒト(従業員)」に重点を置き、人材確保と人材育成に努めると共に、働き甲斐のある職場づくりに真摯に取組む。」であります。

 

(2) 経営戦略等

 経営戦略としては、「環境・社会の変化に即応し、持続的な成長を実現する為、①新分野開拓(環境・社会の変化に即応)、②新製品創出(新しいニーズに呼応した技術開発)、③新顧客増強(常に顧客を拡充しネットワーク拡大)、④新グローバル戦略推進(新たな海外市場を開拓)、以上の「4S(新)運動」を展開する。」であります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、経営環境の変化に対応し、収益力を向上させる体制を強化してまいります。具体的には、連結売上高経常利益率3.0%以上を中長期的な経営目標としており、その維持向上に努めております。

 

(4) 経営環境

今後の見通しにおきましては、雇用・所得環境の改善など、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。しかし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念による海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなります。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、米国大統領の関税政策による貿易摩擦や金融資本市場の変動の影響など先行き不透明な状況で推移するものと思われます。

こうした中、当社グループでは、2026年3月期を最終年度とする中期経営計画遂行に向けて、持続可能な成長トレンドを目指してまいります。

[電線事業]

電線事業におきましては、2025年度はコロナ収束後の国内民間設備投資回復は、より鮮明になってきております。

我々が関連する業界団体の受注額・需要量の見通しが前年より増加する予測となっており、環境は改善傾向と思われます。一方、人手不足による工期遅れ、昨年に続き賃金、物価、配送費の上昇などの課題があること、更に米国大統領の関税政策を受け世界経済の動揺もあり、不透明感が拭えない状況です。

このように足元におきましては予断を許さない状況が続くと予想されますが、基盤固めと新たな取り組みにより販路・販売品種拡大を図ることで売上高を伸ばす活動をしてまいります。そして、銅価はもちろん原材料価格などや物流コストの高騰をはじめとする物価上昇に対応した価格転嫁をおこなってまいります。

工場においては仕入材料のコストダウンおよび生産性向上により製造原価の低減を図り、製販一体となって利益額の確保を目指します。

今後も営業・工場・技術の各部門連携を強化し製品開発・新分野開拓を行い、社会に貢献できる物作りに取り組んでまいります。

[ポリマテック事業]

資材高騰の影響や米国大統領の関税政策により購買マインドがさらに悪化する懸念があり、新設住宅着工の状況は低調に推移すると予測されますが、非住宅分野を中心に新規案件においては積極的なアプローチにより引き続き受注件数は増加しており、2025年度の販売開始に向け金型製作・試作・量産準備をしております。

原材料などの価格改定に対しましては、適正価格での販売と安定供給に努めてまいります。

また、高機能チューブに使用しておりますフッ素樹脂材料の2025年での生産打ち切りへの対応に関しましては、代替材料にて製品開発・安定供給体制を確立し、各ユーザー様での新規機種への採用評価も実施頂いております。

LED商品関連においては、2030年度までに道路照明のLED化を100%という目標を国が掲げている中で、2024年末時点でも50%未満に留まっていることから道路のLED化が急務となっており、各国道や市道からのLED化案件が急速に増えています。これを少しでも取り込めるように引き続き拡販活動に努めます。

 

 

[電熱線事業]

世界景気は米国による経済政策に左右される展開となっており、先行きの不透明感も増大しています。政策を巡る不確実性の拡大がグローバルな設備投資の手控えを招き、世界景気を押し下げる可能性があり、注意が必要です。

当事業に関連する経営環境については、米中貿易摩擦や中国国内の需要減少の影響で行き場を失った中国製品の動向次第では大きな影響を受ける可能性があります。

主要な市場である抵抗器などの電子部品は、車載や産業機器向けでの在庫調整が続いており、加えてバッテリーEVが欧米を中心として利便性の観点などから需要が減少する傾向にあることで引き続き軟調に推移する可能性があります。

ヒーター用途も産業機器向けでの在庫調整が続いており、引き続き軟調に推移する可能性があります。

しかし、在庫調整収束後には電動化の進展や工場自動化投資の回復などを背景に、拡大に転じることが見込まれ、長期的な観点では総じて市場規模は拡大傾向で推移する見込みです。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 環境・社会の変化を迅速かつ的確に捉え、その変化に伴うニーズに即応する技術開発を通じて、環境・社会に貢献することで、安定的に収益を確保するとともに持続的成長を可能とすることが、当社グループの重要な課題と考えています。

 この課題を解決するため、 以下の「4S(新)運動」に取り組んでまいります。

①新分野開拓

 社会・環境の変化に即応し高付加価値製品を提供することで、新分野開拓を目指してまいります。

②新製品創出

 社会・環境のニーズを捉え、これに呼応した技術開発を行い、社会・環境に貢献する新製品を開発し、お客様にタイムリーに新製品を提供してまいります。

③新顧客増強

 お客様向け製品説明会の開催、業務課からの電話による営業の補強、ホームページの充実等による情報発信の強化などを通じて、顧客増強を図ってまいります。

④新グローバル戦略推進

 今後の成長が見込まれる海外マーケットを中心に、電線事業・ポリマテック事業・電熱線事業のグループとして新たな海外市場を開拓し、利益向上を目指してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、経営理念として「環境・社会の変化を迅速かつ的確に捉え、その変化に伴うニーズに即応する技術開発を通じて、環境・社会に貢献するということをミッションとする。その基本に、コンプライアンスの徹底と、品質向上・品質管理に尽力する。」のもと、経営方針として「ESGを中核に据え、持続的な成長を実現するため、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の充実・強化を図る。特に「ヒト(従業員)」に重点を置き、人材確保と人材育成に努めると共に、働き甲斐のある職場づくりに真摯に取組む。」として、サステナビリティを重視した経営を目指しております。

 また、中期経営計画では、ESGを中核に据え、持続的な成長を実現するための戦略を作成し取り組んでおります。なお、本計画の詳細につきましては、2023年5月12日に開示しております「中期経営計画策定のお知らせ」をご参照ください。当該開示資料につきましては、以下のURLからご覧いただくことができます。
https://www.kk-mitsuboshi.co.jp/ir/news/

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、ISO14001に基づいた環境マネジメントシステム(EMS)を構築しており、全社の環境マネジメントサイクルと、拠点及び事業ごとの環境マネジメントサイクルを連動させることで、環境活動を展開しております。さらに環境マニュアルに基づいた年1回のマネジメントレビューでは、その活動内容を報告し、環境経営を推進しております。また、2023年5月に策定した「中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)」においても、ESGを中核に据えた環境問題に関する取り組みを推進してまいります。

(2)戦略

 当社グループは、ESGを中核に据えた5つの柱を決め新分野展開を推進しております。その内容としましては、①脱炭素の柱として洋上風力発電関連・電気自動車関連、②防災・災害の柱として湾岸・河川関連工事、③漁業・農業の柱として漁業関連・農業関連、④ロボット(産業・工作機械)の柱としてロボットケーブル・抵抗器関連、⑤メンテナンスの柱としてエレベーター関連・高所関連、これらに関連する製品・技術を開発し新分野展開を推進してまいります。

 また、2024年3月期から2026年3月期までの中期経営計画として、持続的成長の確立のため、原材料及びサプライチェーンの見直しによるコストダウン、工場の生産性向上、品質の保持により生産力の強化を図ると共に、新分野開拓・新製品創出・新顧客増強・新グローバル戦略推進である4S(新)運動の更なる強化を掲げており、持続的な成長のため、更なる強化に努めてまいります。

(人的資本)

 経営基本方針に則り、人材確保と人材育成に努めると共に、働き甲斐のある職場づくりに真摯に取り組んでおります。また、多様性対応にも取り組み、女性・外国人・中途採用の中核人材への起用を進めてまいります。

(3)リスク管理

 リスク管理委員会において、重要リスクの抽出・評価を行っております。また、省エネ法に基づき中期的なエネルギー使用量削減計画を立案しCO2削減に努めております。

(4)指標及び目標

(気候変動関連課題への対応)

 当社グループは気候変動問題における課題として、①脱炭素社会実現のための再生可能エネルギーの活用とEV化の推進、②防災・災害復旧工事への対応、堤防・岸壁のかさ上げ工事、③漁業及び農業に関する技術革新による生産性の向上を掲げており、また資源枯渇・廃棄物問題における課題として、①原材料不足に対する省資源化できる製品の開発及び廃棄素材の再利用、②バイオマスプラスチックの活用を掲げております。これらに対処するため、単位生産量当たりのエネルギー使用量を年間1%削減することを目標としております。

(人的資本・多様性)

 当社グループは、人材確保と人材育成に努めると共に、働き甲斐のある職場づくりに取り組んでおり、多様性として女性の活躍推進・グローバル人材活用を行っております。2026年3月期には女性・外国人・中途採用者の中核人材(管理職等)への起用を従業員比率で10%にすることを目標としております。なお、当連結会計年度までの女性・外国人・中途採用者の中核人材(管理職等)への起用は、従業員比率で7.5%でございます。

 当社は「働きやすい職場」「やり甲斐の持てる職場」づくりに取り組み、「従業員のエンゲージメントの向上」を図り従業員が会社に対しての愛着や貢献の意志を深めていただくよう尽力し、従業員の健康増進に取り組んでおります。また、日本健康会議において2025年3月10日に「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)」に認定されました。健康経営につきましては、以下の当社ウェブサイトに開示しております。

https://www.kk-mitsuboshi.co.jp/news/kenkouyuryouhoujin2025/

3【事業等のリスク】

 当社グループが事業を展開する上で、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクとして、次のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 経営成績に係わる需要変動と主要原材料の価格変動について

 銅及びニッケルは、国際的な需要動向と投機的要素などの影響を受けて、国内の価格が決まるという市況変動リスクがあります。市場価格が急騰した場合には、銅やニッケルの購入価格も上昇し、これをタイムリーに製品価格に転嫁出来ない場合は、経営成績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

 また、塩化ビニル樹脂などの石油化学製品は、国際的な原油価格をベースとしたナフサ価格により変動するため、原油価格が上昇した場合はこれらの原材料価格も上昇し、適正に製品価格に転嫁出来ない場合は、経営成績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

② 資材等の調達について

 製品の製造に当たっては、製造設備や資材等が適時に投入されなければなりません。これらの製造設備や資材等の納期管理・安定調達には注力しておりますが、産地や供給者及び市況の急激な変化、大震災のような不測の事態により、納入されない場合や納入が遅延した場合など必要量の確保が困難になった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 減損損失について

 当社グループは、固定資産を多く保有し、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。大幅な経営成績の悪化や固定資産価額の下落があった場合は減損損失が発生します。

 また、株式市況などが低迷した場合には、当社グループが保有する株式などの評価損の計上等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 海外事業と為替変動について

 海外への事業展開に伴い、海外子会社においては、現地における経済動向や、政治・社会情勢等の変化、法律や規制の変更により、事業運営に問題を生じる可能性があります。また、為替レートの変動により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 品質問題について

 当社グループは、品質保証に最大限の努力を払っておりますが、品質問題により製品回収や保証責任が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 取引先の信用について

 当社グループは多数の取引先に信用を提供し、与信管理の徹底をしておりますが、必ずしも全額回収が保証されているわけではありません。取引先の不測の倒産等により債務不履行が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 情報の社外流出について

 当社グループは、グループ間のネットワークを構築しており、外部からの侵入を防ぐファイヤウォールの装備やウィルス対策、データ及びシステムのバックアップなどハード・ソフトの両面においてセキュリティ対策を実施しております。しかし、新種ウィルスや予期せぬ事態により、個人情報や機密情報が社外に流出した場合、顧客や取引先からの信頼の失墜や損害賠償の発生などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 災害や事故等について

 災害や事故等に対しては、緊急時の社内体制を構築しておりますが、将来発生することが予測されている東南海地震等、大規模な自然災害や事故が発生した場合、事業所の機能停止、設備の損壊、電力等の供給停止や使用制限、交通機関や通信手段の停止、サプライチェーンへの被害により、事業活動の継続に著しい支障が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑨ 内部統制・コンプライアンスについて

 社会的責任を果たすため、コンプライアンス規程やマニュアルなどを制定し、これを基に社員教育を行い、社内管理体制の整備による管理体制の強化と管理組織の充実を図っております。また、これらのシステムの運用状況を適宜確認し、内部統制が有効に機能するよう取り組んでおりますが、万一不祥事が発生した場合は、顧客や取引先の信頼を失墜させるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑩ 知的財産権について

 当社グループは、特許権、商標権などの知的財産を取得し自社技術などの保護に努めるとともに、他社の知的財産について注意を払っております。

 しかし、当社グループの製品が意図せず他社の知的財産権を侵害した場合、争議が発生したり、販売中止、製造方法・設計の変更などの処置を取らざるを得ない状況が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する中で、各種政策の効果もあり穏やかな回復が続くことが期待されました。一方で欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国における不動産の停滞継続などで景気の不透明感が一層増した状況で推移いたしました。

 当社グループに関連する事業環境におきましては、設備投資においては持ち直しの動きがみられ、公共投資は底堅く推移し、電線事業は好調に推移しております。しかし、ポリマテック事業と電熱線事業におきましては、依然として厳しい状況が続いております。

 

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ6百万円減少し、12,702百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ22百万円減少し、6,087百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ15百万円増加し、6,614百万円となりました。

 

b.経営成績

 売上高につきましては、材料価格の高騰や銅価格の変動により、前年同期に比べ増加となりました。

 営業利益につきましては、原材料や運送費の高騰を販売価格への転嫁を進めたことにより、前年同期に比べ増益となりました。

 経常利益につきましては、前年同期に比べ減益となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、投資有価証券売却益により増益となりました。

 その結果、当連結会計年度における売上高は10,876百万円(前年同期比5.3%増)、営業利益は118百万円(前年同期比96.1%増)、経常利益は106百万円(前年同期比3.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は168百万円(前年同期比36.1%増)となりました。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

    [電線]

 電線事業の主要な市場である建設・電販は首都圏や地方各都市の再開発、データセンター、半導体工場建設需要などの大型案件を中心に需要は引き続き堅調に推移していますが、建設工事のコスト上昇、労働者不足、中小工事案件の工期の順延などの問題に対しては継続して直面している状況でありました。

 このような状況下で、懸念されていた新たなケーブルの供給不足情報もなく、実需的な動きも低調で厳しい環境の中、新規顧客および案件獲得などの強化を図ってまいりましたが、その結果、販売銅量では前年同期比ゴム電線・プラスチック電線ともに減少いたしました。

 国内銅価格は前年同期より高値の1,478千円/トン(期平均)で推移し、電線事業の売上高は7,704百万円(前年同期比 2.2%増)となりました。

利益面におきましては、価格指標の国内銅価は引き続き乱高下しており銅価差損の発生、フィリピン子会社のMITSUBOSHI PHILIPPINES CORPORATIONからの仕入による為替の影響などがありましたが、物価高騰による人件費、2024年問題に絡む物流費などのあらゆるコスト上昇に伴う価格改定の浸透、高付加価値製品の販売強化、継続的な経費削減、生産性向上、材料関係のコストダウンなどに取り組んだ結果、セグメント利益は272百万円(前年同期比93.9%増) となりました。

 

    [ポリマテック]

ポリマテック事業に関連性のある新設住宅着工戸数は15年ぶりに80万戸割れとなり、前期好調だった先進的窓リノベ事業向け製品の受注も大きく減少いたしました。高機能チューブは前年比104%と回復いたしました。LED関連商品におきましても、1年半の認知活動の成果が出てきており国土交通省のホームページに商品が紹介されるなど、来期中の大口入札案件が出てまいりました。海外販売においては2024年の香港ライティングフェアにて米国、台湾、フィリピンの顧客より案件相談がありフィリピンにおいては道路灯への参入を果たしました。また、フィリピン子会社のMITSUBOSHI PHILIPPINES CORPORATIONにおいては、現地における販売が徐々に伸びており、結果売上高は2,334百万円(前年同期比 20.6%増)となりました。

原材料、副資材および運送費用などのコストアップに対しましては販売価格への価格転嫁を進め、生産合理化によるコストダウン、経費削減を実施し下半期の利益率は5.7ポイント改善いたしましたが、自社工場の生産数量の減少を補うには至らずセグメント損失は154百万円(前年同期はセグメント損失は81百万円)となりました。

 

    [電熱線]

電熱線・抵抗線事業の経営環境につきましては、一部の市場、販売先において過剰在庫の調整は一段落感が出てまいりましたが、未だに多くの市場、販売先において過剰在庫の調整が続いており長期化しています。加えて、中国を中心とした世界経済の不安定感から産業機器などの需要低迷が続いているとともに白物家電の買い替えサイクルの変化による需要低迷などにより、受注回復への足取りは重い状況が続いております。このような状況を受け、売上高は837百万円(前年同期比1.8%減)となりました。

利益面におきましては、売上の減少による影響、主要原材料であるニッケル価格が下落傾向で推移したことや棚卸資産評価損の発生、人件費および減価償却費などの固定費の増加などによりセグメント利益は0百万円(前年同期比72.9%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、税金等調整前当期純利益218百万円を計上しましたが、売上債権の減少、棚卸資産の増加、長期借入れによる収入等を総合し、当連結会計年度末には2,039百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローでは、147百万円の獲得(前連結会計年度は113百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益218百万円(前連結会計年度は173百万円)、売上債権の減少680百万円(前連結会計年度は281百万円の増加)、棚卸資産の増加381百万円(前連結会計年度は106百万円の減少)、仕入債務の減少307百万円(前連結会計年度は81百万円の減少)および法人税等の支払40百万円(前連結会計年度は42百万円)があったことによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローでは、55百万円の使用(前連結会計年度は428百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出185百万円(前連結会計年度は355百万円の支出)および投資有価証券の売却による収入134百万円(前連結会計年度は該当なし)によるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローでは、283百万円の獲得(前連結会計年度は384百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入794百万円(前連結会計年度は1,213百万円の収入)、長期借入金の返済による支出532百万円(前連結会計年度は664百万円の支出)および配当金の支払額58百万円(前連結会計年度は57百万円)によるものであります。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

電線(千円)

7,253,449

113.1

ポリマテック(千円)

1,304,726

96.8

電熱線(千円)

615,613

97.6

合計(千円)

9,173,789

109.3

 (注)金額は製造原価によっております。

 

b.商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

電線(千円)

166,559

120.3

ポリマテック(千円)

422,569

102.1

電熱線(千円)

95,438

107.8

合計(千円)

684,566

106.8

 (注)金額は仕入価格によっております。

 

c.受注実績

1)電線は原則として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

2)ポリマテック及び電熱線は受注生産を行っておりますが、受注から生産、出荷に至る期間はきわめて短期であり、受注残高も少額のため、受注実績の記載を省略しております。

 

d.販売実績

 当社グループの商品、製品の販売は、主に問屋、電材店、商社を通じて行うほか、ユーザーに直接販売しております。当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

電線(千円)

7,704,620

102.2

ポリマテック(千円)

2,334,210

120.6

電熱線(千円)

837,527

98.2

合計(千円)

10,876,358

105.3

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

    2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

総販売実績に対する割合(%)

金額(千円)

総販売実績に対する割合(%)

泉州電業株式会社

2,232,301

21.6

2,150,812

19.8

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

①経営成績等

 a.財政状態

当連結会計年度末の資産につきましては、流動資産は7,991百万円(前期比144百万円増)となりました。これは主に、現金及び預金の増加354百万円、受取手形の減少194百万円、電子記録債権の減少84百万円、売掛金の減少398百万円、商品及び製品の増加490百万円によるものであります。固定資産は4,710百万円(前期比151百万円減)となりました。これは主に、投資有価証券の減少189百万円によるものであります。この結果、資産合計は12,702百万円(前期比6百万円減)となりました。

負債につきましては、流動負債は3,462百万円(前期比166百万円減)となりました。これは主に、電子記録債務の減少229百万円、短期借入金の増加141百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加57百万円、未払金の減少146百万円によるものであります。固定負債は2,625百万円(前期比144百万円増)となりました。これは主に、長期借入金の増加203百万円、繰延税金負債の減少52百万円によるものであります。この結果、負債合計は6,087百万円(前期比22百万円減)となりました。

純資産につきましては、6,614百万円(前期比15百万円増)となりました。これは主に、利益剰余金の増加109百万円、その他有価証券評価差額金の減少121百万円、為替換算調整勘定の増加20百万円によるものであります。

 

 b.経営成績

当連結会計年度における売上高は10,876百万円(前年同期比5.3%増)、営業利益は118百万円(前年同期比96.1%増)、経常利益は106百万円(前年同期比3.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は168百万円(前年同期比36.1%増)となりました。

①売上高

第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況に記載しております。

②営業利益、経常利益

販売費及び一般管理費は前期比117百万円(前期比7.2%)増加しました。これは主に給与手当が18百万円、賞与が24百万円、賞与引当金繰入額が13百万円、旅費交通費が15百万円、地代家賃が29百万円増加したことによります。

これらにより、営業利益は118百万円となり、前連結会計年度に比べて58百万円の増加となりました。また、経常利益は106百万円となり、前連結会計年度に比べて4百万円の減少となりました。

③親会社株主に帰属する当期純利益

特別利益には、投資有価証券売却益111百万円を計上し、特別損失には固定資産除却損0百万円を計上しました。また、法人税、住民税及び事業税55百万円、法人税等調整額△5百万円の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は168百万円となり、前連結会計年度に比べて44百万円の増加となりました。

 

 c.キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、第2[事業の状況]の4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。

 

 d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、経営環境の変化に対応し、収益力を向上させる体制を強化してまいります。具体的には、連結売上高経常利益率3.0%以上を中長期的な経営目標としており、その維持向上に努めております。

当連結会計年度におきましては、連結売上高経常利益率は、エネルギー価格や原材料価格高騰の影響により、1.0%(前年同期比0.1ポイント減)となりました。今後につきましては、経営戦略の「4S(新)運動」を強力に推進し、経営目標の維持、向上ができるように取り組んでまいります。

 

目標指標

目標値

前連結会計年度

当連結会計年度

前期比増減

連結売上高経常利益率

3.0%以上

1.1%

1.0%

△0.1

 

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの事業は、日本経済の影響を受けることになります。特に設備投資や住宅建設などの動向は需要量の変動につながり、当社グループの売上高・受注量は影響を受けることになります。

 当社が購入している原材料におきましては、銅、ニッケル及び原油価格等の市場価格の動向により、変動リスクを受けます。銅の購入に関しては、当用買いを行う事により市場価格に連動した購入を行っており、ニッケルについては価格変動の影響を軽減するように計画的な購買を行っております。

 為替動向におきましては、海外取引や外貨建債権債務の増加による為替換算差額が事業に影響を与える可能性があります。当社としては、為替予約等のリスクヘッジに取り組むことで対応していきます。

 繰延税金資産の回収可能性の判断におきましては、綿密なスケジューリングを行っておりますが、多額の欠損金が発生した場合には経営成績に影響を与える可能性があります。

 その他の経営に影響を与える要因につきましては、第2[事業の状況]の3[事業等のリスク]に記載しております。

 

③資本の財源及び資金の流動性

資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、機械設備等の新規購入、資本的支出のほかに子会社の工場関連への投資費用であります。

 

④財務政策

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,399百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,039百万円となっております。

 

⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に際しては、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り等を行わなければなりません。しかし、事前に予測不能な不確実性が存在するため、実際の結果が現時点での予測と異なる場合があります。当社グループにおいて、連結財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 [経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り]」に記載しております。

 

5【重要な契約等】

  該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループは益々高度化、多様化する市場と顧客ニーズに対応するため、製品の研究開発に取り組んでおります。

 電線事業では、取扱製品の拡大に向けて顧客への訪問活動強化により要求されている材料の開発・研究・設計をふまえて新たな製品の開発・改良に取り組んでおります。

 ポリマテック事業では、災害や環境を重視した市場要求に応えるため、高断熱製品及び再生材料を使用した製品の開発に取り組んでおります。

 電熱線事業では、銅合金系の鋼種を中心に取扱製品の拡大及び新用途製品の立ち上げを推進しております。

 当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は0百万円であります。なお、各セグメント毎の研究開発費の区分は困難であるため、研究開発費は総額で記載しております。