文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、1917年の創業以来100年以上にわたり、金属・プラスチック・紙・ガラス等、それぞれが持つ特性を活かし、人々のライフスタイルや社会の変化に応じて、さまざまな素材の容器を世の中に送り出してまいりました。
当社グループは、2016年4月に制定した東洋製罐グループの経営思想のもと、次の100年に向けて、素材の開発と加工の技術を軸に、人々の暮らしをより豊かにし、環境にやさしいしくみを拡げ、さらなる発展と進化を目指しております。
〔東洋製罐グループの経営思想〕
経営理念
常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献します。
信条
・品格を重んじ、あらゆる事に日々公明正大に努めます。
・一人ひとりの力を最大限に発揮し、自己の成長と共に社会の繁栄に努めます。
ビジョン
・世界中の人に必要とされる斬新で革新的な技術と商品を提供するグループを目指します。
(2)目標とする経営指標
2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」では、最終年度である2025年度に、売上高8,500億円、営業利益500億円、EBITDA1,100億円、ROE5%の達成等を数値目標として掲げております。また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進めるための取り組みとして定めた「資本収益性向上に向けた取り組み2027」では、「中期経営計画2025」の延長上の営業利益目標を設定するとともに自己資本の圧縮を進めることで、2027年度に株主資本コストを上回るROE8%以上の達成を目指します。「中期経営計画2025」および「資本収益性向上に向けた取り組み2027」の詳細につきましては、「(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題」をご参照ください。
< 進捗状況 >
当社グループの当連結会計年度の業績は、エンジニアリング事業において、海外での製缶・製蓋機械の販売減少により、売上高は9,225億16百万円となりました。営業利益は、エンジニアリング事業における海外での製缶・製蓋機械の販売減少や国内での貸倒損失の計上があったものの、包装容器事業において原材料価格高騰分の価格転嫁を実施したこと、また機能材料関連事業における市況回復があったことなどにより、342億4百万円となりました。
経常利益は、持分法投資利益が増加したものの、為替差損を計上したことなどにより375億66百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失を計上したことにより223億94百万円となりました。
自己資本は、342億51百万円の自己株式の取得および154億22百万円の配当の実施をしたものの、円安影響による為替換算調整勘定の増加などにより、6,669億69百万円となりました。
この結果、EBITDAは902億円、ROEは3.4%となりました。
(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
当社グループは、創業以来100年以上にわたり、包装容器を中心として、人びとの生活に欠かせない製品・サービスを提供し、社会に貢献してまいりました。
近年、当社グループを取り巻く事業環境は想定を超えて変化し、解決すべき様々な社会課題が顕在化しております。
このような事業環境下において、当社グループは、2021年5月に、社会や地球環境について長期的な視点で考え、すべてのステークホルダーの皆様に提供する価値の最大化を図るべく、2050年を見据えた「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を策定し、その実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標である「中長期経営目標2030」を設定いたしました。当社グループは、「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランとして、2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」を策定いたしました。また、成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進めるための取り組みとして、2023年5月に「資本収益性向上に向けた取り組み2027」を策定いたしました。
概要は次のとおりです。
①長期経営ビジョン2050「未来をつつむ」
当社グループの目指す姿・ありたい姿を「世界中のあらゆる人びとを安心・安全・豊かさでつつむ『くらしのプラットフォーム』」と位置づけ、「多様性が受け入れられ、一人ひとりがより自分らしく生活できる社会の実現」「地球環境に負荷を与えずに、人々の幸せなくらしがずっと未来へ受け継がれる社会の実現」を目指します。
そのために「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の3つの分野で、グループが一体となって、これまで培ってきた素材開発、成形加工、エンジニアリング等の技術・ノウハウを活用し、オープンイノベーション、IoT・DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するとともに、お客様やお取引先等をはじめとした志を同じくするパートナーと連携し、包装容器メーカーの枠を超え、社会を変える新たな価値を創造してまいります。
②中長期経営目標2030
「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」の実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標として設定した「中長期経営目標2030」の概要は次のとおりです。
(注)国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)イニシアチブ※の新基準「1.5℃目標」の認定取得を目指すため、2021年11月に、Eco Action Plan 2030の主要目標を以下のとおり上方修正し、2023年3月に「1.5℃目標」の認定を取得いたしました。
・事業活動でのCO2排出量(Scope1・2)35%削減 ⇒ 50%削減
・サプライチェーンでのCO2排出量(Scope3)20%削減 ⇒ 30%削減
※ SBTイニシアチブ…企業のGHG(温室効果ガス)削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ
③中期経営計画2025
「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランである2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」(以下、「本中期経営計画」といいます。)の概要は次のとおりです。
<基本方針>
本中期経営計画では、“「くらしのプラットフォーム」へ向けた持続的な成長”を基本方針とし、「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」で掲げた目指す社会の実現に向け、3つの主要課題に取り組みます。
<3つの主要課題と施策>
a)既存事業領域の持続的成長
「多様性への対応」と「持続可能な社会の実現」の2つの軸と持続的成長の観点から、これまでの事業構造にとらわれず、果断に事業ポートフォリオの見直しを行うことで、既存事業領域の持続的な成長を目指します。
b)新たな成長領域の探索・事業化・収益化
人びとのライフスタイルの変化や環境負荷の低減など、社会の多様なニーズや新たな課題を捉え、当社グループが培ってきた「素材開発」「成形加工」「エンジニアリング」などの保有技術をもとに、「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の領域において、新規事業を創出することで、新たな社会基盤を創造します。
c)成長を支える経営基盤の強化
持続的成長のための経営資源の充実とガバナンスの強化を行います。
ⅰ)技術・開発
パートナーとの共創や新技術の探索を通じ、事業創出のための研究開発を推進
ⅱ)IoT・DX
デジタル技術の活用を通じたバリューチェーンの変革と事業領域の拡大
ⅲ)人材
新たな価値創造につながる人材プラットフォームの整備
ⅳ)組織
社会からの信頼に応えるためのコーポレート・ガバナンスの強化
<持続的成長のためのロードマップ>
包装容器領域を基盤として、エンジニアリング・充填・物流領域におけるバリューチェーンの拡大と、鋼板関連事業・機能材料関連事業における光学用・電池向け部材等での成長を図るとともに、新規事業領域において社会課題解決の新しい仕組みを創出し、2030年度に連結売上高1兆円を目指します。
<投資・財務方針>
事業活動と資産圧縮で創出したキャッシュを原資として、将来の成長や基盤強化等の投資を実施いたします。
a)投資
「くらしのプラットフォーム」へ向け、3,300億円規模の投資(M&A含む)を実施
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目的 |
目安額 (億円) |
備考 |
|
|
新たな成長分野・ 領域の拡大 |
主な投資目的 ■環境負荷低減・環境価値拡大のための投資 ■包装容器製造の枠を超えたバリューチェーン全体でのシステム構築 ■「食と健康」・「快適な生活」・「環境・資源・エネルギー」領域を中心とするビジネスパートナーやスタートアップ企業との共創による事業創出と育成 |
1,600 |
- |
|
既存事業領域 の持続的成長 |
注力すべき既存事業領域における基盤強化 |
1,500 |
設備更新において、環境負荷低減や省人化・省力化を伴う形で極力行う |
|
経営基盤強化 |
IoT・DXの推進、新技術開発、人材開発など |
200 |
- |
|
合計 |
3,300 |
- |
|
※上記は計画時の目安であり、進捗状況・事業機会タイミング等の要因により、内訳を随時見直し、投資判断・実施
b)原資
・本中期経営計画期間において営業キャッシュ・フロー約3,800億円を創出
・政策保有株式を400億円規模売却し、成長分野への投資に活用
<株主還元方針>
本中期経営計画期間中は、総還元性向80%を目安に株主還元を行います。
a)配当金
連結配当性向50%以上を目安とする
1株当たり46円を下限とし、段階的に引き上げる
b)自己株式取得
機動的に実施する
※資産売却等による特別損益は、原則として、総還元性向および連結配当性向を算定するうえでは考慮いたしません。
④資本収益性向上に向けた取り組み2027
資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、2023年度から2027年度までに成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進めるための取り組みとして定めた「資本収益性向上に向けた取り組み2027」の概要は次のとおりです。
<取り組み方針>
成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進め、資本収益性の向上を図ります。
a)成長戦略:事業ポートフォリオの最適化
・エンジニアリング・充填・物流事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業等における成長分野への経営資源投入
・国内包装容器事業を中心とした適正な売価転嫁、不採算事業領域・拠点の再構築
b)資本・財務戦略:資産効率向上
・段階的に拡充してきた配当および自己株式取得による株主還元を大幅に強化
・政策保有株式の一層の縮減
・不採算事業領域の資産圧縮、不動産の売却および価値向上
<KPIの設定>
中期経営計画2025の延長上の営業利益目標をベースに自己資本の圧縮を進め、2027年度に株主資本コストを上回るROE8%以上の達成を目指します。
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2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
2025年度 予想 |
2025年度 目標 |
2027年度 目標 |
2030年度 目標 |
|
業績 (億円) |
売上高 |
9,060 |
9,506 |
9,225 |
9,600 |
8,500※1 |
- (参考:約 10,500) |
10,000※1 |
|
営業利益 |
73 |
338 |
342 |
450 |
500 |
650 |
800 |
|
|
EBITDA |
603 |
892 |
902 |
1,000 |
1,100 |
1,200 |
- |
|
|
純利益 |
103 |
230 |
223 |
460 |
350 |
480 |
||
|
資本 収益性等 |
ROE(%) |
1.6 |
3.5 |
3.4 |
6.9 |
5.0 |
8.0%以上 |
|
|
自己資本(億円) |
6,436 |
6,657 |
6,669 |
6,580 |
- |
6,000 |
||
|
|
|
2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
2025年度 予想 |
2021~ 2025年度目標 |
2023~ 2027年度目標 |
|
|
株主還元 (%) |
連結配当性向 (1株当たり配当金) |
156.4 (89円) |
68.8 (90円) |
66.7 (91円) |
39.5※3 (114円) |
50%以上を目安 (46円を下限とし、段階的に引き上げ) |
同左※25年間で 約800億円見込み |
|
|
総還元性向 (自己株式取得) |
156.4 (-) |
155.4 (200億円) |
219.6 (342億円) |
95.5 (257億円) |
80%以上を目安 |
5年間で 約1,000億円 |
※1 足元の売上高増加は、為替変動やエネルギー価格高騰に伴う売価転嫁等の影響も含まれることから、2025年度・2030年度の売上高目標は据え置きとしています。
※2 2026~2027年度の配当については「中期経営計画2025」で定めた配当方針を延長した水準としておりますが、実際の利益に合わせて配当方針を勘案のうえ決定いたします。
※3 2025年度の投資有価証券売却益および固定資産売却益を除いたみなし連結配当性向は50.3%となる見込みです。
<ROE8%以上達成に向けた施策>
利益(R)の増加および自己資本(E)の圧縮によってROE8%以上を目指します。
※ 2026~2027年度の配当については「中期経営計画2025」で定めた配当方針を延長した水準としておりますが、実際の利益に合わせて配当方針を勘案のうえ決定いたします。
a)事業ポートフォリオの最適化
国内包装容器事業を中心に売価転嫁、不採算事業領域・拠点の再構築を早急に行い、成長分野での事業成長を着実に成し遂げ、2027年度での営業利益目標の達成を目指します。
<2024年度までの進捗状況>
・包装容器事業を中心に、原材料価格上昇分の売価転嫁を実施したほか、不採算事業領域・拠点の検証を行い、成長領域へ経営資源をシフトいたしました。
・鋼板関連事業において、車載用二次電池材への設備投資を行い、製造設備の新設・増設を行いました(投資額約155億円、2023年11月~2024年1月稼働)。また、次世代電池用負極集電体の開発が、経済産業省「蓄電池にかかる供給確保計画」に認定されました。
・今後の成長が見込まれるアジアでの充填事業を拡大するため、マレーシアにおいてホームケア製品、パーソナルケア製品などのOEM・ODMを行うPREMIER CENTRE GROUP SDN. BHD.を子会社化いたしました。
・機能材料関連事業において、使用済み乾電池を肥料原料にリサイクルするプロセスを確立し、乾電池由来の微量要素肥料の販売を開始いたしました(パナソニック エナジー株式会社様との共同開発)。
・事業領域複合での成長分野として、電子デバイス向け機能性材料「MiraNeo®」を太陽光発電向けに上市いたしました。
<今後の施策>
・包装容器事業を中心に、過去のコストアップ分を含めたエネルギー費や、増加傾向にある物流費、人件費など、さらなる売価転嫁を行います。
・成長分野への経営資源のシフトをさらに進めるとともに、省人化によるコストダウンを実施いたします。
・充填事業において、引き続き伸長が見込まれるアジア圏を中心に、設備投資を強化いたします。また、PREMIER CENTRE GROUP SDN. BHD.の子会社化に伴う事業シナジーを追求してまいります。
・鋼板関連事業において、将来的な量産に向け次世代電池用負極集電体の開発を強化いたします。
・機能材料関連事業における光学用機能フィルムについて、中国市場における販売を強化いたします。
b)株主還元の大幅な強化
ROE8%以上の実現に向け、2023年度から2027年度までの5期累計約1,000億円の自己株式取得を計画し、段階的に拡充してきた株主還元を大幅に強化いたします。
<2024年度までの進捗状況>
2023年度は200億円、2024年度は342億円の自己株式取得を行いました。年間配当金総額149億円(1株当たり配当額91円)と合わせ、2024年度における総還元性向は219.6%となる見込みです。
<今後の施策>
2025年度は257億円の自己株式取得を行い、年間配当金は1株につき114円とさせていただく予定です。
c)キャッシュアロケーション
営業キャッシュ・フローおよび資産売却・資金調達を原資として投資・株主還元に戦略的に配分し、事業成長および資本収益性の向上を目指します。
<2024年度までの進捗状況>
・2021年度から2027年度までに600億円の政策保有株式を売却する方針としており、2024年度までに約267億円を売却いたしました。
・保有不動産について、物件ごとの利回り等を重視しながら売却、追加投資による用途の変更、現状維持の検討を行いました。
<今後の施策>
・2025年5月の取締役会において、2025年度に政策保有株式を160億円売却することを決議しております。
・保有不動産について、2024年度以降に27億円の売却を行っております。今後も引き続き、上記検討結果に応じた対応を行ってまいります。
当社グループを取り巻く事業環境は、より一層厳しさを増すことが想定されますが、中期経営計画2025および資本収益性向上に向けた取り組み2027の諸施策を着実に遂行することで、持続的な成長を目指してまいります。
(1) サステナビリティ共通
当社グループの経営理念は「常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献します」と定められています。この理念の実現に向け、当社グループ各社が経営に際し遵守・実践すべき枠組みとして、「東洋製罐グループサステナビリティ憲章」を制定しました。この憲章では「経営思想の実践」「ステークホルダーとの対話」「マテリアリティの特定」「グループ一体となった事業活動の推進」を柱としています。東洋製罐グループサステナビリティ憲章の枠組みに沿った事業活動を進めることで、社会の持続的発展と自社の持続的成長の両立を目指します。
①ガバナンス
東洋製罐グループはサステナビリティ経営をグループ横断的に行うことを目的として、「グループサステナビリティ委員会」を設置しています。
同委員会は、委員長である当社社長および当社常勤取締役、綜合研究所長、主要グループ会社の社長によって構成され、年4回開催されます。さらに、ESGのテーマごとに推進分科会(環境活動推進分科会、人権・DE&I推進分科会、グループガバナンス推進分科会)を設置しています。
各分科会での議論を踏まえ、グループサステナビリティ委員会で協議された事項は、必要に応じて経営戦略会議、経営執行会議で報告され、事業戦略に反映されます。なお、グループサステナビリティ委員会の活動内容は委員会開催後遅滞なく取締役会に報告され、監督を受ける体制となっています。
2024年度にグループサステナビリティ委員会で議論・報告された主なテーマ
・マテリアリティ達成状況と今後の方針について
・ダイバーシティ推進部会活動報告
・「東洋製罐グループ社会貢献活動方針」の策定
・グループGHG削減目標達成に向けた方向性(GHG削減移行計画の策定・推進)
・グループ内人権デューデリジェンス推進体制の構築
・人権救済メカニズムの整備
・資源循環指標および計画の設定に向けた方向性
・サステナブルな製品・サービス「Open Up! Products & Services」の認定
・環境関連国内外動向(脱炭素、資源循環、自然関連)と当社の対応について
また、2021年度より当社取締役(社外取締役除く)を対象とする業績連動型株式報酬制度を導入しています。本制度では、ESG活動の取り組み状況等を総合的に勘案して決定するサステナブル指標を用いております。詳細は「
②戦略
当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献するため、優先的に取り組む課題を「東洋製罐グループのマテリアリティ(重要課題)」として特定しています。
長期経営ビジョン2050「未来をつつむ」、中期経営計画2025で掲げた中長期の戦略・ありたい姿に照らし合わせ、以下の6つをマテリアリティとして設定しました。
・多様なライフスタイルを支える製品・サービスの開発と提供
・環境配慮型製品・サービスの開発と提供
・環境への貢献
・人権の尊重
・従業員の尊重
・コンプライアンスの徹底
マテリアリティの概要、リスクおよび機会
|
マテリアリティ |
概要 |
リスク |
機会 |
|
多様なライフスタイルを支える製品・サービスの開発と提供 |
長期経営ビジョン2050で実現したいこととして掲げている“多様性への対応”の達成に向け、ライフスタイルや消費者ニーズの多様化を意識した製品・サービスを提供し、社会課題の解決に貢献すること |
・消費者ニーズとのミスマッチによる売上高の低下 |
・多様な消費者ニーズへの対応による技術・生産面でのイノベーションの実現 |
|
環境配慮型製品・サービスの開発と提供 |
長期経営ビジョン2050で実現したいこととして掲げている“持続可能な社会の実現”の達成に向け、地球環境への貢献に資する製品やサービスを提供し、社会課題の解決に貢献すること |
・環境配慮型製品・サービスの開発と提供遅延による、ステークホルダーからの信頼の喪失と競合に対する相対的な劣後 |
・地球環境への貢献、生活インフラとしての社会的役割の拡大 |
|
環境への貢献 |
Eco Action Plan 2030で掲げた脱炭素社会、資源循環社会、自然共生社会の実現に向け、環境負荷の低減に資する各種取り組みを実施すること |
GHG排出量削減や資源循環などの各種環境課題への対応遅れによる競争優位性の低下 |
・GHG排出量削減などの環境配慮による、新規受注や既存顧客からの継続受注 |
|
人権の尊重 |
自社のみならずサプライチェーン全体において、差別、強制労働、ハラスメント等の人権侵害が行われていないことを確認し防止に努めること |
・人権上の争議・抗議に起因するレピュテーション、売上高の低下 |
・サプライチェーン全体での人権配慮による、安定調達の強化 |
|
従業員の尊重 |
安全と健康、ダイバーシティに配慮された働きがいのある職場環境を整えることに加え、新たな価値創造につながる挑戦を続ける人材を確保・育成し、競争力の維持・向上につなげること |
・人材の属性やスキルの偏りによる画一的な発想と新たな事業機会の損失 |
・多様な価値観の共創による新機軸・イノベーションを生み出す企業風土の醸成、優秀な人材確保 |
|
コンプライアンスの徹底 |
法令や企業倫理、規範を遵守することに加え、腐敗や反競争的行為の防止に向けた取り組みを行うこと |
・コンプライアンス違反による事業活動の低迷、社会的信用の失墜、企業価値の毀損 |
・健全で安定した事業活動による社会的信用の獲得、企業価値の向上 |
マテリアリティ特定プロセス
ステップ1:課題の抽出
・GRI、SASB等のガイドラインと「中期経営計画2025」、業界課題をベースに東洋製罐グループが重視すべき課題を抽出し、ロングリストを作成
・類似課題を集約・統合し19のテーマリストを作成
ステップ2:優先順位付け
・経営思想等との整合性や、事業会社役員等とのワークショップにおける各課題への評価を加味し、東洋製罐グループにとっての重要度を精査
・容器包装業界における重要課題、機関投資家が企業に求める重要ESGテーマ等の情報をベースに、ステークホルダーにとっての重要度を精査
・東洋製罐グループにとっての重要課題(マテリアリティ)候補を選定
ステップ3:マテリアリティの特定
・外部有識者による特定プロセス、マテリアリティ候補についてのレビューを受け、妥当性を確認
・取締役会での決議プロセスを経て、東洋製罐グループのマテリアリティを特定
マテリアリティの評価と見直し
当社では、サステナビリティへの取り組みをより効果的に推進し、企業価値の持続的な向上を図るため、マテリアリティの進捗報告と評価を、毎年グループサステナビリティ委員会で実施します。グループサステナビリティ委員会による進捗と評価の結果は、取締役会に報告され、取締役がその妥当性を確認します。また、中期経営計画の期間ごとに、マテリアリティを見直します。これにより、社会的、環境的、経済的な変化に対応し、事業戦略とサステナビリティへの取り組みを常に最新の状態に保ちます。
③リスク管理
当社およびグループ各社は、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるさまざまなリスクの発生を未然に防止し、当社およびグループ各社の経営基盤の安定化を図るとともに、危機が発生した場合に事業活動を早期に復旧し、継続させるために策定した「グループリスク及び危機管理規程」に基づき、リスクマネジメント体制の強化を推進しております。当社は、グループのリスク管理および危機管理ならびにコンプライアンスを横断的に統括するグループリスク・コンプライアンス委員会を設置しており、同委員会は、重要リスクに関する情報の確認、改善および予防措置を講じております。本リスク管理体制の中に、サステナビリティに関するリスクも含まれています。個別のリスクを含むリスク管理の詳細は、「
④指標および目標
当社グループではマテリアリティごとにKGIを定め、取り組みを推進しています。KGIおよび実績は次のとおりです。
|
マテリアリティ |
KGI項目 |
KGI目標 |
目標年度 |
2024年度実績 |
|
多様なライフスタイルを支える製品・サービスの開発と提供 |
認定された製品・サービスの売上高比率 |
30%以上(多様なライフスタイルを支える製品・サービスと環境配慮型製品・サービスの合計) |
2030 |
25.5% |
|
環境配慮型製品・サービスの開発と提供 |
||||
|
環境への貢献 |
事業活動でのGHG排出量(Scope1,2) |
50%削減(2019年度比) |
2030 |
22.9%削減(2019年度比) |
|
サプライチェーンでのGHG排出量(Scope3) |
30%削減(2019年度比) |
2030 |
16.9%削減(2019年度比) |
|
|
枯渇性資源の使用量 |
30%削減(2013年度比) |
2030 |
19.0%削減(2019年度比) |
|
|
プラスチック製品の化石資源の使用量 |
40%削減(2013年度比) |
2030 |
23.8%削減(2019年度比) |
|
|
事業活動における取水量 |
売上高原単位で前年度比1%改善 |
- |
8.7%増加 |
|
マテリアリティ |
KGI項目 |
KGI目標 |
目標年度 |
2024年度実績 |
|
人権の尊重 |
自社内の人権デューデリジェンスの実施率 |
100% |
2030 |
・Sedexを活用した自社内のリスク評価をグループ27社68事業所にて実施しました。 ・外国人労働者の人権に関する実地調査を一般社団法人ASSC協力のもと実施しました(対象:日本クロージャー石岡工場)。 |
|
サプライチェーン内のデューデリジェンスの実施率 |
100% |
2030 |
東洋製罐グループホールディングスのサプライヤーに対して、グローバルコンパクトネットワークジャパン(GCNJ)の共通SAQ(自己診断質問票)を送付し、178社から回答を得ました。全社にフィードバックシートを送付したほか、重点分野である人権・労働分野に関して、一部のサプライヤーと現状の確認及び今後の改善に向けた話し合いを行いました。 |
|
|
人権に関する社内教育実施率 |
100% |
2025 |
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などに基づく教材を使ったeラーニングを、国内では対象となるグループ会社41社全社で実施しました。また、同様の内容のeラーニングを、タイとマレーシアを中心に海外グループ会社14社でも実施しました。 |
|
|
従業員の尊重 |
女性管理職比率(注)1 |
6%超 |
2030 |
5.8% |
|
女性採用比率(注)1 |
30%超 |
2025 |
23.30% |
|
|
男女の平均継続勤務年数の差異(注)1 |
3年以内 |
2025 |
3.2年(男性18.3年、女性15.1年) 2025年3月31日現在 |
|
|
10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別継続雇用割合(注)1 |
70%超 |
2025 |
男性58.7%、女性48.7%(合計57.1%) 2025年3月31日現在 |
|
|
1人当たりEBITDA(注)2 |
550万円以上 |
2025 |
479万円 |
|
|
エンゲージメント(注)1、3 |
52.7以上 |
2025 |
50.9 |
|
|
グループの理念・ビジョン浸透度(注)1、4 |
80%以上 |
2025 |
55.0% |
|
|
総合健康リスク(注)1、3 |
100以下 |
2025 |
102 |
|
|
成長できる職場(注)1、3 |
52.9以上 |
2025 |
51.9 |
|
|
中核人材のグループ他社経験比率(注)1 |
60%以上 |
2025 |
59.0% |
|
|
時間外45h超過者数(注)1、5 |
2.7人 |
2025 |
4.9 |
|
|
コンプライアンスの徹底 |
法令や企業倫理、規範の遵守 |
- |
- |
- |
(注)1.対象:東洋製罐グループホールディングス㈱、東洋製罐㈱、東洋鋼鈑㈱、東罐興業㈱、日本クロージャー㈱、メビウスパッケージング㈱、東洋ガラス㈱
2.連結EBITDAを連結従業員数で除して計算しています。
3.(株)保健同人フロンティアが提供する「HoPEサーベイ」を使って測定しています。また、「成長できる職場」は社員が自身のキャリアアップと成長がイメージでき、自律的・主体的に関わることができる職場か否かを測定する指標です。
4.当社グループの理念・ビジョンを「理解している」「ある程度理解している」と回答した社員の割合です。
5.各年度における100人・月当たりの平均発生人数を、管理職を除いて算出しています。
(2) 気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献するため、2030年の定量的、定性的な経営目標である「中長期経営目標2030」を設定し、2050年カーボンニュートラルの実現を目指した活動を推進しています。また、2021年7月に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(以下、「TCFD」)の提言に賛同を表明し、2021年度よりTCFDの推奨する情報開示フレームワークに沿った情報開示を行っています。
TCFDの提言に基づく情報開示
https://www.tskg-hd.com/sustainability/environment/decarbonization/#02
①ガバナンス
②戦略
a.気候変動シナリオの選択
IEA(国際エネルギー機関)が公表している気候変動シナリオを参照し、1.5℃~2℃、4℃の各シナリオを選択しました。気候変動影響が中長期の期間の中で顕在化していく性質のものであるとの認識により、時間軸としては2030年における気候変動の影響を分析しています。これは、2030年以降の事業計画および財務予測における前提条件の不確実性が高いためです。一方、カーボンニュートラルに向けた移行計画では、2050年という長期目標を掲げ、その実現に必要な主要な技術や取り組みの道筋を示しています。
今後、知見やデータの蓄積およびシナリオ分析手法の高度化を踏まえ、リスク・機会やKPIの分析期間を2050年程度まで順次拡大していく予定です。
なお、現状は2030年までのリスク分析結果を中間マイルストーンと位置づけ、移行計画の各施策と連動させて進捗管理を行います。
b.シナリオ分析のプロセス
(ⅰ)重要リスク・機会の特定
・当社事業におけるリスクと機会の情報を収集
・政策や市場などの観点から、自社で発生し得る脱炭素社会への移行にともなうリスク・機会と気候変動に起因する物理的リスク・機会を特定
・特定したリスクと機会が自社事業に与える影響を考察し、特に大きな影響を与えうる重要リスク・機会を絞り込み
(ⅱ)将来予測データの収集
・重要リスク・機会に関する信頼度の高い外部の将来予測データを収集
・将来予測データをシナリオごとに整理し、将来起こりうる世界観について社内関係者と検討
(ⅲ)事業影響の試算
・収集した将来予測データと自社内の数値を用い、重要度の高いリスクと機会によってもたらされる事業インパクトをシナリオごとに定量評価
(ⅳ)対応策の検討
・事業影響の特に大きい気候変動リスク・機会への対応方法を検討
・必要に応じ、追加取り組みの推進体制を整備
c.シナリオ分析結果
シナリオ分析結果一覧
|
重要なリスク・機会の項目 |
時間軸 |
1.5~2℃シナリオでの財務影響度 |
4℃シナリオでの財務影響度 |
当社グループの対応 |
|||||
|
移行 |
リスク |
政策・規制 |
炭素税負担 |
中期 |
新たな炭素税の導入で操業コスト101億円増加 |
大 |
新たな炭素税は導入されない |
小 |
•2030年までに事業活動のGHG排出量▲50%(2019年度比) |
|
電力単価変動 |
短期 |
電力単価の増加による操業コスト増加 |
中 |
電力単価の低下による操業コスト減少 |
小 |
•太陽光発電システムの導入 •ICPによる省エネ投資加速 |
|||
|
バージンプラスチックを使用した容器包装へのプラスチック税課税 |
中期 |
新たな課税の導入で税賦課分を単価から差引いた場合の売上減少 |
中 |
新たな課税は導入されない |
- |
•全包装容器製品をリサイクル・リユース可能に転換 |
|||
|
飲料ボトルへの再生プラスチック使用義務化 |
中期 |
再生プラスチックの含有割合引き上げのためのコスト増加 |
中 |
新たな再生プラスチック使用義務化は導入されない |
- |
•2030年までにプラスチック製品における化石資源使用量▲40%(2013年度比) |
|||
|
森林伐採税による原紙価格変動 |
中期 |
原紙調達先への森林伐採税賦課により原紙価格上昇 |
小 |
原紙調達先への森林伐採税賦課は行われない |
- |
•紙容器のリサイクル率向上に向けた取り組みの推進 |
|||
|
原材料価格 |
原油価格変動による石化原料変動 |
短期 |
原油需要低下による石化原料調達コスト減少 |
大 |
原油価格の上昇による石化原料調達コスト増加 |
大 |
•化石資源の使用量削減 |
||
|
炭素税による原材料価格変動 |
中期 |
新たな炭素税の導入で石化原料、鋼材、アルミニウム、原紙、ガラスの調達コスト増加 |
大 |
新たな炭素税は導入されない |
小 |
•化石資源の使用量削減 •バイオマス材料の活用 •低炭素鋼材・アルミの使用 |
|||
|
グリーンスチール普及の影響 |
中期 |
グリーンスチール普及による鋼材調達コストの増加 |
中 |
グリーンスチールは普及しない |
- |
•缶のゲージダウンによる鋼材使用量の削減 |
|||
|
低炭素・次世代技術 |
FCVトラックへの切り替え、自動車貨物減少 |
中期 |
FCVへの切り替えコスト負担、モーダルシフトによる収益減 |
小 |
FCVへの切り替えは進まず、モーダルシフトも進展しない |
- |
•FCVへの早期切替による補助金活用で負担軽減 |
||
|
機会 |
消費行動の変化 |
環境配慮型製品の需要増加 |
中期 |
環境配慮型製品の売上増加 |
中 |
環境配慮型製品への需要は高まらない |
小 |
•環境配慮型製品のラインナップ拡充と拡販 •成長率の高い環境配慮型製品への投資加速 |
|
|
低炭素商品の拡大 |
EV・PHEVの普及 |
中期 |
EV・PHEVで使用される電池部材の需要が増加し、その売上が増加する |
大 |
EV・PHEVで使用される電池部材の需要が増加し、その売上が増加する |
中 |
•EV・PHEVで使用される電池部材の増産体制構築 |
||
|
重要なリスク・機会の項目 |
時間軸 |
1.5~2℃シナリオでの財務影響度 |
4℃シナリオでの財務影響度 |
当社グループの対応 |
|||||
|
物理的 |
リスク |
気象変化 |
渇水による取水停止 |
中期 |
水ストレスの高い地域において、生産活動が制限される |
中 |
水ストレスの高い地域において、生産活動が制限される |
中 |
•水リスクの総合マネジメント・システムを構築し、リスク低減を推進 |
|
気温上昇に伴う空調への影響 |
中期 |
夏季空調電力使用量増加により操業コスト増加 |
中 |
夏季空調電力使用量増加により操業コスト増加 |
中 |
•太陽光発電システムの導入 •省エネ、ヒートポンプ活用 |
|||
|
森林火災による紙パルプ供給への影響 |
長期 |
森林火災の増加により原紙調達コストが増加 |
小 |
森林火災の増加により原紙調達コストが増加 |
小 |
•紙容器のリサイクル率向上に向けた取り組みの推進 |
|||
|
農産物収量の減少 |
長期 |
大麦(ビール原料)、コーヒー豆、上等米(日本酒原料)の収量減少で売上減 |
小 |
大麦(ビール原料)、コーヒー豆、上等米(日本酒原料)の収量減少で売上減 |
小 |
•農産物原料の収量増減の影響は軽微と想定。将来リスクとして経過を注視していく |
|||
|
異常気象の激甚化 |
被災に伴う物損・逸失利益 |
短期 |
洪水リスクの上昇による物損・逸失利益発生の増加 |
中 |
洪水リスクの上昇による物損・逸失利益発生の増加 |
中 |
•水リスクの総合マネジメント・システムを構築し、リスク低減を推進 ・BCP訓練の実施 |
||
|
保険料の増加 |
短期 |
洪水・台風の増加に伴う保険コストの増加 |
小 |
洪水・台風の増加に伴う保険コストの増加 |
小 |
•保険契約内容の見直しによる費用対効果の改善 |
|||
|
機会 |
消費行動の変化 |
殺虫剤の需要増加 |
長期 |
夏場の平均気温上昇により殺虫剤需要が増加し、エアゾール充填事業の売上増加 |
小 |
夏場の平均気温上昇により殺虫剤需要が増加し、エアゾール充填事業の売上増加 |
小 |
•殺虫剤充填事業の対応力を適宜強化 |
|
(注)財務影響度 大:100億円以上 中:10億円以上100億円未満 小:10億円未満
リスクへの対応案
移行リスク:
「Eco Action Plan 2030」の目標達成が、負の影響を一定程度削減することを確認しました。2022年度に導入したインターナルカーボンプライシング制度(ICP)を活用しながらGHG排出量削減への投資に取り組むとともに、各施策の財務影響面の解像度を高め、財務計画と統合する形で目標達成に向けた活動を推進していきます。加えて、2050年のカーボンニュートラルを実現するための「カーボンニュートラル社会の実現に向けたロードマップ」を作成し、設備投資を実行することで、GHG排出量の削減や新技術へのシフトを加速していきます。
カーボンニュートラル社会の実現に向けたロードマップ:
https://www.tskg-hd.com/sustainability/environment/decarbonization/#07
物理的リスク:
気象変化に伴い、水ストレスの高い地域で渇水のリスクが高まることや異常気象の激甚化による洪水被災リスクが高まることが、経営に大きな影響を与えうることを確認しました。
渇水や洪水被災も含む水のリスクに関する総合マネジメント・システムを運用しながら、これらの負の影響の軽減に努めていきます。
機会:
1.5~2℃シナリオにおいて、EV・PHEV向けの電池部材および環境配慮型製品の需要増加に関する機会を特定しました。来たるべき需要の増加の見極めと、生産体制強化等の準備を進め、これらの機会を着実に当社グループの成長につなげていけるよう努めます。
想定されるシナリオの世界観:
https://www.tskg-hd.com/sustainability/environment/decarbonization/#04
③リスク管理
④指標および目標
当社グループは、2050年までの長期目標として、GHG排出量を大幅に削減し、カーボンニュートラルの実現を目指しており、「Eco Action Plan 2030」において、2030年でのGHG排出量の削減目標を以下のとおり定めています。これらの目標は、国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)の新基準「1.5℃目標」の認定を取得しています。

事業活動でのGHG排出量の推移(Scope1、2)
サプライチェーンでのGHG排出量(2024年度)
(3) 人的資本
①戦略
イ.人材育成方針
(グループの経営戦略・組織戦略)
当社グループは、「既存事業領域を維持しながら、グループのリソースを最大限活用して新規事業領域での収益を拡大すること」を経営戦略の基本としております。この戦略を実現するため、2013年にホールディングス体制に移行し、①戦略部門の設置と拡充、②オペレーション業務の集約・統合、③ガバナンス体制の構築を行ってまいりました。2021年にはグループ長期経営ビジョンを策定し、社員への浸透活動を進めております。
(求める人材像)
上記の経営戦略・組織戦略を実現するために必要となる人材像は、以下の3つに大別されます。
a.既存事業のオペレーションを高いレベルで(品質・コスト・納期+ESGの視点で)維持・継続できる人材
b.既存事業のオペレーションを熟知しつつ、グループ全体最適の視点で新たな仕組みを構築できる人材
c.グループのリソースを活用して新たな製品・技術・事業を生み出せる人材
aの人材を確保したうえで、b・cの人材(“グループ人材”)をいかに増やすかが課題です。
(人事戦略)
上記の人材を育成するための人事戦略を以下のように整理しております。
a.グループ人事ポリシーに基づく人材マネジメントを推進することにより、働きがい(エンゲージメント)と生産性の向上を図る
b.製造部門の人材確保のための環境整備
c.主要なグループ会社の大卒定期採用について、グループ一括採用を継続し、採用競争力の強化とグループ意識の向上を図る
d.会社の枠を超えた協働、人材交流によりグループ意識の向上と新たな視点の醸成を促進する
e.多様な知見を持つ人材をキャリア採用で積極的に獲得する
(KPI)
人事戦略実現のためのKPIを以下のように整理しています。
「エンゲージメント」、「総合健康リスク」、「成長できる職場」のスコアは、(株)保健同人フロンティアの「HoPEサーベイ」を使って測定しております。「エンゲージメント」は、「組織への愛着」「役割の遂行(意思・意欲)」「仕事に対する向上心」の3つの観点から測定しております。
グループ各社の「1人あたりEBITDA」と「エンゲージメント」等の多くのKPIの間には相関関係が見られることから、グループ人事ポリシーに基づく取り組みを継続し、それぞれのKPIを改善することで、KGIである「1人あたりEBITDA」の改善につなげていく方針です。
特に重要性の高い課題は以下の4点です。
a.製造部門のエンゲージメント向上
グループ長期経営ビジョンを設定している2050年に向けて、国内の18歳人口が大きく減少する一方で、大学等への進学率が上昇するため、高校を卒業して社会人として働き始める若者の人数が現在よりも大幅に減少すると見込まれます。そうした状況下でグループの事業を継続するためには、製造部門で働く社員のエンゲージメント向上による離職率低減と採用競争力強化が重要です。エンゲージメントは長時間労働や身体負担との相関関係が強いことから、交替シフトの見直しを含めた長時間労働の解消や、省力化投資による身体負担の軽減に取り組みます。
b.30代社員のエンゲージメント向上
社員のエンゲージメントを年代別に分析すると、30代が他の年代に比べて低い傾向にあります。20代に比べ、心理的な仕事の負担(量)が増える一方で、上司・同僚による支援が減少し、成長実感が下がることが大きな要因と考えられます。対策として、30代社員と上司を対象としたキャリア研修とキャリアコンサルティング面談を実施しました。今後、幅広い年代の社員に対するキャリア形成支援を充実させるべく検討を進めています。グループ内の公募制やキャリア自己申告の拡充も検討中です。
c.女性管理職比率向上&男女賃金格差の解消
当社の女性管理職比率は9.9%、グループ13社の平均は5.1%ですが、13社の内訳は過去の取り組みの差もあり、0.0~14.3%と大きな差が見られます。
男女賃金格差も同様に、当社の男女賃金格差は96.7%、グループ15社の平均は69.0%ですが、15社の内訳は61.5%~96.7%と大きな差が見られます。そこで、2030年度の目標値として、女性管理職比率については当社14%超かつグループ6%超、男女賃金格差についてはグループ80%超を掲げてグループ全体の改善に向けた取り組みを進めております。具体的には、昨年度、人権・DE&I推進分科会の下部組織としてダイバーシティ推進部会を設けました。各社のグッドプラクティスの共有に基づく施策提言のほか、参加メンバー同士の交流などを通してグループ全体の改善を図ります。
正社員の賃金項目別男女賃金格差については、基本給よりも賃金項目合計の格差が広がっております。基本給の格差は管理職、非管理職ともに90%前後ですが、家族・住宅手当や時間外・交替手当の格差が大きいためです。
また、女性管理職比率が低いため、管理職・非管理職別に見た男女賃金格差よりも、正社員合計の格差が広がっております。
正社員の賃金項目別男女賃金格差(主要なグループ会社15社計)
|
|
基本給 |
家族・住宅手当 |
時間外・交替手当 |
賃金項目合計 |
|
管理職 |
91.0% |
19.3% |
43.1% |
89.5% |
|
非管理職 |
90.1% |
33.0% |
43.8% |
77.7% |
|
正社員合計 |
82.0% |
33.5% |
49.9% |
74.7% |
(注)1.2025年3月給与(単月)で集計した数字です。
2.基本給は、役割給・職能給・年齢給・資格給・役職手当・役付手当・資格手当・勤務手当等を指します。
3.家族・住宅手当は、家族(扶養)手当・住宅手当・単身赴任手当・都市手当・寒冷地(燃料)手当等を指します。
4.時間外・交替手当は、早出残業手当・深夜時間手当・休日出勤手当・60H超手当・夜勤手当・遅出手当・交替勤務手当・時差勤務手当等を指します。管理職の時間外・交替手当は、深夜時間手当を指します。
今後の改善に向け、女性正社員の採用増・定着率向上と上位役職・等級への登用(内部昇進者のキャリア開発拡充と、役職者の中途採用)、家族・住宅手当の支給要件の見直しや、男性社員の長時間労働是正による男女賃金格差の解消を継続的に進めていく方針です。
以下の表に「当社グループの女性活躍推進 目標値と実績値、課題」を記載しています。
当社グループの女性活躍推進 目標値と実績値、課題
|
分類 |
指標 |
目標値 |
実績値 |
課題 |
||
|
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
||||
|
採用 |
女性採用比率 |
30% |
新卒 25.2% |
新卒 19.1% |
新卒 22.6%(改善) |
・女性社員の職域拡大(現状は、目標値30%を下回る年度が多い) |
|
キャリア 18.5% |
キャリア 15.5% |
キャリア 24.2%(改善) |
||||
|
定着 |
10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の継続雇用割合 |
2025年度 70% (男女共通) |
男性 64.5% |
男性 62.3% |
男性 58.7%(低下) |
・2020年度(男性69%、女性48%)に比べ、女性の継続雇用割合はほぼ変わらない一方、男性の継続雇用割合が大きく低下しており、男女を問わず、働きやすく、かつ働きがいのある職場づくりが重要 ・平均継続勤務年数の男女差拡大は、女性社員の採用増による影響と捉えている |
|
女性 50.0% |
女性 50.5% |
女性 48.7%(低下) |
||||
|
平均継続勤務年数の 男女差 |
2025年度 3年以内 |
3.4年 |
3.1年 |
3.2年(拡大) |
||
|
登用 |
30代女性係長 比率 |
- |
- |
8.8% |
12.3%(改善) |
・出産・育児・介護等のライフイベントの前に将来の成長につながる経験を早めに与えることや、長時間労働を前提としない働き方の拡大(男女共通) |
|
女性管理職 比率 |
2030年度 6.0% |
3.4% |
4.4% |
5.8%(改善) |
||
|
総合 結果 指標 |
男女賃金格差 (全労働者) |
2030年度 80% |
66.9% |
69.6% |
69.0%(拡大) |
・採用~定着~登用、すべての段階において継続的な改善を進めること |
(注)採用~定着~登用の指標は当社を含む主要なグループ会社7社(正社員)の数値。
総合結果指標は、2022年度グループ14社、2023年度以降15社の数値。
d.グループ意識およびグループ内人材流動化比率の向上
グループの経営戦略実現には、社員のグループ意識を高め、人材流動化を進めることが必要です。このような趣旨から、KPIに、「グループの理念・ビジョンの浸透度」、「中核人材のグループ他社経験比率」を設定しております。中核人材は、主要なグループ会社において選抜された将来のリーダー候補を指します。2021年に策定したグループ長期経営ビジョンの浸透を図るとともに、グループ横断の職種別要員計画等を整備することにより、人材流動化比率を高めてまいります。
ロ.社内環境整備方針
当社グループは、グループ人事ポリシーに基づき、「次世代経営人材育成研修」(部長層対象)および「TSGBC(東洋製罐グループビジネスカレッジ)」(課長層対象)の実施、人事制度の共通化、ITインフラ(タレントマネジメントシステム、ストレスチェックシステム等)の整備を進めてまいりました。2021年度入社からは、優秀な人材の確保と、グループを牽引するリーダーの育成を目的として、主要なグループ会社の大卒定期採用を、グループ一括採用に切り替えております。
今後は人材育成方針に則り、交替シフトの見直しや省力化投資、年代別キャリア研修の実施、公募制やキャリア自己申告の拡充、家族・住宅手当の支給要件見直し、職種別要員計画の作成等を進めてまいります。
②指標および目標
|
指標 |
対象会社 |
目標値 ( |
実績値 (2022年度) |
実績値 (2023年度) |
実績値 (2024年度) |
|
|
連結会社 |
|
302万円 |
454万円 |
|
|
|
提出会社 |
|
54.7 |
54.8 |
|
|
グループ7社 |
52.7以上 |
50.7 |
50.8 |
50.9 |
|
|
|
提出会社 |
|
- |
77% |
|
|
グループ7社 |
80%以上 |
- |
51% |
55% |
|
|
|
提出会社 |
|
86 |
83 |
|
|
グループ7社 |
100以下 |
103 |
103 |
102 |
|
|
|
提出会社 |
|
55.9 |
55.9 |
|
|
グループ7社 |
52.9以上 |
51.9 |
51.8 |
51.9 |
|
|
|
グループ7社 |
|
54.6% |
59.1% |
|
|
|
提出会社 |
|
9.3人 |
7.3人 |
|
|
グループ7社 |
2.7人 |
5.7人 |
5.0人 |
4.9人 |
(注)1.連結EBITDAを連結従業員数で除して計算しております。
2.(株)保健同人フロンティアが提供する「HoPEサーベイ」を使って測定しております。また、「成長できる職場」は社員が自身のキャリアアップと成長がイメージでき、自律的・主体的に関わることができる職場か否かを測定する指標です。
3.当社グループの理念・ビジョンを「理解している」「ある程度理解している」と回答した社員の割合です。2023年度の実績から開示を開始いたしました。
4.各年度における100人・月当たりの平均発生人数を、管理職を除いて算出しております。
5.グループ7社は、当社を含む主要なグループ会社7社(当社、東洋製罐(株)、東洋鋼鈑(株)、東罐興業(株)、日本クロージャー(株)、メビウスパッケージング(株)、東洋ガラス(株))を指します。
有価証券報告書に記載した事業の状況および経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社およびグループ各社は、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるさまざまなリスクの発生を未然に防止し、当社およびグループ各社の経営基盤の安定化を図るとともに、危機が発生した場合に事業活動を早期に復旧し、継続させるために策定した「グループリスク及び危機管理規程」に基づき、リスクマネジメント体制の強化を推進しております。当社は、グループのリスク管理および危機管理ならびにコンプライアンスを横断的に統括するグループリスク・コンプライアンス委員会を設置しており、同委員会は、重要リスクに関する情報の確認、改善および予防措置を講じております。当社およびグループ各社では、それぞれの管理体制のもとで危機管理規程や危機対応マニュアル等の策定、リスク管理状況のとりまとめなどを行っております。また、当社は、リスク・危機管理を統括する専門部門として「リスク危機管理統括室」を設置しており、グループとしての確固たるリスク・危機管理体制の構築を進めております。
なお、以下のリスクが顕在化する可能性の程度や時期、リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
(1)自然災害・感染症・事故リスク
①自然災害からの事業継続
地震や台風などの大規模な自然災害や事故が発生し、当社グループや取引先の従業員や生産設備等が甚大な被害を受けた場合、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。当社グループでは、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるさまざまな自然災害・事故リスク等の発生時に被害を最小限に抑えるため、設備対応、事業継続計画(BCP)の策定、調達先の分散、生産拠点におけるバックアップ体制の構築・再配置、適正在庫の確保、保険への加入などの対応をとっております。
②伝染病・感染症
伝染病・感染症の蔓延などにより当社グループの事業活動やステークホルダーの行動が制限された場合や、衛生管理不足による取引先からの信用低下および風評リスクが発生した場合、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。当社グループでは、従業員の健康を守りながら当社グループの事業活動の確保に万全を期すため、公衆衛生面を中心に一定水準の感染防止対策を行うとともに、グループ横断的に感染症に関する情報伝達が可能なイントラネットを構築し、感染症拡大時にはグループ全体で感染症リスク低減のための対策を行う体制を整えております。
③労働災害・安全衛生
労働安全衛生法などの労働関係法令の違反や労働災害の発生による操業停止などが発生した場合、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与えるほか、レピュテーションリスクが高まり、当社グループの継続的な事業活動に影響を及ぼす懸念があります。当社グループは、当社グループが遵守・実践すべき枠組みである「東洋製罐グループ行動規準」において、日常の安全衛生活動を怠らないことを明示し、労働関係法令の遵守と労働安全衛生管理を徹底することで、すべての従業員が安心して働ける職場づくりを目指しております。
(2)コンプライアンスリスク
①コンプライアンス
企業の社会的責任が近年ますます重要視されるなか、企業活動における遵法精神を徹底させるとともに、経営上のリスクを回避しながら経営資源を効率的かつ適正に配分していくことで企業価値を向上させていくことが求められております。
当社グループにおいてもこうした状況を踏まえ、コンプライアンス体制の強化は最も重要な経営課題と認識し、その実現に向けてグループを挙げて努力しております。しかしながら、リスク管理体制の不備により企業の社会的責任を問われる事態が生じる可能性が全く無いとは言い切れず、そのような事態が生じた場合はレピュテーションリスクが高まり、当社グループの信用もしくは評価が大きく毀損され、当社グループの継続的な事業活動に影響を及ぼす懸念があります。当社グループでは、コンプライアンス体制強化のため、以下の施策に取り組んでおります。
・当社グループが遵守・実践すべき枠組みを示す「東洋製罐グループサステナビリティ憲章」、「東洋製罐グループ行動指針」および「東洋製罐グループ行動規準」を制定し、役員および従業員に対して周知・教育を実施
(ご参考)「東洋製罐グループサステナビリティ憲章」、「東洋製罐グループ行動指針」および「東洋製罐グループ行動規準」(URL:https://www.tskg-hd.com/company/policy/code/)
・内部通報制度として東洋製罐グループコンプライアンス相談窓口を設置し、ポスター掲示、携帯カード配布等により従業員に対して同相談窓口を周知
・グループ全体のコンプライアンスに関する取り組みを統括するグループリスク・コンプライアンス委員会を設置し、同委員会のもと、役員および従業員に対して教育研修を実施
・コンプライアンスに対する意識や行動について再認識するための期間として、毎年10月をグループコンプライアンス推進月間と定め、啓発活動を実施
・社内外のコンプライアンスに関する情報を取りまとめた「コンプライアンス通信」の定期的な発行のほか、電子メールやイントラネットを活用した情報の発信・周知を実施
・国内の主要な子会社等において、会社毎のリスクを抽出・分析するために、コンプライアンスリスクマップを作成し、重点的に取組むべきリスクを選定、対策を立案・実施
このほか、リスクが顕在化した場合に当社グループの継続的な事業活動に対する影響が特に大きいと想定される独占禁止法に関わる事項については、グループ会社の新任社長に対する法令遵守の注意喚起、定期的な規程等遵守状況の調査・確認や階層別教育研修の実施等により、コンプライアンス体制の一層の強化を図っております。加えて、毎年4月20日を「東洋製罐グループ独占禁止法違反風化防止の日」と定め、当社およびグループ会社の社長から当社グループの従業員に対して独占禁止法遵守に関するメッセージを発信し、独占禁止法違反の発生防止の徹底を図っております。
また、腐敗防止に関わる事項については、規程等の見直しおよび周知、遵守体制整備状況の再確認、教育研修の実施等により、その発生防止に努めております。
②人権侵害や差別
当社グループや取引先のサプライチェーンにおける人権侵害や差別が発生した場合、または社会やステークホルダーからの人権に対する要求に対応しきれない場合、当社グループの社会的信頼が失われる懸念があります。
これを防ぐために、当社グループでは、人権尊重の取り組みを推進し、その責務を果たしていく指針として、国際連合が定める「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく「東洋製罐グループ人権方針」を制定し、役員および従業員に対して周知を実施しているほか、当社グループ内での研修プログラムを実施し、人権に対する理解の定着を図っております。また、当社グループとともに持続可能な社会の実現を目指すために、取引先に遵守いただきたい事項を明記した「東洋製罐グループサプライヤーCSRガイドライン」を定め、取引先に周知するとともに、自己診断を依頼しております。加えて、当社はJaCER(一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構)に正会員として加盟しており、JaCERの提供する「対話救済プラットフォーム」を通じて、自社のみならずあらゆるステークホルダーを対象とした人権救済の取り組みを推進しております。
(3)事業・経営リスク
①経済状況の変化
世界経済および日本経済における景気の後退あるいは停滞、少子高齢化の進行による人口減少や、それらにともなう個人消費の低迷は、売上高や利益の減少につながる懸念があります。
②生産コストの変動
為替や景気などの経済状況の変化等により、当社グループの事業活動に係る原材料・エネルギー価格や人件費・物流費などの生産コストが変動する場合、当社グループの業績および収益性に影響を及ぼします。
当社グループでは、包装容器事業における金属製品やプラスチック製品を中心に、原材料価格に連動した売価設定を行う仕組みの導入を進めているほか、過去のコストアップ分も含めたエネルギー費や、上昇傾向にある人件費・物流費などのさらなる売価転嫁に努めておりますが、その達成状況および進捗の度合いによっては、当社グループの収益性が低下する懸念があります。
③原材料の調達
当社グループが調達している原材料は、輸入品はもとより、国内で調達している原材料にも海外由来の粗原料が利用されております。国際情勢の悪化や世界各地のサプライチェーンにおける自然災害・設備トラブル等にともなう国際物流の混乱などにより、原材料の調達が困難になった場合、当社グループの業績および収益性に影響を及ぼします。当社グループは、人びとの生活に欠かせない製品・サービスを安定的に提供するため、日頃より原材料の購入先の情報を幅広く収集し、調達先を分散するなど、安定調達の実現に努めております。
④価格競争の激化
当社グループが主として事業を展開する容器市場においては、競合他社との価格競争激化およびお得意先各社における容器の自社製造の拡大が続いており、当社グループの価格交渉力の低下や製品価格の下落傾向を強める懸念があります。
当社グループは、消費者やお得意先などのニーズの変化を的確に捉え、あらゆる素材を取り扱う当社グループのシーズをもとに開発した多岐にわたる斬新で革新的な製品・サービスをもって、競合他社との差別化を図り、適正な利益水準を確保してまいります。
⑤研究開発
当社グループにとって、継続的かつ効果的な研究開発投資は不可欠なものである一方、その成果は不確実なものであり、多額の支出を行ったとしても必ずしも成果に結びつかないというリスクを抱えております。特に新製品・新技術などの研究開発投資が今後十分なリターンを生み出さない場合や、グループ各社に蓄積された研究開発データが当社グループ内で十分に共有されず、新製品・新技術などの研究開発に活かされない場合には、当社グループの将来の成長性および収益性が低下する懸念があります。
当社グループは多様化する市場ニーズに対応するため、当社綜合研究所、東洋製罐株式会社テクニカルセンターおよび東洋鋼鈑株式会社技術研究所などの研究部門により、次世代に向けた技術開発を目的として積極的に研究開発に取り組んでおります。また、研究開発案件ごとに定期的なモニタリングを実施しているほか、グループ内での技術交流などにより、グループ各社に蓄積された研究開発データを最大限活用できるよう努めております。
⑥投融資(企業買収・資本参加・設備投資等)
当社グループは、事業基盤の強化および事業の拡大を目的として、企業買収や資本参加等を積極的に実施しているほか、さらなる企業価値向上のために、生産・販売・研究開発の各分野において積極的かつ効果的な投資を行っておりますが、期待する成果が十分に得られなかった場合、当社グループの業績および収益性に大きな影響を与える懸念があります。
投融資にかかるリスク管理として、当社は「投資管理委員会」を設置しており、当社および当社グループ会社における投融資の意思決定の手続きと判断基準を明確にし、投融資の実行後の評価と評価に基づく案件の継続・撤退の基準を設定するなど、精査を行っております。また、同委員会において、投融資を行った案件について定期的にモニタリングを行っており、当初の期待どおりの効果が得られず、グループ全体の収益性に対してマイナスに寄与するとみなされる案件については撤退の判断を行い、将来の収益性の低下リスクを低減することとしております。
⑦デジタル化の推進
当社グループは、デジタル技術の活用を通じたバリューチェーンの変革と事業領域の拡大を目指すため、生産システムの自律化や、業務プロセスの効率化を進めておりますが、これらの取り組みが遅れた場合、当社グループの将来の成長性および収益性が低下する懸念があります。
当社グループでは、最新のデジタル技術やデータ基盤を最大限に活用することで、当社グループの「競争力の源泉」を更に進化させることを目指し、「Group Digital Vision 2030」を制定しております。「データ活用の高度化」を重要な戦略テーマの1つと捉え、社会により一層貢献する企業への変革を推進しております。
⑧取引先の信用リスク
当社グループの取引先の信用不安により、予期せぬ貸倒リスクが顕在化し、追加的な損失や引当金の計上が必要となる場合、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。
当社グループの販売先は比較的信用リスクが低い顧客が多いものの、信用リスクの高い顧客においては、商社を通じた取引形態あるいは債権回収期間の短縮を行うほか、新規顧客との取引を開始する前には十分な信用調査を行うなど、リスクの低減に努めております。
⑨人材確保と育成
当社グループの将来にわたる持続的な成長と発展には有能なリーダーの存在の有無が大きな影響を与えるため、優秀な人材の確保と育成は当社グループの発展には不可欠なファクターであり、優秀な人材を確保または育成できなかった場合には、当社グループの将来の成長に好ましくない影響を与える懸念があります。
優秀な人材の確保については、主要なグループ会社がそれぞれ行っていた大卒定期採用を、2021年4月入社よりグループ一括での採用に切り替え、グループとして優秀な人材の確保を目指すとともに、グループ事業の広がりの中でのキャリア形成を通じて、グループを牽引するリーダーの育成を図ります。これに加え、主要なグループ会社において、将来のリーダー候補を選抜し、研修と戦略的な人員配置の中で育成する中核人材マネジメントの仕組みを2017年度より導入しております。
さらに、人材の流動性を高め、会社や組織を超えた連携を進めることで、組織の硬直化を防ぎ、風通しが良く多様性を受容する組織風土を醸成し、新たな価値創造をし続ける企業風土づくりと人材育成に取り組んでおります。
また、日本国内の少子高齢化、生産労働人口の減少により人材確保が困難になってきており、必要な人材が確保できない場合には、当社グループの事業運営に影響を与える懸念があります。エンゲージメント向上や働き方改革を進めることで離職による人材の流出を防ぐとともに、デジタル化やAIを活用することで効率化、省人化を図り当社グループの事業運営を継続できる体制の構築に努めております。
⑩訴訟のリスク
当社グループが国内外で事業活動を遂行していくうえで、訴訟の対象となるリスクがあります。具体的には、契約上の債務不履行、製造する製品の欠陥にともなう製造物責任、役員および従業員との労働契約・関連法令にともなう責任および第三者の権利侵害などにより、損害賠償等の多大な費用を要する懸念があります。
当社グループでは、これらの訴訟リスクを低減するため、契約書のひな型において当社グループが負担する法的責任を明確化しているほか、当社グループにおける各事業部門が法務部門等の専門部署および外部専門家と連携し、実際に訴訟を提起された場合の当社グループの業績および財務状況への影響を最小限化することに加え、グループ包括賠償保険の付保等を行っております。
⑪海外ビジネス
当社グループは、アジアや欧米などにおいてグローバルな事業展開を行っております。各国の事業環境の変化や、海外子会社におけるガバナンス体制の不備により、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。
当社グループは、海外子会社の経営状況の迅速かつ正確な把握に努めるとともに、専門部署の関与による適時適切な改善施策を実施しております。
(4)情報セキュリティリスク
①個人情報の漏洩
当社グループが保有する個人情報の保護についてはさまざまな対策を講じておりますが、予期せぬ事態によりこれらの情報が流出する可能性が全く無いとは言い切れず、そのような事態が生じた場合、レピュテーションリスクが高まり、当社グループの信用もしくは評価が毀損され、業績等に影響を与える懸念があります。
当社グループでは、情報管理に関する各種規程類を制定し、定期的に役員および従業員への教育および啓発活動を実施しております。また、当社は、情報管理体制の強化を目的として、グループの情報管理を横断的に統括する「グループ情報管理委員会」および当社の情報管理を統括する「情報管理委員会」を設置しております。
②営業秘密・機密情報の漏洩
当社グループが業務上知り得た営業秘密・機密情報等の保護についてはさまざまな対策を講じておりますが、予期せぬ事態によりこれらの情報が流出した場合、レピュテーションリスクが高まり、当社グループの信用もしくは評価が毀損されるほか、業界における競争力および原材料の調達力を低下させる懸念があります。
当社グループでは、情報管理に関する各種規程類を策定し、定期的に役員および従業員への教育および啓発活動を実施しております。また、当社は、情報管理体制の強化を目的として、グループの情報管理を横断的に統括する「グループ情報管理委員会」および当社の情報管理を統括する「情報管理委員会」を設置しております。
③サイバー攻撃・ウイルス侵入
悪意をもった第三者によるサイバー攻撃等を受けた場合、当社グループが利用しているシステムの停止や誤作動のほか、不正利用や情報漏洩等のセキュリティ上の問題が発生し、事業活動を維持することが困難になる懸念があります。
当社グループでは、「グループ情報管理委員会」による継続的な現状把握および外部専門家との連携体制の整備を行うことで、当社グループが利用しているシステムを保護するためのセキュリティ対策等を推進しております。
(5)財務・会計リスク
①資金調達
当社グループが事業活動を行う上で必要な資金調達が滞った場合、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。当社グループでは、一定レベルの手元現預金の確保と、資金調達先・調達手段の多様化による十分な流動性の確保に努めるとともに、適切な資金調達コストの管理を行っております。
②会計基準および税制等の変更
日本の会計基準は、国際的な基準との調和を図るべく改訂を重ねており、今後もこの方向で推移するものと予想されます。また、日本における国際財務報告基準の適用に向けた議論が進んでおります。このような状況のなか、将来における会計基準の変更は、当社グループの業績、財務状況および業務遂行に影響を与える懸念があります。また、日本および諸外国の税制等が改正される場合においても同様の可能性があります。
当社は、連結財務諸表等の適正性を確保するため、公益財団法人財務会計基準機構へ加入し、同機構が行う研修会などへの参加により、継続的な情報収集活動を行うことで、会計基準等の内容を適切に把握し、その変更等について的確に対応できる体制を整備しております。
(6)製造・品質リスク
当社グループは厳格な品質管理基準に基づき多様な製品を製造・販売しておりますが、全ての製品について欠陥が皆無で、将来にわたり品質的なクレームや製造物責任が発生しないという保証はありません。こうした想定外の大規模な品質クレームや製造物責任によって多額のコスト負担の発生や当社グループの信用もしくは評価が毀損される懸念があります。
当社は、安全な製品やシステム・サービスの提供およびお客様・社会から信頼していただける企業グループとしての社会的行動の実践を図るべく、グループ各社では品質保証体制の継続的な改善に取り組んでおり、また、各社品質保証部門を統括する品質統括部を設置してグループ内における重大品質リスクの低減を推進しております。
(7)環境リスク
当社グループは、製造工程における環境負荷の低減に積極的に取り組んでおります。しかし、規制強化への対応や原材料価格の高騰により製造コストが増加する可能性がある一方、環境負荷の低減への取り組みが不十分な場合、レピュテーションリスクが高まり、事業活動に影響を及ぼす懸念があります。
また、資源・環境制約の観点から国内外で循環経済への移行が進んでおり、包装容器への規制リスクが高まっております。特にプラスチック包装容器では、世界的な海洋プラスチックごみ問題などを背景に、シングルユース・プラスチック製品などへの規制が強化されるリスクがあります。当社グループはプラスチック包装容器を含むさまざまな素材の包装容器を製造・販売しており、今後の規制や顧客ニーズの変化などにより、当社グループ製品の製造・販売に影響が生じ、業績および財政状態に影響を与える懸念があります。
これらのリスクに対し、当社グループは「環境配慮型製品・サービスの開発と提供」をマテリアリティの1つとして、当社グループの持続的な成長および地球環境に貢献する製品の開発に取り組んでおり、その取り組みは、当社ホームページ上で“Open Up! Products and Services”として公開しております。さらに、2030年に向けた環境目標“Eco Action Plan 2030”を制定し、事業活動やサプライチェーンでの温室効果ガス削減、プラスチック製包装容器の軽量化や代替素材への転換による化石資源の使用量の削減に取り組んでおります。
(8)カントリーリスク
当社グループは、アジアや欧米などにおいてグローバルな事業展開を行っております。各地域におけるテロの発生、政情の悪化、経済状況の変動、為替の変動および予期せぬ法律・規制の変更等があった場合、当社グループの業績等に影響を与える懸念があります。
当社グループは、進出している海外地域における非常事態発生時の危機対応については「グループ海外事業危機管理規程」に基づき判断しているほか、新たな海外事業進出にかかる意思決定段階および当該事業活動の推進段階においてカントリーリスクについて吟味し、推進可否を判断しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する中で、景気は緩やかな回復基調が継続しました。一方、先行きは、不安定な国際情勢、物価の上昇や金融市場の変動などにより、不透明な状況にあります。
このような環境下におきまして、当連結会計年度における当社グループの業績は、以下のとおりとなりました。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
|
前期 |
当期 |
増減 |
増減率 |
|
売上高 |
950,663 |
922,516 |
△28,146 |
△3.0% |
|
営業利益 |
33,850 |
34,204 |
353 |
1.0% |
|
売上高営業利益率 |
3.6% |
3.7% |
0.1% |
- |
|
経常利益 |
38,740 |
37,566 |
△1,174 |
△3.0% |
|
特別利益 |
1,588 |
718 |
△870 |
- |
|
特別損失 |
5,988 |
5,868 |
△120 |
- |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
23,083 |
22,394 |
△688 |
△3.0% |
売上高は、海外での製缶・製蓋機械の販売が減少したことにより、9,225億16百万円(前期比3.0%減)となりました。利益面では、エンジニアリング・充填・物流事業において、製缶・製蓋機械の販売減少や貸倒損失の計上があったものの、包装容器事業を中心に原材料価格上昇分の転嫁を実施したことなどにより、営業利益は342億4百万円(前期比1.0%増)となりました。経常利益は、持分法投資利益が増加したものの、為替差損を計上したことなどにより、375億66百万円(前期比3.0%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、223億94百万円(前期比3.0%減)となりました。
各セグメントの営業の概況は次のとおりであります。
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|
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|
|
(単位:百万円) |
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報告セグメント等 |
売上高(外部顧客) |
営業利益 |
||||||
|
前期 |
当期 |
増減 |
増減率 |
前期 |
当期 |
増減 |
増減率 |
|
|
包装容器事業 |
588,352 |
602,447 |
14,094 |
2.4% |
14,460 |
27,005 |
12,544 |
86.7% |
|
エンジニアリング・充填・物流事業 |
203,671 |
146,407 |
△57,263 |
△28.1% |
9,422 |
△9,728 |
△19,150 |
- |
|
鋼板関連事業 |
87,942 |
89,987 |
2,045 |
2.3% |
7,271 |
7,694 |
422 |
5.8% |
|
機能材料関連事業 |
39,276 |
51,866 |
12,590 |
32.1% |
28 |
6,097 |
6,069 |
- |
|
不動産関連事業 |
7,897 |
8,080 |
183 |
2.3% |
4,577 |
4,550 |
△26 |
△0.6% |
|
その他 |
23,523 |
23,726 |
203 |
0.9% |
1,098 |
1,537 |
439 |
40.0% |
|
調整額 |
- |
- |
- |
- |
△3,008 |
△2,953 |
54 |
- |
|
合計 |
950,663 |
922,516 |
△28,146 |
△3.0% |
33,850 |
34,204 |
353 |
1.0% |
〔包装容器事業〕
売上高は6,024億47百万円(前期比2.4%増)となり、営業利益は270億5百万円(前期比86.7%増)となりました。
a)金属製品の製造販売※
国内・海外において、原材料・エネルギー価格上昇分の転嫁を実施したほか、国内において、チューハイ・ビール向けの空缶で新製品の受注があったことなどにより、売上高は前期を上回りました。
b)プラスチック製品の製造販売※
原材料・エネルギー価格上昇分の転嫁を実施したほか、お茶類向けのペットボトル・キャップや調味料向けのボトルなどが増加したことにより、売上高は前期を上回りました。
c)紙製品の製造販売
飲料向けの段ボール製品が減少しましたが、飲料コップを中心に原材料・エネルギー価格上昇分の転嫁を実施したことにより、売上高は前期並となりました。
d)ガラス製品の製造販売
飲食店向けでジョッキなどのハウスウエア製品や、化学薬品向けのびん製品が増加しましたが、セールスプロモーション品で前期に大型案件を受注した反動があったほか、調味料向けのびん製品が減少したことにより、売上高は前期並となりました。
※当連結会計年度より、金属キャップおよびプラスチックキャップの製造販売を行うCrown Seal Public Co., Ltd.を連結子会社から持分法適用関連会社としたことにともない、売上高が減少した影響を含んでおります。
〔エンジニアリング・充填・物流事業〕
売上高は1,464億7百万円(前期比28.1%減)となり、営業損失は97億28百万円(前期は94億22百万円の営業利益)となりました。
a)エンジニアリング事業
欧米の金利上昇を背景としたお得意先における設備投資の見送りなどにより、海外での製缶・製蓋機械の販売が減少し、売上高は前期を大幅に下回りました。
b)充填事業
マレーシアにおいてホームケア製品およびパーソナルケア製品の充填事業を営むPREMIER CENTRE GROUP SDN. BHD.を、2025年3月期中間期末より連結子会社に追加したほか、タイにおいて、飲料の充填品が増加したことなどにより、売上高は前期を上回りました。
c)物流事業
貨物自動車運送業および倉庫業などの売上高は、前期並となりました。
〔鋼板関連事業〕
売上高は899億87百万円(前期比2.3%増)となり、営業利益は76億94百万円(前期比5.8%増)となりました。
電気・電子部品向けでは、車載用二次電池材の輸出が減少し、売上高は前期を下回りました。
缶用材料では、食缶向けの輸出などが増加し、売上高は前期を上回りました。
自動車・産業機械部品向けでは、駆動系部品材などが増加し、売上高は前期を上回りました。
建築・家電向けでは、内装パネル材などが増加し、売上高は前期を上回りました。
〔機能材料関連事業〕
売上高は518億66百万円(前期比32.1%増)となり、営業利益は60億97百万円(前期は28百万円の営業利益)となりました。
磁気ディスク用アルミ基板では、データセンター向けのハードディスク用途で市況が回復傾向となったことにより、売上高は前期を上回りました。
光学用機能フィルムでは、フラットパネルディスプレイの市況が回復傾向となったことにより、売上高は前期を上回りました。
その他、ほうろう製品向けの釉薬が増加しました。
〔不動産関連事業〕
オフィスビルおよび商業施設等の賃貸につきましては、売上高は80億80百万円(前期比2.3%増)となり、営業利益は45億50百万円(前期比0.6%減)となりました。
〔その他〕
自動車用プレス金型・機械器具・硬質合金および農業用資材製品などの製造販売、石油製品などの販売および損害
保険代理業などにつきましては、売上高は237億26百万円(前期比0.9%増)となり、営業利益は15億37百万円(前期比40.0%増)となりました。
所在地別セグメントの業績は、次のとおりであります。
日本では、売上高は7,726億18百万円(前期比4.2%増)、営業利益は326億35百万円(前期比59.4%増)となりました。
アジア(タイ、中国、マレーシアなど)では、売上高は830億56百万円(前期比8.9%増)、営業利益は98億1百万円(前期比37.5%増)となりました。
その他(米国など)では、売上高は668億42百万円(前期比49.8%減)、営業損失は85億8百万円(前期は63億12百万円の営業利益)となりました。
なお、当連結会計年度末における当社の連結子会社数は74社(前期比2社増)、持分法適用関連会社数は5社(前期比1社増)となりました。当連結会計年度中における連結子会社の増減は、次のとおりです。
・増加(3社)
PREMIER CENTRE GROUP SDN. BHD.
PREMIER CENTRE SERVICES SDN. BHD.
PREMIER CENTRE TRADING SDN. BHD.
・減少(1社)
Crown Seal Public Co., Ltd.
※2024年4月1日付で当社の連結子会社から持分法適用関連会社となりました。
資産、負債および純資産の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、1兆2,016億15百万円となりました。現金及び預金の増加などにより前連結会計年度末に比べ208億31百万円の増加となりました。
当連結会計年度末の負債は、5,067億94百万円となりました。借入金の増加や社債の発行などにより前連結会計年度末に比べ236億93百万円の増加となりました。
当連結会計年度末の純資産は、6,948億20百万円となりました。自己株式の取得や配当金の支払などにより前連結会計年度末に比べ28億62百万円の減少となりました。
以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の56.4%から55.5%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて267億57百万円増加し、1,100億7百万円(前期比32.1%増)となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
税金等調整前当期純利益が324億16百万円、減価償却費556億60百万円、売上債権の減少による資金の増加312億81百万円、棚卸資産の増加による資金の減少62億6百万円、仕入債務の減少による資金の減少85億17百万円などにより、当連結会計年度における営業活動による資金の増加は940億62百万円(前期比45.6%増)となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
有形固定資産の取得による支出が336億21百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が114億37百万円あったことなどにより、当連結会計年度における投資活動による資金の減少は511億9百万円(前期比2.5%減)となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
短期借入金の返済による支出(純額)が39億76百万円、長期借入れによる収入が380億0百万円、長期借入金の返済による支出が117億4百万円、社債の発行による収入が99億57百万円、自己株式の取得による支出が342億51百万円、配当金の支払いが155億7百万円あったことなどにより、当連結会計年度における財務活動による資金の減少は187億68百万円(前期比32.5%減)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
包装容器事業 |
570,009 |
101.7 |
|
エンジニアリング・充填・物流事業 |
134,378 |
71.0 |
|
鋼板関連事業 |
82,173 |
104.2 |
|
機能材料関連事業 |
49,508 |
123.4 |
|
報告セグメント計 |
836,070 |
96.2 |
|
その他 |
19,078 |
97.8 |
|
合計 |
855,149 |
96.3 |
(注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.エンジニアリング・充填・物流事業のうち、物流事業は生産形態をとらないため、物流事業を除くエンジニアリング・充填事業を対象として記載しております。
3.不動産関連事業は、生産形態をとらない事業活動のため記載しておりません。
b)受注実績
エンジニアリング・充填・物流事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業およびその他のうち、受注生産によるものについての当連結会計年度における受注状況は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前期比(%) |
|
エンジニアリング・充填・物流事業 |
79,975 |
219.7 |
65,791 |
128.4 |
|
鋼板関連事業 |
89,275 |
110.2 |
16,586 |
121.3 |
|
機能材料関連事業 |
34,357 |
142.1 |
2,832 |
119.6 |
|
その他 |
20,151 |
89.5 |
15,271 |
115.1 |
|
合計 |
223,760 |
136.4 |
100,481 |
124.7 |
(注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.エンジニアリング・充填・物流事業の金額は、包装容器関連設備の製造販売の一部に係るものであります。
3.包装容器事業は、事業の形態から受注実績と販売実績がほぼ同様のため記載しておりません。
4.不動産関連事業は、受注形態をとらない事業活動のため記載しておりません。
c)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
包装容器事業 |
602,447 |
102.4 |
|
エンジニアリング・充填・物流事業 |
146,407 |
71.9 |
|
鋼板関連事業 |
89,987 |
102.3 |
|
機能材料関連事業 |
51,866 |
132.1 |
|
不動産関連事業 |
8,080 |
102.3 |
|
報告セグメント計 |
898,790 |
96.9 |
|
その他 |
23,726 |
100.9 |
|
合計 |
922,516 |
97.0 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績及びセグメントごとの財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
また、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標、達成状況については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおりであります。
②資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ⅰ)主要な資金需要および財源
翌連結会計年度の当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用ならびに当社グループの設備新設、改修等にかかる投資であります。
また、成長市場に向けた国内・海外事業への投資および事業構造改革投資をM&Aなどの形態と組み合わせて行うことを検討しております。
これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローおよび自己資金のほか、金融機関からの借入および社債発行等による資金調達を主な財源として対応いたします。
安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題として認識しており、主要な取引先金融機関に対して適時適切な情報開示を行うことにより、良好な取引関係を維持しております。
加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しております。
なお、当社は「環境配慮型製品・サービスの開発と提供」、「環境への貢献」に向けた取り組みを推進するための資金調達の枠組みとして、グリーンファイナンス・フレームワークを策定し、2023年10月および2024年10月にグリーンボンドを発行して資金を調達しました。
ⅱ)資金の流動性
手許の運転資金につきましては、当社および一部を除く国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。現在、手許キャッシュは、突発的な資金需要に対応するため売上高の1ヵ月から2ヵ月分の水準を保持しており、今後もこの水準で運営していく予定です。さらに、これを上回る突発的な資金需要に対しては、迅速かつ確実に資金を調達できるように金融機関とコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクに備えております。
当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。
③重要な会計方針の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度において、新たに締結した重要な契約は次のとおりであります。
基本合意書
当社の連結子会社である東洋製罐株式会社は、2024年6月21日付で、TOPPANホールディングス株式会社との間で、合弁会社設立に関する基本合意書を締結いたしました。
(合弁会社の概要)
商号 未定
所在地 スウェーデン王国
資本金 未定
出資比率 東洋製罐株式会社 51% TOPPANホールディングス株式会社 49%
事業内容 車載用二次電池向け外装材の製造販売
合弁契約締結 未定※
合弁会社設立 未定※
稼働 未定※
※当社は、2025年1月31日付「(開示事項の変更)当社連結子会社における合弁会社設立に関する基本合意書締結のお知らせ」にてお知らせいたしましたとおり、昨今、電気自動車市場における事業環境が変化していることから、東洋製罐株式会社およびTOPPANホールディングス株式会社と、製品供給予定先の間で製品の供給開始時期の見直しを行う中で、新合弁会社の設立が当初予定から遅れる見通しとなったため、現時点では合弁契約締結日、合弁会社設立日および稼働日は未定としております。
当社グループは多様化する市場ニーズに対応するため、当社綜合研究所、東洋製罐株式会社テクニカルセンターおよび東洋鋼鈑株式会社技術研究所などの研究部門により、次世代に向けた技術開発を目的として積極的に研究開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
各セグメントの研究開発活動の概要は次のとおりであります。
[包装容器事業]
当連結会計年度における包装容器事業の研究開発費は
①金属製品の製造販売分野における主要な研究課題
環境対応
・環境対応とコストダウンを両立させる諸材料への変更
・環境配慮型容器であるTULC※の新成形方式の開発およびさらなる軽量化
・飲料缶(DI缶)の環境に配慮した成形加工システムの実用化
・海洋プラスチック問題の解決の一助となる金属容器への置き換え
・内容物の保存性をより高めつつ環境に配慮した缶用水性塗料の実用化
意匠・性能向上
・飲料缶(TULC、DI缶)の意匠性をさらに高めるための形状および印刷技術の開発
・飲料缶(TULC)における内容物の適用拡大および実用化
・開けやすさを向上させた缶蓋の実用化
・リチウムイオン二次電池向け外装材などの新たな用途展開に向けた成形加工技術の開発
生産性向上
・次世代飲料缶生産システムの確立
②プラスチック製品の製造販売分野における主要な研究課題
環境対応
・リサイクル材活用技術の開発
・飲料用軽量ペットボトル・キャップの実用化
・減容化および廃棄性の向上により環境負荷を低減した新形状ボトルの実用化
・パウチ用ラミネート材料の無溶剤システムの実用化
・ユーザビリティーと環境に配慮したパウチの開発および実用化
意匠・性能向上
・容器製造から充填殺菌までを一貫して行う生産システムの実用化
・飲料用ペットボトルのガスバリア性向上技術の開発
・持ちやすさや携帯性・開閉性を高めた新形状ボトル・キャップの実用化
・ポリオレフィンボトルやパウチにおける加飾技術の実用化に関する研究
・酸素吸収性能を付与し内容物の保存性を高めたポリオレフィンボトルの実用化
・容器内の酸素吸収性能と外部酸素遮断技術を付与したカップの実用化と密封検査技術の開発
・詰替機能を向上させたパウチの実用化
・レトルト可能な再封機能付きパウチの開発および実用化
・電子レンジ加熱に適した自動蒸気抜き機能付きパウチ・カップの開発および実用化
・酸素吸収性接着剤を適用した透明酸素吸収フィルムの実用化
③紙製品の製造販売分野における主要な研究課題
環境対応
・海洋プラスチック問題の解決の一助となる紙容器や紙蓋の開発
④ガラス製品の製造販売分野における主要な研究課題
環境対応
・CO2削減を目的とした材料研究および用途開発、燃焼システムの開発
意匠・性能向上
・コーティングおよび加飾技術の開発
生産性向上
・ロボット・AIを活用した省力化、省人化に関する研究
・品質保証のための検査機の開発
[エンジニアリング・充填・物流事業]
当連結会計年度におけるエンジニアリング・充填・物流事業の研究開発費は
①エンジニアリング事業における主要な研究課題
生産性向上
・生産効率向上や省人化・脱炭素を可能とする生産システムの開発
②充填事業における主要な研究課題
意匠・性能向上
・新たな用途展開を図るための充填・殺菌・密封検査技術の開発
・2種類の液体を同時に吐出可能としたエアゾールシステムの適用拡大
・ドローンにエアゾール製品を搭載し遠隔操作で内容物を吐出可能とするシステムの開発
③物流事業における主要な研究課題
該当事項はありません。
[鋼板関連事業]
当連結会計年度における鋼板関連事業の研究開発費は
主要な研究課題
意匠・性能向上
・車載用二次電池材を中心とした電気・電子部品および自動車部品用に機能性を高めた表面処理鋼板の開発
[機能材料関連事業]
当連結会計年度における機能材料関連事業の研究開発費は
主要な研究課題
意匠・性能向上
・ハードディスクの大容量化に対応可能な磁気ディスク用アルミ基板の開発
生産性向上
・光学用機能フィルムの生産性向上
[不動産関連事業]
該当事項はありません。
[その他]
当連結会計年度におけるその他の事業の研究開発費は13百万円であります。
※TULC(Toyo Ultimate Can)…材料や製造プロセスを根本から見直し、生産性と環境保全性を飛躍的に高めた2ピース缶