第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、1917年の創業以来100年以上にわたり、金属・プラスチック・紙・ガラス等、それぞれが持つ特性を活かし、人々のライフスタイルや社会の変化に応じて、さまざまな素材の容器を世の中に送り出してまいりました。

当社グループは、2016年4月に制定した東洋製罐グループの経営思想のもと、次の100年に向けて、素材の開発と加工の技術を軸に、人々の暮らしをより豊かにし、環境にやさしいしくみを拡げ、さらなる発展と進化を目指しております。

〔東洋製罐グループの経営思想〕

経営理念

常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献します。

信条

・品格を重んじ、あらゆる事に日々公明正大に努めます。

・一人ひとりの力を最大限に発揮し、自己の成長と共に社会の繁栄に努めます。

ビジョン

・世界中の人に必要とされる斬新で革新的な技術と商品を提供するグループを目指します。

(2)目標とする経営指標

2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」では、最終年度である2025年度に、売上高8,500億円、営業利益500億円、EBITDA1,100億円、ROE5%の達成等を数値目標として掲げております。また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進めるための取り組みとして定めた「資本収益性向上に向けた取り組み2027」では、「中期経営計画2025」の延長上の営業利益目標を設定するとともに自己資本の圧縮を進めることで、2027年度に株主資本コストを上回るROE8%以上の達成を目指します。「中期経営計画2025」および「資本収益性向上に向けた取り組み2027」の詳細につきましては、「(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題」をご参照ください。

< 進捗状況 >

当連結会計年度における当社グループを取り巻く外部環境は、原材料・エネルギー価格の高騰や為替相場の急激な変動などの影響により、厳しい状況が続きました。

当社グループにおいては、新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的とした行動規制が緩和されたことや夏場の猛暑の影響などにより、飲料缶や飲料用ペットボトルなどの包装容器の販売量が増加したほか、鋼板関連事業における車載用二次電池材の販売が好調に推移したことに加え、Stolle Machinery Company,LLCを中心としたエンジニアリング事業の製缶・製蓋機械の販売が好調に推移したことや、原材料価格の高騰に対する転嫁を行ったことなどにより、売上高は9,060億25百万円となりました。

一方で、営業利益は、原材料価格の高騰など厳しい外部環境の変化に対して売価転嫁が追い付かず、前期と比べ大幅な減益となり、73億96百万円に留まりました。

経常利益は、持分法投資利益の減少などにより137億70百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、103憶63百万円となりました。

この結果、EBITDAは603億円、ROEは1.6%となりました。

当社グループは「中期経営計画2025」の達成に向けて「収益性向上」を最優先と捉え、売価転嫁を引き続き重要経営課題とした上で、成長分野への積極的な投資を進めてまいります。また環境負荷低減や自動化・省人化等のコストダウンを進めると同時に、国内包装容器事業を中心とした不採算事業領域・拠点の再構築を早急に進めてまいります。

当社グループは持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けて、さらなる成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進め、「資本収益性向上に向けた取り組み2027」で掲げたロードマップの達成に向けて積極的に取り組んでまいります。

(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題

当社グループは、創業以来100年以上にわたり、包装容器を中心として、人びとの生活に欠かせない製品・サービスを提供し、社会に貢献してまいりました。

現在、当社グループを取り巻く事業環境は想定を超えて変化し、解決すべき様々な社会課題が顕在化しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、人びとの生活様式も大きく変容しております。

このような事業環境下において、当社グループは、2021年5月に、社会や地球環境について長期的な視点で考え、すべてのステークホルダーの皆様に提供する価値の最大化を図るべく、2050年を見据えた「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を策定し、その実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標である「中長期経営目標2030」を設定いたしました。当社グループは、「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランとして、2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」を策定いたしました。また、成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進めるための取り組みとして、2023年5月に「資本収益性向上に向けた取り組み2027」を策定いたしました。

概要は次のとおりです。

①長期経営ビジョン2050「未来をつつむ」

当社グループの目指す姿・ありたい姿を「世界中のあらゆる人びとを安心・安全・豊かさでつつむ『くらしのプラットフォーム』」と位置づけ、「多様性が受け入れられ、一人ひとりがより自分らしく生活できる社会の実現」「地球環境に負荷を与えずに、人々の幸せなくらしがずっと未来へ受け継がれる社会の実現」を目指します。

そのために「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の3つの分野で、グループが一体となって、これまで培ってきた素材開発、成形加工、エンジニアリング等の技術・ノウハウを活用し、オープンイノベーション、IoT・DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するとともに、お客様やお取引先等をはじめとした志を同じくするパートナーと連携し、包装容器メーカーの枠を超え、社会を変える新たな価値を創造してまいります。

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②中長期経営目標2030

「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」の実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標として設定した「中長期経営目標2030」の概要は次のとおりです。

 

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(注)国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)イニシアチブの新基準「1.5℃目標」の認定取得を目指すため、2021年11月に、Eco Action Plan 2030の主要目標を以下のとおり上方修正し、2023年3月に「1.5℃目標」の認定を取得いたしました。

・事業活動でのCO2排出量(Scope1・2)35%削減 ⇒ 50%削減

・サプライチェーンでのCO2排出量(Scope3)20%削減 ⇒ 30%削減

※ SBTイニシアチブ…企業のGHG(温室効果ガス)削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ

 

③中期経営計画2025

「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランである2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」(以下、「本中期経営計画」といいます。)は、3年目を迎えます。

本中期経営計画の概要およびその進捗状況は次のとおりです。

<基本方針>

本中期経営計画では、“「くらしのプラットフォーム」へ向けた持続的な成長”を基本方針とし、「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」で掲げた目指す社会の実現に向け、3つの主要課題に取り組みます。

<3つの主要課題と施策>

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a)既存事業領域の持続的成長

「多様性への対応」と「持続可能な社会の実現」の2つの軸と持続的成長の観点から、これまでの事業構造にとらわれず、果断に事業ポートフォリオの見直しを行うことで、既存事業領域の持続的な成長を目指します。

< 進捗状況 >

・脱プラスチックに向けた取り組みとして、海外を中心にアルミ缶製造設備を拡販しております。

・充填事業を拡大するため、国内において2020年11月に新設したTOYO PACK KIYAMA株式会社が、2022年3月より稼働したほか、中国の東洋飲料(常熟)有限公司において生産能力を増強いたしました。

・物流事業を拡大するため、東洋メビウス株式会社において、「環境配慮」、「お得意先へのサービス向上」、「ホワイト物流の推進」の3つを実現するための次世代倉庫である熊谷物流センターの営業を、2023年4月に開始いたしました。

・脱炭素社会への貢献として、EV・ハイブリッド車向けの車載用二次電池材(ニッケルめっき鋼板)の生産能力増強を進めております。

b)新たな成長領域の探索・事業化・収益化

人びとのライフスタイルの変化や環境負荷の低減など、社会の多様なニーズや新たな課題を捉え、当社グループが培ってきた「素材開発」「成形加工」「エンジニアリング」などの保有技術をもとに、「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の領域において、新規事業を創出することで、新たな社会基盤を創造します。

< 進捗状況 >

■次世代のコアとなる事業を創出するため、新規事業を展開しております。

・ガラス容器の製造で培った技術を応用して、医療用カテーテル向けの屈折率分布型マイクロレンズSiGRIN(シリカグリン)を開発し、海外の医療機器メーカーに採用されております。ライフサイエンス分野でグローバルに展開し、人々の健康の維持・増進に貢献することを目指します。

■スタートアップ企業との資本・業務提携により、社会課題解決のための事業機会の探索を行っております。

・NovoTec Group Pte. Ltd.への出資

当社グループは、ヘルスケア領域における事業機会の創出およびヘルスケア製品市場への参入機会の探索を目的として、東南アジア等での病院間プラットフォームの構築を通じて医療サービスの向上を目指すシンガポールのNovoTec Group Pte. Ltd.へ出資し、誰もが安心して質の高い医療サービスを受けられる社会の実現を目指します。

・DAIZ株式会社との提携

当社グループは、包装容器事業で長年にわたり培った食品の充填・包装・運搬の技術を保有しております。発芽大豆由来の植物肉を開発・生産するDAIZ株式会社と提携し、当社グループの充填・包装・運搬の技術を提供することで、社会課題である環境負荷の低減や食糧危機の解決などを目指します。

・株式会社Agnaviとの提携

当社グループは、小容量缶の充填設備レンタルサービス「詰太郎」を開発しております。一合缶に入った日本酒ブランドを展開する株式会社Agnaviと提携し、酒蔵に対して当社グループの容器と充填サービスを提供することで、社会の多様化するニーズに応えるとともに、地域創生に貢献することを目指します。

・株式会社セルージョンとの提携

当社グループは、包装容器事業で長年にわたり培った技術を活かし、世界初の閉鎖系スフェロイド形成用バッグ「ウェルバッグ」を開発いたしました。iPS細胞を利用した角膜内皮再生医療の社会実装に向けた研究開発を行う株式会社セルージョンと提携し、当社グループの開発した容器を提供することで、再生医療分野の発展に貢献することを目指します。なお、「ウェルバッグ」は2022年7月より国内の医薬品メーカー・大学・研究機関向けにも販売を開始しております。

c)成長を支える経営基盤の強化

持続的成長のための経営資源の充実とガバナンスの強化を行います。

ⅰ)技術・開発

パートナーとの共創や新技術の探索を通じ、事業創出のための研究開発を推進

ⅱ)IoT・DX

デジタル技術の活用を通じたバリューチェーンの変革と事業領域の拡大

ⅲ)人材

新たな価値創造につながる人材プラットフォームの整備

ⅳ)組織

社会からの信頼に応えるためのコーポレート・ガバナンスの強化

< 進捗状況 >

・当社は、アルミ缶水平リサイクル「CAN to CAN」※1のさらなる推進を目指し、グローバルに事業を展開する総合アルミニウムメーカーである株式会社UACJと業務提携契約を締結いたしました。両社の保有する技術やノウハウなどを活用して環境面での付加価値を高めたアルミ缶を開発し、商品展開することで、飲料容器サプライチェーン全体のCO2排出量の削減を目指してまいります。

※1 使用済みアルミ缶を同じ用途のアルミ缶にリサイクルすること。

・日本クロージャー株式会社は、傘下に飲料事業とサステナビリティに特化した事業を持つアサヒグループジャパン株式会社および合成樹脂専門商社として海外の最新のリサイクル技術情報を収集する双日プラネット株式会社と共同で、ペットボトルキャップの水平リサイクル「キャップtoキャップ」※2の実現に向けた技術検証の取り組みを開始いたしました。各社の強みを活かし、プラスチック資源循環についての社会課題解決に取り組んでまいります。

※2 使用済みペットボトルキャップを同じ用途のペットボトルキャップにリサイクルすること。

・当社グループにおける中長期的な環境目標である「Eco Action Plan 2030」で定めた、2030年における温室効果ガス排出量削減目標(2019年度比で事業活動でのCO2排出量(Scope1・2)を50%削減、サプライチェーンでのCO2排出量(Scope3)を30%削減)について、国際的な環境団体であるSBT(Science Based Targets)イニシアチブから、「1.5℃目標」としての認定を取得しました。

・気候変動がもたらすリスクと機会が当社グループに与える影響についての検討を深めるため、2021年7月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同表明を行い、2022年5月に国内における包装容器事業(金属製品・プラスチック製品)を対象としたシナリオ分析を実施いたしました。また、2023年3月に国内における包装容器事業(紙製品・ガラス製品)、鋼板関連事業、機能材料関連事業を対象に加え、改めてシナリオ分析を実施いたしました。分析の結果、1.5℃および2℃シナリオにおいて、温室効果ガスの排出に対する炭素税賦課により操業コストが上昇するリスクおよび「Eco Action Plan 2030」の実現による操業コストの低減が確認できたことに加え、気候変動にともなう機会として、鋼板関連事業におけるEV・ハイブリッド車向けの車載用二次電池材(ニッケルめっき鋼板)の需要が大きく増加する可能性があることを確認しました。今後は、シナリオ分析の対象範囲を、海外を含めた当社グループの全事業領域に広げてまいります。

<持続的成長のためのロードマップ>

包装容器領域を基盤として、エンジニアリング・充填・物流領域におけるバリューチェーンの拡大と、鋼板関連事業・機能材料関連事業における光学用・電池向け部材等での成長を図るとともに、新規事業領域において社会課題解決の新しい仕組みを創出し、2030年度に連結売上高1兆円を目指します。

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<投資・財務方針>

事業活動と資産圧縮で創出したキャッシュを原資として、将来の成長や基盤強化等の投資を実施いたします。

a)投資

「くらしのプラットフォーム」へ向け、3,300億円規模の投資(M&A含む)を実施

目的

目安額

(億円)

備考

新たな成長分野・

領域の拡大

主な投資目的

■環境負荷低減・環境価値拡大のための投資

■包装容器製造の枠を超えたバリューチェーン全体でのシステム構築

■「食と健康」・「快適な生活」・「環境・資源・エネルギー」領域を中心とするビジネスパートナーやスタートアップ企業との共創による事業創出と育成

1,600

既存事業領域

の持続的成長

注力すべき既存事業領域における基盤強化

1,500

設備更新において、環境負荷低減や省人化・省力化を伴う形で極力行う

経営基盤強化

IoT・DXの推進、新技術開発、人材開発など

200

合計

3,300

※上記は計画時の目安であり、進捗状況・事業機会タイミング等の要因により、内訳を随時見直し、投資判断・実施

b)原資

・本中期経営計画期間において営業キャッシュ・フロー約3,800億円を創出

・政策保有株式を400億円規模売却し、成長分野への投資に活用

 

<株主還元方針>

本中期経営計画期間中は、総還元性向80%を目安に株主還元を行います。

a)配当金

連結配当性向50%以上を目安とする

1株当たり46円を下限とし、段階的に引き上げる

b)自己株式取得

機動的に実施する

※資産売却等による特別損益は、原則として、連結配当性向および総還元性向を算定するうえでは考慮いたしません

< 進捗状況 >

2022年度は年間配当金89円(中間配当金44円、期末配当金45円)といたしました。2022年度における連結配当性向・総還元性向は156.4%となる見込みです。

 

④資本収益性向上に向けた取り組み2027

資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進めるための取り組みとして定めた「資本収益性向上に向けた取り組み2027」の概要は次のとおりです。

<取り組み方針>

成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進め、資本収益性の向上を図ります。

a)成長戦略:事業ポートフォリオの最適化

・エンジニアリング・充填・物流事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業等における成長分野への経営資源投入

・国内包装容器事業を中心とした適正な売価転嫁、不採算事業領域・拠点の再構築

b)資本・財務戦略:資産効率向上

・段階的に拡充してきた配当および自己株式取得による株主還元を大幅に強化

・政策保有株式の一層の縮減

・不採算事業領域の資産圧縮、不動産の売却および価値向上

<KPIの設定>

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中期経営計画2025の延長上の営業利益目標をベースに自己資本の圧縮を進め、2027年度に株主資本コストを上回るROE8%以上の達成を目指します。

 

 

2022年度実績

2025年度

2027年度

2030年度

業績

売上高

9,060億円

8,500億円※1

(参考:約 10,500億円)

10,000億円※1

営業利益

73億円

500億円

650億円

800億円

EBITDA

603億円

1,100億円

1,200億円

純利益

103億円

350億円

480億円

資本

収益性等

ROE

1.6%

5.0%

8.0%以上

 

自己資本

(新たに目標化)

6,430億円

6,000億円

 

 

2022年度実績

2021~2025年度

2023~2027年度

 

株主還元

連結配当性向

(1株当たり配当金)

156%

(89円)

50%以上を目安

(46円を下限とし、

段階的に引き上げ)

同左※2

5年間で約800億円見込み

 

総還元性向

(自己株式取得)

156%

(-)

80%以上を目安

(92億円実施済)

5年間で

約1,000億円※3

1 足元の売上高増加は、為替変動やエネルギー価格高騰に伴う売価転嫁等の影響も含まれることから、2025年度・2030年度の売上高目標は据え置きとしています。

※2 2026~2027年度の配当については2025年度水準を延長した試算としておりますが、実際の利益に合わせて配当方針を勘案のうえ決定いたします。

※3 現中期経営計画期間は約600億円を計画しています。2026~2027年度は約400億円を見込んでおりますが、次期中期経営計画における還元方針等を勘案のうえ決定いたします。なお、2023年5月12日開催の取締役会において、2023年度に総額200億円(1,300万株)を上限として自己株式を取得することを決議しております

 

<ROE8%以上達成に向けた施策>

利益(R)の増加および自己資本(E)の圧縮によってROE8%以上を目指します。

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※1 2026~2027年度の配当については2025年度水準を延長した試算としておりますが、実際の利益に合わせて配当方針を勘案のうえ決定いたします。

※2 現中期経営計画期間は約600億円を計画しています。2026~2027年度は約400億円を見込んでおりますが、次期中期経営計画における還元方針等を勘案のうえ決定いたします。

 

a)事業ポートフォリオの最適化

国内包装容器事業を中心に売価転嫁、不採算事業領域・拠点の再構築を早急に行い、成長分野での事業成長を着実に成し遂げ、2027年度での営業利益目標の達成を目指します。

 

b)株主還元の大幅な強化

ROE8%以上の実現に向け、新たに5期累計約1,000億円の自己株式取得を計画し、段階的に拡充してきた株主還元を大幅に強化いたします。

c)キャッシュアロケーション(2023~2027年度)

営業キャッシュ・フローおよび資産売却・資金調達を原資として投資・株主還元に戦略的に配分し、事業成長および資本収益性の向上を目指します。

 

当社グループを取り巻く事業環境は、より一層厳しさを増すことが想定されますが、本中期経営計画の諸施策を着実に遂行することで、持続的な成長を目指してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) 東洋製罐グループのサステナビリティ経営

①東洋製罐グループCSR基本方針

東洋製罐グループのCSRとは、「誠実で公正な事業活動を通して、人類の幸福繁栄に貢献しつづけること」です。東洋製罐グループで働く一人ひとりが、CSR精神を理解し、全てのステークホルダーに対応します。

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②グループサステナビリティ推進体制

当社は、従来の「環境軸」「CSR軸」の区分に加え、社内外との広報・コミュニケーション機能を持ち、企業戦略の要として、社会と自社の継続的発展のためのサステナビリティ活動をグループ一体となって推進していくことを目的として、2022年4月に「サステナビリティ推進部」を新設しました。

また、東洋製罐グループがサステナビリティ経営をグループ横断的に行うことを目的として、「グループサステナビリティ委員会」を設置しました。

同委員会は、委員長である当社社長および当社常勤取締役、機能統轄責任者、綜合研究所長、主要グループ会社の社長によって構成され、原則として年1回開催されます。

同委員会の活動内容は、遅滞なく取締役会に報告され、監督を受ける体制となっています。また、同委員会において協議された事項は、必要に応じて経営戦略会議、経営執行会議で報告され、事業戦略に反映されます。

2023年度よりESG(環境・社会・ガバナンス)ごとに推進分科会を設置し、同委員会を軸として、当社の各部門とグループ事業会社が横断的に連携してサステナビリティ関連活動を推進していく体制を整えております。

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(2) 東洋製罐グループのマテリアリティ(重要課題)

当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献するため、優先的に取り組む課題を「東洋製罐グループのマテリアリティ(重要課題)」として特定しています。

長期経営ビジョン2050「未来をつつむ」、中期経営計画2025で掲げた中長期の戦略・ありたい姿に照らし合わせ、以下の6つをマテリアリティとして設定しました。

①多様なライフスタイルを支える製品・サービスの開発と提供

長期経営ビジョン2050で実現したいこととして掲げている“多様性への対応”の達成に向け、ライフスタイルや消費者ニーズの多様化を意識した製品・サービスを提供し、社会課題の解決に貢献すること

a.主な取り組み事項(戦略)

くらしの安心・安全・豊かさを実現する事業機会の探索

食の工業化(培養肉等)

健康の維持・増進に貢献する製品・サービスの開発と提供

食のパーソナライズ化への対応

ゼロフードロスに貢献する製品・サービスの開発と提供 など

b.リスクと機会

リスク

消費者ニーズとのミスマッチによる売上高の低下

多種多様なニーズへの対応による生産効率の低下

機会

多様な消費者ニーズへの対応による技術・生産面でのイノベーションの実現

食のパーソナライズ化や食の工業化など、変化する環境・価値観に対応した製品群を有することによる売上高の増加

c.KGI(指標と目標)

2023年度中に開示する予定です。

②環境配慮型製品・サービスの開発と提供

長期経営ビジョン2050で実現したいこととして掲げている“持続可能な社会の実現”の達成に向け、地球環境への貢献に資する製品やサービスを提供し、社会課題の解決に貢献すること

a.主な取り組み事項(戦略)

バリューチェーン全体で環境負荷を低減させるためのプラットフォームづくり

車載用電池部材の開発と提供

充填工程への容器製造インハウス化

次世代環境配慮型飲料缶システムの導入

Re-CUP WASHERの提供 など

b.リスクと機会

リスク

環境配慮型製品・サービスの開発と提供遅延による、ステークホルダーからの信頼の喪失と競合に対する相対的な劣後

機会

地球環境への貢献、生活インフラとしての社会的役割の拡大

環境配慮型製品・サービスのタイムリーな開発と提供による新規顧客獲得、競合との差別化

c.KGI(指標と目標)

2023年度中を目処に開示する予定です。

③環境への貢献

環境ビジョンやEco Action Plan 2030で掲げた脱炭素社会、資源循環社会、自然共生社会の実現に向け、環境負荷の低減に資する各種取り組みを実施すること

a.主な取り組み事項(戦略)

GHG排出量削減

水使用量の削減

資源循環への取り組み

省エネルギー化、再生可能エネルギー活用

生物多様性への配慮

サプライチェーンにおける環境配慮 など

 

b.リスクと機会

リスク

GHG排出量削減や資源循環などの各種環境課題への対応遅れによる競争優位性の低下

機会

GHG排出量削減などの環境配慮による、新規受注や既存顧客からの継続受注

資源、水・エネルギー等の有効利用によるコスト削減の実現

c.KGI(指標と目標)

項目

目標

目標年度

2022年度実績

事業活動でのCO2排出量(Scope1、2)

50%削減(2019年度比)

2030

15.8%削減(2019年度比)

サプライチェーンでのCO2排出量(Scope3)

30%削減(2019年度比)

2030

7.4%増加(2019年度比)

枯渇性資源の使用量

30%削減(2013年度比)

2030

16.0%削減(2013年度比)

プラスチック製品の化石資源の使用量

40%削減(2013年度比)

2030

15.4%削減(2013年度比)

事業活動の水使用量

30%削減(2013年度比)

2030

2.8%削減(2013年度比)

 

④人権の尊重

自社のみならずサプライチェーン全体において、差別、強制労働、ハラスメント等の人権侵害が行われていないことを確認し防止に努めること

a.主な取り組み事項(戦略)

人権デューデリジェンスの実施

サプライチェーンにおける人権配慮 など

b.リスクと機会

リスク

人権上の争議・抗議に起因するレピュテーション、売上高の低下

機会

サプライチェーン全体での人権配慮による、安定調達の強化

c.KGI(指標と目標)

項目

目標

目標年度

2022年度実績

自社内の人権デューデリジェンスの実施率

100.0%

2030

・SEDEXを活用した自社リスク評価をグループ14社52事業所にて実施しました。

・外国人労働者の人権に関する実地調査を一般社団法人ASSC協力のもと実施しました(対象:メビウスパッケージング茨城工場)。

サプライチェーン内のデューデリジェンスの実施率

100.0%

2030

前年度に当社調達部門で先行実施した「CSR調達ガイドライン自己診断」を主要グループ事業会社8社に展開し、新たに454社のサプライヤーに対して実施しました。

人権に関する社内教育実施率

100.0%

2025

外国人労働者の人権をテーマに含むオリジナル教材を使ったeラーニングを、国内28社966名が受講しました。

⑤従業員の尊重

安全と健康、ダイバーシティに配慮した働きがいのある職場環境を整えることに加え、新たな価値創造につながる挑戦を続ける人材を確保・育成し、競争力の維持・向上につなげること

a.主な取り組み事項(戦略)

労働安全衛生の確保

働きがいのある職場環境の整備

DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進

企業競争力向上に寄与する人材の確保と育成 など

 

b.リスクと機会

リスク

人材の属性やスキルの偏りによる画一的な発想と新たな事業機会の損失

柔軟な働き方への対応遅れによる、人材の流出および定着率の低下

機会

多様な価値観の共創による新機軸・イノベーションを生み出す企業風土の醸成、優秀な人材確保

個性を認め合い、成長できる職場環境の整備による、従業員の働きがいの向上

c.KGI(指標と目標)

項目

目標

目標年度

2022年度実績

女性管理職比率

6%超

2030

3.4%(2023年4月1日現在)

女性採用比率

30%超

2025

22.4%

男女の平均継続勤務年数の差異

3年以内

2025

3.4年(男性18.7年、女性15.3年)2023年3月31日現在

10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別継続雇用割合

70%超

2025

男性64.5%、女性50.0%(総合61.8%)2023年3月31日現在

対象:東洋製罐グループホールディングス㈱、東洋製罐㈱、東洋鋼鈑㈱、東罐興業㈱、日本クロージャー㈱、東洋ガラス㈱、メビウスパッケージング㈱

 

⑥コンプライアンスの徹底

法令や企業倫理、規範を遵守することに加え、腐敗や反競争的行為の防止に向けた取り組みを行うこと

a.主な取り組み事項(戦略)

法令遵守についての研修

企業行動憲章/規準の実践

腐敗や反競争的行為の防止 など

b.リスクと機会

リスク

コンプライアンス違反による事業活動の低迷、社会的信用の失墜、企業価値の毀損

機会

健全で安定した事業活動による社会的信用の獲得、企業価値の向上

透明性の高い経営による中長期投資家からの評価向上と、安定株主の獲得

c.KGI(指標と目標)

法令や企業倫理、規範の遵守

 

(3) 気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献するため、2030年の定量的、定性的な経営目標である「中長期経営目標2030」を設定し、2050年カーボンニュートラルの実現を目指した活動を推進しています。また、2021年7月には「気候関連財務情報開示タスクフォース」(以下、「TCFD」)の提言に賛同を表明しており、本項目ではTCFDの推奨する情報開示フレームワークに沿ったシナリオ分析と戦略、指標と目標について紹介します。

①ガバナンスおよびリスク管理

東洋製罐グループは、グループ全体の環境活動を統括するグループサステナビリティ委員会を設置しており、同委員会はグループリスク・コンプライアンス委員会とともに重要委員会の1つとして位置づけられています。

グループサステナビリティ委員会は、委員長である当社社長および当社常勤取締役、機能統轄責任者、綜合研究所長、主要グループ会社の社長によって構成され、原則として年1回開催されます。本委員会では、サステナビリティ活動に関する計画策定および進捗状況の確認など、サステナビリティ経営推進に関する事項についての協議を行い、目標・計画に対する進捗管理および社会的・国際的情勢や法規制の動向、外部環境の変化を踏まえた見直し、新規施策の検討を実施しています。

グループサステナビリティ委員会で協議された気候変動に関わる重要な環境リスクについては、グループリスク・コンプライアンス委員会に報告されます。そして、協議された事項に関しては必要に応じて経営戦略会議、経営執行会議に報告され、事業戦略に反映されます。なお、グループサステナビリティ委員会の活動内容は、委員会後遅滞なく取締役会に報告され、監督を受ける体制となっています。

また、2021年度より当社取締役(社外取締役を除く)を対象とする業績連動型株式報酬制度を導入しました。株式報酬額の算出基準の一部に、サステナビリティ活動目標の進捗をはじめとしたESG活動の取り組み状況等を総合的に勘案して決定するサステナブル指標を用いており、気候変動を含むサステナビリティへの対応をさらに強化していきます。

②戦略

a.気候変動シナリオの選択

IEA(国際エネルギー機関)が公表している気候変動シナリオを参照し、1.5℃および2℃、4℃の各シナリオを選択しました。気候変動の影響は中長期の期間をかけて顕在化する性質のものであるとの認識により、2030年を時間軸として気候変動の影響を分析しています。

b.シナリオ分析のプロセス

(ⅰ)重要リスク・機会の特定

・当社事業におけるリスクと機会の情報を収集

・政策や市場などの観点から、自社で発生し得る脱炭素社会への移行にともなうリスク・機会と気候変動に起因する物理的リスク・機会を特定

・特定したリスクと機会が自社事業に与える影響を考察し、特に大きな影響を与えうる重要リスク・機会を絞り込み

(ⅱ)将来予測データの収集

・重要リスク・機会に関する信頼度の高い外部の将来予測データを収集

・将来予測データをシナリオごとに整理し、将来起こりうる世界観について社内関係者と検討

(ⅲ)事業影響の試算

・収集した将来予測データと自社内の数値を用い、重要度の高いリスクと機会によってもたらされる事業インパクトをシナリオごとに定量評価

(ⅳ)対応策の検討

・事業影響の特に大きい気候変動リスク・機会への対応方法を検討

・必要に応じ、追加取り組みの推進体制を整備

c.シナリオ分析結果

当社グループの国内における包装容器事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業について、主な気候変動リスク・機会を外部情報に基づいて整理し、それぞれのリスク・機会に関する将来予測データを収集しました。これに基づき、脱炭素社会への移行にともなうリスク・機会と気候変動に起因する物理的リスク・機会を検討し、当社グループ事業に2030年までに影響を与えうる重要なリスクと機会を特定しています。

分析の結果、気候変動政策が導入される1.5℃および2℃シナリオにおいて、温室効果ガス(以下、「GHG(Green House Gas)」)排出への炭素税賦課により操業コストが上昇するリスクなどを特定しました。

一方で、「Eco Action Plan 2030」で設定したGHG排出量削減などの目標を達成することで、気候変動の影響を一定程度軽減できることも確認しました。また、気候変動にともなう機会として、鋼板関連事業領域におけるEV・PHEV用途の電池部材に関する需要増加が大きく貢献する可能性があることを確認しました。

当社は、気候変動のリスク低減と機会拡大を積極的に経営判断に取り込むための対応策として、2022年度よりインターナルカーボンプライシング制度(ICP)を導入しました。設備投資にともなうCO2排出量に対して社内炭素価格を基に費用換算し、当社グループが投資判断を行う際の参考にするなど、気候変動への対応を意識した事業運営の強化に取り組んでいきます。

今後は、シナリオ分析の対象範囲を拡大し、海外も含めたエンジニアリング事業等の影響評価を行うことで、グループの全事業領域に関するシナリオ分析を完了する予定です。

d.シナリオ分析結果一覧

シナリオ分析結果一覧の詳細につきましては、当社ホームページをご参照ください。

気候変動への取り組み(TCFD提言への対応)

(URL:https://www.tskg-hd.com/csr/environment/climate_change/)

 

③指標及び目標

当社グループは、2050年までの長期目標として、CO2排出量を大幅に削減し、カーボンニュートラルの実現を目指しており、「Eco Action Plan 2030」において、2030年でのCO2排出量の削減目標を以下のとおり定めています。これらの目標は、国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)の新基準「1.5℃目標」の認定を取得しています。

Eco Action Plan 2030主要目標

脱炭素社会

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて

事業活動でのCO2排出量 (Scope1・2)50%削減 ※2019年度比

サプライチェーンでのCO2排出量 (Scope3)30%削減 ※2019年度比

資源循環社会

枯渇性資源の使用量30%削減 ※2013年度比

プラスチック製品の化石資源の使用量40%削減 ※2013年度比

自然共生社会

事業活動での水使用量30%削減 ※2013年度比

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事業活動でのCO2排出量の推移(Scope1、2)

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(4) 人的資本

 ①戦略

イ.人材育成方針

(グループの経営戦略・組織戦略)

当社グループは、「既存事業領域を維持しながら、グループのリソースを最大限活用して新規事業領域での収益を拡大すること」を経営戦略の基本としています。この戦略を実現するため、2013年にホールディングス体制に移行し、戦略部門の設置と拡充、オペレーション業務の集約・統合、ガバナンス体制の構築を行ってきました。2021年にはグループ長期経営ビジョンを策定し、社員への浸透活動を進めています。

(求める人材像)

上記の経営戦略・組織戦略を実現するために必要となる人材像は、以下の3つに大別されます。

a.既存事業のオペレーションを高いレベルで(品質・コスト・納期+ESGの視点で)維持・継続できる人材

b.既存事業のオペレーションを熟知しつつ、グループ全体最適の視点で新たな仕組みを構築できる人材

c.グループのリソースを活用して新たな製品・技術・事業を生み出せる人材

aの人材を確保したうえで、b・cの人材(”グループ人材”)をいかに増やすかが課題です。

(人事戦略)

上記の人材を育成するための人事戦略を以下のように整理しています。

a.グループ人事ポリシーに基づく人材マネジメントを推進することにより、働きがい(エンゲージメント)と生産性の向上を図る

b.製造部門の人材確保のための環境整備

c.主要なグループ会社の大卒定期採用について、グループ一括採用を継続し、採用競争力の強化とグループ意識の向上を図る

d.会社の枠を超えた協働、人材交流によりグループ意識の向上と新たな視点の醸成を促進する

e.多様な知見を持つ人材をキャリア採用で積極的に獲得する

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(KPI)

人事戦略実現のためのKPIを以下のように整理しています。

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「エンゲージメント」、「総合健康リスク」、「成長できる職場」のスコアは、株式会社保健同人フロンティアが提供する「HoPEサーベイ」を使って測定しています。「エンゲージメント」は、「組織への愛着」「役割の遂行(意思・意欲)」「仕事に対する向上心」の3つの観点から測定しています。

グループ各社の「1人あたりEBITDA」と「エンゲージメント」等の多くのKPIの間には相関関係が見られることから、グループ人事ポリシーに基づく取り組みを継続し、それぞれのKPIを改善することで、KGIである「1人あたりEBITDA」の改善につなげていく方針です。

特に重要性の高い課題は以下の4点です。

a.製造部門のエンゲージメント向上

グループ長期経営ビジョンを設定している2050年に向けて、国内の18歳人口が大きく減少する一方で、大学等への進学率が上昇するため、高校を卒業して社会人として働き始める若者の人数が現在よりも大幅に減少すると見込まれます。そうした状況下でグループの事業を継続するためには、製造部門で働く社員のエンゲージメント向上による離職率低減と採用競争力強化が重要です。エンゲージメントは長時間労働や身体負担との相関関係が強いことから、交替シフトの見直しを含めた長時間労働の解消や、省力化投資による身体負担の軽減に取り組みます。

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b.30代社員のエンゲージメント向上

社員のエンゲージメントを年代別に分析すると、30代が他の年代に比べて低い傾向にあります。20代に比べ、心理的な仕事の負担(量)が増える一方で、上司・同僚による支援が減少し、成長実感が下がることが大きな要因と考えられます。対策として、30代社員と上司を対象としたキャリア研修を実施し、会社および上司によるキャリア形成支援を充実させるべく検討を進めています。グループ内の公募制やキャリア自己申告の拡充も検討中です。

c.女性管理職比率向上&男女賃金格差の解消

当社の女性管理職比率は6.9%ですが、主要なグループ会社11社の女性管理職比率は過去の取り組みの差もあり、0.8~12.5%となっており、当社を含めたグループ12社の平均では3.5%となっています。(2030年度の目標値:当社14%、グループ12社平均6%)

同様に、当社の男女賃金格差は99.4%ですが、主要なグループ会社13社の男女賃金格差は55.9~96.1%となっており、当社を含めたグループ14社平均では66.9%となっています。(2030年度の目標値:グループ14社平均80%)

正社員の賃金項目別男女賃金格差を見ると、基本給の格差は管理職、非管理職ともに91~92%ですが、家族・住宅手当や時間外・交替手当の格差が大きいため、賃金項目合計の格差が広がっています。また、女性管理職比率が低いため、管理職・非管理職別に見た男女賃金格差よりも、正社員合計の格差が広がっています。

今後の改善に向け、家族・住宅手当の支給要件の見直しや、男性社員の長時間労働是正、女性正社員の採用増・定着率向上と上位役職・等級への登用(内部昇進者のキャリア開発拡充と、役職者の中途採用)による男女賃金格差の解消を継続的に進めていく方針です。

 

正社員の賃金項目別男女賃金格差(主要なグループ会社14社計)

 

基本給

家族・住宅手当

時間外・交替手当

賃金項目合計

管理職

92.1%

27.2%

3.5%

90.4%

非管理職

91.1%

32.5%

44.6%

78.7%

正社員合計

82.1%

33.0%

51.2%

75.0%

(注)1.2023年3月給与(単月)で集計した数字です。

2.基本給は、役割給・職能給・年齢給・資格給・役職手当・役付手当・資格手当・勤務手当等を指します。

3.家族・住宅手当は、家族(扶養)手当・住宅手当・単身赴任手当・都市手当・寒冷地(燃料)手当等を指します。

4.時間外・交替手当は、早出残業手当・深夜時間手当・休日出勤手当・60H超手当・夜勤手当・遅出手当・交替勤務手当・時差勤務手当等を指します。管理職の時間外・交替手当は、深夜時間手当を指します。

 

d.グループ意識およびグループ内人材流動化比率の向上

グループの経営戦略実現には、社員のグループ意識を高め、人材流動化を進めることが必要です。このような趣旨から、KPIに、「グループの理念・ビジョンの浸透度」、「中核人材のグループ他社経験比率」を設定しています。中核人材は、主要なグループ会社において選抜された将来のリーダー候補を指します。2021年に策定したグループ長期経営ビジョンの浸透を図るとともに、グループ横断の職種別要員計画等を整備することにより、人材流動化比率を高めていきます。

 

ロ.社内環境整備方針

当社グループは、2018年にグループ人事ポリシーを策定し、「次世代経営人材育成研修」(部長層対象)および「TSGBC(東洋製罐グループビジネスカレッジ)」(課長層対象)の実施、人事制度の共通化、ITインフラ(タレントマネジメントシステム、ストレスチェックシステム等)の整備を進めてきました。2021年入社からは、優秀な人材の確保と、グループを牽引するリーダーの育成を目的として、主要なグループ会社の大卒定期採用を、グループ一括採用に切り替えています。

今後は人材育成方針に則り、交替シフトの見直しや省力化投資、年代別キャリア研修の実施、公募制やキャリア自己申告の拡充、家族・住宅手当の支給要件見直し、職種別要員計画の作成等を進めていきます。

 

 ②指標及び目標

指標

対象会社

目標値

(2025年度)

実績値

(2022年度)

1人あたりEBITDA(注)1

連結会社

550万円以上

302万円

エンゲージメント(注)2

 

提出会社

56.7以上

54.7

グループ7社

52.7以上

50.7

グループの理念・ビジョン浸透度(注)3

 

提出会社

80%以上

グループ7社

80%以上

総合健康リスク(注)2

 

提出会社

83以下

86

グループ7社

100以下

103

成長できる職場(注)2

 

提出会社

56.9以上

55.9

グループ7社

52.9以上

51.9

中核人材のグループ他社経験比率

グループ7社

60%以上

54.6%

時間外45H超過者数(注)4

 

提出会社

0人

3.3人

グループ7社

2.7人

5.4人

(注)1.連結EBITDAを連結従業員数で除して計算しています。

2.(株)保健同人フロンティアが提供する「HoPEサーベイ」を使って測定しています。また、「成長できる職場」は社員が自身のキャリアアップと成長がイメージでき、自律的・主体的に関わることができる職場か否かを測定する指標です。

3.当社グループの理念・ビジョン浸透度を「理解している」「ある程度理解している」と回答した社員の割合です。2023年度の実績から開示を予定しています。

4.2022年4月~2023年3月の期間における100人・月当たりの平均発生人数を、管理職を除いて算出しています。

5.グループ7社は、当社を含む主要なグループ会社7社(当社、東洋製罐(株)、東洋鋼鈑(株)、東罐興業(株)、日本クロージャー(株)、メビウスパッケージング(株)、東洋ガラス(株))を指します。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況および経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社およびグループ各社は、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるさまざまなリスクの発生を未然に防止し、当社およびグループ各社の経営基盤の安定化を図るとともに、危機が発生した場合に事業活動を早期に復旧し、継続させるために策定した「グループリスク及び危機管理規程」に基づき、リスクマネジメント体制の強化を推進しております。当社は、グループのリスク管理および危機管理ならびにコンプライアンスを横断的に統括するグループリスク・コンプライアンス委員会を設置しており、同委員会は、重要リスクに関する情報の確認、改善および予防措置を講じております。当社およびグループ各社では、それぞれの管理体制のもとで危機管理規程や危機対応マニュアル等の策定、リスク管理状況のとりまとめなどを行っております。また、当社は、リスク・危機管理を統括する専門部門として「リスク危機管理統括室」を設置しており、グループとしての確固たるリスク・危機管理体制の構築を進めております。

なお、以下のリスクが顕在化する可能性の程度や時期、リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

(1)天候・自然災害・事故・感染症リスク

当社グループの主力事業である飲料容器事業においては、その事業の性質上、需要期の天候が業績に重大な影響を及ぼします。飲料容器の需要がピークを迎える上半期において、冷夏や長梅雨などの予想しにくい気象状況の変動や、予期せぬ自然災害の発生等に起因する需要の減少が、当社グループの業績および財務状況に大きな影響を与えることになります。

また、地震や台風などの大規模な自然災害や事故が発生し、当社グループの生産設備等に甚大な被害を与えた場合や、感染症の蔓延などにより当社グループの生産活動やステークホルダーの行動が制限された場合に、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。

当社グループでは、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるさまざまな自然災害・事故リスク等の発生時に被害を最小限に抑えるため、設備対応、調達先の分散、生産拠点におけるバックアップ体制の構築、適正在庫の確保などの対応をとっております。また、新型コロナウイルス感染症をはじめとした感染症リスクについては、従業員の健康を守りながら当社グループの事業活動の確保に万全を期すため、公衆衛生面を中心に一定水準の感染防止対策を行うとともに、グループ横断的に感染症に関する情報伝達が可能なデータベースを構築し、感染症拡大時にはグループ全体で感染症リスク低減のための対策を行う体制を整えております。

(2)コンプライアンスリスク

企業の社会的責任が近年ますます重要視されるなか、企業活動における遵法精神を徹底させるとともに、経営上のリスクを回避しながら経営資源を効率的かつ適正に運用していくことで業績を向上させていくことが求められております。

当社グループにおいてもこうした状況を踏まえ、コンプライアンス体制の強化は最も重要な経営課題と認識し、その実現に向けてグループを挙げて努力しております。しかしながら、リスク管理体制の不備により企業の社会的責任を問われる事態が生じる可能性が全く無いとは言い切れず、そのような事態が生じた場合はレピュテーションリスクが高まり、当社グループの信用もしくは評価が大きく毀損され、当社グループの継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれがあります。当社グループでは、コンプライアンス体制強化のため、以下の施策に取り組んでおります。

・当社グループが遵守・実践すべき枠組みを示す「グループ企業行動憲章」および「グループ企業行動規準」を制定し、役員および従業員に対して周知・教育を実施

(ご参考)「グループ企業行動憲章」および「グループ企業行動規準」

(URL:https://www.tskg-hd.com/group/policy/code/)

・人権尊重の取り組みを推進し、その責務を果たしていく指針として、国際連合が定める「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく、「東洋製罐グループ人権方針」を制定し、役員および従業員に対して周知を実施

(ご参考)「東洋製罐グループ人権方針」(URL:https://www.tskg-hd.com/csr/social/human_rights/)

・内部通報制度である東洋製罐グループコンプライアンス相談窓口を設置し、ポスター掲示、携帯カード配布等により従業員に対して周知

・グループ全体のコンプライアンスに関する取り組みを統括するグループリスク・コンプライアンス委員会を設置し、同委員会のもと、役員および従業員に対して教育研修を実施

・コンプライアンスに対する意識や行動について再認識するための期間として、毎年10月をグループコンプライアンス推進月間と定め、啓発活動を実施

・社内外のコンプライアンスに関する情報を取りまとめた「コンプライアンス通信」の定期的な発行のほか、電子メールやデータベースを活用した情報の発信・周知を実施

このほか、リスクが顕在化した場合に当社グループの継続的な事業活動に対する影響が特に大きいと想定される独占禁止法に関わる事項については、グループ会社の新任社長に対する法令遵守の注意喚起、定期的な規程等遵守状況の調査・確認や階層別教育研修の実施等により、コンプライアンス体制の一層の強化と発生防止の徹底を図っております。また、腐敗防止法に関わる事項については、規程等の見直しおよび周知、遵守体制整備状況再確認、教育研修の実施等により、発生防止に努めております。

(3)事業・経営リスク

①経済状況の変化

世界経済および日本経済における景気の後退あるいは停滞、少子高齢化の進行による人口減少や、それらにともなう個人消費の低迷および為替の変動は、売上高や利益の減少につながる懸念があります。

②原材料・エネルギー価格の変動

当社グループが製造販売する製品は、原価に占める原材料・エネルギー費用の割合が大きく、為替変動の影響によるものも含め、その価格変動が当社グループの業績および収益性に影響を及ぼします。

当社グループでは、金属製品やプラスチック製品を中心に、原材料価格に連動した売価設定を行う仕組みの導入を進めており、原材料価格の変動リスクの低減に努めておりますが、その達成状況および進捗の度合いによっては、当社グループの収益性が低下する懸念があります。

③原材料の調達

当社グループが調達している原材料は、輸入品はもとより、国内で調達している原材料にも海外由来の粗原料が利用されております。国際情勢の悪化や世界各地のサプライチェーンにおける自然災害・設備トラブル等にともなう国際物流の混乱などにより、原材料の調達が困難になった場合、当社グループの業績および収益性に影響を及ぼします。人びとの生活に欠かせない製品・サービスを安定的に提供するため、日頃より原材料の購入先の情報を幅広く収集し、複数社購買の推進など、安定調達の実現に努めております。

④価格競争の激化

当社グループが主として事業を展開する容器市場においては、競合他社との価格競争激化およびお得意先各社における容器の自社製造の拡大が続いており、当社グループの価格交渉力の低下や製品価格の下落傾向を強める懸念があります。

当社グループは、消費者やお得意先などのニーズの変化を的確に捉え、あらゆる素材を取り扱う当社のシーズをもとに開発した多岐にわたる斬新で革新的な製品・サービスをもって、競合他社との差別化を図り、適正な利益水準を確保してまいります。

⑤研究開発

当社グループにとって、継続的かつ効果的な研究開発投資は不可欠なものである一方、その成果は不確実なものであり、多額の支出を行ったとしても必ずしも成果に結びつかないというリスクを抱えております。特に新製品・新技術などの研究開発投資が今後十分なリターンを生み出さない場合や、グループ各社に蓄積された研究開発データが当社グループ内で十分に共有されず、新製品・新技術などの研究開発に活かされない場合には、当社グループの将来の成長性および収益性を低下させる懸念があります。

当社グループは多様化する市場ニーズに対応するため、当社綜合研究所、東洋製罐株式会社テクニカルセンターおよび東洋鋼鈑株式会社技術研究所などの研究部門により、次世代に向けた技術開発を目的として積極的に研究開発に取り組んでおります。また、グループ内での技術交流などにより、グループ各社に蓄積された研究開発データを最大限活用できるよう努めております。

⑥投融資(企業買収・資本参加・設備投資等)

当社グループは、事業基盤の強化および事業の拡大を目的として、企業買収や資本参加等を積極的に実施しているほか、さらなる企業価値向上のために、生産・販売・研究開発の各分野において積極的かつ効果的な投資を行っておりますが、期待する成果が十分に得られなかった場合、当社グループの業績および収益性に大きな影響を与える懸念があります。

投融資にかかるリスク管理として、当社は「投資管理委員会」を設置しており、投融資の意思決定の手続きと判断基準を明確にし、実行後の評価と評価に基づく案件の継続・撤退の基準を設定するなど、精査を行っております。また、同委員会において、投融資を行った案件について定期的にモニタリングを行っており、当初の期待どおりの効果が得られず、グループ全体の収益性に対してマイナスに寄与するとみなされる案件については撤退の判断を行い、将来の収益性の低下リスクを低減することとしております。

⑦取引先の信用リスク

当社グループの取引先の信用不安により、予期せぬ貸倒リスクが顕在化し、追加的な損失や引当金の計上が必要となる場合、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。

当社グループの販売先は比較的信用リスクが低い顧客が多いものの、信用リスクの高い顧客においては、商社を通じた取引形態あるいは債権回収期間の短縮を行うほか、新規顧客との取引を開始する前には十分な信用調査を行うなど、リスクの低減に努めております。

⑧人材確保と育成

当社グループの将来にわたる継続的な成長と発展には有能なリーダーの存在の有無が大きな影響を与えるため、優秀な人材の確保と育成は当社グループの発展には不可欠なファクターであり、優秀な人材を確保または育成できなかった場合には、当社グループの将来の成長に好ましくない影響を与える懸念があります。

優秀な人材の確保については、主要なグループ会社がそれぞれ行っていた大卒定期採用を、2021年4月入社よりグループ一括での採用に切り替え、グループとして優秀な人材の確保を目指すとともに、グループ事業の広がりの中でのキャリア形成を通じて、グループを牽引するリーダーの育成を図ります。これに加え、主要なグループ会社において、将来のリーダー候補を選抜し、研修と戦略的な配置の中で育成する中核人材マネジメントの仕組みを2017年度より導入しております。

さらに、人材の流動性を高め、会社や組織を超えた連携を進めることで、組織の硬直化を防ぎ風通しのよい組織風土を醸成し、新たな価値創造をし続ける企業風土づくりと人材育成に取り組んでおります。

⑨同意なき企業買収

当社は株式公開会社であるため、当社株式を公開買付けまたは市場取引等で大量に取得する者が現われる可能性があります。当社グループの企業価値および株主共同の利益を毀損することが明らかな同意なき企業買収が行われた場合、当社グループの業績、財務状況および経営に好ましくない影響を与える懸念があります。

当社は、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として、中期経営計画・資本収益性向上に向けた取り組みおよびコーポレート・ガバナンスの強化等の各施策を遂行しており、また、それらの取組みをIR・SR活動などで積極的に開示し、企業価値の向上を図ることで、同意なき企業買収リスクの低減に務めております。

当社は、同意なき企業買収が行われる場合、株主の皆様が当該大規模買付行為の是非を適切に判断する為に必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて取締役会の意見等を開示し、株主の皆様が検討する為に必要な時間と情報の確保に努めるなど、金融商品取引法、会社法その他関連法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。

⑩訴訟のリスク

当社グループが国内外で事業活動を遂行していくうえで、訴訟の対象となるリスクがあります。具体的には、契約上の債務不履行、製造する製品の欠陥にともなう製造物責任、役員および従業員との労働契約・関連法令にともなう責任および第三者の権利侵害などにより、損害賠償等の多大な費用を要する可能性があります。

当社グループでは、これらの訴訟リスクを低減するため、契約のひな型において当社グループが負担する法的責任の明確化、当社グループにおける各事業部門が法務部門等の専門部署および外部専門家と連携し、実際に訴訟を提起された場合の当社グループの業績および財務状況への影響を最小限化するほか、グループ包括賠償保険の付保等を行っております。

(4)情報セキュリティリスク

当社グループが保有する個人情報および業務上知り得た情報等の保護についてはさまざまな対策を講じておりますが、予期せぬ事態によりこれらの情報が流出する可能性が全く無いとは言い切れず、そのような事態が生じた場合、当社グループの信用もしくは評価が毀損され、業績等に影響を与える懸念があります。また、悪意をもった第三者によるサイバー攻撃等を受けた場合、当社グループが利用しているシステムの停止や誤作動のほか、不正利用や情報漏洩等のセキュリティ上の問題が発生し、事業活動を維持することが困難になる可能性があります。

当社グループでは、情報管理に関する各種規程類を策定し、定期的に役員および従業員への教育および啓発活動を実施しているほか、コンピュータシステムについては、情報を保護するための継続的なセキュリティ対策等を推進しております。また、当社は、情報管理体制の強化を目的として、グループの情報管理を横断的に統括する「グループ情報管理委員会」および当社の情報管理を統括する「情報管理委員会」を設置しております。

 

(5)財務・会計リスク

①減損会計

当社グループが保有する固定資産について、稼働率、収益性の低下等により減損損失を認識すべきであると判定した場合、相当程度の減損損失を計上することが予測され、当社グループの業績および財務、経営に好ましくない影響を与える懸念があります。

②退職給付債務

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、一般的には将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼします。今後、長期金利が低下した場合および年金資産の運用利回りの悪化が生じた場合には、当社グループの収益性、業績を悪化させることになります。

③繰延税金資産

当社グループでは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討して計上しておりますが、将来の課税所得が予測と異なり、繰延税金資産の修正が必要となる場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

④会計基準および税制等の変更

日本の会計基準は、国際的な基準との調和を図るべく改訂を重ねており、今後もこの方向で推移するものと予想されます。また、日本における国際財務報告基準の適用に向けた議論が進んでいます。このような状況のなか、将来における会計基準の変更は、当社グループの業績、財務状況および業務遂行に影響を与える可能性があります。また、日本および諸外国の税制等が改正される場合においても同様の可能性があります。

当社は、連結財務諸表等の適正性を確保するため、公益財団法人財務会計基準機構へ加入し、同機構が行う研修会などに参加し、継続的な情報収集活動を行うことで、会計基準等の内容を適切に把握し、その変更等について的確に対応できる体制を整備しております。

⑤保有資産の価格変動

当社グループの保有する土地や有価証券等の資産価値が下落することにより、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。

政策保有株式については、当社は、当社グループが成長し企業価値を高めていくために、事業活動における様々な取引関係の維持・強化を目的として保有する方針としております。保有の合理性を検証する方法につきましては、取締役会等において、保有にともなう便益やリスクが資本コストに見合っているか等を確認することとしており、検証の結果、保有意義が希薄と判断された銘柄については、縮減を図る方針としております。また、便益を定量的に把握しにくい銘柄については、保有目的等の定性的な情報も検証しております。

(6)製造・品質リスク

当社グループは厳格な品質管理基準に基づき多様な製品を製造・販売しておりますが、全ての製品について欠陥が皆無で、将来にわたり品質的なクレームや製造物責任が発生しないという保証はありません。こうした想定外の大規模な品質クレームや製造物責任によって多額のコスト負担の発生や当社グループの信用もしくは評価が毀損される懸念があります。

当社は、安全な製品やシステム・サービスの提供およびお客様・社会から信頼していただける企業グループとしての社会的行動の実践を図るべく、グループ各社の品質管理部門を統括する品質統括部を設置しており、グループ内における重大品質リスクの低減を推進しております。

(7)環境リスク

当社グループの製品の製造工程における環境負荷低減への取り組みが、製造コストを押し上げることや、当社グループの企業活動に起因する想定外の環境問題が発生することにより、多額のコスト負担の発生や当社グループの信用もしくは評価が大きく毀損される懸念があります。

昨今の全世界的な海洋プラスチックごみ問題を起点として、プラスチック製品の削減に関する世論が高まっております。当社グループにおいても、プラスチック製包装容器を製造・販売しており、連結売上高のおよそ5分の1を占めておりますが、今後の状況の変化によっては販売への影響が懸念され、ひいては、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。

当社グループでは、環境に関するリスクと機会の把握・見直しを定期的に行うことで、想定外の環境問題発生の低減に努めております。気候変動がもたらすリスクと機会が当社グループに与える影響についての検討を深めるため、2021年7月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同表明を行い、2022年5月にTCFD 提言に基づく情報開示を行いました。また、2023年3月には、シナリオ分析の対象事業を拡充し、分析結果の一部をアップデートしました。開示内容は当社ホームページよりご覧いただけます(URL:https://www.tskg-hd.com/csr/environment/climate_change/)。また、当社グループは、2030年を見据えた環境目標である「Eco Action Plan 2030」を2019年に策定し、中長期的な環境負荷削減に対するグループ全体での取り組みを遂行しており、2023年7月に、2030 年に向けて定めた温室効果ガス出量削減目標において、 SBT イニシアチブ※から「1.5℃目標」としての認定を取得いたしました。また、脱プラスチック問題に関しては、国のプラスチック資源循環戦略に則したプラスチック製包装容器の軽量化や代替素材への転換などの施策に取り組んでおります。

※ SBTイニシアチブ…企業のGHG(温室効果ガス)削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ

(8)カントリーリスク

当社グループは、2023年3月末現在、連結子会社72社のうち海外会社は33社、非連結子会社・関連会社・関連会社の子会社も含めるとグループ全体で94社のうち49社がアジアや欧米などにおいてグローバルな事業展開を行っております。海外子会社におけるガバナンス体制の不備や、各地域におけるテロの発生、政情の悪化、経済状況の変動、為替の変動および予期せぬ法律・規制の変更等があった場合、当社グループの業績等に影響を与える懸念があります。

当社グループは、進出している海外地域における非常事態発生時の危機対応については「グループ海外事業危機管理規程」に基づき判断しているほか、新たな海外事業進出にかかる意思決定段階および当該事業活動の推進段階においてカントリーリスクについて吟味し、推進可否を判断しております。

ウクライナ情勢等の影響につきましては、間接的には「(3)事業・経営リスク③原材料の調達」に記載のとおり、原材料の調達に影響を及ぼす可能性がありますが、直接的に当社グループの業績に与える影響はほぼないと見込んでおります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態および経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に弱まり、経済社会活動の正常化が進む中で、景気に持ち直しの動きがみられました。一方、先行きは、ウクライナ情勢の長期化、原材料・エネルギー価格や為替相場の急激な変動により、不透明な状況にあります。

このような環境下におきまして、当連結会計年度における当社グループの業績は、以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前期

当期

増減

増減率

売上高

821,565

906,025

84,460

10.3%

営業利益

34,114

7,396

△26,717

△78.3%

売上高営業利益率

4.2%

0.8%

△3.3%

経常利益

45,712

13,770

△31,941

△69.9%

特別利益

18,426

△18,426

特別損失

4,046

△4,046

親会社株主に帰属する当期純利益

44,422

10,363

△34,058

△76.7%

 

売上高は、夏場の猛暑の影響などにより、飲料缶や飲料用ペットボトルなどの包装容器の販売が増加したほか、車載用二次電池向け鋼板の販売が好調に推移したことに加え、海洋プラスチックごみ問題を背景としたプラスチック容器から他素材の容器へシフトする流れを受け、世界的に旺盛な飲料缶需要が継続したことにともない製缶・製蓋機械の販売が増加したことや、原材料価格等の高騰分の転嫁を行ったことなどにより、9,060億25百万円(前期比10.3%増)となりました。利益面では、原材料・エネルギー価格等の高騰に対して売価転嫁やコストダウンに努めたものの、営業利益は73億96百万円(前期比78.3%減)に留まりました。経常利益は、持分法投資利益の減少などにより、137億70百万円(前期比69.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は103億63百万円(前期比76.7%減)となりました。

各セグメントの営業の概況は次のとおりであります。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

報告セグメント等

売上高(外部顧客)

営業利益

前期

当期

増減

増減率

前期

当期

増減

増減率

包装容器事業

500,395

544,401

44,006

8.8%

11,282

△10,765

△22,047

エンジニアリング・充填・物流事業

167,113

198,373

31,260

18.7%

9,927

8,768

△1,159

△11.7%

鋼板関連事業

75,077

86,512

11,434

15.2%

2,680

4,653

1,972

73.6%

機能材料関連事業

48,594

45,729

△2,865

△5.9%

5,378

2,025

△3,353

△62.3%

不動産関連事業

7,976

7,734

△242

△3.0%

4,742

4,276

△465

△9.8%

その他

22,408

23,274

865

3.9%

1,890

482

△1,408

△74.5%

調整額

△1,787

△2,044

△256

合計

821,565

906,025

84,460

10.3%

34,114

7,396

△26,717

△78.3%

 

〔包装容器事業〕

売上高は5,444億1百万円(前期比8.8%増)となり、営業損失は107億65百万円(前期は112億82百万円の営業利益)となりました。

a)金属製品の製造販売

国内において、ビール向けの空缶でお得意先の製品リニューアルがあったことや炭酸飲料向けの空缶で新規受注があったことに加え、タイにおいて、ビールや健康飲料向けの空缶が増加したほか、国内・海外において原材料価格等の高騰分の転嫁を行ったことなどにより、売上高は前期を上回りました。

b)プラスチック製品の製造販売

食品や洗剤向けなどの一般プラスチックボトルは前期並となりましたが、お茶類向けなどのペットボトル・キャップが、お得意先における販売促進キャンペーンや夏場の猛暑の影響により増加したことに加え、米飯向けのトレー・カレー向けのパウチやコーヒーショップ向けのコップが伸長したほか、原材料価格等の高騰分の転嫁を行ったことにより、売上高は前期を上回りました。

c)紙製品の製造販売

新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的とした行動制限が緩和されたことにより、イベント・レジャー向けやコーヒーショップ向けのコップなどが増加したほか、原材料価格等の高騰分の転嫁を行ったことにより、売上高は前期を上回りました。

d)ガラス製品の製造販売

新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的とした行動制限が緩和されたことにより、飲食店向けで清酒用のびん製品やジョッキなどのハウスウエア製品が増加したほか、原材料価格等の高騰分の転嫁を行ったことにより、売上高は前期を上回りました。

〔エンジニアリング・充填・物流事業〕

売上高は1,983億73百万円(前期比18.7%増)となり、営業利益は87億68百万円(前期比11.7%減)となりました。

a)エンジニアリング事業

海洋プラスチックごみ問題を背景とした、プラスチック容器から他素材の容器へシフトする流れを受け、世界的に旺盛な飲料缶需要が継続したことにともない、海外向けの製缶・製蓋機械の販売が好調に推移したことに加え、為替の影響により、売上高は前期を大幅に上回りました。

b)充填事業

国内において、飲料製品の受託充填事業を営むTOYO PACK KIYAMA株式会社を当連結会計年度より連結子会社に追加したほか、タイにおいて、果汁飲料の充填品が増加したことにより、売上高は前期を上回りました。

c)物流事業

貨物自動車運送業および倉庫業などの売上高は、前期を下回りました。

〔鋼板関連事業〕

売上高は865億12百万円(前期比15.2%増)となり、営業利益は46億53百万円(前期比73.6%増)となりました。

鋼板関連事業の売上高は、販売数量が減少しましたが、原材料価格等の高騰分の転嫁を行ったほか、為替の影響により前期を上回りました。

電気・電子部品向けでは、車載用二次電池材が増加しました。

自動車・産業機械部品向けでは、駆動系部品材が減少しました。

建築・家電向けでは、バスルーム向け内装材が増加しました。

〔機能材料関連事業〕

売上高は457億29百万円(前期比5.9%減)となり、営業利益は20億25百万円(前期比62.3%減)となりました。

磁気ディスク用アルミ基板では、データセンター向けのハードディスク用途で販売数量が減少したことにより、売上高は前期を下回りました。

光学用機能フィルムでは、フラットパネルディスプレイの市況悪化の影響を受け、売上高は前期を下回りました。

その他、顔料が増加しました。

〔不動産関連事業〕

オフィスビルおよび商業施設等の賃貸につきましては、売上高は77億34百万円(前期比3.0%減)となり、営業利益は42億76百万円(前期比9.8%減)となりました。

 

〔その他〕

自動車用プレス金型・機械器具・硬質合金および農業用資材製品などの製造販売、石油製品などの販売および損害
保険代理業などにつきましては、売上高は232億74百万円(前期比3.9%増)となり、営業利益は4億82百万円(前期比74.5%減)となりました。

所在地別セグメントの業績は、次のとおりであります。

日本では、売上高は6,994億16百万円(前期比6.3%増)、営業損失は64億82百万円(前期は182億40百万円の営業利益)となりました。

アジア(タイ、中国、マレーシアなど)では、売上高は738億80百万円(前期比20.9%増)、営業利益は57億16百万円(前期比29.8%減)となりました。

その他(米国など)では、売上高は1,327億29百万円(前期比29.2%増)、営業利益は78億76百万円(前期比3.5%増)となりました。

資産、負債および純資産の状況は次のとおりであります。

当連結会計年度末の総資産は、1兆1,652億16百万円となりました。売上債権や棚卸資産の増加などにより前連結会計年度末に比べ829億34百万円の増加となりました。

当連結会計年度末の負債は、4,938億78百万円となりました。借入金や仕入債務の増加などにより前連結会計年度末に比べ758億87百万円の増加となりました。

当連結会計年度末の純資産は、6,713億38百万円となりました。配当金の支払いなどにより減少しましたが、円安影響による為替換算調整勘定の増加などにより前連結会計年度末に比べ70億46百万円の増加となりました。

以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の58.9%から55.2%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて258億73百万円減少し、946億3百万円(前期比21.5%減)となりました。

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

税金等調整前当期純利益が137億70百万円、減価償却費529億35百万円、売上債権の増加による資金の減少259億96百万円、棚卸資産の増加による資金の減少340億59百万円、法人税等の支払額204億68百万円などにより、当連結会計年度における営業活動による資金の減少は188億61百万円(前期は754億15百万円の増加)となりました。

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

包装容器事業での設備投資を中心とした有形固定資産の取得による支出が632億17百万円あったことなどにより、当連結会計年度における投資活動による資金の減少は570億38百万円(前期比110.0%増)となりました。

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

短期借入金の借入による収入(純額)が156億8百万円、長期借入れによる収入が801億0百万円、長期借入金の返済による支出が327億11百万円、配当金の支払いが198億31百万円あったことなどにより、当連結会計年度における財務活動による資金の増加は415億28百万円(前期は421億86百万円の減少)となりました。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

包装容器事業

531,013

109.8

エンジニアリング・充填・物流事業

191,901

176.4

鋼板関連事業

85,382

118.1

機能材料関連事業

44,147

95.7

報告セグメント計

852,445

120.0

その他

18,497

94.4

合計

870,943

119.3

 (注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.不動産関連事業は、生産形態をとらない事業活動のため記載しておりません。

 

b)受注実績

エンジニアリング・充填・物流事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業およびその他のうち、受注生産によるものについての当連結会計年度における受注状況は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高

(百万円)

前期比(%)

エンジニアリング・充填・物流事業

88,129

54.3

130,858

87.3

鋼板関連事業

81,689

107.1

16,147

99.0

機能材料関連事業

29,259

82.8

1,782

55.8

その他

15,661

81.5

9,215

83.4

合計

214,739

73.2

158,004

87.5

 (注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.エンジニアリング・充填・物流事業の金額は、包装容器関連設備の製造販売の一部に係るものであります。

3.包装容器事業は、事業の形態から受注実績と販売実績がほぼ同様のため記載しておりません。

4.不動産関連事業は、受注形態をとらない事業活動のため記載しておりません。

 

 

c)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

包装容器事業

544,401

108.8

エンジニアリング・充填・物流事業

198,373

118.7

鋼板関連事業

86,512

115.2

機能材料関連事業

45,729

94.1

不動産関連事業

7,734

97.0

報告セグメント計

882,751

110.5

その他

23,274

103.9

合計

906,025

110.3

 (注)販売高には、他からの購入品の販売が含まれており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績及びセグメントごとの財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 また、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標、達成状況については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおりであります。

 

②資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ⅰ)主要な資金需要および財源

翌連結会計年度の当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用ならびに当社グループの設備新設、改修等にかかる投資であります。

また、成長市場に向けた国内・海外事業への投資および事業構造改革投資をM&Aなどの形態と組み合わせて行うことを検討しております。

これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローおよび自己資金のほか、金融機関からの借入および社債発行等による資金調達を主な財源として対応いたします。

安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題として認識しており、主要な取引先金融機関に対して適時適切な情報開示を行うことにより、良好な取引関係を維持しております。

加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しております。

 

ⅱ)資金の流動性

手許の運転資金につきましては、当社および一部を除く国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。現在、手許キャッシュは、突発的な資金需要に対応するため売上高の1ヵ月から2ヵ月分の水準を保持しており、今後もこの水準で運営していく予定です。さらに、これを上回る突発的な資金需要に対しては、迅速かつ確実に資金を調達できるように金融機関とコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクに備えております。

 

当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。

 

③重要な会計方針の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。

6【研究開発活動】

当社グループは多様化する市場ニーズに対応するため、当社綜合研究所、東洋製罐株式会社テクニカルセンターおよび東洋鋼鈑株式会社技術研究所などの研究部門により、次世代に向けた技術開発を目的として積極的に研究開発に取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発費の総額は16,024百万円であります。

各セグメントの研究開発活動の概要は次のとおりであります。

[包装容器事業]

当連結会計年度における包装容器事業の研究開発費は11,525百万円であります。

①金属製品の製造販売分野における主要な研究課題

環境対応

・環境対応とコストダウンを両立させる諸材料への変更

・環境配慮型容器であるTULCの新成形方式の開発およびさらなる軽量化

・飲料缶(DI缶)の環境に配慮した成形加工システムの実用化

・海洋プラスチック問題の解決の一助となる金属容器への置き換え

・内容物の保存性をより高めつつ環境に配慮した缶用水性塗料の実用化

意匠・性能向上

・飲料缶(TULC、DI缶)の意匠性をさらに高めるための形状および印刷技術の開発

・飲料缶(TULC)における内容物の適用拡大および実用化

・開けやすさを向上させた缶蓋の実用化

・リチウムイオン二次電池向け外装材などの新たな用途展開に向けた成形加工技術の開発

生産性向上

・次世代飲料缶生産システムの確立

②プラスチック製品の製造販売分野における主要な研究課題

環境対応

・リサイクル材活用技術の開発

・飲料用軽量ペットボトル・キャップの実用化

・減容化および廃棄性の向上により環境負荷を低減した新形状ボトルの実用化

・飲料用ペットボトル向けキャップへのバイオマス材料使用比率の向上

・フードロスに配慮し内容物の滑落性を向上させたポリオレフィンボトルの実用化

・パウチ用ラミネート材料の無溶剤システムの実用化

・ユーザビリティーと環境に配慮したパウチの開発および実用化

意匠・性能向上

・容器製造から充填殺菌までを一貫して行う生産システムの実用化

・飲料用ペットボトルのガスバリア性向上技術の開発

・持ちやすさや携帯性・開閉性を高めた新形状ボトル・キャップの実用化

・ポリオレフィンボトルやパウチにおける加飾技術の実用化に関する研究

・酸素吸収性能を付与し内容物の保存性を高めたポリオレフィンボトルの実用化

・容器内の酸素吸収性能と外部酸素遮断技術を付与したカップの実用化と密封検査技術の開発

・詰替機能を向上させたパウチの実用化

・レトルト可能な再封機能付きパウチの開発および実用化

・電子レンジ加熱に適した自動蒸気抜き機能付きパウチ・カップの開発および実用化

・酸素吸収性接着剤を適用した透明酸素吸収フィルムの実用化

③紙製品の製造販売分野における主要な研究課題

環境対応

・海洋プラスチック問題の解決の一助となる紙容器や紙蓋の開発

・ヒートシールコート剤を用いて樹脂使用量を削減した紙容器の開発

④ガラス製品の製造販売分野における主要な研究課題

環境対応

・CO2削減を目的とした材料研究および用途開発、燃焼システムの開発

意匠・性能向上

・ガラスびんのコーティングおよび加飾技術の開発

生産性向上

・ロボット・AIを活用した省力化、省人化に関する研究

・品質保証のための検査機の開発

[エンジニアリング・充填・物流事業]

当連結会計年度におけるエンジニアリング・充填・物流事業の研究開発費は2,058百万円であります。

①エンジニアリング事業における主要な研究課題

生産性向上

・生産効率向上や省人化・脱炭素を可能とする生産システムの開発

②充填事業における主要な研究課題

意匠・性能向上

・新たな用途展開を図るための充填・殺菌・密封検査技術の開発

・2種類の液体を同時に吐出可能としたエアゾールシステムの適用拡大

・ドローンにエアゾール製品を搭載し遠隔操作で内容物を吐出可能とするシステムの開発

③物流事業における主要な研究課題

該当事項はありません。

[鋼板関連事業]

当連結会計年度における鋼板関連事業の研究開発費は1,546百万円であります。

主要な研究課題

環境対応

・六価クロムフリーの樹脂化粧鋼板の開発および実用化

意匠・性能向上

・車載用二次電池材を中心とした電気・電子部品および自動車部品用に機能性を高めた表面処理鋼板の開発

[機能材料関連事業]

当連結会計年度における機能材料関連事業の研究開発費は876百万円であります。

主要な研究課題

環境対応

・磁気ディスク用アルミ基板の製造工程における環境負荷低減

意匠・性能向上

・ハードディスクの大容量化に対応可能な磁気ディスク用アルミ基板の開発

生産性向上

・光学用機能フィルムの生産性向上

[不動産関連事業]

該当事項はありません。

[その他]

当連結会計年度におけるその他の事業の研究開発費は17百万円であります。

主要な研究課題

環境対応

・生分解性原料を用いた農業用フィルムの開発

 

※TULC(Toyo Ultimate Can)…材料や製造プロセスを根本から見直し、生産性と環境保全性を飛躍的に高めた2ピース缶