第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、1917年の創業以来100年以上にわたり、金属・プラスチック・紙・ガラス等、それぞれが持つ特性を活かし、人々のライフスタイルや社会の変化に応じて、さまざまな素材の容器を世の中に送り出してまいりました。

当社グループは、2016年4月に制定した東洋製罐グループの経営思想のもと、次の100年に向けて、素材の開発と加工の技術を軸に、人々の暮らしをより豊かにし、環境にやさしいしくみを拡げ、さらなる発展と進化を目指しております。

〔東洋製罐グループの経営思想〕

経営理念

常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献します。

信条

・品格を重んじ、あらゆる事に日々公明正大に努めます。

・一人ひとりの力を最大限に発揮し、自己の成長と共に社会の繁栄に努めます。

ビジョン

・世界中の人に必要とされる斬新で革新的な技術と商品を提供するグループを目指します。

(2)目標とする経営指標

2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」では、最終年度である2025年度に、売上高8,500億円、営業利益500億円、EBITDA1,100億円、ROE5%の達成等を数値目標として掲げております。

(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題

当社グループは、創業以来100年以上にわたり、包装容器を中心として、人びとの生活に欠かせない製品・サービスを提供し、社会に貢献してまいりました。

現在、当社グループを取り巻く事業環境は想定を超えて変化し、解決すべき様々な社会課題が顕在化しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、人びとの生活様式も大きく変容しております。

このような事業環境下において、当社グループは、本年5月に、社会や地球環境について長期的な視点で考え、すべてのステークホルダーの皆様に提供する価値の最大化を図るべく、2050年を見据えた「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を策定し、その実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標である「中長期経営目標2030」を設定いたしました。当社グループは、「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランとして、2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」を策定いたしました。

概要は次のとおりです。

①長期経営ビジョン2050「未来をつつむ」

当社グループの目指す姿・ありたい姿を「世界中のあらゆる人びとを安心・安全・豊かさでつつむ『くらしのプラットフォーム』」と位置づけ、「多様性が受け入れられ、一人ひとりがより自分らしく生活できる社会の実現」「地球環境に負荷を与えずに、人々の幸せなくらしがずっと未来へ受け継がれる社会の実現」を目指します。

そのために「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の3つの分野で、グループが一体となって、これまで培ってきた素材開発、成形加工、エンジニアリング等の技術・ノウハウを活用し、オープンイノベーション、IoT・DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するとともに、お客様やお取引先等をはじめとした志を同じくするパートナーと連携し、包装容器メーカーの枠を超え、社会を変える新たな価値を創造してまいります。

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②中長期経営目標2030

「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」の実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標として設定した「中長期経営目標2030」の概要は次のとおりです。

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③中期経営計画2025

「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランである2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」(以下、「本中期経営計画」といいます。)の概要は次のとおりです。

【基本方針】

本中期経営計画では、“「くらしのプラットフォーム」へ向けた持続的な成長”を基本方針とし、「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」で掲げた目指す社会の実現に向け、3つの主要課題に取り組みます。

【3つの主要課題と施策】

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a)既存事業領域の持続的成長

「多様性への対応」と「持続可能な社会の実現」の2つの軸と持続的成長の観点から、これまでの事業構造にとらわれず、果断に事業ポートフォリオの見直しを行うことで、既存事業領域の持続的な成長を目指します。

b)新たな成長領域の探索・事業化・収益化

人びとのライフスタイルの変化や環境負荷の低減など、社会の多様なニーズや新たな課題を捉え、当社グループが培ってきた「素材開発」「成形加工」「エンジニアリング」などの保有技術をもとに、「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の領域において、新規事業を創出することで、新たな社会基盤を創造します。

c)成長を支える経営基盤の強化

持続的成長のための経営資源の充実とガバナンスの強化を行います。

ⅰ)技術・開発

パートナーとの共創や新技術の探索を通じ、事業創出のための研究開発を推進

ⅱ)IoT・DX

デジタル技術の活用を通じたバリューチェーンの変革と事業領域の拡大

ⅲ)人材

新たな価値創造につながる人材プラットフォームの整備

ⅳ)組織

社会からの信頼に応えるためのコーポレート・ガバナンスの強化

【持続的成長のためのロードマップ】

包装容器領域を基盤として、エンジニアリング・充填・物流領域におけるバリューチェーンの拡大と、鋼板関連事業・機能材料関連事業における光学用・電池向け部材等での成長を図るとともに、新規事業領域において社会課題解決の新しい仕組みを創出し、2030年度に売上高1兆円を目指します。

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④投資・財務方針

事業活動と資産圧縮で創出したキャッシュを原資として、将来の成長や基盤強化等の投資を実施いたします。

a)投資

「くらしのプラットフォーム」へ向け、3,300億円規模の投資(M&A含む)を実施

■環境負荷低減・環境価値拡大のための投資

■包装容器製造の枠を超えたバリューチェーン全体でのシステム構築

■注力すべき既存事業領域における基盤強化

■「食と健康」・「快適な生活」・「環境・資源・エネルギー」領域を中心とするビジネスパートナーやスタートアップ企業との共創を含めた事業創出と育成

■IoT・DXの推進、新技術開発、人材開発など

b)原資

・本中期経営計画期間において営業キャッシュ・フロー約3,800億円を創出

・政策保有株式を400億円規模売却し、成長分野への投資に活用

 

⑤株主還元方針

本中期経営計画期間中は、総還元性向80%を目安に株主還元を行います。

a)配当金

連結配当性向50%以上を目安とする

1株当たり46円を下限とし、段階的に引き上げる

b)自己株式取得

機動的に実施する

※資産売却等による特別損益は、原則として、連結配当性向および総還元性向を算定するうえでは考慮いたしません

当社グループを取り巻く事業環境は、より一層厳しさを増すことが想定されますが、本中期経営計画の諸施策を着実に遂行することで、持続的な成長を目指してまいります。

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況および経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社およびグループ各社は、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるさまざまなリスクの発生を未然に防止し、当社およびグループ各社の経営基盤の安定化を図るとともに、危機が発生した場合に事業活動を早期に復旧し、継続させるために策定した「グループリスク及び危機管理規程」に基づき、リスクマネジメント体制の強化を推進しております。当社は、グループのリスク管理および危機管理ならびにコンプライアンスを横断的に統括するグループリスク・コンプライアンス委員会を設置しており、同委員会は、重要リスクに関する情報の確認、改善および予防措置を講じております。当社およびグループ各社では、それぞれの管理体制のもとで危機管理規程や危機対応マニュアル等の策定、リスク管理状況のとりまとめなどを行っております。また、当社は、リスク・危機管理を統括する専門部門として「リスク危機管理統括室」を設置しており、グループとしての確固たるリスク・危機管理体制の構築を進めております。

なお、以下のリスクが顕在化する可能性の程度や時期、リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

(1)天候・自然災害・事故・感染症リスク

当社グループの主力事業である飲料容器事業においては、その事業の性質上、需要期の天候が業績に重大な影響を及ぼします。飲料容器の需要がピークを迎える上半期において、冷夏や長梅雨などの予想しにくい気象状況の変動や、予期せぬ自然災害の発生等に起因する需要の減少が、当社グループの業績および財務状況に大きな影響を与えることになります。

また、地震や台風などの大規模な自然災害や事故が発生し、当社グループの生産設備等に甚大な被害を与えた場合や、感染症の蔓延などにより当社グループの生産活動やステークホルダーの行動が制限された場合に、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響につきましては、イベント・レジャー・外食産業等のほか、オフィス周辺における消費の低迷による需要減の影響などが引き続き懸念されております。当社グループでは、当社およびグループ各社の役員等で構成される新型コロナウイルス危機対策会議をグループ横断的に適宜開催し、また、データベースを通して感染情報や政府の対応などを毎営業日共有することで、海外子会社を含む当社グループ全体を包括した対策を展開しております。従業員の健康を守りながら、社会機能維持として欠かせない飲料・食品・生活用品に携わる当社グループの事業活動に万全を期するため、同会議のもと、本社および営業所等において在宅勤務を推進したほか、各工場の操業においては感染防止策を徹底するなど、感染拡大の防止を図っております。

当社グループでは、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるさまざまな自然災害・事故リスク等の発生時に被害を最小限に抑えるため、設備対応、調達先の分散、生産拠点におけるバックアップ体制の構築、適正在庫の確保などの対応をとっております。

(2)コンプライアンスリスク

企業の社会的責任が近年ますます重要視されるなか、企業活動における遵法精神を徹底させるとともに、経営上のリスクを回避しながら経営資源を効率的かつ適正に運用していくことで業績を向上させていくことが求められております。

当社グループにおいてもこうした状況を踏まえ、コンプライアンス体制の強化は最も重要な経営課題と認識し、その実現に向けてグループを挙げて努力しております。しかしながら、リスク管理体制の不備により企業の社会的責任を問われる事態が生じる可能性が全く無いとは言い切れず、そのような事態が生じた場合は、当社グループの信用もしくは評価が大きく毀損され、当社グループの継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれがあります。当社グループでは、コンプライアンス体制強化のため、以下の施策に取り組んでおります。

・当社グループが遵守・実践すべき枠組みを示す「グループ企業行動憲章」および「グループ企業行動規準」を制定し、役員および従業員に対して周知・教育を実施

・内部通報制度である東洋製罐グループコンプライアンス相談窓口を設置(2020年4月17日に、消費者庁が所管する「内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)」の適合事業者として登録)

・グループ全体のコンプライアンスに関する取り組みを統括するグループリスク・コンプライアンス委員会を設置し、同委員会のもと、役員および従業員に対して教育研修を実施

・コンプライアンスに対する意識や行動について再認識するための期間として、毎年10月をグループコンプライアンス推進月間と定め、啓発活動を実施

・社内外のコンプライアンスに関する情報を取りまとめた「コンプライアンス通信」の定期的な発行のほか、電子メールやデータベースを活用した情報の発信・周知を実施

このほか、リスクが顕在化した場合に当社グループの継続的な事業活動に対する影響が特に大きいと想定される独占禁止法および腐敗防止関連法に関わる事項については、規程の制定や規程運用状況の確認結果を踏まえた継続的見直し、定期的な教育研修の実施等により、コンプライアンス体制の一層の強化と発生防止の徹底を図っております。

(3)事業・経営リスク

①経済状況の変化

世界経済および日本経済における景気の後退あるいは停滞、少子高齢化の進行による人口減少や、それらにともなう個人消費の低迷および為替の変動は、売上高や利益の減少につながる懸念があります。

②原材料・エネルギー価格の変動

当社グループが製造販売する製品は、原価に占める原材料・エネルギー費用の割合が大きく、その価格変動が、当社グループの業績および収益性に影響を及ぼします。

なお、当社グループは原材料価格が上昇した場合、製品価格への転嫁に努めておりますが、その達成状況および進捗の度合いによっては、当社グループの収益性が低下する懸念があります。

③価格競争の激化

当社グループが主として事業を展開する容器市場においては、競合他社との価格競争激化およびお得意先各社における容器の自社製造の拡大が続いており、当社グループの価格交渉力の低下や製品価格の下落傾向を強める懸念があります。

当社グループは、消費者やお得意先などのニーズの変化を的確に捉え、あらゆる素材を取り扱う当社のシーズをもとに開発した多岐にわたる斬新で革新的な製品・サービスをもって、競合他社との差別化を図り、価格競争力を強化してまいります。

④研究開発

技術立社を目指す当社グループにとって継続的かつ効果的な研究開発投資は不可欠なものである一方、その成果は不確実なものであり、多額の支出を行ったとしても必ずしも成果に結びつかないというリスクを抱えております。特に新製品・新技術などの研究開発投資が今後十分なリターンを生み出さない場合には、当社グループの将来の成長性および収益性を低下させる懸念があります。

⑤投融資(企業買収・資本参加・設備投資等)

当社グループは、事業基盤の強化および事業の拡大を目的として企業買収や資本参加等を積極的に実施しているほか、さらなる企業価値向上のために、生産・販売・研究開発の各分野において積極的かつ効果的な投資を行っておりますが、期待する成果が十分に得られなかった場合、当社グループの業績および収益性に大きな影響を与える懸念があります。

投融資にかかるリスク管理として、当社は「投資管理委員会」を設置しており、投融資の意思決定の手続きと判断基準を明確にし、実行後の評価と評価に基づく案件の継続・撤退の基準を設定するなど、精査を行っております。また、同委員会において、投融資を行った案件について定期的にモニタリングを行っており、当初の期待どおりの効果が得られず、グループ全体の収益性に対してマイナスに寄与するとみなされる案件については撤退の判断を行い、将来の収益性の低下リスクを低減することとしております。

 

⑥取引先の信用リスク

当社グループの取引先の信用不安により、予期せぬ貸倒リスクが顕在化し、追加的な損失や引当金の計上が必要となる場合、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。

当社グループの販売先は比較的信用リスクが低い顧客が多いものの、信用リスクの高い顧客においては、商社を通じた取引形態あるいは債権回収期間の短縮を行うほか、新規顧客との取引を開始する前には十分な信用調査を行うなど、リスクの低減に努めております。

⑦人材確保と育成

当社グループの将来にわたる継続的な成長と発展には有能なリーダーの存在の有無が大きな影響を与えるため、優秀な人材の確保と育成は当社グループの発展には不可欠なファクターであり、優秀な人材を確保または育成できなかった場合には、当社グループの将来の成長に好ましくない影響を与える懸念があります。

優秀な人材の確保については、主要なグループ会社がそれぞれ行っていた大卒定期採用を、2021年4月入社よりグループ一括での採用に切り替え、グループとして優秀な人材の確保を目指すとともに、グループ事業の広がりの中でのキャリア形成を通じて、グループを牽引するリーダーの育成を図ります。これに加え、主要なグループ会社において、将来のリーダー候補を選抜し、研修と戦略的な配置の中で育成する中核人材マネジメントの仕組みを2017年度より導入しております。

⑧敵対的企業買収

当社は株式公開会社であるため、当社株式を公開買付けまたは市場取引等で大量に取得する者が現われる可能性があります。当社グループの企業価値および株主共同の利益を毀損することが明らかな敵対的企業買収が行われた場合、当社グループの業績、財務状況および経営に好ましくない影響を与える懸念があります。

⑨訴訟のリスク

当社グループが国内外で事業活動を遂行していくうえで、訴訟の対象となるリスクがあります。具体的には、契約上の債務不履行、製造する製品の欠陥にともなう製造物責任、役員および従業員との労働契約・関連法令にともなう責任および第三者の権利侵害などにより、損害賠償等の多大な費用を要する可能性があります。

当社グループでは、これらの訴訟リスクを低減するため、契約のひな型において当社グループが負担する法的責任の明確化、当社グループにおける各事業部門が法務部門等の専門部署および外部専門家と連携し、実際に訴訟を提起された場合の当社グループの業績および財務状況への影響を最小限化するほか、グループ包括賠償保険の付保等を行っております。

(4)情報セキュリティリスク

当社グループが保有する個人情報および業務上知り得た情報等の保護についてはさまざまな対策を講じておりますが、予期せぬ事態によりこれらの情報が流出する可能性が全く無いとは言い切れず、そのような事態が生じた場合、当社グループの信用もしくは評価が毀損され、業績等に影響を与える懸念があります。

当社グループでは、情報管理に関する各種規程類を策定し、定期的に役員および従業員への教育および啓発活動を実施しているほか、コンピュータシステムについては情報を保護するための各種対策を取っております。また、当社は、情報管理体制の強化を目的として、2019年10月1日付で、グループの情報管理を横断的に統括する「グループ情報管理委員会」を設置したほか、当社の情報管理を統括する「情報管理委員会」を設置いたしました。

(5)財務・会計リスク

①減損会計

当社グループが保有する固定資産について、稼働率、収益性の低下等により減損損失を認識すべきであると判定した場合、相当程度の減損損失を計上することが予測され、当社グループの業績および財務、経営に好ましくない影響を与える懸念があります。

②退職給付債務

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、一般的には将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼします。今後、長期金利が低下した場合および年金資産の運用利回りの悪化が生じた場合には、当社グループの収益性、業績を悪化させることになります。

③繰延税金資産

当社グループでは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討して計上しておりますが、将来の課税所得が予測と異なり、繰延税金資産の修正が必要となる場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

④会計基準および税制等の変更

日本の会計基準は、国際的な基準との調和を図るべく改訂を重ねており、今後もこの方向で推移するものと予想されます。また、日本における国際財務報告基準の適用に向けた議論が進んでいます。このような状況のなか、将来における会計基準の変更は、当社グループの業績、財務状況および業務遂行に影響を与える可能性があります。また、日本および諸外国の税制等が改正される場合においても同様の可能性があります。

当社は、連結財務諸表等の適正性を確保するため、公益財団法人財務会計基準機構へ加入し、同機構が行う研修会などに参加し、継続的な情報収集活動を行うことで、会計基準等の内容を適切に把握し、その変更等について的確に対応できる体制を整備しております。

⑤保有資産の価格変動

当社グループの保有する土地や有価証券等の資産価値が下落することにより、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。

政策保有株式については、当社は、当社グループが成長し企業価値を高めていくために、事業活動における様々な取引関係の維持・強化を目的として保有する方針としております。保有の合理性を検証する方法につきましては、取締役会等において、保有にともなう便益やリスクが資本コストに見合っているか等を確認することとしており、検証の結果、保有意義が希薄と判断された銘柄については、縮減を図る方針としております。また、便益を定量的に把握しにくい銘柄については、保有目的等の定性的な情報も検証しております。

(6)製造・品質リスク

当社グループは厳格な品質管理基準に基づき多様な製品を製造・販売しておりますが、全ての製品について欠陥が皆無で、将来にわたり品質的なクレームや製造物責任が発生しないという保証はありません。こうした想定外の大規模な品質クレームや製造物責任によって多額のコスト負担の発生や当社グループの信用もしくは評価が毀損される懸念があります。

当社は、安全な製品やシステム・サービスの提供およびお客様・社会から信頼していただける企業グループとしての社会的行動の実践を図るべく、2019年4月1日付で、グループ各社の品質管理部門を統括する品質統括部を新設し、グループ内における重大品質リスクの低減を推進しております。

(7)環境リスク

当社グループの製品の製造工程における環境負荷低減への取り組みが、製造コストを押し上げることや、当社グループの企業活動に起因する想定外の環境問題が発生することにより、多額のコスト負担の発生や当社グループの信用もしくは評価が大きく毀損される懸念があります。

昨今の全世界的な海洋プラスチックごみ問題を起点として、プラスチック製品の削減に関する世論が高まっております。当社グループにおいても、プラスチック製包装容器を製造・販売しており、連結売上高のおよそ4分の1を占めておりますが、今後の状況の変化によっては販売への影響が懸念され、ひいては、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。

当社グループでは、環境に関するリスクと機会の把握・見直しを定期的に行うことで、想定外の環境問題発生の低減に努めております。当社グループは、2030年を見据えた環境目標である「Eco Action Plan 2030」を2019年に策定し、中長期的な環境負荷削減に対するグループ全体での取り組みを遂行しており、2021年5月には、これらの取組みをさらに推進するべく、環境ビジョンにおける長期目標としてカーボンニュートラルの実現を目指すことを掲げ、「Eco Action Plan 2030」における目標の改定を行いました。脱プラスチック問題に関しては、国のプラスチック資源循環戦略に則したプラスチック製包装容器の軽量化や代替素材への転換などの施策に取り組んでおります。

(8)カントリーリスク

当社グループは、2021年3月末現在、連結子会社71社のうち海外会社は33社、非連結子会社・関連会社・関連会社の子会社も含めるとグループ全体で99社のうち53社がアジアや欧米などにおいてグローバルな事業展開を行っております。海外におけるテロの発生、政情の悪化、経済状況の変動、為替の変動および予期せぬ法律・規制の変更等があった場合、当社グループの業績等に影響を与える懸念があります。

当社グループは、進出している海外地域における非常事態発生時の危機対応については「グループ海外事業危機管理規程」に基づき判断しているほか、新たな海外事業進出にかかる意思決定段階および当該事業活動の推進段階においてカントリーリスクについて吟味し、推進可否を判断しております。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態および経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大に対する各種政策の効果などにより、一部では持ち直しの動きがみられたものの、厳しい状況で推移しました。

このような環境下におきまして、当連結会計年度における当社グループの業績は、以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前期

当期

増減

増減率

売上高

790,814

748,724

△42,089

△5.3%

営業利益

27,271

26,667

△603

△2.2%

売上高営業利益率

3.4%

3.6%

0.1%

経常利益

28,412

27,326

△1,085

△3.8%

特別利益

2,482

△2,482

特別損失

23,967

2,980

△20,987

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

△520

15,946

16,467

 

売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響により、外出自粛にともなう家庭内消費の増加による需要増が一部では見られたものの、イベント・レジャー・外食産業等のほか、オフィス周辺における消費の低迷による需要減の影響を受けたことにより、飲料容器を中心とする包装容器の販売が大きく減少し、7,487億24百万円(前期比5.3%減)となりました。利益面では、原材料・エネルギー価格が下落したものの、売上高が減少したことなどにより、営業利益は266億67百万円(前期比2.2%減)、経常利益は273億26百万円(前期比3.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は159億46百万円の純利益(前期は5億20百万円の損失)となりました。

各セグメントの営業の概況は次のとおりであります。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

報告セグメント等

売上高(外部顧客)

営業利益

前期

当期

増減

増減率

前期

当期

増減

増減率

包装容器関連事業

658,567

623,004

△35,562

△5.4%

20,507

18,411

△2,096

△10.2%

鋼板関連事業

62,924

54,599

△8,325

△13.2%

285

△371

△656

機能材料関連事業

36,811

40,373

3,562

9.7%

1,521

3,051

1,529

100.5%

不動産関連事業

8,019

7,801

△218

△2.7%

5,041

5,237

196

3.9%

その他

24,490

22,944

△1,545

△6.3%

1,739

1,438

△301

△17.3%

調整額

△1,824

△1,099

724

合計

790,814

748,724

△42,089

△5.3%

27,271

26,667

△603

△2.2%

〔包装容器関連事業〕

売上高は6,230億4百万円(前期比5.4%減)となり、営業利益は184億11百万円(前期比10.2%減)となりました。

a)金属製品の製造販売

金属製品の売上高は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより、前期を大幅に下回りました。

国内においては、巣ごもり需要が増加したことにより、ビール類・チューハイ向けのアルコール飲料用空缶が伸長しましたが、外出自粛などの影響により、清涼飲料向けのキャップや中国向けのビール用キャップなどが減少しました。

海外においては、タイにおける外出自粛の影響でエナジードリンク向けの清涼飲料用空缶が減少したほか、タイ政府によるアルコール飲料の販売禁止措置が実施されたことにより、ビール向けのアルコール飲料用空缶が低調に推移しました。

b)プラスチック製品の製造販売

プラスチック製品の売上高は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより、前期を大幅に下回りました。

巣ごもり需要が増加したことによりカレーやパスタソース向けのパウチなどが増加したほか、衛生面に対する意識の高まりから消毒液向けのボトルが伸長しましたが、外出自粛やテレワーク推進の影響により、お茶類向けの飲料用ペットボトルやコーヒーショップ向けの飲料コップが大きく減少しました。

c)紙製品の製造販売

海洋プラスチックごみ問題に端を発した、昨今のプラスチック容器から他素材の容器へシフトする流れを受け、コンビニエンスストア向けの弁当容器などで新規受注がありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大にともなうイベント・レジャーなどの自粛やテレワーク推進の影響により、自動販売機向けなどの飲料コップが減少したほか、清涼飲料向けなどの段ボール製品が低調に推移したことにより、売上高は前期を大幅に下回りました。

d)ガラス製品の製造販売

新型コロナウイルス感染症拡大にともない、飲食店やホテルにおいて来客数が減少したことなどにより、食器などのハウスウエア製品が減少したほか、テレワーク推進などの影響により、清涼飲料向けなどのびん製品が低調に推移し、売上高は前期を大幅に下回りました。

e)エアゾール製品・一般充填品の受託製造販売

新型コロナウイルス感染症拡大にともなう外出自粛の影響により、制汗消臭剤・ヘアスプレーのエアゾール製品が減少しましたが、衛生面に対する意識の高まりから消毒液・ハンドソープの一般充填品が増加し、売上高は前期を上回りました。

f)包装容器関連機械設備の製造販売

海外の製缶・製蓋機械の販売が増加しましたが、国内の飲料充填設備の販売が減少したことに加え、為替の影響もあり、売上高は前期を下回りました。

〔鋼板関連事業〕

売上高は545億99百万円(前期比13.2%減)となり、営業損失は3億71百万円(前期は2億85百万円の営業利益)となりました。

電気・電子部品向けでは、車載用二次電池向けなどの電池材が減少し、売上高は前期を大幅に下回りました。

自動車・産業機械部品向けでは、ガスケット材・駆動系部品材・燃料パイプ材が減少し、売上高は前期を大幅に下回りました。

建築・家電向けでは、バスルーム向け内装材・冷蔵庫向け扉材が減少し、売上高は前期を大幅に下回りました。

〔機能材料関連事業〕

売上高は403億73百万円(前期比9.7%増)となり、営業利益は30億51百万円(前期比100.5%増)となりました。

磁気ディスク用アルミ基板では、サーバー向けのハードディスク用途が増加したことなどにより、売上高は前期を大幅に上回りました。

光学用機能フィルムでは、フラットパネルディスプレイの市況悪化の影響を受け、売上高は前期を下回りました。

その他、ほうろう製品向けの釉薬が増加しましたが、顔料などが減少しました。

〔不動産関連事業〕

オフィスビルおよび商業施設等の賃貸につきましては、売上高は78億1百万円(前期比2.7%減)となり、営業利益は52億37百万円(前期比3.9%増)となりました。

〔その他〕

自動車用プレス金型・機械器具・硬質合金および農業用資材製品などの製造販売、石油製品などの販売および損害
保険代理業などにつきましては、売上高は229億44百万円(前期比6.3%減)となり、営業利益は14億38百万円(前期
比17.3%減)となりました。

所在地別セグメントの業績は、次のとおりであります。

日本では、売上高は6,342億75百万円(前期比5.6%減)、営業利益は176億11百万円(前期比13.2%減)となりました。

アジア(タイ、中国、マレーシアなど)では、売上高は519億23百万円(前期比11.3%減)、営業利益は72億77百万円(前期比18.1%増)となりました。

その他(米国など)では、売上高は625億26百万円(前期比3.7%増)、営業利益は10億71百万円(前期比334.5%増)となりました。

資産、負債および純資産の状況は次のとおりであります。

当連結会計年度末の総資産は、1兆360億81百万円となりました。保有上場有価証券の時価上昇による投資有価証券の増加等により前連結会計年度末に比べ109億86百万円の増加となりました。

当連結会計年度末の負債は、3,844億42百万円となりました。借入金等が減少したことにより前連結会計年度末に比べ161億39百万円の減少となりました。

当連結会計年度末の純資産は、6,516億39百万円となりました。保有上場有価証券の時価上昇によるその他有価証券評価差額金の増加等により前連結会計年度末に比べ271億25百万円の増加となりました。

以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の58.4%から60.4%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて70億74百万円減少し、1,112億7百万円(前期比6.0%減)となりました。

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

税金等調整前当期純利益が243億46百万円、減価償却費470億88百万円、たな卸資産の減少による資金の増加55億68百万円、独占禁止法関連損失に関する課徴金の支払額120億14百万円などにより、当連結会計年度における営業活動による資金の増加は793億29百万円(前期比0.8%増)となりました。

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

包装容器関連事業での設備投資を中心とした有形固定資産の取得による支出640億54百万円があったことなどにより、当連結会計年度における投資活動による資金の減少は684億12百万円(前期比17.5%増)となりました。

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

借入金の借入・返済の純額による支出118億56百万円があったことなどにより、当連結会計年度における財務活動による資金の減少は163億42百万円(前期比59.4%減)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

包装容器関連事業

551,087

95.1

鋼板関連事業

47,809

83.1

機能材料関連事業

38,180

103.6

報告セグメント計

637,077

94.5

その他

16,737

92.0

合計

653,815

94.5

 (注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.不動産関連事業は、生産形態をとらない事業活動のため記載しておりません。

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b)受注実績

包装容器関連事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業およびその他のうち、受注生産によるものについての当連結会計年度における受注状況は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高

(百万円)

前期比(%)

包装容器関連事業

118,100

188.7

87,213

248.5

鋼板関連事業

67,920

114.8

11,490

108.4

機能材料関連事業

28,882

113.3

2,856

108.1

その他

13,114

88.0

8,618

65.2

合計

228,018

140.6

110,179

179.0

 (注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.包装容器関連事業の金額は、包装容器関連機械設備の製造販売の一部に係るものであります。それ以外の受注実績は販売実績とほぼ同様であります。

3.不動産関連事業は、受注形態をとらない事業活動のため記載しておりません。

4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

c)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

包装容器関連事業

623,004

94.6

鋼板関連事業

54,599

86.8

機能材料関連事業

40,373

109.7

不動産関連事業

7,801

97.3

報告セグメント計

725,779

94.7

その他

22,944

93.7

合計

748,724

94.7

 (注)1.販売高には、他からの購入品の販売が含まれており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績及びセグメントごとの財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

ⅰ)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標、達成状況等

「東洋製罐グループ第五次中期経営計画」(以下、「第五次中期経営計画」といいます。)期間内は、「平成30年7月豪雨」や「大阪府北部地震」をはじめとする多くの災害に見舞われたことにより工場が被災し、これを起因として飲料容器などの販売が減少しました。また工場の復旧活動にも時間を要し、設備投資の開始時期の遅延にも繋がりました。なお、第五次中期経営計画の最終年度である2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、外出自粛にともなう家庭内消費の増加による需要増が一部では見られたものの、イベント・レジャー・外食産業等のほか、オフィス周辺における消費の低迷による需要減の影響を受けたことにより、数値目標として掲げた「連結売上高8,200億円、営業利益500億円」に対し、実績は連結売上高7,487億円、営業利益266億円となり、売上高・利益ともに計画を下回る結果となりました。

将来の収益源の確保に向けて第五次中期経営計画期間に実施した設備投資は、2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」期間内での収益貢献を予定しています。

当社グループは、2021年5月に、社会や地球環境について長期的な視点で考え、すべてのステークホルダーの皆様に提供する価値の最大化を図るべく、2050年を見据えた「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を策定し、その実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標である「中長期経営目標2030」を設定いたしました。当社グループは、「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランとして、2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」を策定し、最終年度である2025年度に、「売上高8,500億円、営業利益500億円、EBITDA1,100億円、ROE5%」の達成を目指しております。

なお、「中期経営計画2025」の概要につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

ⅱ)将来の成長へ向けた投資

〔包装容器関連事業〕

海洋プラスチックごみ問題への対応として、プラスチックから他素材への切替やプラスチックの使用量の削減が求められており、当社グループでも次のようにさまざまな取り組みを進めております。

・プラスチック容器の代替として金属容器が見直されつつあるなか、アルコール飲料向けのアルミ缶の需要が拡大していることから、飲料用アルミ空缶製造設備を増設しております。新技術導入による世界最軽量のアルミ缶の製造を行うことにより、製造・輸送時における省エネルギー化および省資源化を更に推進してまいります。

・脱プラスチックの観点から、需要が増加している紙容器の生産設備の増強を進めています。

・プラスチックのリデュースの観点から、需要が増加している詰替用プラスチックパウチなどの軟包装容器を製造する工場を増築しております。

 

〔鋼板関連事業〕

脱炭素社会の実現に向けて、自動車の電動化は急速に進んでおり、これにともない需要の伸長が期待されるEV・ハイブリッド車等の車載用二次電池向けのニッケルめっき鋼板の製造設備を増強しております。

 

〔機能材料関連事業〕

成長が見込まれるフラットパネルディスプレイ向け光学用機能フィルムの製造設備を増強しております。

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ⅲ)事業投資の主な内容

 新たな成長領域の探索・事業化・収益化

 今後の市場需要と多様性への対応として「食と健康」・「快適な生活」、また持続可能な社会の実現として「環境・資源・エネルギー」領域で新規事業を創出し、新たな社会基盤を創造してまいります。

 

(TOYO PACK KIYAMA株式会社の設立)

・当社の連結子会社である東洋製罐株式会社は、2020年11月に宮崎県農協果汁株式会社および日本果実工業株式会社との共同出資により、佐賀県に飲料製品の受託充填をおこなう合弁会社を設立しました。当該合弁会社の設立により、当社グループは、包装容器の製造販売・充填・物流をトータルで行うシステムを構築することで、容器販売事業の強化と飲料充填の今後の需要に応えてまいります。

 

(株式会社アールプラスジャパンへの出資)

・当社は、持続可能な社会の実現に向けて、プラスチック課題解決に貢献すべく、プラスチックのバリューチェーンを構成する12社による共同出資会社である「株式会社アールプラスジャパン」の設立に参画しております。同社は使用済みプラスチックの再資源化を事業としており、2020年6月から事業を開始しております。当社グループは、「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」という3つの側面から持続可能な社会の実現に貢献するため、中期環境目標「Eco Action Plan 2030」を策定し、活動しています。資源循環社会の実現に向けて、2030年までに「枯渇性資源の使用量を30%削減(2013年度比)」「プラスチック製品については化石資源の使用量を40%削減(2013年度比)」「全ての容器包装製品をリサイクル可能またはリユース可能に」することを目指しています。プラスチックに関しては、石油資源の利用から、再生材や植物由来樹脂などの再生可能材料への転換を進めており、再資源化を推進するために本取り組みへ参画しております。当社グループが長年培ってきた技術を結集、活用することにより、バリューチェーンの一員としての役割を果たし、持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。

 

(Shiok Meats社への出資)

・2019年より開始しております「OPEN UP! PROJECT」におけるスタートアップ投資として、2020年10月、当社はシンガポールのShiok Meats社へ出資しました。Shiok Meats社はエビ・甲殻類から幹細胞を分離する技術を有しており、培養肉を開発中です。当社は食生活を支えるインフラ企業として、Shiok Meats社や他の共創パートナーと共に豊かで持続可能な食生活の実現を目指してまいります。

 

(株式会社おいしい健康と資本・業務提携)

・2019年より開始しております「OPEN UP! PROJECT」におけるスタートアップ投資として、2021年3月、一般生活者および患者・医療従事者を対象とした“栄養管理のデジタルトランスフォーメンション”事業を展開している、株式会社おいしい健康と資本・業務提携契約を締結しました。当社はこの提携を通じ、これまで「食をつつむ」役割であった包装容器を「誰もが手に触れる、食の重要インターフェース」として再定義しました。今後は容器のIoP化(Internet of Packaging)を推進し、「食と健康のデータプラットフォームの構築」により社会価値を創出してまいります。また子どもから高齢者まで、障害や病気の有無に関わらず、誰もがおいしく食事をしながら健康を維持できるよう容器やデータを活用したソリューションを展開し、「食のバリアフリーの実現」に向け戦略的協業を推進してまいります。

 

 ※当社グループが、これまでの100年以上にわたり培ってきた容器の技術やノウハウを活用し、一人ひとりが抱える社会課題を解決し、持続可能な未来の暮らしを創るオープンイノベーションプロジェクト。

 

ⅳ)財政状態およびキャッシュ・フローの推移

第五次中期経営計画期間内(2018年度~2020年度)の財政状態およびキャッシュ・フローの主要な項目の推移は次のとおりであります。

 

 

(単位:億円)

 

 

 

(単位:億円)

 

2018

年度

2019

年度

2020

年度

 

 

2018

年度

2019

年度

2020

年度

現金及び預金

1,419

1,246

1,174

 

営業活動による

      キャッシュ・フロー

552

786

793

有利子負債

1,681

1,414

1,286

 

投資活動による

      キャッシュ・フロー

△305

△582

△684

正味有利子負債残高※

261

168

112

 

内 有形無形固定資産

  取得による支出

△523

△574

△652

自己株式

△200

△300

△300

 

内 投資有価証券売却

   による収入

231

23

0

純資産

6,498

6,245

6,516

 

フリー・キャッシュ・フロー

246

204

109

総資産

10,687

10,250

10,360

 

財務活動による

      キャッシュ・フロー

△364

△402

△163

自己資本比率

58.6%

58.4%

60.4%

 

内 借入金借入・返済

   の純額

249

△264

△118

※正味有利子負債残高=有利子負債-現金及び預金

 

内 自己株式の取得

   による支出

△200

△100

△0

 

 

 

 

 

内 配当金の支払額

△27

△27

△26

 

 

 

 

 

内 連結範囲変更を

  伴わない株式取得

△378

 

 

 

 

 

現金及び現金同等物に係る

換算差額

△2

4

△16

 

 

 

 

 

現金及び現金同等物の増減額

△121

△193

△70

 

第五次中期経営計画期間においては、営業キャッシュ・フローと政策保有株式売却を財源として設備投資を積極的に実施してまいりました。また、資本効率の改善による企業価値最大化を目的として、2018年度に約200億円、2019年度に約100億円の市場買付による自己株式を取得しました。一方、有利子負債は減少傾向で推移しております。借入金は全体として残高の圧縮に努め、過度な有利子負債に依存しない財務の健全性を維持しております。以上の結果、総資産は減少傾向にありますが、純資産、自己資本比率は増加傾向にあります。このように成長戦略投資と財務の健全性を両立させた財務・資本政策を推進してまいりました。

「中期経営計画2025」の投資・財務方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題 ④投資・財務方針」に記載しております。

 

②資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ⅰ)主要な資金需要および財源

翌連結会計年度の当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用ならびに当社グループの設備新設、改修等にかかる投資であります。

また、成長市場に向けた国内・海外事業への投資および事業構造改革投資をM&Aなどの形態と組み合わせて行うことを検討しております。

これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローおよび自己資金のほか、金融機関からの借入および社債発行等による資金調達を主な財源として対応いたします。

安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題として認識しており、主要な取引先金融機関に対して適時適切な情報開示を行うことにより、良好な取引関係を維持しております。

加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しております。

 

ⅱ)資金の流動性

手許の運転資金につきましては、当社および一部を除く国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。現在、手許キャッシュは、突発的な資金需要に対応するため売上高の1ヵ月から2ヵ月分の水準を保持しており、今後もこの水準で運営していく予定です。さらに、これを上回る突発的な資金需要に対しては、迅速かつ確実に資金を調達できるように金融機関とコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクに備えております。

 

当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。

 

③重要な会計方針の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (重要な会計上の見積り)に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、新たに締結した重要な契約は次のとおりであります。

合弁契約

当社の連結子会社である東洋製罐株式会社は、2020年9月30日付で、宮崎県農協果汁株式会社および日本果実工業株式会社との間で、飲料製品の受託充填を行う合弁会社を設立する合弁契約を締結いたしました。

合弁会社の概要

商号     TOYO PACK KIYAMA株式会社

所在地    佐賀県三養基郡基山町大字小倉字灰塚48番1

資本金    499百万円

出資比率   東洋製罐株式会社     60%

宮崎県農協果汁株式会社   20%

日本果実工業株式会社   20%

事業内容   飲料製品の受託充填事業

設立年月日  2020年11月2日

5【研究開発活動】

当社グループは多様化する市場ニーズに対応するため、当社綜合研究所、東洋製罐株式会社テクニカルセンターおよび東洋鋼鈑株式会社技術研究所などの研究機関により、次世代に向けた技術開発を目的として積極的に研究開発に取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発費の総額は15,076百万円であります。

各セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりであります。

[包装容器関連事業]

当連結会計年度における包装容器関連事業の研究開発費は12,861百万円であります。

①金属製品の製造販売分野における主要な研究課題は、環境配慮型容器であるTULCの新成形方式の開発およびさらなる軽量化に関する研究、TULCの意匠性をさらに高めるための形状、材料および印刷に関する研究、TULCにおける内容物の適用拡大および実用化に関する研究、意匠性に優れた印刷・加飾技術の実用化に関する研究、アルミDI缶の環境に配慮した成形加工システムの実用化に関する研究、アルミDI缶の意匠性をさらに高めるための形状および印刷に関する研究、海洋プラスチック問題の解決の一助となる金属容器へのリプレイス(置き換え)に関する研究、内容物の保存性をより高めつつ環境に配慮した缶用水性塗料の実用化に関する研究、環境対応とコストダウンを両立させる諸材料への変更に関する研究、金属材料の表面処理における環境対応に関する研究、缶の新たな用途展開を図るための充填・殺菌・密封検査技術に関する研究、次世代飲料缶生産システムに関する研究、リチウムイオン二次電池向け外装材などの新たな用途展開に向けた金属製品製造技術を応用した成形加工技術に関する研究などであります。

②プラスチック製品の製造販売分野における主要な研究課題は、環境に配慮した飲料用軽量ペットボトルおよび飲料用軽量キャップの実用化に関する研究、環境に配慮したリサイクル材活用技術の開発に関する研究、飲料用ペットボトルのガスバリア性向上技術の開発に関する研究、持ちやすさや携帯性・開閉性を高めた新形状ボトルの実用化に関する研究、減容化および廃棄性の向上により環境負荷を低減した新形状ボトルの実用化に関する研究、パウチ用ラミネート材料の無溶剤システムの実用化に関する研究、酸素吸収性能を付与し内容物の保存性を高めたポリオレフィンボトルの実用化に関する研究、フードロスに配慮し内容物の滑落性を向上させたポリオレフィンボトルの実用化に関する研究、容器内の酸素吸収性能と外部酸素遮断技術を付与したカップの実用化と密封検査技術に関する研究、ポリオレフィンボトルにおける加飾技術の実用化に関する研究、詰替機能を向上させたパウチの実用化に関する研究、レトルト可能な再封機能付きパウチの開発および実用化に関する研究、電子レンジ加熱に適した自動蒸気抜き機能付きパウチ・カップの開発および実用化に関する研究、新しい充填・殺菌技術を用いたペットボトル・パウチ・カップにおける容器製造から充填殺菌までを一貫して行う生産システムの実用化に関する研究、酸素吸収性接着剤を適用した透明酸素吸収フィルムの実用化に関する研究、パウチにおける加飾技術の実用化に関する研究などであります。

③紙製品の製造販売分野における主要な研究課題は、環境対応としてプラスチック容器の代替紙製容器や紙蓋の開発に関する研究、ナノセルロースを用いてガスバリア性を付与した紙コップの開発に関する研究などであります。

④ガラス製品の製造販売分野における主要な研究課題は、ガラスびんのコーティングおよび加飾技術の開発に関する研究、品質保証のための検査機の開発に関する研究などであります。

⑤エアゾール製品・一般充填品の受託製造販売分野における主要な研究課題は、2種類の液体を同時に吐出可能としたエアゾールシステムの適用拡大に関する研究、ドローンにエアゾール製品を搭載し、遠隔操作で内容物を吐出可能とするシステムの開発に関する研究などであります。

⑥包装容器関連機械設備の製造販売分野における主要な研究課題は、生産効率向上や省人化を可能とする加工システムの開発に関する研究などであります。

[鋼板関連事業]

当連結会計年度における鋼板関連事業の研究開発費は1,424百万円であります。主要な研究課題は、環境負荷の少ない缶用材料の開発に関する研究、電気・電子部品および自動車部品用に機能性を高めた表面処理鋼板の開発に関する研究などであります。

[機能材料関連事業]

当連結会計年度における機能材料関連事業の研究開発費は771百万円であります。主要な研究課題は、ハードディスクの大容量化に対応可能なアルミ基板の開発に関する研究、光学用機能フィルムの生産性向上に関する研究、電子材料用セラミック素材の開発に関する研究などであります。

[不動産関連事業]

該当事項はありません。

[その他]

当連結会計年度におけるその他の事業の研究開発費は18百万円であります。