文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、1917年の創業以来100年以上にわたり、金属・プラスチック・紙・ガラス等、それぞれが持つ特性を活かし、人々のライフスタイルや社会の変化に応じて、さまざまな素材の容器を世の中に送り出してまいりました。
当社グループは、2016年4月に制定した東洋製罐グループの経営思想のもと、次の100年に向けて、素材の開発と加工の技術を軸に、人々の暮らしをより豊かにし、環境にやさしいしくみを拡げ、さらなる発展と進化を目指しております。
〔東洋製罐グループの経営思想〕
経営理念
常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献します。
信条
・品格を重んじ、あらゆる事に日々公明正大に努めます。
・一人ひとりの力を最大限に発揮し、自己の成長と共に社会の繁栄に努めます。
ビジョン
・世界中の人に必要とされる斬新で革新的な技術と商品を提供するグループを目指します。
(2)目標とする経営指標
2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」では、最終年度である2025年度に、売上高8,500億円、営業利益500億円、EBITDA1,100億円、ROE5%の達成等を数値目標として掲げております。
< 進捗状況 >
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や資源・エネルギー価格の高騰などの影響により、厳しい環境ではありましたが、当社グループの業績は過去最高水準となりました。特にStolle Machinery Company,LLCを中心としたエンジニアリング事業やタイ・中国における飲料充填事業など、海外事業の業績が大きく伸長したほか、鋼板関連事業における車載用二次電池材の販売数量が増加したことにより、売上高は過去最高の8,215億65百万円となりました。
営業利益は、鋼板や包装容器などの販売数量が増加したほか、原材料価格の高騰に対して一部の製品で価格転嫁に努めたこと等により、341億14百万円となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益として政策保有株式の売却益を184億26百万円計上したこともあり、創業以来の最高益となる444憶22百万円となりました。
この結果、EBITDAは854億円、ROEは7.0%となりました。中期経営計画2025の初年度ではありますが、中期経営計画2025で掲げたROE 5.0%の目標を達成しております。
現在、新型コロナウイルス感染症の感染状況は改善傾向にありますが、世界情勢における、想定を超える資源・エネルギー価格の高騰や急激な円安は、当社グループの事業に大きな影響を与える懸念があります。当社グループにとって大変厳しい状況が想定されますが、成長分野や将来に向けた新たな市場へのチャレンジは、今後も注力してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
当社グループは、創業以来100年以上にわたり、包装容器を中心として、人びとの生活に欠かせない製品・サービスを提供し、社会に貢献してまいりました。
現在、当社グループを取り巻く事業環境は想定を超えて変化し、解決すべき様々な社会課題が顕在化しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、人びとの生活様式も大きく変容しております。
このような事業環境下において、当社グループは、2021年5月に、社会や地球環境について長期的な視点で考え、すべてのステークホルダーの皆様に提供する価値の最大化を図るべく、2050年を見据えた「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を策定し、その実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標である「中長期経営目標2030」を設定いたしました。当社グループは、「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランとして、2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」を策定いたしました。
概要は次のとおりです。
①長期経営ビジョン2050「未来をつつむ」
当社グループの目指す姿・ありたい姿を「世界中のあらゆる人びとを安心・安全・豊かさでつつむ『くらしのプラットフォーム』」と位置づけ、「多様性が受け入れられ、一人ひとりがより自分らしく生活できる社会の実現」「地球環境に負荷を与えずに、人々の幸せなくらしがずっと未来へ受け継がれる社会の実現」を目指します。
そのために「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の3つの分野で、グループが一体となって、これまで培ってきた素材開発、成形加工、エンジニアリング等の技術・ノウハウを活用し、オープンイノベーション、IoT・DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するとともに、お客様やお取引先等をはじめとした志を同じくするパートナーと連携し、包装容器メーカーの枠を超え、社会を変える新たな価値を創造してまいります。
②中長期経営目標2030
「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」の実現に向けて、2030年に達成を目指す定量的・定性的な経営目標として設定した「中長期経営目標2030」の概要は次のとおりです。
(注)国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)イニシアチブ※の新基準「1.5℃目標」の認定取得を目指すため、2021年11月に、Eco Action Plan 2030の主要目標を以下のとおり上方修正しております。
・事業活動でのCO2排出量(Scope1・2)35%削減 ⇒ 50%削減
・サプライチェーンでのCO2排出量(Scope3)20%削減 ⇒ 30%削減
※ SBTイニシアチブ…企業のGHG(温室効果ガス)削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ
③中期経営計画2025
「中長期経営目標2030」を達成するためのアクションプランである2021年度から5ヶ年の「中期経営計画2025」(以下、「本中期経営計画」といいます。)は、2年目を迎えます。
本中期経営計画の概要およびその進捗状況は次のとおりです。
<基本方針>
本中期経営計画では、“「くらしのプラットフォーム」へ向けた持続的な成長”を基本方針とし、「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」で掲げた目指す社会の実現に向け、3つの主要課題に取り組みます。
<3つの主要課題と施策>
a)既存事業領域の持続的成長
「多様性への対応」と「持続可能な社会の実現」の2つの軸と持続的成長の観点から、これまでの事業構造にとらわれず、果断に事業ポートフォリオの見直しを行うことで、既存事業領域の持続的な成長を目指します。
< 進捗状況 >
・脱プラスチックに向けた取り組みとして、海外を中心にアルミ缶製造設備を拡販しております。
・充填事業を拡大するため、国内において2020年11月に新設したTOYO PACK KIYAMA株式会社が、2022年3月より稼働したほか、中国の東洋飲料(常熟)有限公司において生産能力増強を進めております。
・脱炭素社会への貢献として、EV・ハイブリッド車向けの車載用二次電池材(ニッケルめっき鋼板)の生産能力増強を進めております。
b)新たな成長領域の探索・事業化・収益化
人びとのライフスタイルの変化や環境負荷の低減など、社会の多様なニーズや新たな課題を捉え、当社グループが培ってきた「素材開発」「成形加工」「エンジニアリング」などの保有技術をもとに、「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の領域において、新規事業を創出することで、新たな社会基盤を創造します。
< 進捗状況 >
■次世代のコアとなる事業を創出するため、新規事業を展開しております。
・ガラス容器の製造で培った技術を応用し、医療用カテーテル向けの屈折率分布型マイクロレンズSiGRIN(シリカグリン)を開発しております。ライフサイエンス分野でグローバルに展開し、人々の健康の維持・増進に貢献することを目指します。
■スタートアップ企業との資本・業務提携により、社会課題解決のための事業機会の探索を行っております。
・DAIZ株式会社との提携
当社グループは、包装容器事業で長年にわたり培った食品の充填・包装・運搬の技術を保有しております。発芽大豆由来の植物肉を開発・生産するDAIZ株式会社と提携し、当社グループの充填・包装・運搬の技術を提供することで、社会課題である環境負荷の低減や食糧危機の解決などを目指します。
・株式会社Agnaviとの提携
当社グループは、小容量缶の充填設備レンタルサービス「詰太郎」を開発しております。一合缶に入った日本酒ブランドを展開する株式会社Agnaviと提携し、酒蔵に対して当社グループの容器と充填サービスを提供することで、社会の多様化するニーズに応えるとともに、地域創生に貢献することを目指します。
・株式会社セルージョンとの提携
当社グループは、包装容器事業で長年にわたり培った技術を活かし、世界初の閉鎖系スフェロイド形成用バッグ「ウェルバッグ」を開発しております。iPS細胞を利用した角膜内皮再生医療の社会実装に向けた研究開発を行う株式会社セルージョンと提携し、当社グループの開発した容器を提供することで、再生医療分野の発展に貢献することを目指します。
c)成長を支える経営基盤の強化
持続的成長のための経営資源の充実とガバナンスの強化を行います。
ⅰ)技術・開発
パートナーとの共創や新技術の探索を通じ、事業創出のための研究開発を推進
ⅱ)IoT・DX
デジタル技術の活用を通じたバリューチェーンの変革と事業領域の拡大
ⅲ)人材
新たな価値創造につながる人材プラットフォームの整備
ⅳ)組織
社会からの信頼に応えるためのコーポレート・ガバナンスの強化
< 進捗状況 >
・気候変動がもたらすリスクと機会が当社グループに与える影響についての検討を深めるため、2021年7月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同表明を行い、シナリオ分析等の取り組みを進めております。
・情報発信・情報開示体制を強化し、当社グループが持続的に成長してくための施策をステークホルダーの皆さまにお伝えするため、2022年3月に当社グループ初となる統合報告書「統合報告書 2021」を発行しました。「統合報告書 2021」は当社ホームページよりご覧いただけます。
URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/5901/ir_material_for_fiscal_ym7/115579/00.pdf
・既存のCSRおよび環境活動について、より高次元の括りで統合し、一貫性を持った形で活動することを目的として、CSR部および環境部を廃止し、2022年4月1日付でサステナビリティ推進部を新設しております。
<持続的成長のためのロードマップ>
包装容器領域を基盤として、エンジニアリング・充填・物流領域におけるバリューチェーンの拡大と、鋼板関連事業・機能材料関連事業における光学用・電池向け部材等での成長を図るとともに、新規事業領域において社会課題解決の新しい仕組みを創出し、2030年度に売上高1兆円を目指します。
<投資・財務方針>
事業活動と資産圧縮で創出したキャッシュを原資として、将来の成長や基盤強化等の投資を実施いたします。
a)投資
「くらしのプラットフォーム」へ向け、3,300億円規模の投資(M&A含む)を実施
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目的 |
目安額 (億円) |
備考 |
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新たな成長分野・ 領域の拡大 |
主な投資目的 ■環境負荷低減・環境価値拡大のための投資 ■包装容器製造の枠を超えたバリューチェーン全体でのシステム構築 ■「食と健康」・「快適な生活」・「環境・資源・エネルギー」領域を中心とするビジネスパートナーやスタートアップ企業との共創による事業創出と育成 |
1,600 |
- |
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既存事業領域 の持続的成長 |
注力すべき既存事業領域における基盤強化 |
1,500 |
設備更新において、環境負荷低減や省人化・省力化を伴う形で極力行う |
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経営基盤強化 |
IoT・DXの推進、新技術開発、人材開発など |
200 |
- |
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合計 |
3,300 |
- |
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※上記は計画時の目安であり、進捗状況・事業機会タイミング等の要因により、内訳を随時見直し、投資判断・実施
b)原資
・本中期経営計画期間において営業キャッシュ・フロー約3,800億円を創出
・政策保有株式を400億円規模売却し、成長分野への投資に活用
<株主還元方針>
本中期経営計画期間中は、総還元性向80%を目安に株主還元を行います。
a)配当金
連結配当性向50%以上を目安とする
1株当たり46円を下限とし、段階的に引き上げる
b)自己株式取得
機動的に実施する
※資産売却等による特別損益は、原則として、連結配当性向および総還元性向を算定するうえでは考慮いたしません
< 進捗状況 >
2021年度は年間配当金88円(中間配当金23円、期末配当金65円)とし、加えて92億円分(6,500,000株)の自己株式を取得いたしました。2021年度における投資有価証券売却益を除いた、みなし総還元性向は79.2%、みなし連結配当性向は50.3%となります。
当社グループを取り巻く事業環境は、より一層厳しさを増すことが想定されますが、本中期経営計画の諸施策を着実に遂行することで、持続的な成長を目指してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況および経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社およびグループ各社は、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるさまざまなリスクの発生を未然に防止し、当社およびグループ各社の経営基盤の安定化を図るとともに、危機が発生した場合に事業活動を早期に復旧し、継続させるために策定した「グループリスク及び危機管理規程」に基づき、リスクマネジメント体制の強化を推進しております。当社は、グループのリスク管理および危機管理ならびにコンプライアンスを横断的に統括するグループリスク・コンプライアンス委員会を設置しており、同委員会は、重要リスクに関する情報の確認、改善および予防措置を講じております。当社およびグループ各社では、それぞれの管理体制のもとで危機管理規程や危機対応マニュアル等の策定、リスク管理状況のとりまとめなどを行っております。また、当社は、リスク・危機管理を統括する専門部門として「リスク危機管理統括室」を設置しており、グループとしての確固たるリスク・危機管理体制の構築を進めております。
なお、以下のリスクが顕在化する可能性の程度や時期、リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
(1)天候・自然災害・事故・感染症リスク
当社グループの主力事業である飲料容器事業においては、その事業の性質上、需要期の天候が業績に重大な影響を及ぼします。飲料容器の需要がピークを迎える上半期において、冷夏や長梅雨などの予想しにくい気象状況の変動や、予期せぬ自然災害の発生等に起因する需要の減少が、当社グループの業績および財務状況に大きな影響を与えることになります。
また、地震や台風などの大規模な自然災害や事故が発生し、当社グループの生産設備等に甚大な被害を与えた場合や、感染症の蔓延などにより当社グループの生産活動やステークホルダーの行動が制限された場合に、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響につきましては、イベント・レジャー・外食産業等のほか、オフィス周辺における消費の低迷による需要減の影響などが引き続き懸念されております。当社グループでは、当社およびグループ各社の役員等で構成される新型コロナウイルス危機対策会議をグループ横断的に適宜開催し、また、データベースを通して感染情報や政府の対応などを毎営業日共有することで、海外子会社を含む当社グループ全体を包括した対策を展開しております。従業員の健康を守りながら、社会機能維持として欠かせない飲料・食品・生活用品に携わる当社グループの事業活動に万全を期するため、同会議のもと、本社および営業所等において在宅勤務を推進したほか、各工場の操業においては感染防止策を徹底するなど、感染拡大の防止を図っております。
当社グループでは、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるさまざまな自然災害・事故リスク等の発生時に被害を最小限に抑えるため、設備対応、調達先の分散、生産拠点におけるバックアップ体制の構築、適正在庫の確保などの対応をとっております。
(2)コンプライアンスリスク
企業の社会的責任が近年ますます重要視されるなか、企業活動における遵法精神を徹底させるとともに、経営上のリスクを回避しながら経営資源を効率的かつ適正に運用していくことで業績を向上させていくことが求められております。
当社グループにおいてもこうした状況を踏まえ、コンプライアンス体制の強化は最も重要な経営課題と認識し、その実現に向けてグループを挙げて努力しております。しかしながら、リスク管理体制の不備により企業の社会的責任を問われる事態が生じる可能性が全く無いとは言い切れず、そのような事態が生じた場合はレピュテーションリスクが高まり、当社グループの信用もしくは評価が大きく毀損され、当社グループの継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれがあります。当社グループでは、コンプライアンス体制強化のため、以下の施策に取り組んでおります。
・当社グループが遵守・実践すべき枠組みを示す「グループ企業行動憲章」および「グループ企業行動規準」を制定し、役員および従業員に対して周知・教育を実施
(ご参考)「グループ企業行動憲章」および「グループ企業行動規準」
(URL:https://www.tskg-hd.com/group/policy/code/)
・人権尊重の取り組みを推進し、その責務を果たしていく指針として、国際連合が定める「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく、「東洋製罐グループ人権方針」を制定し、役員および従業員に対して周知を実施
(ご参考)「東洋製罐グループ人権方針」(URL:https://www.tskg-hd.com/csr/social/human_rights/)
・内部通報制度である東洋製罐グループコンプライアンス相談窓口を設置し、ポスター掲示、携帯カード配布等により従業員に対して周知
・グループ全体のコンプライアンスに関する取り組みを統括するグループリスク・コンプライアンス委員会を設置し、同委員会のもと、役員および従業員に対して教育研修を実施
・コンプライアンスに対する意識や行動について再認識するための期間として、毎年10月をグループコンプライアンス推進月間と定め、啓発活動を実施
・社内外のコンプライアンスに関する情報を取りまとめた「コンプライアンス通信」の定期的な発行のほか、電子メールやデータベースを活用した情報の発信・周知を実施
このほか、リスクが顕在化した場合に当社グループの継続的な事業活動に対する影響が特に大きいと想定される独占禁止法に関わる事項については、定期的な規程等遵守状況の調査・確認や教育研修の実施等により、コンプライアンス体制の一層の強化と発生防止の徹底を図っております。
(3)事業・経営リスク
①経済状況の変化
世界経済および日本経済における景気の後退あるいは停滞、少子高齢化の進行による人口減少や、それらにともなう個人消費の低迷および為替の変動は、売上高や利益の減少につながる懸念があります。
②原材料・エネルギー価格の変動
当社グループが製造販売する製品は、原価に占める原材料・エネルギー費用の割合が大きく、為替変動の影響によるものも含め、その価格変動が当社グループの業績および収益性に影響を及ぼします。
当社グループでは、金属製品やプラスチック製品を中心に、原材料価格に連動した売価設定を行う仕組みの導入を進めており、原材料価格の変動リスクの低減に努めておりますが、その達成状況および進捗の度合いによっては、当社グループの収益性が低下する懸念があります。
③原材料の調達
当社グループが調達している原材料は、輸入品はもとより、国内で調達している原材料にも海外由来の粗原料が利用されております。国際情勢の悪化や世界各地のサプライチェーンにおける自然災害・設備トラブル等にともなう国際物流の混乱などにより、原材料の調達が困難になった場合、当社グループの業績および収益性に影響を及ぼします。人びとの生活に欠かせない製品・サービスを安定的に提供するため、日頃より原材料の購入先の情報を幅広く収集し、複数社購買の推進など、安定調達の実現に努めております。
④価格競争の激化
当社グループが主として事業を展開する容器市場においては、競合他社との価格競争激化およびお得意先各社における容器の自社製造の拡大が続いており、当社グループの価格交渉力の低下や製品価格の下落傾向を強める懸念があります。
当社グループは、消費者やお得意先などのニーズの変化を的確に捉え、あらゆる素材を取り扱う当社のシーズをもとに開発した多岐にわたる斬新で革新的な製品・サービスをもって、競合他社との差別化を図り、価格競争力を強化してまいります。
⑤研究開発
当社グループにとって、継続的かつ効果的な研究開発投資は不可欠なものである一方、その成果は不確実なものであり、多額の支出を行ったとしても必ずしも成果に結びつかないというリスクを抱えております。特に新製品・新技術などの研究開発投資が今後十分なリターンを生み出さない場合や、社内に蓄積されたデータが新製品・新技術などの研究開発に活かされない場合には、当社グループの将来の成長性および収益性を低下させる懸念があります。
当社グループは多様化する市場ニーズに対応するため、当社綜合研究所、東洋製罐株式会社テクニカルセンターおよび東洋鋼鈑株式会社技術研究所などの研究部門により、次世代に向けた技術開発を目的として積極的に研究開発に取り組んでおります。
⑥投融資(企業買収・資本参加・設備投資等)
当社グループは、事業基盤の強化および事業の拡大を目的として、企業買収や資本参加等を積極的に実施しているほか、さらなる企業価値向上のために、生産・販売・研究開発の各分野において積極的かつ効果的な投資を行っておりますが、期待する成果が十分に得られなかった場合、当社グループの業績および収益性に大きな影響を与える懸念があります。
投融資にかかるリスク管理として、当社は「投資管理委員会」を設置しており、投融資の意思決定の手続きと判断基準を明確にし、実行後の評価と評価に基づく案件の継続・撤退の基準を設定するなど、精査を行っております。また、同委員会において、投融資を行った案件について定期的にモニタリングを行っており、当初の期待どおりの効果が得られず、グループ全体の収益性に対してマイナスに寄与するとみなされる案件については撤退の判断を行い、将来の収益性の低下リスクを低減することとしております。
⑦取引先の信用リスク
当社グループの取引先の信用不安により、予期せぬ貸倒リスクが顕在化し、追加的な損失や引当金の計上が必要となる場合、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。
当社グループの販売先は比較的信用リスクが低い顧客が多いものの、信用リスクの高い顧客においては、商社を通じた取引形態あるいは債権回収期間の短縮を行うほか、新規顧客との取引を開始する前には十分な信用調査を行うなど、リスクの低減に努めております。
⑧人材確保と育成
当社グループの将来にわたる継続的な成長と発展には有能なリーダーの存在の有無が大きな影響を与えるため、優秀な人材の確保と育成は当社グループの発展には不可欠なファクターであり、優秀な人材を確保または育成できなかった場合には、当社グループの将来の成長に好ましくない影響を与える懸念があります。
優秀な人材の確保については、主要なグループ会社がそれぞれ行っていた大卒定期採用を、2021年4月入社よりグループ一括での採用に切り替え、グループとして優秀な人材の確保を目指すとともに、グループ事業の広がりの中でのキャリア形成を通じて、グループを牽引するリーダーの育成を図ります。これに加え、主要なグループ会社において、将来のリーダー候補を選抜し、研修と戦略的な配置の中で育成する中核人材マネジメントの仕組みを2017年度より導入しております。
さらに、人材の流動性を高め、会社や組織を超えた連携を進めることで、組織の硬直化を防ぎ風通しのよい組織風土を醸成し、新たな価値創造をし続ける企業風土づくりと人材育成に取り組んでおります。
⑨敵対的企業買収
当社は株式公開会社であるため、当社株式を公開買付けまたは市場取引等で大量に取得する者が現われる可能性があります。当社グループの企業価値および株主共同の利益を毀損することが明らかな敵対的企業買収が行われた場合、当社グループの業績、財務状況および経営に好ましくない影響を与える懸念があります。
当社は、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として、中期経営計画およびコーポレート・ガバナンスの強化等の各施策を遂行しており、また、それらの取組みをIR・SR活動などで積極的に開示し、企業価値の向上を図ることで、敵対的企業買収リスクの低減に務めております。
当社は、敵対的企業買収が行われる場合、株主の皆様が当該大規模買付行為の是非を適切に判断する為に必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて取締役会の意見等を開示し、株主の皆様が検討する為に必要な時間と情報の確保に努めるなど、金融商品取引法、会社法その他関連法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。
⑩訴訟のリスク
当社グループが国内外で事業活動を遂行していくうえで、訴訟の対象となるリスクがあります。具体的には、契約上の債務不履行、製造する製品の欠陥にともなう製造物責任、役員および従業員との労働契約・関連法令にともなう責任および第三者の権利侵害などにより、損害賠償等の多大な費用を要する可能性があります。
当社グループでは、これらの訴訟リスクを低減するため、契約のひな型において当社グループが負担する法的責任の明確化、当社グループにおける各事業部門が法務部門等の専門部署および外部専門家と連携し、実際に訴訟を提起された場合の当社グループの業績および財務状況への影響を最小限化するほか、グループ包括賠償保険の付保等を行っております。
(4)情報セキュリティリスク
当社グループが保有する個人情報および業務上知り得た情報等の保護についてはさまざまな対策を講じておりますが、予期せぬ事態によりこれらの情報が流出する可能性が全く無いとは言い切れず、そのような事態が生じた場合、当社グループの信用もしくは評価が毀損され、業績等に影響を与える懸念があります。
当社グループでは、情報管理に関する各種規程類を策定し、定期的に役員および従業員への教育および啓発活動を実施しているほか、コンピュータシステムについては情報を保護するための各種対策を取っております。また、当社は、情報管理体制の強化を目的として、グループの情報管理を横断的に統括する「グループ情報管理委員会」および当社の情報管理を統括する「情報管理委員会」を設置しております。
(5)財務・会計リスク
①減損会計
当社グループが保有する固定資産について、稼働率、収益性の低下等により減損損失を認識すべきであると判定した場合、相当程度の減損損失を計上することが予測され、当社グループの業績および財務、経営に好ましくない影響を与える懸念があります。
②退職給付債務
当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、一般的には将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼします。今後、長期金利が低下した場合および年金資産の運用利回りの悪化が生じた場合には、当社グループの収益性、業績を悪化させることになります。
③繰延税金資産
当社グループでは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討して計上しておりますが、将来の課税所得が予測と異なり、繰延税金資産の修正が必要となる場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。
④会計基準および税制等の変更
日本の会計基準は、国際的な基準との調和を図るべく改訂を重ねており、今後もこの方向で推移するものと予想されます。また、日本における国際財務報告基準の適用に向けた議論が進んでいます。このような状況のなか、将来における会計基準の変更は、当社グループの業績、財務状況および業務遂行に影響を与える可能性があります。また、日本および諸外国の税制等が改正される場合においても同様の可能性があります。
当社は、連結財務諸表等の適正性を確保するため、公益財団法人財務会計基準機構へ加入し、同機構が行う研修会などに参加し、継続的な情報収集活動を行うことで、会計基準等の内容を適切に把握し、その変更等について的確に対応できる体制を整備しております。
⑤保有資産の価格変動
当社グループの保有する土地や有価証券等の資産価値が下落することにより、当社グループの業績および財務状況に好ましくない影響を与える懸念があります。
政策保有株式については、当社は、当社グループが成長し企業価値を高めていくために、事業活動における様々な取引関係の維持・強化を目的として保有する方針としております。保有の合理性を検証する方法につきましては、取締役会等において、保有にともなう便益やリスクが資本コストに見合っているか等を確認することとしており、検証の結果、保有意義が希薄と判断された銘柄については、縮減を図る方針としております。また、便益を定量的に把握しにくい銘柄については、保有目的等の定性的な情報も検証しております。
(6)製造・品質リスク
当社グループは厳格な品質管理基準に基づき多様な製品を製造・販売しておりますが、全ての製品について欠陥が皆無で、将来にわたり品質的なクレームや製造物責任が発生しないという保証はありません。こうした想定外の大規模な品質クレームや製造物責任によって多額のコスト負担の発生や当社グループの信用もしくは評価が毀損される懸念があります。
当社は、安全な製品やシステム・サービスの提供およびお客様・社会から信頼していただける企業グループとしての社会的行動の実践を図るべく、グループ各社の品質管理部門を統括する品質統括部を設置し、グループ内における重大品質リスクの低減を推進しております。
(7)環境リスク
当社グループの製品の製造工程における環境負荷低減への取り組みが、製造コストを押し上げることや、当社グループの企業活動に起因する想定外の環境問題が発生することにより、多額のコスト負担の発生や当社グループの信用もしくは評価が大きく毀損される懸念があります。
昨今の全世界的な海洋プラスチックごみ問題を起点として、プラスチック製品の削減に関する世論が高まっております。当社グループにおいても、プラスチック製包装容器を製造・販売しており、連結売上高のおよそ4分の1を占めておりますが、今後の状況の変化によっては販売への影響が懸念され、ひいては、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。
当社グループでは、環境に関するリスクと機会の把握・見直しを定期的に行うことで、想定外の環境問題発生の低減に努めております。気候変動がもたらすリスクと機会が当社グループに与える影響についての検討を深めるため、2021年7月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同表明を行い、2022年5月にTCFD 提言に基づく情報開示を行いました。開示内容は当社ホームページよりご覧いただけます。(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/5901/tdnet/2124934/00.pdf)また、当社グループは、2030年を見据えた環境目標である「Eco Action Plan 2030」を2019年に策定し、中長期的な環境負荷削減に対するグループ全体での取り組みを遂行しており、2021年5月には、これらの取組みをさらに推進するべく、環境ビジョンにおける長期目標としてカーボンニュートラルの実現を目指すことを掲げ、「Eco Action Plan 2030」における目標の改定を行いました。さらに、2021年11月には、国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)イニシアチブ※の新基準「1.5℃目標」の認定取得を目指すため、「Eco Action Plan 2030」の主要目標を上方修正しております。脱プラスチック問題に関しては、国のプラスチック資源循環戦略に則したプラスチック製包装容器の軽量化や代替素材への転換などの施策に取り組んでおります。
※ SBTイニシアチブ…企業のGHG(温室効果ガス)削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ
(8)カントリーリスク
当社グループは、2022年3月末現在、連結子会社71社のうち海外会社は33社、非連結子会社・関連会社・関連会社の子会社も含めるとグループ全体で96社のうち50社がアジアや欧米などにおいてグローバルな事業展開を行っております。海外子会社におけるガバナンス体制の不備や、各地域におけるテロの発生、政情の悪化、経済状況の変動、為替の変動および予期せぬ法律・規制の変更等があった場合、当社グループの業績等に影響を与える懸念があります。
当社グループは、進出している海外地域における非常事態発生時の危機対応については「グループ海外事業危機管理規程」に基づき判断しているほか、新たな海外事業進出にかかる意思決定段階および当該事業活動の推進段階においてカントリーリスクについて吟味し、推進可否を判断しております。
ウクライナ情勢等の影響につきましては、間接的には「(3)事業・経営リスク③原材料の調達」に記載のとおり、原材料の調達に影響を及ぼす可能性がありますが、直接的に当社グループの業績に与える影響はほぼないと見込んでおります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、一部では持ち直しの動きがみられたものの、新型コロナウイルス感染症の再拡大の懸念や、ウクライナ情勢等の影響により、依然として先行きは不透明な状況にあります。
このような環境下におきまして、当連結会計年度における当社グループの業績は、以下のとおりとなりました。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度から適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
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|
(単位:百万円) |
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|
|
前期 |
当期 |
増減 |
増減率 |
|
売上高 |
748,724 |
821,565 |
72,841 |
9.7% |
|
営業利益 |
26,667 |
34,114 |
7,446 |
27.9% |
|
売上高営業利益率 |
3.6% |
4.2% |
0.6% |
- |
|
経常利益 |
27,326 |
45,712 |
18,385 |
67.3% |
|
特別利益 |
- |
18,426 |
18,426 |
- |
|
特別損失 |
2,980 |
4,046 |
1,066 |
- |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
15,946 |
44,422 |
28,475 |
178.6% |
売上高は、海洋プラスチックごみ問題に端を発した、プラスチック容器から他素材の容器へシフトする流れを受け、世界的に飲料缶需要が増加したことにともない製缶・製蓋機械の販売が伸長したほか、前期に新型コロナウイルス感染症拡大の影響により大きく減少した鋼板や、飲料容器を中心とした包装容器などの販売が、反動を受け増加したことにより、8,215億65百万円(前期比9.7%増)となりました。利益面では、鋼板や包装容器などの販売数量が増加したほか、原材料価格の高騰に対して一部の製品で価格転嫁に努めたことや、鋼板材料の在庫評価益が発生したことなどにより、営業利益は341億14百万円(前期比27.9%増)となりました。経常利益は、持分法投資利益の増加などにより、457億12百万円(前期比67.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益の計上などにより、444億22百万円(前期比178.6%増)となりました。
各セグメントの営業の概況は次のとおりであります。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。また、以下の前期に対する製品毎の増減要因分析については、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準 第29号 2020年3月31日)等の影響を除いて記載しております。
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(単位:百万円) |
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報告セグメント等 |
売上高(外部顧客) |
営業利益 |
||||||
|
前期 |
当期 |
増減 |
増減率 |
前期 |
当期 |
増減 |
増減率 |
|
|
包装容器事業 |
495,192 |
500,395 |
5,202 |
1.1% |
13,816 |
11,282 |
△2,534 |
△18.3% |
|
エンジニアリング・充填・物流事業 |
127,812 |
167,113 |
39,301 |
30.7% |
3,713 |
9,927 |
6,213 |
167.3% |
|
鋼板関連事業 |
54,599 |
75,077 |
20,478 |
37.5% |
△371 |
2,680 |
3,051 |
- |
|
機能材料関連事業 |
40,373 |
48,594 |
8,220 |
20.4% |
3,051 |
5,378 |
2,327 |
76.3% |
|
不動産関連事業 |
7,801 |
7,976 |
175 |
2.2% |
5,237 |
4,742 |
△495 |
△9.5% |
|
その他 |
22,944 |
22,408 |
△536 |
△2.3% |
1,438 |
1,890 |
452 |
31.4% |
|
調整額 |
- |
- |
- |
- |
△219 |
△1,787 |
△1,568 |
- |
|
合計 |
748,724 |
821,565 |
72,841 |
9.7% |
26,667 |
34,114 |
7,446 |
27.9% |
〔包装容器事業〕
売上高は5,003億95百万円(前期比1.1%増)となり、営業利益は112億82百万円(前期比18.3%減)となりました。
a)金属製品の製造販売
金属製品の売上高は、前期を上回りました。
チューハイ向けのアルコール飲料用空缶において、家庭内需要が増加したことに加え、前期に新型コロナウイルス感染症拡大にともなう外出自粛などの影響により大きく減少した清涼飲料用空缶が、反動を受け増加したことや炭酸飲料向けなどで新規受注があったことにより好調に推移しました。
b)プラスチック製品の製造販売
プラスチック製品の売上高は、前期を上回りました。
前期に新型コロナウイルス感染症拡大の影響により増加した消毒液向けなどのボトルが反動を受け減少しましたが、外出自粛などの影響により大きく減少した清涼飲料用ペットボトル・キャップが、反動を受け増加したことや炭酸飲料向けで新規受注があったことに加え、お茶類向けで製品リニューアルがあったことにより好調に推移しました。
c)紙製品の製造販売
前期に新型コロナウイルス感染症拡大にともなう外出自粛などの影響により大きく減少した飲料コップが、反動を受け増加したほか、海洋プラスチックごみ問題に端を発した、プラスチック容器から他素材の容器へシフトする流れを受け、コンビニエンスストア向けの弁当容器などが好調に推移したことにより、売上高は前期を上回りました。
d)ガラス製品の製造販売
前期に新型コロナウイルス感染症拡大にともなう外出自粛などの影響により大きく減少したビール類向けのびん製品や食器などのハウスウエア製品が、反動を受け増加し、売上高は前期を上回りました。
〔エンジニアリング・充填・物流事業〕
売上高は1,671億13百万円(前期比30.7%増)となり、営業利益は99億27百万円(前期比167.3%増)となりました。
a)エンジニアリング事業
海洋プラスチックごみ問題に端を発した、プラスチック容器から他素材の容器へシフトする流れを受け、世界的に飲料缶需要が増加したことにともない、北米を中心とした海外向けの製缶・製蓋機械の販売が好調に推移したことにより、売上高は前期を大幅に上回りました。
b)充填事業
前期に新型コロナウイルス感染症拡大の影響により増加した消毒液の一般充填品が反動を受け減少しましたが、中国・タイにおけるお茶類の飲料充填品で新規受注があったことにより、売上高は前期を上回りました。
c)物流事業
貨物自動車運送業および倉庫業などの売上高は、前期を上回りました。
〔鋼板関連事業〕
売上高は750億77百万円(前期比37.5%増)となり、営業利益は26億80百万円(前期は3億71百万円の営業損失)となりました。
鋼板関連事業の売上高は、前期に新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減少した反動で増加しました。
電気・電子部品向けでは、車載用二次電池材や充電池材が増加しました。
自動車・産業機械部品向けでは、駆動系部品材などが増加しました。
建築・家電向けでは、バスルーム向け内装材が増加しました。
〔機能材料関連事業〕
売上高は485億94百万円(前期比20.4%増)となり、営業利益は53億78百万円(前期比76.3%増)となりました。
磁気ディスク用アルミ基板では、サーバー向けのハードディスク用途が増加したことなどにより、売上高は前期を上回りました。
光学用機能フィルムでは、フラットパネルディスプレイの市況が好調に推移し、売上高は前期を上回りました。
その他、ほうろう製品向けの釉薬や顔料が増加しました。
〔不動産関連事業〕
オフィスビルおよび商業施設等の賃貸につきましては、売上高は79億76百万円(前期比2.2%増)となり、営業利益は47億42百万円(前期比9.5%減)となりました。
〔その他〕
自動車用プレス金型・機械器具・硬質合金および農業用資材製品などの製造販売、石油製品などの販売および損害
保険代理業などにつきましては、売上高は224億8百万円(前期比2.3%減)となり、営業利益は18億90百万円(前期比31.4%増)となりました。
所在地別セグメントの業績は、次のとおりであります。
日本では、売上高は6,577億16百万円(前期比3.7%増)、営業利益は182億40百万円(前期比3.6%増)となりました。
アジア(タイ、中国、マレーシアなど)では、売上高は610億90百万円(前期比17.7%増)、営業利益は81億44百万円(前期比11.9%増)となりました。
その他(米国など)では、売上高は1,027億58百万円(前期比64.3%増)、営業利益は76億12百万円(前期比610.7%増)となりました。
資産、負債および純資産の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、1兆822億82百万円となりました。保有上場有価証券の売却や時価下落により投資有価証券が減少しましたが、棚卸資産の増加などにより前連結会計年度末に比べ462億円の増加となりました。
当連結会計年度末の負債は、4,179億90百万円となりました。仕入債務の増加などにより前連結会計年度末に比べ335億47百万円の増加となりました。
当連結会計年度末の純資産は、6,642億91百万円となりました。保有上場有価証券の売却や時価下落によるその他有価証券評価差額金の減少、配当金の支払いおよび自己株式の取得などにより減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより前連結会計年度末に比べ126億52百万円の増加となりました。
以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の60.4%から58.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて92億69百万円増加し、1,204億77百万円(前期比8.3%増)となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
税金等調整前当期純利益が600億92百万円、減価償却費512億99百万円、棚卸資産の増加による資金の減少314億52百万円、法人税等の支払額64億30百万円などにより、当連結会計年度における営業活動による資金の増加は754億15百万円(前期比4.9%減)となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
包装容器事業での設備投資を中心とした有形固定資産の取得による支出472億74百万円、投資有価証券の売却による収入212億63百万円あったことなどにより、当連結会計年度における投資活動による資金の減少は271億66百万円(前期比60.3%減)となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
長期借入金の返済による支出が226億48百万円、自己株式の取得による支出が92億17百万円、配当金の支払いが110億11百万円あったことなどにより、当連結会計年度における財務活動による資金の減少は421億86百万円(前期比158.1%増)となりました。
また、「配当金の支払い」や「自己株式の取得による支出」が前期より大幅に増加しておりますが、これは中期経営計画2025における株主還元方針に従ったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
包装容器事業 |
483,399 |
99.8 |
|
エンジニアリング・充填・物流事業 |
108,807 |
163.0 |
|
鋼板関連事業 |
72,295 |
151.2 |
|
機能材料関連事業 |
46,116 |
120.8 |
|
報告セグメント計 |
710,619 |
111.5 |
|
その他 |
19,602 |
117.1 |
|
合計 |
730,222 |
111.7 |
(注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
3.不動産関連事業は、生産形態をとらない事業活動のため記載しておりません。
b)受注実績
エンジニアリング・充填・物流事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業およびその他のうち、受注生産によるものについての当連結会計年度における受注状況は、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前期比(%) |
|
エンジニアリング・充填・物流事業 |
162,442 |
137.5 |
149,977 |
172.0 |
|
鋼板関連事業 |
76,263 |
112.3 |
16,308 |
141.9 |
|
機能材料関連事業 |
35,344 |
122.4 |
3,197 |
111.9 |
|
その他 |
19,210 |
146.5 |
11,052 |
128.2 |
|
合計 |
293,261 |
128.6 |
180,536 |
163.9 |
(注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
3.エンジニアリング・充填・物流事業の金額は、包装容器関連設備の製造販売の一部に係るものであります。
4.包装容器事業は、事業の形態から受注実績と販売実績がほぼ同様のため記載しておりません。
5.不動産関連事業は、受注形態をとらない事業活動のため記載しておりません。
c)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
包装容器事業 |
500,395 |
101.1 |
|
エンジニアリング・充填・物流事業 |
167,113 |
130.7 |
|
鋼板関連事業 |
75,077 |
137.5 |
|
機能材料関連事業 |
48,594 |
120.4 |
|
不動産関連事業 |
7,976 |
102.2 |
|
報告セグメント計 |
799,157 |
110.1 |
|
その他 |
22,408 |
97.7 |
|
合計 |
821,565 |
109.7 |
(注)1.販売高には、他からの購入品の販売が含まれており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績及びセグメントごとの財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
また、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標、達成状況については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおりであります。
②資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ⅰ)主要な資金需要および財源
翌連結会計年度の当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用ならびに当社グループの設備新設、改修等にかかる投資であります。
また、成長市場に向けた国内・海外事業への投資および事業構造改革投資をM&Aなどの形態と組み合わせて行うことを検討しております。
これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローおよび自己資金のほか、金融機関からの借入および社債発行等による資金調達を主な財源として対応いたします。
安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題として認識しており、主要な取引先金融機関に対して適時適切な情報開示を行うことにより、良好な取引関係を維持しております。
加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しております。
ⅱ)資金の流動性
手許の運転資金につきましては、当社および一部を除く国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。現在、手許キャッシュは、突発的な資金需要に対応するため売上高の1ヵ月から2ヵ月分の水準を保持しており、今後もこの水準で運営していく予定です。さらに、これを上回る突発的な資金需要に対しては、迅速かつ確実に資金を調達できるように金融機関とコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクに備えております。
当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。
③重要な会計方針の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。
当社グループは多様化する市場ニーズに対応するため、当社綜合研究所、東洋製罐株式会社テクニカルセンターおよび東洋鋼鈑株式会社技術研究所などの研究部門により、次世代に向けた技術開発を目的として積極的に研究開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
各セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりであります。
[包装容器事業]
当連結会計年度における包装容器事業の研究開発費は
①金属製品の製造販売分野における主要な研究課題
環境対応
・環境対応とコストダウンを両立させる諸材料への変更
・環境配慮型容器であるTULC※の新成形方式の開発およびさらなる軽量化
・飲料缶(DI缶)の環境に配慮した成形加工システムの実用化
・海洋プラスチック問題の解決の一助となる金属容器への置き換え
・内容物の保存性をより高めつつ環境に配慮した缶用水性塗料の実用化
意匠・性能向上
・飲料缶(TULC、DI缶)の意匠性をさらに高めるための形状および印刷技術の開発
・飲料缶(TULC)における内容物の適用拡大および実用化
・リチウムイオン二次電池向け外装材などの新たな用途展開に向けた成形加工技術の開発
生産性向上
・次世代飲料缶生産システムの確立
②プラスチック製品の製造販売分野における主要な研究課題
環境対応
・リサイクル材活用技術の開発
・飲料用軽量ペットボトル・キャップの実用化
・減容化および廃棄性の向上により環境負荷を低減した新形状ボトルの実用化
・飲料用ペットボトル向けキャップへのバイオマス材料使用比率の向上
・フードロスに配慮し内容物の滑落性を向上させたポリオレフィンボトルの実用化
・パウチ用ラミネート材料の無溶剤システムの実用化
意匠・性能向上
・容器製造から充填殺菌までを一貫して行う生産システムの実用化
・飲料用ペットボトルのガスバリア性向上技術の開発
・持ちやすさや携帯性・開閉性を高めた新形状ボトル・キャップの実用化
・ポリオレフィンボトルやパウチにおける加飾技術の実用化に関する研究
・酸素吸収性能を付与し内容物の保存性を高めたポリオレフィンボトルの実用化
・容器内の酸素吸収性能と外部酸素遮断技術を付与したカップの実用化と密封検査技術の開発
・詰替機能を向上させたパウチの実用化
・レトルト可能な再封機能付きパウチの開発および実用化
・電子レンジ加熱に適した自動蒸気抜き機能付きパウチ・カップの開発および実用化
・酸素吸収性接着剤を適用した透明酸素吸収フィルムの実用化
③紙製品の製造販売分野における主要な研究課題
環境対応
・海洋プラスチック問題の解決の一助となる紙容器や紙蓋の開発
意匠・性能向上
・ナノセルロースを用いてガスバリア性を付与した紙コップの開発
④ガラス製品の製造販売分野における主要な研究課題
環境対応
・CO2削減を目的とした燃焼システムの開発
意匠・性能向上
・ガラスびんのコーティングおよび加飾技術の開発
生産性向上
・品質保証のための検査機の開発
[エンジニアリング・充填・物流事業]
当連結会計年度におけるエンジニアリング・充填・物流事業の研究開発費は
①エンジニアリング事業における主要な研究課題
生産性向上
・生産効率向上や省人化・脱炭素を可能とする生産システムの開発
②充填事業における主要な研究課題
意匠・性能向上
・新たな用途展開を図るための充填・殺菌・密封検査技術の開発
・2種類の液体を同時に吐出可能としたエアゾールシステムの適用拡大
・ドローンにエアゾール製品を搭載し遠隔操作で内容物を吐出可能とするシステムの開発
③物流事業における主要な研究課題
該当事項はありません。
[鋼板関連事業]
当連結会計年度における鋼板関連事業の研究開発費は
主要な研究課題
環境対応
・環境負荷の少ない缶用材料の開発
意匠・性能向上
・車載用二次電池材を中心とした電気・電子部品および自動車部品用に機能性を高めた表面処理鋼板の開発
[機能材料関連事業]
当連結会計年度における機能材料関連事業の研究開発費は
主要な研究課題
環境対応
・磁気ディスク用アルミ基板の製造工程における環境負荷低減
意匠・性能向上
・ハードディスクの大容量化に対応可能な磁気ディスク用アルミ基板の開発
・電子材料用セラミック素材の開発
生産性向上
・光学用機能フィルムの生産性向上
[不動産関連事業]
該当事項はありません。
[その他]
当連結会計年度におけるその他の事業の研究開発費は9百万円であります。
主要な研究課題
環境対応
・生分解性原料を用いた農業用フィルムの開発
※TULC(Toyo Ultimate Can)…材料や製造プロセスを根本から見直し、生産性と環境保全性を飛躍的に高めた2ピース缶