(1)経営方針
当社グループは長年にわたり橋梁、鉄骨、風車といった国民の生活基盤となる構造物の建設に従事し、『高い技術力で夢のある社会づくりに貢献する』を経営理念とし、関東と関西に保有する主力工場をはじめとする経営資源を最大限に活用し、技術力を結集した効率的な事業運営を目指し、橋梁事業、鉄骨事業、インフラ環境事業を通じ社会基盤整備の一翼を担う企業として自覚と責任を持った経営を行ってまいります。
(2)経営環境及び対処すべき課題等
今後の国内景気につきましては、米国の相互関税政策などの不確定要素を背景に、企業の収益なども下押しされ、金融緩和政策などが下支え要因として作用するものの成長ペースは鈍化するものと考えられます。一方、内需が持ち直すことやインバウンド消費がけん引し、人手不足対応やデジタル関連への投資、成長分野である脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靭化に向けた投資などは継続されるものと思われます。
橋梁・鉄骨業界におきましては、橋梁は新設橋梁の発注量が低迷していることなどによりさらに熾烈な受注競争が継続するものと思われます。頻発する自然災害時の復旧のためのインフラ整備や老朽化した橋梁の補修など順次発注される見通しではありますが、依然として厳しい事業環境が続くものと思われます。
鉄骨の発注量も2年連続400万トンを下回っており、鋼材などの資機材価格や人件費の高騰などに伴う首都圏を中心とした大型都市開発の計画や工期の見直しなどにより、既受注工事においても工程の遅れが工場の操業に大きく影響を及ぼす恐れがあります。
このような事業環境の下、当社は2025年6月13日付けで東京証券取引所スタンダード市場への市場区分変更を行い、引き続き持続的成長と中長期的な企業価値向上に取り組むことといたします。また、2025年度は当社グループの中期経営計画の最終連結会計年度に当たりますことから2025年度のスローガンを昨年度に引き続き「一人一人が利益を追求する変革の当事者たれ!」とし、利益追求と社会貢献、企業価値の向上に邁進する所存であります。
これまで多くの製品を納めてきた実績と培ってきた技術力を最大限に活かし、橋梁事業・鉄骨事業・インフラ環境事業を通じて社会基盤整備の一翼を担う企業として、自覚と責任を持った経営を行ってまいります。
株主の皆様におかれましては、今後ともなお一層のご支援・ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、気候変動対策をはじめとしたサステナビリティへの取り組みを推進し、その統括管理を目的としたサステナビリティ委員会を設置しております。
同委員会は、代表取締役社長を委員長とし、取締役(独立社外取締役を含む)、執行役員により構成されております。また、委員長が認めた社内外の有識者を構成員とすることができるものとしております。
同委員会の役割は以下の通りです。
(1)基本方針、戦略、マテリアリティ、目標設定、実行計画などの検討
(2)当社グループの社内推進体制の構築、展開、浸透
(3)各種施策の進捗管理
(4)取組状況の取締役会への定期的報告
取締役会は同委員会の役割遂行状況について監督を行い、必要な指示を行っております。
経営理念に掲げる通り、当社優位性の源泉はこれまでに培い継承してきた技術力にあり、当社の技術力を支える代表的なものが人的資本であります。人的資本への投資は重要な経営事項であると捉え、多様な人財が最大限の能力を存分に発揮できる企業であることを目指しております。
各種資格取得、スキル経験保有、人財開発投資、知的財産、ダイバーシティ&インクルージョン、労働安全環境整備などをテーマとして社内環境整備を進めております。
経営リスクを一元的に管理し、評価、モニタリングすることを目的として設置されている経営リスク管理委員会において、当社グループのサステナビリティに関する事項のリスク管理を行うこととしております。
組織全体のリスク管理の観点から議論を行い、その結果を取締役会へ報告し、サステナビリティ委員会へもフィードバックされております。
人的資本や多様性に関する指標及び目標は次の通りです。適宜、見直しを行い、取り組みの充実を図ってまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 公共事業への依存及び橋梁市場縮小によるリスク(発生可能性:中、影響度:大、発生時期:中期)
当社グループの主力事業の一つである橋梁事業は、その相当分が国、地方公共団体、高速道路会社からの発注によるものでありますが、政策や財政事情により近年の発注量は抑制基調となっております。今後さらに発注量が減少となる場合は、当社グループの受注量減少を招き、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、民間需要への対応、橋梁以外の鋼構造物への取組みを進めてまいります。
(2) 鋼材価格等の変動に関するリスク(発生可能性:中、影響度:大、発生時期:中期)
鋼材等材料価格が高騰した際、価格上昇分が速やかに製品価格に反映されない場合は、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、発注者への価格転嫁を図るべくきめ細かく交渉しております。
(3) 原価先行に伴うリスク(発生可能性:大、影響度:大、発生時期:短期)
当社グループの主力事業の橋梁事業及び鉄骨事業においては、取引先の追加変更要望に対応して、原価が先行発生する場合があります。最近の工事大型化に伴い、先行する原価が多額になっておりますが、タイムリーに売上追加計上ができない場合は、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、発注者との関係性を強化し、追加変更精算をきめ細かく行う取り組みを進めてまいります。
(4) 安全上のリスク(発生可能性:小、影響度:大、発生時期:特定期間なし)
当社グループが取り扱う鉄構製品は大きな重量物で、工場製作や現場設置において危険な作業を伴います。当社グループにおいては安全対策を何よりも優先しておりますが、万が一重大災害や重大事故を起こした場合は、直接的な損害だけではなく、社会的信用の失墜、指名停止措置等の行政処分により受注量が減少し、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、専門部署による安全パトロール強化、作業手順書の整備及び徹底、各種安全啓蒙活動等に取り組んでおります。
(5) 品質保証に関するリスク(発生可能性:小、影響度:大、発生時期:特定期間なし)
当社グループにおいては品質管理に万全を期しておりますが、万が一瑕疵が見つかった場合は、是正回復費用や損害賠償費用が発生するだけでなく、顧客からの信用失墜により受注量が減少し、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、ISO9001に基づく品質マネジメントシステムを遵守することにより品質保証体制構築を行っております。
(6) 資金調達及び金利変動に関するリスク(発生可能性:中、影響度:中、発生時期:中期)
当社グループには相当額の有利子負債が存在しております。資金調達に支障が生じた場合や金利水準が高騰した場合は、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、計画的な資金調達活動を行うと共に、取引金融機関との関係性強化を通じて資金調達の円滑化に努めております。
(7) 労務費の変動に関するリスク(発生可能性:中、影響度:大、発生時期:中期)
人材不足等による労務費が高騰した際、労務費上昇分が速やかに製品価格に反映されない場合は、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、人員数の最適化、協力業者との関係性強化による安定したサプライチェーン構築、省人化設備導入を進めてまいります。
(8) 調査研究費の先行発生に伴うリスク(発生可能性:中、影響度:大、発生時期:中期)
当社グループでは、陸上風車の製品ラインアップを拡充する目的から試験研究活動を加速しております。この結果、製品開発に伴う費用が先行し、インフラ環境事業はセグメント損失の状況が続いております。再生可能エネルギー導入に対する機運の高まりから成長が見込める市場であると考え取り組んでおりますが、想定どおりの市場成長と需要拡大が実現しない場合は、先行する費用を回収できず、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、陸上風車の営業体制強化等に取り組んでおります。
(9) 新規事業展開に関するリスク(発生可能性:中、影響度:大、発生時期:中期)
当社グループでは、新たな事業として洋上風車タワー製造への進出を計画し、補助金を活用した大規模設備投資を実施中であります。また、現在は試験体製作にも取り組んでおります。2026年にサプライヤー認証を取得、2027
年以降順次プロジェクト毎に製作契約を締結するスケジュールにて事業化を進めております。国内の洋上風車市場は、第7次エネルギー計画における国産再生可能エネルギーの普及拡大政策の下、官民協議会による洋上風力産業ビジネス等でも国内生産の拡大が掲げられている状況にあることから、本事業は今後成長が見込まれるものであります。また、当社技術力を活用できる分野でもあると考えております。洋上風力プロジェクトは第1ラウンドから第3ラウンドまで入札が進んでおりますが、プロジェクトの開始までに長期間を要することから、計画時から事業実施時までに生じた資材高騰等による大幅な事業環境の変化が生じております。こうした状況に対し経済産業省による補助金制度の変更が行われておりますものの、事業環境の変化により工程が遅れる場合や、想定どおりの需要が実現しない場合は、投資回収ができず、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、洋上風車タワー製造用設備を利用してその他の大型鋼構造物の製缶や当社陸上風車部品の製造などに取り組むことも検討してまいります。
(10) 固定資産の減損に関するリスク(発生可能性:中、影響度:大、発生時期:中期)
各事業セグメントにおいて継続的な採算悪化が認められる場合は、関係する固定資産について減損損失を計上する必要性が生じ、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。また、新規に取り組む洋上風車タワー製造事業において、予定の収益計上ができない場合にも、関係する固定資産について減損損失を計上する必要性が生じ、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、各事業において採算性の維持向上に取り組むと共に、設備投資については将来の市場環境及び投資効果の検証を踏まえ厳格な執行を行ってまいります。
(11) 法的規制に関するリスク(発生可能性:小、影響度:大、発生時期:特定時期なし)
当社グループは、建設業法、独占禁止法及び労働安全衛生法等の各種法的規制を受けております。万が一法令違反が発生した場合には、行政処分等により、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、コンプライアンス部署による研修及び社内監査等を通じ法令遵守の浸透に取り組んでおります。
(12) 情報管理及び情報システムに関するリスク(発生可能性:小、影響度:大、発生時期:特定時期なし)
当社グループは、取引先から受領した各種情報、財務情報、知的財産を含む技術情報及び社内外の個人情報等を保有しております。これらの情報資産の取扱いについては、規程等を定め厳格な対応を期しておりますが、万が一情報漏洩やシステム障害が生じた場合は、損害賠償費用の発生及び業務停滞等により、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、情報漏洩やシステム障害の防止を目的とした適切な技術対策、社内管理体制の整備及び社員教育等に取り組んでおります。また、外部からの不正アクセスを常時監視するとともに、有事の際に適切な対応を実現する体制を構築しております。
(13) 自然災害等の発生に関するリスク(発生可能性:小、影響度:中、発生時期:特定時期なし)
地震、台風等の大規模な自然災害等により、工事の中断や大幅な遅延、当社グループの事業所等が被害を受け事業活動が停滞した場合は、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。このリスクへの対応策として、BCP(事業継続計画)を策定し、継続的に教育と訓練を実施しております。
(14) 主要な事業活動の前提となる事項について(発生可能性:小、影響度:大、発生時期:中期)
当社グループは、建設業を主たる業としており、当該事業は「建設業法」により、国土交通省または都道府県知事の許可を取得する必要があります。「建設業法」上、建設業許可の有効期限は5年間とされており、当該有効期間を超えて事業を継続する場合は許可を更新する必要があります。万が一「建設業法」に抵触し、当該営業の全部又は一部の停止命令又は許可取り消し等の処分を受けた場合は、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。当社グループの許認可、免許及び登録等の状況は後述のとおりでありますが、本書提出日現在において、許認可等の継続に支障を来す要因は発生しておりません。
当社グループの許認可、免許及び登録等の状況
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、設備投資を中心とした内需の持ち直しとインバウンド消費がけん引し、緩やかな回復基調で推移いたしました。物価高による節約志向が根強い一方、大企業を中心に2年連続となる5%を超える賃上げの実現性が高まったことなどで、個人消費は持ち直しつつあると思われます。しかしながら、物価高に加え、人件費や物流費の高騰が長期化がしていることから、人手不足とコスト高により、特に中小企業においては経営が圧迫されつつあります。日銀の利上げを見越した長期金利の上昇や米国トランプ政権での相互関税政策への懸念、各地で頻発する軍事衝突など、国内外での不確実性の増加は、企業の収益計画や設備計画における不安要素となり、日本経済に大きなダメージとなる恐れがあります。
橋梁・鉄骨業界におきましては、橋梁の発注量は、前連結会計年度を下回っており、低調な発注量のなか大型新設橋梁においてはさらに熾烈な受注競争が続いております。また、鉄骨の発注量も前連結会計年度を下回り、2年連続400万トンを割り込みました。首都圏を中心とした再開発案件は順次着工されておりますが、引き続き建設資材費や人件費が高水準で推移していることに加え、計画の延期や見直しなどによる業績の下振れが懸念されます。
このような事業環境のなか、当連結会計年度の受注高は441億5千5百万円(前連結会計年度比11.3%増)となりました。売上高は405億5千3百万円(同26.8%減)となりました。
損益につきましては、営業利益2億8千8百万円(同60.1%減)、経常利益6億3千8百万円(同51.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益を特別利益に計上したことなどにより12億7千4百万円(同103.8%増)となりました。
セグメント別の概要は次のとおりであります。
― 橋梁事業 ―
当連結会計年度の受注高は、近畿地方整備局五條新宮道路風屋川津工区1号橋上部工事、九州地方整備局鹿児島3号橋西前田川橋上部工工事他の工事で184億3千3百万円(前連結会計年度比45.5%増)となりました。
売上高は、西日本高速道路株式会社令和4年度隼人道路隼人港橋(鋼上部工)工事、東京都箱根ヶ崎陸橋(4)鋼けた製作・架設工事その2他の工事で158億5千6百万円(同22.6%減)となり、これにより受注残高は243億8千8百万円(同11.8%増)となっております。
― 鉄骨事業 ―
当連結会計年度の受注高は、大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発他の工事で256億2千2百万円(前連結会計年度比2.5%減)となりました。 売上高は、品川開発プロジェクト(第1期)4街区本体工事、(仮称)東五反田二丁目計画新築工事他の工事で234億5千2百万円(同31.4%減)となり、これにより受注残高は294億4千1百万円(同8.0%増)となっております。
― インフラ環境事業 ―
風力発電等による環境事業、インフラを中心とした海外事業における当連結会計年度の受注高は、9千8百万円(前連結会計年度比86.4%減)、売上高は大豊風力発電所新設工事風力発電設備他の工事で7億1千2百万円(同318.1%増)となり、これにより受注残高は6千万円(同91.0%減)となっております。
― 不動産事業 ―
当社グループは、大阪市西淀川区にある大阪事業所の未利用地部分等について賃貸による不動産事業を行っており、当連結会計年度における不動産事業の売上高は4億7百万円(前連結会計年度比0.6%減)となっております。
― その他 ―
当社グループは、その他の事業として印刷事業等を行っており、当連結会計年度におけるその他の売上高は、1億2千3百万円(前連結会計年度比4.6%減)となっております。
当連結会計年度末における総資産は693億2千4百万円(前連結会計年度末比75億7百万円減少)となりました。
資産の部では、受取手形・完成工事未収入金及び契約資産が55億3百万円減少したことなどにより流動資産は438億6千3百万円(同56億5千5百万円減少)となりました。また、機械・運搬具が6億7千3百万円増加したものの投資有価証券が23億5千2百万円減少したことなどにより固定資産は254億6千万円(同18億5千2百万円減少)となりました。
負債の部では、支払手形・工事未払金が39億7千9百万円減少したことなどにより流動負債は199億1千3百万円(同59億6千万円減少)となりました。また、長期借入金が21億7千6百万円増加したものの社債が17億5千万円、繰延税金負債が4億4千3百万円減少したことなどにより固定負債は175億8千4百万円(同2億9千9百万円減少)となり、負債合計は374億9千7百万円(同62億6千万円減少)となりました。
純資産の部では、利益剰余金が9億3千2百万円増加したもののその他有価証券評価差額金が12億9千3百万円減少したことなどにより、純資産は318億2千6百万円(同12億4千7百万円減少)となりました。
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ37億2千3百万円増加し103億1千7百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は81億8千4百万円(前連結会計年度85億7千7百万円の支出)となりました。これは売上債権の減少による収入59億5千5百万円があったことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果支出した資金は8億6千9百万円(前連結会計年度1億4千6百万円の支出)となりました。これは投資有価証券売却による収入22億2千1百万円、補助金の受取13億6千1百万円があったものの、固定資産取得による支出44億5千4百万円があったことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果支出した資金は35億9千1百万円(前連結会計年度74億3千万円の収入)となりました。これは長期借入による収入49億9百万円があったものの、長期借入金の返済による支出28億4千1百万円、社債の償還による支出21億円、短期借入金の返済による支出19億3千万円があったことなどによるものであります。
(注) 上記生産高は請負契約高に生産進捗率を乗じて算出しております。
(注) 1.売上高に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として橋梁の発注量は、前連結会計年度を下回っており、低調な発注量のなか大型新設橋梁においてはさらに熾烈な受注競争が続いております。
また、鉄骨の発注量も前連結会計年度を下回り、2年連続400万トンを割り込みました。首都圏を中心とした再開発案件は順次着工されておりますが、引き続き建設資材費や人件費が高水準で推移していることに加え、計画の延期や見直しなどによる業績の下振れが懸念されます。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
橋梁事業の経営成績は(1)経営成績等の状況の概要に記載したとおり受注高184億3千3百万円、売上高158億5千6百万円、受注残高243億8千8百万円となっており、セグメント利益は25億6千万円、セグメント資産は187億7千3百万円であります。今後も安定した受注と収益率の向上を図ってまいります。
鉄骨事業の経営成績は(1)経営成績等の状況の概要に記載したとおり受注高256億2千2百万円、売上高234億5千2百万円、受注残高294億4千1百万円となっており、セグメント損失は1億4百万円、セグメント資産は215億7千7百万円であります。今後も安定した受注と設備投資等による生産性の向上による収益率の向上を図ってまいります。
インフラ環境事業の経営成績は(1)経営成績等の状況の概要に記載したとおり受注高9千8百万円、売上高7億1千2百万円、受注残高6千万円となっており、セグメント損失は4億5千9百万円、セグメント資産は24億6千5百万円であります。今後は受注の拡大と設備投資等による生産性の向上による収益率の向上を図ってまいります。
不動産事業の経営成績は(1)経営成績等の状況の概要に記載したとおり売上高4億7百万円となっており、セグメント利益は3億2千3百万円、セグメント資産は10億5千5百万円であります。今後も安定した収益が見込めますが、一部該当資産の老朽化対策が必要となります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの資金状況は、営業活動の結果得られた資金は81億8千4百万円(前連結会計年度85億7千7百万円の支出)となりました。これは売上債権の減少による収入59億5千5百万円があったことなどによるものであります。
投資活動の結果支出した資金は8億6千9百万円(前連結会計年度1億4千6百万円の支出)となりました。これは投資有価証券売却による収入22億2千1百万円、補助金の受取13億6千1百万円があったものの、固定資産取得による支出44億5千4百万円があったことなどによるものであります。
財務活動の結果支出した資金は35億9千1百万円(前連結会計年度74億3千万円の収入)となりました。これは長期借入による収入49億9百万円があったものの、長期借入金の返済による支出28億4千1百万円、社債の償還による支出21億円、短期借入金の返済による支出19億3千万円があったことなどによるものであります。
以上の結果、当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ37億2千3百万円増加し103億1千7百万円となりました。
なお、当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行5行と総額50億円の貸出コミットメントライン契約及び取引銀行5行と総額70億円の貸出コミットメントライン契約を締結しております。また、設備投資を目的として、取引銀行5行と総額57億円のコミット型タームローン契約を締結しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、種々の見積りが必要になります。これらの見積りは当社グループが現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(コミット型シンジケートローン契約)
2024年4月1日前に締結されたコミット型シンジケートローン契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する改革府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
当社グループは、橋梁・鉄骨の製作及び架設段階での最先端の技術並びに風力発電に関する研究開発活動を行っております。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
当連結会計年度の研究開発の部門別内容については以下のとおりであります。
―橋梁事業―
当連結会計年度に実施した研究開発項目についてその概略の内容を以下に示します。
1.建設生産システム全体の生産性向上へ資するICT技術を活用した研究開発
2.補修・補強工事に必要な要素技術の開発
3.新たな架設方法の開発
4.溶接部の非破壊検査システムの開発
5. 安全性向上のための動画処理技術の開発
1.につきましては、前連結会計年度からの継続研究であります。官民研究開発投資拡大プログラム(通称PRISM)の支援を受けて開発した、UAV(モジュール橋)を活用したハイブリッド測量により出来形一元管理を行う技術の実装を進めています。本技術は、「ICTの全面的な活用」として受注工事に採用されており、施工工程における計測の効率化と品質確保に貢献しています。昨年度には、改良と施工実績をもとにNETIS登録を完了しており、引き続き2件の受注工事において本技術を活用し、技術評価の向上を目指した取り組みを継続しています。今後は、さらなる汎用性の向上と導入拡大を目指します。
2.につきましても、前連結会計年度からの継続研究であります。これまでに、現場施工で重要な役割を果たす継手部材用の表面処理剤などの開発商品について、販売促進や適用範囲の拡大に向けた検証試験を継続して実施しています。
3.につきましても、前連結会計年度からの継続研究であります。新たな橋梁仮設用手延べ機の、商品化に向けた開発を続けています。該当工事への提案・採用を通じて、受注機会の拡大及び収益確保を目指しております。あわせて、本手延べ機に採用した継手形式を応用したモジュール橋の開発をしており、技術展開にも取り組んでいます。
4.につきましても、前連結会計年度からの継続研究であります。鋼板の完全溶込み溶接部の非破壊検査の生産性向上を目的として、自動検査システムの開発を進めています。洋上風車のタワー部材など大型構造部材を対象とした効率的な溶接部の非破壊検査を実現するため、高度な非破壊検査手法,AI画像判定を用いた自動検査システムを構築しました。試験施工により技術的な有効性を確認しており、今後は実用化に向けての取り組みを進めてまいります。
5.につきましては、製作・施工時における作業者の安全確保を目的として,大学との共同研究を行っております。施工現場の映像を用いた動画分析とAI判定を活用し、危険予知の高度化や作業効率の向上を目指したシステムの開発について取り組んでおります。さらに,動画分析技術を活用し、工程管理への展開についても検討を進めております。
当連結会計年度における橋梁事業の研究開発費は
―鉄骨事業―
当連結会計年度に実施した項目と概略の内容を以下に示します。
1.780N/mm²級鋼(80㎏鋼)の全層多層サブマージアーク溶接施工法の確立
2.780N/mm²級鋼(80㎏鋼)を用いたエレクトロスラグ溶接の性能検証
3.板厚60mm~80mm角溶接のサブマージアーク溶接品質安定に向けた検証試験
4.エレクトロスラグ溶接の品質安定に向けた検証試験
5.ポータブルサブマージアーク溶接を用いた異形柱角継手の生産性向上試験
1.につきましては780N/mm²級鋼(80㎏鋼)を用いた柱の製作で、角溶接は従来初層の割れ発生の観点から、下盛りCO²のあと多層サブマージアーク溶接の施工としておりました。これを施工効率の向上のため、初層から多層サブマージアーク溶接を実施できる施工技術を確立するための研究になります。前連結会計年度からの継続研究でありますが、現状では初層無欠陥の再現性が確保できず、新しい溶接材料の適用についても検討を開始したことから、当連結会計年度は実施を保留しております。
2.につきましても前連結会計年度からの継続研究であります。780N/mm²級鋼(80㎏鋼)を用いた柱の製作のうち、内ダイアフラムをエレクトロスラグ溶接とした部位の性能と品質を確立するための研究になります。当連結会計年度は実物件での施工試験を実施中であり、次連結会計年度ではまた別の予備試験および実物件での施工試験を実施予定であります。
3. につきましては既存サブマージアーク溶接の品質安定を図るため、特に板厚60mm~80mmについて性能検証試験を実施しております。当連結会計年度はキュービクルの増設、検証試験を経て実施工に移行し、板厚70mm以下の1パス溶接は品質が安定しております。土木物件の板厚70mm超~85mmの2パス溶接についても、溶接外観はまだ改善の余地がありながらも、内部品質は良好となっております。今後は予備試験を行い建築鉄骨物件への適用を検討します。また、開先底部の溶け込みを改善すべく、φ5.1ワイヤの先行極への適用についても検討します。次連結会計年度では、検証実験を行って従来のφ6.4ワイヤとの比較を行い、その有用性について検討します。
4.につきましてはエレクトロスラグ溶接の品質安定化に向けた取り組みになります。
溶接始終端の処理についての改善を進めます。エンドタブ、スタートタブ形状の最適化、作業手順の見直しを行います。
5.につきましては柱角継手へのサブマージアーク溶接を適用することにより、生産性向上を図る取り組みとなります。当連結会計年度に施工試験に合格し、実物件での適用を開始しており、本研究としては本会計年度で完了となります。
当連結会計年度における鉄骨事業の研究開発費は
―インフラ環境事業―
環境部門における当連結会計年度に実施いたしました項目と概略の内容を以下に示します。
1.KWT300台風仕様の技術開発
2.1MW風力発電機の技術開発
3.洋上風車用タワーの高効率生産技術の開発
1.につきましては、既にラインナップとして製造・販売している中型風力発電機KWT300の台風仕様の開発をしています。沖縄県、九州南部などの一部には、風力発電機の規格で定められた最大設計風速でも導入が困難な地域が数多く存在します。そのような地域にも風力発電機の導入促進を図るため、最大設計風速が90m/sを超える風車の開発を進めています。沖縄県の宮古島に風車を建設し、これから各種試験を実施して、型式認証を取得します。
2.につきましては、耐用年数を迎える総出力が2MW以下の風力発電所が全国に多数存在し、そのリプレイス需要に対応できる風力発電機が少ないことから、これまで乱流に強い300kW風力発電機を生産してきた経験をもとに、定格出力1MWで、台風地域にも対応できる風力発電機を開発しています。現在は、型式試験のための風況観測を実施しており、来期初号機の建設を予定しています。
3.につきましては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「グリーンイノベーション基金事業/洋上風力発電の低コスト化/次世代風車技術開発事業/洋上風車用タワーの高効率生産技術開発・実証事業」の補助金を活用し、合理化溶接技術の開発、ブラスト・塗装ロボット施工システムの開発、AIを活用した非破壊検査システムの開発を進めており、現在は試験体製作に取り組んでいます。
当連結会計年度におけるインフラ環境事業の研究開発費は