第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「鋼の強靭さと人の優しさを融合させ、高品質で安心・安全な社会基盤づくりに貢献する」ことを経営理念として掲げ、「社会インフラが成熟・多様化していく時代に適時的確に対応し、あらゆる分野において、『受け継ぐ技術、さらなる高みへ』を合言葉に、信頼される総合エンジニアリング企業を目指す」ことをビジョンとしております。新(第5次)中期経営計画では、持続的成長と企業価値の向上を実現するために、「変革とチャレンジ」をキーワードとして、中長期的に基幹事業ポートフォリオの最適化を図り、事業利益のさらなる向上を目指すことを基本方針としております。

 

(2)経営戦略等

① 第5次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)の基本方針

持続的成長と企業価値の向上を実現するために、第5次中期経営計画の基本方針は、『変革とチャレンジ』をキーワードとして、中長期的に基幹事業ポートフォリオの最適化を図り、事業利益のさらなる向上を目指します。

当社のメイン事業領域としている橋梁需要は、新設橋梁から橋梁保全にシフトしつつある一方で、人財不足の恒常化と材料費の高騰等、受注環境はますます厳しさを増すことが予想されます。こうした市場環境の中で、人財や設備、資金等の資源を有効に活用し、事業利益のさらなる向上を目指すため、事業戦略、財務戦略及び経営基盤強化を下記のとおり実行します。

② 第5次中期経営計画の2年目に向けて

当社グループは、「第5次中期経営計画」の2年目であり、創業130周年となる2025年度を迎えました。「変革とチャレンジ」をキーワードに、更なる事業利益の向上を目指し、より一層の企業価値向上を図ってまいります。具体的な取り組みといたしましては、新設橋梁事業においては、中部地区を重点とした受注戦略のもと、配置技術者の増強と提案力の強化に努めてまいります。また、橋梁保全事業においては、大規模保全工事の異業種・地元企業及びグループ会社と連携した戦略的工事遂行により、顧客に提供価値のあるビジネスモデルの構築と安定した売上げ確保に努めてまいります。鉄骨・鉄構事業においては、過年度に投資を実行した設備のフル稼働を目指し、引き続き作図能力の増強を進め、生産性の向上と受注競争力アップに努めるとともに、昨年10月にM&Aで取得した㈱菊池鉄工所とのシナジー効果の早期実現を目指してまいります。不動産賃貸事業においては、所有賃貸物件の稼働率のさらなる向上に努めるなど、一層の収益向上を図ります。海外・新規事業においては、アスファルト添加剤のフィリピン全域への事業展開を目指すとともに、土木関連の民間活用事業(PFI、PPP)に関わる情報収集を継続してまいります。財務戦略としては、引き続き利益の拡大によるキャッシュ・フローの向上と投資有価証券の売却、銀行借入等、資本効率を意識した多様な調達手段を活用し、人的資本や設備等への投資並びに株主還元を戦略的に行ってまいります。経営基盤強化としては、DX化の取り組みとして、全社員を対象としたDX教育の実施によりデジタルリテラシーの底上げを図ってまいります。また、財務管理や原価管理のための基幹システムの再構築を進めており、来年度中には本稼働を予定しています。人財戦略においては、社員エンゲージメントサーベイで明らかになった課題を研修に織り込み、人財育成に取り組むとともに、働きがいのある労働環境の整備、社員エンゲージメントの向上に努めてまいります。

 

Ⅰ.事業戦略

(ⅰ) 鋼構造物製造事業

a 新設橋梁事業

新設橋梁においては、今後の市場環境変化を見据えた事業戦略の構築に取り組みます。そのためには受注戦略を強化し、中部地区を重点とした受注、大阪湾岸道路西伸部海上部などの大規模な新設プロジェクトの受注に注力してまいります。また設計変更対応力の強化、DX化の推進による生産プロセスの強化、工場原価管理の強化など、利益向上のあらゆる施策を実行してまいります。

b 橋梁保全事業

橋梁保全においては、市場の更なる拡大が期待され、大型特殊橋保全工事に加え中小規模橋梁保全案件を継続して受注することを目指し、高速道路の大規模更新/床版取替工事にも注力いたします。橋梁保全市場の多様化に対応し、エンジニアリング力に厚みを増すため、地元ゼネコンやグループ会社との連携を推進し、更なる強化と拡大に努め、利益向上のあらゆる施策を実行してまいります。

c 鉄骨・鉄構事業

鉄骨・鉄構においては、新設橋梁発注量の中長期的縮小が見込まれる中で、首都圏超高層案件に取り組むことを新規事業と同等のチャレンジと位置付けし、設備投資と人的投資を行いつつ社内体制を確実に構築するとともに、着実な成長を目指してまいります。

(ⅱ) その他の事業

a 不動産賃貸事業

不動産賃貸事業においては、安定的な収益源として、一定規模を確保しつつも、資本効率を考慮した資産の入れ替え、売却等の実施も検討してまいります。

b 材料販売事業

材料販売事業においては、新規顧客の開拓及び既存顧客への販売増加を積極的に進め、売上拡大を図ります。厚板の外部販売比率を拡大するために、商社鉄骨と一般ファブリケーターへの販売を強化してまいります。

c 海外・新規事業

海外その他並びに新規事業においては、事業創造本部で一元して掌握いたします。海外現地法人の更なる利益拡大を目指すとともに、大学や異業種とのアライアンスを構築し、既存事業における技術開発に繋げ、将来に向けての種まきとなる新規事業の企画をしてまいります。

 

Ⅱ.財務戦略

財務戦略としては、利益の拡大による営業活動キャッシュ・フローの向上と投資有価証券等の売却、銀行借入等、資本効率を意識した多様な調達手段を活用し、人的資本や設備、M&A等への投資並びに株主還元を戦略的に行ってまいります。

株主とのコミュニケーション強化として、ESGやサステナビリティなどの非財務情報に関する目標を設定し、モニタリングを開始するとともに積極的なIR活動を実施いたします。

 

Ⅲ.経営基盤の強化

(ⅰ) DX戦略

DX戦略においては、業務の効率化や自働化、ロボット化、デジタルアーカイブの構築等、財務、工場、工事現場等のあらゆる場面でDX化を進めてまいります。

(ⅱ) 人財戦略

人財戦略においては、事業戦略と連動させ、変化する事業環境にも適応できる専門人財の育成や多様な人財の活用・配置、社員の価値観と自律性を尊重し、働きがいのある労働環境を整備し社員エンゲージメントの向上に取り組む等人的資本にも積極的に投資を進めてまいります。

 

第5次中期経営計画は、本業である鋼構造物製造事業における利益のさらなる向上を目指すことを最重要課題と位置づけ、資本効率を意識した経営の実現に向けた基盤固めを行う3か年と考えております。上記の戦略を実行することによって中長期的にROE等の改善と資本コストの低減を実現し、次期中期経営計画での資本効率を意識した目標設定の具体化につなげていきたいと考えております。

 

(3)経営環境

経営環境につきましては、国内建設市場におきましては、国土強靭化やインフラ老朽化対策のための予算が前年並みに確保される見込みで、公共工事の発注金額は前年度から大きく変動しないものと予想されます。また民間建設投資額におきましても前年度と同水準で推移すると予想されます。その一方、建設資材価格・労務価格の高騰や慢性的な担い手不足、時間外労働の上限規制の適用などにより、工事発注量の低下が見込まれます。受注量の確保、一層の労働環境の充実及び生産性向上が求められる状況にあります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループが対処すべき主な課題は以下のとおりであります。

①新設橋梁事業

新設橋梁事業につきましては、国内の橋梁需要が新設橋梁から橋梁保全へのシフトが進み、中長期的には新設橋梁の市場は減少傾向にあります。但し、足元では、大阪湾岸道路西伸部海上部などの大規模プロジェクトが本格化し、中部地区においてもリニア関連事業や空港関連事業に伴う大型橋梁の発注が見込まれています。一方で、当社グループは、過去の積極的な受注活動により、89期までは現場工事は繁忙な状況となっており、現場技術者の余裕も少なくなっております。今後、発注量の減少が見込まれる中で、上記のプロジェクトを受注し、利益を確保していくためには、受注に向けた営業戦略と高い技術力を有する現場技術者の確保が課題となります。

②橋梁保全事業

橋梁保全事業につきましては、国土強靭化・防災減災への取り組み強化により、高速道路の床版取り替えや橋梁の耐震補強等修繕・更新需要は高水準の発注量を維持していくことが見込まれます。特に大規模な保全工事においては高度で総合的な技術力が求められるため、特殊橋保全という技術ニーズに対応できるように更なる人員確保と人財育成、技能伝承が課題となります。

③鉄骨・鉄構事業

鉄骨・鉄構事業につきましては、首都圏再開発需要を中心に需要は当面継続しますが、工事費の高騰などにより遅延や延期などが見込まれています。中部地区においても、名古屋駅前再開発案件や、全国的には半導体やデータセンターも堅調な需要が見込まれます。一方でポストコロナや残業規制の強化等による働き方などの変化によるオフィス需要に注意が必要です。また、首都圏再開発案件は、これまで当社グループが得意としてきた発電所等のエネルギー関連施設の建設とは異なる高難度物件であり、さらなる成長に向けて、図面・管理体制の再構築やBIMの活用などフロントローディングの強化と、大型設備投資を踏まえた生産効率向上施策推進、収益管理強化が課題となります。

④デジタル化及び働き方改革

上記の①~③の取り組み課題に共通するリスクは人財不足です。我が国の労働者人口は既に減少し始めており、働き方改革により女性と高齢者の労働参加率を高める取り組みがなされています。しかし、絶対的な人口不足や労働者人口自体の高齢化は着実に進行しており、ロボットやデジタル化の活用が省力化、省人化対策として期待されています。当社グループにおきましても、働き方改革による人財確保やロボット・デジタル技術等DX推進による生産性向上、ビジネスモデルの変革、高齢化に伴う技術者及び工場作業員の人財不足への対応と技術伝承が課題です。

⑤財務上の課題

当社グループは、第5次中期経営計画の実行により、更なる事業資金が必要となってまいります。前連結会計年度までは、概ねグループ内の自己資金で事業資金を確保しておりましたが、売上規模の拡大に伴い、事業資金も増加することが見込まれますので、今後は、第5次中期経営計画の財務戦略に沿って、利益のさらなる向上を図り、営業キャッシュ・フローの創出に注力する一方、投資有価証券等の売却、銀行借入等、資本効率を意識した多様な調達手段を活用し、人的資本や設備、M&A等への投資や株主還元を戦略的に行っていきます。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

橋梁・鉄骨業界を取り巻く経営環境が一層の厳しさを増していくなか、当社グループといたしましては、企業競争力の強化に努め、適正な受注量の確保を重要な施策と位置付け、売上高、利益面でバランスの取れた収益力を目指しており、第5次中期経営計画では、売上高、営業利益(営業利益率含む)及び経常利益(経常利益率含む)を目標指標としております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)基本方針

私たち、瀧上グループは、「鋼の強靭さと人の優しさを融合させ、高品質で安心・安全な社会基盤作りに貢献する」という経営理念のもと、新設橋梁から橋梁保全、鉄構造製作とそれらに関わるあらゆる分野における事業活動を通じて、社会課題の解決や地球環境の保護等をはじめとしたサステナブルな社会への貢献とともに私たち自身の持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでまいります。

 

(2)ガバナンス

当社グループのサステナビリティに関するガバナンス体制は、サステナビリティに関わる基本方針、事業活動におけるリスクと機会を審議し管理する体制として、経営戦略会議を設置しております。当会議体は、代表取締役社長を筆頭に常勤取締役、執行役員及び常勤監査等委員が出席し、原則毎月1回以上開催し、サステナビリティ関連を含むリスクと機会について検討を行い、重要な方針や施策については、取締役会に報告され、審議・決定がなされます。

また、内部監査部門である監査室では、当社グループ全般における監査室監査を通じて、当社の各部署及びグループ会社レベルでのサステナビリティ関連を含むリスク等の監視及び統制に係る提言を実施しており、その結果については、監査室管掌である代表取締役社長を通じて、取締役会へ定期的に報告されるとともに、監査等委員会へは監査室より定期的に直接報告されております。

 

(3)戦略

当社グループは、長年にわたり培われてきたゆるぎない技術と技能、そして顧客の信頼をベースとして橋梁事業、鉄構事業を通じてそれぞれの時代の要請に応えてまいりました。これからも、変化していく社会環境及び事業環境の中で、社会課題の解決や地球環境の保護等をはじめとしたサステナブルな社会への貢献とともに、持続的な成長と企業価値の向上を実現するための課題に対し、優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しました。

マテリアリティの特定にあたり、以下のプロセスを経て決定しました。また、マテリアリティの目標と施策については中期経営計画の中に取り込み、その進捗状況については、中期経営計画のフォロー会議の場で報告されるとともに、重要なものについては経営戦略会議で審議され、取締役会がモニタリングを行います。

 

〇マテリアリティの特定プロセス

ステップ1

サステナビリティ検討プロジェクトチームの設置

役員を中心としたメンバーと外部アドバイザーで構成するチームを組成し、サステナビリティに対する取り組みを検討

ステップ2

事業課題・社会課題・地球環境課題の洗い出し

経営理念やビジョン、事業環境、SDGsの観点や他社の取組事例等を参考に、社会的課題、地球環境課題並びに当社グループの成長と企業価値向上に関わる課題を洗い出し

ステップ3

課題の整理と選定

社内プロジェクトにおいて、課題の優先順位付け、整理・統合を実施し、マテリアリティ候補を選定

ステップ4

マテリアリティの特定

マテリアリティ候補とした項目について、経営戦略会議での審議の後、取締役会決議によりマテリアリティを特定

 

〇マテリアリティと施策

ESG

リスクと機会

マテリアリティ

施策

E(環境)

機会

国土強靭化に向けた安全安心な社会インフラづくりへの対応

国土強靭化に向けた安全安心な社会インフラづくりへの対応

リスク

気候変動や自然災害リスクへの対応

温室効果ガスの削減等の取り組みを通じ、事業活動による環境負荷の低減

S(社会)

機会

品質の確保

品質不適合の再発防止

機会

生産性の向上(DXによる)

DX推進による効果的な生産/施工体制の構築

BIM/CIMの活用の高度化による設計品質・性能の向上

機会

技術開発

既存材料や製品への高付加価値対応

架設技術の開発

リスク

労働安全衛生の確保

労働災害の防止

機会

人的資本経営の推進

多様な人財の活用

人財の育成及びキャリア開発

ワークライフバランスの推進

機会

地域貢献

地域との共生

G(ガバナンス)

リスク

ガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底

法令及びグループ行動規範の順守

リスク

情報セキュリティ管理

情報漏洩の防止

 

サステナビリティに関する取り組みとしては、第5次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)の事業戦略に加え、経営基盤戦略として「DX戦略」と「人財戦略」という項目を設定し、各戦略を実行していくことで、マテリアリティの目標の達成と持続的成長と企業価値向上の実現を図ってまいります。

なお、上記の戦略の適用範囲といたしましては、連結子会社において体制が十分に整備されていないことから「DX戦略」は、現状で情報技術を共有している当社及び一部の子会社を対象とし、「人財戦略」は、中核企業である当社を対象としております。

また、当社で既に取り組みがスタートしております「社会基盤(橋梁・鉄骨)の整備・保全に対する貢献」と「環境保護を目的とした取り組み」も継続してまいります。

①DXに対する取り組み

人財の高齢化と人財不足が進む中、業務の効率化や省人化に対する取り組みが喫緊の課題であり、また技能・技術の伝承も大きな課題となっており、これらを実現していくためには、DXの推進が不可欠となっています。DX戦略においては、「長い歴史の中で培われた技術と経験をもとに、本中期計画における基本方針の『変革とチャレンジ』をキーワードに新たなモノづくりの実現に向けたDX施策を推進する」を基本方針に、以下のDX戦略4本柱を推進してまいります。

(a)省人化・効率化を基軸に置いた基幹システムの再構築及び新規導入

(b)スマートファクトリー構想を念頭においた新規技術の導入

(c)デジタルアーカイブ等の構築による技能伝承の推進

(d)データ活用による迅速でロジカルな経営の実現

②人的資本に対する取り組み(当社のみ対象)

当社は、人的資本に対する取り組みとして、以下の人財戦略を策定し、各種のアクションプランを実行してまいります。

ⅰ)人的資本に関する方針(人財戦略の基本方針)

(a)主力事業の強化と変化する事業環境に適応できる専門性と多様性に富んだ人財を確保し育成する

(b)社員の価値観と自律性を尊重し、安心・安全・健康で働きがいのある職場環境を整備する

ⅱ)人財育成方針

~事業戦略を支える人財力の強化~

・事業戦略に必要な人財要件を明確にし、社員全般のパフォーマンスの向上とプロ人財の質・量の充足を図る

・求人力を強化し、多様な人財の採用を促進する

・頑張った人が報われる人事制度と社外とも競争力のある処遇を実現していく

・DX人財の育成と配置を計画的に行い、業務のデジタル化を推進する

・事業ポートフォリオに応じた人財配置と適材適所を実現するため、機動的な人事異動を推進する

ⅲ)社内環境整備方針

~多様な価値観と自律性を尊重し、健康で安心して働ける職場環境を構築~

・経営陣と社員が対話を重ね、企業理念と経営方針を全社に浸透させる

・研修制度の充実や資格取得の支援など、社員のキャリア形成を支援する

・多様で柔軟な働き方を促進し、意欲ある人財の登用を進める

・プロ人財や多様な人財を活かす人事制度や育成プログラムを整備する

・社員と家族の健康と安全を守り、安心して働ける職場環境を整える

ⅳ)アクションプラン

(a)人財戦略部門の充実

・採用・育成・要員計画・人事運用・環境整備・タレントマネジメントを推進する機能部門の強化

(b)経営戦略と人財戦略との連動

・各事業部門における中核人財を明確化し、計画的に人財を配置

・事業戦略に連動した中途採用、新卒採用の実施

・求人力強化として、認知度向上や、魅力ある処遇の検討と、多様なチャンネルの効果的活用の推進

(c)能力向上・専門人財の育成

・技術人財やDX人財等、専門人財の育成に向けた取組の強化(博士課程取得(アカデミアプロジェクト)等は継続的に実施)

・外国人や女性活躍の場の拡大等多様な人財の活用の推進

(d)人財情報の見える化

・人事情報システムの整備と有効活用による、計画的かつ効果的な人財育成・活用の実現

(e)エンゲージメント向上

・エンゲージメントサーベイの実施と課題の明確化により改善に向けた取り組みの推進

・子育てや介護支援等の充実、リモートワークの為の環境整備促進等多様な働き方の更なる拡充

③環境保護を目的とした取り組み

環境保護を目的とした取り組みといたしましては、前連結会計年度に取締役執行役員を含む社員から構成される「カーボンニュートラル推進委員会」を設置し、脱炭素社会に向けた取り組みを検討した結果、太陽光発電(自家発電)への投資を決定し実施してまいります。

 

(4)リスク管理

当社グループにおけるリスク管理は、中期経営計画に織り込まれたサステナビリティ関連を含む事業リスクと機会などを、年次ベースで定められたアクションプランに基づき、各部門単位で年次目標の一環として取り組むこととしております。その取り組みについては、半期毎に開催される代表取締役社長、企画部門の役員及び常勤監査等委員等が出席する中期経営計画のフォロー会議において報告、確認され、重要な案件については、月次の経営戦略会議での審議を経て、取締役会においてモニタリングされます。

また、事業リスク以外のリスクについては、法令違反等コンプライアンスに関するリスクは、取締役会の直属機関であるコンプライアンス委員会においてグループ全体のリスク状況やコンプライアンスに対する取り組みをモニタリングし、定期的に取締役会に報告しております。また自然災害などは、BCP委員会が中心となってリスク管理に取り組んでおり、労働安全衛生面については、専任部門及び労働安全衛生の委員会組織等でリスク管理を実施しております。具体的な活動としては、月1回の報告・討議会の開催や定期パトロールの実施、各種安全教育などであります。その中で重要と判断された事象については、経営戦略会議等に付議されます。

 

(5)指標及び目標

マテリアリティとして特定された課題については、その取り組み状況を測る指標としてKPIを設定し、定期的にモニタリンクすることとしています。

なお、「DX戦略」、「人的資本に対する取り組み(人財戦略)」、「社会基盤(橋梁・鉄骨)の整備・保全に対す貢献」及び「環境保護を目的とした取り組み」を対象としたKPIのモニタリングは、当社グループの中核企業であります当社のみを対象とします。連結子会社については、現時点において体制が十分に整備されていないためで適用範囲に含んでおりません。

 

(主なマテリアリティとKPI)※人的資本に関する目標及び実績を含む

ESG

マテリアリティ

(重要課題)

KPI

当連結会計年度

実績

2025年度

目標

環境

国土強靭化に向けた安全安心な社会インフラづくりへの対応

技術提案1位獲得比率

44%

33.3%超

気候変動や自然災害リスクへの対応

CO排出量/削減率(2030年までに46%削減)(scope1,2)

1,023t/37%

46%

鋼材リサイクル率

100%

100%

社会

品質の確保

橋梁・保全事業の工事評点(国土交通省)

79点

80点

生産性の向上(DXによる)

DX研修の受講率

98%

95%以上

BIM/CIM活用工事件数の割合(橋梁)

100%

活用不要を除き100%活用

BIM/CIM活用工事件数の割合(鉄骨)

50%

技術開発

協議案件の件数

10件

13件

労働安全衛生の確保

死亡災害件数

0件

0件

4日以上の休業災害件数

2件

0件

人的資本経営の推進

女性管理職数

1

1

全従業員に占める外国人従業員の比率

6.0

7

採用者に占める中途採用者の比率

64.3

65

階層別研修受講率(階層別研修・評価者研修)

93.7

95

資格別資格取得者数

(1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士、建設業経理士(1級・2級))

144

140

平均残業時間

22.4時間

20時間

有給休暇取得率

71.4

70

男性従業員育児休業取得率

62.5

100

地域貢献

工場・現場見学会の開催数(工場)

26回

12回

工場・現場見学会の開催数(現場)

8回

10回

ガバナンス

ガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底

重大なコンプライアンス違反件数

0件

0件

情報セキュリティ管理

重大なサイバーセキュリティ事故件数

0回

0回

情報セキュリティ訓練の回数

1回

2回

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)発注案件の減少

 当社グループの鋼構造物製造事業は、橋梁や保全事業を中心とした公共事業の割合が大半を占めております。また、鉄骨事業については、民間の都市再開発等の設備投資動向が発注の源泉となっております。今後、原材料・人件費等の高騰や新型感染症等の不測の事態により、それぞれの発注数量等の減少が予想を大幅に上回る場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)固定資産の減損リスク

 当社グループは、鋼構造物製造事業や不動産賃貸事業を中心に、多くの固定資産を保有しておりますが、今後、業績の低迷などにより、減損損失が発生する可能性があります。

(3)人材確保のリスク

 当社グループの鋼構造物製造事業は、特に技術者の確保が重要でありますが、近年の労働者人口の減少を背景とした、建設業人材の減少により、必要な人材の確保が出来なかった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4)原材料の価格

 当社グループの鋼構造物製造事業は、鉄鋼メーカーの鋼板や形鋼を主要材料としております。しかし、不測の事態により原材料の市場価格等が高騰した際、販売価格等に転嫁することが困難な場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)品質の保証

 製品の引渡し後、瑕疵担保責任や事故災害等による損害賠償等が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6)取引先の信用リスク

 取引先の信用不安による損失が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7)資産保有リスク

 保有している資産の時価の変動により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8)法的規制

 事業活動における法令はもとより社会規範の遵守と企業倫理の確立を図っておりますが、これらを遵守できなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(9)大規模災害等による影響

 当社グループの生産拠点は、愛知県の知多半島に集中しており、今後、この地区を襲うと予測される南海トラフ大地震等の大規模災害が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により、景気は緩やかな回復傾向で推移しました。一方で、継続する物価上昇や人手不足、金融資本市場の変動や海外経済の減速懸念、アメリカの通商政策の動向の影響等から、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

a.財政状態

当連結会計年度末の財政状態につきましては、総資産は641億7千万円(前連結会計年度末比9.7%増)となりました。

流動資産は256億9千万円(前連結会計年度末比15.9%増)、固定資産は384億8千万円(前連結会計年度末比5.9%増)となりました。

負債は209億1千万円(前連結会計年度末比50.0%増)となり、それぞれ、流動負債は123億7千万円(前連結会計年度末比92.3%増)、固定負債は85億3千万円(前連結会計年度末比13.8%増)となりました。

純資産は、432億6千万円(前連結会計年度末比2.9%減)となりました。この結果、自己資本比率は67.4%となりました。

b.経営成績

当連結会計年度における連結損益は、完成工事高238億4千万円(前年同期比2.2%増)、営業損失3億8千万円(前年同期は6億2千万円の営業利益)、経常利益3億3千万円(前年同期比72.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、2億円(前年同期比79.7%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

また、各セグメントの業績数値につきましては、セグメント間の内部取引高を含めて表示しております。

 

(a)鋼構造物製造事業

橋梁業界におきましては、鋼道路橋発注量は前年比14.5%減の約11万トンで、過去最低水準の厳しい状況で推移し、依然として受注競争の熾烈化が続いております。一方、橋梁保全工事の発注量は減少が見込まれるものの堅調に推移している環境にあります。

また、鉄骨業界におきましては、2024年暦年の発注量は前年に引き続いて400万トンを下回る状況にあり、また建設コストの高騰や人材不足等の長引く影響による厳しい経営環境が続いております。

このような状況の中で、当社グループは、新設橋梁工事では、自治体発注物件を中心に大型案件を受注することができ、また技術提案・交渉方式の対象工事において工事契約締結に至ったことから、橋梁部門の受注高は196億2千万円(前年同期比70.4%増)となりました。

鉄骨部門では、首都圏再開発事業を主に民間建築案件の受注に努めた結果、鉄骨部門の受注高は44億2千万円(前年同期比11.5%増)となり、当連結会計年度における鋼構造物製造事業の総受注高は240億5千万円(前年同期比55.3%増)となりました。

主な受注工事は、橋梁部門につきましては名古屋高速道路公社の新洲崎工区改築工事、愛知県の青海IC上部工事(その1)、大田IC上部工事(その1)(その2)、岐阜県の濃飛2号橋、保全部門につきましては中部地方整備局の潮高架橋西上部拡幅工事、鉄骨部門につきましては虎ノ門一丁目東地区施設建築物新設工事であります。

鋼構造物製造事業につきましては、橋梁部門では、当社工場における生産高は前期より下振れとなりましたが、新橋架設・保全工事などの現場施工高は、大型案件の進捗により堅調に推移しました。また、鉄骨部門では、新規連結子会社の追加計上などもあり、前連結会計年度に比べ完成工事高は増加しました。一方、当社では首都圏の大型鉄骨工事等で工事損失引当金を計上したことから大幅に利益を押し下げる結果となり、完成工事高206億7千万円(前年同期比5.5%増)、営業損失5億4千万円(前年同期は4億2千万円の営業利益)となりました。

当連結会計年度に売上計上いたしました主な工事は、橋梁部門につきましては西日本高速道路㈱の佐世保高架橋拡幅工事、中部地方整備局の海津高架橋、川島大橋、近畿地方整備局の六甲アイランド第三高架橋、保全部門につきましては中日本高速道路㈱の長良川橋床版取替工事、浜名湖橋支承取替工事、木曽川大橋補修補強工事、鉄骨部門につきましてはみなとみらい52街区、日本製鉄㈱名古屋製鉄所/次世代熱延新設工事、ラピダス千歳などであります。

 

(b)不動産賃貸事業

不動産賃貸事業につきましては、売上高の基礎となる家賃収入は子会社の土地賃貸先の更新による収益増などにより増収となりました。一方、損益面では、新築の大型マンション案件の初年度収支が減価償却費等の支出先行となることから、事業利益は減少する結果となり、売上高は9億5千万円(前年同期比6.6%増)、営業利益4億7千万円(前年同期比6.2%減)となりました。

(c)材料販売事業

材料販売事業につきましては、厚板部門は、当社向けの橋梁用厚板取引が高位で推移し、一定の売上高は確保しましたが、国内の建設需要の遅延を背景とした鉄骨用切板取引と外販数量の落ち込みもあり、前期と比較して若干の増収に留まりました。鉄筋建材部門は、主力品種である鉄筋材料と当社鉄骨主要材等の取引数量の大幅な減少により前期と比較して減収減益となりました。レベラー部門は、主要客先では生産状況は未だ回復せず、製造業関連の薄板加工の国内需要も低調でありましたが、加工単価の値上げと織機向けの取引が復調に転じたため、前期に比べ増収増益となりました。この結果、売上高23億8千万円(前年同期比26.1%減)、営業損失2千万円(前年同期は3千万円の営業損失)となりました。

(d)運送事業

運送事業につきましては、2024年問題への対応による取引価格の見直しを実施しつつ、グループ内取引については、鉄骨工事関係の遠距離輸送取引の増加により収益は改善傾向となりました。一方で、グループ外取引につきましては、売上の先送りも発生するなど厳しい結果となり、売上高5億3千万円(前年同期比0.9%減)、営業利益2千万円(前年同期は1百万円の営業利益)となりました。

(e)工作機械製造事業

工作機械製造事業につきましては、2024年度も引き続き自動車産業の設備投資が低調な状況の中、異業種の新規取引先からの設備投資案件を受注し、売上計上することができました。しかし、採算の面では新規案件のため非常に厳しいものとなり、売上高2億3千万円(前年同期比121.4%増)、営業損失4千万円(前年同期は1千万円の営業損失)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果は、未成工事受入金の増加額24億8千万円等により、36億2千万円の資金収入(前年同期は43億

8千万円の支出)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果は、有形固定資産の取得による支出23億2千万円等により24億6千万円の資金支出(前年同期は3億8千万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果は、短期借入金の純増加額の30億円等により、25億6千万円の資金収入(前年同期は3億円の支出)となりました。

(現金及び現金同等物)

上記の要因により、現金及び現金同等物期末残高は67億8千万円(前年同期比122.0%増)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

  当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

鋼構造物製造事業

17,048

+13.5

工作機械製造事業

152

△25.9

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.生産実績金額は当期発生原価によっております。

3.不動産賃貸事業、材料販売事業、運送事業及びその他の事業につきましては、生産活動がないため、生産実績の記載をしておりません。

 

b.商品仕入実績

  当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

材料販売事業

4,483

△9.2

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.鋼構造物製造事業、不動産賃貸事業、運送事業、工作機械製造事業及びその他の事業につきましては、商品仕入活動がないため、商品仕入実績の記載をしておりません。

 

c.受注実績

  当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比(%)

金額(百万円)

前年同期比(%)

鋼構造物製造事業

橋梁

19,628

+70.4

34,708

+9.3

鉄骨

4,423

+11.5

3,946

+12.1

合計

24,051

+55.3

38,655

+9.6

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.不動産賃貸事業、材料販売事業、運送事業、工作機械製造事業及びその他の事業については、受注活動がないため、受注実績の記載をしておりません。

 

d.販売実績

  当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売実績

金額(百万円)

前年同期比(%)

鋼構造物製造事業

橋梁

16,682

+9.6

鉄骨

3,997

△8.7

20,679

+5.5

不動産賃貸事業

958

+6.6

材料販売事業

1,812

△28.7

運送事業

116

△24.1

工作機械製造事業

239

+121.4

その他

33

+6.2

合計

23,840

+2.2

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

2.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

相手先

金額

(百万円)

割合(%)

相手先

金額

(百万円)

割合(%)

国土交通省

4,275

18.3

国土交通省

5,658

23.7

中日本高速道路㈱

3,433

14.7

西日本高速道路㈱

3,669

15.4

西日本高速道路㈱

3,136

13.4

中日本高速道路㈱

3,201

13.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

当連結会計年度の連結貸借対照表における前連結会計年度比較

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

比率(%)

流動資産

22,170

25,693

3,523

+15.9

固定資産

36,349

38,483

2,133

+5.9

資産合計

58,519

64,177

5,657

+9.7

流動負債

6,435

12,374

5,938

+92.3

固定負債

7,503

8,537

1,033

+13.8

負債合計

13,939

20,911

6,972

+50.0

純資産合計

44,580

43,265

△1,314

△2.9

 

 当連結会計年度の連結財政状態は、資産合計は641億7千万円(前連結会計年度末比9.7%増)、負債合計は209億1千万円(前連結会計年度末比50.0%増)となりました。

 流動資産は、現金預金の増加(前連結会計年度末比118.9%増)などにより、流動資産合計は256億9千万円(前連結会計年度末比15.9%増)となりました。

 固定資産のうち、建物や賃貸不動産をはじめ、有形固定資産の増加(前連結会計年度末比13.6%増)などにより、固定資産合計は384億8千万円(前連結会計年度末比5.9%増)となりました。

 流動負債は、短期借入金30億円の新規発生や未成工事受入金の増加(前連結会計年度末比429.4%増)などにより、流動負債合計は123億7千万円(前連結会計年度末比92.3%増)となりました。

 固定負債は、長期借入金の増加(前連結会計年度末比147.7%増)などにより、固定負債合計は85億3千万円(前連結会計年度末比13.8%増)となりました。

 純資産は、自己株式の増加(前連結会計年度末比44.8%増)などにより、純資産合計は432億6千万円(前連結会計年度末比2.9%減)となりました。

 

 

b.経営成績

当連結会計年度の連結損益計算書における前連結会計年度比較

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

比率(%)

完成工事高

23,328

23,840

512

+2.2

完成工事総利益

2,652

1,740

△912

△34.4

販売費及び一般管理費

2,026

2,130

103

+5.1

営業利益又は営業損失(△)

625

△389

△1,015

経常利益

1,219

337

△882

△72.3

税金等調整前当期純利益

1,411

325

△1,085

△77.0

親会社株主に帰属する当期純利益

986

200

△786

△79.7

 

当連結会計年度の連結業績は、第5次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)の初年度であり、第5次中期経営計画の基本方針である「『変革とチャレンジ』をキーワードとして、事業戦略として中長期的に基幹事業ポートフォリオの最適化を図り、事業利益のさらなる向上を目指す。」を掲げて、事業環境の変化に対応するため、人財や設備、資金等の資源を有効に活用し、事業利益のさらなる向上を目指すため、各事業の事業方針及び経営基盤強化等を実施してまいりました。

当連結会計年度の受注実績につきましては、橋梁・保全工事では、昨年度と同様に発注規模の大型化や配置人員の課題等に向き合いながら対応する環境にありましたが、196億2千万円(前年同期比70.4%増)を確保することが出来ました。また、鉄骨工事については、首都圏の案件が材料費や人件費の高騰により、プロジェクトが見直される背景となったことから、既存工事の設計変更を中心とした44億2千万円(前年同期比11.5%増)の確保となり、連結受注高は240億5千万円(前年同期比55.3%増)となりました。

当社グループの当連結会計年度に係る完成工事高については、鋼構造物製造事業では、当社の工場生産高は製作工程の先送りなどを背景に昨年度より落ち込む結果となりましたが、新橋架設・保全の現場では、大型案件が堅調に進捗したため、昨年度より8億4千万円増加(前年同期比5.1%増)いたしました。一方、子会社では、新規に㈱菊池鉄工所を連結に迎えることができましたが、既存の子会社の完成工事高は、昨年度を下回り、この結果、当連結会計年度の鋼構造物製造事業の完成工事高は、206億7千万円(前年同期比5.5%増)の微増となりました。不動産賃貸事業は、当社の大型マンションが完成し、既存契約の家賃収入と併せて前年同期比で6.7%の収入増加となりました、また、子会社での土地賃貸案件でも、新規契約による増収が貢献したため、売上高9億5千万円(前年同期比6.6%増)となりました。材料販売事業は、鉄筋建材部門が国内の建設需要の遅延などから、売上高は大幅に落ち込んだため、売上高18億1千万円(内部取引相殺後)(前年同期比28.7%減)となりました。その他の事業では、運送事業は1億1千万円(内部取引相殺後)(前年同期比24.1%減)、工作機械製造事業は2億3千万円(前年同期比121.4%増)で連結売上高は238億4千万円(前年同期比2.2%増)となりました。

 完成工事総利益については、鋼構造物製造事業では、橋梁部門は材料費や人件費の増加等から、全般的に利益率が低下したこと加えて、鉄骨部門では、首都圏の大型鉄骨工事等で工事損失引当金を計上したことから、完成工事総利益は大幅に減少する結果となりました。不動産賃貸事業は、賃貸収入の増加要因はありましたが、当社の大型マンションの減価償却費等の計上や、築年数が一定期間経過した賃貸アパート等の計画修繕費が影響し、前年同期を下回る結果となりました。材料販売事業は、外販数量の減少はありましたが、レベラー部門の単価交渉などの要因もあり、若干の利益改善となりました。この結果、当連結会計年度の完成工事総利益は17億4千万円(前年同期比34.4%減)となりました。

 営業損益は、販売費及び一般管理費が、新規子会社の増加分も含めて21億3千万円(前年同期比5.1%増)となり、3億8千万円の営業損失(前年同期は6億2千万円の営業利益)となりました。

 経常損益は、当社において受取配当金の大幅な増加要因はありましたが、上記の営業損失の影響が大きく、その結果、経常利益は3億3千万円(前年同期比72.3%減)となりました。

 特別損益の純額の影響は軽微でありましたが、経常利益の大幅な減少が影響したため、税金等調整前当期純利益は3億2千万円(前年同期比77.0%減)となりました。

 上記の結果、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は2億円(前年同期比79.7%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度の連結キャッシュ・フロー計算書における前連結会計年度比較

 

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

金額(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

△4,382

3,620

投資活動によるキャッシュ・フロー

△388

△2,465

財務活動によるキャッシュ・フロー

△304

2,569

現金及び現金同等物の期末残高

3,054

6,780

 

a.キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主要なものは、鋼構造物製造事業における主要材料費や購入部品費等の材料費及び工場製作や現場施工に係る各種外注費のほか、製造労務費・製造経費及び販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要については、各種製造セグメントでは、生産設備の維持更新が中心であり、不動産賃貸事業では、賃貸不動産の維持修繕や建築及び投資対象物件の取得費用などであります。

当社グループは、事業運営上必要な資金の源泉を可能な限り自己資金で賄うことを基本としておりますが、やむを得ない場合に限り、金融機関からの短期借入や長期借入金による調達も想定しております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、50億5千万円(前年同期比538.5%増)となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、67億8千万円(前年同期比122.0%増)となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

 

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)及び2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、橋梁及び鉄骨を中心とした鋼構造物事業に関する保有技術を基礎として、急速な事業環境の変化に対応すべく新技術の研究開発に取り組んでいます。特に橋梁事業につきましては、保全需要の拡大に対応するため、橋梁の補修補強や更新に関する研究開発に注力しています。

 当連結会計年度における研究開発費は12百万円であり、また主な研究開発活動は次のとおりであります。

 

鋼構造物製造事業

(橋梁埋設型枠工法の改良開発)

 当社グループは東海コンクリート工業㈱との技術提携によりPCF壁高欄工法を開発し、近年は、鉄道橋などの床版やRC桁への埋設型枠の適用実績ができました。他社の類似製品も台頭しておりますので、これまでの実績に加えて競争力を高めるため、更なる改良を進めてまいります。

 

(橋梁保全技術の開発)

 保全関連事業が増大することから、橋梁以外の異業種や大学などとの連携により、橋梁点検技術開発や新材料の採用ならびに工法開発により、生産性向上をめざした橋梁の保全工事に対応する技術開発に取り組んでいます。

 

(高機能ポリマーセメント系材料・水性無機系塗料の開発・販売)

鋼構造物における鋼材とコンクリートの界面は剥離や腐食がしやすい部位であり、維持管理の問題となっています。また、環境に配慮した低VOC塗料のニーズが高まっています。当社は付着力が高く、従来よりも施工しやすい接着材や、追従性のある水性無機系塗料などを開発し、様々な部位への適用ならびに異分野への応用を検討しています。

 

(高耐久舗装用アスファルト添加材の開発・販売)

 鋼床版橋梁の舗装は鋼床版が熱され、変形しやすいことにより、アスファルト舗装の耐久性が低下する問題があります。当社は材料メーカーと共同で鋼床版用舗装の添加材の開発を進めています。また、一般のアスファルト舗装に対しては、重交通によって生じる轍ぼれを抑制する添加材を開発しています。これらの商品は海外へ展開・販売し、実績を拡大してきております。

 

(仮橋の開発及びリース)

 自然災害の激甚化により災害時に必要となる仮橋や、今後、増加が見込まれる橋梁の架け替えに必要な仮橋に適用すべく、仮橋リースを行っています。この事業では、様々な施工条件に対応するための調査検討も進めています。

 

不動産賃貸事業・材料販売事業・運送事業・工作機械製造事業・その他

 不動産賃貸事業、材料販売事業、運送事業、工作機械製造事業及びその他に関しましては、特段、研究開発活動を行っておりません。