第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、企業理念を経営の基本方針として、常にお客様に魅力ある商品・サービスを提供して健全な成長を図ることにより、お客様、株主の皆様、協力先をはじめ社会から常にベストと認められる企業集団を目指しております。

 

当社の企業理念

グローバルな視野に立ち、常に新しい考え方と行動で企業の成長をめざすと共に、魅力ある企業集団の実現を通じて豊かな社会の発展に貢献する。

 

 企業理念の背景として、当社は自動車関連事業と情報通信関連事業の二大事業構造の確立を経営戦略の主眼とし、自動車部品分野で長年培った「ばねの挙動解析」「金属材料ノウハウ」「金属加工技術」に、情報通信部品分野における「精密・微細加工技術」などの新しいコアコンピタンスを加えた次世代技術を駆使し、自動車及び情報通信分野へ多くのキーパーツを提供することにより、企業の永続と企業価値を最大化することを目標としております。

 今後も世界最適調達がますます進むものと見込まれる自動車産業・情報通信産業において、顧客対応力に優れたグローバルサプライヤーとしての確固たる地位を築くと同時に、全てのステークホルダーの方々と良好な関係を維持できるよう努めてまいります。

 

(2)経営戦略等

 当社グループでは、平成32年度(2020年度)を最終年度とする中期経営計画「2020中計」を平成29年度にスタートさせました。この「2020中計」では、既存拠点の収益向上と海外拠点の充実、現製品の拡販による売上増により、新製品・新拠点に対する積極的な設備投資を継続しつつ、最高益の更新を目標とします。

 また「2020中計」の期間中に創立80周年(2019年9月)を迎えることから、同中計を新たなステージに向けた更なる成長の基盤作りとして位置付けると共に、持続可能な社会の発展に貢献できる魅力ある企業集団の実現を目指します。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、目標とする経営指標を下記の表のとおり定めております。これらを重要な指標として認識し、目標の達成に努めてまいります。

 

平成32年度(2020年度)目標経営指標

 

平成32年度

目  標

売上高

7,100億円

営業利益

540億円

経常利益

570億円

親会社株主に帰属する当期純利益

380億円

経常利益率

8%以上

ROE

10%以上

配当性向

30%程度

 

(4)経営環境

 日本経済は、企業収益の改善や株高、雇用・所得環境の改善などを背景に緩やかな景気回復の継続が期待されますが、世界経済の先行きには不確実性を高める要素もあり今後の動向を注視する必要があります。

 

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

 上記のような環境のもと、平成32年度を最終年度とする中期経営計画は初年度を経過し、平成30年度以降も経営目標達成のため、引き続き鋭意取り組んでまいります。

 また、当社及び中国子会社NATペリフェラル社は平成30年2月、公正取引委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令及び課徴金納付命令を受けました。平成28年7月の同委員会による立入検査以降、当社は法令順守徹底のトップメッセージ発信をはじめ、全社的な研修実施など再発防止策を実施してきましたが、この度の命令を厳粛かつ真摯に受け止め、改めて独占禁止法を始めとする法令順守に関する社内研修やモニタリング体制の一層の強化・充実を進め、再発防止に努めていく所存です。

 当社は全てのステークホルダーから信頼される企業であり続けるために、企業倫理の重要性を認識し、コーポレートガバナンスの充実、及び法令順守の徹底に努めてまいります。

 

(6)会社の支配に関する基本方針

基本方針の内容

 当社は、当該基本方針につきましては、特に定めておりません。

 また、当社では、中期経営計画の着実な実行やコーポレート・ガバナンスの強化に取組み、持続的な成長により企業価値を向上させ、市場から適正な評価を得ることが最重要課題と認識しており、買収防衛策の導入予定はありません。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項について、以下のとおり記載いたします。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていきます。

 なお、文中における将来に関する事業は、有価証券報告書提出日(平成30年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)世界経済の急激な変動

 当社グループでは、主要な事業分野であります自動車関連及び情報機器関連の製品をグローバルに供給していることから、世界的な景気の変動に強く影響されます。日本、アジア、米国及び欧州など世界の主要市場での、予測を超える急激な景気後退と需要の縮小は、当社グループの経営成績及び財政状態に多大な影響を与える可能性があります。

 

(2)為替レートの変動

 当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれております。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されており、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

 また、日本で生産し輸出する事業において、他の通貨に対する円高は、当社グループの製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させます。

 当社グループは、機動的な通貨ヘッジ取引を行い、短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしておりますが、リスクを完全に排除することは困難であり、当社グループの経営成績及び財政状態に少なからず影響を与える可能性があります。

 

(3)原材料の価格変動並びに、原材料・部品の不足

 当社グループは、鋼材などの主要原材料を外部より調達しております。これらの供給元とは、取引基本契約を締結し、安定的な取引を行っております。市況の変化による原材料価格の大幅な変動については、販売価格への転嫁を前提としておりますが、価格転嫁の反映時期がずれる事により、業績に与える影響が会計期間を超える可能性があります。

 また、供給元の不慮の事故や予想を超える規模の自然災害などにより、原材料や部品の不足が生じないという保証はありません。その場合は、生産活動の低下を招くことで、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(4)新製品開発力及び知的財産権

 当社グループでは、当社研究開発本部が主体となって、新技術の基礎研究及び応用研究を積極的に行っており、継続して魅力ある新製品を開発できるものと考えておりますが、新製品の開発と市場への投入プロセスは複雑かつ不確実であり、以下をはじめとする、様々なリスクが含まれます。

・新製品等の開発に対して、必要かつ十分な資金と資源を、継続的に充当できるか。

・長期的な投資と大量の資源投入の結果造られた新製品等が、次代の事業基盤を担うまでに成長するか。

・競合他社による新技術の開発や市場ニーズの変化により、開発途中で技術の新規性が失われたり、コスト面での優位性が低下したりすることはないか。

 上記のリスクをはじめとする諸要因から、当社グループが新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、新しい技術や製品を保護するために知的財産権の取得等の方策を講じておりますが、当社グループの製品が広範囲にわたる技術を利用していることから、第三者による知的財産権不正利用の防止や、第三者の知的財産権の侵害抑止への対策が、完全とは言い切れない可能性が将来的にあります。その場合、係争となることや、ライセンス費用又は和解費用を負担することで、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5)製品の品質不具合

 当社グループは各生産拠点において、世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造しております。しかし、全ての製品において欠陥がなく、将来にわたってリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物賠償責任については保険に加入していますが、最終的に負担すべき賠償額が、この保険によって十分にカバーされるという保証はありません。大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(6)法的規制等

 当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障又はその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他の輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止、特許、消費者、租税、為替、雇用、環境・リサイクル関連等の法規制を受けております。

 このような多岐にわたる法的規制等に対しては、継続的にコンプライアンスの実践に努めておりますが、万一、これらを順守できなかった場合、当社グループには、直接的な費用の増加や社会的制裁、風評被害等、有形無形の損害が発生する可能性があります。

 

(7)新興国市場への事業進出

 当社グループの事業展開においては、とりわけ新興国市場の重要性が高まっており、アジア地域を中心に現地グループ会社の生産が増加しております。新興国市場では、社会的・政治的不安定さから、社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる当社グループの事業活動の制限等、以下に掲げるような予期せぬ事態が発生するリスクが内在しており、これらが発生した場合には、現地での生産に支障が起きる可能性があります。

・予期しない法律又は規制の変更や、労働市場の変化などによる人材確保の難しさ、労働争議の発生及び人件費の急激な上昇

・過激なデモ、暴動、テロ、感染症、その他の要因による社会的混乱

 また、これらの事態が長期化すれば、当社グループの経営成績及び財政状態に一層大きな影響を与えるおそれもあります。

 

(8)災害や停電等による影響

 当社は、当社グループのリスク管理も対象範囲とするCSR推進委員会を設置し、対象となる事象の予見と未然の防止、事象発生の報告、再発防止策の検討等を実施しております。平時においては企業活動に関わるリスクについての洗い出し、BCP(事業継続計画)やリスク管理規程等を定めるとともに、教育・啓発活動の実施によりリスク発生の事前防止の推進を実施しております。リスクが顕在化した場合には、迅速に対策本部を設置し、その指揮のもとに所管部門及び関係部門が一体となって対応を行う体制となっております。しかし、各生産拠点で発生する大規模災害や、広範囲にわたる停電、当社グループの保有する設備の損壊、製品の輸送手段や経路の断絶等、生産・納入活動の中断事象が発生した場合には、これらのリスク管理活動の実施にもかかわらず、当社グループの事業活動の一部が停止する可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

 当連結会計年度における日本経済は、企業収益の改善や株高、雇用環境の改善を背景に緩やかに回復しました。

 世界経済につきましては、米国では個人消費や設備投資が増加傾向にあり景気拡大が継続しました。アジア地域においては、中国では輸出の持ち直しや経済政策の効果により景気は緩やかな成長が続きました。タイやインドでも景気の回復がみられました。

 当社グループの主要な事業分野であります自動車関連市場において、国内販売は、登録車は昨秋に発覚した無資格検査問題もあり前年割れとなりましたが軽自動車は新車投入効果等により増加したことから、5,197千台で前期比2.3%の増加となりました。完成車輸出は、4,786千台で前期比3.2%の増加となりました。国内の自動車生産台数は、9,676千台で前期比3.4%の増加となりました。

 また、もう一方の主要な事業分野であります情報通信関連市場は、データセンター向けは堅調なもののパソコン向けが減少したことにより、HDD(ハードディスクドライブ)の受注は前期比で減少しました。

 以上のような経営環境のもと、売上高は659,730百万円(前期比5.2%増)、営業利益は35,541百万円(前期比12.5%減)、経常利益は36,421百万円(前期比12.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は20,495百万円(前期比18.3%減)となりました。

 

(2)当連結会計年度のセグメント別の概況

[懸架ばね事業]

  懸架ばね事業は、売上高は124,267百万円(前期比4.0%増)となりました。営業利益は、9,627百万円(前期比16.5%減)となりました。

 

[シート事業]

  シート事業は自動車生産台数の増加等により、売上高は295,710百万円(前期比3.4%増)となりました。営業利益は、受注車種構成の変化等により、9,457百万円(前期比32.4%減)となりました。

 

[精密部品事業]

  精密部品事業は受注製品の数量増や合理化等により、売上高は147,874百万円(前期比6.3%増)、営業利益は10,855百万円(前期比13.0%増)となりました。

 

[産業機器ほか事業]

  産業機器ほか事業は、売上高は91,878百万円(前期比11.5%増)、営業利益は5,600百万円(前期比2.0%増)となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 営業活動の結果得られた資金は、49,811百万円で前期と比べ5,852百万円の減少となりました。これは主に税金等調整前当期純利益の減少及び法人税等の支払額の増加によるものです。

 投資活動の結果支出した資金は、32,955百万円と前期と比べ5,202百万円の増加となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出の増加によるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、5,960百万円の支出超過となり、前期と比べ10,955百万円の支出減少となりました。これは主に普通社債の償還及び自己株式の取得による支出がなかったことによるものです。

 営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは16,856百万円となりました。

 以上の結果、当期における現金及び現金同等物は前期末に比べ12,513百万円増加し、95,007百万円となりました。また、社債、コマーシャル・ペーパー及び長期・短期借入金は53,283百万円と前期末に比べて107百万円減少しました。

 

生産、受注及び販売の状況

(1)生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

懸架ばね事業

122,704

7.9

シート事業

269,655

0.6

精密部品事業

154,763

7.7

産業機器ほか事業

32,814

20.2

合計

579,937

4.9

(注)1 上記の生産実績は、製造会社における生産実績を販売価額により表示しております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)受注状況

 当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前期比

(%)

受注残高

(百万円)

前期比

(%)

懸架ばね事業

129,015

8.2

27,340

21.0

シート事業

301,042

6.6

49,093

12.2

精密部品事業

152,715

8.4

28,955

20.1

産業機器ほか事業

92,732

10.6

7,920

12.1

合計

675,506

7.8

113,310

16.2

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

懸架ばね事業

124,267

4.0

シート事業

295,710

3.4

精密部品事業

147,874

6.3

産業機器ほか事業

91,878

11.5

合計

659,730

5.2

(注)1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  平成28年4月1日

至  平成29年3月31日)

当連結会計年度

(自  平成29年4月1日

至  平成30年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社SUBARU

67,183

10.7

(注)前連結会計年度に記載しております株式会社SUBARUについては、当連結会計年度においては当該割

合が100分の10未満であったため、記載を省略しております。

 

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成30年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、期末日における資産・負債の報告金額、並びに報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積り及び仮定を設定する必要があります。当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

① 収益の認識

 当社グループの売上高は、通常、発注書に基づき顧客に対して製品が出荷された時点、又はサービスが提供された時点に計上されます。ある特定のケースでは、売買契約書で顧客の検査に合格することが要求されており、その場合には顧客が当社グループの製品を検収した時点で売上を計上しております。特許料収入は、ライセンシーからの特許料計算書に基づいて計上されます。

 

② 貸倒引当金

 当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。

 

③ 固定資産の減損

 当社グループが有する固定資産のうち、損益報告や経営計画などの企業内部の情報、経営環境や資産の市場価格などの企業外部の要因に関する情報に基づき、資産又は資産グループ別に減損の兆候の有無を確認しております。この判定により減損損失を認識すべきと判断した場合には、その帳簿価額を回収可能価額まで減損処理を行っております。

 

④ 投資の減損

 当社グループは、投資の公正価値が帳簿価額を下回り、かつその下落が一時的ではない場合、その帳簿価額を回復可能価額に合わせて減損処理を行っております。下落が一時的かどうかを判断する際には、帳簿価額を下回った期間の長さ及び下落幅、当該会社の財務状況及び将来の展望を考慮します。

 

⑤ 繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を評価するに当たっては、将来の課税所得及び、慎重かつ実現可能性の高い継続的な税務計画を検討しますが、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上します。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後実現できると判断した場合、繰延税金資産の調整により当該判断を行った期間に利益を増加させることになります。

 

⑥ 退職給付費用

 退職給付費用及び債務は、その計算の際に使われた仮定により異なります。これらの仮定には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の期待収益率及び死亡率などの要因が含まれております。これらの仮定と実際の結果との差額は即時認識されます。当社グループは、使用した仮定は妥当なものだと考えておりますが、実績との差異又は仮定自体の変更により、退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を与える可能性があります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

① 概要

 当連結会計年度における日本経済は、企業収益の改善や株高、雇用環境の改善を背景に緩やかに回復しました。

 世界経済につきましては、米国では個人消費や設備投資が増加傾向にあり景気拡大が継続しました。アジア地域においては、中国では輸出の持ち直しや経済政策の効果により景気は緩やかな成長が続きました。タイやインドでも景気の回復がみられました。

 当社グループの主要な事業分野であります自動車関連市場において、国内販売は、登録車は昨秋に発覚した無資格検査問題もあり前年割れとなりましたが軽自動車は新車投入効果等により増加したことから、5,197千台で前期比2.3%の増加となりました。完成車輸出は、4,786千台で前期比3.2%の増加となりました。国内の自動車生産台数は、9,676千台で前期比3.4%の増加となりました。

 また、もう一方の主要な事業分野であります情報通信関連市場は、データセンター向けは堅調なもののパソコン向けが減少したことにより、HDD(ハードディスクドライブ)の受注は前期比で減少しました。

 以上のような経営環境のもと、売上高は659,730百万円(前期比5.2%増)、営業利益は35,541百万円(前期比12.5%減)、経常利益は36,421百万円(前期比12.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は20,495百万円(前期比18.3%減)となりました。

 

② 売上高

 売上高は659,730百万円で前期比5.2%の増収となりました。国内売上高は363,347百万円で前期比5.7%の増収となりました。海外売上高は296,382百万円で前期比4.6%の増収となりました。

  懸架ばね事業は、売上高は124,267百万円(前期比4.0%増)となりました。営業利益は、9,627百万円(前期比16.5%減)となりました。

  シート事業は自動車生産台数の増加等により、売上高は295,710百万円(前期比3.4%増)となりました。営業利益は、受注車種構成の変化等により、9,457百万円(前期比32.4%減)となりました。

  精密部品事業は受注製品の数量増や合理化等により、売上高は147,874百万円(前期比6.3%増)、営業利益は10,855百万円(前期比13.0%増)となりました。

  産業機器ほか事業は、売上高は91,878百万円(前期比11.5%増)、営業利益は5,600百万円(前期比2.0%増)となりました。

 

③ 営業費用

 売上原価は578,784百万円で、前期比6.6%の増加となりました。売上高に対する売上原価の比率は87.7%で、前期比1.1%の増加となりました。

 販売費及び一般管理費は45,404百万円で、前期比4.4%の増加となりました。売上高に対する比率は6.9%で、前期比0.1%の減少となりました。

 

④ 営業利益

 営業利益は、受注車種構成の変化等により、35,541百万円で前期比12.5%の減益となりました。

 

⑤ 営業外損益

 営業外損益は、880百万円の利益となり、前連結会計年度に比べ146百万円の減少となりました。このうち、為替影響により1,019百万円の減益となっております。受取利息から支払利息を差引いた純額は606百万円となりました。持分法による投資利益は、883百万円となりました。

 

⑥ 特別損益

 特別損益は、3,776百万円の損失で、前連結会計年度に比べ194百万円の損失の減少となりました。

 

⑦ 法人税等

 税金等調整前当期純利益に対する法人税の比率(実効税率)は、30.7%となりました。

 

⑧ 非支配株主に帰属する当期純利益

 非支配株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の1,826百万円に対し、2,117百万円となりました。

 

⑨ 親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は、20,495百万円で前期比18.3%の減益となりました。1株当たり当期純利益は、86.45円で前連結会計年度に比べ17.25円減少しました。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フロー

 営業活動の結果得られた資金は、49,811百万円で前期と比べ5,852百万円の減少となりました。これは主に税金等調整前当期純利益の減少及び法人税等の支払額の増加によるものです。

 投資活動の結果支出した資金は、32,955百万円と前期と比べ5,202百万円の増加となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出の増加によるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、5,960百万円の支出超過となり、前期と比べ10,955百万円の支出減少となりました。これは主に普通社債の償還及び自己株式の取得による支出がなかったことによるものです。

 営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは16,856百万円となりました。

 以上の結果、当期における現金及び現金同等物は前期末に比べ12,513百万円増加し、95,007百万円となりました。また、社債、コマーシャル・ペーパー及び長期・短期借入金は53,283百万円と前期末に比べて107百万円減少しました。

 

② 資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。営業費用の主なものは人件費であります。当社グループの研究開発費は様々な営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費及び試作材料費が研究開発費の主要な部分を占めております。

 

③ 財務政策

 当社グループは、運転資金及び設備投資資金については、内部資金、借入金、社債及びコマーシャル・ペーパーの発行により資金調達しております。

 このうち、運転資金については短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの発行により調達しており、当連結会計年度末の短期借入金の残高は4,773百万円、コマーシャル・ペーパーの残高は4,000百万円となっております。

 設備投資資金については、長期借入金(1年以内返済分を含む)及び社債により調達しており、当連結会計年度末の長期借入金の残高は33,886百万円、社債の残高は10,624百万円となっております。

 グループ会社における資金調達に関しては、グループ資金の有効活用を目的としてグループファイナンスの展開を進めております。

 なお、一部の海外関係会社については、現地金融機関より各々の使用する現地通貨にて調達をしております。その際、当社が関係会社の借入に対し債務保証を実施することがあります。

 

4【経営上の重要な契約等】

技術受入契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約品目

契約内容

契約期間

日発精密工業㈱

アキュメントグローバルテクノロジーズ社

オランダ

トルクスパンチ

特許及び製造技術の実施権の許諾(注)

平成29年4月23日~

平成32年4月22日

㈱スミハツ

パンドロールUK社

イギリス

パンドロール

eクリップ

OEM契約(注)

平成30年3月23日~

平成40年3月22日

(注)ロイヤルティとして売上高の一定率を支払っております。

 

5【研究開発活動】

当社グループは、「創造挑戦型」の基礎技術の研究開発から「開発提案型」の新製品開発、更には生産技術の開発にいたるまで、積極的な研究開発活動を行っております。

 現在、研究開発は、本社研究開発本部及び技術本部、各生産本部及び事業本部の開発部門、技術部門、設計部門等、また、各子会社の開発部門等により鋭意推進されております。研究開発スタッフは全体で1,057名であり、これは全従業員数の6.1%に当たります。当連結会計年度における当社グループ全体にて支出した研究開発費総額は、16,119百万円であり、これはグループ全体の売上高の2.4%に当たります。

 当連結会計年度における事業の種類別セグメントの研究開発活動は、以下のとおりであります。なお、上記の研究開発費には、本社研究開発本部及び技術本部で行われている各事業部門に共通する材料技術、加工技術、接合技術、分析技術、解析技術等の基礎研究開発の費用412百万円が含まれております。

 

(1)懸架ばね事業

 ますます重要となるエネルギー消費と環境に対する規制に対応するため、小型軽量かつ高品質、高耐久化に注力した製品開発と共に、品質と安全性を確保した無人化、省エネルギー化を目指した生産技術開発を進めております。これらの具現化に向けて、製品では応力分布の均等化設計、新鉄鋼材料及び繊維強化プラスチック材料の開発等を行うと同時に、生産では熱処理、ショットピーニング、組立てなど各工程における新工法及び新技術開発を進めております。当連結会計年度の主な成果は、耐久性・品質に優れた製品の開発を実現したことであります。今後の課題は、最適な材料の調達、軽量化を実現する加工法及び無人化と省エネルギー化が可能な生産方法の開発と、これらの海外拠点を含めた導入であります。

 当事業に関する研究開発費の金額は、4,346百万円であります。

 

(2)シート事業

 軽量化、生体信号利用のシート応用製品、快適な動性能・静性能を持つシートにも重点を置き、開発活動に取り組んでおります。軽量化に加え、板金部品をFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)に材料置換したフレーム最適構造・構成の開発に取り組んでおり、射出成形CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)フロントシートフレームで、現行比約20%の軽量化を達成しております。更にCAE(Computer Aided Engineering)での衝突試験予測技術の確立を進めているところであります。

 そのほか、将来予想される自動運転車市場の拡大に備え、自動運転時に必要なシート機能を検討し、その中から当社独自のアイテム開発を進めております。例えば、自動運転Level3、4となると、自動運転とマニュアル運転切り替えの場面が発生します。その際、安全に切り替えを行うためには、素早く、運転可能な姿勢に戻す必要がでてきます。それに対応するため、素早く元の姿勢を復帰できるシートの開発を行っております。また、自動運転になると従来よりも車で過ごす時間が長くなると予測されており、長時間着座による疲労も増加すると考えられます。長時間着座によってユーザーはどのような違和感、痛み、圧迫感を感じるのかを分析して、それらを改善できるアイテム開発にも取り組んでおります。

 快適な動性能・静性能を持つシートの開発については、人体及びシート動・静性能を持つシートの開発に取り組んでおります。従来、定量評価が難しかった高い周波数のシート振動に対する快適性評価のため、人間着座時のシートフレーム振動を予測するための数値解析用人体モデル(シミュレーションモデル)を開発し、高周波の振動快適性の定量予測を可能としました。また、着座時のシート上の圧力分布データから快適性を推定するシステムを開発中で、深層学習技術を用いることで高精度の快適性推定を実現しています。さらに、シート温熱快適性の定量評価指標も開発しております。

 量産に近い開発については、DD(ダイナミックダンパー)ボルトの開発と次なる小型トラック向けの「自動車用薄型サスペンションシート」の開発を行っております。DDボルトは従来のダイナミックダンパーを軽量化・低コスト化した開発品で、自動車のアイドル時や走行時にシートが共振して発生する振動や音を防ぐデバイスです。現在多くのカーメーカーより共同開発、量産化の依頼が来ており、量産化に向けての取り組みを進めております。「自動車用薄型サスペンションシート」は、小型トラック用には2015年より量産開始しましたが、次なる展開として乗用車の助手席や後部座席への適用や、新たな車種への展開を設計部門と共同で進めております。

 当事業に関する研究開発費の金額は、5,706百万円であります。

 

(3)精密部品事業

 精密ばね分野においては、エンジン・トランスミッション部品に代表される自動車関連製品をはじめとして、HDD(ハードディスクドライブ)用部品、半導体の検査用プローブ等、幅広い分野での製品開発を行っており、特に現在はHEV(ハイブリッド車)・EV(電気自動車)向けの製品開発、ばねの高品質化・低コスト化に向けた生産技術開発、高強度材料の開発に注力しております。

 HEV・EV分野については、高精度プレス加工技術を基盤とした、モーター部品、リチウムイオン・燃料電池用部品、インバータ用部品、及び燃費向上に寄与する軽量化技術の開発を行っております。

 ばねの高品質化・低コスト化については、線ばね・皿ばねの全自動品質保証設備、及び省人化・無人化を実現する一貫生産ラインの開発を行っており、その生産技術のグローバル展開も進めております。

 また、これらの基となる素材についても、更なる高強度材の開発を進め、製品の高性能化、高信頼性化を進めています。その一方で廉価材の開発を進め、製品のコスト低減化にも努めております。

 HDD関連分野においては、引き続きHDDの高容量化に対応するため、CLAサスペンション(Co-Located Actuator)の高性能化に向けた開発を進めております。近年データセンター向けHDDは高速ファンによる10kHz前後まで及ぶ外部振動でヘッドの位置決めがより難しくなっている一方で、多盤化による薄いDiskの採用により2kHz以下の低域振動も問題になりつつあります。この2つの問題解決のため、高域位置決めに適したCLAと低域位置決めに適したMilli-DSAを合体させたTSA(Triple Stage Actuator)が必要になります。これらの製品開発と共に生産技術、品質向上・コスト低減に向けた開発に取り組んでおります。

 当事業に関する研究開発費の金額は、3,220百万円であります。

 

(4)産業機器ほか事業

 半導体製造プロセスは、積層化と微細化が進み顧客要求が厳しさを増しております。半導体製造装置開発では、顧客別の要望に応えるために開発段階から深く入り込み、設計/試作/評価をトータルに実施できる体制を整えました。半導体製造装置の心臓部品の開発に必要となる接合技術の深耕を図るために、ろう付技術のほかに、拡散接合技術やコールドスプレー技術を駆使し、信用性の高いコンタミレスの金属製ヒータや冷却板を開発しております。更にはセラミック溶射技術を応用し、絶縁特性、均熱特性、大型化対応などを図り、北米向けでヒータ製品の業界トップシェアを維持しております。

 メタルベース基板については、近年、自動車向けの基板の需要が多く、高品質、高信頼性に加え高清浄度に対する要求が高まっております。メタルベース基板は高密度・大容量化に伴い、放熱性ニーズが高まっており、それに応えるべく高放熱絶縁材料の開発を継続的に推進しています。開発した絶縁材は高い放熱性を持つとともに高い耐熱性も持ち、セラミック代替を目指しております。

 その一方で安価な絶縁材料を使ったメタルベース基板や、より耐久性に優れたメタルベース基板の開発も行っております。

 ゴルフシャフト事業では、重量シャフトがメインの北米のシェアを拡充すべく、肉厚調整・熱処理技術・解析技術を駆使して、北米市場のニーズである高弾道・低スピンのスチールシャフトを開発し商品化しておりますが、更なる超軽量化シャフト開発にも取り組んでおります。

 当事業に関する研究開発費の金額は、2,433百万円であります。