文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの企業理念である、「夢を持ち一生懸命を楽しもう」、「総力で一歩先行くものづくり」、「感謝と誠意をかたちで社会へ」を基本に置き、行動指針や行動規範のもと、グループをあげて事業活動に邁進し、適正な収益を確保しつつ、株主・投資家、顧客や取引先、従業員、地域社会等のあらゆるステークホルダーの皆様に対して、企業としての社会的責任を全うできるよう努力を継続してまいります。
また、社会から信任される企業たることを目指し、内部統制システムの効果的・効率的運用に引き続き務め、コーポレート・ガバナンスのさらなる強化、コンプライアンスの徹底、リスク管理体制の充実、環境活動への積極的取り組み等を継続してまいる方針であります。
当社グループは、産業用機能フィルター・コンベア事業、電子部材・フォトマスク事業、環境・水処理関連事業、不動産賃貸事業と、多方面で事業を展開しております。当社グループでは、「グループ長期ビジョンと整合性ある事業」、「自社としてガバナンスできる事業」、「特定の領域でリーダーの地位を得られる事業」、「中長期的に資本コストを上回るリターンを継続できる事業」という観点から原則として中期経営計画策定時に事業ポートフォリオの見直しを実施いたします。
当社グループは2023年度~2025年度中期経営計画において策定したとおり、以下の長期ビジョンのもと経営重点課題に取り組んでまいります。
グループ長期ビジョン
「100年超え企業として、次の100年も社会が必要とする製品・サービスを生み出し続ける企業集団」
経営重点課題
長期ビジョンの達成に向け、次期中期経営計画の期間で取り組むべき課題(対処すべき課題)は以下のとおりであります。
①収益力の回復
厳しい経営環境下でも事業を成長させるべく、時代のニーズに即した環境配慮型製品の開発やM&Aなどに積極的に取り組んでまいります。また、AI・RPAツールの活用による業務効率化・自動化を推進してまいります。
②ESG経営への取組と積極的な開示
当社のサステナビリティ方針の策定や、マテリアリティの特定を通じて価値創造ストーリーの構築を目指し、その内容を統合報告書などの媒体で開示することに取り組んでまいります。
③個人の自律意識の向上
組織および個人が自らの使命・役割を認識し、今何をすべきか、将来に向かって何をすべきかを自ら考え、行動することでその責任を果たしてまいります。そのために教育プログラム拡充など人的投資にも注力いたします。
また、東京証券取引所からの「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を受け、当社はPBRが過去5年間0.4~0.6倍の間で推移している現状を認識し、その改善に向けて以下の取り組みに注力してまいります。
(1)収益力の回復
当社は2023年度~2025年度中期経営計画において経営重点課題として挙げております「収益力の回復」に取り組むことが、PBR改善のために最も重要であると認識しております。
しかし、特に産業用機能フィルター・コンベア事業の製紙製品分野における国内市場の縮小は、当初の想定を上回る速度で進行しており、短期間で収益力を回復することは困難な状況であります。また、電子部材・フォトマスク事業や環境・水処理関連事業につきましては、事業環境は好調でありますが、生産設備の増強や営業力強化に取り組んでいる最中でもあり、一時的に収益力が低下しております。
このような状況下、短期的な施策だけでは収益力の回復に向けた本質的な取り組みとはならないことから、長期的視点に基づいたありたい姿を設定し、その実現に向けた課題の整理と取り組みを検討することといたしました。当社は、生活や社会に貢献する製品を生み出すメーカーとして、社員とステークホルダーを重視し、安定した業績を継続していくことを前提に、ありたい姿の実現を目指してまいります。
長期的なありたい姿:2034年度に営業利益23億円・ROE8%以上
2025年11月期は、長期的なありたい姿の実現に向けた具体的な課題の整理と取り組みの検討を実施いたします。そのうえで、ありたい姿実現に向けた第1ステップとなる2026年度~2028年度中期経営計画を立案してまいります。
なお、各事業での取り組みは以下のとおりであります。
産業用機能フィルター・コンベア事業
製紙製品分野は、長期的に成長性は高くないものの、安定した収益性を維持できる主軸事業と位置付けしております。収益力の回復に向け、タイの子会社へ生産の主体を移管することで、原価低減を図ってまいります。また、今後も需要増加が期待できる海外市場の開拓、とりわけ近年研究開発に取り組んできた不織布用製品の拡販に注力いたします。国内市場につきましては、得意先の電力使用量削減に寄与する駆動負荷低減網など、ニーズに合った製品の開発を加速させ、シェアを伸ばしてまいります。
その他産業用フィルター・コンベア分野は、長期的に幅広い業種からの需要を捉え、安定的に成長していく事業として位置付けしております。今後もニーズを捉え着実に成長してまいります。
電子部材・フォトマスク事業
当セグメントは、長期的に活況が続く市場において、最大手に準ずるプレーヤーへ成長していく事業として位置付けしております。
エッチング加工製品分野は、得意先からのニーズである試作認定品の短納期対応とタイムリーな量産化体制の整備のために、数年前から積極的に設備投資を実施しております。従来対応できなかった得意先からの依頼に応えられる体制を構築し、受注獲得に邁進してまいります。
フォトマスク製品分野は、現在得意先からの需要が旺盛な高周波デバイス、各種センサー、パワー半導体向けフォトマスクの販売活動を強化してまいります。また、フォトマスク以外にも光学部品などの加工品について生産体制を整備し、拡販してまいります。現在、生産設備の更新や増強を実施しており、この先数年間は減価償却費負担が重い状況ではありますが、着実に成長してまいります。
環境・水処理関連事業
当セグメントは、長期的にプールシェアトップとして、ろ過装置と併せさらに成長していく事業として位置付けしております。
プール製品につきまして、従来シェアトップであった会社が2027年までに最終工事を完了し事業撤退する予定となっており、当社グループのシェア・業績を2027年度以降に大きく伸ばすことに期待できる状況です。そのために人員増強と協力会社を含めた生産体制の強化、営業網の再構築が必要であり、現在取り組みを進めております。
不動産賃貸事業
不動産賃貸事業は、長期的に現有資産の適切な修繕により収益を維持していく事業として位置付けしております。物件の老朽化対策としての大規模修繕を計画的に実施し、賃料維持に努めてまいります。
(2)資本政策の再検討と株主還元強化
当社は、2024年11月期に配当方針を見直し、連結配当性向30%以上、かつDOE2.4%以上としております。今後も自己株式取得など資本効率向上の取り組みにつきまして検討を進めてまいります。
(3)IR活動の充実
今後、統合報告書の作成やホームページのサステナビリティ活動の内容更新など、IR関連情報の発信に積極的に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「100年超え企業として、次の100年も社会が必要とする製品・サービスを生み出し続ける企業集団」を長期ビジョンとし、中期経営計画(2023年~2025年)ではESG経営への取り組みと積極的な開示を進めることを経営重点課題に掲げております。 サステナビリティに関する取り組みについては、取締役会で施策や改善策を議論しており、 公正かつ透明性の高いガバナンスを実現しております。また、2025年2月26日にサステナビリティ委員会を設立する予定であります。サステナビリティ委員会では、各部署と連携しながらサステナビリティに関する取り組みのKPI策定や進捗管理・モニタリングを行い、サステナブル経営に関するガバナンスをより一層強化してまいります。
当社は2024年6月、取締役会の決議を経て、当社グループが長期グループビジョン実現のために取り組むべきサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。このマテリアリティは具体的な解決施策とともに、次期中期経営計画(2026年~)以降にも組み込んでいくことで、その実効性を高め、企業価値の向上を図ってまいります。
また、当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
<人材育成>
当社グループは、中長期的な企業価値の向上には人的資本が重要と考え、中期経営計画(2023年~2025年)において個人の自律意識の向上を経営重点課題に掲げております。当社では、従業員の主体的な取り組みに頼るだけでなく、「階層別研修」「年代別研修」「キャリア別研修」「テーマ別研修」等の教育プログラムを通じて人材の育成に努めております。
<社内環境の整備>
当社は、従業員全員が働きやすい環境を作り、全従業員が持っている能力を十二分に発揮できるようにするため、次世代育成支援と女性活躍推進に取り組んでまいります。
当社グループは、サステナビリティ課題に関するリスクを含めた全社的なリスク管理を行うため、定期的に当社グループにおけるリスクの識別・評価を行い、リスクマネジメント計画を策定しております。リスクへの対応状況は、取締役会においてモニタリングされており、取締役会は、必要に応じてリスク管理体制の見直しを行っております。
当社グループでは、サステナビリティに関するマテリアリティへの取り組みを評価するための具体的な指標と目標は、今後、サステナビリティ委員会において検討してまいります。
また、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針についての目標と取り組みは以下のとおりであります。
①次世代育成支援
②女性活躍推進
なお、当社の管理職に占める女性労働者の割合、労働者の男女の賃金の差異につきましては、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社におけるリスクマネジメント活動は主にリスクマップの作成・リスクの優先順位付け・リスクオーナーの決定・対策の進捗確認であります。実際にリスク管理を行う部署は、事業計画の策定時に取締役会に対してリスク管理状況の報告を行います。また、各部署からの報告をもとに経営企画室で当社グループ全体のリスクの洗い出しと対応策を検討し、取締役会に報告いたします。これを受けて取締役会では、毎年リスクマネジメント活動のモニタリングおよびリスク管理体制の見直しを実施しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)市場リスク
当社グループは世界各地で事業を展開しておりますが、全売上高に占める国内売上高は依然として高い水準にあり、業績は国内の各種需要に大きく左右されます。今後、国内では人口減少が続くと予想されております。人口減少は消費需要を中心とする国内市場の縮小要因となり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが取り扱う製品に係る技術の進化や変化への対応の遅れ、競合先による競争力のある新製品の発売、価格競争の激化、低価格品などへの需要シフト、競合先同士の提携による規模拡大などの事象は当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度は、産業用機能フィルター・コンベア事業におきましては、国内および欧州の紙の需要は回復しておりません。また、環境・水処理関連事業におきましては、学校でのプール利用廃止・民間プールの利用の動きが加速しております。
このような状況下、産業用機能フィルター・コンベア事業では、底堅い需要が見込める板紙・不織布向けの新製品開発や得意先の電力削減に寄与する環境配慮型製品開発など、付加価値の高い製品の拡販により縮小する市場でも成長に向け取り組んでまいります。
また、環境・水処理関連事業では、プール業界のリーダーとなるべく体制強化を図っております。また、プールの補給水制御ボックス(水の止め忘れ防止)など、時代のニーズに合った新製品を開発しております。
(2)為替の変動に関するリスク
当社グループは、製品販売、原材料調達等の事業活動において、様々な通貨を用いて取引を行っており、為替レートの変動は、当社グループの財政状態および経営成績に対して影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは外国為替取引について、必要に応じて為替レートの変動リスクを回避し、将来の費用、収益、キャッシュ・フローを固定化することをヘッジ方針としております。
当連結会計年度は、米ドル円相場で円安の状況が継続しており、当社グループの収益に好影響がございました。将来的に円高の局面となった場合でも収益を毀損しないために、原価低減などの取り組みに注力してまいります。
また、海外からの資材輸入に際しては、為替予約を検討するとともに、為替の変動を織り込んだうえで得意先と契約を締結してまいります。
(3)資源・エネルギーの高騰リスク
ウクライナ情勢や世界的なインフレなど様々な要因により資源・エネルギーの高騰および物流の混乱・運賃の高騰が発生しており、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは原材料メーカーや設備購入先との日常的なコンタクトにより信頼関係を築いており、早期に在庫を確保しております。また、物流の混乱に備え、得意先とも協議して緊急の出荷を減少させ、運送の効率化も実施しております。
当連結会計年度は、資源・エネルギーに限らず、物価が全体的に上昇しており、収益にも影響しております。当社グループでは、全ての事業・製品で販売価格を見直しできている状況ではなく、今後も得意先と丁寧な対話を通じて適切な販売価格実現に向けた取り組みを実施してまいります。
(4)災害・事故リスク
当社グループは、生産拠点および販売拠点を国内外に展開しており、大規模地震・洪水等予測不能の自然災害等により甚大な被害を受けた場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの工場で火災・爆発事故等により従業員や周辺地域に被害が発生した場合、経営成績に影響を及ぼすとともに、社会の信用を失う可能性があります。
当社グループでは、工場の操業にあたっては安全第一を掲げ、定期的に職場のパトロールを実施して事故防止を図っております。また、災害対応基準やBCPを制定しており、自然災害や火災を想定した定期訓練を毎年実施することなどにより緊急事態に備えております。
当連結会計年度も継続して当社工場の老朽化設備の更新を実施しております。また、製紙製品分野においては、日本よりも相対的に災害リスクの低いタイでの生産能力向上のための設備投資も実施しております。
(5)事業投資リスク
当社グループは、事業成長のために積極的な設備投資やM&Aを進めております。しかしながら、投資判断時に想定していなかった市場環境や技術の変化により、期待されるキャッシュ・フローを生み出せない場合は、設備投資により計上した固定資産やM&Aにより計上したのれんなどの減損処理により、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、重要な投資の際には内部収益率(IRR)が社内で算出した加重平均資本コスト(WACC)を上回っているかを重要な基準とし、その他のシナジー効果を含めた総合的な観点から可否を判断しております。投資後は経営会議などにおいて業績の進捗や設備の使用状況報告を実施しております。
当連結会計年度も、個別案件ごとに投資リスクについて検討しております。
(6)人材確保関連リスク
当社グループは、継続的な事業運営のために人材の確保が重要であると認識しておりますが、国内における少子高齢化や働き方の価値観が変化しつつあり、社員の高齢化や離職、新規採用の困難化などの状況により、事業活動が停滞し経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは人材の多様性確保に努めるとともに、従業員自らが考え、行動することで成長を促すことを人事制度の基本方針としております。また、人権の尊重や従業員の健康管理、教育制度の充実による人材の確保に努めてまいります。
具体的な課題に対する取り組みとして、①従業員の高齢化については、人員配置転換・シニア社員活用・リカレント教育に継続的に取り組んでおります。また、②新卒採用の困難化については、通年採用・中途採用の拡大に取り組んでまいります。また、今後は採用HPの公開や先輩社員との面談実施により、情報発信と動機付けに取り組んでまいります。さらに、③勤務経験の浅い離職者対策として、従業員アンケート結果を基にアンコンシャスバイアス研修を実施し、若手の活躍阻害要因となる無意識の思い込みへの対策に重点的に取り組んでおります。
(7)環境関連リスク
当社グループは、事業活動により発生する廃棄物や有害物質等について、環境関連法令の適用を受け、これらの規制を順守するとともに、ISO14001の認証を取得する等して環境に配慮した事業活動を展開しております。しかしながら、過去、現在および将来の当社グループの事業活動に関して、環境に関する法的、社会的責任を負う事態が生じた場合には、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、環境関連法令を順守しており、適宜社内においても監視・検査体制を構築しております。また、社内で省エネ委員会を立ち上げており、今後もその活動を通じてエネルギー、電力の省力化に取り組んでまいります。
(8)コンプライアンスリスク
当社グループは、事業活動を行う上で様々な法規制の適用を受けており、その遵守に努めておりますが、価値観の変化に伴うハラスメントのリスクや不正の機会も増加しつつあります。当社グループが重大なコンプライアンス違反を起こした場合には、社会的信用の失墜や経営成績へ影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、日本フイルコングループコンプライアンス推進委員会を設置し、従業員の判断・行動の拠り所である「日本フイルコングループ行動規範」の実践に向けて、階層別の集合研修やe-learningによる教育・啓発を継続的に実施しております。
当連結会計年度は、継続してコンプライアンス推進委員会からの「コンプライアンス便り」を毎月配信し、3ヶ月ごとに小集団による教育活動を実施しております。特に、人材確保関連リスクでも記載しているとおり、アンコンシャス・バイアスについては重点的に研修・教育を実施しております。
(9)情報セキュリティリスク
当社グループは、業務効率向上のため、受注・生産・販売や人事・会計等の情報システムを有しており、これらの情報システムと機密情報の運用管理について、情報セキュリティに関する基本方針を制定し、その順守とセキュリティレベルの確保に継続的に取り組んでおります。しかしながら、このような取り組みにもかかわらず予期せぬ外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、コンピュータウイルスの感染その他の不測の事態により、機密情報の滅失、社外漏洩ならびに情報システムの一定期間停止等のリスクを完全に排除できるものではありません。そのような事態が発生した場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、近年脅威を増している標的型攻撃メール対策として、定期的に従業員に訓練を実施するなど、リスクの低減に注力しております。
今後は、メールZIP添付の代替えサービスを選定、テスト利用を開始する予定であります。また、サイバー攻撃やウイルス感染によるデータ消滅・遺失・改ざん等に備え、メールサーバへDMARC(送信ドメイン認証技術でメール詐欺などへの防御対策)の設定を行い、現状確認が行える体制を整備してまいります。
(10)訴訟等のリスク
当社グループは、国内外に事業活動を展開しており、それらが訴訟その他法的手続きの対象となる可能性があります。また、新製品の開発にあたり、事前に調査は実施するものの、他社特許権・商標権を侵害する可能性があります。これらの事態が発生した場合には、その結果により当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業活動にあたっては各種法令を遵守するとともに、他社特許の侵害回避のために、特許調査や知財に係る教育を今後も充実させてまいります。
(11)海外展開に伴うリスク
当社グループは、日本国内にとどまらず、アジア、オセアニア、北米、ヨーロッパ等海外に生産・販売活動を展開しております。グローバルな事業活動を展開するうえで、現地の法的規制、政情不安や事業環境等の変動は、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、各国の状況については、適宜現地より必要な情報を収集し対応を行っております。
当連結会計年度は、日本フイルコングループ人権方針に則った取り組みとしまして、児童労働や長時間労働のリスクを把握するための調査を実施しております。また、グループへのコンプライアンス研修の展開、現地会計基準と国際会計基準の差異分析などに取り組んでまいります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、物価の上昇が続いておりますが、個人消費や設備投資は徐々に持ち直し始めている状況となっております。海外経済は金融引締め等を背景として景気が下振れしており、先行き不透明な状況が継続しております。
このような状況下、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高は28,639百万円(前期比2.3%増)、営業利益は924百万円(前期比46.4%増)、経常利益は1,130百万円(前期比10.9%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益を計上したものの、前期も投資有価証券売却益や退職給付信託返還益、固定資産売却益を計上していた影響により622百万円(前期比51.0%減)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
産業用機能フィルター・コンベア事業は以下の分野で構成されます。
製紙製品分野では、国内の紙の需要は伸び悩み、海外においても特に欧州での景気後退による需要減少の状況は継続しております。このような状況下ではありますが、円安の影響もあり売上高は国内海外ともに前期と比べ増加いたしました。
その他産業用フィルター・コンベア分野では、食品業界向けコンベアベルトが増加したことにより売上高は前期と比べ増加いたしました。
結果、当セグメントの外部顧客への売上高は20,088百万円(前期比8.6%増)、営業利益は1,134百万円(前期比47.6%増)となりました。
電子部材・フォトマスク事業は以下の分野で構成されます。
電子部品業界は、自動車向けやスマートフォン、PC、タブレットなどの市場がプラス成長を継続しております。
そのような状況下、当社グループでは通信デバイス業界や自動車業界の得意先の試作品・開発品の需要をとらえることができており、エッチング加工製品分野およびフォトマスク製品分野の売上高は前期と比べ増加いたしました。
結果、当セグメントの外部顧客への売上高は4,365百万円(前期比4.9%増)、営業利益は499百万円(前期比35.1%増)となりました。
環境・水処理関連事業は、プール並びにろ過装置の設計・販売、天然ガスパイプラインの腐食・ガス漏れを防ぐ絶縁継手の販売などを行っております。
当連結会計年度における当セグメントの外部顧客への売上高は3,153百万円(前期比26.5%減)となりました。また、前期より継続していた複数の大型案件は工事が完成いたしましたが、資材や工事費高騰の影響を非常に大きく受け、営業損失は62百万円(前期営業利益26百万円)となりました。
④不動産賃貸事業
不動産賃貸事業は、当社が保有する不動産を店舗・マンション・駐車場等として賃貸しております。
既存の賃貸物件が順調に稼働した結果、当セグメントの外部顧客への売上高は1,032百万円(前期比0.2%減)、営業利益は780百万円(前期比0.9%減)となりました。
(注)各セグメントの営業利益の合計額と連結業績における営業利益との差異1,427百万円(前期比8.0%増)は、主として各セグメントに配分していない全社費用であります。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ279百万円増加し、21,441百万円となりました。これは主として原材料及び貯蔵品が159百万円、仕掛品が133百万円それぞれ減少した一方で、現金及び預金が448百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が272百万円それぞれ増加したことによるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ116百万円増加し、21,778百万円となりました。これは主として、投資有価証券が695百万円、建物及び構築物が177百万円それぞれ減少した一方で、機械装置及び運搬具が588百万円、退職給付に係る資産が379百万円それぞれ増加したことによるものであります。
この結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べ396百万円増加し、43,219百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ338百万円増加し、14,024百万円となりました。これは主として、未払法人税等が202百万円、支払手形及び買掛金が158百万円それぞれ減少した一方で、短期借入金が675百万円増加したことによるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ44百万円減少し、5,936百万円となりました。これは主として、繰延税金負債が39百万円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べ293百万円増加し、19,960百万円となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ103百万円増加し、23,259百万円となりました。これは主として、その他有価証券評価差額金が370百万円減少した一方で、為替換算調整勘定が440百万円、退職給付に係る調整累計額が161百万円それぞれ増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ447百万円増加し、4,822百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,123百万円、減価償却費1,685百万円などにより、1,971百万円の収入(前連結会計年度に比べ186百万円の収入増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入680百万円があった一方、有形固定資産の取得による支出1,653百万円などにより1,013百万円の支出(前連結会計年度に比べ500百万円の支出増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入1,800百万円、短期借入金の純増額670百万円などがあった一方、長期借入金の返済による支出1,995百万円などにより、579百万円の支出(前連結会計年度に比べ1,060百万円の支出減)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は製造原価によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度において、環境・水処理関連事業の受注高および受注残高が減少しております。これは主に、前期に受注したイベントプール等の大型案件が当期は減少したことによります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度において、環境・水処理関連事業の販売高が減少しております。これは主に、前期の売上に含まれていたイベントプール等の大型案件が当期は減少したことによります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、2023年度~2025年度中期経営計画を策定しております。当連結会計年度の実績と目標の達成度は下記のとおりとなりました。
(百万円)
当連結会計年度は、環境・水処理関連事業の複数のプール大型案件において、海外から輸入している資材の円安進行に伴うコスト増や、運搬費、工事費などの高騰の影響を受け、営業利益の目標への進捗が低い状況であります。また、前連結会計年度までは特別利益として投資有価証券売却益を計上したことなどにより、ROE水準は目標に近い水準でありましたが、当連結会計年度以降は多額の特別利益の計上は見込んでおらず、ROE目標の達成には、現中期経営計画の経営重点課題にも挙げております「収益力の回復」が必須であります。
各セグメントの市場環境で、特に製紙製品分野は紙の需要が回復せず、今後も減少していくことが想定されるなか、収益力回復に向けた具体的な施策の検討を進めてまいりました。最重要の施策としてタイへの生産移管による原価低減を実施してまいります。また、今後需要の拡大が見込める海外向け不織布用製品の拡販に注力いたします。
また、市場環境が好調な電子部材・フォトマスク事業や環境・水処理関連事業においては、積極的な設備投資や人員補強、協力会社を含めた生産・販売体制の強化に重点的に取り組んでまいります。
なお、資本政策につきましては、自己資本比率の水準を中長期的には45~55%とすることが望ましいという考え方のもと、この範囲内で収益力向上に資する設備投資とのバランスを見ながらも積極的に株主還元するべく、連結配当性向30%以上、かつDOE2.4%以上という配当方針を当連結会計年度も継続しております。
(2) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき継続的にこれを行っております。
個々の項目につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4 会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
(3) 資本の源泉及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要の主なものは、原材料等の仕入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用や設備投資等によるものであり、営業活動により獲得した資金及び金融機関からの借入によりまかなわれております。
資金の配分方針については、当社グループでは常に生産設備に係る設備投資が必要であり、その資金需要に備えた手許現金及び現金同等物を確保しております。設備投資につきまして2024年度は2,101百万円、2025年度は2,342百万円を見込んでおります。設備投資計画における重要な設備の詳細については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。
株主還元につきましては、経営における重要課題の一つと考えており連結配当性向30%以上、かつDOE2.4%以上を目標としております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。
資金の流動性につきましては、予測不能な事態が生じない限り、安定的な資金運用が可能であると認識しております。なお、資金の流動性保持の観点から主要取引銀行と特定融資枠契約等を締結しております。特定融資枠等の総額は13,430百万円であり、当連結会計年度末の借入実行残高は5,856百万円であります。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、
(1) 産業用機能フィルター・コンベア事業
製紙製品分野では、顧客の付加価値増大をキーワードとして開発されたN-CRAFTシリーズ、N-LEAPシリーズ、およびSPUNPROシリーズが業績向上に大きく貢献しております。これらの結果を基に、今後も更なる高次元の新製品開発を推進してまいります。また、「環境配慮型製品」として開発を進めている、駆動負荷低減ワイヤー及びリサイクル糸を使用したワイヤーが市場で評価され始めております。特に駆動負荷低減ワイヤーは出荷量も増加し業績向上に貢献しております。その他産業用フィルター・コンベア分野では、ライフサイクルコストを意識した開発の一つとして、チェーンを使わない直接駆動方式のコンベアベルトで、従来よりも網目を小さくしたタイプを開発しています(特許出願中)。小ネジや米飯などの搬送プロセスにおいて、洗浄性の向上や省スペース、省エネを期待できます。
当セグメントにおける研究開発費の金額は
(2) 電子部材・フォトマスク事業
フォトマスク事業分野では、半導体・MEMS他向けフォトマスクの高精細化を目的とした製造プロセス開発・販売を継続しております。また、これらの生産技術を応用した新規商材の開発も行っており、レーザー光を回折してロゴや任意のビームパターンを照射する装置等で使用されるDOE(回折光学素子)については継続的な受注を獲得しています。エッチング加工製品分野では、各種面状発熱体関連部材、銅細線メッシュおよび透明導電部材を用いた5Gアンテナ・車載用センサー関連部材・光学素子等の加工技術を高め、幅広い用途への部材供給を行い、多様化する情報化社会への適応を目指しております。また、各種個別半導体や電子部品の前工程・後工程を支援する製品開発を進め、トータルソリューションの提供による顧客満足度向上を目指した活動を行っております。
当セグメントにおける研究開発費の金額は
(3) 環境・水処理関連事業
環境・水処理関連事業では、プール運営管理における水位管理(水流出防止)・担当者の負担低減に繋がる補給水制御システムをはじめ、次亜塩素に対応した滅菌装置ユニット、ポンプモーターの焼付け事故防止のための空転防止機能を開発いたしました。今後もプールをより安全に利用できる新製品開発に取り組んでまいります。
当セグメントにおける研究開発費の金額は
(4) 全社(共通)
総合研究開発室は、GXに対応した製品の開発として再生可能エネルギーを水素で貯蔵することでエネルギーを有効活用し、災害時にも利用可能な電源や飲料水を供給することができる自立型水素発電・飲料水供給システムHydroX®シリーズの開発・販売活動に注力しております。また、各事業の事業領域の拡大および新規市場開拓を行うべく、既存技術を応用した製品の研究開発を推進しております。
当セグメントにおける研究開発費の金額は