文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、グローバル市場における競争力強化施策の実行と成長戦略の展開により、収益力と財務体質の強化を図り、お客様の視点に立った製品、サービスの提供等を通して、21世紀においても社会に一層貢献できる企業価値の高い会社を目指します。
中長期的ビジョンとして、当社グループでは≪「トータル・ケーブル・テクノロジー」の追求により、世界の安全・安心を支える≫を掲げております。
当社は、ワイヤ、ワイヤロープ及び繊維ロープとそれらの派生商品(エンジニアリング事業等)を広範に保持し、日本のあらゆる産業へ提供する中で、技術を蓄積してきました。これに加え診断技術等のソフト面やカーボンファイバー等異素材の技術開発にも取組んでおります。
これを踏まえ、当社は、ケーブルに関して様々な対応が可能な世界的にもユニークかつ競争力あるサプライヤーとして、新たな成長のステージに挑戦してまいります。
(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社は、2024年5月に2025年3月期から2027年3月期の事業運営の指針となる中期経営計画『TCTRX』を策定いたしました。TCTRXの最終年度である2027年に当社は、創業140周年を迎えます。
TCTRXの取組としては、「①重点育成事業への経営資源投入強化」、「②既存事業の競争力強化」、「③全ステークホルダーにとって魅力ある会社作り」を基本方針として定め、各種施策に取組み、前中計期間で回復した「事業基盤の維持と収益力の強化」を図ってまいります。また、当社の企業理念である「共存共栄」と共通の精神を持つSDGsが目標とする2030年を達成の目途に、SDGsの理想を実現できる高収益力と強固な財務体質を確保し、トータル・ケーブル・テクノロジーを追求することで、世界の安全・安心を支える150年企業を目指してまいります。
(3) 経営環境及び対処すべき課題
2026年3月期の国内経済は、賃金の上昇傾向が継続し企業の設備投資も拡大傾向が続くと予想され、緩やかな上昇傾向が継続するものと予想されます。しかし、米国の関税政策に伴う各国のサプライチェーンの混乱や世界経済の停滞などの影響により下押しされるリスクも存在し、不確実性が高い状況が続くと想定されます。
このような環境の中、当社グループにおいては、前期からスタートした中期経営計画TCTRXを推し進めてまいります。TCTRXの2年目となる2026年3月期の連結業績は、売上高640億円、営業利益40億円、経常利益39億円、親会社株主に帰属する当期純利益32億円を見込んでおります。TCTRX最終年である2027年3月期には当初の目標を達成するべく、更なる経営の効率性向上に邁進いたします。グループ全体として、既存事業における収益力の維持・向上を図ると共に、将来の事業の柱となりうる重点育成事業を推進し、更なる財務基盤強化と株主還元を両立させてまいります。
当社グループは創業以来、事業活動を通じて安全で安心な社会インフラの整備や環境にやさしい社会の持続的発展に広く貢献してまいりました。グループ各社、及び各工場においてSDGsに資する製品・サービスの開発や、脱炭素社会実現に向けた取組を進めてまいりましたが、より一層、事業活動を通じた環境・社会課題の解決及び企業価値向上を目指すべく、2023年4月にサステナビリティ委員会及びサステナビリティ推進室を設置し、2023年5月にサステナビリティに関する基本方針の策定及びマテリアリティ(重要課題)の特定を実施いたしました。その際決議されたサステナビリティ課題全般、及び重要と判断するテーマ「気候変動」と「人的資本」における「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ課題全般
当社グループは以下のとおり、サステナビリティを巡る課題のリスクと機会に対応するための適切なガバナンス体制を構築しております。社長執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会が、年2回以上の頻度で当社グループのサステナビリティ活動全般の審議を行い、対応方針や戦略を策定の上、各業務執行部門や子会社へ指示を行います。当事業年度においては6回開催し、マテリアリティ(重要課題)のKPI指標や健康経営の推進に関する審議を行いました。審議内容は経営会議及び取締役会へ付議・報告され、経営会議及び取締役会は監督及び必要に応じて指示を行います。特に重要な個別課題については、サステナビリティ委員会の傘下に分科会を設置の上、PDCA管理を行っております。

当社グループは、5つのマテリアリティ(重要課題)に沿ってサステナビリティ経営を遂行しております。マテリアリティ(重要課題)は、企業理念、経営の基本方針、中長期的ビジョンを起点に、SDGs、ISO26000、GRIスタンダード、SASBセクターガイドライン等の各種ガイドラインからサステナビリティを巡る課題を抽出し、ステークホルダーの皆様及び当社グループ双方にとっての重要性を分析の上、以下のとおり特定しております。持続可能な環境・社会の実現と企業価値向上を目指して、マテリアリティ(重要課題)毎に方針・戦略を策定しながら具体的な取組を進めてまいります。
サステナビリティ課題のリスクについては、関係各部署と連携しながらサステナビリティ推進室において特定・評価しております。特定・評価された各種リスクについては、社長執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会にて、年2回以上の頻度で管理・モニタリングされます。管理・モニタリング結果については経営会議及び取締役会へ報告され、適切な監督・指示を受けております。
当社グループは、当事業年度期間中に取締役会及びサステナビリティ委員会で複数回議論を重ね、5つのマテリアリティ(重要課題)に対応するKPI指標を新たに設定しました。マテリアリティ構成要素ごとに26のKPI指標を設定し、目標及び実績を管理しております。「気候変動」と「人的資本」に関連するKPI指標については「(2)気候変動 ④ 指標と目標」と「(3)人的資本 ② 指標と目標」をご参照ください。その他のKPI指標詳細は、以下の当社ウェブサイトをご参照ください。
(参考)東京製綱 マテリアリティKPI目標と実績
URL :https://www.tokyorope.co.jp/sustainability/materialitykpi.pdf
(2) 気候変動
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ課題全般のガバナンスに組み込まれております。詳細は「(1)サステナビリティ課題全般 ① ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
当社グループは、将来の気候変動が事業活動に与えるリスクと機会を特定し、財務影響を評価し、適切な対応策及び戦略を講じていく目的で、シナリオ分析を実施いたしました。
気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)や国際エネルギー機関(International Energy Agency)が発行する文献等を参照しつつ、温暖化抑制のために各国が気候政策を導入し脱炭素経済への移行リスク(機会)が顕在化する「1.5℃シナリオ」と、温暖化を抑制することなく現状通り経済活動を行い物理的リスク(機会)が顕在化する「4℃シナリオ」の2つのシナリオにおいて、当社グループの事業活動における主要な気候関連のリスクと機会を下表のとおり特定いたしました。
シナリオ分析の特定結果を要約しますと、「1.5℃シナリオ」においては、炭素税や線材価格の高騰の財務リスクが大きいと想定されるものの、適時適切に販売価格に反映し影響を抑えつつ、機会である洋上風力発電関連製品の開発や環境配慮製品の拡充に注力し、新たな成長機会の獲得を目指してまいります。
「4℃シナリオ」においては、突発的な気象災害や慢性的な気温上昇によるリスクに対しBCP等の対策を講じて財務影響の極小化を図りつつ、国土強靭化に向けたインフラ需要の取り込みを図ってまいります。
いずれのシナリオにおいてもレジリエント(強靭)に当社グループが企業価値を向上していけるよう、今後も継続的にシナリオ分析を実施の上、対応策・戦略の実践を進めてまいります。
(注) 1 シナリオ分析の対象は、鋼索鋼線関連事業、スチールコード関連事業、開発製品関連事業の三部門であります。
2 時間軸は、短期:1年以内、中期:~2030年まで、長期:~2050年までの三区分で評価しております。
3 財務影響度は、引用シナリオのパラメータに基づきPL・BS影響を算出の上、大・中・小の三区分で評価しております。
なお、当連結会計年度末現在の評価であり、今後、前提条件の変化や分析の高度化等により変更となる可能性がございます。
従前より、ISO14001等の環境マネジメントシステムに準拠しながら、現在時点の気候関連リスクを含む環境リスクについて、各製造拠点において特定、評価し、適切な対応を行ってまいりました。各製造拠点が特定・評価した各リスクについては、環境安全防災室へ報告が行われ、一元管理されております。
将来発生しうる中長期的な気候変動関連リスクの特定・評価については、サステナビリティ推進室、環境安全防災室、経営企画部及び内部監査室で実施いたしました。サプライチェーンへの影響、発生可能性、発生の時間軸及び財務影響などを考慮しながら、②戦略で記載のとおり「移行リスク」と「物理的リスク」を特定・評価しております。
特定・評価された気候変動関連リスクにつきましては、「(1)サステナビリティ課題全般 ③ リスク管理」に記載のとおり、サステナビリティ委員会にて適切に管理・モニタリングされております。
④ 指標と目標
当社グループは、気候関連のリスクと機会を管理するための指標として、GHGの一種である二酸化炭素(CO2)の排出量(Scope1+Scope2)を定めております。指標に対する目標としては、パリ協定や日本政府が公表した「2050年カーボンニュートラル宣言」、日本鉄鋼連盟のロードマップ等との整合も勘案しながら、「CO2排出量削減目標及び削減ロードマップ」を設定しております。
当連結会計年度における当社グループ(※)のCO2排出量実績は、Scope1が16千t-CO2、Scope2が44千t-CO2、合計で60千t-CO2となりました。これは2013年度対比で▲47.8%の削減に相当いたします。
当社グループでは従前より、各製造拠点で伸線加工等の製造技術の改善を図るとともに、省エネルギー型の蒸気トラップ、大型コンプレッサー、LED照明などの設備を導入し、燃料及び電力の使用量削減に取り組んでまいりました。その結果、CO2排出量は年々着実に減少傾向を示しております。
また、当連結会計年度においては、東綱スチールコード株式会社において適正な利潤確保を重視した経営を実施したことにより、販売数量及び生産量が減少し、それに伴いCO2排出量も大幅に減少しました。
今後も、2030年度のCO2排出量削減目標である▲46%の達成及びカーボンニュートラルの実現に向けて、更なる省エネルギーの推進や、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの活用拡大などの取組を継続してまいります。

(※):算定範囲は東京製綱株式会社、東綱スチールコード株式会社、東京製綱繊維ロープ株式会社、日本特殊合金株式会社、東京製綱インターナショナル株式会社の5社となります。
(3) 人的資本
① 戦略
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は次のとおりです。
当社グループの企業理念である『共存共栄』の実現には、企業価値の源泉である当社グループの役員・従業員が心身の健康を確保し、互いに多様な考え方や価値観を認め合い、自己実現を図れることが必要であり、同時に全ての役員・従業員が安全・安心に働くことができる職場環境の構築が重要であると考えております。
そのため、当社グループでは、役員・従業員の健康の確保、増進のための取組、多様性の理解と確保の促進、及び役員・従業員の主体的で多様なキャリア形成と必要なスキルアップに向けた支援を重点的に行うことで、各人が自らの持つ能力を最大限に発揮し、エンゲージメントを高く維持して企業活動に参画する環境を整え、企業価値の持続的な向上に努めてまいります。
人材に関する重要な方針や施策の決定は経営会議において議論・決定しますが、各施策の進捗状況を把握し、適宜制度を改善させていくために、毎年1回ピープルサーベイを実施しており、その分析結果を経営会議並びに取締役会に報告し、施策に反映しております。また、多様性の理解と確保については、女性活躍を含む多様性の確保に向けた取組を行うこと、次世代のリーダーを育成することを執行役員の評価項目とすることで、取組むべき課題として認識し、施策の立案・実行を促すこととしております。
1) 経営トップのコミットメント
「安全・安心な職場作り」「組織風土改革」を社長方針として明確に示し、製造・工事現場の安全対策に最優先で取組むのはもちろんのこと、安全・安心に就業できるためのルールを定め、コンプライアンス遵守を徹底することにより方針の実現を目指しております。具体的には「ハラスメントの防止」「上司・部下間での双方向の積極的な情報共有、対話」を行動原則として示し、組織風土改革に取組んでおります。
また、役員・従業員の健康の喪失は企業価値創出にとって損失であるとの認識のもと、健康経営へ取組んでおります。
2) 多様性の理解と確保の促進
当社における管理職に占める女性労働者の割合は、2.9%となっており(詳細は「従業員の状況」をご参照ください。)今後これを高めていく必要があると考えております。女性活躍に向けた取組を執行役員の評価項目の一つとし、社内育成を強化するとともに、中途採用による女性管理職の増加を目指しております。また、管理職候補層である、いわゆる総合職に占める女性の割合は近年の女性採用増加により36%と改善しつつあるものの、今後これを一層高めるべく、新卒採用に限らず中途採用においても女性の採用を積極的に行う事や、総合職への職能変更を希望する社員への主体的で多様なキャリア形成を実現するための支援といった各種取組に注力してまいります。性別にかかわらず活躍できる職場環境の整備、育児・家事と業務との両立及びライフステージの変化に合わせた多様な働き方を可能とする職場環境の整備を重層的に推進してまいります。
3) 能力開発
次世代リーダー育成のため、経営幹部たる執行役員に求められる能力を定義し、これを管理職に伝えております。一人ひとりが自らの能力開発において、当社グループの経営に求められる資質がどのようなもので、どのように高めるべきかを理解し、その実現に向け自ら研鑽に努めることは、本人はもとより、当社にとっても有益であると考えております。
当社の管理職にはMBO(Management by Objectives)制度を採用しており、会社の方向性と一人ひとりの目指したい方向をすりあわせし、時には高い目標を設定することで会社と従業員とがともに成長していく事が可能となる仕組みとしております。
また、研修に関しては、階層別研修においては特にリーダーシップとコミュニケーション能力の開発に注力するとともに、各業務に必要なスキルに関する研修は通信制も含め、すべての従業員が都度受講が可能となっているほか、経験の浅い従業員については、トレーナー制度をもうけて先輩従業員によるフォローアップを行っております。これら能力開発のもと、非正規雇用の従業員については、積極的に正規化し有為人材の確保に努めております。
4) 表彰
当社は従業員が目指すべき価値を体現することを表彰する制度を設けております。
具体的には「革新」「自発」「高い目標」「チームの成長」を成し遂げた従業員を模範社員として表彰し、本人の努力を称揚するとともに、これらの価値を組織全体に浸透させていく取組を引き続き進めてまいります。
また社内イントラネットを利用し、日常の業務において従業員同士が感謝を伝え合う仕組みを整備し、従業員同士のコミュニケーションの向上と相互理解を推進しています。
5) 多様な働き方の実現
当社は時間と場所に縛られない働き方が、育児や家事と業務との両立やライフステージの変化に合わせた働き方の実現に寄与し、今後優秀な人材を獲得していくためにも有用と考えており、従来から実施しているフレックスタイム制度と合わせて、在宅勤務と出社勤務が組み合わされた勤務も可能な在宅勤務制度を導入しております。
これらの制度と合わせて、本社のオフィス環境についても従業員間のコミュニケーションを活性化し、より創造性を高めるためのレイアウトの導入とフリーアドレス化を実施しております。
また、当社は定年制とその後の再雇用制度を設けておりますが、定年を超えて再雇用される従業員に対しては一定の条件のもと勤務日数の縮減と副業が可能な働き方を選択でき、従業員一人ひとりが定年後のセカンドキャリアビジョンにあわせた働き方が可能となる制度を導入しております。
6) 健康経営、労働安全衛生
「共存共栄」の企業理念のもと、当社は従業員とその家族とともに栄えることを目指し、健康経営に取組んでいます。すべての従業員がいきいきと働いてこそ、社会に安全・安心をお届けすることができるとの考えのもと、労働組合・健康保険組合そして従業員と一体となって、健康を維持、増進できる環境づくりを積極的に推進しております。健康経営においては、適切なワークライフバランスの実現、性別にかかわらず活躍できる環境づくり、健康リスク保有者への対策強化を行っております。また、特に工場現場、工事現場を抱える当社では労働災害の撲滅を目指して、ISO45001に則った安全管理を徹底しつつ、リスクアセスメントの強化と安全パトロールの実施を重点的に行っております。
② 指標と目標
当社グループでは上記「① 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標については、当社においては関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、必ずしも連結グループに属する全ての会社では行われていないことから、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
人的資本に関する指標目標及び実績は次のとおりであります。
(注) 1 対象は、提出会社
2 対象は、連結子会社を含む国内主要製造10拠点
3 教育訓練費に該当する勘定科目への計上金額
4 延べ労働損失日数÷延べ労働時間数×1,000
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
世界並びに日本経済の動向により、当社グループの主要需要業界であるタイヤ業界や建設業界などの活動水準が影響を受けた場合には、当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。
当社グループは主材料である線材や亜鉛・心綱等を購入しておりますが、いずれの材料も数社の仕入先に依存し材料供給リスクに備えております。しかしながら、仕入先の業績不振、操業停止等に起因する原材料の供給停止や遅延、また世界的な需給逼迫による仕入量の制約、鉄鉱石や原料炭の価格高騰に起因する鋼材価格の上昇が当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、アメリカ、ベトナム等に海外事業拠点を有しておりますが、当該国における政治・経済的混乱、疫病・テロといった社会的混乱、法的規制などにより、当社グループの事業活動が制約される可能性があります。これらの混乱や規制等に関する動向は、現地及び国内の情報網を利用し、早々に情報を入手し対応するよう努めております。
当社グループは、取引先との中長期的な経営戦略を共有するために株式を保有しており、その時価が下落した場合、当該株式について、減損処理が必要となる可能性があります。また、従業員の退職給付に関して、株価の下落により年金資産が目減りし、退職給付費用が増加する可能性があります。
当社グループは、多額の固定資産を所有しており、経営環境の変化などに伴う収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、その回収可能性を反映させるように固定資産の帳簿価額を減額し損失を計上することになるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、取引先に対して様々な形で信用供与を行っており、債権の回収が不可能になる等の信用リスクを負っております。これらのリスクを回避するため、当社グループでは取引先の信用状態に応じて、信用限度額の設定や必要な担保・保証の取得等の対応策を講じております。しかし、取引先の信用状態の予期せぬ悪化や経営破綻等により債権が回収不能となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの国内・海外における生産・販売活動における競争環境は厳しさを増しております。当社グループでは、継続的なコスト削減と同時に新製品の開発、新規事業の展開を推進しておりますが、市場価格の低下が当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、製品等の輸出入及び原材料の輸入において外貨建取引を行っていること並びに外貨建の資産を保有していることから、急激な為替変動に伴う為替リスクを有しており、そのヘッジのため適宜先物為替予約を行っております。しかしながら、為替予約でのリスクヘッジには限界があり、当社の業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの生産拠点等において、地震・火災等の大規模な災害、設備事故や大規模な感染症等が発生した場合、生産活動に支障をきたすことになり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業活動により発生する廃棄物や有害物質等について、環境関連法令の適用を受けておりますが、製品の開発・設計・製造・販売・施工が地球環境に密接に関わり合っている事を認識し、自然環境との調和と地域社会との共生を目指し、また、事業活動を通じたSDGs達成への取組を全従業員で実践していくことを環境方針の基本理念としております。
また、当社グループはTCFD提言への賛同を表明しており、気候変動が当グループの事業活動に与える影響に関し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」のカテゴリを踏まえ、機会とリスクの両面から対応、開示を進めております。当該取組状況、取組方針の概要は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動」に記載のとおりです。
当社グループは、新製品開発を通じて多くの新技術やノウハウを生み出しており、これらの知的財産を特許出願し、権利保護と経営資源としての活用を図っております。しかし、当社グループの知的財産権への無効請求、第三者からの知的財産権侵害等が当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、国内外での事業において各国の法的規制を受けており、コンプライアンス、財務報告の適正性確保をはじめ、適切な内部統制システムを構築・運用しておりますが、将来法令違反等が発生する可能性は皆無ではなく、また法規制等の変更により、法令遵守のための費用が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスの徹底に努めておりますが、法令違反等の有無に関わらず、万が一当社グループに対する重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態は、総資産が87,369百万円となりました。現金及び預金の増加により流動資産は増加となりました。また、固定資産においても、株価の変動等により投資有価証券が減少したものの、海外子会社において換算為替レートの円安に伴う固定資産の増加により、総資産は前連結会計年度末より1,525百万円増加いたしました。負債については、借入金が増加したものの、仕入債務等の減少により、前連結会計年度末より592百万円減少の50,683百万円となりました。純資産については、前連結会計年度に係る株主配当金の支払、その他有価証券評価差額金の減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加、円安に伴う為替換算調整勘定の増加により、前連結会計年度末より2,117百万円増加し、36,685百万円となりました。
経営成績については、売上高62,867百万円(前期比2.1%減)、営業利益3,585百万円(前期比8.1%減)、経常利益3,875百万円(前期比18.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,247百万円(前期比59.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
当事業の経営成績は、売上高28,947百万円(前連結会計年度比3.4%増)、営業利益2,239百万円(前連結会計年度比15.2%減)となりました。
当事業の経営成績は、売上高5,513百万円(前連結会計年度比26.3%減)、営業利益1百万円(前連結会計年度は242百万円の損失)となりました。
当事業の経営成績は、売上高17,710百万円(前連結会計年度比1.9%減)、営業利益767百万円(前連結会計年度比0.3%減)となりました。
当事業の経営成績は、売上高3,711百万円(前連結会計年度比9.1%減)、営業利益209百万円(前連結会計年度比34.1%減)となりました。
当事業の経営成績は、売上高6,984百万円(前連結会計年度比5.4%増)、営業利益367百万円(前連結会計年度比11.6%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,023百万円増加し、5,962百万円になっております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益から減価償却費の影響等収入要素と仕入債務の減少などの支出要素を加味した結果、2,416百万円の収入(前連結会計年度は3,432百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により、1,645百万円の支出(前連結会計年度は301百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金が増加したものの、配当金の支払や自己株式の取得により、31百万円の支出(前連結会計年度は3,966百万円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額は販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額は外部顧客に対する受注に基づくものであります。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額は外部顧客に対する売上に基づくものであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社経営陣は、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
当社グループは、取引先の支払不能時に発生する損失について、過去からの損失発生実績に基づいた見積り額により貸倒引当金を計上しております。過去からの実績と大きな相違があった場合、引当の過不足が生じる可能性があります。
当社グループは、長期的な取引関係維持のために、特定の取引先等の株式を所有しております。これらの株式には価格変動性の高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式が含まれます。当社グループは投資価格の下落が一時的でないと判断した場合には、投資の減損を計上しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、評価損の計上が必要になる可能性があります。
当社グループは、繰延税金資産について、将来の事業計画に基づいて決定した課税所得の見積りを前提とし、合理的にその回収可能性を検討し判断して計上しております。将来の事業計画に変動をもたらす経済環境の変化などにより、繰延税金資産の計上に影響が生じる可能性があります。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
従業員退職給付費用及び債務は、数理計算で設定されている前提条件に基づいて算出されており、これらの前提条件には、将来の給与・賃金水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率などが含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。未認識数理計算上の差異の償却は、退職給付費用の一部を構成しており、前提条件の変化や前提条件と実際との結果の差異の影響を費用として認識したものであります。当連結会計年度において、この償却費は74百万円ありました。
当社グループは固定資産の減損会計において、独立したキャッシュフローを生み出す資産の合理的なグルーピングを行い、グルーピングされた資産ごとの将来キャッシュフローの見積りから、減損の判定及び減損額の算定を行っております。なお、当連結会計年度において、172百万円の減損損失を計上いたしました。
当連結会計年度における当社グループの売上高は、鋼索鋼線関連において鋼索製品の売上は増加したものの、スチールコード関連で収益性改善を第一に事業活動を展開したことによる販売量の減少影響があり、売上高は62,867百万円(前期比2.1%減)と減少いたしました。
利益面においては、操業コストの低減などに努めるとともに、諸資材・人件費等を含む物価上昇に対応した製品価格改定を進めてまいりましたが、物価上昇と製品価格改定のタイムラグの影響もあり、当連結会計年度における営業利益は3,585百万円(前期比8.1%減)、経常利益は3,875百万円(前期比18.5%減)といずれも減少となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に対して固定資産の減損損失等が減少したことにより3,247百万円(前期比59.2%増)と増加いたしました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当連結会計年度末の借入金及びリース債務からなる有利子負債残高は24,460百万円となっており、また、現金及び現金同等物を5,962百万円保有しております。
設備投資の資金調達については、基本的に自己資金及び借入金に拠る方針であります。
TCTRXの目標数値及び当連結会計年度における各指標の状況については下表のとおりです。なお、TCTRXの詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標」に記載のとおりであります。
[『TCTRX』の目標数値と当連結会計年度における各指標の状況]
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
鋼索製品・繊維ロープ製品の売上が増加し、当セグメントの売上高は28,947百万円(前連結会計年度比3.4%増)となりました。利益面では、前年度堅調だった付加価値の高いハイエンド製品の減少と人件費・研究費等の費用の増加もあり、営業利益は2,239百万円(前連結会計年度比15.2%減)となりました。
収益性の改善を第一に事業活動を展開した結果、タイヤ用スチールコードの販売量は減少し、当セグメントの売上高は5,513百万円(前連結会計年度比26.3%減)と減少したものの、償却負担軽減を含む原価低減の影響により営業利益は1百万円(前連結会計年度は242百万円の営業損失)と大きく改善いたしました。
橋梁事業の売上が増加したものの、工事等の遅れにより国内防災事業、CFCC事業の売上が減少し、当セグメントの売上高は17,710百万円(前連結会計年度比1.9%減)、営業利益は767百万円(前連結会計年度比0.3%減)となりました。
産業機械事業の売上が減少し、売上・利益ともに減少いたしました。当セグメントの売上高は3,711百万円(前連結会計年度比9.1%減)、営業利益は209百万円(前連結会計年度比34.1%減)となりました。
石油製品の売上が増加し、当セグメントの売上高は6,984百万円(前連結会計年度比5.4%増)となりました。利益面では、主に商業施設の修繕費等運営費用が増加したことから、営業利益367百万円(前連結会計年度比11.6%減)となりました。
2024年4月1日前に締結された財務上の特約が付された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
当社グループは、中長期的ビジョンとして≪「トータル・ケーブル・テクノロジー」の追求により、世界の安全・安心を支える≫を掲げ、日々前進を続けております。「トータル・ケーブル・テクノロジー」とは、①超高強度スチール、高機能繊維、炭素繊維など多くの先端素材によるケーブル製造のラインナップと、②使用されるフィールドに即した様々なケーブル加工技術に加え、③健全性診断や、エンジニアリングといったソリューションを融合して、④グローバル市場に、画期的な商品・サービスを提供できる当社グループ固有の強みを一言で表現したものであり、SDGsや顧客の安全・安心への貢献を踏まえながら、新たなグローバル時代においても世界をリードする企業として成長し続けます。
当社グループの商品・サービス群の多様性(素材、サイズ、用途等)に奥行き(ケーブル本体、端末機器、健全性診断技術、製造機械、エンジニアリング等)を掛け算し、最大限に活かした事業展開を行うべく、基礎研究、製造技術開発から顧客ニーズを踏まえた高付加価値・高機能製品の開発、さらには未来技術の開発まで一貫した研究開発を行っております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
当セグメントにおいては、ワイヤロープ・ワイヤに関する製品の高強度化、長寿命化、多機能化に向けての研究開発や商品の健全性を診断する評価技術開発と並行して、スチール以外の素材を用いた新商品の開発を行っております。
また、競合他社に対し環境対応やコスト競争力での優位性を確保するため、画期的な新製造技術の開発にも取組むと共に、浮体式洋上風力発電に用いられる係留に係る技術開発も進めております。
当連結会計年度における当事業に係る研究開発費の金額は
当セグメントにおいては、顧客の省エネや高機能タイヤ開発に対応するスチールコードの高強度化・軽量化に取組んでおります。
当連結会計年度における当事業に係る研究開発費の金額は
当セグメントにおいては、道路安全施設(落石・崩壊土砂対策、遮音壁等)における差別化新商品・新工法の開発、鋼構造物用ケーブルの設計、炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)の国内外の市場での需要拡大に向けた研究開発を進めております。
特にCFCCに関しては、高耐食(錆びない)という特性を活かし、土木分野において「飛来塩分や凍結防止剤散布による鋼材の腐食が著しい環境下にある道路橋床版取替工事」への適用を目指した高耐久スラブの開発や、RC用(異形鉄筋置換用)CFCCの性能向上によるさらなる用途開発に取組んでおります。
当連結会計年度における当事業に係る研究開発費の金額は
当セグメントにおいては、粉末冶金製品事業において、長年培った技術力・開発力を活かし、高度化する顧客ニーズにマッチした超硬工具等の開発に取組んでおります。
当連結会計年度における当事業に係る研究開発費の金額は