第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

東プレグループは、卓越した技術を駆使して製品・サービスを創造し、社会に貢献することを使命とします。経済的成果を追い求めるだけでなく、国際企業として社会から必要とされ、尊敬される企業として、高い倫理観と良識をもって企業活動を遂行します。世界中で働く東プレグループの職員はこの理念を共有し、社会への貢献と企業の永続的な繁栄を求めて行動します。

こうした基本理念に基づき、株主やお客様、取引先からの信頼と期待に応え、社会とともに成長することを念頭においた経営を実践しております。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、2024年度を初年度とし、2026年度を最終年度とする中期経営計画を定めております。

 

<第16次中期経営計画ビジョン>

2035年に創立100周年を迎える私たちは、これからも、多様な技術で様々なお客様に商品を提供し続けます。

 

<第16次中期経営計画基本方針>

・人材育成と働き易い環境整備に努めて、多様性の意識を持つ人材が

活躍できる場を広げ、次代を担う社員に責任ある企業であり続けます。

・生産手段の効率化や技術革新を推進しながら

お客様が求める技術力を追求し、企業の競争力を向上させ続けます。

・サステナビリティの実現に向かって常に高い意識を持ち、

グローバル企業として社会的責任を果たし続けます。

 

また、計画の概要については、当社ホームページをご参照ください。

 

(3)経営環境

世界経済におきましては、依然として米中関係の緊張や地政学リスク、資源価格の高止まり、インフレの長期化といった要因により、不確実性が続いております。特に米国の関税政策による影響や中国経済の構造的低迷は、グローバルなサプライチェーンや貿易環境に影響を及ぼす懸念があります。また、気候変動や人権問題、ESG対応への意識は一段と高まり、企業の持続可能性に対する要求が強まっております。

また、国内経済におきましても、為替変動の影響や原材料価格の高騰、人手不足の深刻化といった課題が企業活動に影響を与えており、先行きは依然として不透明であります。加えて、2024年以降の物価上昇を受けた消費者マインドの冷え込みも、一部業種での成長にブレーキをかける要因となっております。

このような環境下、自動車業界では引き続きCASEやMaaSといった潮流が進展しており、業界全体の再編が加速しております。EV車の普及やマルチマテリアル化の進展など、技術革新に対応した柔軟な開発・生産体制が求められております。当社グループとしても、これらの動向に迅速に対応し、競争力のある製品・技術の提供を進めてまいります。

冷凍車業界におきましては、部材供給の安定化が進む一方で、カーボンニュートラルや電動車両対応への要求が高まっており、高効率・低環境負荷の冷凍装置の開発が喫緊の課題となっております。引き続き、品質と環境性能の両立を図る技術力の強化が重要な課題と捉えております。

空調機器および電子機器業界におきましては、省エネ性や快適性を追求した高付加価値製品への需要が継続的に拡大しており、当社が展開する独自技術を活かした製品群への評価が高まっております。人間工学に基づいて設計されたキーボード「REALFORCE」や、産業向けの防水・耐油キーボードは、eスポーツ市場の拡大や産業用デバイスとしての活用が進んでおり、製品ラインナップの拡充や展示会等への出展と通じて、BtoB・BtoC両面での販売強化に努めてまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

このような状況のもと、当社グループにおきましては、コア技術の開発、コスト低減、生産体制の強化に努めてまいります。

 

①事業別戦略

プレス関連事業におきましては、EV化が進む自動車業界の変革に対応し、軽量・低コスト・環境配慮を実現する車体構造を提案してまいります。また、鉄やアルミなど多様な素材を活用した構造設計・解析技術を強みに、マルチマテリアルによる差別化と競争力強化に努めてまいります。

定温物流関連事業におきましては、高品質な冷凍車を一貫生産する独自体制を活かし、温度管理の高度化と電動化ニーズに対応してまいります。加えて、営業力の強化や倉庫・コンテナの拡充、東南アジア(インドネシア中心)での海外市場開拓を推進してまいります。

その他事業におきましては、空調機器部門では、塑性加工・送風・ヒートポンプ技術を活かし、高性能空調機器の開発・拡販を進め、快適な空間を提供してまいります。電子機器部門では、静電容量無接点方式による高性能キーボードを核に、BtoC市場での拡販と、BtoB分野への技術展開を強化してまいります。

 

②情報セキュリティへの取組み

当社グループは、情報漏えいやシステム障害など、情報セキュリティ上のリスクを経営上の重要課題と認識しており、今後の事業継続に向けた対応強化を進めてまいります。

現在、情報セキュリティポリシーの整備を進めており、これに基づいて、体制構築、社内教育、人材育成などの施策を段階的に進めていく方針であります。

グループ全体として、外部環境の変化や脅威の高度化に対応できる情報セキュリティ体制の構築を目指し、継続的な強化に取り組んでまいります。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、事業別の損益管理を行っております。「売上」、「営業利益率」、「ROE」、「ROIC」を経営指標とし、損益の達成状況を管理しております。また、財務状況の健全性を維持するために、「自己資本比率」についても経営指標としております。

 

 

(6)会計基準の選択に関する基本的な考え方

当社グループは、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上を目的に、グループ内の会計処理基準の整備及びIFRSへの適用について、検討を進めております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

・サステナビリティに関する考え方

当社の基本理念である「社会に貢献し永続的に繁栄する企業へ」の内容はまさしくCSR/サステナビリティに即しております。そのために、当社グループが一体となり環境をはじめとする社会的各種課題にスピード感を持って取り組むことによって、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

① ガバナンス

当社グループは、CSR推進と気候変動対策(「CO2排出量の削減」など)を含むサステナビリティへの取り組み体制として、取締役会をトップとした体制を構築しております。当社の取締役会は社外取締役を含めた全員の取締役で構成され、議長は社長が担っております。サステナビリティに関しては、CSR・気候変動対策担当役員の指示のもと事務局より取締役会へ報告が行われております。

当社グループの気候変動対策を含むサステナビリティの推進・管理を担う専門部署として、「CSR推進室兼気候変動対策部」を設置するとともに、各事業部やグループ会社においても担当者を選任しております。各部門でのサステナビリティに関する取り組み情報やCSR・気候変動対策担当役員からの指示などが、当社全体で認識できる体制になっております。

定期的に年2回開催する東プレグループCSR全体会議において、各部門からサステナビリティへの取り組みの実績や計画が報告され、各部門に向けてCSR・気候変動対策担当役員から指示が出されております。東プレグループCSR全体会議の結果は、取締役会に報告されております。また、サステナビリティへの取り組みにおける計画や実行について重要な事案が生じた際も、CSR・気候変動対策担当役員を通じて取締役会にて審議されております。

 

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② リスク管理

当社グループは、各部門におけるサステナビリティのリスクを含む企業リスクに関して、詳細に分析を実施しております。年1回、各部門でリスクの再評価を行い、リスク管理部会に結果を報告しております。その中でも重要度が高いと判断されるリスクは、リスト化されてリスク管理部会にて管理されております。

新たに策定が必要と判断される新しいリスクや、見直しが必要と判断される既存リスクに関しては、リスク再評価のタイミングに限らず各部門で検討され対処しております。この結果は、リスク再評価の際に反映されております。

また、当社グループの「CO2排出量の削減」に関しては「気候変動対策部」にて推進しておりますが、事業規模の大きい自動車機器事業本部においては、事業本部内にカーボンニュートラル活動推進を担う専門部署を別に設置して、気候変動に関する展開が早い自動車業界に対して迅速対応ができる体制を構築しております。TCFDの枠組みにおける気候関連のリスクと機会は、関連事業ごとに専門知識を持つ関係者で年1回の評価・見直しを行い、取締役会への報告を行う事としております。

 

 

(2) 気候変動

・気候変動に対する取り組み

国内外のサステナビリティ開示で広く利用されている「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のフレームワークに基づき、取り組みを開示しております。

当社の主要な事業であるプレス関連製品事業に続き、2024年度からは当社のもう一つの大きな事業である定温物流関連事業においても、取り組みを開示しております。

 

① ガバナンス

気候変動におけるガバナンスは、「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」に記載のとおりであります。

 

② 戦略

サステナビリティに関する重要課題の中でも「CO2排出量の削減」は緊急度、持続可能な社会の実現、及び当社財務影響からしても最重要課題と認識しております。

そのために、気候変動による当社事業への影響について、地球の平均気温上昇「4℃シナリオ」「1.5℃シナリオ」の2つのシナリオ分析を実施し、影響度の大きさを考慮し「移行」および「物理的」におけるリスクと機会を特定しております。プレス関連製品事業と定温物流関連事業では事業形態に違いがあるため、表を分けて開示しております。

当社グループとしましては、このリスクを最小に留め機会を創出できるよう対応を推進してまいります。

プレス関連製品事業において、ホットスタンプの更なる加工技術開発に加え、ホットスタンプ加工の代替技術として生産時の燃料削減や軽量化によるCO2排出削減に効果がある「冷間超ハイテン材加工技術」等の技術開発を継続的に行っており、将来のCO2排出削減へ貢献すべく取り組んでおります。

定温物流関連事業において、冷凍冷蔵トラックのBEV・FCEVへの転換を見越した高効率化・軽量化された商品開発および生産設備への対応と、フロン排出抑制法に関わる新冷媒対応商品開発を継続的に行っており、将来のCO2排出削減へ貢献すべく取り組んでおります。

利益や費用に関する財務影響については、専門部署および関係者による将来を想定した検討を行い、下記の範囲で重要度を選別しております。

 

 財務影響重要度 :大(100億円以上)、 中(10~100億円未満)、 小(10億円未満)

設定した時間軸は、下記のとおりであります。

 時間軸 :短期(~2026年)、 中期(~2030年)、 長期(~2050年)

 

想定するシナリオ

<1.5℃シナリオ>

・気温上昇を1.5℃に抑える事を前提にしたシナリオであり、達成においてCO2排出の無いエネルギー使用が十分に実施され、そのプロセスが循環できる状態を想定しております。

〈参考資料〉

・IPCC(気候変動に関する政府間パネル) SSP1-1.9

・IEA(国際エネルギー機関) NZE (Net-Zero Emissions by 2050 Scenario)

 

<4℃シナリオ>

・脱炭素政策が強化されず平均気温が上昇を続け、自然災害が頻発化・激甚化するシナリオであり、CO2排出の無いエネルギー使用が十分に実施されない状態を想定しております。

〈参考資料〉

・IPCC(気候変動に関する政府間パネル) SSP5-8.5

・IEA(国際エネルギー機関) STEPS (Stated Policies Scenario)

 

 

(プレス関連製品事業)

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(定温物流関連事業)

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③ リスク管理

気候変動におけるリスク管理は、「(1)サステナビリティ全般 ②リスク管理」に記載のとおりであります。

 

④ 指標及び目標

「CO2排出量の削減」においては、東プレグループとして「CO2排出量削減目標 (生産活動におけるCO2排出量[Scope1+2])」を掲げ、2050年度までの長期削減目標を設けて取り組みを進めております。

 

当社グループ CO2排出量削減目標 (生産活動におけるCO2排出量)

基準年度:2020年度

CO2排出量:71.6※(千t-CO2)

 

※当社グループはCO2排出量算定範囲を見直し、連結子会社の「広州三池汽車配件有限公司」を2024年度から追加することとしております。

「広州三池汽車配件有限公司」において、社内体制およびデータ収集環境の整備が進んだことにより、2020年度まで遡って算定・反映が可能となったためであります。

算定結果は2020年度以降のCO2排出量算定に反映して、基準年度となる2020年度は「68.8(千t-CO2)」から「71.6(千t-CO2)」に変更しております。

なお、当社グループのCO2排出量に関する指標および中長期目標は、変更ありません。

 

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当社グループのCO2排出削減対策(省エネ対策および太陽光パネル設置等)は、2023年度から徐々に、太陽光パネルによるCO2排出量削減効果が増えてきております。 また、「再生可能エネルギー由来電力への切替」や「トラッキング付き非化石証書購入」などにより、一部の拠点では前倒ししてカーボンニュートラル達成予定となっております。

当社は、CO2排出削減目標達成に向けて積極的な対応を推進してまいります。

 

 

a. CO2排出量[Scope1,Scope2](グローバル)

(千t-CO2)

 

 

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

Scope1+2

合計

71.6

83.2

83.3

87.1

81.0

内訳

Scope1

合計

16.5

17.7

19.3

19.1

20.2

国内

11.6

12.0

13.0

13.8

14.1

海外

4.9

5.7

6.2

5.2

6.1

Scope2

合計

55.0

65.5

64.0

68.1

60.8

国内

20.7

21.3

21.8

24.7

21.9

海外

34.4

44.2

42.2

43.4

38.9

 

b. CO2売上高原単位[Scope1+Scope2](グローバル)

(t-CO2/百万円)

 

 

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

CO2売上高原単位

0.33

0.36

0.29

0.25

0.22

 

c. CO2排出量[Scope3](グローバル)

(千t-CO2)

 

 

2022年度

2023年度

2024年度

Scope3

3,382.6

3,895.1

3,928.3

内訳

カテゴリ1 購入した製品・サービス

1,885.0

2,258.2

2,064.3

カテゴリ2 資本財

59.0

70.8

82.0

カテゴリ3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動

12.2

13.2

13.7

カテゴリ4 輸送、配送(上流)

90.2

77.9

91.5

カテゴリ5 事業から出る廃棄物

1.8

2.1

1.9

カテゴリ6 出張

0.8

0.9

0.9

カテゴリ7 雇用者の通勤

5.7

5.8

5.9

カテゴリ8 リース資産(上流)

算定除外 (Scope1,2に計上している)

カテゴリ9 輸送、配送(下流)

算定除外 (合理的な算出ができない)

カテゴリ10 販売した製品の加工

算定除外 (合理的な算出ができない)

カテゴリ11 販売した製品の使用

1,295.4※

1,431.8※

1,633.1※

カテゴリ12 販売した製品の廃棄

14.0

16.1

18.9

カテゴリ13 リース資産(下流)

算定除外 (資産の外部リースは行っていない)

カテゴリ14 フランチャイズ

算定除外 (フランチャイズ展開をしていない)

カテゴリ15 投資

18.5

18.2

16.0

※ 自社製品(自社設計商品)のみ算出。

 

 

d. サプライチェーン排出量(グローバル)

(千t-CO2)

 

 

2022年度

2023年度

2024年度

サプライチェーン排出量(Scope1+Scope2+Scope3)

3,465.9

3,982.3

4,009.3

内訳

Scope1

19.3

19.1

20.2

Scope2

64.0

68.1

60.8

Scope3

3,382.6

3,895.1

3,928.3

 

(3) 人的資本経営

当社グループは、「何事にも主体性を持ち、常に事態を俯瞰し、論理的に仕事に取り組む人材の育成」を人事方針としています。経済活動がグローバル化し、国内では少子高齢化が進む中で、「客観的に状況を把握し、目標達成に向けて論理的に行動する集団」になることを目指しています。また、2024年度からスタートした第16次中期経営計画の中では、「人材育成と働き易い環境整備に努めて、多様性の意識を持つ人材が活躍できる場を広げ、次代を担う社員に責任ある企業であり続ける」ことを基本方針の一つとして掲げています。

 

① ガバナンス

人的資本経営におけるガバナンスは、「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」に記載のとおりであります。

 

② 戦略

a. 基本方針(人材育成と社内環境整備)

イ.人材育成方針

「競争力のある人材を増やす」~チャレンジする人を支援、成果を出した人には応える~継続的な事業の成長・成功を実現するためには、顧客に対して価値を提供し続けることができる組織であることが不可欠です。従業員が自由で柔軟な発想のもとに、現場力、技術力、商品力を進化させ新たな飛躍への型づくりが重要と考えています。全員が変化を楽しみ、ワクワクしながら、目標に向かって進む、そんな活力あふれる組織を追求し続けます。

ロ.社内環境整備方針

東プレは今後の更なる成長のために、チャレンジする人の可能性を支援し、成果を出した人にはしっかりと応えていきます。

1) 求める人材像 Go beyond your limits:型破りの型への挑戦を楽しもう! 現場力、技術力、商品力を進化させ新たな飛躍とつながります。自由で柔軟な発想の元に、人としての進化、ものづくりの進化、会社の進化の形があります。

2) 支援チャレンジ、チャンスをつかみ自らの成長につなげていくのは自分次第です。失敗を恐れずに、どんどん挑戦していく。多様性があり、個性がある人が集い、切磋琢磨して、成長できる機会を提供し続けていきます。

3) 報酬チャレンジして成果を出した人に報います。年齢・性別・国籍・学歴問わず、実力と意欲があれば、活躍の場は無限大となります。挑戦して活躍したら、活躍した成果の分をきちんと報います。

 

b. 重点テーマ/目指す姿

イ. 人権の尊重

・人権と多様性に関する教育の継続的な実施による理解/浸透

・人権デュー・デリジェンスの実施によるガバナンスリスクの低減

ロ. 多様な人材の活躍

・受容性と多様性のある職場づくり

・柔軟な働き方のできる組織づくり

・従業員一人ひとりの個性にあわせた育成/指導

 

 

c. 実行施策

<人権の尊重>

イ.人権尊重に関する基本方針

基本的な考え方

 事業活動を行うのにあたり、基本的人権である人権を尊重する責任を果たします。従業員の行動の基軸である当社グループの行動指針に「人権の尊重」を掲げ、「事業活動を行う上で、人権を尊重し、多様性を受容するために、人種、信条、性別、国籍、身体的特徴、その他の理由による差別やいかなるハラスメントも行わない」を明記し、人権・労働に対する取り組みを行っています。本方針を通じて、人権尊重に対する仕組みを構築し、適切に対応していきます。なお、本方針は当社グループの全ての役員および従業員に適用しております。

1) 人権の尊重

・人権を尊重し、多様性を受容するために、従業員一人ひとりの多様な能力、個性、価値観を尊重します。

・人種、信条、性別、国籍、身体的特徴、その他の理由による差別や人権、人格を損なう一切のハラスメント行為を容認しません。

・児童労働、強制労働、人身売買を容認しません。

2) 人権リスクへの対応

人権侵害を人権リスクとして捉え、人権リスクの特定、予防、軽減、防止のプロセスを構築し適切に管理します。

3) 人権の保護・救済

人権侵害が明らかになった場合、人権の保護、救済に努めます。

4) 適切な労働管理

5) 教育・啓蒙

6) 取引先人権侵害を人権リスクとして捉え、人権リスクの特定、予防、軽減、防止のプロセスを構築し、適切に管理します。各国や地域で適用される労働に関する法令等を遵守し、従業員への適切な労働環境の提供と管理を行います。全ての役員および従業員に対して適切な教育と啓蒙活動を行います。取引先の皆さまにも、本方針を理解し、人権を尊重し侵害しないように求めます。

7) 情報開示人権尊重の取り組みに関する実施状況を一般に公開します。

ロ.具体的な取り組み

1) ハラスメント防止規程の施行

職場におけるハラスメント、特にパワハラ・セクハラ・マタハラの防止・排除に向けた措置を全社の規程・ルールとして定め、施行しております。この中では、職場における禁止行為とその管理・監督者を明確にするとともに、ハラスメントが発生した場合の相談先や相談者の個人情報保護と不利益な取り扱いの禁止、並びにハラスメントを行った者に対する処分等を明示しております。

2) ハラスメント教育の定期的な実施

国内グループ会社を含めた従業員を対象としたハラスメント教育を行っております。具体的には、国内関連会社の社長及び管理職を対象とした「職場ハラスメントの現状・実例」や「ハラスメント防止のポイント」といった基礎知識の習得、並びに「ハラスメント発生時の対処方法」「部下の叱り方(怒り方ではない)」など、マネジメントに関わる研修がラインナップされております。今後も、主に管理職を対象とした教育を定期的に行う計画であります。

3) 人権に関する相談制度

人権に関する問題について、社内外のステークホルダーが利用できる正式な相談・通報窓口を設けており、相談者の匿名性も厳格に保証しております。相談方法はメールや電話、手紙により匿名でも受け付けております。人権に対する負の影響を引き起こしたこと、またはその影響を助長したこと等を発見した場合、適切な手段により是正・救済に努めております。ハラスメントを含めた人権に関する相談は人事部が担当しており、相談を受けた後速やかに実情を調査し、人権侵害やハラスメントの事実がある場合はセカンドハラスメントに十分配慮しながら取るべき措置を検討・実行しております。

4) その他、人権リスクへの対応など

当社グループは、国際的な原則である「ビジネスと人権に関する指導原則」及び「子どもの権利とビジネス原則」に基づき、「東プレグループ サプライヤーCSRガイドライン」に人権尊重に関する項目を設けております。サプライチェーン全体における人権尊重の徹底を図るため、順守に向けた取り組みをお取引先様と一体になって進めております。また「子供の権利の尊重」の一環として、子どもたちの健康促進と教育環境の整備を支援するため、小児癌施設や孤児院への寄付を行っております。その他、カスタマーハラスメントへの対応として、ハラスメント行為を断じて許すことなく、従業員等を尊重し人権を守り、安心して業務を遂行できるようにするために「カスタマーハラスメントに対する方針」を策定しております。

 

 

 

<健康経営>

イ. 健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定

当社グループでは、代表取締役を責任者とした専門組織を設けて全社的な健康経営施策の立案・展開を行うとともに、事業所毎に「健康経営推進者」を設置し職場単位での現状把握や施策の推進、効果確認等を継続的に行っております。

近年は、特に

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・喫煙率の低下に向けた喫煙ルール強化(喫煙時間や場所の制限拡大、禁煙デーの設定など)

・「従業員の健康/メンタルヘルス」や「仕事と育児の両立」等に関する社内教育の定期的な実施

・労働時間の短縮推進(フレックスタイムや在宅勤務の有効活用、年次有給休暇の計画的取得など)

を重点施策として取り組んでおり、「健康経営優良法人(大規模法人部門)」にも認定いただいております。

 

ロ. ワークライフバランスと福利厚生

当社グループでは、フレックスタイム制度や業務内容に応じた在宅勤務、時差出勤など、個々の業務特性や業務量等にあわせて柔軟な働き方ができるよう、環境整備を進めております。また、働き方にメリハリをつけることによって業務品質の向上やスピードアップに繋がるよう、全ての職場において年次有給休暇の計画的な取得を奨励・推進するとともに、勤続年数に応じた「特別休暇(リフレッシュ休暇)」の付与を行っております。

また、福利厚生面は、2024年度に従業員及びその家族が約350万コンテンツのメニューの中から選択して利用できる「福利厚生サービス」の提供を開始し、2025年度からはDC(確定拠出年金)制度を導入するなど、年々拡充を図っております。

このような制度・サービスの利用を通じて従業員一人ひとりが日々充実した生活をおくることで、心身ともに常に健康であり、かつモチベーション高く活き活きと働き続けられる環境の実現を目指しております。

 

<ダイバーシティ推進>

イ. 女性の活躍

ものづくりの企業である当社グループには、技能職・技術職の従業員が多く在籍しておりますが、これらの職種は女性の割合が少なく、また、過去においては当社の募集に対する応募者も少数であったことから、結果的に女性従業員比率が低くなっております。この状況を改善するため、定期(新卒)採用と通年(経験者)採用、両面から女性の採用を積極的に行っております。

女性管理職は現在3名ですが、前述の女性積極採用に加え、従来から性別や国籍等を問わず公平な人事評価と人材育成を行っている影響により、今後は段階的に増加していく見通しであります。

育児休業に関しましては、女性従業員の育児休業取得率、及びその復帰率は100%であります。また近年は、男性従業員の育児休業取得も推進しており、2024年度の休業取得率は47.4%でありました。

2025年度は、女性メンバーによる「女性活躍推進ワーキンググループ」の立ち上げを計画しており、この活動を通じて長中期的な視点から更に効果的な施策の検討・立案を行っていきたいと考えております。その他にも女性活躍啓発セミナー/キャリア開発教育の実施など、女性がより働きやすい職場環境の構築に向けて、様々な施策を検討・実行していく方針であります。

 

ロ. 多様な人材の採用

人材の採用活動を継続的に行っている中で、女性はもちろん、外国人や障がい者の採用にも積極的に取り組んでおります。女性、及び外国人の採用につきましては、新卒採用・経験者採用を行う中で、企業PR/仕事紹介による応募者の意欲喚起を積極的に行っており、公平かつ適切な選考プロセス・選考基準によって年々入社者は増加しております。その結果、活躍の場も連動して拡大しており、採用 → 育成 → 活躍 → 応募者増 → 採用・・・ といった好循環が形成されつつあります。

障がい者の雇用に関しましては、企業が果たすべき責任として認識するとともに、多様性の実現による新たな価値の創出に向けた重要課題と捉えております。雇用維持と今後の拡大に向けて、個々人の事情にあわせた職場単位での配慮・安全対策や社内教育・啓蒙活動を行い、障がい者の方がより安心して就業できる環境の構築/整備を進めております。あわせて新たな人材の採用も継続的に行っている影響もあり、当社の障がい者雇用率は 2.8%(2025/3/31時点)と、法定雇用率を上回っている状況であります。

また近年は、労働人口の減少による人材調達競争の激化や転職市場の活発化・人材の流動化等を鑑み、当社グループが求める人材を安定的に獲得していくための施策のひとつとして「リファラル/アルムナイ」採用を行っております。2024年度は、この採用手法により20名以上の優秀な人材を採用することができております。

 

 

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<人材育成>

イ. 階層別教育体系の見直し

現在、当社グループでは

1) 多様性を活かした組織と人のマネジメント力向上

2) 従業員のキャリア自律支援

3) 次世代中核人材の計画的な育成

を3大テーマとして、教育研修体系の原点たる階層別教育プログラムの刷新を進めております。特に重要視しているのが「多様性を活かした組織と人のマネジメント力向上」で、組織のリーダーたる人材に対して多様な人材集団における価値観や思考スタイルの違いを正しく認識するとともに、コミュニケーション力を中心としたヒューマンスキルを磨く機会」を設けております。

また「従業員のキャリア自律支援」として、20代新入社員/30代中堅社員/40~50代ベテラン社員と、年代別に研修の機会を設け、人生における自分のキャリアを様々な視点から考えることで、主体性を高めて業務パフォーマンスの向上に繋げる仕組みを用意しております。

 

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ロ. 次世代生産人材育成プログラム

ものづくりの考え方や手法を主とした「東プレ独自の強み」の着実な伝承、及びものづくり人材の更なるスキルアップを目指して、希望者が参加できる育成プログラムを複数用意し、受講できる仕組みを構築しております。中には執行役員が講師になるプログラムもあり、所属や資格、担当業務等を問わず参加できるため、全社的なスキルの底上げと部門間の情報共有、機能連携を促進する効果を生み出しております。

 

<エンゲージメント>

当社では、現状把握及び今後の発展に向けた課題抽出を目的として、2023年度から「エンゲージメント調査」を行っております。実施2回目にあたる2024年度は、製造/組立ライン等に従事する直接職社員も対象に含めることで全社・各部門の現状についてより的確に確認することができております。現在は、その結果を踏まえ、優先的に解決すべき全社課題として

1) 管理職のリーダーシップ、及びマネジメント力の更なる向上

2) 一人当たり労働時間の低減

3) 人事考課の透明性向上、及び効果的な育成へと繋がる仕組みの構築

の3点を掲げ、新たな施策の検討を行っている状況であります。更に、部門別エンゲージメント結果に基づいて人事部と当該部門が対話をする機会を設け、職場単位での真因分析や改善策の検討を並行して行っていく計画であります。

今後も当社グループのエンゲージメント状態を定点観測して課題や変化点、強みを正しく認識し、更なる発展に向けた打ち手の実行と効果の測定に繋げてまいります。

 

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③ リスク管理

人的資本経営におけるリスク管理は、「(1)サステナビリティ全般 ②リスク管理」並びに後述する「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ 指標及び目標

特に「ダイバーシティ推進」を重要視し、定量的な目標を下表のとおり設定しております。

 

指標

実 績

目 標

2023年度

2024年度

2026年度

女性従業員比率

7.0%

7.4

10%以上

女性管理職比率

1.5%

1.6

3%以上

男性育児休業取得率

41.9%

47.4

100

エンゲージメントサーベイスコア

3.40

3.37

3.70

 

上記以外にも、人事評価の透明性向上やタレントマネジメントに向けた人事情報整備、人権デュー・デリジェンスによるリスクマネジメント強化など、様々な施策の検討を進めております。

 

ご参照:https://www.topre.co.jp/sustainability/social/

中長期的な視点で人的資本への投資を行い、従業員一人ひとりの価値を持続的に高めていく方針であります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

<海外事業について>

当社グループでは、プレス関連製品事業における海外拠点として、北米地区におきましては米国アラバマ州、テネシー州、オハイオ州、ミシシッピ州のTopre America Corporation、メキシコ合衆国ケレタロ州のTopre Autoparts Mexico, S.A. de C.V.、アジア地区におきましては中国広東省の東普雷(佛山)汽車部件有限公司、中国湖北省の東普雷(襄陽)汽車部件有限公司、中国湖北省の東普雷(武漢)汽車部件有限公司、中国広東省の広州三池汽車配件有限公司、タイ王国サムットプラカーン県のTOPRE(THAILAND)CO.,LTD.、またインド共和国グジャラート州のTopre India Pvt. Ltd.を設けております。それぞれの国内の景気変動、自動車の販売状況、各種の法律および規制の発動または変更、為替の変動、また感染症・疫病などの発生・蔓延等により当社グループの経営成績および財政状態に影響をおよぼす可能性があります。

 

<製品の不具合について>

当社グループは、自動車用プレス部品をはじめ、冷凍機器、空調機器、電子機器等の多様な製品を生産しており、それぞれの製品に合わせた品質保証体制のもとに製品を出荷しております。製品の不具合を防止するため、品質保証に関わる組織の充実を図るとともに、新たな品質管理手法を取り入れるなど体制の強化を進めております。

また、万が一当社の品質不具合を原因として製造物責任賠償を請求されるような事態に備えるため保険に加入し、こうした事態の発生にともなう費用負担に対応しております。しかしながら、不具合の内容や規模によっては製造業としての当社グループの評価に重大な損失を与え、当社グループの経営成績に影響をおよぼす可能性があります。

 

<災害等のリスクについて>

当社グループは国内及び海外において事業を展開しており、台風やハリケーン、地震などの自然災害や、ストライキ、騒乱、感染症・疫病等の発生・蔓延などの影響を受けることが考えられます。これらの事態が発生した事業所では生産活動の停滞や停止、設備投資の遅延が生じる可能性があります。また、取引先においても同様に生産活動に支障をきたす可能性があり、いずれも長期間におよんだ場合には当社グループの経営成績に影響をおよぼす可能性があります。

 

<移転価格税制について>

当社は、海外連結子会社各社との間でロイヤリティの受領、製品の輸出などの海外取引を行っております。当該取引は、独立した第三者間で通常行われる取引価格に準じて取引価格を決定しておりますが、税務当局との見解に相違が生じた場合、当社の経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 

<情報セキュリティについて>

当社グループは、国内外の全拠点・事業活動において、IT技術やネットワーク等を広範に活用しております。

近年、サイバー攻撃の高度化・巧妙化が進む中で、情報セキュリティ上のリスクは一層高まっており、当社グループとしても、情報漏洩や業務妨害などの不測の事態を回避するための体制整備を重要な経営課題と認識しております。

現在、情報セキュリティポリシーの整備を進めており、これに基づく人材の確保・育成や運用体制の強化など、段階的な取組みを開始しております。

しかしながら、万一、想定を超えるサイバー攻撃や不正アクセス、内部不正等により情報漏洩やシステム障害が発生した場合には、社会的信用の低下、損害賠償責任の発生、関係先を含む業務の停滞・停止、ならびに復旧対応にかかるコストの発生などにより、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ55億6千万円増加の3,710億8千6百万円、負債合計は、前連結会計年度末に比べ9億6千9百万円減少の1,478億2千9百万円、純資産合計は、前連結会計年度末に比べ65億3千万円増加の2,232億5千7百万円となりました。

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高3,735億6千8百万円(前連結会計年度比5.3%増)、営業利益286億4千8百万円(同27.9%増)、経常利益273億7千8百万円(同27.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益141億4千3百万円(同17.3%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 プレス関連製品事業は、売上高2,999億8千2百万円(同1.9%増)、セグメント利益(営業利益)191億3千3百万円(同17.3%増)、定温物流関連事業は、売上高583億6千2百万円(同29.2%増)、セグメント利益(営業利益)78億6千9百万円(同72.7%増)、その他(空調機器部門、電子機器部門、輸送事業)は、売上高152億2千3百万円(同0.0%減)、セグメント利益(営業利益)16億3千7百万円(同7.1%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は539億9千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億7千1百万円増加しました。各キャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローは522億4千6百万円の増加、投資活動によるキャッシュ・フローは445億4千6百万円の減少、財務活動によるキャッシュ・フローは44億1千2百万円の減少となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

プレス関連製品事業

304,036

102.1

定温物流関連事業

58,097

127.1

その他

9,022

84.3

合計

371,156

104.8

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

プレス関連製品事業

297,797

97.7

47,904

95.6

定温物流関連事業

59,858

116.0

21,183

107.6

その他

14,896

95.5

1,513

82.3

合計

372,552

100.1

70,600

98.6

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

プレス関連製品事業

299,982

101.9

定温物流関連事業

58,362

129.2

その他

15,223

100.0

合計

373,568

105.3

(注)主な相手先別の販売実績及びそれぞれの総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

日産自動車㈱

144,482

40.7

141,535

37.9

トヨタ自動車㈱

54,280

15.3

63,494

17.0

本田技研工業㈱

59,286

16.7

60,266

16.1

(注)上記金額には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客への販売高を集約して記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、低価法による売却用金型等の正味売却価額の見積り、減価償却資産の耐用年数の設定、有価証券の減損、貸倒引当金、退職給付債務、税効果会計、固定資産の減損等の重要な会計方針に関する見積り及び判断を行い、それらに対して継続して評価を行っております。その際、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

イ.財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ55億6千万円増加の3,710億8千6百万円となりました。流動資産は、主に有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べ54億2千8百万円増加の1,739億2千7百万円となりました。固定資産は、主に有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1億3千1百万円増加の1,971億5千9百万円となりました。

(負債合計)

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ9億6千9百万円減少の1,478億2千9百万円となりました。流動負債は、主に1年内償還予定の社債の減少により、前連結会計年度末に比べ100億2千3百万円減少の1,084億1千4百万円となりました。固定負債では、主に長期借入金の増加により、前連結会計年度末に比べ90億5千3百万円増加の394億1千4百万円となりました。

(純資産合計)

主に利益剰余金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ65億3千万円増加の2,232億5千7百万円となりました。

 

ロ.経営成績

(売上高と営業利益)

主に定温物流関連事業において、主要取引先企業におけるシャーシの搬入状況が良化し、シェアアップを図ることができたことや、車種構成の良化や価格転嫁に一定の理解を得ることができたことにより、売上高・営業利益ともに前連結会計年度を上回りました。

この結果、当社グループの業績は、売上高3,735億6千8百万円、前連結会計年度に比べ186億4千6百万円の増収(5.3%増)となりました。

営業利益は、286億4千8百万円、前連結会計年度に比べ62億4千1百万円の増益(27.9%増)となりました。

(営業外損益と経常利益)

当連結会計年度の営業外損益は、受取利息10億5千6百万円、為替差損23億8百万円の計上などにより、12億7千万円の損失となり、前連結会計年度に比べ167億4百万円の減益となりました。これは、主に前連結会計年度の為替差益134億4千1百万円が為替差損に転じたことなどによります。

この結果、経常利益は、273億7千8百万円、前連結会計年度に比べ104億6千2百万円の減益(27.6%減)となりました。

(特別損益)

当連結会計年度の特別損益は、主に減損損失62億2千4百万円の計上などにより、57億8千6百万円の損失となり、前連結会計年度に比べ27億6千1百万円の減益となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ29億5千5百万円の減益(17.3%減)となり、141億4千3百万円となりました。

 

 

ハ.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は539億9千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億7千1百万円増加しました。

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、522億4千6百万円の増加となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益215億9千1百万円、減価償却費251億7千5百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、445億4千6百万円の減少となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出328億3百万円です。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、44億1千2百万円の減少となりました。主な増加要因は、長期借入れによる収入200億円であります。主な減少要因は、社債の償還による支出200億円、配当金の支払額33億1千4百万円であります。

 

ニ.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、鋼材をはじめとした素材価格の高騰に対しては、生産活動に支障をきたさぬよう、安定供給の確保を第一に、そして価格面の影響も最小限にすべく対策を講じてきております。しかし、これは、短期的に収束が期待できない重要な課題であると認識しております。

また、前述の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、諸所の課題を認識しており、体制の構築等に取り組んでおります。

 

ホ.資本の財源及び資金の流動性

(資金需要)

当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要となっております。

運転資金需要は生産活動に必要な材料及び部品の仕入、製造費、また販売費及び一般管理費等の営業費用等であります。設備資金需要は工場建設費用、機械装置及び金型等の投資等によるものであります。

 

(財務政策)

当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては内部資金の充当を基本としております。不足となった場合は、運転資金は短期借入金、設備資金は長期借入金及び社債の発行により資金調達しております。

設備資金の調達は、国内・海外子会社を含めたグループ全体の長期的な投資計画に基づき、当社で調達計画を作成し、一元管理しております。

 

ヘ.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

前述の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための指標として、「売上」、「営業利益率」、「ROE」、「ROIC」、「自己資本比率」等を使用しております。

 

ト.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

 

(プレス関連製品事業)

プレス関連製品事業におきましては、主に北米及びインドにおいて、前連結会計年度より売上高が増加しました。これによりプレス関連製品事業全体での売上高は、2,999億8千2百万円、前連結会計年度に比べ54億7千7百万円の増収(1.9%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は、中国及びタイにおいて、売上高減少の影響を受けたものの、アメリカやインドでの増益などにより、191億3千3百万円、前連結会計年度に比べ28億1千9百万円の増益(17.3%増)となりました。

セグメント資産は、主に預金及び有価証券の増加により、前連結会計年度末に比べ29億2千7百万円増加の3,046億9千9百万円となりました。

 

(定温物流関連事業)

定温物流関連事業におきましては、主要取引先企業におけるシャーシの搬入状況が良化し、シェアアップを図ることができたことなどにより、売上高は前連結会計年度を上回りました。その結果、定温物流関連事業全体での売上高は、583億6千2百万円、前連結会計年度に比べ131億7千5百万円の増収(29.2%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は、車種構成の良化や価格転嫁に一定の理解を得ることができたことなどにより、78億6千9百万円、前連結会計年度に比べ33億1千3百万円の増益(72.7%増)となりました。

セグメント資産は、主に電子記録債権の減少により、前連結会計年度末に比べ16億1千6百万円減少の447億4千1百万円となりました。

 

(その他)

空調機器部門におきましては、半導体工場向特殊ファンフィルターユニットや産業用送風機物件の受注により、売上高・営業利益ともに前連結会計年度を上回りました。電子機器部門におきましては、キーボード「REALFORCE」が国内・北米で販売台数増となるものの、中国及び韓国向けの販売台数減や工作機械向けタッチパネル応用製品の販売台数減により、売上高・営業利益ともに前連結会計年度を下回りました。輸送事業におきましては、売上高・営業利益ともに前連結会計年度を上回りました。その結果、その他の事業全体での売上高は、152億2千3百万円、前連結会計年度に比べ7百万円の減収(0.0%減)となりました。セグメント利益(営業利益)は、16億3千7百万円、前連結会計年度に比べ1億9百万円の増益(7.1%増)となりました。

セグメント資産は、主に売掛金及び投資有価証券の増加により前連結会計年度末に比べ42億4千9百万円増加の216億4千4百万円となりました。

 

5【重要な契約等】

当連結会計年度末現在で、継続している重要な契約等は次のとおりであります。

 

(1)技術援助を与えている契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約品目

契約内容

契約期間

東プレ㈱

(当社)

広州東昇機械

有限公司

中国

自動車用

プレス製品・金型

技術情報の提供及び

ノウハウの実施許諾

2025年2月18日から

2026年2月17日まで

東プレ㈱

(当社)

FSD Group

フランス

自動車用

プレス製品・金型

技術情報の提供及び

ノウハウの実施許諾

2024年5月21日から

2025年5月20日まで

(注)上記の技術援助契約において、ロイヤリティーとして相手方が売上げた契約品目の一定割合を受取ることとしております。

 

(2)資本提携契約

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は主に当社が一括して行っております。当社の研究開発活動は、開発部においては当社コア技術を応用して追求分野を広げ新製品の開発・新規事業化を行っており、各事業部においては新機能を追求した新製品、新技術の開発活動を行っております。

なお、当連結会計年度中に支出した研究開発費は、1,486百万円であります。

 

研究開発の概要

<プレス関連製品事業>

自動車向けプレス部門については、環境変化に対応する差別化技術の開発を進めております。軽量化のアイテムとなる超高強度材については、冷間1,470MPa材及びホットスタンプ2,000MPa材の量産適用拡大に向けた取り組みを行っております。独自の取組みとして、プレスに使用する材料の詳細な評価や、車両衝突性能の実験評価を行っており、成形CAE及び衝突CAEの評価技術の向上を図っております。この技術に裏打ちされた評価技術を駆使することで、信頼性の高い構造提案を行っております。また、カーボンニュートラルへの取組みとして、リサイクル材を使用した製品開発に着手しており、原材料のCO2排出量の削減に貢献してまいります。

 

<定温物流関連事業>

冷凍機機器部門については、カーボンニュートラルへの対応として、BEV用環境配慮型冷凍装置を大手ユーザー向けに量産化をしております。FCEVについてもモニターを拡大し、トラックメーカーと共に市場評価を継続しております。また、運送業界の働き方改革に貢献する乾燥モード付冷凍装置についても機種の拡大を進めております。冷凍コンテナについては、物流業界の課題である配送効率向上のため、荷役負荷の軽減を軸に大型・増トンコンテナのモデルチェンジとドアオプション部品の開発を進めております。航空輸送についても機種の拡大を進めており、今後も市場ニーズを捉えたラインナップ開発を進めてまいります。

 

<その他事業>

空調機器部門については、送風機・換気・ヒートポンプ製品の省エネ化に欠かせない技術であるモータ・インバータの研究、開発を進めております。今後、自社の住宅・ビル・工場向け空調製品に展開し、省エネ性向上、CO2排出削減に貢献してまいります。

電子機器部門については、主力商品で多くのお客様からご支持をいただいております「REALFORCE」ブランド製品のラインナップを増やすべく、新しい機能の搭載や新しいデザインでの新商品開発、また、省電力設計など環境に配慮した製品の開発を進めております。OEM製品については、セキュリティPINパッドの技術を生かし、ATMだけでなく、券売機や精算機などの暗証番号入力装置への採用に向けた商品開発や、長年培ってきた組込技術を活かし、お客様の仕様に対応した組込型タッチパネルモニターや、組込型キーボードの開発など、お客様のニーズに沿った商品開発を進めております。自社保有技術である静電容量技術を応用した新製品の開発や、新しい市場の開拓を進めております。

 

<開発部>

開発部については、冷熱技術、電子技術等の自社保有技術に新技術を加え、新規事業の創出及び既存事業の拡大に繋がる商品の開発を行っております。新規事業の創出では、持続可能な開発を行うべく、開発システムの確立に向けた展開をしております。定温物流関連では、断熱技術の追求により、ラストワンマイルなどに対応した高断熱物流機器の開発を展開しております。空調機器関連では、住宅の高断熱化を背景に大手ハウスメーカー向けに特徴のあるオリジナル全館空調システムの開発を展開しております。電子機器関連では、アナログセンシング技術を応用した新型スイッチの開発に着手しております。