第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、社会に対し果たすべき使命および基本的目標を「使命」、「経営理念」として定め、これらを具現化するための戦略を「三和グローバルビジョン2030」、「ESGマテリアリティ」、「中期経営計画2027」として策定しております。

 

使命

「安全、安心、快適を提供することにより社会に貢献します」

 

経営理念

「お客さますべてが満足する商品、サービスを提供します」

「世界の各地域で評価されるグローバルな企業グループとなります」

「個人の創造力を結集してチームワークにより、企業価値を高めます」

 

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 また、これらを実施するにあたって指標となる「行動指針」、「コンプライアンス行動規範」を定めるとともに、行動規範の一つとしてPDCAを位置付け、「使命」「経営理念」を具現化した商品とサービスをお客様に提供することにより、全てのステークホルダーから評価される企業グループを目指してまいります。

 

行動指針

「お客さまの信頼の向上のために感謝と誠意をもって業務活動を行ないます」

「国内外、社会のニーズに応える品質・コストを追求し、トップブランドを確立します」

「未来を先取りし、絶えずあらゆる部門の技術レベル・生産性を向上させます」

「ルールを遵守し、自由闊達で風通しのよい、やりがいのある職場づくりを行ないます」

「常に自己啓発し、自ら高い目標に挑戦し、自らの役割と責任を認識し価値創造に貢献します」

 

コンプライアンス行動規範

「三和グループは、提供する商品・サービスの安全性を最優先に考え事業活動を行います」

「三和グループは、コンプライアンス行動規範に反した行為による利益追求は行いません」

「三和グループの全ての経営者および管理者は、自ら先頭に立ってコンプライアンス行動規範を遵守し、管下従業員に対して模範となるべく行動します」

 

当社グループのPDCA

 PDCAにおいては、計画から実行、その後の課題評価、次につなげる改善、対策を行うことが重要です。三和グループ全従業員は、すべての業務において、現状に満足せず問題意識を持って取り組み、努力を積み重ねるというモットーを持っています。従って当社グループでは、PDCAを行動規範の一つとして位置づけています。

 

(2) 経営環境

 当社グループの製品は、世界28の国と地域で戸建、集合住宅、商業施設・オフィス、医療・福祉施設、工場・倉庫などビジネスや生活に必要な施設で幅広く使用されています。そのため、日本・北米・欧州・アジアを含む当社グループが属する地域の経済状況や市場動向の変化に適切に対応する必要があります。一方で、事業を通じた世界共通の社会課題の解決への貢献を事業成長の好機と捉え、事業活動を展開しています。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

○ 長期経営ビジョン「三和グローバルビジョン2030」

 2022年度より長期経営ビジョン「三和グローバルビジョン2030」をスタートさせました。気候変動やデジタル化などで変化する社会のニーズに応える高機能な開口部ソリューションをグローバルに提供し、サステナビリティ経営と人材力強化により全てのステークホルダーから評価される企業グループとなることを目指し、基本戦略を着実に実行してまいります。

「三和グローバルビジョン2030」

To be a Global Leader of Smart Entrance Solutions

~高機能開口部のグローバルリーダーへ~

 

<基本戦略>

1.日・米・欧・ア 世界4極体制でのコア事業の拡大、強化

2.防災・環境対応、製品・サービスのスマート化による顧客価値創造

3.デジタル化とものづくり革新による生産性向上

4.M&Aを活用したコア事業強化と新規事業領域への拡大

5.サステナビリティ経営によりグローバルに評価される企業グループへ

 

○ ESGマテリアリティ

当社グループは、サステナビリティ経営の推進にあたり、「ものづくり」「環境」「人」の3つのテーマとそれを支える「グループの経営基盤」から構成される11個のESGマテリアリティを特定しております。「三和グローバルビジョン2030」の実現に向けて設定したKPI達成のための施策推進、ステークホルダーとの対話・協働により企業価値向上へとつなげていきます。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

 

(4) 会社の対処すべき課題

○ 中期経営計画2027

 長期経営ビジョン「三和グローバルビジョン2030」の第一次として2022年度よりスタートした「中期経営計画2024」は、国内事業および米州事業の好業績が牽引し、当初掲げた目標値を大きく上回る結果となりました。第二次として「中期経営計画2027」を2025年度よりスタートさせ、気候変動やデジタル化で変化する社会のニーズに応える高機能開口部ソリューションのグローバルリーダーへ向けた基盤を強化・拡充してまいります。

 

<基本戦略>

1.日・米・欧のコア事業の強化、領域拡大

基幹商品(シャッター・ドア)、戦略商品の強化とサービス事業の拡大を目指し、国内事業では顧客開拓のスピードアップと間仕切商品の基幹事業化、サービス事業における事業領域拡大と循環型ビジネスモデルの確立に取り組んでまいります。米州事業では代理店チャネル戦略強化や拡販施策の推進とビジネス領域の拡大に取り組んでまいります。欧州事業では製品拡充と産業用ドア拡販、サービス事業にフォーカスした事業体制の構築、強化等に取り組んでまいります。また、M&Aを活用したコア事業の強化、事業領域拡大にも注力してまいります。

 

2.アジア事業の利益を伴う成長

アジア事業の安定的な黒字化と収益拡大に向け、アジア各社のシナジーを追求し、ASEANエリアの相互成長による拡大を行うとともに、中国華東事業、ベトナム事業における販売・製造・管理への取り組みを強化・再構築し、それらを安定的に推進していくための管理体制強化とデジタル化の推進等に取り組んでまいります。

 

3.防災・環境対応製品とスマート化製品・サービスによる事業拡大

防災に加え、気候変動に対してCO2をはじめとする温室効果ガスの排出を抑制する“緩和”と、気候変動がもたらす様々な現象に対応する“適応”の2つのアプローチから、防災・環境対応製品の品揃えを拡充し、本業による社会課題解決の推進を図ってまいります。また、各製品のIoT化、電動化対応製品の開発、拡充によるスマート化を推進し、それらを活用したサービスの提供による事業拡大にも取り組んでまいります。

 

4.デジタル化とものづくり革新による生産性向上と能力増強

ERP導入や販売・製造・管理等の業務プロセスのデジタル化を通じて業務改革と生産性改善に取り組んでまいります。また、ものづくり革新として、積極的な設備投資を行い生産能力増強や設備の自動化を行うとともに、製造ネットワーク最適化による生産性向上に努めてまいります。

 

5.サステナビリティ経営と人的資本経営の推進

当社グループは、企業が持続的に成長していくためには、事業の推進と同時に社会課題解決への貢献と時代の変化を先取りする対応力・変革力が重要であると考えており、「ものづくり」「環境」「人」「グループの経営基盤」をテーマに各KPIを定め、取り組みを推進してまいります。また、「人的資本経営の推進」にも重点を置き、「人」への取り組みを強化し、「個」の成長と「組織」の成長の循環による人的資本の最大化を目指してまいります。

 

<経営目標>

 

2024年度実績

2025年度予想

中期経営計画

2027目標

売上高

6,623億円

6,540億円

7,500億円

営業利益

805億円

810億円

950億円

営業利益率

12.2%

12.4%

12.7%

SVA

418億円

395億円

460億円

ROIC

18.5%

17.5%

18.5%

ROE

19.0%

18.0%

19.0%

※2025年度予想および中期経営計画2027目標は、作成時に入手可能な情報に基づき算出しておりますので環境や業況の変化により変更する可能性があります。

※ROICの算出方法を2025年度より変更しております。そのため2024年度実績の算出においても同様の基準により算出しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 世界中でサステナビリティをめぐる動きが加速する中、脱炭素、人権・人種問題など地球規模の社会課題に対して積極的に関与し、課題解決に向けた取り組みを推進していくことは、限りある資源や多数のサプライチェーンに支えられて事業活動を営む企業に課せられた使命であると考えています。当社グループは、サステナビリティやSDGsという言葉が浸透する以前より、シャッターやドア、間仕切などの商品やサービスを通じて、安全・安心・快適な日々の暮らしを支え続けてきました。当初は防犯上の目的で普及の進んだシャッターは、次第に防火・防煙といった火災への対応や耐震性能が求められるようになり、最近では集中豪雨への対応としての防水性能や、大型化する台風への対策としての耐風性能が求められるようになってきています。

 環境変化が激しく将来の予測が困難な現代社会において、お客様のニーズにスピーディーに対応し、商品やサービスを通じて様々な社会課題の解決に貢献していくことが重要だと考えています。

 

1.サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

 サステナビリティの実践を通じて中長期的な企業価値向上を図るため、「サステナビリティ委員会」を原則として四半期に1回開催し、地球環境保全、人権尊重、働き方改革、ジェンダーにおける平等、ガバナンスなど、サステナビリティに関わる課題に対してグループ全体の方針等の審議や推進に取り組んでいます。サステナビリティ委員会は、三和ホールディングスの代表取締役社長を議長とし、独立社外取締役、各担当役員、三和シヤッター工業の代表取締役社長、担当役員から構成されています。あわせて、グループ経営に関する様々なリスクを審議するため、サステナビリティ委員会において、当社グループのリスクマネジメントの基本方針に関する事項、リスクマネジメントに関する計画、施策の進捗状況の報告・審議を行っています。サステナビリティに関する取り組みは経営課題であり企業価値に影響を与えるという認識のもと、取締役会への定期的な報告を実施し、国内や海外の各種会議体とも連携を図りながら、グループ全体のサステナビリティマネジメントシステムの構築を図っています。

 

 <サステナビリティ推進体制図>

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 <サステナビリティ委員会 2024年度 主な審議事項>

第1回

・2023年度サステナビリティ/リスク管理活動実績

・「中期経営計画2027」策定に向けた方向性

第2回

・CO2排出量の第三者検証および2023年度実績

・「中期経営計画2027」のKPIに関する提案

・リスク対策およびコンプライアンス研修実施状況の進捗

第3回

・「中期経営計画2027」の人材力強化戦略

・「中期経営計画2027」の健康経営戦略

・コンプライアンス月間、BCP訓練の実施報告

第4回

・「中期経営計画2027」で公表するKPI、施策、戦略

・SSBJ、CSRDに対する方向性

・リスク対策およびコンプライアンス研修実施状況の進捗

 

 <ステークホルダーとの対話と協働>

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 また、多様なステークホルダーへの適切な情報開示や活発なコミュニケーションを通じて、当社グループへの理解を深めていただくとともに当社グループへの要請や期待を把握し、経営に反映することで、企業価値の向上を図っています。

 

2.重要なサステナビリティ項目

 当社グループは、SDGsなどで示された社会課題、外部イニシアティブやガイドライン等から抽出したESG課題に対して、SASBのマテリアリティマップ項目やCDPの開示要請、FTSE・MSCI等ESGインデックスの評価ウェイト項目を分析するとともに、自社にとっての重要度を総合的に検討し、3つのテーマ「ものづくり」「環境」「人」とそれを支える「グループの経営基盤」から構成される11個のESGマテリアリティを特定しました。なお、「中期経営計画2027」の策定に合わせてESGマテリアリティの見直し検討を行い、11個のESGマテリアリティに関しては変更せず継続しますが、従前テーマの「人」に分類していた“人権の尊重”はリスク管理の側面が強いことから、「グループの経営基盤」に移動しました。引き続き「三和グローバルビジョン2030」の実現に向けて、様々な施策を推進していきます。

 それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは以下のとおりです。

 

(1)ものづくり

当社グループは、シャッター、ドア、間仕切などの開口部商品を世界中で提供することにより、災害や犯罪から命や財産を守り、安全・安心・快適で暮らしやすい社会の実現に貢献しています。気候変動に起因する自然災害やパンデミックによる行動変容、防犯意識の高まりなどの影響もあり、人々の安全・安心な暮らしを守り支えるための回復力のある社会=レジリエントな社会への希求はますます高まっており、当社グループの“防ぎ、守り、区切る”商品とサービスを通じたものづくりが貢献できる領域は拡大しています。

 

[「ものづくり」のESGマテリアリティ]

①商品、サービスを通じた気候変動・防災への貢献

 当社グループは、気候変動に対してCO2をはじめとする温室効果ガスの排出を抑制する“緩和”と、気候変動がもたらす様々な現象に対応する“適応”の2つのアプローチから、気候変動問題に貢献する様々な商品をグローバルに提供しています。例えば、“緩和”への対応として、速い開閉速度で建物の空調効率を向上させる高速シートシャッターや、搬入口でトラックの荷台と高さを合わせて空気の流出入を抑制するドックレベラーなど、日・米・欧・アジアの各地域のニーズに応じた商品展開で世界中の工場や倉庫の省エネに貢献しています。一方で、“適応”への対応としては、気候変動の影響により大型台風や集中豪雨による浸水被害が増えていることから、これらの水害リスク低減への対策として、浸水高さや設置場所に応じた様々な防水商品を提供しています。あわせて、気候変動の進行に伴い、風害などの災害リスクが高まると予測されていることから、日本では高い耐風性能をもつシャッター、オーバースライダーや窓シャッターのほか、既設シャッターへ後付けできる補強部材などをラインアップしています。日本と同様に台風の多い米国においても、耐風性能の高いガレージドア、セクショナルドア、窓商品を提供することで、様々な開口部の風害リスク軽減に貢献しています。

また、当社グループの使命が目指す“安全・安心・快適”な社会を阻害する火災や地震などの災害に対して、当社グループの商品やサービスは様々な側面から貢献しています。例えば、当社グループの防火シャッターや防火ドアは、世界中のオフィス、商業施設、学校、病院など多くの人が集まる場所の火災時の延焼防止、安全な区画形成に貢献しており、いつどこで起こるか分からない地震に対しても、リスクを低減するための耐震仕様商品を多数取り揃えています。あわせて、建築物における防災機能を維持するために重要な役割を担っているメンテナンス・サービスについても注力しており、レジリエントなまちの実現に貢献しています。

 

②品質の確保・向上

 当社グループは、メーカーとしての最大の責務である品質安全を追求するため、開発から販売、製造、施工、メンテナンス・サービスに至る全てのプロセスにおいて、品質・安全性の向上に努めています。当社グループのシャッター、ドア、間仕切などの商品は、いずれも工場で生産した段階では半製品で、施工技術者の取付作業が完了して初めて完成品になるという特長があります。そのため、商品自体の品質はもとより、施工品質、メンテナンス・サービス品質の向上は、お客様に安心して使い続けていただくために重要であると考えています。

 

(2)環境

世界28の国と地域において事業を営む当社グループにとって、エネルギー、水、その他天然資源の安定供給への懸念などが当社グループの事業基盤へのリスクであることを認識するとともに、自らの事業活動が地球環境に与える影響軽減のための対策を講じることは極めて重要な使命であると考えています。CO2排出量、水使用量、廃棄物排出量の削減を通じて環境負荷低減への取り組みを進めるほか、資源循環型社会への転換へ向けて、使用原材料の削減、歩留まり向上、商品の長寿命化、梱包の簡素化、グリーン調達の推進、リサイクルしやすい設計の採用などに努めています。

 

[「環境」のESGマテリアリティ]

①脱炭素社会へ向けた取り組み

 当社グループは、環境保全の基本方針(三和グループ環境方針)の基本理念である「三和グループは、世界中の人々の暮らしと地球環境の調和を目指し、グローバルな視野に立って、気候変動等の環境問題への適切な対応、環境に配慮した事業活動や商品・サービスの提供を行うことにより、持続可能な社会の実現に貢献します。」のもと、環境保全への取り組みを推進しています。特に、温室効果ガス排出に伴う気候変動問題は人類共通の世界課題であることから、2022年5月にカーボンニュートラルに向けた方針を発表、2025年5月にはCO2排出量削減に関する2027年度環境目標を発表しました。

2027年度目標:三和シヤッター工業のCO2排出量(Scope1+2)を、2019年度比で20%削減する

2030年度目標:三和シヤッター工業のCO2排出量(Scope1+2)を、2019年度比で30%削減する

2050年度目標:三和グループとして事業活動に伴うCO2排出量実質ゼロを目指す

 Scope1削減への取り組みとして、省エネ設備への更新、生産性向上による設備稼働時間の削減、エコカーへの切り替え等、Scope2削減への取り組みとして、再生可能エネルギーの活用、LED照明への切り替え等を積極的に推進しています。

 

②水資源の保全

 世界規模の気候変動の影響や急激な人口増加による水需要の増大により、水資源の不足や枯渇が社会問題として深刻化しています。グローバルに事業を展開する三和グループでは、水資源の保全や有効活用が重要であると考え、水使用量の削減に努めています。当社グループは、主に金属部材を切断・成形し組み立てるという生産活動の特性上、生産量に比べて水使用量は少ないと言えますが、塗装など一部の工程では一定量の水使用が必要となります。継続的な水使用量削減に向け、各生産拠点で水の使用に関する管理の強化、生産工程の改善、水の再利用などにより使用量の削減に取り組んでいます。

 

③廃棄物の削減

 当社グループは、限りある地球資源を有効活用し循環型社会を実現するため、全ての事業プロセスにおける廃棄物の排出削減やリサイクルの推進に努めることで、環境負荷低減を図っています。廃棄物の削減に取り組むことは、原材料やエネルギー資源の効率的な活用につながるとともに、処分時のエネルギー及び温室効果ガス削減に寄与すると考え、分別・リサイクルの徹底、歩留まり向上、運搬用品の再利用等を推進しています。

 

(3)人

当社グループの商品は、建物の開口部や設置場所に応じてサイズ・仕様・材質などを決定する一品一様な製品づくりが求められます。また、現場に納入し取り付けを行うことにより初めて商品としての機能を発揮することから、その機能を維持するための保守点検や修理など、開発、設計、生産から施工、メンテナンス・サービスに至る多数の「人」の力が、当社グループの価値提供を支えています。労働人口が減少し雇用の流動化が加速する中、「中期経営計画2027」の基本戦略において「サステナビリティ経営と人的資本経営の推進」を掲げており、「人」への積極的な投資を通じて持続的な企業価値の向上を目指しています。

 

[「人」のESGマテリアリティ]

①人材育成

 「人」のESGマテリアリティとして「人材育成」を設定し、従業員の保有する能力を最大限に発揮できるような制度や能力開発プログラムにより個の成長を促しています。現場に即した実務的な研修、経営的な思考力を養う研修、スキルマップによる自己啓発支援等、多面的な育成機会と成長への自律的な行動を発揮できる仕組みを整備しています。三和シヤッター工業では、2019年度より定期採用の新入社員を対象に『三和プロ人材育成プラン』を導入し、約2年間かけて営業・製造・設計・施工の実務経験を積むジョブローテーションを実施しています。階層別教育として、次世代リーダー育成研修、管理職マネジメント力強化研修、女性向けキャリアアップ研修等、目的別教育として、経営幹部育成のための「三和経営塾」やグローバル人材育成のための海外実地研修等を行っています。2024年10月より、業務効率の向上、ITリテラシーの底上げを目的としたeラーニングをスタートしており、新たな事業創出や生産性向上につなげていきます。また、施工技術者には、専門の研修施設である施工研修センターにおいて、各種施工研修を実施しており、年間延べ1,000名を超える施工技術者がスキルアップに努めています。

 

②ダイバーシティの推進

 「人」のESGマテリアリティとして「ダイバーシティの推進」を設定し、当社グループの成長ドライバーとなる女性やグローバル社員などの多様な人材一人ひとりが最大限に力を発揮できるよう様々な施策を展開しています。特に日本国内におけるジェンダー平等、多様性の確保が課題であると認識し、女性社員向けキャリアアップ研修を2022年度より実施し、将来の女性管理職候補となる人材育成とそれぞれのキャリア形成の意欲を醸成しています。また、三和シヤッター工業では法定を超えた育児短時間勤務制度(小学校6年生まで)やテレワークを始めとした柔軟な働き方を支援する制度や、新任管理者向けのダイバーシティ研修を通じた女性の働きやすい職場づくり、男性の育児休業取得の推進等にも取り組んでいます。

 

③安全と健康

 「人」のESGマテリアリティとして「安全と健康」を設定し、従業員、協力会社社員、施工技術者など当社グループの事業活動に関わる人々の安全衛生への取り組みと、従業員一人ひとりの心と体の健康づくりを推進しています。ものづくりに携わる企業として、労働災害の撲滅に向けた安全教育の実施とルールの徹底、ヒヤリハット事例の共有、作業負担軽減のための環境改善等に努めるほか、当社グループの健康課題である肥満率と喫煙率の低減を目指して、積極的な受診勧奨やウォーキングキャンペーン、禁煙サポートプログラムの実施などを行っています。2024年3月には、生活習慣病の重症化ハイリスク者を分母とした検査受診者及び治療開始者の割合を新しいKPIとして設定し、より生活習慣病の重症化リスクの高い層にターゲットを絞り行動変容を促しています。

 

(4)グループの経営基盤

 透明性と健全性の高い経営体制の構築、人権の尊重、コンプライアンスの徹底と適切なリスク管理を通じた公正で誠実な企業活動は、上記3つのテーマ(ものづくり、環境、人)への積極的な取り組みを進めるにあたり基盤を成すものです。また、当社グループの事業活動を支える多くのステークホルダーとの活発なコミュニケーションを図り、得られた評価を事業活動に反映していくことで、持続的な企業価値の向上につなげていきます。

 

[「グループの経営基盤」のESGマテリアリティ]

①コーポレート・ガバナンス

 企業価値の向上に向けて、より透明性の高い公正で効率的な経営の実現と、業務執行における迅速かつ的確な意思決定を目的に、コーポレート・ガバナンス体制を構築しています。詳細については、「第4.提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

②人権の尊重

 当社グループは、人権の尊重はあらゆる事業活動の重要な基盤の一つであり、当社グループに関わる全ての人々の基本的人権を尊重し、心身の健康や安全を確保することは重要な責務であると考えていることから、「三和グループ人権方針」を定め、社内外に公表しています。また、2023年度より主要調達先および工場協力会社を対象とした人権デュー・デリジェンスアンケートを毎年実施しており、結果を踏まえた対応策を講じ、継続的な改善に努めています。2024年度は、主要調達先12社および工場協力会社47社の計59社を対象とした人権デュー・デリジェンスアンケートを実施しました。アンケート結果から、三和ホールディングスWebサイト上に設置したグリーバンスメカニズムに関する周知が不十分であったことが明らかになったため、再度、相談方法についての周知を行いました。

 三和グループ人権方針の全文は三和ホールディングスWebサイトに掲載しています。

https://www.sanwa-hldgs.co.jp/csr/governance/human_rights.html

 

③コンプライアンス

 当社グループは、コンプライアンスを企業存続の根幹をなすものであると認識し、法令違反や不正を防止するための体制強化、意識向上のための取り組みを推進しています。使命、経営理念、行動指針の精神、価値観を具体的な行動に移す際に守るべきことをまとめた「三和グループコンプライアンス行動規範」を制定し、毎年11月に実施している「コンプライアンス月間」での取り組み、階層別のコンプライアンス教育、派遣社員を含む全従業員向けのeラーニング等を通じてコンプライアンス意識の浸透を図っています。

 

3.人的資本と多様性

①人的資本、多様性に関する考え方

 当社グループは、基本的目標である「経営理念」として「個人の創造力を結集してチームワークにより、企業価値を高めます」と定めています。長期経営ビジョン及び中期経営計画の達成へ向けた事業活動を支えるものは、当社グループの商品・サービスを通じてお客様の安全・安心・快適な暮らしを守り続ける“変わらない部分”と、環境の変化を先取りし新しい価値を創造するために“変えていく部分”の両方だと考えています。そして、それらを自律的に考え実践していくことができる「個」と、働きやすさとやりがいを兼ね備えた「組織」が共に成長していくことで、企業価値を最大化できると考えています。

 

②人材の多様性を含む人材育成方針

 当社グループは、使命・経営理念・行動指針の精神、価値観を具体的な行動に移す際に守るべき「三和グループコンプライアンス行動規範」の「人材育成と公正な評価」に対する基本姿勢において「人材を最も重要な経営資源と考え、従業員が保有する能力を最大限に発揮し、自己実現を図ることができるようあらゆる取り組みを行います。また一人ひとりの行動と成果を、公正な評価・処遇に結び付けることで挑戦意欲あふれる人材へと成長させます。」と定めています。広い視野をもち、全体最適の視点で自律的に業務を推進できる人材づくりを目指し、従業員一人ひとりの成長の場や機会を提供しています。

 

③社内環境整備方針

 当社グループは、「三和グループコンプライアンス行動規範」の「人権の尊重」に対する基本姿勢において「個人の多様な価値観を認め、人格と個性を尊重し、法令遵守はもとより差別的扱いは行いません。」と定めており、また、「健康的で安全な職場環境」において「職場の健康と安全性を確保し、誰もが生き生きと働ける快適な職場環境を整備することに最大限の努力をします。」と定めています。市場のニーズや消費者の価値観が多様化する時代の中で、新しい価値を創出し続けるため、多様な人材が互いを受容し尊重し合う風通しのよい職場づくりを追求しています。

 

④「中期経営計画2024」の振り返りと「中期経営計画2027」における人材戦略

 当社グループは、人的資本と多様性に関する施策の効果や達成度を定量的に測定するため、2022年5月に発表した「中期経営計画2024」において以下のとおりESGマテリアリティの「人」に紐づいた定量目標を定め、取り組みを進めてきました。

 

<「中期経営計画2024」における「人」関連の指標・目標>

指標

2024年度実績

目標

説明

人権の尊重

人権デュー・デリジェンスの実施(サプライチェーンアンケート実施)

人権デュー・デリジェンスの実施(2024年度)

・テーマの分類を、「人」から「グループの経営基盤」に変更。

・引き続き人権デュー・デリジェンスの継続実施と改善に取り組む。

人材育成

Eラーニング(英語)受講者数

※国内グループ

193人

200人

(2024年度)

・「中期経営計画2027」の人材戦略に基づいたKPIに変更。

通信教育受講者数

※国内グループ

544人

1,000人

(2024年度)

ダイバーシティの推進

女性従業員比率

※連結

20.9

20.0

2030年度

・目標達成。

・2030年度目標を25%に引き上げ。

女性管理職比率

※連結

15.9

15.0

2030年度

・目標達成。

・2030年度目標を20%に引き上げ。

男性育児休業取得率

※三和シヤッター工業

34.5%

50.0%

(2030年度)

・目標未達成ではあるものの、制度拡充および取得しやすい環境整備により、2027年度目標を70%に、2030年度目標を100%に引き上げ。

安全と健康

肥満率(BMI25以上)

※国内グループ

35.5%

30.0%

(2030年度)

・目標未達成のため、引き続き施策を推進し肥満率の低減に努める。

喫煙率

※国内グループ

28.6%

25.0%

(2030年度)

・目標未達成のため、引き続き施策を推進し喫煙率の低減に努める。

ハイリスク者受診率

※三和シヤッター工業

60.0%

100.0%

(2030年度)

・2024年3月に新規設定したKPI。

・引き続き施策を推進し、ハイリスク者受診率100%を目指す。

有給休暇取得率

※三和シヤッター工業

55.5%

55.0%

(2030年度)

・目標達成。

・2027年度目標を70%に引き上げ。

 

       長期経営ビジョン「三和グローバルビジョン2030」で目指す姿「高機能開口部のグローバルリーダー」に向け、「中期経営計画2024」ではスキルマップを用いた人材育成など個の成長に重きを置きながら人的資本の強化に注力してきました。「中期経営計画2027」では、個人の行動変容や職場内・組織間コミュニケーションの活性化等によるエンゲージメント(個と組織が一体となり双方の成長に貢献しあう関係)の向上を目指します。

 

<「中期経営計画2027」三和グループ人材戦略>

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<「中期経営計画2027」における「人」関連目標>

指標

目標

人材育成

1人あたり年間研修時間

三和シヤッター工業㈱

新規

38時間  (2027年度)

デジタル教育(基礎編)受講率

三和シヤッター工業㈱

新規

90%    (2027年度)

デジタル教育(応用編)受講人数

三和シヤッター工業㈱

新規

70人    (2027年度)

ダイバーシティの推進

女性従業員比率

連結

引き上げ

25%以上(2030年度)

三和シヤッター工業㈱

新規

15%以上(2030年度)

新卒女性採用比率

三和シヤッター工業㈱

新規

30%以上(毎年)

女性管理職比率

連結

引き上げ

20%以上(2030年度)

男性育児休業取得率

三和シヤッター工業㈱

新規

70%以上(2027年度)

引き上げ

100%   (2030年度)

安全と健康

肥満率(BMI25以上)

国内グループ

継続

30%    (2030年度)

喫煙率

国内グループ

継続

25%    (2030年度)

ハイリスク者受診率

三和シヤッター工業㈱

継続

100%   (2030年度)

有給休暇取得率

三和シヤッター工業㈱

引き上げ

70%    (2027年度)

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。当社グループでは、これらのリスク発生の可能性を認識し、代表取締役社長を議長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、その「サステナビリティ委員会」が、リスクマネジメント推進専管組織として、当社グループのリスクマネジメントの基本方針、リスクマネジメントに関する計画、施策の進捗状況の報告・審議を行い、また、国内事業部門の「品質・環境・CSR推進会議」、およびグループ各社の「CSR推進委員会」が、各社の事業展開に伴い発生するリスクに適切かつ迅速に対応するリスク管理を行い、また「海外リスク分科会/海外環境推進分科会」にて海外グループ会社の環境リスクを含むリスク管理を行うことにより、平素より予防、軽減および発生した場合の対応に努めております。また、主要なリスクをESGマテリアリティの項目に合わせて「1.ものづくり」「2.環境」「3.人」「4.グループの経営基盤」に区分し、それぞれのリスクおよび機会とその対応策を記載しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.ものづくり

(1)品質リスク

①製造品質

●リスク

製造に起因する品質不具合が発生した場合、当社グループの製品の信頼性やブランド価値に悪影響を及ぼす可能性があります。また、代替品との交換等の対応に不具合があった場合、製品の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、各部門において製品の品質確保に留意して万全の体制をとっております。生産部門においては、製品の品質基準の確保および生産性の向上等のため、老朽設備の更新、生産技術の継承、作業環境の改善を進めるとともに、出荷前検査の強化を図っております。またトレーサビリティシステムでのデータ管理により、出荷後における製品不具合等が発生したときの原因究明、対策実施等の対応の仕組みを強化しております。さらに生産ラインの自動化・ロボットの導入による省人化および生産効率の向上にも取り組んでおります。

 

②施工品質

●リスク

施工に起因する品質不具合や火災事故等が発生した場合、当社グループの施工品質の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

施工部門においては、施工品質基準の明確化、施工性・安全性の向上等のため、施工技術者への施工研修や技能ランク付け、施工技術者の多能工化、施工技術の研究開発、施工ロボットの導入、火災事故防止のために溶接を使用しない「火無し工法」での施工、安全衛生定例会での安全教育等を実施しております。また工程管理システム、出来高管理システム、工事EDI(電子データ交換)の導入により業務効率化に取り組んでおります。

 

③設計品質

●リスク

設計に起因する品質不具合が発生した場合、当社グループの設計品質の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

設計部門においては、最新の設計システムの導入、営業員が利用できる簡易作図システムや発注連携システム等のデジタルツールの導入により、設計品質の向上、納期の短縮や設計員の業務効率化に取り組んでおります。

 

 

 

④営業品質

●リスク

顧客への提案内容、打合せの不備等に起因する顧客からの苦情等が発生した場合、当社グループの営業部門の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

営業部門においては、多種多様な製品を顧客に提案し、製品仕様等の打合せを円滑に行うため、営業員に対する新製品研修・階層別研修および個人別のスキルマップに基づく営業スキルアップ研修等を実施しております。また、顧客満足度の向上のため、営業員に対するビジネスマナー研修を実施し、接客マナーの改善に努めております。

 

⑤点検品質

●リスク

当社グループの製品は、開口部に設置する“動く製品”が殆どであり、その機能を維持するためには保守点検が不可欠であります。保守点検を実施したとしても、その内容が不十分なときは製品の不作動等が発生するリスクがあります。

2016年6月より防火設備の定期検査・報告制度が導入されましたが、全ての防火設備が対象とはなっておらず、防火設備以外の製品の保守点検は法制上強制ではなく任意となっていることもあり、保守点検がなされず、部品の経年劣化等により製品性能が正常に発揮されない潜在的なリスクがあります。

また、2004年10月以降に設置した防火シャッターには安全装置が標準装備されていますが、それ以前の防火シャッターには安全装置の設置が義務化されておらず、安全装置設置がすべての防火シャッターに設置されているわけではありません。このような状況において、万一、製品の経年変化に起因する事故等が発生した場合、当社グループの信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

修理・メンテナンス部門においては、防火設備検査員の資格取得の奨励、保守点検に関する各種研修等を実施し、防火設備の保守点検に対応できる体制を整備するとともに、顧客に引き渡した製品の将来にわたっての安全性を確保すべく保守点検の契約締結の推進および既設製品のデータベース化を進めております。また防火設備定期検査の際に顧客への安全装置設置および必要な修理・製品取替等の提案を行っており、製品の機能維持・安全性の向上に努めております

 

(2)研究開発リスク

●リスク

商品の安全性・品質向上の対策に注力しておりますが、万一、それらの対策が万全でない場合、製品に不具合を生じるおそれがあるとともに、商品開発が市場や業界等の変化するニーズへの対応が遅れた場合、競争力の低下につながり、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループは、2004年3月に発生した自動回転ドア(当社グループ会社設置)事故の教訓をもとに、製品の安全対策をさらに強化徹底すべく努めております。世界中の人々の安全、安心、快適を実現するために、常に安全面を考慮した研究開発と技術強化、顧客ニーズの掌握、新商品の開発に努めております。また高速シートシャッター等の気候変動対応(緩和・適応)商品、IoT対応商品や感染症対応商品の研究開発に取り組んでおります。さらに風水害・地震等の被害に備える防災・減災商品の研究開発を強化しております。

 

 

 

(3)原材料価格・調達リスク

●リスク

当社グループの主要材料(鋼板・アルミ・ステンレス等)の価格は、経済環境の動向により高騰する可能性があります。また、副資材や物流費等も需給の関係によって上昇する可能性があります。価格競争の厳しい市場下で原材料価格等の上昇分を製品価格の引き上げで完全にカバーできるかは不透明であり、経済環境の悪化等に伴う製品価格の引き下げ圧力の増大等により、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、製品の主要部材・部品の一部を長年の取引関係とそれに基づいた諸条件等から、グループ外の特定供給元に依存しております。主要部材・部品の確保には、定期的に供給元を評価し、製造プロセスと品質管理体制の確認と、改善指導により供給体制の維持には万全を期しておりますが、それでも供給元の状況の変化等や大規模災害の発生等により主要部材・部品の不足が生じない保証は完全ではありません。その場合、生産・販売、また代替品対応等の影響等により当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、原材料価格の高騰に対応するため、コストダウンに努めておりますが、原材料や副資材、物流費等の上昇分の全てを吸収することは困難であるため、製造原価の精査に加えて製品価格への転嫁にも取り組んでおります。

また、主要部材・部品の調達に支障が生じないよう、必要な部材等の早期把握・確保、調達先の経営状況の確認および複数購買体制をはじめとした代替調達方法を整備しており、今後もさらに拡充していきます。

さらに、中核事業会社の三和シヤッター工業㈱では、パートナーシップ構築宣言の内容を遵守し、調達先との適正な協議により取引価格、コスト負担や支払条件を決定することにより、サプライチェーン全体の共存共栄を目指しております。

 

(4)生産・物流リスク

●リスク

製品搬入の管理システムに不具合等が発生した場合または運転手の時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)によりトラックの確保が困難になった場合、当社グループの製品搬入の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループの製品の殆どは受注生産品であり、納期が一定期間に集中したとしても納期遅延が生じることのないよう、月別の出荷予定分析を行い、生産計画および在庫計画の立案・実施、工場内人材シフトの変更等により、納期に応じた生産体制を構築しております。また、施工現場への製品の搬入が遅延することのないよう、自動搬送ロボによる工場構内物流の効率化、納期管理システム、配車倉庫管理システムおよびトラック管理システムを導入し、納期管理およびトラック運行管理の徹底を図り、適時の製品搬入を実現しています。

 

(5)労働災害リスク

●リスク

工場または施工現場で事故・労働災害が発生した場合、当社グループの安全面の信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

工場における事故・労働災害防止のため、製造作業マニュアル等の整備、安全教育の実施、安全装置を備えた機械設備の導入等に取り組んでおります。工場作業場への空気循環装置やエアコン設置・休憩所整備等の作業環境の改善も進めております。また施工現場における事故・労働災害防止のため、施工作業マニュアル等の整備、VR安全研修、安全教育・安全衛生定例会議等での安全作業の周知徹底等に取り組んでおります。

 

 

2.環境

環境・気候変動リスク

●リスク

2015年12月に気候変動に関する国際連合枠組条約第21回締約国会議(COP21)においていわゆる「パリ協定」が採択され、これを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取組みが世界的に進められています。

当社グループでも、気候変動の重要性を認識しており、気候変動の移行リスク(政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク等)と物理的リスク(急性的、慢性的)は当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

移行リスクのうち、政策・法規制リスクとしては炭素税の賦課や温室効果ガス排出規制等が挙げられます。また、技術リスクとしては環境配慮商品に対する研究開発費コストの増加、市場リスクとしてはエネルギーコストおよび廃棄物処理費用の増加等が挙げられます。

物理的リスクのうち、急性的なリスクとしては、気候変動により近年発生が増加傾向にある局地的な暴風雨、台風の大型化は、生産活動および出荷に悪影響を及ぼし、当社グループの業績および財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした異常気象により生産現場や生産設備、物流インフラが甚大な被害を受けた場合、生産や出荷が長期間にわたり停止する可能性があります。また、慢性的なリスクとしては、夏季の著しい気温上昇にともない、生産現場および施工現場の生産性低下につながるおそれがあります。

さらに、温室効果ガス排出量・水使用量・産業廃棄物の削減等の自主目標を達成できなかった場合、当社グループの信頼性やブランド価値が毀損し、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループは、気候変動への対応が重要な経営課題であると認識していることから、2021年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、TCFDフレームワークに基づく情報開示に取り組んでおります。「三和グループ環境方針」に則して、温室効果ガス排出量・水使用量・産業廃棄物の削減等の目標を設定し、CO2排出量(Scope1+2)については2030年度までに2019年度比30%削減という目標を公表して取り組んでおります。具体例として、太陽光発電設備の導入、事業所・工場の照明のLED化、工場でのデマンド監視システムによる電気使用量の可視化、営業車のエコカー(ハイブリッド車など)への切替え、フォークリフトの電動タイプへの切替え、廃棄物の適切な分別等の対策を進めております。また、気候変動の“緩和”と“適応”に貢献する各種製品を提供することにより、商品・サービスを通じた社会課題の解決に貢献しております。

 

 

3.人

 

(1)人材リスク

●リスク

必要な人材を継続的に獲得する競争は激化しており、これらの人材獲得や育成が計画どおりに遂行できない可能性があります。人材流出および人材の確保や育成が計画どおりに遂行できない場合、人材不足が生じるリスクがあります。その結果として、業務遂行能力の低下により長期的に当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが事業を展開している各地域・国において労働慣行の相違が存在しており、法環境の変化、経済環境の変化等予期しない事象を起因とした労使関係の悪化、ストライキ、労働争議等のリスクが存在しております。万一そのような問題が発生、長期化した場合は当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループが継続的に発展するために、事業遂行に必要な優秀な人材を採用・確保し、育成計画に基づき人材育成をしております。また、女性社員の積極的な採用・配属職種の拡大・キャリアアップ研修を通じて、女性社員の活躍を推進し、職能等級制度や人事評価制度の見直しによる若手人材の登用にも取り組んでおります。さらに、介護・育児休職制度、育児短時間勤務制度・テレワーク制度の導入による柔軟な働き方の支援、有給休暇の取得推進、デジタルツール活用による業務効率向上等により、多様性の尊重、性別や年齢にとらわれない平等な成長機会や評価を受けることができ、誰もが働きやすく、やりがいのある生産性の高い職場づくりを進めております。

 

 

 

(2)人事労務リスク

●リスク

労務関連の法令違反または従業員の業務に起因する健康不全が生じ、行政庁から指導・勧告等を受けた場合、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績および財務状態に影響が生じる可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、長時間労働・過重労働の防止のため、勤怠管理システムを導入して従業員の労働時間を管理し、36協定等の法令遵守を徹底しております。また従業員の健康・メンタル不全の予防のため、健康診断での要精密検査者等への受診指導およびメンタルヘルス制度を導入するとともに、ウォーキングキャンペーンや禁煙サポートプログラムを実施し、従業員の健康増進に努めております。さらに、多様な人材が働きやすい職場環境の整備のため、育児休職制度・定年後の再雇用制度の導入、テレワーク制度の導入、障がい者の雇用の推進を図っております。

 

 

4.グループの経営基盤

(1)経営リスク

①自然災害(感染症)リスク

●リスク

日本では、地震、津波、台風、ゲリラ豪雨等多くの自然災害に見舞われており、海外でも、地震、津波、ハリケーン等の大規模自然災害が発生するおそれがあり、当社グループの事業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。自然災害による被害をゼロにすることはできず、被害の状況により当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、2020年初頭から波及した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、全世界でまん延し、日本国内においても企業活動に多大な影響を及ぼしました。

当社グループでは、日本国内のみならず米国、欧州、アジア各国で事業を展開しており、今後さらなる感染症のまん延により、事業活動が大幅に制約された場合、当社グループの業績および財務状態に重大な影響が生じる可能性があります。

●対応策

当社グループでは、これらの自然災害の発生に備えて事業継続計画(BCP)の策定、社員安否確認システムの構築、耐震対策、防災訓練、BCP訓練の定期的実施と課題のフォローアップ等の対策を講じております。

なお、当社グループでは、災害被害を防ぐもしくは軽減させるための防災商品(防火、防煙、防水、高耐風圧等)の研究開発に取り組んでおり、それらの商品を提供することにより社会に貢献することに注力しております。

 

②地政学リスク

●リスク

当社グループでは、日本国内のみならず米国、欧州、アジア各国において、多様な政治的・社会的環境のもとで事業を展開しており、それらの環境に大きな変更が生じた場合、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。主な地政学的リスクとして次のようなものが挙げられます。

・製品仕様等に関わる予期しない法律または規制の変更

・海外移転税制等、外国資本に対する不利な政策または経済要因

・テロ、戦争、パンデミック等を含む伝染病、反日暴動等その他の要因による社会的混乱

・エネルギー、労働力不足等による生産工場の操業停止

 

●対応策

当社グループでは、これら地政学リスクへの対応として、海外グループ会社を含む危機管理体制を構築し、有事の際は情報の早期報告・共有により迅速かつ適切に対応できるようにしております。また、平時においても海外の状況を常に的確に把握できるよう海外グループ会社に駐在員を派遣し現地経営者と連携を密にするとともに、事業展開している地域の情報を外務省のホームページ等から入手して、海外グループ会社に必要な指示、注意喚起を行うことにより悪影響を最小限にするよう努めております。さらに、海外生産拠点およびサプライチェーンの複層化により生産体制の整備および部材・部品調達の確保により、海外事業のBCPに取り組んでおります。

 

 

 

③経済動向リスク

●リスク

当社グループが展開している各地域の景気が減速・後退する場合は、それぞれ公共事業投資や民間設備投資、新規住宅着工の低下、個人消費の低迷等により、当社グループが提供する製品またはサービスに対する需要が減少する等、当社グループの事業および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このことは、グループ全体としての事業のリスクが分散された反面、純粋に進出地域の経済状況、需要動向による要因のほかに現地特有の新たなリスク顕在化の可能性が生じております。

また、為替、金利の変動が事業活動に影響を及ぼす可能性があります。金利の変動については、当社グループの金融資産、負債(特に長期負債)の評価に影響を与える可能性があり、保有する有価証券価格についても市場価格の下落リスクにさらされており評価損を計上する等のリスクがあります。

さらに、海外各地域における売上、費用、資産および負債を含む現地通貨建ての各項目は、連結財務諸表の作成に当たり円換算しているため、為替レートによって想定範囲を超える影響を及ぼす可能性があります。

予期しない金融危機や業績等の悪化に伴う格付けの低下により、資金調達先から必要な資金調達を得ることができない場合、資金が枯渇するおそれがあります。

●対応策

当社グループは、日本・米国・欧州・アジアの各地域で事業展開することで、事業ポートフォリオによるリスクを分散させるとともに、外部環境の変化に対応し、不採算事業の把握により事業撤退やM&A等に関する経営判断をしております。

また、為替や金利の変動リスクを軽減するため、通貨スワップや為替予約等のヘッジ対応等の施策を講じており、加えて資金調達先および調達期間の適度な分散を行い、また信用リスクを軽減するよう財務体質の維持・強化を図っております。

 

④財務・会計・投資等関連リスク

●リスク

当社グループでは、予期しない事象による顧客の経営破綻が発生した場合、業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。その際には、債権保全など有効な手続きを行い、リスクを最小限に抑えるよう取り組んでおります。

また、当社グループでは、財務諸表の作成にあたり、会計上の見積りが必要な事項については、合理的な基準に基づき見積りを行っておりますが、不確実な要素を含むため実際の結果と異なる場合があり、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。主な見積りリスクとして次のようなものが挙げられます。

・債権の貸し倒れ

・退職給付に係る負債

・固定資産価値の減少

・投資有価証券・出資金の減損損失

・繰延税金資産の回収可能性

・収益認識および工事損失引当金

さらに、当社グループが事業を展開している各国、地域における税制改正により、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、将来課税所得の見積り変更等により税金費用が増加するリスクがあります。

加えて、当社グループは、保有する経営資源の効率的運用を考慮し、企業価値の最大化を目的として事業買収を実施することがあります。買収後において当社グループが認識していない問題が明らかとなった場合や、市場環境や競合状況の変化または何らかの事由により事業展開が計画どおりに進まない場合、投資価値の減損損失を行う必要が生じる等、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、事業を営むうえで取引をする顧客に関しては、情報収集、与信管理などを徹底しております。また、M&Aなど投資案件に関し、事業および法務デュー・デリジェンスを行い、財務面でも将来得られるキャッシュフローについて慎重に検討した上で機関決定し、投資判断によるリスクを最小限にするよう努めるとともに、投資先の減損リスクについて定期的な見直しをしております。なお、資金調達に際しては、自己資本毀損リスクも踏まえ、財務健全性に配慮した最適資金調達をしております。

 

 

 

(2)コーポレート・ガバナンス関連リスク

●リスク

コーポレート・ガバナンス体制が十分に整備されていない場合、事業の持続的成長に支障が生じ、企業価値が毀損し、当社グループの株価の低下、業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、コーポレート・ガバナンス体制の機関設計として「監査等委員会設置会社」を選択し、取締役の職務執行の組織的監査を行っており、定款の定めに基づき、「重要な業務執行の決定」を取締役に委任し、経営判断の迅速化を図っております。取締役会は、取締役会の実効性を担保するために、毎年全取締役へのアンケートを実施し、取締役会で分析・評価し、その結果をもとに具体的な改善策を実施しております。また社外取締役や監査等委員である取締役による監査等委員でない取締役および執行役員等の業務執行を監査することにより、経営の透明性向上や適法な会社運営の確保に努めております。また取締役の報酬は、株式報酬による持続的企業価値向上インセンティブを導入し、また、指名・報酬委員会を設置して、公平性・透明性・客観性を強化し、当社取締役に求められる役割と責任に見合った報酬水準および報酬体系となるよう設計しております。さらに、ボードダイバーシティの取り組みとして、2022年度に女性取締役1名を選任しており、2025年度には外国籍取締役1名を選任する予定です。

 

(3)人権リスク

●リスク

人権侵害行為が発生した場合、職場環境の悪化や労使紛争・訴訟の提起による社会的信用の失墜等により、当社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

当社グループは、「三和グループ人権方針」を制定しており、人間尊重の立場に立って多様性を尊重し、性別、年齢、国籍、人種、民族、信条、宗教、障がい、出身地域等に基づく差別を禁止しており、その遵守を教育等により推進しております。また調達先に対しても児童労働や強制労働等の人権侵害をしないよう働きかけ、人権の尊重を図っております。また調達先等のステークホルダーからの相談窓口の設置を含む人権デュー・デリジェンスにも取り組んでおります。

 

(4)コンプライアンスリスク

①不正・不祥事・法令違反リスク

●リスク

当社グループは、事業を展開するうえで、法律・制度の制定・改正に伴うリスクや知的財産権を含む権利の侵害に関するリスク、訴訟や規制当局による調査および処分に関するリスクを有しております。万一監督官庁等からの処分、訴訟の提起がなされた場合、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績および財務状態に影響が生じる可能性があります。

 

●対応策

当社グループは、法令遵守と倫理に基づいた企業活動を行う旨を宣言し、当社の取締役および従業員が事業遂行にあたって、各種法令や倫理基準並びに三和グループコンプライアンス行動規範等から逸脱した行為をすることがないよう、当該コンプライアンス行動規範を具体的な業務事例としてまとめた冊子を全従業員に配付し、その内容の遵守について誓約書の提出を求める等、さまざまな取り組みを通して徹底を図っております。なおコンプライアンス行動規範については、社会的要請であるESGの観点を充実させるため一部改定を行い、それに伴い冊子の改訂版を発行し、コンプライアンス意識定着の再確認を行いました。また、不正行為の防止・早期発見および自浄プロセスの機動性向上を図るべく内部通報制度を導入しております。さらに、事業を展開するすべての国・地域に適用される腐敗・贈収賄禁止法令の遵守を目的として、「贈収賄防止に関するガイドライン」を策定し、不祥事予防の体制強化を図っております。

国内当社グループでは、管理職・新入社員・中途採用社員等を対象としたコンプライアンス研修や全社員を対象としたWeb研修を実施しております。また、毎年11月をコンプライアンス月間と定め、コンプライアンス意識の浸透とそれに基づく行動の徹底を図るため各種取り組みを実施しております。

コンプライアンス上の問題が発生した場合に備えて、適時に弁護士等の外部専門家に連絡相談可能な体制を構築しております。

 

 

 

②交通事故リスク

●リスク

当社グループでは、各地域で車両を使用して事業活動を行っておりますが、万一重大な交通事故が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜等により、悪影響を及ぼす可能性があります。

 

●対応策

交通事故をゼロにすることは困難ですが、交通事故の発生抑止のため、安全装置(自動ブレーキ)装備車両の拡充、運転者の運転前後におけるアルコール検知器を使用してのアルコールチェック、安全運転意識向上の取組み、事故惹起者への安全教育等を実施しております。

 

(5)情報セキュリティリスク

●リスク

当社グループでは、情報システムに対して、各種障害やセキュリティへの対策を講じていますが、コンピューターウイルスによる個人情報や重要機密情報の漏えい、不正アクセスによる情報の消失・改ざん、不慮の情報システム停止等で当社グループの業績および財務状態に影響が生じる可能性があります。

 

●対応策

当社グループでは、2019年に情報セキュリティ対策会議を設置し、グループ全体のセキュリティリスクの把握と、それに対する対策の推進を進めております。また、サイバー攻撃を受けた場合の事業の中断を最小限にとどめるため、サイバー攻撃を想定した事業継続計画(IT-BCP)を策定し、それに基づくIT-BCP訓練の実施により対応力を強化しております。また、全社員を対象としたITリテラシー向上のためのWeb研修、ウイルスメール訓練の実施や社内イントラネットにセキュリティ情報ポータルサイトを開設し、情報セキュリティ関連規定、不審メールの見分け方・対応等のセキュリティ情報を掲載して、情報セキュリティ対策の周知徹底を図っております。さらに、政府が毎年2月から3月にかけて推進するサイバーセキュリティ月間に合わせて、全社員に社内情報システム利用のルール等を改めて周知して実務的なセキュリティレベルの底上げを図っております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、次のとおりであります。

 

① 事業全体の状況

当社グループは、「三和グローバルビジョン2030」の達成へ向けた「中期経営計画2024」の最終年度を迎え、仕上げの年度として引き続き、気候変動やデジタル化で変化する社会のニーズに応える高機能開口部ソリューションのグローバルリーダーへ向けた基盤の確立に注力し、基本戦略を実行しました。

基本戦略の「日・米・欧のコア事業の強化、領域拡大」では、事業拡大に向けた体制強化とシャッター、ドア事業のシェア拡大に注力するとともに、戦略商品にて日本ではデュオグラスなど間仕切商品のラインアップを拡充、米州ではゲート開閉機、ドックレベラー製品の投入を行いました。サービス事業は各市場特性への対応を推進し事業拡大に努めました。「アジア事業の成長力強化」では、中国市場の悪化の中、数量確保への取り組みを強化した他、生産性改善、防火遮熱市場への対応に注力しました。「防災・環境対応製品の拡充と製品・サービスのスマート化推進」では、Re-carboシリーズ(高断熱商品)の「断熱クイックセーバーTR」の設計範囲を拡大するなどCO2削減提案を推進するとともに、「防音ガード」シリーズの特定防火設備仕様を追加するなどラインアップ拡充を図りました。また、欧米ではリモート監視機能対応製品を投入しました。「デジタル化とものづくり革新」では、生産能力拡大と省力化投資を推進し、日本ではドア生産体制の強化、米州では自動ドア工場の集約、セクショナルドア等の工場統廃合を進め、欧州ではイギリス・ドア工場の移転・拡張、ドイツ・ドア工場のデジタル化推進を図りました。「サステナビリティ経営の推進」では、中国常熟工場、静岡工場、太田ドア工場に太陽光パネルを新設するなど引き続きCO2排出量削減、廃棄物の削減等に取り組むとともにESGマテリアリティに紐づいた各KPIの達成に向け施策を推進しました。

セグメント別の概況は、日本では、物価上昇に応じた売価転嫁による収益性、数量の確保に努めるともに、重量シャッター、ビルマンションドア等の基幹商品、間仕切、エントランス等の戦略商品が堅調に推移しました。北米では、住宅市場回復を捉えた拡販施策の推進、売価維持と生産性改善等によるコスト削減に努めました。欧州では、各種コストの上昇に加え、市場環境の悪化もあり厳しい状況が続きました。アジアでは、香港、台湾が堅調に推移しました。

 

2024年度実績

(百万円)

2023年度実績

(百万円)

対前年増減額

(百万円)

対前年増減額

(%)

売上高

662,380

611,107

51,273

8.4

営業利益

80,515

65,360

15,155

23.2

経常利益

84,015

64,903

19,111

29.4

親会社株主に帰属する当期純利益

57,512

43,228

14,284

33.0

 

② セグメント情報に記載された区分ごとの状況

 セグメント別の業績は次のとおりであります。

 なお、セグメントの業績は、セグメント間の取引消去前の数値で記載しております。

 

2024年度実績

(百万円)

2023年度実績

(百万円)

対前年増減額

(百万円)

対前年増減額

(%)

売上高

662,380

611,107

51,273

8.4

日本

287,676

265,728

21,947

8.3

北米

245,505

219,919

25,585

11.6

欧州

114,356

111,529

2,826

2.5

アジア

15,354

14,352

1,002

7.0

調整額

△511

△423

△88

(-)

営業利益

(セグメント利益)

80,515

65,360

15,155

23.2

日本

35,841

28,177

7,663

27.2

北米

41,503

34,502

7,000

20.3

欧州

3,405

3,890

△484

△12.5

アジア

373

577

△203

△35.2

調整額

△609

△1,788

1,178

(+)

 

(日本)

 売上高は、前連結会計年度に比べ8.3%増の287,676百万円、利益に関しましては、前連結会計年度に比べ27.2%増の35,841百万円のセグメント利益となりました。

 

(北米)

 売上高は、前連結会計年度に比べ11.6%増の245,505百万円(外貨ベースでは3.5%増)、利益に関しましては、前連結会計年度に比べ20.3%増の41,503百万円のセグメント利益となりました。

 

(欧州)

 売上高は、前連結会計年度に比べ2.5%増の114,356百万円(外貨ベースでは4.4%減)、利益に関しましては、前連結会計年度に比べ12.5%減の3,405百万円のセグメント利益となりました。

 

(アジア)

 売上高は、前連結会計年度に比べ7.0%増の15,354百万円、利益に関しましては、前連結会計年度に比べ35.2%減の373百万円のセグメント利益となりました。

 

③ 目標とする経営指標の達成状況等

 当社の目標とする経営指標の達成状況は以下のとおりであります。

 

2024年度実績

2023年度実績

2024年度修正予想

売上高

6,623億円

6,111億円

6,530億円

営業利益

805億円

653億円

725億円

営業利益率

12.2%

10.7%

11.1%

SVA

418億円

322億円

364億円

ROIC

18.5%

16.1%

17.0%

ROE

19.0%

16.5%

17.5%

 当社グループは、2001年度から業績評価指標としてSVA(Sanwa Value Added)を採用し、資本コストや資本効率を意識して取り組んでいます。2024年度のSVAは前年、予想ともに超過し418億円となりました。また、売上高等の全ての項目を達成しており、着実に企業価値を積み上げているものと考えています。

 

 生産、受注及び販売実績は以下のとおりであります。

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

221,963

106.8

北米

156,627

115.0

欧州

78,686

100.9

アジア

13,002

97.9

合計

470,280

108.0

(注)上記の金額は、製造原価によっており、相殺消去前の金額であります。

 

b.受注状況

 当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

日本

294,128

104.7

131,584

105.3

北米

249,164

117.5

41,767

105.4

欧州

112,475

102.6

30,168

122.7

アジア

14,379

102.7

14,177

94.2

合計

670,148

108.7

217,698

106.6

(注)上記の金額は、相殺消去後の金額であります。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメント等の名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

287,560

108.3

北米

245,356

111.6

欧州

114,276

102.5

アジア

15,123

106.7

報告セグメント計

662,316

108.4

調整額

63

100.0

合計

662,380

108.4

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報

 a.資本政策の基本的な方針

 当社グループの資本政策につきましては、財務の安定性を確保した上で資本効率の向上を図ることが重要であり、そのバランスをとりながら、最適な投資・株主還元等を実施し、資本コストや株価を意識した経営により中長期的に企業価値を高めていくことを基本方針としています。

<当面の資本政策・財務方針>

 当社の長期ビジョン「三和グローバルビジョン2030」および「中期経営計画2027」を実現するために、戦略的な成長投資を最優先に資本政策等を進めてまいります。

1.資本コスト

(1)当社の株主資本コストは8%、WACCは7%と認識しております。

2.資本・負債構成

(1)自己資本比率は、50%以上を維持する方針で取り組みます。

(2)負債については、財務の健全性を損なわない負債構成に努めてまいります。

(3)現金および現金同等物(連結)の保有残高は月商の1.5~2.0ヵ月を目安といたします。

3.投資

(1)設備投資

コア事業の維持・継続に必要な設備投資は、原則減価償却費の範囲内で実施します。

(2)戦略的な成長投資

生産能力増強や生産性向上に向けた設備投資、デジタル化の推進、コア事業並びにコア事業を補完する関連分野へのM&A投資等、戦略的な成長投資を優先的に検討いたします。

4.株主還元

(1)より安定的な配当を行うため、DOE(自己資本配当率)8%を目安といたします。

(2)上記記載の「投資」を優先し、投資による大きなキャッシュアウトがなければ自己株式の取得を機動的に実施いたします。

(3)「中期経営計画2027」においては、計画された営業キャッシュフローを踏まえ、株主総還元(配当と自社株式取得の合計)として1,250億円を目安としております。

 これらのことにより自己資本を適切に管理し、資本効率(ROE)の向上を図っていきます。また、事業の持続的成長に加え、高配当率の維持、機動的な自己株式取得による株主還元と、ROEの向上により株価の安定、上昇を図ってまいります。

 

 b.財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は、主に棚卸資産や固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ42,908百万円増加し534,609百万円となりました。負債は、主に未払法人税等や契約負債の増加等により、前連結会計年度末に比べ4,217百万円増加し210,417百万円となりました。純資産は、主に利益剰余金や為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べ38,690百万円増加し324,192百万円となりました。

以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ2.5ポイント増加し60.2%となりました。

 

 c.当期のキャッシュ・フローの概況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ8,919百万円増加し103,114百万円となりました。当連結会計年度における区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益の計上等により76,942百万円の資金増加(前連結会計年度は72,427百万円の資金増加)となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、主に固定資産の取得により30,174百万円の資金減少(前連結会計年度は24,819百万円の資金減少)となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払等により42,890百万円の資金減少(前連結会計年度は26,244百万円の資金減少)となりました。

 

② 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値、偶発債務の開示、各連結会計年度における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。これらの見積り及び判断は、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づき行っており、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。また、詳細につきましては、重要性がないものと判断した事項を除き「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における研究開発活動は、防災・環境対応製品の拡充と製品・サービスのスマート化の推進を図り、かつ、品質、安全、施工性の向上及びコストダウンを推し進めながら、新製品の開発及び既存製品の改良に取り組みました。なお、研究開発費の総額は7,293百万円となっております。

 セグメント別の研究開発活動は以下のとおりであります。

 

(1) 日本

 防災製品として、防水関連商品では、23年度に発売した防水ドア「Sタイトドア 浸水高さ3m対応スチール仕様」にステンレス仕様を追加しました。スチール仕様と同様に浸水が24時間継続しても防水性能を維持できる高い性能を有しながら、より多様なニーズに対応可能となっています。

 ドア関連商品では、防火性能に加え高い遮音性能を有した窓付特定防火設備 高性能防音ドア「防音ガード シリーズ」に遮音等級T-3のホール向けドアと両開き窓付き特定防火設備仕様を追加しました。ホール向けドアは左右扉の召合せ部を相じゃくりの構造としながら左右どちらの扉からでも開閉可能とした独自の新機構〝デュアルオープンシステム"を搭載し、高い遮音性能と防火性能を有しながら簡単・スムーズな操作性を両立しています。

 シャッター関連商品では、強風時にシャッターカーテンがガイドレールから抜け出す被害に対し、特別な操作を行うことなく抜け出しを防止する機構を搭載した耐風形軽量シャッター「耐風ガードLS」(2023年超モノづくり部品大賞 奨励賞を受賞)に防火設備仕様を追加。高耐風圧性能と防火性能を両立したマルチハザード対応商品となりました。シャッターカーテンの軽量化も行い、手動開閉時の操作性の向上と共に省資源化による環境負荷低減にも寄与する商品となっています。これらの優れた点が評価され、「防災・減災×サステナブル大賞2025スマーテスアワード」で優秀賞を受賞しました。

 環境対応製品として、23年度に発売した業界初となる断熱性(H-5等級相当)と高速開閉を両立した高機能商品「Re-carbo 断熱クイックセーバーTR」について、より大開口に対応できるよう断熱性能を維持しながら設計範囲をW4m×H4mからW6m×H5,5mに拡大させました。この「断熱クイックセーバーTR」は従来品と比較して空調効率を向上させ、CO2排出量削減と工場や倉庫における職場環境の向上にも寄与する商品となっており、これらの優れた点が評価され、「2024年 超モノづくり部品大賞」で「生活・社会課題ソリューション関連部品賞」を受賞しました。

 製品のスマート化・電動化推進として、IoTサービスによる新たな価値提の提供を目的として「クイックセーバーIoT管理サービス」の発売を開始しました。これは三和のIoTサービス「RemoSma」をProユース向けに発展させた「RemoSmaPro」シリーズの第一弾として発売したもので、IoT技術を活用し遠隔で製品の開閉状況や状態監視などを行い迅速なメンテナンス・修理対応につなげることができる新たな顧客価値創造ソリューションとなります。

 新商品として、マンション駐車場のゲート向けのシャッターで、高速開放と高耐久性に機能を集約し、高いコストパフォーマンスを実現した「レジデンスグリルG2」を発売。加えて軽量シャッターのフック棒をデザイン性に優れた外観にリニューアルし、またデザイン性に優れたケースをオプション追加するなど、付加価値向上に努めました。

 なお、当セグメントに係る研究開発費は、2,100百万円であります。

 

(2) 北米

 気候変動(適応)対応製品として新色を追加し意匠性を高めたガレージドア製品拡充、また、製品のスマート化推進として住宅用開閉機のWi-Fi搭載機種の拡充に加え、リモート監視機能対応製品の用途拡大、事業領域拡大のため油圧式ドックレベラー及びゲート開閉機の開発を行いました。

 なお、当セグメントに係る研究開発費は、4,550百万円であります。

 

(3) 欧州

 防災商品として耐火性能に加え、屋内用耐火ガラスドア製品の拡充、気候変動(適応)対応製品として停電時の自閉機能に加え耐風性を向上した産業用ドアの開発、気候変動(適応)対応製品として熱還流率を向上させた産業用ドアの開発、また、製品のスマート化推進として住宅モデルデータを活用しスマートな接続が可能となる住宅用開閉機の開発を行いました。

 なお、当セグメントに係る研究開発費は、608百万円であります。

 

(4) アジア

 主に中国、香港、台湾、ベトナムにおいて、防火・遮熱対応のシャッター製品・ドア製品等の開発・改良に注力しています。

 なお、当セグメントに係る研究開発費は、34百万円であります。