第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

〔基本理念〕

ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する

 

〔長期方針〕

① 21世紀に勝ち残る企業基盤を確立する

・品質第一に徹し、魅力ある商品・技術の実現

② 良い社風を築き、地域に信頼される企業を目指す

③ 明るく働きがいのある職場を築く

 

〔サステナビリティ方針〕

ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する

(基本理念がSDGsのアジェンダと重なり、グローバル・グループ内に浸透していることからサステナビリティ方針と位置付けております。)

 

(2)目標とする経営指標

当社は、事業ポートフォリオ変革の拡大による売上高の伸張と、事業基盤の強化・付加価値の向上及び資本効率向上による売上高営業利益率、及び株主資本利益率(ROE)、モビリティの脱炭素化への貢献のためCO₂排出量の削減率を重要な経営指標としております。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

当社グループの主要顧客である自動車産業は、100年に一度の大変革が進行中であり、特にBEV化の流れも継続しております。また、気候危機・生物多様性・食糧難・水不足などの社会課題の国際的な取り組み、AI・デジタル技術の変化など、当社を取り巻く環境は大きく変動しております。環境の変化を成長機会と捉え、経営基盤の強化とともに、足元の収益力・資本効率向上によって原資確保をおこない、成長事業への経営リソーセス投入することなどにより、2030年ビジョンと中期経営計画2025に沿って、持続的成長と企業価値向上に努めてまいります。

一方で、当社は、2024年5月16日に公表した子会社であるファインシンターインドネシア株式会社において、棚卸資産の不適切会計の疑いを認識したことを受け、同年5月23日に外部の専門家から構成される特別調査委員会を設置し、調査を進めてまいりました。その結果、棚卸資産の過大計上が判明いたしました。また、当該調査の過程において、当社国内工場における棚卸資産の過大計上が判明いたしました。これらの原因として、当社グループ内における黒字化に対する強いプレッシャーがあったこと、棚卸資産管理に関する社内規程の整備および運用が不十分であったこと、会議体及び内部監査のモニタリングが機能せず長期にわたり発見できなかったこと等が挙げられますが、これを真摯に受け止め、特別調査委員会からの再発防止策の提言を踏まえて、グループ一体となって以下再発防止策を確実に実行してまいります。

 ①海外子会社における牽制機能の強化

 ②海外子会社との関係性の見直し(双方向の議論、定期的ローテーション等)

 ③当社における役割と責任の明確化

 ④会計ルールの意味についての周知徹底

 ⑤当社グループにおける組織風土の見直し

 ⑥内部監査の強化

 ⑦内部通報制度の充実 

これらの取り組みを通じて、次の成長を確かなものとするための強固な経営基盤を築いてまいります。

 

1.FINE SINTER VISION 2030

▪時代の変革を支えるモノづくり企業としてモビリティの脱炭素化・多様化、人びとの健康及び地球環境に貢献

▪Innovation by 材料技術 × 匠の技 × デジタル技術 × 社会

▪あらゆるステークホルダーのため、一人ひとりがワクワク感を持ち、サステナブルな社会に貢献

 

2.経営目標

 2025年度の経営目標として、売上高は400億円、8%の営業利益、10%のROEを達成し、さらに将来の成長 

につなげることを目指します。具体的には、寄せ停め・ロス低減などによる収益力向上、モノづくり革新など

で競争力の強化と収益性向上を図り、将来の成長に向けた事業ポートフォリオ変革を進めるとともに、持続的

成長に向けESG経営を推進します。

 


3.基本戦略

(1)新規事業分野の拡大

①磁性材製品の拡大

・ハイブリッド車用インバーター部品(リアクトルコア)の拡大

(2024年4月ファインシンター東北新ライン立上げ、次世代リアクトルコア等)

・高付加価値化(リアクトルコア単品からアッセンブリー製品の顧客への提案)

・上記技術を活用したBEV用製品の開発・顧客への提案

 

②鉄道事業の強化

・高シェアの新幹線向けに加え在来線用や海外鉄道向けにビジネスを拡大

・産業用集電部品について鉄道事業の材料と技術、更に自動車焼結部品で培ったネットシェイプ技術を活かし、低コスト化

・創業以来培ってきた集電性・耐摩耗性に関する技術を活かし、高機能・新用途製品の開発・拡販

 

③油圧事業の強化

・手術台や画像診断など医療機器分野の海外を中心とした拡大及びブランド力を活かした高級デンタルチェアのアジアでの拡販

・SDGsの循環型社会構築を意識した小型産廃機器開発や、小型で廉価なクランプユニットの開発とともに産業用機器への活用を図り、顧客価値創造を通じた事業の拡大を図っております。

 

④将来に向けた新規事業分野の開拓(粉末に加工する技術と熱処理技術を活かした昆虫食事業等)

(2)競争力強化

①デジタル技術と匠の技の融合によるモノづくりの革新(「未来Factory」の導入とその技術の展開)

②グローバル最適生産・供給体制

・製品別に「最適生産拠点」の設定、グローバル最適調達を推進

・タイ子会社をアジアの中核工場と位置づけ、タイ子会社第2拠点立上げ

(2024年6月量産品出荷開始、順次生産拡大予定)

 

(3)新規事業分野への原資確保

①徹底的な寄せ停め・整流化の推進

②ロスの撲滅とムダの排除による生産性向上

 

(4)ESG経営

当社の企業理念、「ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する」の実現はESG経営につながります。

 

①環境

・2050年度のカーボンニュートラルに向けた取り組み(主な取り組みは「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください)2023年度までの実績は38.3%削減です。

・廃棄物については、2010年度比で2025年度までに45%削減、2030年度までに50%削減を目標としており、2023年度までの削減実績は60.5%です。

 

②社会

社会との共生・共創

以下の取り組みにより社会とつながることは、刺激や新たな発想などのきっかけとなり、長期的な企業価値向上につながるものと考えております。

・人権や環境等の社会問題への影響を考慮した鉱物調達活動のグローバル推進

・環境保護活動、主体的なボランティア活動や地域社会との交流

エンゲージメントの向上

主な取り組みは「サステナビリティに関する考え方及び取組(2)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」をご参照ください。

 

③ガバナンス

ガバナンス体制の強化 

2024年1月に新設したコーポレートガバナンス部を軸に、グローバルでの風通しのよい風土への改革とコンプライアンス強化、リスク管理体制含めた内部統制の強化に取り組んでまいります。

資本コストを意識した経営

資本コストを上回るROE目標を設定し、収益力向上、競争力の強化及び事業ポートフォリオ変革による利益率と資産効率の向上を通じて、企業価値の最大化を目指してまいります。

また、キャピタルアロケーション方針として、最適資本構成を目指し、営業キャッシュフロー拡大に加えて、政策保有株等の資産処分を原資に、財務基盤の強化、戦略投資や研究開発、人的資本投資、株主還元に適切に配分してまいります。

なお、政策保有株については2024年3月期に19銘柄中、3銘柄を売却、4銘柄について縮減を進めており、2025年3月期までに更に縮減を進める方針を2024年2月取締役会において決議しております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社は、企業理念「ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する」をサステナビリティ方針として、事業を通じて社会課題に貢献し、持続的成長に向けた取り組みを継続しております。

なお、連結グループにおける記載が困難であるため、連結グループにおいて主要な事業を営む提出会社単体の記載としております。

<当社が特定したマテリアリティ>

取締役会にてマテリアリティを特定の上、中期で取り組むべき項目を決定し、貢献するSDGsとの対応関係を整理いたしました。


 

(1)全般的な考え方及び取り組み

①ガバナンス

当社は、サステナビリティの推進を強化するために関連性の強い主管部門を定め、経営会議配下にESG委員会を設置し、取締役会に定期的な報告を行うことで、執行のモニターを行う体制をとり、世界的な情勢や社会の要請、経営の観点から、特に脱炭素社会の実現・人的資本経営の取り組みを拡充しています。

また、全ての事業領域において地球環境を保全すべく、環境活動の指針となる「ファインシンター環境方針」と具体的な「行動指針」のもと、ISO14001に基づいた環境マネジメントシステム(EMS)を構築しています。グループ全体の環境マネジメントサイクルと、拠点ごとの環境マネジメントサイクルを連動させることで、全社員参加の環境活動を展開しています。さらに月1回のマネジメントレビューでは、その環境パフォーマンスを報告し、トップによる環境経営を推進し、中期経営計画に合わせて重要な課題の設定、モニタリング、対応策の推進に取り組んでいます。

その他にも、「ファインシンターグリーン調達ガイドライン」を制定し、仕入先を含めた人権及び環境への取り組みの啓蒙を進めております。

また、当社の「温室効果ガスの削減」の目標設定と達成度合いを第三者の客観的な評価を得ることで、より実効性のあるサステナビリティ経営の実行につなげていくことを企図し、「サステナビリティ・リンク・ローン」を締結しております。なお、本件は環境省が実施する「令和3年度グリーンファイナンスモデル事例創出事業」のモデル事例に選定されております。

 

②戦略

当社では気候変動を重要な経営課題と捉え、マテリアリティ(重要課題)の中に「温室効果ガスの削減」という重点テーマを定め、中長期CO₂排出量目標を策定しております。モノづくり革新やDX推進を通じてCO₂排出量の少ない働き方を促進していくとともに、省エネの焼結炉や水素活用など革新技術の開発や日常改善の加速と、再生可能エネルギーの導入を進め、より温室効果ガスの排出が少ない電動車向け製品の開発などを進めてまいります。活動内容は定期的にモニタリングし、PDCAを着実に回すことにより、目標の達成を進めてまいります。

 

③リスク管理

気候変動や生物多様性におけるリスクや機会について、事業上の課題や、EMS活動を通じた環境側面の影響評価、またステークホルダーからの要望・期待など総合的に勘案して特定し、「環境方針」として全社的に取り組みを進めております。移行リスクでは、炭素税が導入された場合のコスト増やステークホルダーの行動変容への対応遅れなどがインパクトの大きいリスクとして特定され、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用などにより対応してまいります。物理的リスクでは、異常気象の発生頻度が増した場合にサプライチェーンを含めた納品遅延等のリスクが懸念されます。環境変化に応じた最適生産体制の構築などで対応してまいります。

 

④指標及び目標

当社では、気候変動への対応として以下の中長期CO₂排出量目標を策定し、具体的な行動計画に落とし込んで取り組みを進めております。2023年度は、工場内の生産設備における地道な省エネ施策及び生産に応じた焼結炉の寄せ停めや最適稼働調整、省エネ設備更新などにより、Scope1.2で38.3%のCO₂排出量を削減いたしました。(2013年度比)

 

<中長期CO₂排出量目標>

2025年度目標        Scope1.2  40%削減 (2013年比)

2030年度目標        Scope1.2  50%削減 (2013年比)

2050年度目標       Scope1.2  カーボン・ニュートラル

 

<CO₂排出量実績(単位:t-CO₂)>

 

Scope1.2 合計

2013年度(基準年)

45,558

2020年度

26,304

2021年度

27,169

2022年度

25,346

2023年度

28,124

 

 

(2)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

①ガバナンス

当社では、ファインシンターVISION 2030に向けた経営戦略の3本柱の一つにESG経営を据え、このうち、従業員のエンゲージメント向上は企業の経済的・社会的価値の源泉であると位置付け、「ウェルネス経営」と「ダイバーシティ」向上を中心に「人的資本投資の強化」に取り組んでおります。

従業員エンゲージメント向上の総合指標として、また諸施策のモニタリングツールとして、従業員エクスペリエンスを測定する仕組みを導入いたしました。従業員の期待・実感のギャップを数値化し、抽出された課題に取り組んでまいります。

②戦略

<ウェルネス経営>

従業員自らが豊かな人生をデザインし働く幸せを感じる状態を目指し、身体的健康、精神的健康の安定と活力みなぎる活性職場づくりに取り組んでおります。

中期経営戦略である、競争力の向上、事業ポートフォリオ変革、ESG経営を推進するには、変革を推進する人材の確保・育成が課題であり企業理念の実現を目指した変革が必要なことから従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮させるための、人事制度の変革に取り組んでおります。内容としては、企業理念の実現はもとより、「お客様に喜んでいただける製品を提案・提供する」を当社の使命とし、「挑戦(チャレンジ)する、成果にこだわる、成長を実感する」を行動原則として、評価・育成・処遇のサイクルを、効果的に回してまいります。さらに、社会的にニーズが高い、60歳以降の働き方についても、役職やミッションを付与し、評価により処遇を見直す事で、引き続き高いパフォーマンスの発揮とモチベーションの維持向上で、全従業員活躍企業を推進してまいります。また、70歳まで働ける制度や時短勤務制度も併せて検討し、多様性のある働き方も推進してまいります。従業員が自身の将来を見つめ直す機会を提供し、自らのキャリアを主体的にデザインできる制度への移行を進めております。

また、教育体系については、当社特有の技能伝承にも力を注ぎながら、新入社員へのデジタル技術・粉末冶金技術・機械加工技術の一貫教育、各階層に求められる能力発揮に基づいた階層別教育の充実、コンプライアンスを中心とした定期管理職教育などを今後さらに強化してまいります。さらに、今年度は管理監督者のコーチングスキルの向上を目指した研修を取り入れ、職場マネジメント力の向上を図り、風通しの良い職場づくりと従業員エンゲージメントを高めてまいります。

なお、当社は、2024年4月に、従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ(RS)制度を導入いたしました。従業員一人ひとりの頑張りが、会社の収益向上・成長に寄与し、企業価値向上に貢献している実感を醸成し、働きがいにつなげ、それを通じて株主・投資家の皆様への貢献につなげてまいります。

<ダイバーシティの向上>

性別・障がいの有無・国籍等に関わらず、多様な人財が活躍できる風土づくりに取り組んでおります。

こういった取り組みを通じて、社員の学ぶ意欲に応える機会を充実してまいります。

なお、2023年度は、女性社外取締役と若手女性の懇談会の実施、採用時に国籍を問わず、外国籍の方の積極的な採用などに取り組みました。

 

なお、社員が成長し能力を発揮できる環境づくり、社員一人ひとりの多様な働き方を支える取り組みの詳細については、以下、当社ウェブサイトに開示しております。

サステナビリティサイトS(社会)→ https://www.fine-sinter.com/sustainability/society/

③指標及び目標・実績

当社は上記「人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」において、次の指標を用いています。

 

目標

2020年

2021年

2022年

2023年

女性管理職比率

-

2.9

2.8

2.9

3.6

女性育児休業取得率

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

男性育児休業取得率

7.0以上

4.0

26.3

31.6

60.0

男女間の賃金差)※正規雇用労働者
  (男性の賃金に対する女性の賃金の割合)

-

82.0

81.3

82.0

83.0

従業員エンゲージメントEXスコア

-

-

-

-

66.3

 

(注)1 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1企業の概況 5従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

2 従業員エンゲージメント指標としてHRbrain社の従業員エクスペリエンスを指標として導入しました。

エンゲージメント向上のツール、諸施策の有効性モニターの指標として活用し、今後の実績、他社平均69.2%

などを参考に別途目標設定を検討いたします。

 

3 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)コンプライアンス

当社グループは事業の遂行にあたり各国の法的規制の適用を受けております。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による罰則・訴訟・社会的制裁を受ける可能性があります。訴訟及び規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

当社グループでは法令に適合することを確保するための体制として、内部統制委員会を設置しており、定期的に取締役会への報告を行っております。また、コンプライアンスの取り組みを横断的に統括する事務局を設置しており、内部統制アンケートの実施などによるコンプライアンスの状況把握、内部通報制度の強化に取り組んでおります。内部通報窓口の更なる拡充、継続的な教育、研修による啓蒙活動でコンプライアンス遵守を強化していきます。

(2)自動車業界への販売依存度

当社グル-プの製品は主としてエンジン部品、ショックアブソーバー部品等の自動車用部品のため、自動車産業の構造変革及び市場縮小等が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの連結売上高に占めるトヨタ自動車及び同社現地子会社の割合は23.5%であります。

当社グループとしては、自動車産業の変革に対応するために、当社の強みである粉末冶金の特性や関連技術を活かし、電動化関連製品の開発を強化する一方、非自動車分野の鉄道車両用部品及び油圧機器製品の開発と拡販の強化、新規分野の開拓を加速すべく、営業・技術が一体となった組織「新規拡販室」を設置し取り組みを進めております。

 

(3) 海外進出に内在するリスク

当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれております。各地域における政治、経済状況の変化等による予期せぬ事象が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、現地の動向は海外拠点スタッフの情報網を積極的に活用する事で適時適切に入手し対応するように努めております。

 

(4) 業界内外の競争に伴うリスク

当社グループが身を置く業界の競争は非常に厳しく、競合他社は国内外の多岐にわたります。顧客のニーズを満たした製品の開発・製造・販売に努めておりますが、競合他社との競争に打ち勝てない場合は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、デジタル設計から実証加工、電動化製品の開発から量産までそれぞれを担う専任組織と、開発・生産技術・金型部門を統合した「テクニカルセンター」を設けており、開発力の強化と開発から量産化までの加速を進めております。

 

(5) 原材料の仕入に係る仕入価格の変動及び人権に関わるリスク

当社グループでは、粉末冶金製品の原材料として鉄粉等の金属粉を使用していますが、これらの原料価格が高騰し、製品価格に反映することが困難な場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、供給元の不慮の事故や資源国の政治・経済状況、労務管理面での人権侵害などにより、原材料・部品の不足や当社グループの企業イメージ毀損などが生じる可能性があります。その場合は生産の遅れによる原価上昇、株価低迷や投資家の投資撤退などの可能性があります。

当社グループとしては、製品歩留りの向上による原材料使用量の低減や市況の変動が大きく資源国での人権侵害リスクの高いコバルトの添加不要材料の開発・提案、人権や環境等の社会問題の影響を考慮した鉱物調達活動などを推進し、リスク低減を図っております。

 

(6) 為替変動によるリスク

当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算されています。従いまして、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

なお、為替変動による通期連結営業利益への影響は、1円/$あたり約10百万円です。

当社グループとしては、ものづくり改革や自動化等の合理化推進等により、円高進行時でも利益確保できる体質構築に努めております。

(7) 感染症拡大に関するリスク

感染症の拡大に伴う製品需要の低迷、生産の停滞などが継続する場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

当社グループとしては、感染拡大防止のため、衛生管理の徹底や必要に応じテレワーク等の事業運営を実施するとともに、有事の際、稼働日数調整や開発費以外の固定費削減及び機動的な短期資金調達などの対応で、リスクの最小化に努めてまいります。

 

(8) 気候変動

気候変動がもたらすリスクは、製品の開発設計から調達・生産・物流・販売まで、企業活動全般にわたって存在しており、異常気象による災害リスクがもたらす生産影響、規制強化によるコスト増等は企業活動を停滞させる恐れがあります。

当社グループとしては、気候変動対応への取り組みとして、2050年度カーボンニュートラルに向けた長期ビジョンを策定し、2025年度までにCO₂を40%、2030年度までに50%削減する目標の達成に向けて、省エネ技術の開発など当社グループ一丸となって推進しております。また、電動車両搭載製品や鉄道車両用製品への売上構成比を高めてまいります。

 

(9) 退職給付債務

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率などの数理計算上の前提条件や年金資産の長期期待収益率に基づいて算出されております。従いまして、割引率の低下や年金資産の減少など実際の結果が前提条件と異なる場合は、将来の期間に認識される費用及び計上される債務に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、年金資産の運用にあたり、分散投資や運用状況の定期的モニター等により、リスクの低減に努めております。

 

(10) 情報セキュリティ

当社グループは、技術情報などの情報資産のデータ処理を行っていますが、不測の事態によって外部からのコンピュータウィルスの感染やハッキングの被害、サーバ及びネットワーク機器の障害やシステム障害の発生による業務停止や情報の外部漏洩等の事態が発生する可能性があり、それに伴い当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、情報セキュリティリスクの評価・分析と状況の把握を行い、段階的なセキュリティ強化に取り組んでいます。引き続き、人的・組織的対策、技術的対策を講じ、更なるセキュリティのレベルアップ、強化に取り組んでまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(経営成績等の状況の概要)

(1) 業績

当連結会計年度における国際情勢は、国内で新型コロナウイルス感染症の5類への移行により社会、経済活動が正常化に向かう一方、原材料やエネルギー価格の高止まり、中国経済の減速やウクライナ・中東情勢等地政学リスク、インフレ収束に向けた各国政策等、引き続き先行き不透明な状況が続いております。

当社グループの主要取引先である自動車産業では半導体供給不足による生産調整が解消しつつも、中国においては自動車市場構造の急激な変化に伴う日系顧客での販売不振・減産の影響が進行しております。また、東南アジアにおいても、自動車ローン金利上昇の影響等により、為替の影響を除いた販売量は前年度を下回っております。

こうした状況の中、当社では、全社をあげて生産性の向上、徹底した原価改善に取り組んでまいりました。当連結会計年度の業績は、売上高は423億90百万円(前年度比6.8%増)となり、営業利益は4億13百万円と前年度に比べ14億54百万円の増益となりました。また、為替変動に伴う為替差益3億94百万円の計上等により、経常利益は3億69百万円と前年度に比べ14億19百万円の増益となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は、資本効率向上に向けた政策保有株式の縮減方針に沿った投資有価証券の売却による特別利益1億92百万円を計上したものの、減損損失により特別損失8億52百万円を計上したことにより5億93百万円と前年度に比べ21億39百万円の増益となりました。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

①自動車焼結事業

当連結会計年度においては、売上は半導体不足に伴う減産影響の解消が本格的に進み、国内や米国自動車向け製品の販売量が回復したことに加え、為替の影響もあり増収となりました。

利益面では、原材料やエネルギー価格高騰の販売価格への調整や、国内を中心とした収益構造改善及び米国のロス低減が進み、中期戦略に沿ったタイ第2拠点の操業前費用、DX投資等、固定費増加の影響を吸収し、増益となりました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は384億17百万円と前年度と比べ24億14百万円6.7%)の増収となり、セグメント利益につきましては、19億99百万円と前年度と比べ18億10百万円958.3%)の増益となりました。

 

②鉄道焼結事業

新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う減便の影響もなくなり、第3四半期から引き続き受注が増加傾向となっており、増収増益となりました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は22億61百万円と前年度と比べ7億69百万円51.6%)の増収となり、セグメント利益につきましては、4億89百万円と前年度と比べ2億81百万円135.7%)の増益となりました。

 

③油圧機器製品事業

主要取引先の一つである北米顧客が、新型コロナウイルス感染症による仕入リスク対応のため高めに確保していた安全在庫を、仕入リスク減少により在庫調整を実施したため、減収減益となりました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は17億3百万円と前年度と比べ4億67百万円△21.5%)の減収となり、セグメント利益につきましては、2億96百万円と前年度と比べ2億87百万円△49.2%)の減益となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

   (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、47億44百万円となり、前連結会計年度に比べ29億15百万円増加159.4%増)となりました。これは主に、自動車焼結事業を中心とした、販売量が回復したことに加え、原価改善、エネルギー価格高騰の販売価格への調整等による税金等調整前当期純損失の減少によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、51億57百万円となりました。主な内訳は、政策保有株縮減方針に沿った投資有価証券の売却収入2億94百万円と、タイ第2拠点関連設備、国内子会社の磁性材製品(ハイブリッド車用インバーター部品)用新規ライン及び未来Factoryなど有形固定資産取得による支出の増加によるものであります。なお、設備投資額の増加に伴い、前連結会計年度に比べ14億66百万円増加39.7%増)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果減少した資金は、1億55百万円となりました。主な内訳は、上記有形固定資産取得のための長期借入金による収入が32億3百万円増加の一方、短期借入金を5億29百万円縮減、長期借入金を24億61百万円返済、自己株式取得と配当金を合わせて2億40百万円の支出をしたことによるものであります。なお、前連結会計年度と比較しますと、4億60百万円の減少となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

自動車焼結事業

38,413,899

6.1

鉄道焼結事業

2,269,761

67.5

油圧機器製品事業

1,747,145

△18.2

合計

42,430,806

6.9

 

(注) 金額は販売価格によっております。

 

(2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

自動車焼結事業

38,542,678

7.3

3,336,053

3.9

鉄道焼結事業

2,398,299

63.1

250,000

121.2

油圧機器製品事業

1,722,842

△18.4

143,000

15.3

合計

42,663,820

8.0

3,729,053

8.2

 

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

自動車焼結事業

38,417,201

6.7

鉄道焼結事業

2,261,299

51.6

油圧機器製品事業

1,703,842

△21.5

その他

8,625

△9.4

合計

42,390,968

6.8

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

4,885,077

12.3

4,500,976

10.6

 

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 財政状態の分析

   (資産)

資産は501億96百万円となり、前連結会計年度末に比べ、19億61百万円増加いたしました。主にタイ子会社第2拠点立上げ等に伴う建設仮勘定の増加(前連結会計年度末比20億81百万円増)、政策保有株縮減を上回る株式の評価額上昇に伴う投資有価証券の増加(前連結会計年度末比14億28百万円増)、繰延税金資産の減少(前連結会計年度末比7億9百万円減)によるものであります。

 

(負債)

負債は316億91百万円となり、前連結会計年度末に比べ、7億61百万円増加いたしました。これは、電子記録債務の増加(前連結会計年度末比2億50百万円増)、営業外電子記録債務の減少(前連結会計年度末比3億88百万円減)、中期経営計画に沿ったモノづくり革新用設備投資等による長期借入金の増加(前連結会計年度末比8億36百万円増)によるものであります。

 

(純資産)

純資産は185億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ、12億円増加いたしました。これは、主に円安進行に伴う為替換算調整勘定の増加(前連結会計年度末比6億3百万円増)、その他有価証券評価差額金の増加(前連結会計年度末比10億54百万円増)、利益剰余金の減少(前連結会計年度末比5億93百万円減)によるものであります。

 

(2) 経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社グループは、「中期経営計画2025」の達成に向け、グループ一丸となり「収益力向上」「競争力の強化」「事業ポートフォリオ変革」「ESG経営」に取り組んでおります。当連結会計年度におきましては、「収益力向上」の取り組みとして、2024年1月から推進組織を設置し、生産工程の寄せ停めや整流化に取り組んでおり、25年3月期から効果を出せるように進めております。事業ポートフォリオ変革につきましても、新規拡販室を中心に取り組み加速しております。成長分野である磁性材製品については、新型ハイブリッド車用のインバーター部品の増産を23年年初に開始しており、24年4月には国内子会社に生産ラインを増設しました。鉄道・油圧事業についてはお客様への提案活動含めた取り組みを進めております。競争力強化については、グローバル最適生産の一環で、タイ子会社第2拠点の立上げについて設備面の準備はほぼ完了し、25年3月期後半から出荷を開始し、売上・収益に寄与してまいります。また、デジタル技術と匠の技の融合によるモノづくり革新「未来Factory」の実証を継続し、25年3月期から順次工場へ展開してまいります。併せて、食糧課題対応としての昆虫食事業を含めた新規事業開拓、カーボンニュートラルへの取り組み、人的資本への投資などに積極的にリソーセスを投入し、将来の収益力確保、企業価値向上への取り組みを推進しております。

このような状況の中、当連結会計年度の目標として掲げておりました、連結での売上高400億円、営業利益率2.0%、ROE0.6%に対して、実績は売上高423億円、営業利益率は1.0%、ROEは△3.9%でした。売上高については、前年度比では販売数量増加、業績予想に対しては、中国・アジアでの販売量減少が想定を上回ったものの、円安への為替変動が売上を押し上げ、目標を上回りました。営業利益については、国内子会社での生産上のロスなどで未達となりました。また、資本効率向上策の一環で政策保有株売却及び自社株式取得を行ったものの、固定資産の減損損失計上等で親会社株主に帰属する当期純損失となった影響などで、ROEは目標未達となりました。

2025年3月期以降につきましては、寄せ停め・整流化など収益力向上策、磁性材・鉄道・油圧事業を中心とした成長分野の拡大を中心とした事業ポートフォリオ変革などにより、営業利益率の向上と資産効率の向上を図ってまいります。重要な経営指標の一つであるCO₂排出量削減については、2013年度比で2025年度までに40%削減、2030年度までに50%削減を目標としており、2023年度の実績は、生産設備の寄せ停めや生産量の減少などで38.3%の削減となりました。

当社グループの資金状況は、営業キャッシュ・フローが47億44百万円に加え、借入金及び政策保有株の売却による収入と手元現預金を活用し、タイ子会社の第2拠点新設、国内子会社における磁性材製品新規ライン設置等の設備投資活動に51億57百万円、自己株式取得を含めた株主還元に2億40百万円支出した結果、現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度より3億81百万円減少し、38億65百万円となりました。

今後の資金需要としましては、国内における「未来Factory」及び新規分野への開発投資、タイ子会社の第2拠点生産準備等に伴う設備投資がありますが、必要資金は自己資金及び借入金に加え、政策保有株式などの資産売却でまかなう予定です。

 

(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5経理の状況1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、(重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

① 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、その回収可能性を考慮して、評価性引当額を計上しております。評価性引当額を計上する際には、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するので、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

② 固定資産の減損損失

当社グループは固定資産の減損会計の適用に際し、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、利益に影響を与える可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

 当社グループは粉末冶金工法を活用した自動車部品、鉄道車両用部品、産業機械用部品等の開発・製造販売、並びに粉末冶金部品を組み込んだ油圧機器製品の開発・製造販売を行っております。
 当連結会計年度における当社グループの研究開発活動の金額は609百万円であります。
 
 セグメントごとの研究開発活動状況は以下のとおりであります。
 
① 自動車焼結事業

 当社の強みである材料開発技術を用いて開発されたハイブリッド車用インバーター用製品は、計画通り、新世代用部品の増産を2023年度よりファインシンター東北㈱にて開始し、年間380万台規模まで拡大しました。なお、今回増産した本新世代用部品は、2023年度粉末冶金工業会賞を受賞しました。直近のB(バッテリー)EVの鈍化傾向が見られる反面、好調なハイブリッド車開発を支える高性能な次世代向け材料及び関連部品開発も加速しており、培ってきた磁性材料開発を活かしたBEV部品への応用を進め、電動車2極化への対応にも備えています。

 また、電動化機能部品で今後も量拡大が期待できる電動パーキングブレーキ構成品は、グローバル3拠点生産で計画通り増産対応を進めています。

 モノづくり革新として進めてきた『未来Factory』は2023年度内に実証ステージを完了し、2024年度より量産を開始いたします。並行して、自動車焼結事業の収益性を高めるため、本社にBR再構築支援室を新設し、国内工場再構築をプロジェクト化して加速しております。

 

② 鉄道焼結事業

 コロナ禍終息に伴う観光産業の回復に伴い、鉄道事業は新幹線関連部品の回復が順調となり、収益を伸ばしました。2023年度は、当社の強みであるカーボン系材料を用いた製品の採用も進んだ事から、更なる拡販に向け製品開発を加速しています。また、事業拡大に向けた次世代新幹線用製品開発と、シェア拡大に向けた既存製品の高性能化開発を、本社開発機能と連携を強化し、新材料開発に加え、デジタル技術を駆使した新形状開発まで積極的に提案を進めています。特に形状提案では、自動車焼結部品で培ったネットシェイプ技術を用いることで、今後も使用量の増加が見込まれる銅製品での銅使用量を削減することができ、環境に配慮した開発に貢献しています。2024年度も引き続き、国内外在来線への拡販、産業用集電部品開発を進めてまいります。

 

③ 油圧機器製品事業
 油圧機器製品は、歯科、画像診断、手術台向けの医療機器、食品機械、設備業界からの多様なニーズに対応した製品開発を行っております。23年度は、設備機器向けに静粛性を高めたタンク一体型ユニットと小型電磁弁を搭載し、顧客要求に合わせた電気制御回路までを含めた設備システムユニットを製品化しました。

 医療機器(主にストレッチャー)向けに高圧小型ノンリークのタンク・シリンダ一体型DC油圧パッケージ及び、AGV(無人搬送機)向けの推力1トンクラスの小型油圧システム(シリンダアセンブリ製品)のブラシレスモータ搭載モデル開発においては耐久評価が終了し、量産化に向けたフェイズへ進めております。

 SDGsの循環型社会構築に向け、既存ユニットを使用した環境関連の小型産廃機器開発は機能評価のフェイズから一次試作へと順調にフェイズを進めております。市場ニーズに応えるアセンブリ製品の開発を加速してまいります。

 

④ 新規事業分野
 上記セグメントの研究開発以外に当社コア技術を最大限に活かした新規事業の開拓を進めております。

 「昆虫食事業」についてはコア技術である粉末加工や熱処理技術を活用したコオロギパウダーの製品化を進めており、地元地域連携活動を軸に新規販売拠点の拡大を行っております。また、食品関連の国際展示会にも出展し更なる拡販展開をしていきます。

 さらに自動車、鉄道、油圧で培った技術の融合を図り、部品メーカーからユニットメーカーへ、BtoBからBtoCへとビジネスモデルの改革を進めています。

 2023年末よりBtoCとしてWEB販売サイト「F!nd8(ファインドエイト)」を立ち上げ、昆虫食製品を始め、当社の焼結製品の販売を開始し、新たなるニーズの獲得を進めてまいります。

 

 上記の活動につきまして、経営リソースを有効に配分し社会変革に追随した事業を開拓し、事業ポートフォリオの変革・拡充を進め、経営目標の達成と企業価値向上を図ってまいります。