第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

〔基本理念〕

ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する

 

〔長期方針〕

① 21世紀に勝ち残る企業基盤を確立する

・品質第一に徹し、魅力ある商品・技術の実現

② 良い社風を築き、地域に信頼される企業を目指す

③ 明るく働きがいのある職場を築く

 

〔サステナビリティ方針〕

ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する

(基本理念がSDGsのアジェンダと重なり、グローバル・グループ内に浸透していることからサステナビリティ方針と位置付けております。)

 

(2)目標とする経営指標

当社は、事業ポートフォリオ変革の拡大による売上高の伸張と、事業基盤の強化・付加価値の向上及び資本効率向上による売上高営業利益率、及び株主資本利益率(ROE)、モビリティの脱炭素化への貢献のためCO₂排出量の削減率を重要な経営指標としております。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

足元の世界情勢は、引き続き不確実性の高い状況が続くと想定しております。また、先進国を中心とした少子高齢化の進行に伴う労働人口の不足や、AIをはじめとするソフトウェア技術の発展に伴い、ビジネスモデルの目まぐるしい変化・進歩が進んでおり、当社の主要顧客である自動車産業は100年に一度の大変革の進行中であります。

こうしたなか、当社グループにおきましては、事業ポートフォリオの変革、特に当社の強みを活かした電動関連製品の付加価値向上や鉄道事業・油圧事業の進展が課題であります。また、こうした成長を支えるため収益力の更なる向上と、全ての源泉となる経営基盤の強化、特にコンプライアンス強化や人的資本投資の推進が重要と考えております。

以下に示すような取り組みを確実に推進するとともに、2030年を見据えて、2028年3月期までの次期中期経営計画の策定を進めており、今年度中に公表できるよう準備を進めております。経営環境の変化や不適切会計の反省を踏まえ、経営基盤の強化に取り組みつつ、財務基盤の建て直しと足元の収益力強化に重点を置き、更に将来の成長への仕込みを行う改革フェーズと位置づけております。

 

また、当社は2024年5月16日に公表した不適切会計に関し、9月30日に再発防止策、12月20日に改善報告書をそれぞれ公表し、グループをあげて再発防止に取り組んでおります。引き続き、コンプライアンス意識向上と風土改革、仕組みの維持・強化、風土改革の継続を軸に経営基盤の強化に取り組んでまいります。

 

1.FINE SINTER VISION 2030

▪時代の変革を支えるモノづくり企業としてモビリティの脱炭素化・多様化、人びとの健康および地球環境に貢献

▪Innovation by 材料技術 × 匠の技 × デジタル技術 × 社会

▪あらゆるステークホルダーのため、一人ひとりがワクワク感を持ち、サステナブルな社会に貢献

 

2.経営目標

2025年度の経営目標として、売上高は400億円、8%の営業利益、10%のROEを達成し、さらに将来の成長につなげることを目指しております。なお、当社は、次期中期経営計画の策定に取り組んでおり、別途経営目標を設定いたします。

 

3.中期経営戦略

コンプライアンス強化・風土改革・人事制度改革など経営基盤の再整備を進めるとともに、収益構造の抜本的改革に優先的に取り組んでリソーセスを生み出し、将来の新事業領域拡大に取り組むことで、企業価値向上を図ってまいります。

 


 

(1)収益構造の抜本的改革

電動化の進展及び新規事業拡大に備えるため、当社では徹底した収益構造の抜本的改革を進めております。特に、自動車焼結事業において、生産量の減少などで不採算となっている製品によるロス、低稼働設備や老朽化設備に伴う生産性のロス解消が課題です。

これらの課題を解決すべく、以下の重点取り組みを加速し、創出したスペースやリソーセスを新規事業分野の拡大に充て、事業ポートフォリオ変革につなげ、企業価値向上に努めてまいります。

① 価格適正化

・お客様との交渉を進め、不採算製品の打切り、永久残置または製品価値に見合った価格への適正化を図る

② 国内拠点再編

・国内の自動車部品生産拠点を6拠点から4拠点に再編し、従業員の作業環境改善と生産性・資産効率の向上及び経営資源の集中を図る

③ 未来ファクトリー展開

・2024年10月より春日井工場にて稼働を開始した、品質ロスが出ない革新的なモノづくりの要素技術を横展開し、ロス低減と生産性向上を図る

 

(2)事業ポートフォリオ変革(新事業拡大)

BEV(バッテリーEV)化進展に向け、当社が培ってきたコア技術を活かして、磁性材・鉄道・油圧の成長事業に重点的にリソーセスを投入し、売上・利益の成長を図ってまいります。また、将来の柱に育てるべく新規事業についても当社のコア技術を活かし、取り組みを進めております。

① 磁性材製品の拡大

[コア技術]

製品性能を向上させる磁気回路設計能力と磁気特性に応じた材料開発技術

[戦 略]

・HEV(ハイブリッド)車用主力製品であるリアクトルコアは、車両換算で380万台相当まで拡大(2024年4月に子会社のファインシンター東北にて生産開始)

・次世代リアクトルコア及び、高付加価値化として取り組んできたアッシー製品の受注を受け、2026年生産開始に向け生産準備中

・更に、BEV市場も見据え、BEV用電磁気製品開発を加速

 

② 鉄道事業の強化

[コア技術]

集電性と耐摩耗性という二律背反の特性を満足させる材料及び工法開発技術

[戦 略]

・次期新幹線製品開発及び、環境性能の高いカーボン系製品の拡販

・成長が見込める海外への販路拡大

・コア技術を活かした集電部品開発など産業機械分野の開拓加速

 

③ 油圧事業の強化

[コア技術]

電動に比べ、高い推力ながら静音かつ低振動性能を実現

[戦 略]

・医療機器にて高いシェアを確保している実績を活かし、国内外へ拡販。特に市場規模の大きい北米をターゲットに推進

・高付加価値化として、環境対応機器や自動化装置などの産業機器製品試作を加速

 

④ 将来に向けた新規事業分野の開拓(粉末に加工する技術と熱処理技術を活かした昆虫食事業等)

[コア技術]

・熱処理技術を活かした「焙煎工法」

[戦 略]

・食の安全・安心・クリーンさ・美味しさを追求して、サプリメント、ペットフード市場を開拓

・事業パートナーや地域との連携にて取り組み推進中

 

(3)ESG経営

当社の企業理念、「ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する」の実現はESG経営につながります。

 

① 環境

・2050年度のカーボンニュートラルに向けた取り組み(主な取り組みは「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください)を推進しており、2024年度までの削減実績は40.8%です。

・廃棄物については、2010年度比で2025年度までに45%削減、2030年度までに50%削減を目標としており、2024年度までの削減実績は44.0%です。

 

② 社会

社会との共生・共創

以下の取り組みにより社会とつながることは、刺激や新たな発想などのきっかけとなり、長期的な企業価値向上につながるものと考えております。

・人権や環境等の社会問題への影響を考慮した鉱物調達活動のグローバル推進

・環境保護活動、主体的なボランティア活動や地域社会との交流

 

エンゲージメントの向上

ウェルネス経営を通じて従業員の働く幸せを追求し、エンゲージメントを高めることが中長期的な企業価値向上につながり、株主をはじめとするステークホルダーの利益につながると考え、人的資本投資に取り組んでおります。

人的資本投資のアウトプットを測る指標として、2023年にエンゲージメントの状況を測るツールを導入し、従業員の期待と満足度を定期的にモニターし、諸施策の評価にもつなげてまいります。

当社では、全従業員活躍企業を目指し、頑張った人が報われる人事制度への改革と60歳以降の働き方の見直しを実現し、多様な働き方の実現に取り組んでおります。

主な取り組みは「サステナビリティに関する考え方及び取組(2)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」をご参照ください。

 

③ ガバナンス

ガバナンス体制の強化

昨年発覚した不適切会計に対する再発防止策を策定し、コンプライアンス意識の向上と風通し良い風土づくり、在庫管理等の仕組みの強化、海外子会社との関係性見直し、牽制機能の強化など、その実行・定着に取り組んでおり、ステークホルダーの皆様の信頼回復に努めております。

 

資本コストを意識した経営

資本コストを上回るROE目標を設定し、収益力向上、競争力の強化及び事業ポートフォリオ変革による利益率と資産効率の向上を通じて、企業価値の最大化を目指してまいります。

また、キャピタルアロケーション方針として、最適な資本構成の実現を目指し、営業キャッシュ・フローの拡大に加え、政策保有株式等の資産処分による資金を原資として、財務基盤の強化、戦略投資、研究開発、人的資本への投資、株主還元などに対して、適切に資金を配分してまいります。

また、政策保有株式については、株式の政策保有に関する当社方針に基づき、保有の縮減を進めております。これにより、資産効率の向上、財務体質の強化および企業価値の向上を図っております。

当事業年度においては、9銘柄の売却および2銘柄の保有割合縮減を実施いたしました。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社は、企業理念「ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する」をサステナビリティ方針として、事業を通じて社会課題に貢献し、持続的成長に向けた取り組みを継続しております。

なお、連結グループにおける記載が困難であるため、連結グループにおいて主要な事業を営む提出会社単体の記載としております。

<当社が特定したマテリアリティ(重要課題)>

取締役会にてマテリアリティを特定の上、中期で取り組むべき項目を決定し、貢献するSDGsとの対応関係を整理いたしました。


 

(1)全般的な考え方及び取り組み

①ガバナンス

当社は、サステナビリティの推進を強化するために関連性の強い主管部門を定め、経営会議配下にESG委員会を設置し、取締役会に定期的な報告を行うことで、執行のモニターを行う体制をとり、世界的な情勢や社会の要請、経営の観点から、特に脱炭素社会の実現・人的資本経営の取り組みを拡充しています。

また、全ての事業領域において地球環境を保全すべく、環境活動の指針となる「ファインシンター環境方針」と具体的な「行動指針」のもと、ISO14001に基づいた環境マネジメントシステム(EMS)を構築しています。グループ全体の環境マネジメントサイクルと、拠点ごとの環境マネジメントサイクルを連動させることで、全社員参加の環境活動を展開しています。さらに月1回のマネジメントレビューでは、その環境パフォーマンスを報告し、トップによる環境経営を推進し、中期経営計画に合わせて重要な課題の設定、モニタリング、対応策の推進に取り組んでいます。

その他にも、「ファインシンターグリーン調達ガイドライン」を制定し、仕入先を含めた人権及び環境への取り組みの啓蒙を進めております。

また、当社の「温室効果ガスの削減」の目標設定と達成度合いを第三者の客観的な評価を得ることで、より実効性のあるサステナビリティ経営の実行につなげていくことを企図し、「サステナビリティ・リンク・ローン」を締結しております。なお、本件は環境省が実施する「令和3年度グリーンファイナンスモデル事例創出事業」のモデル事例に選定されております。

 

②戦略

当社では気候変動を重要な経営課題と捉え、マテリアリティの中に「温室効果ガスの削減」という重点テーマを定め、中長期CO₂排出量目標を策定しております。モノづくり革新やDX推進を通じてCO₂排出量の少ない働き方を促進していくとともに、省エネの焼結炉や水素活用など革新技術の開発や日常改善の加速と、再生可能エネルギーの導入を進め、より温室効果ガスの排出が少ない電動車向け製品の開発などを進めてまいります。活動内容は定期的にモニタリングし、PDCAを着実に回すことにより、目標の達成を進めてまいります。

 

③リスク管理

気候変動や生物多様性におけるリスクや機会について、事業上の課題や、EMS活動を通じた環境側面の影響評価、また、ステークホルダーからの要望・期待など総合的に勘案して特定し、「環境方針」として全社的に取り組みを進めております。移行リスクでは、炭素税が導入された場合のコスト増やステークホルダーの行動変容への対応遅れなどがインパクトの大きいリスクとして特定され、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用などにより対応してまいります。物理的リスクでは、異常気象の発生頻度が増した場合にサプライチェーンを含めた納品遅延等のリスクが懸念されます。環境変化に応じた最適生産体制の構築などで対応してまいります。

 

④指標及び目標

当社では、気候変動への対応として以下の中長期CO₂排出量目標を策定し、具体的な行動計画に落とし込んで取り組みを進めております。2024年度は、工場内の生産設備における地道な省エネ施策及び生産に応じた焼結炉の寄せ停めや最適稼働調整、省エネ設備更新などにより、Scope1.2で40.8%のCO₂排出量を削減いたしました。(2013年度比)

 

<中長期CO₂排出量目標>

2025年度目標        Scope1.2  40%削減 (2013年比)

2030年度目標        Scope1.2  50%削減 (2013年比)

2050年度目標       Scope1.2  カーボン・ニュートラル

 

<CO₂排出量実績(単位:t-CO₂)>

 

Scope1.2 合計

2013年度(基準年)

45,558

2021年度

27,169

2022年度

25,346

2023年度

28,124

2024年度

26,991

 

 

(2)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

①ガバナンス

当社では、FINE SINTER VISION 2030に向けた経営戦略の3本柱の一つにESG経営を据え、このうち、従業員のエンゲージメント向上は企業の経済的・社会的価値の源泉であると位置付け、「ウェルネス経営」と「ダイバーシティ」向上を中心に「人的資本投資の強化」に取り組んでおります。

従業員エンゲージメント向上の総合指標として、また、諸施策のモニタリングツールとして、従業員エクスペリエンスを測定する仕組みを導入しております。従業員の期待・実感のギャップを数値化し、抽出された課題に取り組んでおります。

②戦略

<ウェルネス経営>

従業員自らが豊かな人生をデザインし働く幸せを感じる状態を目指し、身体的健康、精神的健康の安定と活力みなぎる活性職場づくりに取り組んでおります。

中期経営戦略である、競争力の向上、事業ポートフォリオ変革、ESG経営を推進するためには、変革を推進する人材の確保・育成と企業理念の実現を目指した変革が必要なことから、従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮させるための、人事制度の変革に取り組んでおります。内容としては、企業理念の実現に基づき、「お客様に喜んでいただける製品を提案・提供する」を当社の使命とし、「挑戦(チャレンジ)する、成果にこだわる、成長を実感する」を行動原則として、評価・育成・処遇のサイクルを、効果的に回してまいります。さらに、社会的にニーズが高い、60歳以降の働き方についても、2025年4月より新継続雇用制度の運用を開始し、役職やミッションを付与し、その貢献度の評価により処遇を見直す事で、引き続き高いパフォーマンスの発揮とモチベーションの維持向上を図り、全従業員活躍企業を目指す取り組みを推進してまいります。また、併せて70歳まで働ける嘱託制度の運用を始め、多様性のある働き方も推進しております。これからも、外国人労働者やAI・システムなどの専門分野の人材(DX人材)の採用を推進して、多様性と専門性の強化を図ってまいります。

教育体系については、当社特有の技能伝承にも力を注ぎながら、新入社員へのデジタル技術・粉末冶金技術・機械加工技術の一貫教育、各階層に求められる能力発揮に基づいた階層別教育の充実、コンプライアンスを中心とした定期管理職教育などを今後さらに強化してまいります。さらに、今年度は管理監督者のコーチングスキルの向上を目指した研修を取り入れ、職場マネジメント力の向上を図り、風通しの良い職場づくりと従業員エンゲージメントを高めてまいります。また、従業員が自身の将来を見つめ直す、キャリアデザイン研修を開催して、自らのキャリアを主体的にデザインできる取り組みを推進してまいります。

なお、当社は、2024年4月に、従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ(RS)制度を導入いたしました。従業員一人ひとりの頑張りが、会社の収益向上・成長に寄与し、企業価値向上に貢献している実感を醸成し、働きがいにつなげ、それを通じて株主・投資家の皆様への貢献につなげてまいります。

<ダイバーシティの向上>

性別・障がいの有無・国籍等に関わらず、多様な人財が活躍できる風土づくりに取り組んでおります。

こうした取り組みを通じて、社員の学ぶ意欲に応える機会を充実してまいります。

なお、採用時に国籍を問わず、外国籍の方の積極的な採用などに取り組んでおります。

 

なお、社員が成長し能力を発揮できる環境づくり、社員一人ひとりの多様な働き方を支える取り組みの詳細については、以下、当社ウェブサイトに開示しております。

サステナビリティサイトS(社会)→ https://www.fine-sinter.com/sustainability/society/

③指標及び目標・実績

当社は上記「人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」において、次の指標を用いています。

 

目標

2021

2022

2023年

2024年

女性管理職比率

-

2.8

2.9

3.6

4.4

女性育児休業取得率

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

男性育児休業取得率

7.0以上

26.3

31.6

60.0

73.3

男女間の賃金差)※正規雇用労働者
  (男性の賃金に対する女性の賃金の割合)

-

81.3

82.0

83.0

83.3

従業員エンゲージメントEXスコア

-

-

-

66.3

62.4

 

(注)1 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1企業の概況 5従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

2 従業員エンゲージメント指標としてHRbrain社の従業員エクスペリエンスを指標として導入しました。

エンゲージメント向上のツール、諸施策の有効性モニターの指標として活用し、今後の実績、他社平均70.8%などを参考に別途目標設定を検討いたします。

 

3 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)コンプライアンス

当社グループでは事業の遂行にあたり各国の法的規制の適用を受けております。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による罰則・訴訟・社会的制裁を受ける可能性があります。訴訟及び規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。法令に適合することを確保するための体制として、内部統制委員会を設置しており、定期的に取締役会への報告を行っております。また、昨年発覚した不適切会計に対する再発防止策として、コンプライアンス・リスク管理研修や内部統制アンケートの実施、内部通報制度の強化等に取り組んでおります。今後、実施した再発防止策を継続実施し、社内定着を図ってまいります。

今後は、継続的な教育、研修による啓蒙活動でコンプライアンス遵守を強化してまいります。

 

(2)自動車業界への販売依存度

当社グループの製品は主としてエンジン部品、ショックアブソーバー部品等の自動車用部品のため、自動車産業の構造変革及び市場縮小等が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの連結売上高に占めるトヨタ自動車及び同社現地子会社の割合は20.1%であります。

当社グループとしては、自動車産業の変革に対応するために、当社の強みである粉末冶金の特性や関連技術を活かし、電動化関連製品の開発を強化する一方、非自動車分野の鉄道車両用部品及び油圧機器製品の開発と拡販の強化、新規分野の開拓を加速すべく、営業・技術が一体となった組織「新規拡販室」を設置し取り組みを進めております。

 

(3)海外進出に内在するリスク

当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれております。各地域における政治、経済状況の変化等による予期せぬ事象が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、現地の動向は海外拠点スタッフの情報網を積極的に活用する事で適時適切に入手し対応するように努めております。

 

(4)業界内外の競争に伴うリスク

当社グループが身を置く業界の競争は非常に厳しく、競合他社は国内外の多岐にわたります。顧客のニーズを満たした製品の開発・製造・販売に努めておりますが、競合他社との競争に打ち勝てない場合は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、デジタル設計から実証加工、電動化製品の開発から量産までそれぞれを担う専任組織と、開発・生産技術部門を統合した「テクニカルセンター」を設けており、開発力の強化と開発から量産化までの加速を進めております。

 

(5)原材料の仕入に係る仕入価格の変動及び人権に関わるリスク

当社グループでは、粉末冶金製品の原材料として鉄粉等の金属粉を使用していますが、これらの原料価格が高騰し、製品価格に反映することが困難な場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、供給元の不慮の事故や資源国の政治・経済状況、労務管理面での人権侵害などにより、原材料・部品の不足や当社グループの企業イメージ毀損などが生じる可能性があります。その場合は生産の遅れによる原価上昇、株価低迷や投資家の投資撤退などの可能性があります。

当社グループとしては、製品歩留りの向上による原材料使用量の低減や市況の変動が大きく資源国での人権侵害リスクの高いコバルトの添加不要材料の開発・提案、人権や環境等の社会問題の影響を考慮した鉱物調達活動などを推進し、リスク低減を図っております。

 

(6)為替変動によるリスク

当社グループの事業には、海外における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算されています。従いまして、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

なお、為替変動による通期連結営業利益への影響は、1円/$あたり約10百万円です。

当社グループとしては、ものづくり改革や自動化等の合理化推進等により、円高進行時でも利益確保できる体質構築に努めております。

 

(7)感染症拡大に関するリスク

感染症の拡大に伴う製品需要の低迷、生産の停滞などが継続する場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

当社グループとしては、感染拡大防止のため、衛生管理の徹底や必要に応じテレワーク等の事業運営を実施するとともに、有事の際、稼働日数調整や開発費以外の固定費削減及び機動的な短期資金調達などの対応で、リスクの最小化に努めてまいります。

 

 

(8)気候変動

気候変動がもたらすリスクは、製品の開発設計から調達・生産・物流・販売まで、企業活動全般にわたって存在しており、異常気象による災害リスクがもたらす生産影響、規制強化によるコスト増等は企業活動を停滞させる恐れがあります。

当社グループとしては、気候変動対応への取り組みとして、2050年度カーボンニュートラルに向けた長期ビジョンを策定し、2025年度までにCO₂を40%、2030年度までに50%削減する目標の達成に向けて、省エネ技術の開発など当社グループ一丸となって推進しております。また、電動車両搭載製品や鉄道車両用製品への売上構成比を高めてまいります。

 

(9)退職給付債務

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率などの数理計算上の前提条件や年金資産の長期期待収益率に基づいて算出されております。従いまして、割引率の低下や年金資産の減少など実際の結果が前提条件と異なる場合は、将来の期間に認識される費用及び計上される債務に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、年金資産の運用にあたり、分散投資や運用状況の定期的モニター等により、リスクの低減に努めております。

 

(10)情報セキュリティ

当社グループは、技術情報などの情報資産のデータ処理を行っていますが、不測の事態によって外部からのコンピュータウィルスの感染やハッキングの被害、サーバー及びネットワーク機器の障害やシステム障害の発生による業務停止や情報の外部漏洩等の事態が発生する可能性があり、それに伴い当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、情報セキュリティリスクの評価・分析と状況の把握を行い、段階的なセキュリティ強化に取り組んでいます。引き続き、人的・組織的対策、技術的対策を講じ、更なるセキュリティのレベルアップ、強化に取り組んでまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(経営成績等の状況の概要)

(1) 業績

当連結会計年度における世界経済は、米国の堅調な拡大、中国の景気減速、欧州の停滞等、地域による違いはありましたが、全体として底堅さを維持しました。一方、地政学的な緊張と景気後退への懸念継続に加え、米政権の通商政策をはじめ、世界各国での経済政策の転換により、不確実性が高まっております。

当社では、昨年発覚した不適切会計に対する再発防止策を策定し、コンプライアンス意識の向上と風通しの良い風土づくり、在庫管理等の仕組みの強化、海外子会社との関係性見直し、牽制機能の強化など、その実行・定着に取り組んでおり、ステークホルダーの皆様の信頼回復に努めております。

また、自動車産業の急激な変化が進み、不確実性が高まるなか、企業理念「ものつくりを通し、すみよい社会と人々の幸せに貢献する」に基づき、電動関連製品の拡大、鉄道焼結事業・油圧機器製品事業の拡販など事業ポートフォリオ変革や、徹底的なロス低減、「未来Factory」によるモノづくり革新、国内拠点の再編や不採算製品の改善等による収益力向上、資本コストを意識した経営などに取り組んでおります。特に電動関連製品については昨年4月から東北子会社においてハイブリッド車用インバーター部品(リアクトルコア)の新規生産ラインの稼働を開始し、更に次世代製品や高付加価値品の生産準備を進めております。また、昨年生産を開始したタイ第2拠点はフル生産に入っており、未来Factoryの量産展開を始めております。資本効率に関しては、政策保有株式の縮減方針に沿って保有意義の認められない株式について順次売却を進めております。

こうしたなか、当連結会計年度の業績は、売上高は427億20百万円(前年度比0.8%増)となり、営業利益は6億83百万円と前年度に比べ2億70百万円の増益となりました。また、経常利益は4億72百万円と前年度に比べ1億3百万円の増益となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は、不適切会計特別調査委員会設置に伴う調査関連費用並びに過年度決算訂正関連費用5億40百万円に加えて、中期戦略に沿った国内拠点再編等に伴う固定資産減損損失8億57百万円を計上した一方、資本効率向上に向けた政策保有株式の売却による特別利益14億62百万円を計上し、結果、2億6百万円となり、前年度に比べ、3億86百万円改善しました。

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

①自動車焼結事業

当連結会計年度においては、売上は日本・北米における顧客稼働停止の影響などにより、販売量は減少したものの、為替の影響を含めると増収となりました。利益面では、原材料やエネルギー価格高騰の販売価格への調整や、国内を中心とした収益構造改善及び米国のロス低減進捗、前述のリアクトルコアの新規ライン生産開始、タイ第2拠点の本格生産開始などが寄与し、また、当社での有形固定資産の減価償却方法変更の影響も加わり、増益となりました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は384億58百万円と前年度と比べ41百万円0.1%)の増収となり、セグメント利益につきましては、22億23百万円と前年度と比べ2億24百万円11.2%)の増益となりました。

 

②鉄道焼結事業

主力の新幹線用ブレーキライニングやすり板の受注好調、放電用部品の採用増などにより、増収増益となりました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は23億90百万円と前年度と比べ1億28百万円5.7%)の増収となり、セグメント利益につきましては、5億18百万円と前年度と比べ28百万円5.8%)の増益となりました。

 

③油圧機器製品事業

デンタルチェア用製品の北米及びアジア向けの売上増が寄与し増収増益となりました。

この結果、当連結会計年度における売上高は18億66百万円と前年度と比べ1億62百万円9.5%)の増収となり、セグメント利益につきましては、売上増と原価改善効果により、4億19百万円と前年度と比べ1億22百万円41.3%)の増益となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、8億14百万円となり、前連結会計年度に比べ39億29百万円減少(82.8%減)となりました。これは主に価格是正の期末集中等による売上債権の増減額の増加、パートナーシップ宣言に基づく支払サイト短縮による仕入債務の増減額の減少、並びに特別調査委員会設置に伴う過年度決算訂正関連費用等の支払額発生によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、5億44百万円となり、前連結会計年度に比べ46億12百万円減少(89.4%減)となりました。これは主に設備投資の減少による有形及び無形固定資産の取得による支出の減少及び政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券の売却収入の増加によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は8百万円(前年同期は1億55百万円の支出)となり、前連結会計年度に比べ1億64百万円増加となりました。これは主に長期借入れによる収入の減少に対し、短期借入金の減少額が縮小したことによるものであります。なお、長期借入れによる収入は、前連結会計年度ではタイ第2拠点新設に伴う資金調達による増加がありましたが、当連結会計年度では国内を通常投資に伴う資金調達のみへ抑制したことにより、減少いたしました。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

自動車焼結事業

38,532,485

0.3

鉄道焼結事業

2,400,344

5.8

油圧機器製品事業

1,842,802

5.5

合計

42,775,632

0.8

 

(注) 金額は販売価格によっております。

 

(2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

自動車焼結事業

38,603,924

0.2

3,481,224

4.4

鉄道焼結事業

2,330,115

△2.8

190,000

△24.0

油圧機器製品事業

1,860,111

8.0

136,713

△4.4

合計

42,794,151

0.3

3,807,937

2.1

 

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

自動車焼結事業

38,458,753

0.1

鉄道焼結事業

2,390,115

5.7

油圧機器製品事業

1,866,398

9.5

その他

5,121

△40.6

合計

42,720,389

0.8

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

㈱デンソー

4,227,079

9.9

4,715,225

11.0

トヨタ自動車㈱

4,500,976

10.6

4,103,931

9.6

 

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 財政状態の分析

(資産)

資産は478億35百万円となり、前連結会計年度末に比べ、23億61百万円減少いたしました。これは、主に政策保有株式の縮減等に伴う投資有価証券の減少(前連結会計年度末比23億92百万円減)によるものであります。

 

(負債)

負債は308億41百万円となり、前連結会計年度末に比べ、8億49百万円減少いたしました。これは、電子記録債務の減少(前連結会計年度末比4億23百万円減)、退職給付に係る負債の減少(前連結会計年度末比5億48百万円減)によるものであります。

 

(純資産)

純資産は169億93百万円となり、前連結会計年度末に比べ、15億11百万円減少いたしました。これは、主に政策保有株式の縮減に伴うその他有価証券評価差額金の減少(前連結会計年度末比14億67百万円減)によるものであります。

 

 

(2) 経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社グループは、グループ一丸となり「経営基盤の再整備」「収益構造の抜本的改革」「事業ポートフォリオ変革」に取り組んでおります。当連結会計年度におきましては、「収益構造の抜本的改革」の取り組みとして、BEV化を見据えて資産効率・生産性向上を狙いとして、自動車部品製造拠点を6拠点から4拠点に再編する意思決定を2024年8月に行い、その準備を進めております。また、少量不採算品に対して生産打切り・価格の適正化含めた改善を進めております。更に、デジタル技術と匠の技の融合によるモノづくり革新「未来Factory」について、2024年10月から量産工程に展開しており、今後、他工場にその要素技術を順次展開してまいります。

事業ポートフォリオ変革につきましては、成長分野である磁性材製品について、新型ハイブリッド車用のインバーター部品の新規ラインを2024年4月に国内子会社に増設し、更に次世代ユニット用製品や、当社が設計から行った高付加価値のユニットについても量産の準備を進めております。鉄道・油圧事業についてはコア技術を活かした海外への拡販・産業機器分野の開拓など、お客様への提案活動含めた取り組みを進めております。

タイ子会社第2拠点については、2024年11月に本格生産を開始し、2025年3月期の売上・利益に貢献しました。

このような状況の中、当連結会計年度の目標として掲げておりました、連結での売上高410億円、営業利益3億円、ROE△2.6%に対して、実績は売上高427億円、営業利益は6億83百万円、ROEは△1.4%でした。売上高については、前年度比では日本・北米の顧客の稼働停止の影響や北米での製品構成の変化などにより、販売数量減少、業績予想に対しては、全般に販売量が増加したことに加え、円安への為替変動が売上を押し上げ、目標を上回りました。営業利益については、計画に対する販売量の増加に加え、全社をあげた原価改善の取組みや、不採算品の価格調整交渉の進展等により、業績予想を上回りました。これらの取組みの継続・強化などにより、営業利益率や総資産回転率を改善し、ROE改善につなげてまいります。

親会社株主に帰属する当期純損失については、拠点再編の意思決定に伴う固定資産減損損失と不適切会計特別調査委員会の調整費用や過年度決算訂正費用の損失を計上した一方で、資本効率向上策の一環で政策保有株式売却が進んだことなどで業績予想を上回りました。

2026年3月期以降につきましては、拠点再編、不採算品対策など収益構造改革、磁性材・鉄道・油圧事業を中心とした成長分野の拡大を中心とした事業ポートフォリオ変革などにより、引き続き営業利益率の向上と資産効率の向上を図ってまいります。重要な経営指標の一つであるCO₂排出量削減については、2013年度比で2025年度までに40%削減、2030年度までに50%削減を目標としており、2024年度の実績は、生産設備の寄せ停めや生産量の減少などで40.8%の削減となりました。

当社グループの資金状況は、営業キャッシュ・フローが8億14百万円に加え、政策保有株式の売却による収入を活用し、事業ポートフォリオ変革の一つの柱である新世代ハイブリッド車用磁性材製品用新規ライン設置や収益力向上のための未来Factoryの取組み等の投資キャッシュ・フローで5億44百万円、株主還元に1億26百万円を支出した結果、現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度より2億54百万円増加し、41億19百万円となりました。なお、2025年3月期の営業キャッシュ・フローについて、前期より大幅に減少しておりますが、これは、パートナーシップ宣言に基づく仕入先への支払いサイト短縮や販売価格適正化の調整が期末に集中したことなどの一時的な影響によるもので、実質的な稼ぐ力は改善しつつあり、引き続き強化をしてまいります。

今後の資金需要としましては、国内における磁性材製品の高付加価値品や新規分野への開発投資等に伴う設備投資がありますが、必要資金は自己資金及び借入金に加え、政策保有株式などの資産売却でまかなう予定です。

 

(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、(重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

① 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、その回収可能性を考慮して、評価性引当額を計上しております。評価性引当額を計上する際には、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するので、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

② 固定資産の減損損失

当社グループは固定資産の減損会計の適用に際し、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、利益に影響を与える可能性があります。

 

5 【重要な契約等】

当連結会計年度において、重要な契約等はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

 当社グループは粉末冶金工法を活用した自動車部品、鉄道車両用部品、産業機械用部品等の開発・製造販売、並びに粉末冶金部品を組み込んだ油圧機器製品の開発・製造販売を行っております。
 当連結会計年度における当社グループの研究開発活動の金額は486百万円であります。
 
 セグメントごとの研究開発活動状況は以下のとおりであります。
 
① 自動車焼結事業

 2018年より生産を開始したハイブリッド車(HEV)用インバータ製品は、計画的な量対応を進めています。更に、市場から要求されるインバータの小型・高性能化にも、当社の磁性材製品設計技術を活かし、2025年度には新世代インバータ製品の量産及び、2026年度には付加価値を高めたHEV用インバータ製品の当社初のアッセンブリ化した製品の量産開始に向け、生産準備を進めています。今後も、BEV(バッテリーEV)やFCEV(燃料電池車)部品への応用を進め、全ての電動車の磁性材製品のラインナップ化を進めていきます。

 今後、モノづくり革新として春日井工場にて進めてきた『未来Factory』の開発で培った要素技術を国内外工場へ横展開を図っていきます。並行して、自動車焼結事業の収益性を高めるために、2024年度より開始した国内工場再構築プロジェクトでは、拠点集約に加え、材料の統廃合や工程見直しなど最適なモノづくりを目指した取り組みを加速しています。

 

② 鉄道焼結事業

 2023年度から引き続き、コロナ禍以降のインバウンド需要に支えられ、鉄道焼結事業は新幹線関連部品の生産が好調となり、収益を伸ばしました。2024年度は、当社が開発した放電用製品の採用拡大により、売り上げ増にも貢献しました。開発では、次世代鉄道車両に求められる高機能・高性能化に対応する為、当社の強みである集電性と耐摩耗性を両立する材料開発と、本社開発機能と連携したデジタル技術を駆使した新形状開発による試作を進め、実車を模擬した性能テスト設備による精度の高い性能評価により、お客様の要求にタイムリーに対応し、拡販を進めています。今後、すり板試験機の更新を行い、更なる開発の信頼性向上とスピードアップを進めていきます。

 

③ 油圧機器製品事業

 油圧機器製品は、当社の強みである小型で静粛性の高い油圧コンポーネントを活かし、歯科・眼科、画像診断、手術台向け医療機器、食品機械、設備業界など多くのお客様からの多様なニーズに対応しながら、次世代製品開発を進めています。2024年度は、医療機器業界向けに開発した小型高圧電磁弁及び、画像診断業界向けに開発した小型電磁弁を搭載したタンク一体型ユニットは、お客様から評価を頂いたので、更なる拡販に向けて、製品PR活動を進めていきます。また、SDGsの循環型社会構築に向け、当社既存の油圧ユニットを使用した小型産廃機器開発は、量産を見据えた二次試作へと順調に開発を進めています。今後も、お客様からのご要望の強いアッセンブリ製品についても、ニーズを満足させる開発を加速してまいります。

 

④ 新規事業分野

 上記セグメントの研究開発以外に、当社のコアコンピタンスを最大限に活用した新規事業の開拓も継続実施しております。

 「昆虫食事業」については、コア技術である粉末加工や熱処理技術を活用したコオロギパウダーの製品化を進めており、特にコオロギ食の本場である欧州の情報収集により日本国内の市場開拓を推進していきます。また、コオロギ食の可能性が高い「ペット関連市場」への展示会にも参加し、可能性の見極めも進めていきます。

 さらに、自動車事業、鉄道事業、油圧事業については、部品メーカーからユニットメーカーへと付加価値を付けたビジネスモデルの改革を進めています。

 

 上記の活動につきまして、経営リソースを有効に配分し社会変革に追随した事業を開拓し、事業ポートフォリオの変革・拡充を進め、経営目標の達成と企業価値向上を図ってまいります。