第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、グループの目指すべき方向を共有し、社会的な責任を全うすることを目的に以下のグループ経営理念を掲げております。

① 熱処理技術を中核として、常に新商品・新事業の開発を進め社会の発展に貢献します。

② 世界をリードする技術力、高品質、高いお客様満足度、そして透明で公正な企業文化を背景に社会から信頼されるパートナーを目指します。

③ たゆまぬ自己変革に努め、常に成長することを目指します。

④ 安全及び健康を基本とし、人を育て、活力ある企業グループを目指します。

⑤ 地球環境との共生を基本とし、企業の社会的責任を果たします。

 

(2) 目標とする経営指標

企業価値の向上を目指し、収益性及び資本効率の向上に注力しております。

具体的には、売上高、営業利益、営業利益率、ROA(総資産経常利益率)、ROE(自己資本当期純利益率)及びROIC(投下資本利益率)を中長期的な経営指標としております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、IH熱処理技術を中核とし、たゆまぬ自己変革に努め、常に成長する活力ある企業グループを目指してまいりました。無公害(Ecological)・省資源(Economical)のダブル・エコ(W-Eco)のIH技術を強みに、長期的な視野のもと環境貢献を重視し、当社グループの10年後のあるべき姿と目指す姿を長期経営ビジョン NETUREN VISION 2030(2021年4月~2031年3月)としてまとめました。

① あるべき姿

企業価値を高め続けるとともに持続可能な社会づくりに貢献する。

② 目指す姿

・CO2排出削減に有効なIH熱処理技術を核とする技術・製品を通じ、企業価値を高めて環境負荷を低減する。

・N-DX(※)の展開を進め、グループ全員の力を結集して進化を続け、グローバルに躍進する。

この長期経営ビジョンのスローガンを「進化と躍進」と定め、ネツレングループが一丸となり、あるべき姿、目指す姿を追求し実現すること、また、総合的に企業価値が向上し、成長していく企業グループになる狙いを込めております。(※)N-DX…NETUREN Digital Transformation

また、上記の長期経営ビジョン NETUREN VISION 2030「進化と躍進」における第2フェーズとして策定した第16次中期経営計画「Aggressive Challenge One NETUREN 2026」(2024年4月より2027年3月までの3ヵ年計画)の2年目を迎え、資本コスト経営(事業ポートフォリオ、ROICの本格導入・展開、キャピタルアロケーション、資本政策・財務戦略)のさらなる強化、推進に取り組むとともに、今まで以上のスピード感を持って、持続可能な社会づくりへの貢献と企業価値向上を目指してまいります。

・基本的な考え方

経営資本を積極的・効率的・有効的に活用し、人財育成を進めながら、新たな成長ドライバーを創生すると共に、現在の成長エンジンをより強く育てることで事業拡大を推進する。

ネツレンブランドの更なる拡大と共に、サステナビリティ経営を推進し、地球環境に配慮した技術・製品を広め、企業価値を高め、社会ニーズに応えていく。

・期間    :2024年4月~2027年3月(3年間)

・スローガン :Aggressive Challenge One NETUREN 2026

・趣旨    :成長・進化・躍進へ グループの総智を繋げ 積極果敢に挑戦しよう

連結経営目標

2027年3月期

売上高

700億円

営業利益

46億円

営業利益率

6.5%

ROE (自己資本当期純利益率)

6.5%以上

ROA (総資産経常利益率)

5.5%以上

ROIC(投下資本利益率)

5.5%以上

 

 

(4) 経営環境及び優先的に対処すべき課題

当社グループを取り巻く経営環境は、国内では、物価上昇の継続や人手不足の深刻化、海外では、中国経済の下振れ懸念やウクライナ紛争の長期化など不安定な地域情勢による地政学リスクの高まり、さらに、米国による関税の引き上げ政策が世界経済に影響を与えており、依然として先行き不透明な状況が続くものと想定しております。

これらの懸念材料が解消するには時間を要することが見込まれることから、しばらくは予断を許さない状況が継続し、当社グループの業績にも影響を与えると想定しております。

このような状況におきまして、当社グループは、第16次中期経営計画の2年目を迎えますが、現状、連結経営目標を下回る水準で推移しております。目標達成に向けて、計画策定時に掲げた基本戦略に基づく諸施策を積極的に実行していくとともに、物価上昇によるコストアップ分の販売価格への転嫁を含めた積極的な営業活動、原価低減活動を引き続き推進してまいります。

第16次中期経営計画に掲げた基本戦略は、以下のとおりであります。

①技術開発:成長ドライバーの創生

強化してきたマーケティング力に基づき、逆T字モデルを活用し、グループ間の力を柔軟に繋げて、新たな事業・新たな製品・新たな技術を創生する。

②事業:成長エンジンの育成

これまでの現場力に新しい技術を繋げて生産技術力を強化し、競争力を向上させるとともに、お客様により満足いただける製品・サービス・技術を提供する。

③グローバル:グローバルマーケットの拡大

CO2削減・地球環境負荷低減に貢献する製品・サービス・技術を中心に、情報ネットワークを繋げて、未開拓地域も含めたグローバル市場の拡大を進める。

④人財:自発的貢献意欲のある人財の育成

多様性を認め合い、常に前向きな思考で自発的貢献意欲のある人財の育成をさらに進め、各々の活躍をネツレングループ全体に繋げて、企業成長を加速する。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ共通

当社グループは、長期経営ビジョン「NETUREN VISION 2030」のもと、SDGsを経営の中心に据えて事業を行っています。昨今の社会環境の変化や、サステナビリティに関する社会からの要請をふまえて、これまでCSR活動として行ってきたテーマを総点検し、気候変動・地球環境への配慮に加えて新たに人権の尊重に関わる活動を織り込み、「ネツレングループサステナビリティ基本方針」を制定しております。

本方針に基づき、当社の事業における重要性が高いマテリアリティ(重要課題)を特定し、整理しました。

 

① ガバナンス

 当社グループにおけるサステナビリティ活動の推進にあたっては、社長執行役員を委員長とし、取締役や監査役(社外を含む)、執行役員、関連部室長等で構成する全社サステナビリティ推進委員会を設置しており、全社サステナビリティ活動の統括、活動計画の立案、取り組みの推進、進捗状況の確認、結果の評価等を行っております。

② 戦略

 当社グループの基幹技術であるIH(誘導加熱)熱処理技術は、CO2の排出量が少ないクリーン技術で、短時間加熱のため生産効率が高く、省エネ化にも寄与しております。当社グループは、社会のさまざまな環境・社会課題を認識し、当社ならではの「ものづくりの力」とサステナビリティ経営により社会に新たな価値を創造し、持続可能な社会づくりに貢献しております。

③ リスク管理

 当社グループでは、「リスクマネジメント基本規程」及び「関係会社管理規程」を定め、管理本部管理部が事務局となって全社的なリスクマネジメントを推進しています。その基本方針は以下の通りです。

(a)リスクマネジメントの実践を通じ、当社事業の継続及び安定的発展を確保する。

(b)製品・サービスの品質及び安全性確保を最優先とし、未然にお客様、株主・投資家、地域社会、地球環境等の各ステークホルダー並びに社員等の利益阻害要因を除去・軽減することに努める。

(c)常に、社会において使用されている製品・サービスを供給する者としての責任を自覚し、高品質の製品・サービスを安定的に供給することを社会的使命として行動する。

(d)社員等はコンプライアンスの精神に則り、各種法令、規則等を遵守し、各人が企業行動倫理基準に即して行動する。

また、当社グループは、サステナビリティに関する環境リスクや雇用・人事リスクなど対象とするリスクを定めており、そのリスクについては定期的なチェックとリスク評価の細分化を実施しております。

④ 指標と目標

 当社グループでは、特定したマテリアリティに対してそれぞれの項目において「指標と目標」を設定しています。2030年にありたい姿を明確にし、日々目標達成に向け取り組んでおります。

マテリアリティ

2030年にありたい姿

目標

CO2削減

地球温暖化を招く温室効果ガス削減のために、省エネルギー対策を推進すると共に、2030年度CO2排出量30%削減を目指す(2013年度比)。

・CO2削減率

前年度比 3%以上

・CO2原単位(kg-CO2/t)

前年度比 3%以上減

人財育成

熱処理技術の習得を行い、卓越したIH・加工技術を軸に材料改質ソリューションを提供。高強度部材を世の中に生み出し、産業と技術革新の基礎を作る。

・年度研修実施率100%

・教育研修の継続と人財育成システム委員会等による育成の仕組み作り

ワークライフバランスの推進

全従業員に働きがいのある仕事の創出と安心して家庭を両立できる職場環境を整備。

・年次有給休暇平均取得日数10日以上

・ワークライフバランス支援策の継続

ダイバーシティーの推進

国籍、人種、性別、年齢を問わず、多様な人財一人ひとりが最大限能力を発揮し、活躍できる企業風土を実現。

・社内における女性の活用を含む多様性の確保と推進

・継続雇用制度による雇用機会の確保

・障がい者雇用法定雇用率2.7%の達成

 

 

(2) 気候変動

当社グループは、企業活動や社会の持続可能な発展は、健全な地球環境の上にこそ成り立つものであると考え、環境保護を自社の社会的使命と認識し、CO2排出削減、資源の保全、汚染防止に努めるとともに、新技術による環境負荷の低減をかなえる新技術・新製品の開発を追求し、地球環境との共生を図っていきます。その中で、当社は気候変動を社会における喫緊の課題であるとともに、経営課題であると認識しております。その一つの取り組みとして、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報を開示することとしました。

① ガバナンス

 当社では、全社サステナビリティ推進委員会が経営・執行役員会議及び全社環境保全委員会と連携し、気候変動関連リスク及び機会への対応方針を審議します。取締役会は、全社サステナビリティ推進委員会で審議された内容の報告を受け、気候変動課題に関する取り組みの進捗に関する監督を行っています。

 また、社長執行役員は、全社サステナビリティ推進委員会の委員長を担い、気候変動課題に係る経営判断の最終責任を負っています。気候変動課題への対応及びその進捗については全社環境保全委員会や全社サステナビリティ推進委員会事務局より報告を受けます。

 

サステナビリティ推進体制


 

サステナビリティ推進体制における会議体と役割

会議体

役割・開催頻度

取締役会

業務執行(または、経営・執行役員会議)で論議・承認された、気候変動関連問題を含むサステナブル課題に関する取り組み施策の進捗を監督。

全社サステナビリティ

推進委員会

気候関連リスクの特定・評価・対応に責任を有し、気候関連リスクの重要課題に関する対応の審議及びその進捗状況についてモニタリングを行う。その結果については取締役会に報告する。但し、本委員会にて取締役会のメンバーが全員参加したうえで内容を確認する。原則として、年4回開催する。

全社サステナビリティ

推進委員会事務局

気候関連リスクを特定・評価・管理し、気候変動リスクへの活動計画を策定する。

その結果については全社サステナビリティ推進委員会に付議する。

全社環境保全委員会

全社サステナビリティ推進委員会と連携して年度の環境方針を策定し、CO2削減などの目標を設定する。またCO2削減に向けて専門委員会を設置し、活動を推進する。

経営・執行役員会議

気候変動リスクを含めた包括的なリスクを検討し対応策を審議・承認する。

決定内容について定期的に取締役会に報告する。

 

 

 

② 戦略

 当社は、TCFD提言に基づき、気候変動関連のリスクと機会の把握を目的にシナリオ分析を行いました。また、シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)等の科学的根拠等に基づき1.5℃シナリオと4℃シナリオを定義し、2030年(移行リスク)と2050年(物理リスク)時点で事業に影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性を評価しました。

 

シナリオの定義

 

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

シナリオ概要

気候変動対策が積極的に行われ、政府による規制が強化される。これに伴いEVや再エネの普及、環境性能の高い製品の需要が拡大する。

気候変動対応が行われず、異常気象が激甚化する。これに伴い災害復旧やインフラ強靭化に関連する建設機械や土木製品の需要が拡大する。

対象年

移行リスク:2030年,物理リスク:2050年

参照シナリオ

移行面

IEA NZE(※1)

IEA STEPS(※2)

物理面

IPCC SSP1-1.9(※3)

IPCC RCP8.5(※4)

 

※1 IEA NZE(Net Zero Emissions by 2050 Scenario):IEAが示した世界のエネルギー部門が2050年までにCO2排出量をネットゼロにする道筋を示す規範的なシナリオ。

※2 IEA STEPS(Stated Policies Scenario):IEAが示した各国政府が公表している政策を反映した保守的なシナリオ。

※3 IPCC SSP1-1.9:IPCCの第6次評価報告書にて示した気温上昇を約1.5℃以下に抑える気候政策を導入することで、21世紀半ばにCO2排出が正味ゼロとなり、世界の平均気温が産業革命前に比べて1.0~1.8℃(平均1.4℃)に抑えるシナリオ。

※4 IPCC RCP8.5:IPCCが第5次評価報告書にて示した21世紀末(2081~2100年)に世界の平均気温が産業革命前に比べて3.2~5.4℃(平均4.3℃)上昇するシナリオ。

 

当社にとって特に重要な気候関連リスクと機会

(影響度の評価基準)

大:5億円以上、中:1,000万円以上5億円未満、小:1,000万円未満

リスク

/機会

事業に及ぼす影響

財務影響

対応策

1.5℃

4℃

リスク

炭素税の導入により鉄鋼・半導体などの原材料価格が上昇し、調達コストが上昇する

・現状把握、目標設定

リサイクル率の上昇

・代替の原材料への切り替え

炭素税の導入によりエネルギーコストが上昇し、運用コストが増加する

(約6億円※1)

-

・省エネ、生産性向上への取り組み

再生可能エネルギーへの切り替え

・太陽光パネルの設置による自社に

 よる電力確保

異常気象の激甚化により原材料の調達が困難になった場合、生産停滞に伴う機会損失が発生する

在庫の積み増し

調達拠点の分散

調達先リスクの把握

複数購買先の確保

異常気象の激甚化によりサプライチェーンが分断され、販売機会を損失する

複数輸送手段の確保

物流拠点の分散化

現地調達化への対応

異常気象の激甚化により工場の操業停止による機会損失や復旧コストが発生する

(約5億円※2)

(約5億円※2)

対応の分散化

インフラ強化

異常気象多発に対応するため、工場のインフラ強化への対応コストが増加する

グループ製造工場のリスクの把握

物理的インフラの強化

人や資産の移転、分散化

バックアップの確保

猛暑による労働環境の悪化により、人手不足になり販売減により売上が減少する

現場環境の改善

・省人化をはじめとした作業効率化

 の更なる推進

 

 

リスク

/機会

事業に及ぼす影響

財務影響

対応策

1.5℃

4℃

機会

EV化が進展することで、EV車に適した製品の需要が拡大するとともに、EV部品の製造工程に必要な部品需要も拡大する

・EV向けの製品の供給体制強化

新技術(製品)の開発推進

製品の耐久性向上・高強度化につながり、かつ、通常のガス浸炭よりCO2削減に貢献する高周波熱処理需要が拡大する

新技術(製品)の開発推進

製品・サービスの営業活動促進

省力化、鉄筋量の少ない建設向け製品の販売機会が拡大する

不動産会社、建設会社への拡販

事業を通じて環境負荷が低減できた場合、投資家の関心・評価が高まることで、ESG投資が増加する

研究開発強化

社内浸透への取り組み

認証の取得

開示の推進

異常気象の激甚化に伴い、災害に備えた設備・インフラの強靭化が進むことにより、土木関連製品の需要が拡大する

・土木関連製品向けの拡販及び供給

 体制の強化

 

(定量的財務影響の算出根拠)

※1 2030年時点の国内グループScope1,2排出量に対して、1t-CO2あたりの炭素価格を乗じて試算。

※2 想定被害額の最大額を試算しており、内訳は「操業停止による利益損失」、「償却資産の被害額」、「建築物の被害率」。国内グループの各拠点に関する浸水リスクはハザードマップにより特定。

 

③ リスク管理

 当社は、事務局による伴走のもと、全社サステナビリティ推進委員会にて、気候変動に関するリスクの特定及び影響度の評価を行っています。緊急性が高く重大であると判断されたリスクについては、経営・執行役員会議でも報告されます。

 また、全社サステナビリティ推進委員会が全社環境保全委員会とも連携し、重大なリスクに対する対策を決議し、その進捗のモニタリングを行います。その内容については、定期的に取締役会へと報告されます。ただし、全社サステナビリティ推進委員会にて取締役会のメンバーが全員参加したうえで、内容を確認することとします。


 

 

④ 指標と目標

 当社は、気候変動関連リスク機会の評価指標として、温室効果ガス排出量の算定を行なっております。2023年度まで単体のScope1,2排出量を算定対象としています。これまでの省エネ活動の推進により排出量の削減が進んでおり、太陽光発電の設置等の取り組みも始めております。今後も温室効果ガス排出量の把握を継続し、対象範囲の拡大や、削減に向けて取り組みを実施してまいります。


※1 合計値におけるScope2排出量はマーケット基準によるものを使用している。

※2 エネルギー起源CO2以外のScope1活動は全体に対する割合は非常に小さく、除外している。

※3 2022年度より社用車におけるガソリンの使用も算定対象としている。

   目標

 当社は、長期経営ビジョン「NETUREN VISION 2030」にて「2030年までにCO2排出量30%削減(2013年度比)、2050年までに実質排出量ゼロ」を目標として設定しました。目標達成に向けて全社推進体制のもと、各工場・事業所が主体となりCO2排出量削減を推進しています。

 

(3) 人的資本

① 戦略

人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

(人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針)

 当社グループでは、人財育成の基本理念として、「人は当社の財産であり、経営基盤を成すものである。」と定め、当社グループの経営理念である「人を育て、活力ある企業グループを目指す。」を具現化するため、人財育成を経営活動の最重要課題として位置付けております。

 当社グループの人財育成に関する方針は、10年を単位とする経営計画としての「NETUREN VISION 2030」に含まれております。その中の4つの柱の1つとして人財を掲げており、「自発的貢献意欲を持ち、果敢に挑戦し、成長を続ける多様性のあるグローバル人財を輩出、持続可能な社会づくりに貢献し、世界に躍進する企業グループとなる。」としております。

 人財のダイバーシティについては、女性や外国籍人財の活躍推進を継続・強化するとともに、「多様な視点を得て、事業のリスク低減や新たな価値創造につなげる」というダイバーシティの本質に注目し、さまざまな人財の力を活かしてまいります。

 人権問題については、グローバル企業としての当社の考え方を明確にするため、2022年4月に「ネツレングループ人権方針」を制定、本方針を10カ国語に翻訳し、世界のグループ全拠点で徹底して浸透を図ってまいります。

(社内環境整備に関する方針)

 当社は、企業価値を高め続けるとともに持続可能な社会づくりに貢献するため、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等多様性の確保は「NETUREN VISION 2030」に掲げております。実現に向け、管理職昇格は評価基準(評価ポイント、マネジメント能力、行動特性等)を踏まえて昇格試験、面接を行い、透明性・納得性の高い人事運営を実施するとともに、研修等を通じた育成を実施しております。多様な人財の確保と活躍支援は、育児・介護等に関する制度、フレックスタイム制度、在宅勤務制度を充実させて、利用しやすい環境を整備しております。

② 指標と目標

 当社グループでは、人財育成に関する方針について、女性活躍推進法における行動計画として次の指標を公表しております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

 また、当社グループでは、上記「①戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標について、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2026年3月末までに2022年3月末比において2以上にする。

1.2倍(※)

年次有給休暇の取得促進

年次有給休暇の平均取得日数年間10の推進をする。

13.28

育児及び介護制度の充実

育児及び介護に関する制度を充実させ、利用しやすい環境を整備する。

①男女を問わず、従業員の利用促進につながる施策として、広報などを利用し、育児や介護に関する情報を発信しております。

②育児及び介護中の従業員が利用しやすい制度の検討及び実施をしております。

 

(※)当事業年度における管理職に占める女性労働者の割合は2.4%で、2022年3月末比1.2倍となります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境の変化による受注減少が業績に与えるリスク

当社グループの事業は、自動車、土木・建築、建設機械及び工作機械等に展開しており、各業界の顧客からの受注に対応すべく海外を含めて生産拠点の拡充、生産能力の増強を目的とした設備投資を実施しております。

しかしながら、各業界・地域の市場動向、政治・経済情勢が想定以上に悪化した場合や自然災害、天候不順、感染症の蔓延など予期せぬ事態が発生した場合は、顧客からの受注が減少し、人件費や減価償却費など固定費の負担が相対的に重くなり当社グループの業績に影響を与える可能性があります。さらには、設備投資資金の回収が見込めない場合は、減損損失発生の要因となる可能性もあります。

受注減少が業績に与えるリスクについては、当社グループが製品を提供している各業界・地域の市場動向、政治・経済情勢はもとより、顧客からの受注状況等を勘案したうえで素早く適切な対策を講じてまいります。具体的には、これまで生産革新活動で培ってきたノウハウに加え、新型コロナウイルス感染症の拡大状況下での経験を生かした原価低減を強力に推し進め、受注変動に強い事業構造を構築してまいります。このため、間接部門を含め多能工化の推進、適切な人員配置を目指すとともに、設備の自動化、省力化などに資する設備を中心に投資してまいります。なお、設備投資の実行にあたっては、社内規定「投資ガイドライン」等に基づき、慎重に判断する仕組みを構築しております。

 

 (2) 製品品質に関するリスク

当社グループは、自動車、土木・建築、建設機械及び工作機械等に製品を提供しております。これらの製品は非常に重要な部位に使用されるため、供給者としての責任を自覚し、品質検査及び性能確認には細心の注意を払っております。

しかしながら、万一、品質上のトラブルが発生し、人的、社会的な被害が生じた場合は、当社グループの信用及び業績に影響を与える可能性があります。

製品品質に関するリスクについては、国際規格ISO9001等の品質マネジメントシステムを基盤に据え、特に高強度化に関わる品質指標は、品質保証本部によるグループ横断的な品質保証体制でトレンドを管理するなど品質不適合の未然防止に努めております。

 

(3) 電気料金に関するリスク

当社グループの事業の中核である熱処理技術を用いた工程は、主として電力をエネルギーとして使用しているため、電気料金は製造コストを構成する重要な要素であります。資源・エネルギー価格の高騰を背景とした電気料金の上昇は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

電気料金に関するリスクについては、電力使用量の削減に向けた取り組みとして、日々の節約はもとより、省エネ効果の高い最新設備への更新や環境面における効果も期待できる太陽光発電システムの積極的な導入を推進してまいります。

 

(4) 資材調達及び物流に関するリスク

鋼材を中心とする原材料価格が上昇、高止まりしております。当社グループの事業のうち、特に製品事業部関連事業の主要な材料は鋼材であり、製造コストを構成する重要な要素であります。想定以上に価格が変動した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、生産に必要な資材の入手が困難になる可能性もあります。さらに、物流業界におけるドライバー不足や輸送コストの増加等が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

資材調達及び物流に関するリスクについては、コストアップ分の販売価格への転嫁に努めております。また、調達面では、調達本部が中心となって安定した供給を受けるための交渉や調達価格の交渉を継続的に行うとともに、効率的な輸送管理の徹底でコスト面のみならず環境面も意識した取り組みを推進してまいります。

 

(5) グローバル事業展開に関するリスク

当社グループは、グローバルに事業を展開しており、進出国の政治・経済情勢、法制度、習慣や治安に至るまでのリスクを認識しなければなりません。また、グローバル事業では投資額が多額になることや為替変動の影響を受けることが想定されます。進出国において、想定外の政治・経済情勢の変化、法制度の変更や金融・為替市場の急激な変動等が生じた場合は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

グローバル事業展開に関するリスクについては、事業計画立案時から事業運営に至る各プロセスにおいて、主管事業部と事業開発本部、管理本部及び経営企画室をはじめとする各機能本部が連携し、課題の抽出とその解決のための施策や事業環境の変化に臨機応変に対応できる体制の整備を図ってまいります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における我が国経済は、企業業績の改善や賃上げ等による雇用・所得環境の改善が進むなど、緩やかな回復基調で推移いたしました。しかしながら、エネルギー・原材料価格の高止まりや不安定な為替変動、海外では、中国経済の減速や地政学リスクの高まり、さらに、米国による関税の引き上げ政策による景気後退が懸念されるなど、先行き不透明な状況が続いております。

このような状況のもと、当社グループは、第16次中期経営計画「Aggressive Challenge One NETUREN 2026」(2024年4月より2027年3月までの3ヵ年計画)に掲げた4つの基本戦略である、

①技術開発  :成長ドライバーの創生

②事業    :成長エンジンの育成

③グローバル :グローバルマーケットの拡大

④人財    :自発的貢献意欲のある人財の育成

を推進し、目標達成に向けた取り組みを実行しておりますが、当社グループにおける主要な取引先である建設業界、建設機械業界及び工作機械業界の市況低迷が業績に影響いたしました。

この結果、当連結会計年度の売上高は、取引業界の市況低迷により販売量は減少いたしましたが、コスト上昇分を販売価格へ転嫁したこと、また、円安により海外連結子会社の為替換算が増収に寄与したこともあり、57,563百万円(前年同期比0.6%増)となりました。

営業利益は、販売量減少に伴い当社グループ製造拠点における生産量が低下し、固定費負担が増加したため、1,617百万円(前年同期比0.9%減)、経常利益は、2,321百万円(前年同期比7.6%減)となりました。

一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失に固定資産の減損損失を712百万円計上いたしましたが、特別利益に投資有価証券売却益を1,217百万円計上したことにより、1,815百万円(前年同期比17.7%増)となりました。

引き続き、収益向上のための受注拡大はもとより、高止まりするコストの販売価格への転嫁を含む積極的な営業活動とともに、徹底した原価低減活動を継続し、企業価値の向上に努めてまいります。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

(製品事業部関連事業)

土木・建築関連製品の売上高は、建設業界の低迷や人手不足、建設資材高騰による工事遅延、着工遅れなどの影響が継続しておりますが、当社の高強度せん断補強筋が採用された建築案件の増加や鋼材、労務費、電力費、輸送費などのコスト上昇分を土木・建築関連製品すべての販売価格へ転嫁したことなどにより、前年同期と比較し増加いたしました。

自動車関連製品の高強度ばね鋼線の国内売上高は、一部顧客向けに継続していた生産応援が下期後半にかけて減少したことや輸出の落ち込みなどで減少いたしました。海外売上高は、中国では、経済の減速や主要顧客の生産台数が低調であったことなどで減少いたしましたが、米国及びチェコにおいて、顧客や用途の新規開拓に注力したことで増加、グループ全体での高強度ばね鋼線の売上高は、前年同期と比較し増加いたしました。

一方、高強度ばね鋼線以外の自動車及び二輪車関連製品は、一部量産車種の搭載が終了したことや顧客側の生産停止による影響を受けたため、大幅に減少いたしました。

建設機械関連製品の売上高は、国内及び中国の建設市況低迷が継続、前年同期と比較し減少いたしました。

利益面では、高強度ばね鋼線以外の自動車及び二輪車関連製品や建設機械関連製品の販売量が大幅に減少したことなどで固定費負担が増加し、収益性が低下しておりますが、土木・建築関連製品における当社の高強度せん断補強筋が採用された建築案件の増加やコスト上昇分を販売価格へ転嫁したことで、前年同期と比較し増加いたしました。

この結果、売上高は、36,568百万円(前年同期比0.7%減)営業利益は、180百万円(前年同期比45.3%増)となりました。

 

(IH事業部関連事業)

熱処理受託加工関連の売上高は、自動車関連業界において、当社グループの受託加工品を採用する自動車メーカーの減産影響を受けたことにより下期後半から減少に転じたこと、建設機械業界及び工作機械業界における主要顧客の生産量も振るわなかったことなどにより、前年同期と比較し減少いたしました。

誘導加熱装置関連の売上高は、顧客からの設備投資に伴う受注が堅調に推移し、前年同期と比較し増加、熱処理受託加工関連の減少をカバーいたしました。

利益面では、自動車関連業界における下期後半の減産や建設機械業界及び工作機械業界の需要低迷に伴う生産量の減少による固定費負担の増加を装置事業でカバーしきれず、前年同期と比較し減少いたしました。

この結果、売上高は、20,851百万円(前年同期比3.0%増)、営業利益は、1,377百万円(前年同期比4.9%減)となりました。

 

(その他)

当該セグメントは、報告セグメントに含まれない不動産賃貸事業等であります。当社保有の賃貸物件については、小規模ではありますが安定的に業績に寄与しております。

この結果、売上高は、143百万円(前年同期比1.7%増)、営業利益は、56百万円(前年同期比1.8%増)となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

製品事業部関連事業

32,424

100.0

IH事業部関連事業

14,465

92.6

合計

46,889

97.6

 

(注) 金額は、製造費によっており、セグメント間の取引については消去しております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前期比
(%)

受注残高
(百万円)

前期比
(%)

製品事業部関連事業

36,090

98.2

3,160

86.9

IH事業部関連事業
(誘導加熱装置関連)

6,923

90.1

5,013

80.5

 

(注) 1 IH事業部関連事業のうち、熱処理受託加工関連は継続的な取引が多く、加工賃収入のため受注高及び受注残高の把握が困難のため、誘導加熱装置関連の受注状況を記載しております。

2 受注金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については消去しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

製品事業部関連事業

36,568

99.3

IH事業部関連事業

20,851

103.0

その他

143

101.7

合計

57,563

100.6

 

(注) 上記の金額は、セグメント間の内部売上高を消去しております。

 

 

(2)財政状態

当連結会計年度末における総資産は、83,760百万円(前年同期比3.9%増)となりました。この主な要因は、売上債権が減少しましたが、主に設備投資を目的として金融機関等から長期資金を借入れたことにより現金及び預金が増加したことなどによります。
  セグメントごとの資産は、製品事業部関連事業においては減少いたしました。この主な要因は売上債権や有形固定資産が減少したことなどによります。一方、IH事業部関連事業においては増加いたしました。この主な要因は、現金及び預金や有形固定資産が増加したことなどによります。

なお、セグメントごとの資産は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に記載しております。

当連結会計年度末における負債は、17,431百万円(前年同期比23.3%増)となりました。この主な要因は、仕入債務が減少しましたが、借入金が増加したことなどによります。

当連結会計年度末における純資産は、66,329百万円(前年同期比0.2%減)となりました。この主な要因は、円安により為替換算調整勘定が増加したものの、配当金の支払いや自己株式取得を実施したことなどによります。

この結果、当連結会計年度末における自己資本比率は71.1%となりました。

 

(3)キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、17,580百万円(前連結会計年度末と比べて2,770百万円の増加)となっておりますが、その内訳は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、4,107百万円(前年同期は4,193百万円の収入)であります。

これは、税金等調整前当期純利益を2,818百万円計上したことや、売上債権が1,973百万円減少したことなどによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は、3,404百万円(前年同期は1,647百万円の支出)であります。

これは、有形固定資産の取得による支出が2,653百万円、長期前払費用の取得による支出が143百万円あったことなどによります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、1,713百万円(前年同期は5,080百万円の支出)であります。

これは、自己株式の取得による支出が2,000百万円、配当金の支払額が1,785百万円あったものの、長期借入れによる収入が6,050百万円あったことなどによります。

 

キャッシュ・フロー関連指標

項目

前連結会計年度

当連結会計年度

自己資本比率

74.4

71.1

時価ベースの自己資本比率

50.3

39.6

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

0.2

1.7

インタレスト・カバレッジ・レシオ

73.4

58.7

 

(注) 1 各指標の算出方法

自己資本比率                  :自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率           :株式時価総額(株価終値×発行済株式総数)/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率 :有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ   :営業キャッシュ・フロー/利払い金額

2 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている借入金を対象としております。また、利払い金額については、連結損益及び包括利益計算書に計上されている支払利息の金額を使用しております。

 

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のように認識しております。

当社グループは、設備投資計画に照らして、設備投資に必要な資金は自己資金及び金融機関からの借入でまかなっております。また、短期的な運転資金は主に自己資金及び金融機関からの借入でまかなっております。なお、設備投資額及び設備投資予定額につきましては、「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。連結財務諸表の作成にあたっては、報告期間の期末日における資産・負債の計上、期中の収益・費用の計上を行うため、必要に応じて会計上の見積り及び仮定を用いております。この会計上の見積り及び仮定は、その性質上不確実であり、実際の結果と異なる可能性があります。

当社は、これらの見積りは合理的であると考えておりますが、不確定要素が多く、想定を超えた変化等が生じた場合、当社グループの連結財務諸表に大きな影響を及ぼすことがあります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、原則として、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローを見積り、見積られた割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては、慎重に検討しておりますが、事業計画や経営環境等の諸前提の変化により、追加の減損処理又は新たな減損処理が必要となる可能性があります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性及び必要額を評価するに当たっては、課税主体ごとに将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収見込みを慎重に検討しておりますが、課税所得見積りの前提とした諸条件・諸前提の変化により、追加引当又は引当額の取崩しが必要となる可能性があります。

 

 

5 【重要な契約等】

技術援助契約(供与)

契約会社名

相手方の名称

国名

契約品目

契約内容

契約期間

高周波熱錬㈱

(当社)

塩城高周波熱煉有限公司

中国

誘導加熱装置の製造・販売及び熱処理受託加工

1 技術情報、ノウハウ及び技術指導

2 中国における独占的且つ非譲渡的製造販売権

(注)

2005年8月5日から

2035年8月4日まで

 

(注)  対価として売上高の一定料率のロイヤルティを受け取っております。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、IH(誘導加熱)技術を基幹として、ニーズに沿った商品や技術をスピーディーに市場に提供できるよう、また、次世代ニーズを先取りできるよう研究開発に取り組んでおります。

研究開発体制は、中長期的な開発テーマの推進や誘導加熱に関する基礎研究など当社グループ全体に係わる研究開発、技術課題への対応及び調査分析・試験を広範に実施する研究開発本部とオリジナルブランド製品の設計や当社グループにおける設備技術課題案件の対応、新技術の事業化を目指した活動を実施する製品技術本部を中心とした組織で構成されております。この両組織と事業開発本部、各事業部門が密接に連携、情報共有することで、効果的かつスピーディーな研究開発活動を実施しております。

また、当社グループの研究開発活動においては、大学及び研究機関等との共同研究も多数行っております。

なお、当連結会計年度における研究開発費は786百万円となり、その内訳は製品事業部関連事業が136百万円、IH事業部関連事業が41百万円、当社グループ全体に係わる研究開発が608百万円となっております。

 

当社グループ及び各セグメントにおける研究開発の主な成果は以下のとおりであります。

(研究開発本部)

部材の高強度化、高機能化、定・低(ダブル・テイ)変形焼入れの技術開発進化を目指し、高周波熱処理と他の表面改質技術を組み合わせた複合熱処理技術では、顧客から技術供与されたマイルド浸炭の受託加工への拡販活動を行っております。また、高周波焼入れ後も部品表面の光輝状態を保つことができる無酸化焼入れやロボットを活用した焼入れなど、種々の高周波熱処理技術の開発と実用化を進めております。

高周波電源では、バッテリーを利用したハイブリッド電源を開発しました。従来の高周波電源にバッテリーを内蔵して電気的な受け皿を作ることで、様々な電力源を使って誘導加熱ができるようになります。この技術により、使用電力の平準化による受電電力の低減 、クリーンエネルギーの活用 、発電機を利用した「屋外加熱」、「出張焼入れ」など、これまでにない新たな価値が提供できるようになります。今後、バッテリーコストとの兼ね合いを見ながら市場投入のタイミングを図ります。

電源制御基板のFPGAによるデジタル化した開発電源は、優れたメンテナンス性、基板の小型化が図れており、さらにDXに対応する機能を持ち、販売を拡大しております。

高周波熱処理シミュレーション(CAE)技術は、加熱、冷却だけでなく、熱処理前の塑性加工の影響を考慮した解析技術も進歩し、より高精度な焼入硬化層分布、変形や残留応力の予測も可能になっております。実物品データとリンクした適用例を増やし、現業での活用が進むだけでなくお客様からの依頼も多く、当社グループ各部門の技術開発と営業活動を支えております。

IH技術に欠かせない加熱コイルでは、2024年1月に導入した金属3Dプリンターを活用し、誘導加熱コイルの製造技術確立と社内での性能評価を進めております。コイル設計開発の工程で、CAE解析技術と3Dプリンターを連携させることで、熱処理技術開発のスピードを上げ、リードタイムの短縮を目指しております。

高周波加熱技術と鉄鋼の材料特性を融合した新しい接合技術であるネツレンMB工法を開発しました。このネツレンMB工法は従来の接合工法より強度、寸法精度を高めることができる技術で、その実用化に向けての開発とマーケティング活動を開始しております。

非破壊検査技術においては、大学との共同で製品の重要な品質管理項目の一つである有効硬化層深さについて製品を傷つけることなく検査できる計測器を開発しました。現在、精度検証および生産技術開発を進めています。本技術はN-DXに基づいた品質保証のIT化にも展開してまいります。

材料分析、解析技術においては、保有する高度な試験、分析装置を駆使して、社内での材料課題調査対応や研究開発に活用しております。また、IT技術を活用し、今まで蓄積してきた技術情報を技術・技能伝承に役立てております

 

 

(製品技術本部)

自動車のEV化に伴う車両重量増による「部品軽量化≒ステアリングユニットの小型化」ニーズに応えるべく、EPS(電動パワーステアリング)用中空ラックバーの軽量かつ高強度特性を活かした開発を継続するとともに、他分野では金属塑性加工技術の応用により、部分的に鋼管肉厚(重量・強度)差を持たせた新商品開発ならびに顧客ニーズの具現化に取り組んでおります。

各種開発案件の成果を当社グループの生産現場へ供給するとともに、その技術を用いた生産設備の自動化や品質検査などの工程改善と合わせて、投資における設備製作・導入支援等により各事業所の収益改善に貢献しております。

また、弊社長期経営ビジョンのキーワードであるCO2排出量削減に向けた太陽光発電の着実な導入と、国内事業所10拠点の生産設備がインターネット環境に接続可能となったことで、様々なDX実現に向け、まずは生産および品質保証管理に直結する監視システムにてAIを用いた技術検証を進めてまいります。

 

(製品事業部関連事業)

当セグメントにおきましては、自動車・土木・建築・建設機械・工作機械などの市場を対象に、お客様のニーズにお応えできるように、材料、IH熱処理技術、土木・建築工法を中心に研究開発を進めております。

自動車関連分野では、市場全体のEV化対応として、材料、IH熱処理技術だけでなく、製造工程の自動化に取り組み、高強度軽量化、高精度高耐久によるブランド力向上を進めております。

土木・建築関連分野では、既存商品の機能向上と適用範囲拡大、新商品のさらなる普及を目指した設計施工方法の開発を進めております。また、高強度材料を使うことによる耐久性向上、施工の工程省略及び資材節減(CO2排出量低減)なども提案しております。

建設機械・工作機械分野では、加工技術開発による機能向上、高精度化による顧客工程省略に取り組んでおります。

また、自部門の現場力向上を目指して、直接部門、間接部門を問わずデジタル化・自動化にも取り組んでおります。

 

(IH事業部関連事業)

当セグメントにおきましては、高周波熱処理シミュレーション(CAE)技術やFTC(ファインテクノセンター)を活用し、自動車、建設機械、工作機械及び産業機械といったあらゆる産業分野の様々な形状・寸法・鋼種の熱処理と、生産性が高く安定した品質を確保できる熱処理技術及び装置の開発を行っております。

熱処理受託部門では、製品技術本部と協業しビジョンセンサを利用した外観検査や探傷試験の完全自動化やICTを利用した工程の見える化を進め、付加価値の高い製造工程造りに取り組んでおります。

設備製造販売部門では、研究開発本部により開発されたFPGA化でデジタル制御された高周波電源装置やSiC半導体を使用した高効率な高周波電源装置の量産化を実現し、お客様のDX化に貢献できる新たな機能追加を継続しております。

また、多種多様なご要望にお応えするために、3Dプリンターを活用した長寿命かつ高効率な加熱コイルの技術開発にも取り組み、お客様のCO2排出量削減に寄与するとともに、当社グループの製造工程への適用も進めております。