文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、優れたモノづくり・価値ある商品の創造を基本に、社会への貢献を企業経営の使命と考え、「創る技術を社会に活かす」「人の英知で未来を拓く」「夢に向かって挑戦し進歩する」という企業理念を掲げ、グローバルな経営活動を続けております。
中期的な経営方針として、クルマの“楽しさ”や“快適性”の実現に向け、新たな価値を創造する『クリエイティブカンパニー』として、企業価値の最大化に向けた取組みを加速させるため、「中長期経営計画(2023-2027年度)」を策定しております。
(2) 経営戦略等
2027年度までに、連結売上1,100億円以上、営業利益55億円、営業利益率5%、ROE5%以上を達成するため、クリエイティブカンパニーとなるための戦略を下記のとおり策定し、その取組みを進めております。
① 商品力の強化
事業環境がどのように変化しようとも、クルマをより楽しく、快適にしたいという顧客のニーズは、今後も不変であると考えております。“ばね技術”をもっと進化させ、顧客のあらゆるニーズにお応えするため、以下を重点施策として位置付け、商品力を強化いたします。
・高性能、高機能製品 ・モジュール化 ・EV対応
② 新規分野への進出
アジア、グローバルサウスのアフター市場をターゲットに拡販するための足掛かりとして「アジア地域統括事務所」をバンコクに設立し、インドにおいては精密ばね製品の製造、販売を目的に合弁会社を設立し、豊富な人口と消費の高度化により経済成長が続くインド市場での拡販活動を展開しております。また、当社のコア技術を応用し、非自動車分野のラインナップを拡充するため、ヘルスケアやEVアクセサリーの製品を販売しております。
③ 画期的な原価低減
当社が得意とする原価低減をさらに進化させるため、コイルスプリング材の二次加工内製化拡大やパワーバックドア用ばねの生産性改善など、さらなる収益拡大に向け取組んでまいります。特に、原価構成比率が最も高い直材費については、ボーダレス調達を推進することで、新規サプライヤーを開拓し、低コストかつ高品質な材料・部品を最適なエリアで活用いたします。
④ SDGs対応
地球規模の課題として、サスティナブルな社会の実現に貢献するため、カーボンニュートラルを推進します。日常改善に留まらず、工法開発(冷間化)・燃料転換を実施することで、CO2排出量2030年目標△46%(2013年比)を達成いたします。
⑤ 財務戦略
ROEを経営指標として財務戦略を構築し、収益性と資産効率の向上を両立させ、企業価値の向上を図ってまいります。また、商品力を強化し、画期的な原価低減を行うことによって収益基盤を盤石にし、長期安定的な配当の実施を目指します。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を、目標の達成状況を判断する指標としております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
自動車業界は100 年に一度の変革期と言われておりますが、クルマの“楽しさ” や“快適性” を実現する新たな価値を創造していくために、積極的に製品の更なる高付加価値化や原価改善施策の強化につながる成長投資や、エンゲージメント向上につながる人的投資にも取り組んでまいります。
また、昨年10月に当社藤岡工場で爆発事故が起きましたが、二度とこのような事故を起こさないように『安全、品質、コンプライアンス』の基本を徹底し、確実な成長と発展に向かって進んでまいります。
中長期経営計画を確実に実践していくことによって、クリエイティブカンパニーとして信頼される「100年企業」を目指してまいります。
当社グループのサスティナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、法定事項及び重要事項の決定、並びに業務執行を行う経営会議を月1回開催しており、それに対して月1回開催の取締役会にて監督をしています。気候問題に関する目標及び進捗状況は年6回報告し、審査・指導、及びモニタリングを行っております。有価証券報告書提出日現在における気候関連リスクと機会に関する取締役会の監督体制は、以下のコーポレートガバナンス体制図のとおりであります。

当社グループは気候変動が当社グループに与えるリスク・機会の把握として、自動車業界での(電気自動車)EV化や(燃料電池車)FCV化の節目となる2030年時点での事業影響を想定しております。
また、気候関連リスク・機会の重要性評価として、「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でシナリオの特定と評価を実施し、7つの評価項目を選定しております。
シナリオ分析は、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が提示する気温上昇1.5℃シナリオと4℃シナリオを2030年時点に想定した事業影響や社内外の情報に基づき、事業及び財務への影響度を評価しております。
気候変動に伴うリスクと機会を以下のとおり認識し、「脱炭素社会の実現」を目指して、当社におけるCO2排出量の削減の他、お客様にとってCO2排出量削減につながる製品・サービスの提供を行なってまいります。
<想定したシナリオ>
・1.5℃シナリオ
炭素税に加えて国境炭素調整措置も導入され、世界中で気候変動対応の厳しい法規制が施行されております。これにより、気温上昇が抑えられ、自然災害も現在より大きく増えることは無く、動植物への影響も限定的となっております。
一方で炭素税などの規制により、エネルギー費用が高騰し、その他の調達品にも影響が出ております。温暖化による顕著な健康への影響はありませんが、真夏日や風水害などで気候変動の影響を日々感じる状況となっております。
自動車業界ではEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)が普及してガソリンエンジン車は生産されておりません。
・4℃シナリオ
気候変動に対する法規制は先進国では厳しくなっておりますが、発展途上国では規制が弱く、結果としてCO2排出量は十分なほどには削減できておりません。
このため気温上昇が止まらず、温度上昇や1日の温度差縮小に耐えられない動植物が出現し、生物多様性の危機が顕在化しております。また、集中豪雨などの自然災害は現在以上に広域で多発しております。エネルギー費への炭素税の影響は事業に大きな影響を与えるまでには至りませんが、温暖化により感染症のリスク人口が増え、今まで影響の無かった地域にも感染が拡大し、熱中症による救急搬送も顕著に増えており、健康への影響を多くの人が懸念する状況となっております。
自動車業界ではEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)が一部の地域で普及しておりますが、ガソリンエンジン車の生産も継続しております。
<選定した評価項目>
<特定したリスクと機会及び対応策>

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、従業員一人ひとりが自らの成長を実感し、毎日イキイキと仕事に励むとともに、持てる能力を最大限に発揮し、それぞれの分野で高度な技術と知識を持ったプロフェッショナルになることが、企業の持続的成長の原動力と考えております。
当社グループは、この考え方を企業理念・企業行動指針などに盛込み、常日頃から「活力に満ちた安全で働きやすい職場づくり」を人事施策の基盤とし、一人ひとりの成長とスキルアップを目指し、チーム力やマネジメント力の向上にチャレンジしてまいります。

<エンゲージメント向上>
従業員エンゲージメント向上は持続的成長するためには重要な経営課題と考えております。職場マネジメントサーベイを実施し、従業員の本音を聞き取り、会社施策や職場の改善につなげる活動を継続してまいります。特にコミュニケーションを重視し、各職場内で上司部下の本音トークを実施しております。職場の課題共有と改善策を話し合う場を設けて労働時間・年休取得など働き方の改善に役立ててまいります。
①健康経営
社員一人ひとりが持つポテンシャルを十分に発揮し、高い成果を得るためには従業員が「健康」であることが最重要になります。会社方針として掲げているスローガン『もっと、もっと、ワクワクしたい。みんなの明日の笑顔のために』となれるよう、継続的な企業活動を推進し、従業員が健康であり続けられる、安心・安全な職場環境づくりを推進してまいります。更に従業員のヘルスリテラシーを向上させることで、高リスク者の低減と低リスク者の向上を推進してまいります。
※経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2024」の大規模法人部門に認定
②福利厚生
2022年度には従業員の福利厚生増進策の一環として、従業員持株会加入者へ譲渡制限付株式を無償提供すると共に、奨励金の上限額引上げを実施いたしました。従業員持株会を充実させることにより、中期経営計画達成に向けた、従業員一人ひとりの会社経営に対する関心度/一体感の『より一層の向上』を目指した施策を推進してまいります。
<ダイバーシティ>
人財の多様性を尊重し、女性・外国籍およびキャリア採用者の方が能力を十分に発揮できる環境の整備を推進しております。公正・公平な採用や育成、能力重視の昇格や管理職登用により、女性・外国籍およびキャリア採用者が中核人財として活躍できる環境づくりを目指してまいります。
多様性の確保に向けた取組み
1.女性活躍
女性活躍推進法に基づく行動計画を策定、育児・介護との両立支援により女性が働きやすい環境の実現を目指しております。本計画に沿って、新卒・キャリア人材ともに、女性採用を拡大、またマネジメント職登用を想定した研修など成長の機会を設け、女性が十分に能力を発揮し活躍できるよう制度づくりや環境整備を推進してまいります。
2.外国人活躍
海外で活躍できる人材、および海外拠点を運営できる人材を育成するため、外国人採用の拡大に加え、グローバル人材育成の取組みを拡充しております。その多様な個性、特徴、経験を生かせるように取組み、マネジメント職登用者数の拡大を目指してまいります。
3.キャリア人材の活躍
キャリア採用については継続的に実施しております。昇格やマネジメント職登用については、新卒採用、キャリア採用に関係なく、能力重視で評価し、キャリア形成に合わせた階層別研修なども同様に実施し、マネジメント職に登用できるように育成することで、マネジメント職登用者数の拡大を目指してまいります。
<クリエイティブ人財の育成>
「自ら考え自ら行動する」ことこそが、社員の成長、ひいては会社の成長へとつながると考え、一人一人が主体的に働ける環境を整えております。人財育成方針である「当事者意識・発信型人財」「マルチスキル人財」「グローバル人財」に沿った取組み、および将来を見据えた若手からシニア世代まで全世代が活躍できる制度および研修を実践、クリエイティブ人財の育成を推進しております。

当社グループは、コンプライアンス担当者会議やマネジメントシステム(ISO14001)で、「特定したリスクと機会」に記載した気候関連のリスクを管理しております。
リスク管理のプロセスは、リスクの識別・評価を行い、発生頻度やインパクトから優先順位付けした上で、委員会等で回避などの対策を決定し、進捗管理を行っております。また重要リスクについては定期的に取締役会に報告しております。
当社グループの環境活動は、長期目標である2050年に工場のCO2排出量ゼロなどの目標を掲げております。
また、中期目標である2030年マイルストーンとしてCO2排出量を46%減(2013年度比)を設定しながら、環境に配慮した生産工程や設備の開発など、社内横断的にCO2低減活動を進めてまいります。
さらに5年ごとに「環境取組みプラン」を策定し、毎年の会社目標へ落とし込んで活動を推進してまいります。

人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績
当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
※同じ役割であれば、男女で賃金に差異はありません。差異の主な要因は①職能資格別の人員構成比差(上位の職能資格に女性の割合が少ないこと)、②勤務時間・勤務形態の違い(短時間勤務、深夜勤務等)やそれに付随する手当の支給有無によるものです。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある重要なリスクには、以下のようなものがあります。ただし、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外も存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの全世界における営業収入の大部分を占める自動車関連の需要は、国又は地域の経済状況の影響を受けます。従いまして、日本、北米、中国、アジアを含む当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、競合他社が製造を行う地域の経済状況からも間接的に影響を受けることがあります。
当社グループの主要な販売先は、その他の関係会社であるトヨタ自動車㈱であります。当連結会計年度における当社グループの売上高の27.8%はトヨタ自動車㈱向けであり、同社の販売動向及び購買政策等は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの生産及び販売活動の一部分は、アメリカ、中国、アジアの新興市場等の日本国外で行われております。これらの海外市場への事業進出には政治、経済、社会的混乱などによるリスクが内在しており、これらの事象は業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、事業展開する各国において様々な政府規制や、法規制の適用による影響を受けることがあります。また、連結財務諸表は日本円で表示されているため、為替変動の影響を受けます。為替相場の変動は、外国通貨で販売する製品及び部品や材料などの調達価格に影響を与える可能性があります。
生産に必要な資材の調達につきましては、供給の安定や品質、コストの面から最適な調達先を選定しておりますが、需給の逼迫等の要因により当社グループの主要な原材料について価格上昇圧力が強まる可能性があります。この結果、生産計画に支障が生じる可能性やコストアップが発生し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、原油価格の高騰は生産・物流に関わるコストを上昇させるだけでなく、経済及び自動車販売のマイナス要因となり、これが当社グループの営業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは製造ラインの中断による潜在的なマイナス影響を最小化するために、定期的な設備点検を行っております。特に近い将来に発生が予想される南海トラフ大地震に対しては、数々の対策を講じております。しかし、生産設備で発生する災害、停電又はその他の中断事象による影響を完全に防止又は軽減できる保証はなく、大規模な地震やその他の事象によって操業を中断する場合、生産能力が低下する可能性があります。
当社グループは品質保証体制の一層の強化を基本方針として定め、各種の製品を製造しております。しかし、安全に関する外部環境が変化しており、将来においてリコールが発生しないという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償が発生した場合、多額のコストが発生するとともに当社グループの評価に多大な影響を与え、当社グループの業績と財務状況に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上の前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。したがって、実際の結果が前提条件と異なった場合、又は前提条件が変更された場合は、将来の退職給付費用及び債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループはビジネス活動において、継続的なコンプライアンス経営の充実に努めております。しかし、様々な訴訟及び規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には当社グループの業績及び財務状況に重要な影響が及ぶ可能性があります。
また、当社グループは知的財産権に関して、権利の保護及び侵害防止などの取組みを強化しておりますが、当社グループの製品には多くの技術が利用されているため、第三者との知的財産権に関する訴訟の当事者になる可能性があります。
(9) 大規模感染症等による影響について
当社グループの主要取引先向けの売上高は、新型コロナウイルス感染症のような世界的な大規模感染症の拡大により、自動車メーカー各社の操業停止や新車需要が低迷した場合には、翌連結会計年度以降の当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
a. 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は561億2千3百万円となり、前連結会計年度末に比べ106億4千9百万円増加(23.4%増)いたしました。これは主に現金及び預金の増加(111億1千6百万円)によるものであります。固定資産は974億4千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ358億7百万円増加(58.1%増)いたしました。これは主に投資有価証券の増加(197億7千8百万円)及び退職給付に係る資産の増加(110億9千3百万円)によるものであります。
この結果、総資産は1,535億7千2百万円となり、前連結会計年度末に比べ464億5千7百万円増加(43.4%増)いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は200億9千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ36億7百万円減少(15.2%減)いたしました。これは主に1年内返済予定の長期借入金の減少(45億5千万円)によるものであります。固定負債は410億7千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ262億3千5百万円増加(176.8%増)いたしました。これは主に長期借入金の増加(169億2千7百万円)及び繰延税金負債の増加(92億7千2百万円)によるものであります。
この結果、負債合計は611億7千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ226億2千7百万円増加(58.7%増)いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は923億9千5百万円となり、前連結会計年度末に比べ238億3千万円増加(34.8%増)いたしました。これは主にその他有価証券評価差額金の増加(138億4千9百万円)及び退職給付に係る調整累計額の増加(71億4千1百万円)によるものであります。
この結果、自己資本比率は57.2%(前連結会計年度末は60.0%)となりました。
b. 経営成績の状況
当連結会計年度における主要取引先の自動車生産台数は、第4四半期に一部の取引先における出荷停止の影響が出たものの、通期を通じて国内は堅調な需要に支えられ生産が回復したことにより増加し、また海外では中国・アジアが販売競争の激化や景気減速の影響を受けたものの、グローバル全体では増加しました。
このような状況のなか、当社グループの当連結会計年度の業績につきましては、売上高が前期に比べ82億9百万円増収(前期比8.8%増)の1,009億7千5百万円となりました。
この売上高は鋼材高騰の売価反映と為替変動の影響等約58億円を含んでおり、実質的な売上高の増収は24億円となりました。売上高は過去最高となりました。
損益の状況につきましては、営業利益が7億1千9百万円増益の10億7千3百万円(前期比202.9%増)、経常利益が15億2千1百万円増益の30億9千3百万円(前期比96.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は15億8百万円増益の19億9千万円(前期比313.1%増)となりました。
営業利益は、売上高の増加及び合理化改善による増益影響が、新製品開発に対する研究開発費及び従業員の昇給を含めた人的投資などの「意志ある固定費」、藤岡工場における事故影響などのコスト増を吸収し、増益となりました。
鋼材・資材・物流費及び動力光熱費等のインフレ影響は前年度高騰した分の影響も含め大きな減益圧力となりましたが、お客様との適正な売価反映交渉が国内、海外において実現でき、結果、ほぼ全てのインフレ影響を相殺する事ができました。
第4四半期の急激な生産台数変動に対する生産性ロスを最小限に抑えながら、中長期経営計画で掲げていた製品の高付加価値化として新技術を搭載した新製品スタビライザの量産開始による収益性の向上に加え、グローバルにおけるエンジニアリング調達改善強化など従来の延長線上を超える原価低減を実施いたしました。
特に課題としていました北米地域が当連結会計年度通年で黒字化を実現いたしました。各機能単位に明確な目標を課し、着実なPDCAサイクルを実施することで事業基盤が強化されてきております。現地ローカルを主体として更なる競争力強化、自立化の取組みを今後も実施してまいります。
併せまして、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も増益となりました。経常利益と営業利益の差は、当社は自己資金によるグローバルオペレーションを実施していることから、為替が円安方向に振れたため、外貨保有資金に対し営業外増益効果がでたためです。
セグメントの業績は、次のとおりであります。なお、売上高はセグメント間の売上高を含んでおります。
〔日本〕
主要取引先の自動車生産及び販売台数が増加したことに加え、鋼材高騰分の一部売価反映及び客先からの発生費用回収等により、売上高721億6千6百万円(前期比9.2%増)、営業利益11億9千8百万円(同71.0%増)となりました。
〔北米〕
鋼材高騰分の一部売価反映により、売上高99億6千2百万円(前期比13.7%増)、営業利益2億3千5百万円(前期は2億7千4百万円の営業損失)となりました。
〔中国〕
主要取引先の自動車生産及び販売台数が増加したため、売上高119億3千万円(前期比2.2%増)、製品構成の変化により、営業利益6億8千9百万円(同20.6%減)となりました。
〔アジア〕
鋼材高騰分の一部売価反映により、売上高174億6千3百万円(前期比0.3%減)、営業利益7億8千万円(同28.5%増)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、211億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ111億1千6百万円増加(111.3%増)となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は57億3千7百万円(前年同期比144.9%増)となりました。これは主に、減価償却費39億9百万円、売上債権の減少10億3千9百万円などの資金の増加と、退職給付に係る資産の増加16億7千5百万円と仕入債務の減少9億9千5百万円などの資金の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は66億8千1百万円(前年同期比84.5%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出67億1百万円などの資金の減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は117億1千5百万円(前年同期比246.9%増)となりました。これは主に、長期借入れによる収入170億円などの資金の増加と、長期借入金の返済による支出46億2千3百万円などの資金の減少によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価格によっております。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
当社グループ(当社及び連結子会社)は、トヨタ自動車株式会社をはじめとして、各納入先より四半期毎及び翌月の生産計画の提示を受け、当社グループの生産能力を勘案して生産計画をたて生産しております。このため受注状況の記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討結果
当連結会計年度におきましては、「競争力強化」、「グローバル展開」、「経営基盤強化」の3つを大きな柱として、活動を進めてまいりました。
競争力強化への取組みとして、売上変動に強い体質作りによる体質強化、合理化改善等による生産性向上、商品力の強化による売上拡大への取組み等、全機能が一丸となって拡販活動を行ってきました。また、KPI指標による現場競争力強化や原価低減活動等により、生産現場の強固な足元固め、変化に対応できるモノづくりを目指してまいりました。
グローバル展開につきましては、中国・北米・アジアでのグローバル供給体制を拡充し、海外生産比率を高め、主要取引先以外の拡販にも力を入れてまいります。
経営基盤強化につきましては、変化に即応できる強靭なチームとクリエイティブな人財づくりをテーマに活動しております。
このような状況のなか、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高1,009億7千5百万円、営業利益は10億7千3百万円、経常利益は30億9千3百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は19億9千万円となりました。
上記の他、当連結会計年度における経営成績の前連結会計年度との比較分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は211億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ111億1千6百万円増加いたしました。
これは営業活動の結果獲得した資金が57億3千7百万円と前連結会計年度に比べ33億9千4百万円増加し、投資活動の結果使用した資金が66億8千1百万円と前連結会計年度に比べ30億6千万円増加し、財務活動の結果獲得した資金が117億1千5百万円と前連結会計年度に比べ83億3千8百万円増加したことによります。
上記の他、各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b. 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要のうち主なものは、当社グループ製品の製造のための材料や部品の購入及び新製品の生産や増産対応等にかかる設備投資によるものであります。
当社グループは、運転資金及び設備投資資金については、原則内部資金又は借入及びリースにより資金調達することとしております。借入及びリースによる資金調達に関しては、運転資金として短期借入金を各連結子会社が、運転資金又は設備投資資金として当社及び各連結子会社が長期借入金とリースにより調達しております。また、その一部はグループ内資金の効率化を目的としグループ会社間で融資を行っております。
当社グループは財務の健全性を保ち、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことによって、当社グループの将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、240億5千6百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は211億3百万円となっております。
c. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の損益指標、単独及びグローバルベースでの売上高、将来に向けた投資(人、モノ、カネ)、試験研究費等の指標を、目標の達成状況を判断する指標としております。
2024年2月1日に開示しております連結業績予想と実績の比較につきましては、次のとおりであります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、連結会計年度末における資産・負債の報告数値、各連結会計年度における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りを行っております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(注) 上記契約に基づく報酬として、売上高に応じて一定率のロイヤルティを受領しております。
b. その他の契約
(注) 上記契約に基づく報酬として、一定額のロイヤルティを受領しております。
当社グループは、中長期に向けて、主力シャシばね製品の最軽量化に向けた新材料開発と標準材の適用拡大、今後の製品競争力を支配する分野である電動化と自動運転に対応した新領域製品の開発、量産化を進めております。なお、研究開発活動につきましては日本のみで行っておりますので、セグメント別の記載を省略し製品区分で記載をしております。
当連結会計年度における主な製品区分ごとの成果は以下のとおりであります。
シャシばね区分では、懸架コイルばね・スタビライザ・重ね板ばねともに、グローバル化に向けた海外・国内ばね標準材の調査・採用を継続しております。懸架コイルばねに引き続きスタビライザにおいても材料と加工処理の最適化により標準材を用いた高強度化を実現しております。これにより、更なるグローバル最適調達が可能になり、注目されるインド材,中国材および北米材の評価を積極的に実施し、現地調達化を進めております。そして、CO2削減対応のため益々高まる自動車メーカーからの軽量化のニーズに対応するため、懸架コイルばねにおいて高強度材の他、非鉄、複合材の開発にも取組んでおり、車両特性、燃費向上に貢献できる技術として期待されるなか、量産化に向けて進めております。また、高付加価値製品につきましては、従来にない乗り心地と操縦安定性向上をコイルばねの特性とラバーシート特性のトータル最適化で実現を図るためのばねとラバーの一体設計やスタビライザモジュール開発など、周辺部品の取り込みにも注力しています。今後、より付加価値を生むための加工技術開発にも取組み、更なる軽量化、原価改善に貢献できるよう積極的に開発を推進しております。今後も開発スピードを大幅に向上させる取組みを推進していきます。
精密ばね区分では、競争力の強化として、今後更なる展開が予測される、自動車の電動化に向けた、ユニット冷却に用いられるばね製品の量産化を進めております。また、近年搭載適用が拡大しているパワーバックドア用長ばねの静音性をより高めた植毛ばねの量産、スライドドアの開閉ロック機構モジュールの量産をしております。これらは、当社既存の固有技術を組合せて活用することで、高性能という付加価値を加え、売上・収益の改善に貢献します。更なるグローバル化に向けた現地調達化を進めております。
既存製品については、新規客先への技術プレゼンによる拡販活動や、品質・性能適正化による原価低減活動に取組んでおります。
ケーブル区分では、廉価材の活用と併せ部品内製化による原価低減の継続的な推進と生産地域の最適化により、価格競争力向上を実現するとともに、自動車用シートやドアウィンドウなど新たに採用されるケーブルの拡販を進めております。さらに海外事業においては、良品廉価な現地調達部品の活用による競争力向上を図り、更なるビジネス拡大を目指しております。
鉄道など非自動車分野、将来拡大が見込まれるオフィス、住宅や家具等の分野に対し、当社技術を活用した製品の開発も進めており、当社初となる鉄道関係製品は量産化しており、今後市場投入が予定されている鉄道関連新機構の主要部品となる製品の試作、評価も新たに開始しております。また、「高齢化社会への貢献」を目指し福祉・介護分野向け製品「各種リハビリ機器」・「移動補助装置」を開発しており、特に車いす牽引装置については昨年度より量産を実施しております。
その他区分では、継続的な新製品創出を目指し、当社コア技術に新たな技術を加えた開発を引き続き積極的に進めております。建築用部品である窓開閉装置においては、「快適空間の実現」に向けITを活用した新製品開発に取組んでおり、2024年度には販売を開始することになっております。また、電気自動車対応製品として開発した「充電ケーブル収束装置」の拡販を進めており、エクステリアメーカー・サッシメーカーとのコラボ商品の販売を開始しております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
研究開発活動は緩めることなく、選択と集中による費用の最適化を行っております。