第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、2025年度に創立100周年と言う大きな節目を迎える事になります。このため、2025年度を最終年度とする中期経営計画に基づき各種施策を実行しておりましたが、2024年度に予定していた美術缶新規設備の稼働が大幅に遅れる事により業績の悪化が免れないことに加え、年々厳しさを増す金属缶の製造販売において、次の100年に向け安定した成長が実現できるべく経営改革を発表しました。

これを受けて2025年度は不退転の覚悟で経営改革を実施し、2026年度以降安定した成長が実現できる企業に生まれ変わるべく全社一丸となり取り組んでまいります。

 

(1)当社グループの目標

 当社グループは、金属缶の製造販売を主たる業務とし、同分野において日本を代表する成長性と収益力を持つ企業を目指します。そのために顧客のニーズに機敏に即応し、顧客とともに成長し、新たな製品開発力を持ち、業界に新風をもたらす魅力のある企業となることを基本方針としております。

 当社は、2025年度に創業100周年を迎えるにあたり、次の100年に向けた大きな経営改革を実行します。

 その結果として、株主各位、取引先、従業員にとって魅力のある企業グループとなり、当社製品を通じて社会の発展に貢献することが、当社グループの目標とするところであります。

 

(2)当社グループの「企業パーパス(使命)」

①企業パーパス(使命)

「顧客への+(プラス)、社員への+(プラス)、社会への+(プラス)。+(プラス)創造を通じて、明るく豊かな未来を創造していく」

②コーポレートビジョン

「+(プラス)創造企業」

③「企業パーパス(使命)」を起点とする企業理念

1)顧客への+(プラス)

 ・お客様にとり魅力ある缶メーカーであるよう、付加価値の高い新しい製品と、新しいSolution作

りに、常に熱い想いで勇敢にチャレンジし、お客様に+(プラス)を提供していきます。

2)社員への+(プラス)

 ・社員みんなが、夢と希望に燃えて、毎日ワクワクして、One Teamとして楽しく仕事ができる安心安全な職場環境と人事制度作りで、社員のみんなに+(プラス)を提供していきます。

3)社会への+(プラス)

 ・人々の日々の暮らしを陰から支え、安心で豊かな、快適で持続可能な社会づくりと、人と地球にやさしい未来づくりのため、社会に+(プラス)を提供していきます。

 顧客への+(プラス)、社員への+(プラス)、社会への+(プラス)創造と提供が、結果として、企業収益を生み、株主へも配当と株価上昇として貢献できると考えております。

④環境理念

 ・常に地球環境を考えて、人と地球にやさしい未来づくりを目指します。

  「NIKKANは、未来のKAN-Kyouを今日も考えています」

 

(3)当社グループの経営方針

「+(プラス)創造企業」のコーポレートビジョンの下、上記目標を実現するために、当社グループは以下5つ

の経営方針で臨んでまいります。

①製造コスト低減とプロダクトミックス改善を通じた経営基盤の強化

②新製品の開発や新規客先確保による新しい収益基盤の創造

③当社グループ全体としての収益力増強

④不動産賃貸事業の収益力増強

⑤業務提携・M&A等を通じた将来への布石

 

(4)当社グループを取り巻く経営環境

 鉄鉱石・石炭等、鋼材原材料の価格高騰・高止まりに加え、地政学的リスクの高まりによる石油・ガス等エネルギー価格のじり高や、激しい円安進行による諸物価の上昇、中国経済の景気停滞の波を受けて、日本のスチール缶業界は未曽有の厳しい経営環境にさらされております。2024年度においては鋼材価格の値上げに加えて、ホワイト物流による値上げ、印刷代や部材の値上げ、従業員の待遇改善等を製品価格に転嫁すべく交渉を行って参りました。

 中長期的に見ましても、18L缶の主要な市場である国内の塗料・化学・油糧の需要は、今後、減少する事が予想されています。

 この外部環境の大きな変化の中、当社グループが生き残り大きく成長していくためには、旧態依然とした企業体質・企業文化・企業風土を変えることに加え、抜本的な経営改革を実行することとしました。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①製造コスト低減とプロダクトミックス改善を通じた経営基盤の強化

②新製品の開発や新規客先確保による新しい収益基盤の創造

 

(6)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は2025年度を最終年度とする中期経営計画を発表致しましたが、18リットル缶業界の今後の動向を見据え、抜本的な経営改革(ラインの集約に伴う千葉工場の閉鎖、人員合理化、減損、新製品の開発等)を先行して実行し、中長期的な安定経営を目指すことと致しました。よって2025年度は今回の経営改革の進捗を注意深く見守り、同時に当社の将来に向けてのあるべき姿をきちんと確立していく所存であります。

 

(7)事業上及び財務上の対処すべき課題

当社グループが対処すべき当面の課題としましては、以下があります。

①製造コスト低減とプロダクトミックス改善を通じた経営基盤の強化

②新製品の開発や新規客先確保による新しい収益基盤の創造

③販売費・一般管理費の見直し・低減

④バランスシート改革と借入金の計画的な削減

⑤SDGsに対する積極的な取組み

次のとおり対処します。

①・製造ラインの集約、人員合理化等によるコスト競争力の強化

・DX化の推進による不良品削減、設備総合効率等の改善

・各客先別に当社販売シェア、採算を分析し利益の最大化

・高付加価値製品の比重拡大

・客先へのサービス向上、品質向上によるシェアの維持・拡大

②・顧客ニーズに密着した新しい商品の開発による他社製品との差別化

・高付加価値製品の新規取引先開拓

・同業他社との資本・技術・業務提携の推進

③・輸送効率の改善

 ・業務の棚卸、コストと利便性から考えた諸費用の見直し

④・営業活動によるキャッシュ・フロー改善

 ・投資有価証券の計画的な売却による有利子負債圧縮

⑤・SDGsを意識した全社一丸としての行動

 ・その結果については「環境活動レポート」によってホームページ上で公表

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 (1)ガバナンス

 当社は、環境理念として、「NIKKANは、未来のKAN-Kyouを今日も考えています」を掲げ、常に地球環境を考えて、人と地球にやさしい未来作りを目指します。地球環境の保全が人類共通の課題であることを認識し、経営の重点課題の一つとして「SDGsに対する積極的な取組み」を挙げており、事業活動全域において環境負荷低減活動を展開しております。また環境問題が企業活動の中で最重要課題の一つと位置づけられる今日、当業界は循環型社会に適応したリサイクルと資源の有効活用を強力に推進してきております。当社はこうした中、企業としての社会的責任を果たすべく、法令順守の徹底はもとより、二酸化炭素排出削減など環境保全のために全社を上げて真剣に取り組んでおります。

 「お客様にご満足いただける高品質製品の提供」とともに「事業活動全域における環境保全に配慮した活動の展開」を最重点目標とし、会社環境方針として、①廃棄物の削減・有価物化・再利用化、②カーボンニュートラルの目標実現に貢献すべく省エネルギ―化を掲げ全体としての温室効果ガス、特に二酸化炭素(CO)の低減を図るため継続的に改善活動を行ってまいりました。

 この方針を実現するために的確な資源を提供し、品質・環境マネジメントシステムを構築し、推進しながら常に結果を見直すPDCAサイクルを廻すことで継続的改善を図っております。

 当社では、代表取締役社長がサステナビリティ、リスクマネジメントに関する取り組みの最高責任を負います。

事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し対応するために、執行の諸機関では事業活動で考えられるリスク

を特定し、その対応計画を策定します。執行の諸機関では四半期ごと定期的に対応策の実行状況を「リスク管理フ

ォロー表」として取り纏め、各種リスク対応について確認、評価し、その進捗状況については取締役会に報告され

取締役会では進捗の監督、方針の決定がなされております。

 

(2)戦略

①「持続可能な開発目標(SDGs)」の取組みの一貫として、埼玉県並びにさいたま市への取組み宣言を実施ししております。これにより、当社及び社員一同のサステナビリティに関するモチベーションのアップを図っております。

②コンプライアンスポリシー(企業行動基準)を基盤に、品質・環境方針にも連動させ、8つの重要課題(マテリアリティ)を設定し、具体的な取り組み(「当社の重要課題と実行項目」を参照)を行っております。

 なお、マネジメント体制におきましては、品質と環境を統合しており、各々品質管理責任者並びに環境管理責任者を配置し運用します。また、2022年度には人権尊重に関するグループポリシー、贈収賄防止に関する基本ポリシーを設定しました。サプライチェーンを含め人権への配慮とコンプライアンス遵守を進めます。

③毎月、代表取締役社長主催による品質・環境管理責任者、各部署長、関連管理職並びに ISO事務局で構成される「ISOMS 推進委員会(経営連絡会)」を開催しています。環境方針に沿って決めた目的・目標の達成状況を、部署ごとに発表し進捗状況を確認しています。さらに年に1回、この委員会でシステム全体のマネジメンレビューを実施し、活動の有効性・適切性・妥当性を判断します。

④人材の多様性確保、人材育成、社内環境整備に関しては、人の力を最大限に発揮できる環境を作り、新しい発想、変革を恐れないチャレンジ精神で成長を目指すべく、以下の方針で進めていきます

 ・当社は、社員が最も大事な経営資本と考えます。企業文化の変革と働き方改革により、社員が、やりがい、働きがい、希望を持って、前向きに、明るく、楽しく働け、会社への高い帰属意識と生産性の向上を目指します。

 ・当社は、定期的に全社員総会を実施し、単年度予算進捗及び会社の目指す方向を共有しております。

 ・年功序列と終身雇用が昭和の高度成長を支えてきましたが、外部環境は大きく変化し、少子高齢化が余儀なくされています。人材不足、人材多様化の流れの中で、これ迄の既成概念から脱し、多様な価値観を尊重した諸制度の見直しが必要となっています。そのため、社員のやる気・やりがいの向上と、ひいては収益の向上に寄与するため人事評価や給与体系を含めた人事制度全体の刷新を行いました。今後、教育・研修制度の充実、ダイバーシティ推進による新しい発想と企業文化の変革を目指します。

 ・定期的に社員の意識調査を実施しております。職場活性度、満足度や、社員の抱える問題について、現状の把握を行い、社員のやる気・やりがいを引き出す施策作りに活かしていきます。

 ・社員の持つ力、潜在能力を最大限発揮できるように、働き方改革、人材育成を実行します。

 ・社員が年に1回自分のキャリア、将来像を考え、今後の能力アップや自己研鑽の指針となるようキャリアビジョンシートでの申告制度取り入れております。社員に能力を十分に発揮してもらい、働きやすい職場環境を整えていきます。

 ・当社は、管理職研修、管理職になるためのキャリアアップ研修を実施してまいります。

当社の重要課題と実行項目

マテリアリティ

重要課題

具体的な取り組み内容

SDGsへの貢献

1.社会ニーズに寄り添った製品・サービスの提供

・ISO9001をベースに品質マネジメントシステムの運用

・顧客満足度調査及び分析による要望事項への対応

・内容物の多様化に対応する各種内面フィルム缶の提供

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2.品質保証の充実

・製品検査体制の充実

・食品衛生法に準拠した材料の使用

・独立した品質保証室による品質保証体制の強化

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3.環境への貢献

・SDGsの取組(埼玉県及びさいたま市SDGs認証制度の維持への対応)

・ISO14001をベースに環境マネジメントシステムの運用

・彩の国埼玉環境大賞奨励賞受賞

・省エネ活動・リサイクル活動の推進

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4.サプライチェーンとの共存共栄

・災害時、事業復旧し継続するための計画策定

・BCP(事業継続計画)の策定にともなう継続運用

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5.ステークホルダーの信頼維持

・当社HPでのIR情報の公開

・上場企業としてのガバナンス体制の構築と開示

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6.地域社会への貢献

・地域クリーン作戦の実施

・次世代を担う人材育成に資する取り組み

・埼玉県緑のトラスト協会への入会及び保全活動への取り組み

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7.従業員の尊重

・従業員の疾患予防(健康診断・メンタルヘルスチェックetc.)への取り組み

・資格手当や資格取得奨励金の給付による従業員取り組み意識の向上

・女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」取得

・埼玉県シニア活躍推進宣言企業認定取得

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8.コンプライアンスの徹底

・コンプライアンス研修会定期的な開催による意識向上

・コンプライアンスマニュアルの作成及び教育

・人権侵害の予防措置

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 (3)リスク管理

 当社では、代表取締役社長がリスクマネジメントに関する取り組みの最高責任を負います。継続的なモニタリングが必要なリスクを可視化し、リスクの影響度、可能性を俯瞰できるようなリスクマップを作成し、取締役会及び執行の諸機関における活発な議論を図っております。

 当社では、製造拠点並びに技術部門の他、全部門を対象に環境ISOに係る内部監査を年2回実施しています。内部監査員は、指定された研修を受け監査人としての基準を満たした従業員が任命され、自部門以外の監査を2名体制で実施しています。第3者による外部審査も受けております。

 毎年、統合ISOの観点から見直しを行い、環境マネジメントシステム強化に取り組んで参ります。

 

 

 (4)指標及び目標

 活動の指標としまして、品質・環境方針に基づき、定期的に会社目標を設定し、年度毎に具体的な目標を設定して、各部門において目標達成のための活動を展開しています。

 これまでに環境負荷低減を意識した教育並びにPDCAを通じた具体的な省エネルギー活動に力をいれ進めてまいりました。こうした継続的な取組みの結果、少しずつですが実績を上げてきております。子会社を含みます連結ベースでのエネルギー起源(電気、ガス、ガソリン)による2023年度CO 排出量は、2013年度対比で1,248トン、約27%削減となりました

 CO排出量につきましては、2030年度に2013年度比 46%削減を目指します

 品質・環境関連法規制及びその他の要求事項を遵守しながら、社員一人ひとりが環境改善に取り組むことにより、品質向上にもつながることを理解してもらっております。これからも新たにSDGsに対する積極的な取組みや環境保全活動を力強くかつ継続的に推進してまいります。2024年度の実績は集計中です。まとまりましたら当社ウエブサイトに環境活動レポート2024年度版として開示いたします。

 ダイバーシティに関しましては、同じ企業文化で育ち、同じ考え方を持つ人材だけでは、イノベーションや新陳代謝を妨げ、会社の発展を阻害することになります。その観点から、多様性を確保し、違う意見を表明する者、違う視点から物事を捉える者の確保が必要と考えております。

 2025年3月末時点の当社グループの中途入社比率は68%、中途入社者の管理職比率は58%と多様性を充分に確保した状況となっています。

 当社の事業は国内完結であり、外国での製造・販売・ 事業展開は無いため、特に外国人に限定した外国人の管理職登用についての目標は設定しておりません。

 当社の女性の管理職への登用については、2022年4月から2027年3月までの5か年計画により、採用と人材育成により実行していく考えであります。女性の管理職比率は、5%を目指します。

 子会社の「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」については、2022年1月から2026年12月までの行動計画により、非正社員を対象としたキャリアアップに向けた研修を実施し、その受講割合を男女ともに対象となる層の60%以上を目標としています。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

1.会社がとっている特異な経営方針に係るもの

  該当事項はありません。

2.財政状態及び経営成績の異常な変動に係るもの

(1)売上高の変動について

 これまでの緩やかな金属缶の需要の減少に加え、鋼材価格、印刷費、輸送費、ガス・電力費等の急激な上昇に起因した製品価格の上昇等が、金属缶の他容器への移行の動きを誘発し、金属缶の需要そのものの減少を加速する可能性があります。またそのために、過当競争が激化することも懸念されます。これらの事象が、当社グループの売上高に影響を与える懸念があります。

 美術缶の大型設備の設置を実施しましたが、稼働が予定よりも大幅に遅れ売上高に大きな影響が出ました。

また、美術缶については従来の1社購買から複数購買となった客先もあり、美術缶の売上高の減少が懸念されます。

(2)原材料価格の変動について

 2024年度は鋼材価格の値上げ要請を受け、他にもホワイト物流による物流費の値上げ、印刷代や部材の値上げや、従業員の待遇改善に対応したコスト上昇分の製品価格への転嫁を行ってきました。

(3)外部負債と金利変動リスクについて

 当社グループの外部負債は、2025年3月末現在、短期借入金200百万円、長期借入金(含む1年内)2,911百万円、リース債務(含む1年内)39万円、合計3,112百万円であります。
 今後金利水準が大きく変動した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4)賃貸不動産の稼働率について

 当社グループは本社敷地内に賃貸建物(鉄骨造3階建延べ11,493㎡)を保有しており、賃貸不動産の稼働率が業績に影響を及ぼす可能性があります。

3.業界状況について

 当社グループの主力商品である金属缶業界は、過剰設備と長期的な需要減退の状況が続いており、稼働率の低下、過当競争による採算悪化という構造的な問題を抱えております。

 需要に見合った業界規模への再編成の動きが出て来ることが予想され、適切な経営判断を行う必要があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度のわが国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果もあり緩やかな回復基調で推移しました。その一方で、米国の経済政策の不確実性や中国経済の景気停滞、円安による諸物価の上昇やエネルギー価格の高騰、海外景気の下振れ懸念が、わが国の景気を下押しする要因となり、先行き不透明な状況が続いております。

 当社グループの主力品種である18L缶の当連結会計年度の売上高は前年対比で12.6%増加しております。また、美術缶につきましては新規生産設備の遅れなどがあり、当連結会計年度の売上高は前年対比で46.2%減少しております。

 このような中、当社グループの当連結会計年度の売上高は、11,259百万円(前年比8.1%減)、営業損失は540百万円(前年は営業利益256百万円)、経常損失は476百万円(前年は経常利益323百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は335百万円(前年は親会社株主に帰属する当期純利益271百万円)となりました。

 セグメントの概況は次のとおりです。

a.金属缶製造販売事業

 当社グループの販売実績は、18L缶につきましては、販売数量の増加、材料等の値上げの転嫁が順調に進み、全体では、対前年比で売上高12.6%増、となりました。美術缶につきましては、新規製造設備の稼働遅れもあり、前年対比で売上高46.2%減となりました。

 製品別売上高                                 (単位:千円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

金額

構成比

金額

構成比

18L缶

7,782,029

64.4

8,765,017

79.0

美術缶

3,531,250

29.2

1,900,069

17.1

その他

776,628

6.4

430,606

3.9

12,089,908

100.0

11,095,694

100.0

 金属缶製造販売事業の売上高は11,095百万円(前年比8.2%減)、営業損失は624百万円(前年は営業利益176百万円)となりました。

b.不動産賃貸事業

 不動産賃貸事業の売上高は163百万円(前年比3.3%増)、営業利益は83百万円(前年比4.4%増)となりました。

 

(資産の部)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて2,238百万円減少し12,966百万円となりました。

 流動資産におきましては、前連結会計年度末に比べて580百万円減少し7,084百万円となりました。これは主に現金及び預金が1,259百万円増加し、受取手形及び売掛金が533百万円、電子記録債権が1,266百万円、原材料及び貯蔵品が114百万円減少したことによるものであります。

 固定資産におきましては、前連結会計年度末に比べて1,657百万円減少し5,882百万円となりました。これは主に有形固定資産が537百万円、無形固定資産が53百万円、投資その他の資産が1,066百万円減少したことによるものであります。

 

(負債の部)

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて1,104百万円減少し7,946百万円となりました。

 流動負債におきましては、前連結会計年度末に比べて866百万円減少し5,101百万円となりました。これは主に電子記録債務が967百万円、1年内返済予定の長期借入金が64百万円増加し、支払手形及び買掛金が1,659百万円、短期借入金が200百万円減少したことによるものであります。

 固定負債におきましては、前連結会計年度末に比べて238百万円減少し2,844百万円となりました。これは主に長期借入金が22百万円、退職給付に係る負債が59百万円増加し、繰延税金負債が320百万円減少したことによるものであります。

 

(純資産の部)

 当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて1,133百万円減少し5,019百万円となりました。

 これは主に利益剰余金が432百万円、その他有価証券評価差額金が665百万円減少したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は31.4%(前連結会計年度末は34.2%)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,259百万円増加し、当連結会計年度末には1,896百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は896百万円(前年比131.6%増)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失△250百万円、減価償却費408百万円、減損損失607百万円、投資有価証券売却益△920百万円、売上債権の減少1,799百万円、棚卸資産の減少118百万円、仕入債務の減少△692百万円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果得られた資金は640百万円(前年は使用した資金680百万円)となりました。これは主に有形及び無形固定資産の取得による支出△391百万円、投資有価証券の売却による収入1,038百万円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は277百万円(前年は得られた資金269百万円)となりました。これは主に長短有利子負債の減少△117百万円、配当金の支払△94百万円、非支配株主への配当金の支払△19百万円、自己株式の取得による支出△45百万円等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績を金属缶製造販売事業内の製品別に示すと次のとおりであります。

金属缶製造販売事業内製品区分

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

    至 2025年3月31日)

前年比(%)

18L缶 (千円)

8,024,479

115.3

美術缶 (千円)

1,417,827

46.1

その他 (千円)

282,234

46.2

計  (千円)

9,724,541

91.4

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注状況を金属缶製造販売事業内の製品別に示すと次のとおりであります。

金属缶製造販売事業内

製品区分

受注高(千円)

前年比(%)

受注残高(千円)

前年比(%)

18L缶

8,752,649

112.7

250,464

105.2

美術缶

2,119,143

60.6

33,619

13.3

その他

475,968

63.6

20,974

31.6

11,347,761

94.5

305,058

54.8

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績を金属缶製造販売事業内の製品別に示すと次のとおりであります。

金属缶製造販売事業内製品区分

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

前年比(%)

18L缶  (千円)

8,765,017

112.6

美術缶  (千円)

1,900,069

53.8

その他  (千円)

430,606

55.4

計       (千円)

11,095,694

91.8

 

 

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

西部容器株式会社

1,657,228

13.6

1,833,751

16.3

株式会社明治

2,615,333

21.4

664,827

5.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として次のものがあります。

a.鋼材価格、印刷費、輸送費、ガス・電力費の価格上昇

 当社の業績は、鋼材価格、印刷費、ガス・電力費が急激、且つ大幅な上昇をした場合、如何に速やかに製品価格に転嫁できるかにかかっております。当連結会計年度は、順調に価格転嫁を進めることができましたが、今後も全力を挙げてこれに対処してまいります。

b.需要動向

 日本の国内需要は人口減少並びに日本企業の海外移管に伴いこの30年間を通じ、需要がほぼ半減しました。

 ここ数年の動向は減少速度も衰え、2024年度において若干のプラスに転じましたが、今後の見通しは楽観できるものではないと考えています。こうした中では当社の取るべき方向は市場調査を通じ客先のNEEDSをいち早く察知し他社と差別化を図り、売上の維持・拡大に全力を挙げてまいります。

c.金融情勢の動向

 負債資本倍率は0.8倍でした。当社グループの有利子負債の圧縮を目指しましたが、当連結会計年度は、減損損失の計上、早期退職者募集に伴う経費の計上等もあり大きな圧縮は出来ませんでした。

 今後の金融情勢により、収益の圧迫要因となる可能性があります。

d.販売実績

 当社グループの当連結会計年度の売上高は、11,259百万円となりました。

 金属缶製造販売事業においては、主力製品である18L缶の売上高は、販売数の増加、鋼材等の値上げの転嫁もあり8,765百万円となりました。

 美術缶につきましては新規製造設備の稼働遅れもあり、売上高は、1,900百万円となりました。

 不動産賃貸事業においては、自社保有の建物等の不動産賃貸を行っており、163百万円となりました。

 

 経営成績の分析

a.売上高

 売上高は前連結会計年度に比べ989百万円減少し11,259百万円(前年比8.1%減)となりました。金属缶製造販売事業セグメント内の18L缶においては、販売数量の増加、原材料やエネルギーコスト高騰を背景とした価格転嫁が進み、全体では前連結会計年度末に比べ982百万円増加し8,765百万円(前年比12.6%増)となりました。美術缶においては、新規製造設備の稼働遅れもあり、前連結会計年度末に比べ1,631百万円減少し1,900百万円(前年比46.2%減)となりました。

b.営業利益

 営業損失は540百万円(前年は営業利益256百万円)となりました。これは主に売上高の減少によるものであります。

c.経常利益

 経常損失は476百万円(前年は経常利益323百万円)となりました。これは主に売上高の減少によるものであります。

d.親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純損失は335百万円(前年は親会社株主に帰属する純利益271百万円)となりました。これは主に売上高の減少と投資有価証券売却益の増加、減損損失と早期割増退職金の発生によるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,896百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,259百万円増加いたしました。これは営業活動の結果得られた資金が896百万円、投資活動の結果得られた資金が640百万円、財務活動の結果使用した資金277百万円によるものであります。

 また、有利子負債残高は3,112百万円となりました。

 上記の他、各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

b.契約債務

 2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(千円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

200,000

200,000

長期借入金

2,911,767

938,993

1,382,122

441,479

149,172

リース債務

396

396

 上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めており、リース債務は流動負債のリース債務の金額です。

c.財務政策

 当社グループは、運転資金及び設備資金等につきましては、内部資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入につきましては、長期借入金で調達することを基本としております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

(3)経営方針と経営上の目標達成状況

 2024年度は新美術缶ラインの稼働が大幅に遅れ、巨額の損失を計上することになりました。こうした状況を受け、且つ金属缶の今後の需要動向を鑑み、中長期的に安定した利益と成長を実現するために大規模な経営改革に踏み切る決断をしました。2025年度は経営改革を確実に実行し実現させることとし、同時に当社グループの中長期的にあるべき姿をキチンと確立していく事を考えています。

 

5【重要な契約等】

主な不動産賃貸の概要

契約先

賃貸建物の内容

契約期間

篠崎運輸株式会社

さいたま市北区吉野町2-275

鉄骨造3階建建物のうち、1階及び2階部分 延8,207㎡

自 2025年4月

至 2026年3月

 

6【研究開発活動】

 当社における研究開発の課題は、18L缶、美術缶とも得意先の要求に対応した新製品、及び省資源、産業廃棄物問題に対応できる新製品の開発、更に原価低減を図る設備の開発であります。

(1)18L缶、美術缶の品質向上と原価低減

(2)省資源に対応する包装容器の開発

(3)得意先のニーズに対応する新製品の開発及び現行製品の改良

(4)原価低減に資する設備の開発

 なお、当連結会計年度における研究開発費は、969千円であります。