当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループでは、2024年度より新たな3カ年の中期経営計画をスタートさせ、『恒久的な企業価値の創出を目指して』を基本テーマとして掲げ、課題の見える化を最優先とし、次世代に向けた恒久的な利益創出の仕組みづくりと人材育成に取り組んでいる。
初年度である2024年度は、「徹底した業務プロセスの見える化」をテーマとして、営業力強化で顧客満足度の向上を図るとともに、防災・減災・環境対応製品のさらなる販売強化、社会環境の変化に対応した生産体制の基盤構築と製造原価低減、設計・施工・工事のスキルアップ、人的資本への投資によるBXグループ価値の最大化などの施策に取り組んだ。
2年目である2025年度は、「効率的な業務プロセスの構築」を基本テーマとし、前年度の「徹底した業務プロセスの見える化」で顕在化した生産性や成長を妨げる課題に対し、新たな意識、発想、着眼点から利益創出の仕組みを再構築していく。業務プロセスの見える化とそれに準じた数値の可視化により、投資した資源を有効に活用し、効率的な事業運営ができているか確認できる仕組みを検証し、最終年度である2026年度には最大限の成果を生み出すべく、改革を実行していく。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、企業価値の向上をめざし、売上高・営業利益・営業利益率・自己資本利益率(ROE)・投下資本利益率(ROIC)・BxVA・BxVAスプレッドの向上に努めていく。
注)BxVA(Bx Value Added)は当社独自の指標であり、投下資本に対する付加価値額を表している。
BxVA=NOPAT-資本コスト額
BxVAスプレッド=投下資本利益率(ROIC)-加重平均資本コスト(WACC)
(3)事業を行う市場の状況
当社グループが事業を行う市場の状況は、新設住宅着工戸数が前期比2.0%増の81.6万戸となり、民間非住宅着工床面積(建築確認申請時点)は、店舗が増加したものの、それ以外の用途が軒並み減少したことで、前期比10.5%減の3,474万㎡と前年を下回った。
(4)中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題
今後のわが国経済は、個人消費や設備投資などの内需が堅調に推移し、景気は緩やかな回復が続く見通しであるが、海外経済の不確実性の高まり、物価や資源価格の動向など先行きは依然として不透明な状況となっている。
このような状況のもと、当社グループでは、2024年度より新たな3カ年の中期経営計画をスタートさせ、『恒久的な企業価値の創出を目指して』を基本テーマとして掲げ、課題の見える化を最優先とし、次世代に向けた恒久的な利益創出の仕組みづくりと人材育成に取り組んでいく。
(気候変動リスクへの対応)
当社グループでは、気候変動リスクへの対応を重要な経営課題の一つと捉えており、「2050年BXグループ脱炭素宣言」を表明し、脱炭素へ向けた本格的な取り組みを推し進めている。温室効果ガスの排出削減等に取り組む“緩和”の側面としては、2023年10月16日付でSBT(民間企業における科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標の設定)認定を取得したほか、事業所における再生可能エネルギー電力の調達や「新物流システム」の導入による積載効率の向上等の具体的な取り組みを推し進めている。また、商品開発分野においては、「遮熱・断熱」を今後の成長に向けた新たなキーワードとし、猛暑時における室内温度の上昇を抑制することによって熱中症予防や冷房効率向上に効果を発揮する遮熱シート「はるクール」、薄板化によって材料重量を削減するとともに接着工法によってCO2排出量削減を実現した環境配慮型スチールドア「SGD」など、環境配慮商品のラインアップをさらに拡充させている。一方で、変化する気候の影響を将来にわたり回避・軽減する“適応”の側面としては、ゲリラ豪雨・集中豪雨等による建物等の防災ソリューションとして、多様な場所や用途に対応できる止水関連商品や近年大きな災害をもたらす台風などによる強風への対応として、高耐風圧性能を確保したシャッターのラインアップを拡充するなど、お客様・利用者様等への適時的確なご提案を推し進めていく。
(人的資本への対応)
人材は企業の重要な資産であり、人材への様々な投資(施策)により従業員の満足度やエンゲージメントを高め、生産性・創造性の向上等の人材価値の最大化により、企業の持続的成長、ひいては企業価値の向上を実現していく。具体的な施策として、「労働時間の見える化」による長時間労働の抑制、業務効率や生産性向上をさらに追求するためのDXへの取り組み、育児休業制度・介護休業制度の拡充、治療と仕事の両立支援など、安心して働くことができる(働きやすい)職場を整備し、従業員個々人のライフスタイルに柔軟に対応できる人事制度の拡充を図っていく。これに加え、人材価値の最大化を図る教育改革への取り組みとして、各部門のキャリア(スキル)マップを策定、キャリアパスを見える化したことで、上司と部下が共通認識のもとキャリアを展望でき、従業員が自身の現在地と成長を実感できる支援を行うなど、特に若手社員への成長に向けた施策を推し進めている。また、2023年6月に「ダイバーシティ&インクルージョンに関する方針」を定め、誰もが個性を活かし、能力を最大限発揮できる環境を整備し、さまざまな価値観や視点を受け入れることで新たな価値の創出に挑み、グループの成長につなげていく。
(人権への対応)
当社グループでは、「文化シヤッターグループ人権方針」を定め、事業活動がステークホルダーに与える影響度に鑑み、優先して取り組むべき重要な人権課題を特定した。具体的な施策として、バリューチェーン上のリスクを把握するために、2023年度は当社グループのすべての役員・従業員を対象、2024年度は当社工場内協力会社を対象とした人権に関するアンケート調査を実施した。また、調達先においては、人権への取り組みを含めた調達方針への理解促進と、セルフアセスメントを実施するなど、当社グループが文化として継承してきた「人を大切にする会社」を実践していくために、人権尊重の取り組みを推し進めていく。
(CSRの推進について)
当社グループでは、事業活動の原点である「社是(誠実・努力・奉仕)」をはじめとして、「経営理念」や「CSR憲章」を常に意識して事業に取り組んでおり、全ての法令を順守し、公正な事業環境の中で利潤を追求すること、事業活動を通じて広く社会に貢献することが社会との信頼関係を構築することであると強く認識しており、コンプライアンス体制整備に恒常的に取り組んでいる。また、企業の持続的成長・発展のための重要なテーマであるESG(環境・社会・ガバナンス)及びSDGs(持続可能な開発目標)を重視しながらCSR(企業の社会的責任)を一層積極的に推し進めていくことで、当社グループの企業価値向上と持続可能な社会の発展に向けた取り組みを強化していく。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
Ⅰ サステナビリティ
「誠実をもって社会に奉仕する」という創業者が残したこの言葉は、今も脈々と受け継がれる当社の原点である。一つの会社が発展するか否かはその信用度合いにあり、仕事はあらゆる面において誠実であるべきというのが、創業の精神であり、この理念に基づき、当社は今に至る成長を遂げてきた。
変化する社会課題に真摯に向き合い、誠実な仕事を通じて社会の発展に貢献することが当社のサステナビリティの源泉である。
創業の精神からなる社是・経営理念を具現化するため、当社では「成長と共に」「社会と共に」「地球と共に」「働く仲間と共に」の4憲章からなるCSR憲章と、それを実践するためのCSR行動指針を定めている。従業員一人ひとりがこれに共感し、自ら実践することで社会から信頼される企業をめざす。
社会と当社の持続的な発展に向け、CSR憲章に則り、グループ全体で企業価値の向上に資する活動を推進していく。
●CSR4憲章と行動指針
(1)ガバナンス
当社では、業務担当役員を委員長、CSR統括部長を副委員長、CSR4憲章委員長を委員とする「サステナビリティ委員会」を設置し、CSR憲章に基づいた活動全般をグループ全体で推進している。サステナビリティ委員会は4つの憲章委員会で構成され、気候変動を含む地球環境をはじめ、地域社会、社会貢献、人権、労働、コンプライアンスなど、サステナビリティ・CSR全体の施策立案、目標設定、活動モニタリング、教育・啓蒙等を担い、またそれらに関する情報や結果などを常務会を通して取締役会に報告している。
常務会は代表取締役が決裁を行うための任意の諮問機関として、取締役会付議議案や報告事項について事前に審議することになっている。
取締役会はサステナビリティ委員長である業務担当役員より、当社の事業や財務に与えるリスクと機会について定期的、かつ適宜報告を受け、その内容について審議・評価を行う。
●サステナビリティ推進体制
(2)戦略
2026年までの中期経営計画では「恒久的な企業価値の創出」をメインテーマとしており、それを実現するための重点施策として「サステナビリティを追求した経営基盤の強化」を掲げている。当社がめざす「快適環境ソリューショングループ」の実現に向けてサステナビリティの追求を図り、「気候変動への対応」「人的資本の充実」「人権の尊重」を重点テーマに、持続的な成長と中長期的な企業価値向上につなげていく。
●ESGマテリアリティ
社会課題への取り組みを成長につながる機会として活かし、また経営リスクを低減させることで経営の持続可能性を高めるという中期経営計画の方針に整合するよう、対処すべき重点課題をESGの視点から再整備し、「ESGマテリアリティ」として特定した。
マテリアリティの特定にあたっては、ESG調査機関の評価の視点を踏まえ、社会全般、バリューチェーン全体の両側面から社会課題を抽出、当社の事業活動に影響を与える可能性のある課題をリスクと機会の観点から評価しマッピングした上で、社会と当社の双方にとって重要度の高い課題をESGの視点と企業価値との連関性から整理した。取り組みテーマの進捗はE「地球と共に委員会」、S「働く仲間と共に委員会」「社会と共に委員会」、G「成長と共に委員会」の各委員会でモニタリングされ、サステナビリティ委員会に報告される。
(3)リスク管理
当社では、定期的に開催されるサステナビリティ委員会において「ESGマテリアリティ」で設定した取り組みテーマの進捗をモニタリング、評価することでリスクの低減を図っている。サステナビリティ委員会によって審議されたリスクと機会に関する重要事項は、定期的、かつ適宜常務会、取締役会に報告、提言される。
(4)指標及び目標
当社では、CSR憲章「成長と共に」「社会と共に」「地球と共に」「働く仲間と共に」の各憲章委員会において「ESGマテリアリティ」を推進するための取り組みテーマを設定し、中期経営計画の期間中に達成すべき評価指標(KPI)を掲げ、進捗を管理している。
●ESGマテリアリティとKPI(2024-2026)
サステナビリティに関する取り組み内容の詳細については、
<CSRサイト>
https://www.bunka-s.co.jp/csrinfo/
Ⅱ 個別項目
1.気候変動
当社は、人、社会、環境にやさしい「多彩なものづくり」、「サービス」を通じて社会の発展に貢献し、人々の幸せを実現することを使命としており、気候変動が当社事業に与える影響への対応を重要な経営課題の一つとして位置付けている。事業活動及びバリューチェーン全体でのCO₂排出量の削減、資源循環への取り組みや自然共生、生物多様性の保全等、環境負荷の低減に努めると同時に、気候変動を成長の機会と捉えた「エコ&防災事業」を注力事業として拡大させ、社会と当社のサステナビリティの追求に取り組んでいる。
また、当社はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しており、その提言に基づき気候変動が事業に与えるリスクと機会について分析を進め、積極的な情報開示を推進していく。
(1)ガバナンス
当社では、CSR憲章に基づいた活動全般をBXグループ全体で推進するサステナビリティ委員会を設置している。サステナビリティ委員会は業務担当役員が委員長を務め、気候変動を含む地球環境をはじめ、地域社会、社会貢献、人権、労働、コンプライアンスなど、サステナビリティ・CSR全体の施策立案、目標設定、活動モニタリング、教育・啓蒙等を担い、またそれらに関する情報や結果などを常務会を通して取締役会に報告している。なお、常務会は代表取締役が決裁を行うための任意の諮問機関として、取締役会付議議案や報告事項について事前に審議することになっており、気候変動が当社の事業活動や財務に与えるリスクと機会などについても取締役会への報告等を行う場合は、事前に常務会における審議を要することとしている。
取締役会はサステナビリティ委員長である業務担当役員より、気候変動が当社の事業や財務に与えるリスクと機会について定期的、かつ適宜報告を受け、その内容について審議・評価を行う。
(2)戦略
当社では、世界共通の重要課題である地球温暖化防止に貢献するために「BXグループ2050年脱炭素宣言」を定め、2030年までに事業活動におけるCO₂排出量を46.2%削減(2019年度比)、2050年までに実質ゼロにすることを宣言した。2022年5月にはグループ環境ビジョン「Blue neXpand 2050 未来にひろげよう青空を」を策定、「気候変動」「資源循環」「自然共生」を重点領域として、環境負荷をゼロにするだけでなく、事業活動を通じて環境へのプラスの価値を創造することで「快適環境」を次世代へとつなぐことをめざしている。
2026年度までの中期経営計画では「恒久的な企業価値の創出」をメインテーマとしており、それを実現するための重点施策の一つに「サステナビリティを追求した経営基盤強化」を掲げている。中でも「気候変動」については、資本コストを勘案しながら脱炭素化に移行する社会に対応することで事業リスクを低減させ、気候変動リスクに適応するための防災関連商品の拡充に取り組み、災害に対する都市の強靭化と期待成長率の向上に取り組む。
また、気候変動が及ぼす事業への影響を把握し、戦略の有効性や気候関連リスクと機会に対するレジリエンス向上を目的として、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が公表した複数のシナリオを参照の上、財務影響及び事業インパクトを評価し、シナリオ分析を実施している。
●シナリオ分析
当社では気候変動の問題を経営上の重要な影響を及ぼすリスクと機会と捉え、自社の事業戦略に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、主力事業であるシャッター及びドア事業における気候変動に伴うリスクと機会を2℃未満シナリオと4℃シナリオの2つのシナリオにて分析し、それぞれのシナリオにおける移行リスク、物理リスクそして機会を特定している。特に自社にとってインパクトが大きいと想定される要因については、財務インパクトに関する分析を実施し、財務インパクトの分析では、一定の前提のもと、2050年までの損益計算書(PL)・貸借対照表(BS)・キャッシュ・フロー計算書(CF)のシミュレーションを実施し、特定したドライバーのPL・BS・CFへの影響度とその重要性を評価している。
シナリオ分析に基づいた気候関連リスクと機会の評価結果は、影響度、発生可能性等を考慮し、事業戦略に反映している。特に影響が大きいと評価したリスクと機会、及びそれぞれの対応策の進捗状況は次の通りである。
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シナリオ名 |
想定する世界観 |
シナリオ名 |
想定する世界観 |
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2℃未満シナリオ (SSP1-2.6) |
環境規制が強化され、ZEB・ZEH水準の建物が普及。省エネ性が高い商品、再エネサービスの需要が増加している。 |
4℃シナリオ (SSP5-8.5) |
環境規制は現状のレベルを維持し、ZEB・ZEH普及は大きくは進展しない。一方、自然災害の頻発化から、防災・減災製品の需要が増加している。 |
事業/財務インパクトの影響度評価
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区分 |
内容 |
対応策 |
財務インパクト |
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2℃未満 |
4℃ |
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移 行 リ ス ク |
政 策 ・ 法 規 制 |
①炭素税の負担によるコストの増加 |
・炭素税の導入や上昇は当社運営費の増加や調達先の価格転嫁を引き起こす可能性がある |
再生可能エネルギーへの切り替え |
大 |
中 |
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CO₂排出量削減設計や3R化設計の推進 |
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環境への取り組みを重視した調達先の選定 |
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代替資材の開発、製品の長寿命化 |
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②エネルギーミックスの変化によるコストの増加 |
・製造・研究開発(自社)において再エネ導入やエネルギー転換に伴い設備投資額が増加する可能性がある |
エネルギーミックス方針の策定によるエネルギー転換の推進 |
大 |
大 |
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技 術 |
③低炭素技術への移行化に伴うコストの増加 |
・調達先の低炭素技術への移行(鉄等の製法自体の変更含む)に伴い設備投資が増加し、調達価格のコストが増加する可能性がある |
脱炭素に向けた調達先との協力体制の構築 |
大 |
小 |
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物 理 リ ス ク |
急 性 |
④自然災害/異常気象の重大化・頻度増加による売り上げの減少及びコストの増加 |
・調達先の被災による納入遅延や物流網の分断等により発注取り消しや売上減少の可能性がある
・調達先や運送会社の被災による復旧コストの増加により調達コスト及び運送コストが増加する可能性がある
・新たな調達先及び物流網確保のための調達及び物流コストが増加する可能性がある |
複数の調達先確保の推進によるリスクの分散化 |
小 |
大 |
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調達先及び運送会社への設備投資を含めたBCP策定等に対する助言等の実施 |
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機 会 |
製 品 ・ サ ー ビ ス |
⑤気候変動の緩和に貢献する環境配慮製品に対するニーズの高まり |
・断熱性や遮熱性の高い省エネタイプの環境配慮商品のニーズが高まることが想定される
・製造過程における環境負荷を低減した環境配慮商品について取引先からの引き合いが増加することが想定される |
空調効率を向上させる機能を有した、商品の使用段階における環境配慮商品の拡充により、温暖化を防止し気候変動の緩和に貢献 |
大 |
小 |
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材料重量の削減や取付工程の転換等、商品の製造・取付段階における環境負荷を低減する環境配慮商品の拡充により、温暖化を防止し気候変動の緩和に貢献 |
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⑥気候変動による影響に適応する製品に対するニーズの高まり |
・防災・減災性能に優れた当社製品の需要が高まり売り上げの増加が想定される |
防災・減災製品の拡充及び製品の安定供給による社会的損失の低減に貢献 |
大 |
大 |
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防災・減災性能に優れた商品開発の強化 |
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大:事業戦略への影響または財務的影響が大きいことが想定される
中:事業戦略への影響または財務的影響が中程度と想定される
小:事業戦略への影響または財務的影響が小さいことが想定される
●シナリオ分析結果に基づいた対応状況
<リスクへの対応>
①炭素税の負担によるコストの増加
・再生可能エネルギーへの転換
再エネ電力への切り替えや太陽光発電システムの導入を進めている。
◇国内4工場及び本社ビル等自社所有拠点を中心に27拠点で再エネ電力への切り替え済み
◇再エネ電力の調達率:グループ全体で18%
・製品の長寿命化
防火・防煙シャッターに標準整備されている「危害防止装置」の予備電源をニッケル水素蓄電池に切り替えを開始した。
◇予備電源の交換時期:5年⇒10年
②エネルギーミックスの変化によるコストの増加
・エネルギーミックス方針の策定によるエネルギー転換の推進
生産拠点における消費エネルギーのポートフォリオ管理により、エネルギー使用の最適化を推進している。
生産性とエネルギー使用効率化を重視した設備の入れ替えを推進している。
◇設備更新:国内4工場(小山工場:軽量スラット成形組立ライン更新 他)
③低炭素技術への移行化に伴うコストの増加
・脱炭素に向けた調達先との協力体制の構築
グリーン購買を推進し、サプライチェーン全体でCO₂の削減に取り組んでいる。
◇調達ガイドラインへの賛同:100%を継続
◇取引先アンケート:116社に実施
CO₂排出量の多い調達品に対し代替資材への転換の検討を進めている。
・製品の軽量化による調達コストの削減
スチールドアにおける扉の組立工法を、溶接工法から接着工法に切り替えることで鋼材の軽量化を進めている。
◇接着比率:グループ全体で64%
④自然災害/異常気象の重大化・頻度増加による売り上げの減少及びコストの増加
・調達BCP、供給BCPの強化
安定供給を確保するための調達BCPを構築し、サプライチェーンの二重化や自社での最低限在庫(3ヶ月分の製品在庫)の確保、調達に関するガイドラインの整備、自社在庫状況の見える化等を進めている。
下流物流では「製造部門事業継続活動実施要領」に基づき、自然災害を含む緊急事態発生時の道路等のインフラの状況や納品先の受け入れ体制等の情報収集及び対応体制を構築している。
・運送コストの削減
新物流システムの導入により配車情報の一元化、積載効率の向上や運行距離の最適化等を進めている。
◇2024年度導入拠点:姫路工場(国内5工場が導入済み)
◇ESGマテリアリティKPI:下流物流における総走行距離 10%削減(2019年度比)
2024年度実績 約8%削減
スチールドアの外部枠にノックダウン枠を採用することでトラックの積載効率の向上を図っている。
◇ノックダウン枠での積載効率:約2倍に向上(対 溶接汲枠)
<機会への対応>
⑤気候変動の緩和に貢献するソリューションの展開
調達から使用・廃棄に至る一連のバリューチェーンにおいて、環境に配慮した製品・サービスを提供することで温暖化を抑制する緩和ソリューションの推進を図っている。
◇ESGマテリアリティKPI:新商品開発テーマの環境配慮商品比率 50%
2024年度実績 40%
2024年度は緩和ソリューションを拡充するべく、遮熱事業を本格スタートさせた。屋内用遮熱シート「はるクール」は、放射熱(輻射熱)を97%カットすることで温度上昇を抑え、冷房効率向上や熱中症予防に効果を発揮する製品として、主に工場や物流倉庫などの産業施設の温度管理、環境改善に貢献する。
◇2024年度売上高:5.9億円
環境配慮型スチールドア「SGD」は扉の組み立てに接着工法を採用したことで一般的なドアサイズにおいて従来品より25%の軽量化を実現している。これによりドア1枚当たり35kg相当のCO₂を削減する。
◇ESGマテリアリティKPI:「SGD」生産比率 60%
2024年度実績 32%
⑥気候変動による影響に適応するソリューションの展開
温暖化に起因する異常気象や、甚大化する自然災害から人々の命と財産を守るための製品・サービスを展開し、適応ソリューションの推進を図っている。
・強風対策
「マドマスター・スマートタイプ(気象情報連携自動閉鎖機能)」は、天候の急変に備え、予想外の荒天に見舞われた際に自宅付近の大雨警報や暴風警報などの気象警報を受信し、不在時でも自動で閉鎖させる機能を追加したIoT対応の電動窓シャッターである。「マドマスター高耐風モデル」は「防災・減災×サステナブル大賞2024」で「優秀賞」を受賞した。
「ウインドブロックシリーズ」は、重量シャッター、オーバースライディングドア及び住宅用窓シャッターで高耐風圧性能を確保した強風被害対策商品をラインアップしたものである。特に重量シャッターでは、基準風速が国内最大となる沖縄全域を想定した業界最高レベルの性能を有しており、暴風対策の面から企業のBCPを支援する。「ウィンドブロック重量シャッター C-96V」は、国土強靭化に資する功績を表彰する「第11回ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)」において、優良賞を受賞した。
・浸水対策
近年の極端な気象状況の変化に伴うハザードマップの見直しにより、想定される浸水リスクが高まったエリアの建物にもご検討いただけるよう、止水マスターシリーズの積極的な提案を進めている。
◇止水事業2024年度売上高:33億円
・暑熱対策
BXテンパル株式会社で販売するオーニングは、開閉操作により日差しを適度に調節することで室内及び体感の温度上昇を抑え、節電や暑熱対策として熱中症防止等に貢献している。
2024年度に販売を開始した自立式日よけテント「ソラカゼiori」は、ロープを引くだけの簡単操作で開閉でき、電力を使わないサステナブルな暑熱対策商品である。
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屋内用遮熱シート「はるクール」 |
自立式日よけテント「ソラカゼiori」 |
(3)リスク管理
当社では、気候変動の問題を経営上の重要な影響を及ぼすリスクと機会と捉え、サステナビリティ委員会の気候変動チームが各種会議体を通した気候変動リスクと機会のモニタリング、評価及び重要なリスクと機会の特定を行っている。気候変動チームはCSR統括部を中心に、経営企画部、製造企画部、人事総務部、経理部のメンバーによって構成されている。
気候変動リスクと機会の特定にあたり、気候変動チームはCSR統括部主導のもと、気候変動に関するシナリオ分析を実施している。シナリオ分析から導出された重要なリスクと機会についてはサステナビリティ委員会での検討を経て、常務会、取締役会に報告、提言される。
なお、シナリオ分析で試算した財務インパクトは、一定の前提条件を元に試算しており、現時点では発生の蓋然性について判断が困難な要素も分析に織り込んでいる。
気候変動チームは、今後の経済情勢や日本及び世界の気候変動に関する取り組みを鑑み、一定程度蓋然性が高くなると考えられる要素について、具体的に事業計画に織り込むようサステナビリティ委員会にて検討を行い、常務会、取締役会に進言する役割を担っている。
(4)指標と目標
当社では、Scope1及びScope2のCO₂排出量を、2030年までに基準年である2019年度より46.2%削減する目標を、さらにScope3については同じく2030年までに2019年度比27.5%削減する目標を2021年に策定した。これらの削減目標はパリ協定に整合するものとして、2023年10月にSBT認定を取得している。
また、シナリオ分析から導出された結果並びに今後必要となる対応策と、脱炭素宣言で想定しているCO₂削減に係るさまざまな取り組みは整合的である旨を確認している。2050年・2030年目標に向けて、グループ一丸となり取り組みを加速することで、持続可能な社会の構築に貢献するものとする。
●2050年脱炭素化に向けた指標と目標
当社グループでは、事業活動で排出するCO₂(Scope1及びScope2)について2050年までに実質ゼロにすることを宣言し、脱炭素化に向けた取り組みを推進している。また、サプライヤーと協力・連携し、サプライチェーン全体でCO₂削減に取り組んでいる。
●2030年指標と目標(SBT1.5℃目標)
・Scope1及びScope2・・・46.2%削減(2019年度比)
・Scope3カテゴリ1(購入した製品・サービス)及びカテゴリ4(輸送・配送))・・・27.5%削減(2019年度比)
これに伴い2026年度までの中期経営計画中にScope1及びScope2において2019年度比29.4%削減することを目標としている。
●BXグループのCO₂排出状況
当社の事業活動に伴うグループ全体のCO₂排出量は以下の通りである。2022年度のScope1及びScope2についてはその信頼性を高めるため、独立した第三者機関であるソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社に第三者検証を依頼し、当社の算定データや算定方法について、「JIS Q 14064-3:2023(ISO 14064-3:2019)温室効果ガスに関する声明書の検証及び妥当性確認のための仕様及び手引き」に準拠した限定的保証を受けている。
●Scope1+2
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2022年度(※3) |
2023年度(※2.4) |
2024年度(※1.4) |
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排出量(t-CO₂) |
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削減率(2019年度比) |
8.7% |
10.2% |
16.9% |
※1.2024年度のCO₂排出量及び削減率に関しては現時点での概算で開示している。
2.2023年度のCO₂排出量は第三者検証後に修正される可能性のある数値である。
3.2022年度のCO₂排出量は第三者検証後に修正された数値となっている。
4.確定数値は当社
Ⅲ 人的資本
(1)ガバナンス
当社では、CSR憲章にもとづいた活動全般をBXグループ全体で推進するサステナビリティ委員会を設置している。サステナビリティ委員会は業務担当役員が委員長を務め、全体のコンプライアンスをはじめ、マテリアリティの特定などCSR活動全体の教育・啓蒙、人権、気候変動が及ぼす財務への影響の特定や人的資本開示に伴うワーキンググループの活動、またそれらに関する情報や結果などを常務会を通して取締役会へ報告している。
常務会は代表取締役が決裁を行うための任意の諮問機関として、取締役会付議事項案や報告事項について事前に審議することになっている。人的資本に関する指標、目標及び実績などについても、取締役会への定期的な報告等を行う場合は、事前に常務会における審議を要することとしている。
取締役会は定期的にサステナビリティ委員長である業務担当役員より、人的資本に関する指標、目標及び実績についての報告を受け、その内容について審議・評価を行う。
(2)戦略
1.人材の多様性の確保を含む人的資本に関する方針
①経営理念等について
当社グループでは、「人と地球の快適環境」を創造することをめざしており、その実現に向けては、創業の精神である「社是(誠実・努力・奉仕)」をはじめとして、企業活動における行動指針である「経営理念」の考え方を共有した人材が重要な事業基盤の一つであると認識している。
なお、当社グループの企業風土であり従業員としての心構えである「明・元・素(明るく、元気に、素直)」は、求める人材や人材の確保・育成、ひいては当社グループの成長には欠かせない要素であると考えている。
②CSR憲章「働く仲間と共に」
当社グループでは、前述の「社是」や「経営理念」といった企業文化を体現できる人材の育成に注力し、それらの育成を通じて成長した人材を社内の重要なポジションへ登用するなど、従業員一人ひとりの人材力の総和により、事業基盤の強化を図ることが持続的な成長、ひいては企業価値の向上につながると考えている。
さらに、人材に関する基本的な考え方としては、「CSR憲章」の「働く仲間と共に」において、働く仲間の個性と創造性を尊重し、一人ひとりの満足と成長をめざしている。また、「CSR行動指針」では「人権の尊重」、「雇用の創出」、「満足度の向上」を掲げ、従業員が実践することでエンゲージメント(従業員一人ひとりが企業の掲げる「戦略・目標」に共感し、自発的に貢献する意欲)の向上を図っている。
③中期経営計画の概略
当社及び当社グループが持続的な成長及び中長期的な企業価値の向上を実現するため、「社是」、「経営理念」、「ESG視点」等を踏まえた新しい3か年の中期経営計画を実行中であり『恒久的な企業価値の創出を目指して』を基本テーマとして掲げ、中期経営計画の達成に向けた様々な施策に取り組んでいる。創業当初より成長を支えてきたシャッター、ドア等を製造・販売する基幹事業においては、防火・防犯はもとよりIoT化など、変化する社会のニーズを捉え、生活者の視点に立った商品開発を実行していくことで、規模を維持しつつ、収益力強化につながる投資を実施していく。注力事業においてはエコ&防災事業をはじめ、メンテナンス事業、都市の老朽化や住環境の変化に対応するリノベーション事業及び海外事業等を展開しており、売上規模(シェア)を拡大していくとともに、新たな事業への挑戦と投資を実施していく。基幹事業によって基盤を強化するとともに、注力事業によって当社グループの未来を担う事業を育て、発展させていき、それらのバランスをとることで、経営のレジリエンスを高めていく。
④当社グループの成長並びに中期経営計画の遂行に向けて必要な人材
当社グループの成長並びに中期経営計画の更なる推進のために、属性を問わず、個性や能力など様々な価値観や視点を受け入れる必要があり、事業を問わず以下の「求める人材」が共通要素であると認識している。
「それぞれの与えられた役割の中で、小さなイノベーションを起こせる人材」
「固定観念や先入観にとらわれない、独自の「感性」を発揮できる人材」
「外に向かっては顧客志向、内に向かってはコミュニケーションをとれる人材」
「企業人として何が正しいのか」という哲学を持った人材」
「困難な課題に対し、最大の壁である「意識の壁」を打ち破る強い意志を持った人材」
を意識し、各人が事業主感覚を持ち、且つ集団力を発揮できる人材である。
[新たな仕組みの構築×実行できる人材集団=恒久的企業価値の創出]
これらを体現できる人材を事業基盤に事業施策を実行していくとともに、積極的にダイバーシティ&インクルージョンを推し進め、多様な能力の獲得や能力の発揮機会の提供を図り、多様化する顧客ニーズへ対応していくことで、当社グループが快適環境のソリューショングループへと成長すると考えている。
⑤多様性を考慮した人材の確保
<主な採用ルート>
現在の採用について、「求める人材」を踏まえ、新卒採用は人事総務部で、中途採用は各事業本部等の事業部門において実施している。
新卒採用については、営業や技術(商品開発・設計・生産技術・SE)など、学生が希望する仕事に配属をする職種別採用を行っており、入社前と入社後のギャップを軽減している。
中途採用においては、主に営業、設計、施工管理を中心に経験者や資格保有者等の即戦力人材を積極的に獲得するだけではなく、必要に応じて当社事業領域に限らない専門的な知見・技術を持つ人材や海外人材を採用するなど、多様な価値観、多角的な視点を取り入れることで組織、人材の硬直化を抑制し、新たな事業の創出や企業の成長につなげている。
<人材の融合>
近年では、事業領域の拡大によるM&A、アライアンスを通じて、考え方・価値観の異なる人材との融合が進んでおり、今後より一層の技術革新や新商品の具現化を進めることができると考えている。
<ダイバーシティ&インクルージョンの観点>
ダイバーシティ&インクルージョンの観点、及び多様な人材の確保に向けて、当社における社員男女比率はおよそ9:1であり、かつ、女性管理職比率が4.1%(単体)であることは経営課題として認識している。今後、働き方改革の推進、新商品や新事業の探索など、当社の成長には女性の視点をはじめとする多様な視点が必須である。そのため、新卒採用における女性採用比率30%を目標として、積極的な採用による社員男女比率のバランスの改善や女性従業員向けのキャリアデザイン研修に取り組み、現状打破を進めている。また、障害者の採用においては、「当社に限らず、どの企業においても戦力となる人材に成長する」を目標に、全国各部門・職種での採用を推進している。あわせて、2022年度より希望するすべての障害者を社員へ身分変更し処遇を改善することで活躍の機会を拡げ、満足度の向上を図るとともに、採用市場における競争力強化を図っている。
⑥人材の育成
<基本的な人材育成方針>
現在の事業施策並びに中長期目標の実現に向けて、事業基盤の強化を図るためには、「求める人材」を踏まえた人材育成への注力が重要と考えている。人材は企業の重要な資産であり、人材への様々な投資(施策)により従業員の満足度やエンゲージメントを高め、生産性・創造性の向上等の人材価値の最大化により、企業の持続的成長、ひいては企業価値の向上を実現できると考えている。
<従業員全体の育成>
人材育成の取り組みとして、従業員全体の底上げ、成長を図る研修を実施している。入社時教育をはじめ職位・職能資格に応じた様々な階層別研修(昇格者研修、新任管理者研修など)、スキルアップにつながる教育として、製品知識修得を目的とした研修や「恒久的な企業価値の創出を目指して」の実現に向け、目に見えない問題を見つけ、見つけた問題の因果関係を解明する問題解決研修、そして、働き方改革につながる生産性の向上に向けたITリテラシーに関する通信教育等を実施している。
<キャリアマップの策定>
人材価値の最大化を図る教育改革への取り組みとして、各部門のキャリア(スキル)マップを策定、キャリアパスを見える化したことで、上司と部下が共通認識のもとキャリアを展望でき、従業員が自身の現在地と成長を実感できる支援を行うなど、特に若手社員への成長に向けた施策を推し進めている。
<職種に応じた柔軟な育成>
従来の建築・施工管理などの専門技術のスキルや資格の取得を進めるため、外部講習等を利用した研修を実施し、資格試験の合格者には、新たな資格手当の新設や従来の祝金を増額するなど合格へのインセンティブも付与している。
製造現場等における当社固有の技術や高度な技能を伝承し後継者を育成するため、2007年にマイスター制度を導入している。熟練したスキルを保有する従業員が数多く輩出されることで、メーカーとして製品の安心・安全の提供、多様化する顧客ニーズへの対応や顧客満足度の向上が可能と考えている。
営業のエリアマーケティング研修では、地域特性を考慮した商品・顧客戦略を現場の社員が調査・立案し、部門長にプレゼンテーションをすることで、自身の事業戦略への理解を深めるとともに経営目標との連動や経営に参画する意識の醸成につなげている。
<ダイバーシティ&インクルージョンを踏まえた育成>
ダイバーシティ&インクルージョンの促進に向けては、2021年より、女性の活躍を促進するため、意識改革やマネジメント力向上を目的とした女性従業員向けのキャリアデザイン研修を実施している。さらに、前述のマイスター制度では、現在のマイスター39名(グループ全体)のうち、7名(グループ全体)が定年後再雇用者であることから、シニア層のモチベーション向上とともに、その活躍が当社の成長に寄与している。
<経営陣の考えの浸透>
各研修の冒頭に経営陣が受講者に対し、従業員の成長への期待や会社の姿勢・方向性を説明することで、会社全体でベクトルを合わせ、経営陣の考えを浸透させている。
⑦人事評価、重要ポジションへの登用
当社では、従業員の仕事の取り組み方や成果等を公正・公平に評価することで、従業員の重要ポジションへの登用や従業員のモチベーション向上、ひいては個々の成長につなげていくことが重要だと考えている。
<人事評価>
人事評価においては、多様な人材が持つ能力の十分な発揮や適材適所の配置を進めるため、当社人事制度の根幹である職能資格に応じた保有能力の把握・評価、仕事の達成度・成果を評価する業績評価、そして仕事への取り組み姿勢を評価する情意評価など、多面的に評価することで、従業員の能力の伸長や成果、職務範囲の拡大、上司部下・他部門との協働等、従業員の成長を上司が適切に把握することとしている。また、人事評価の結果は前述の観点に加え、今後の成長へのアドバイスを含め、定期的なフィードバック面談を行うこととしており、評価や課題について十分に話し合うことで目標を明確にし、モチベーションの向上につなげている。これら人事評価を公正・公平に行うには、評価者の評価制度への理解と評価スキルの均一化が必要であることから考課者研修を継続的に実施している。
<重要ポジションへの登用>
支店長、工場長以上の経営幹部レベルの人事異動等については、経営陣自らが現場を訪問した上での情報収集や経験・実績を踏まえ、事業戦略や年度方針に基づく事業施策の実行に最適な人員配置等を実施している。各事業本部における幹部人事異動等についても、これまでの経験や実績、現状分析に基づく最適な人員配置を実施しているが、時には従業員の将来、モチベーション向上ひいては当社の将来を見据え年齢や経験にとらわれない人事配置を行うことがある。
2.社内環境整備方針
<基本的な社内環境整備方針>
当社グループでは、育成し成長した従業員が、モチベーションを維持し長期的に活躍するため、以下のとおり、働き方の改革・支援、健康促進や人権等の基盤の整備を図ることが重要であると考えている。
①基盤の整備(働き方の改革・支援、健康促進)
<働き方の改革・支援>
働き方の改革については、個々のライフスタイルを重視しつつ、多様な働き方による生産性向上や安心して働くことができる環境を重視した人事制度の見直し並びに人材投資を実施している。当社では、柔軟な働き方を可能とするフレックスタイム制度やモバイルPCの導入による在宅勤務並びにリモートワークの恒久化、有給休暇取得率向上によるワークライフバランスの充実のため年次有給休暇の計画的付与日数を5日から7日に増加するなど、すべての従業員が安心して働くことができる環境整備を進めている。
働き方の支援については、育児や介護・疾病・治療と仕事の両立が重要と考えている。育児と仕事の両立として、当社の育児休業制度は、最長3歳までの育児休業が可能であり、2022年度からは、育児休業の開始日から5日間を有給化、産前休暇を出産予定日の8週間前から取得を可能とするなど、性別にかかわることなく安心して育児に係ることができる環境を整備している。介護・疾病・治療と仕事の両立に向けた支援として、失効する有給休暇を積み立て、家族を介護する時、従業員が指定難病にり患した時や従業員のがんの通院治療・不妊治療に利用できる介護・指定難病等休暇制度を制定している。
社会参画による人的成長や企業市民としての積極的な社会貢献等を目的として、地域貢献活動、社会貢献活動や災害復興支援活動等を対象にボランティア休暇を導入し取得を推進している。
<健康促進>
従業員の健康促進に向けては、従業員が健康で仕事に取り組むことが企業成長の基盤であると認識している。長時間労働による過労を防ぐため、時間外労働の目標時間を設定し、仕事の進め方の見直しや業務のシステム化によるDXの推進など生産性向上を図っている。
また、健康診断の再検査受診率100%を目標に掲げ、継続的に社内周知をするなど実施率向上に取り組んでいる他、大型拠点での健康相談の実施、すべての従業員へのストレスチェックの受検勧奨により、体調変化のシグナルの見落としや、疾病のリスクを未然に防ぐ取り組みを推進している。
②基盤の整備(人権、労働安全衛生)
<人権方針の制定>
当社グループでは人権について、これまでもCSR憲章「働く仲間と共に」で人権に関する行動指針を掲げ、人権の尊重に取り組んできている。昨今、国際社会における人権リスクの高まりや、課題の変化に対応し、サプライチェーンを含めた人権マネジメントの高度化を図るため、2022年度、国際規範に基づいた「文化シヤッターグループ人権方針」を新たに策定した。
人権方針では、「文化シヤッターグループのすべての役員及びすべての従業員」だけでなく、「自社商品、サービスに関係するステークホルダー」に対しても、方針の理解と遵守を求めている。
<人権デュー・ディリジェンスの実施>
当社グループ及び当社グループの商品・サービスに関連するステークホルダーの人権に対する負の影響を特定し、負の影響を防止・軽減するとともに防止・軽減の対応状況や結果を追跡、最終的にどのように負の影響に対処したのかを説明・情報開示する人権デュー・ディリジェンス実施ガイドラインを策定した。2024年2月には当社グループ全従業員を対象に人権に関するアンケートを実施し、回答率は73.1%となった。各テーマに対し当社基準による高リスク項目を抽出、課題及び課題に対する具体的な施策について当社グループ従業員に開示をしている。具体的には人権方針の内容の周知浸透の不足という課題に対し、役員への人権研修や従業員への人権に関するeラーニングを実施するなどPDCAを実践している。
当社グループにとって、「快適環境のソリューショングループ」として事業活動を行う上で、社内だけでなくサプライチェーン全体で人権を尊重し、多様性を認め合うことは必要不可欠な要素であり、今後も持続可能な社会を実現するために、人権尊重の取り組みが必要と考えている。
<労働安全衛生>
労働安全衛生においては、安心・安全な職場環境と健康を確保することが、人的基盤を支える根本であると認識している。当社は、安全衛生管理規定に従い、全社に安全衛生管理体制を確立し、災害を防止するために必要な措置を積極的に行っており、事業場における労働災害防止のため、各事業場での安全衛生委員会を中心に、機械、作業、環境等による危険に対する措置の実施や法令で定められた安全衛生教育、作業環境測定等に取り組んでいる。
(3)リスク管理
当社では人的資本の問題を経営上の重要な影響を及ぼす事項ととらえ、日常的には各事業本部・支店や本社で発生する諸問題等について各部門が対応することとしており、適宜、それらの情報を人事総務部が取りまとめ、諸問題の解決策や目標を達成するための施策を検討している。今後は、人的資本開示ワーキンググループが、人的資本に関する重要な影響を及ぼすリスクと機会を識別し、それに対応する指標及び目標を設定することとし、必要に応じて、サステナビリティ委員会で検討を行い、常務会、取締役会に進言する役割を担う。なお、人的資本開示ワーキンググループは、サステナビリティ委員会の下に人事総務部を中心に、CSR統括部、経営企画部、経理部、営業企画部、製造企画部のメンバーによって構成されている。
(4)指標と目標
なお、当社グループは、
<文化シヤッターグループ人権方針>
https://www.bunka-s.co.jp/csrinfo/wp-content/uploads/2022/11/humanrights_jp.pdf
<ダイバーシティ&インクルージョンに関する方針>
https://www.bunka-s.co.jp/db/wp-content/uploads/2023/06/diversity_inclusion.pdf
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りである。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
①感染性ウイルス禍による事業活動への影響
新型コロナウイルス感染症については、5類感染症へ移行したものの、今後、新たな変異ウイルスをはじめ、世界保健機構がパンデミックと認定する感染性ウイルスの発生は、時期や場所、頻度も含めて未だ予測不能であり、収束時期も容易に見通せない状況にあっては、世界及び日本経済へのダメージは計り知れず、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
②地震やその他の自然災害等による製品出荷と緊急の修理対応への影響
当社グループは、全国に販売、製造、修理点検を行うサービス拠点を配置しており、その中には地震発生率が世界の標準より高い地域もある。今後、そうした地域で災害が発生した場合、その被害を最小に食い止める体制を敷いていたとしても、完全に防御できる保証はない。
今後の仮説として、首都圏直下、東海地方、南海トラフ等における巨大地震や想定外の自然災害等が発生した場合、当該地区に設置する各生産、販売、サービス拠点において、製品の供給体制の複数化や販売・管理・修理拠点の統合化などの対策は進めているが、製品の生産能力低下や出荷及び供給、既設製品の故障等に伴う緊急の修理対応が遅延することは避けられず、顧客への対応に支障を来し、売上の低下を招く可能性がある。さらに、当該地区の拠点に被害があった場合、その修復または代替のために多大な費用が発生し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
③資材等の調達
当社グループは、鋼材(鋼板・ステンレス等)を主たる原材料とする事業(シャッター関連製品事業、建材関連製品事業)が売上高の大部分を占めている。現在、これらの製造に必要な鋼材を複数の会社から購入しているが、市況等の影響により鉄鋼原料や原料炭等の価格が上昇した場合、鋼材の価格についてもその影響が及ぶこと、また、多種多様な電動製品、電装品を販売しているが、これらに必要な半導体が世界的に不足しており入手が先行き不透明な状況が続いていること、更に世界的な政情の急激な変化から海外からの材料調達が困難になる等により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
④製品の性能保持や安全対策
当社グループは、防火シャッターや防火ドアなど防災対応の製品を各種取り扱っており、これらの製品は火災発生時など緊急の際に、防火区画を形成して火災の延焼を防ぎ、安全な避難経路を確保する性能が確実に発揮されなければならない。そのため、建築基準法の一部改正により、2016年6月より防火設備の定期検査・報告制度が導入され、3年の経過措置が終了した2019年6月より、1年以内ごとの定期検査と報告が本格的にスタートした。しかし、医療施設などでは通常業務を優先する等の理由から定期検査を実施できない状況もある。また、検査対象となる建築物は国が一律に定めた以外に、地方自治体が地域の実績に応じた指定を行うため、全ての建築物に設置された防火設備が検査報告の対象にならないことから、保守点検契約が一挙に進むものではない。これらのことは、火災発生時における安全性の担保への潜在的なリスクとなっている。
さらに、建物の開口部に設置される主に管理用として使用される重量シャッター等に関しては、特に安全性に関する厳密な性能が要求される。重量シャッター等には障害物感知装置など安全性を高める装置を標準装備しているが、これらの装備によっても、地震等の不測事態の発生や製品自体の経年劣化、構造躯体の劣化、保守点検の任意契約及び未実施等により、万一の事故の発生を防げるとまでは言い切れない。重量があり、可動する開口部製品を取り扱う当社グループにおいては、施工後のメンテナンスまで含めて一貫した責任体制を敷いているが、万一、重大事故が発生した場合、当社グループのブランドイメージが損なわれ、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
⑤民間企業設備投資、新設住宅着工戸数、非住宅着工床面積低迷の影響
当社グループが先行指標とする民間企業設備投資、新設住宅着工戸数、非住宅着工床面積について、AIやIoTの導入を背景とした研究開発費やIT投資、首都圏を中心とした都市再開発、eコマースの拡大に伴う大型物流倉庫など、非住宅を中心に建設需要が見込まれるものの、資材価格の高騰や、慢性的な人手不足、また建設業界での働き方改革の浸透等により、建設工事の中止や遅延、工期の長期化、新規の設備投資が抑制される動きが加速した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
⑥企業買収及び他社との業務提携
当社グループは、経営の効率化と競争力強化のため、企業買収及び他社との業務提携による事業の拡大を行うことがある。企業買収及び他社との業務提携後において、市場環境変化等の理由により、当初期待した成果をあげられない場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
⑦業績の季節的変動
当社グループにおけるシャッター関連製品事業及び建材関連製品事業については、年度末に完成引渡しが集中する傾向にあり、適切または十分な人員を確保できなかった場合に、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
⑧コンプライアンスリスク
当社グループは、各種法令諸規則が遵守されるよう、すべての役員及び社員に対するコンプライアンスの徹底を図っているが、万一、各種法令諸規則に抵触する行為が発生し、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、監督官庁等からの処分、訴訟の提起、社会的信用の失墜等により当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性がある。
⑨海外事業展開に伴う影響
当社グループは現在、ベトナムを中心とする東南アジア諸国と、オーストラリア、ニュージーランドにおいて事業を展開しているが、現地の政情及び経済情勢の急激な変化をはじめ、東シナ海における領有権を巡る軍事的な緊張感の高まりや全世界的なテロの影響、新型コロナウイルスなどの感染性ウイルス禍により事業を継続できない場合に、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある。
⑩公正取引委員会との審判による影響
当社は、2010年6月9日に公正取引委員会より独占禁止法第3条の規定に違反する行為(「全国における価格カルテル」)があったとして排除措置命令を受け、審判手続きにおいて異議申し立てを行ってきたが、2020年8月31日付けで公正取引委員会から、当社の申し立てを棄却する旨の審決を受けた。
当社は審決の内容を検討した結果、同内容を不服とし東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起することを2020年9月14日に決定したが、一部内容を受け入れたことから、国土交通省関東地方整備局より建設業法に基づく処分として、2021年1月9日から30日間の営業停止処分命令を受けた。その後、係争中となっていた審決取消訴訟について、2023年4月7日に東京高等裁判所より、当社の請求をいずれも棄却する旨の判決の言渡しがあり、2023年4月20日に当社は当該判決を不服として、最高裁判所へ上告の提起及び上告受理の申立てを行っていたが、2025年2月26日付で、当社の上告を棄却し上告審として受理しない旨の決定がなされたことにより、当該訴訟は終結した。これにより当該リスクは消滅した。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りである。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益の改善を背景とした賃上げ等による雇用・所得環境の改善や設備投資の拡大等により、景気は緩やかな回復基調が続いている。
一方で、継続的な円安によるエネルギー価格・原材料価格の高騰や人手不足による供給力不足、海外経済の不確実性の高まりなど先行きの見通せない状況で推移している。
当社グループを取り巻く建設・住宅業界においても、民間設備投資が堅調に推移しており、建設需要は底堅さを維持しているものの、建設コストの高騰などにより新設住宅着工戸数は弱含みの動きが続くなど、依然として不透明な状況が続いている。
そのような状況の中、当連結会計年度の売上高は228,419百万円(前年同期比3.3%増)となり、利益面においても、売上高の増加やコスト削減など当社グループの全部門において利益の確保に全力で取り組んだ結果、営業利益は14,726百万円(前年同期比1.8%増)となった。経常利益は14,777百万円(前年同期比7.3%減)となったが、投資有価証券売却益及び受取損害賠償金を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益については13,158百万円(前年同期比24.4%増)となった。
セグメントごとの経営成績は次の通りである。
1.シャッター関連製品事業
Windsor Doors Limited他3社及びSPRINT ROLLER SHUTTERS PTY LTDを連結の範囲に含めたこと等により、当連結会計年度の売上高は93,196百万円(前年同期比2.3%増)となり、営業利益は9,705百万円(前年同期比11.3%増)となった。
2.建材関連製品事業
当連結会計年度の売上高は89,979百万円(前年同期比2.4%増)となったが、スチールドア等が低調に推移した結果、営業利益は3,420百万円(前年同期比22.7%減)となった。
3.サービス事業
緊急修理対応や定期保守メンテナンス等が堅調に推移した結果、連結子会社文化シヤッターサービス株式会社を中心に、当連結会計年度の売上高は31,122百万円(前年同期比6.9%増)となり、営業利益は5,643百万円(前年同期比6.9%増)となった。
4.リフォーム事業
ビルの改修等を手掛けるリニューアル事業等が堅調に推移した結果、当連結会計年度の売上高は6,506百万円(前年同期比8.9%増)となり、営業利益は47百万円(前年同期は営業損失17百万円)となった。
5.その他
社会問題化しているゲリラ豪雨等に対する浸水防止用設備を手掛ける止水事業等が堅調に推移した結果、当連結会計年度の売上高は7,615百万円(前年同期比8.4%増)となり、営業利益は1,263百万円(前年同期比15.3%増)となった。
当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の状況は次の通りである。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、117,344百万円(前連結会計年度末は120,049百万円)となり、2,704百万円減少した。これは、「受取手形、売掛金及び契約資産」が減少(46,935百万円から45,543百万円へ1,392百万円減)、「電子記録債権」が減少(10,631百万円から9,375百万円へ1,256百万円減)したことが主な要因である。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、87,638百万円(前連結会計年度末は86,830百万円)となり、807百万円増加した。これは、「のれん」が減少(11,318百万円から10,329百万円へ989百万円減)した一方で、「建物及び構築物」が増加(12,320百万円から13,774百万円へ1,453百万円増)、「使用権資産」が増加(4,028百万円から4,576百万円へ548百万円増)したことが主な要因である。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、55,554百万円(前連結会計年度末は65,559百万円)となり、10,004百万円減少した。これは、「電子記録債務」が減少(21,552百万円から15,893百万円へ5,659百万円減)、「支払手形及び買掛金」が減少(15,604百万円から11,704百万円へ3,900百万円減)したことが主な要因である。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、35,977百万円(前連結会計年度末は37,395百万円)となり、1,417百万円減少した。これは、「リース債務」が増加(4,907百万円から5,566百万円へ658百万円増)した一方で、「退職給付に係る負債」が減少(16,433百万円から15,409百万円へ1,024百万円減)、「長期借入金」が減少(3,209百万円から2,440百万円へ769百万円減)したことが主な要因である。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、113,450百万円(前連結会計年度末は103,924百万円)となり、9,525百万円増加した。これは、「利益剰余金」が配当金の支払い(4,716百万円)により減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上(13,158百万円)により増加、「為替換算調整勘定」が増加(1,122百万円)したことが主な要因である。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、39,693百万円となり、前連結会計年度末に比べ543百万円増加した。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は10,975百万円(前年同期比29.8%減)となった。
収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益18,643百万円、減価償却費5,338百万円、売上債権及び契約資産の減少額2,721百万円であり、支出の主な内訳は、仕入債務の減少額9,738百万円、法人税等の支払額6,920百万円である。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は3,745百万円(前年同期比77.8%減)となった。
収入の主な内訳は、投資有価証券の売却による収入1,699百万円であり、支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出4,806百万円である。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は6,795百万円(前年同期は9,513百万円の獲得)となった。
支出の主な内訳は、配当金の支払額4,710百万円、リース債務の返済による支出1,238百万円、長期借入金の返済による支出868百万円である。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は、次の通りである。
|
|
第75期 |
第76期 |
第77期 |
第78期 |
第79期 |
|
自己資本比率 |
50.1% |
48.7% |
46.6% |
50.2% |
55.3% |
|
時価ベースの自己資本比率 |
44.9% |
39.1% |
38.2% |
59.8% |
65.2% |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
0.3年 |
0.7年 |
0.8年 |
1.4年 |
2.0年 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
88.0倍 |
43.2倍 |
33.9倍 |
49.2倍 |
21.6倍 |
(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算している。
2.各指標は、下記の基準で算出している。
自己資本比率…………………………………自己資本÷総資産
時価ベースの自己資本比率…………………株式時価総額÷総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率……有利子負債÷キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ………キャッシュ・フロー÷利払い
3.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算している。
4.キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを利用している。
5.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としている。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を利用している。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りである。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
シャッター関連製品事業(百万円) |
50,869 |
101.8 |
|
建材関連製品事業(百万円) |
21,088 |
101.7 |
|
サービス事業(百万円) |
- |
- |
|
リフォーム事業(百万円) |
- |
- |
|
報告セグメント計(百万円) |
71,957 |
101.7 |
|
その他(百万円) |
1,458 |
98.9 |
|
合計(百万円) |
73,416 |
101.7 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去している。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次の通りである。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
シャッター関連製品事業(百万円) |
3,401 |
107.5 |
|
建材関連製品事業(百万円) |
41,745 |
103.0 |
|
サービス事業(百万円) |
1,086 |
117.1 |
|
リフォーム事業(百万円) |
3,734 |
103.5 |
|
報告セグメント計(百万円) |
49,968 |
103.6 |
|
その他(百万円) |
3,032 |
94.1 |
|
合計(百万円) |
53,000 |
103.0 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去している。
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次の通りである。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
シャッター関連製品事業 |
95,180 |
103.8 |
36,681 |
105.7 |
|
建材関連製品事業 |
94,054 |
101.2 |
51,854 |
108.5 |
|
サービス事業 |
31,564 |
107.2 |
4,534 |
110.8 |
|
リフォーム事業 |
6,311 |
111.5 |
939 |
82.8 |
|
報告セグメント計 |
227,112 |
103.4 |
94,010 |
107.2 |
|
その他 |
8,755 |
126.1 |
4,405 |
134.9 |
|
合計 |
235,867 |
104.1 |
98,416 |
108.2 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去している。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りである。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
シャッター関連製品事業(百万円) |
93,196 |
102.3 |
|
建材関連製品事業(百万円) |
89,979 |
102.4 |
|
サービス事業(百万円) |
31,122 |
106.9 |
|
リフォーム事業(百万円) |
6,506 |
108.9 |
|
報告セグメント計(百万円) |
220,804 |
103.2 |
|
その他(百万円) |
7,615 |
108.4 |
|
合計(百万円) |
228,419 |
103.3 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去している。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。海外子会社については、進出国の会計基準に準拠して作成され、現地監査法人の監査を受けた上で必要な調整を反映させている。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項については、関連する会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っている。なお、この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している通りである。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している通りである。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績について、売上高は228,419百万円、営業利益は14,726百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は13,158百万円となった。売上高については、販売数量の増加等が寄与し増収となった。営業利益については、人件費の増加等に伴うコストアップが影響したこと、材料価格の値上がりが影響したことが減益要因となった一方で、販売価格の引き上げが寄与したこと、販売数量の増加が寄与したことにより増益となった。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載している通りである。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、運転資金及び設備投資等を自己資金にて賄うことを基本としているが、資金の安定及び効率的な調達を行うため、金融機関からの借入を行っている。また、金融機関4行との間で借入枠7,000百万円のコミットメントライン契約を締結している(借入未実行残高7,000百万円)。
なお、前連結会計年度において社債を発行し、DOORWORKS AUSTRALIA PTY LTD、Windsor Doors Limited他3社及びSPRINT ROLLER SHUTTERS PTY LTDの株式取得に際して金融機関から調達した借入の返済資金に充当している。
当連結会計年度末における有利子負債(負債のうち利子を支払っているすべての負債)の残高は21,723百万円となっている。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は39,693百万円となっている。
当連結会計年度の資本の財源及び資金の流動性の詳細については、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載している通りである。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、中期経営計画(2024年度~2026年度)の基本テーマである『恒久的な企業価値の創出を目指して』を達成するため、売上高・営業利益・営業利益率・自己資本利益率(ROE)・投下資本利益率(ROIC)・BxVA・BxVAスプレッドを重要な指標として位置付けており、2026年度に売上高250,000百万円、営業利益18,800百万円、営業利益率7.5%、自己資本利益率(ROE)11.0%、投下資本利益率(ROIC)9.1%、BxVA2,700百万円、BxVAスプレッド1.8%の達成をめざしている。当連結会計年度における売上高は228,419百万円(前年同期比3.3%増)、営業利益は14,726百万円(前年同期比1.8%増)、営業利益率は6.4%(前年同期比0.1ポイント減)、自己資本利益率(ROE)は12.1%(前年同期比0.7ポイント増)、投下資本利益率(ROIC)は7.9%(前年同期比1.0ポイント減)、BxVAは700百万円(前年同期比61.1%減)、BxVAスプレッドは0.6%(前年同期比1.0ポイント減)となった。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りである。
1.シャッター関連製品事業
シャッター関連製品事業の売上高は93,196百万円、営業利益は9,705百万円となった。重量シャッターの販売数量が減少した一方で、適正な販売価格の引上げに加えて、高気密性能の高速シートシャッター「大間迅」の売上が堅調に推移したことにより、増収増益となった。セグメント資産は80,777百万円となり、2,609百万円減少した。これは当社及び連結子会社の売上債権回収の早期化等により、受取手形、売掛金及び契約資産、電子記録債権等が減少したことが主な要因である。
2.建材関連製品事業
建材関連製品事業の売上高は89,979百万円、営業利益は3,420百万円となった。主力のスチールドア、引戸や集合住宅向けドアが堅調に推移した一方で、スチールドアの収益構造の整備未達等により増収減益となった。セグメント資産は65,869百万円となり、1,170百万円増加した。これは連結子会社BXカネシン株式会社及び連結子会社BX文化パネル株式会社の設備投資により有形固定資産が増加したことが主な要因である。
3.サービス事業
サービス事業の売上高は31,122百万円、営業利益は5,643百万円となった。緊急修理対応及び保守点検契約が堅調に推移したことにより、増収増益となった。セグメント資産は21,473百万円となり、824百万円増加した。これは連結子会社文化シヤッターサービス株式会社の設備投資により有形固定資産が増加したことが主な要因である。
4.リフォーム事業
リフォーム事業の売上高は6,506百万円、営業利益は47百万円となった。ビルリニューアル事業が堅調に推移したことにより、増収増益となった。セグメント資産は1,398百万円となり、258百万円増加した。これは当社のビルリニューアル事業が堅調に推移したことにより、受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことが主な要因である。
5.その他
その他の売上高は7,615百万円、営業利益は1,263百万円となった。止水事業等が堅調に推移したことにより、増収増益となった。セグメント資産は4,657百万円となり、248百万円増加した。これは連結子会社BX TOSHO株式会社の好調な業績により現金及び預金、受取手形、売掛金及び契約資産等が増加したことが主な要因である。
該当事項なし。
当連結会計年度における研究開発活動は、当社グループの基本方針である「快適環境のソリューショングループ」の実現に向け、既存商品を強化するとともに、お客様の望まれる使途・用途に対して的確にお応えする提案型商品の開発を主要なテーマと位置づけ、新商品、新事業の企画開発を行った。また、エコ・防災・新技術をキーワードとした新商品の開発、改善を行った。
その結果投じた研究開発費は
シャッター関連製品事業においては、ビルや工場、倉庫などに設置する重量シャッターの施工現場において溶接作業を行わない「無火気工法」を開発し、火災予防だけでなく作業環境の改善にも大きく貢献した。厳しい衛生管理や温度及び空調管理が求められるHACCPへの対応を重視する工場や倉庫、冷凍冷蔵施設向けには最大間口8mまで対応できる大開口モデル高速シートシャッター「大間迅ワイドプラス」を開発した。また、防火防煙シャッターの閉動作中における挟まれ事故を防止する「危害防止装置」へ搭載される予備電源を、従来の「ニッケルカドミウム」から「ニッケル水素」に変更し“環境への負荷低減”と“ランニングコスト低減(使用期間を約5年から約10年に長期化)”を実現した。これらの活動推進に伴い、当連結会計年度の研究開発費は
建材関連製品事業のビル用建材においては、ドア商品を通じ持続可能な社会の実現に向け、材料の選定時から環境負荷低減に取り組んでいるほか、製品運搬時のCO₂削減を目的とした「ノックダウンドア枠」を市場投入し、積載効率を向上させるなどの取り組みも行った。加えて、集合住宅・ホテル・福祉施設・会議室などを対象とした引き戸の錠前に、カードキーやテンキーで施解錠できる電池式錠前「引き戸用電池式スマートロック」をラインナップした。トイレブースにおいては、利用者のプライバシーと安全性をより向上させるため、扉下部の隙間を最小限とした「盗撮防止仕様」を追加した。住宅用建材においては、近年需要の高まる「オープンリビング」に対応した、高い意匠性と安全性を備えた室内階段「BX Modern Stairs」に、廻り階段、かね折れ階段を追加し幅広いバリエーションを実現した。これらの活動に伴い、当連結会計年度の研究開発費は
その他の止水関連製品においては、オフィスビルや商業施設など、非住宅の開口部における浸水対策として、止水パネルを最大3段積み上げることで、浸水高さ1.5mまで対応できるアルミ製止水板「ラクセットハイタイプ」に更に止水性能の高い「床堀込みレール仕様」を追加した。これらの活動推進に伴い、当連結会計年度の研究開発費は58百万円となった。