第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営の基本方針

当社グループの経営に対する基本的な考えは「企業は株主・従業員・社会の三者の共有物であり、これにお客様、サプライヤー、金融機関等を加えた全てのステークホルダーに利益と誇りをもたらす(Profit and Pride for All Stakeholders)」であり、長期的利益の犠牲のもとに短期的利益を追求しないことを命題としております。そのために遵法精神に則り、「技術に裏打ちされた、独自性のある、かつ社会に有用な商品を世界中で安くつくり、適正価格で売る」ことにより、高い収益力を持った強い会社となるべく不断の企業活動を展開しております。

(2)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

現下の事業環境は、世界各地域において地政学的リスクの高まりが継続し、資源価格の高騰やサプライチェーン の混乱をもたらすなど、当社グループの各事業に様々な影響を及ぼしました。とりわけ、新興国を中心としたエネルギー需要の増加と堅調な物流動向、並びに日本国内における防衛体制強化を背景に、一般産業機械業界向け事業、舶用業界向け事業及び航空宇宙業界向け事業においては、計画を上回る収益を上げることができました。

一方、自動車・建設機械業界向け事業及び半導体業界向け事業は、従来製品の販売減や、市場における在庫調整が続くなど、当社グループ全体の収益構成にも変化が生じております。このような中、米国新政権の貿易施策とそれらに呼応した各国の政策により、当社グループの今後の事業見通しも不確実性が高まっておりますが、2025年度は中期経営計画の最終年度となりますので、各主要推進項目の着実な遂行を果たし、安定した収益の確保と中長期的な成長が展望できる事業ポートフォリオの構築に引き続き努めてまいります。

 

(中期経営計画の概要)

基本方針:持続性ある企業体質の構築 ~Fly Sky High!~

期  間:2023年度~2025年度

主要推進項目

1.変化への巧緻的対応

2.ESG経営

3.永遠のゼロ ― 「顧客から信頼される製品品質の確保」、「世界同一品質の確保」の実現

4.TCD/ムダ半 ― 「Total Cost Down」「ムダの排除 ~すべてを半分に~ 」

5.DXの推進

6.次世代独自技術製品

7.人間尊重/人財育成

 

最終年度の目標経営数値

 

3カ年計画

目標経営数値

(2025年度)

年度計画

(2025年度)

売上高

2,000億円

1,700億円

営業利益

145億円

90億円

 

本中期経営計画最終年度(2025年度)の目標経営数値は、計画策定時において、各市場の変化への対応に向けた各主要推進項目の取り組みに合わせ、主に半導体業界向け事業を将来の成長ドライバーとして注力することで、売上高2,000億円、営業利益145億円と定めましたが、当初見通し時から半導体業界全体が低迷したことを主な要因として、売上高1,700億円、営業利益90億円に変更することといたしました。

なお、半導体業界向け事業の販売は、2024年度下期より回復傾向にあるとともに、自動車・建設機械業界向け事業においては、次世代主力商品として拡販開発に取り組んでまいりましたEV向けサスペンション用ソレノイドバルブの販売増も見込まれておりますので、これら各事業の課題に重点的に取り組むことで、更なる収益性の向上とビジネスの拡大を進めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、かねてより「企業は株主、従業員および社会の三者の共有物である」という考え方を経営の端々に展開しております。現在の事業環境は、気候変動問題をはじめ持続可能な社会への取り組みが急務となっていることを踏まえ、2021年4月より「サステナビリティ委員会」を設置し、当社グループのサステナビリティ活動を推進する体制を整備しております。

「サステナビリティ委員会」では、サステナビリティ関連の指針やESG Rating等を参考とし、各事業年度の当社グループとしてのESG重要課題(マテリアリティ)を協議・決定し、それらの活動状況・取り組みの報告・評価およびリスク管理を図っており、これらの活動状況は取締役会に報告しております。なお、サステナビリティ委員会の体制・活動については、「4.コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」を参照ください。

 

(2)戦略

サステナビリティ委員会を通じて、識別された当連結会計年度における、当社グループにおけるESG重要課題(マテリアリティ)とその概要及び考え方は以下のとおりであります。

重要課題(マテリアリティ)

概要・考え方

環境マネジメント

環境方針に基づいた環境マネジメント体制、環境保全活動に取り組んでおります。

品質の確保

製品の品質問題は、ステークホルダーの信頼の失墜、更には会社の存亡に関わる問題と捉え、「顧客から信頼される製品品質の確保」、「世界同一品質の確保」に向けて品質の飽くなき改善・向上に取り組んでおります。

人間尊重に基づく人事施策

経営理念である「愛情と信頼に基づく人間尊重経営」実践のため、従業員一人ひとりがその能力を出し切ることができる、働きがいのある職場づくりに努めています。新人からマネジメント層までの各教育プログラムを設け、人財教育に注力しています。また、ダイバーシティ・女性活躍社会の実現、働き方改革の推進に向け各指標・目標を定めて取り組んでおります。

社会貢献活動

当社グループ各拠点の地域から信頼される企業市民を目指し、様々な社会貢献活動を継続的に実施しています。各拠点の地域イベントへの参画や会社主催のイベントへ地域住民の方々を招待をはじめ、NPO法人や学術団体への活動支援、地域スポーツチームへの協賛も積極的に展開しております。

労働安全衛生

「安全は人間尊重経営の礎 私の願い、私の使命」を基本理念とし、従業員の安全・健康を第一とした安全な職場環境づくりに取り組みを進めています。また、労働安全衛生システムISO45001の考え方に基づいた労働安全衛生活動を推進しております。

サプライチェーンマネジメント

当社グループの多岐に渡る製品の製造責任と各要求に応えることができるように、製品材料、金属部品、樹脂部品等のメーカーや、各種の加工・表面処理・組み立て等の委託先など、多岐にわたるパートナー企業との取引について各方針を定め、公平・公正な調達活動を進めております。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンス・コードに基づいた組織統治と適切な情報開示、また公正な競争・事業遂行のための取り組みを図っております。

各事業活動に応じた法令順守を図るためコンプライアンス教育と各部門において個別法令の管理を進めております。

 

 

重要課題(マテリアリティ)

概要・考え方

リスクマネジメント

企業活動の多様化、グローバル化等に伴い企業としてのリスク管理の重要性が増していることから、サステナビリティ委員会傘下にリスクマネジメント分科会を設置し有事の備えに努めています。また、グローバル各拠点のインターナルオーディット機能の組織化を進め、定期的に国内・海外拠点のガバナンス・法令順守状況を確認しております。

情報セキュリティ

事業活動におけるDXの進展等を踏まえ、情報セキュリティの重要性が高まっていることから、管理体制の強化、従業員へのセキュリティ意識の向上を目的とした教育、緊急事態発生時の対策、各システムの脆弱性対策に努めております。

 

(3)リスク管理

サステナビリティ活動のリスク管理に関しては、各ESG重要課題を主管する組織部門において、各々の重要課題に応じた管理に取り組むとともに、それらの活動はサステナビリティ委員会傘下に設置するサステナビリティ推進者会議において評価を行っております。

また、事業活動上に潜むリスクを抽出し、リスク顕在化の予防保全体制の確認のためサステナビリティ委員会傘下にリスクマネジメント分科会も設置し、事業活動上のリスクの洗い出しから予防保全を図っております。

これらの活動状況は、サステナビリティ委員会において評価し、各事業年度の活動状況は取締役会に報告を行っております。

 

(4)指標と目標

上記、各重要課題(マテリアリティ)のうち、重点的に実施している環境マネジメント(気候変動対策)に関する「指標と目標」は以下のとおりであります。

① 方針

当社グループは、グローバルで事業を展開する企業集団として、気候変動への対応を世界的に取り組むべき重要な問題として認識しており、持続可能な社会を構築するために2050年までにカーボンニュートラルを達成するための活動を進めております。具体的には、TCFDの要求事項に従い、当社に与える気候変動の影響を分析し、気候変動への対策を経営戦略に反映させることを推進するとともに、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの積極的な導入などCO2の排出量削減に取り組んでおります。

② 戦略(シナリオ分析によるリスクと機会の検証)

当社では、TCFD提言に沿った取り組みの第一歩として、パリ協定が目指す将来像の実現に向け、温室効果ガスの排出量削減に係る技術革新加速や政府による排出規制強化などの対応が進められる「2℃未満シナリオ」と、これらの取り組みが現状レベルのまま推移する「4℃シナリオ」の両シナリオにもとづいて、気候関連「リスク」と「機会」を特定しております。

当社グループの中長期的な事業ロードマップは、脱炭素社会へ向けて、再エネ比率の拡大や生産工程におけるCO2削減の展開を加速するとともに、かねてより進めている次世代自動車・次世代エネルギー市場をターゲットとした環境貢献型製品の販売拡大を進めてまいります。また、気候変動による事業活動上のリスクへの対応は、新たな技術創出等を通して大きなビジネスを生み出す機会でもあると捉え、中長期の企業価値向上へ向けて取り組みを進めてまいります。

 

 

 

シナリオ

将来像

リスク

機会

2℃未満シナリオ

省エネ・脱炭素技術の進展及び対応政策の強化により、温室効果ガスの排出がパリ協定の目標に沿って削減

環境税強化(炭素価格上昇)に伴う原燃料・原材料コストの上昇

温室効果ガス排出規制強化による対応技術導入によるコスト負担増

化石燃料利用減少による自動車内燃機関車両向け製品、石油精製・石油化学プラント向け製品の販売減少

次世代モビリティ・次世代エネルギー市場をターゲットとした環境貢献型製品の販売拡大

4℃シナリオ

温室効果ガスの排出が現状レベルで推移

自然災害の増大に伴う設備被害、事業活動の中断

BCM対策コストの増加

異常気象による災害復旧向け機材製品の販売、需要増

既存製品群の販売継続

 

③ 指標と目標

2024年度のCO2排出量実績は、2018年度対比で国内は32.6%減、海外は11.4%減となりました。脱炭素社会の実現は、グローバル企業である当社においても重要課題と位置づけており、製品においては省エネルギー、環境負荷低減を実現する環境貢献型製品の開発を、生産においては再生可能エネルギーの導入、省電力化の推進を図ることにより、2050年カーボンニュートラルを目指してまいります。

(CO2削減目標(対象:Scope1、Scope2))

地域

2030年目標

2050年目標

国内

2018年度対比 50%削減

カーボンニュートラルの実現

海外

2018年度対比 30%削減

 

(5)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

① 人材の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

当社グループは、「愛情と信頼に基づく人間尊重経営」の経営理念のもと、技術に裏打ちされた独自性のある、かつ社会に有用な商品を世界中で生産・販売することで、従業員の幸福の実現と持続可能な社会の実現を目指していきます。

そのために働く一人ひとりが主体性やチャレンジ意欲を持ち、会社への貢献・自身の成長に繋げ、多様な働き方を支援するための制度整備と教育機会の充実に取り組むとともに、多様な人材が活躍できる環境づくりの一環として、新人事制度の導入や女性活躍施策を推進しております。

② 指標及び目標

 当社における女性活躍推進に向けた指標及び目標は、以下のとおりであります。なお、当社グループにおける共通の指標及び目標については、グループ各社の従業員数およびそれらに占める女性従業員の割合が各社により異なること、ならびに各国の法制度、女性活躍推進に関する社会的背景等も異なるため、定めておりません。

指標

実績(当連結会計年度)

目標

女性総合職人数

38

2026年度末時点40名以上

女性管理職人数

15

2026年度末時点15名以上

キャリア志向を持つ女性の割合

22

2026年度末時点30%以上

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 事業等のリスクを把握する体制

当社グループではリスクマネジメント方針、リスクマネジメント規程に基づき、当社のサステナビリティ活動を統括するサステナビリティ委員会傘下にリスクマネジメント分科会を設置し、定期的に事業等のリスクに関する損失の危険等について予防保全体制の確認を行い有事に備える体制を整備しております。また個別のリスク事象に関しては、事例検討会等を継続的に実施し、これらの活動方針・活動状況についてはサステナビリティ委員会において協議検討後、取締役会へ定期的に報告を行っております。

 

(2) 自動車業界等への依存について

当社グループの製品のうち、約5割は自動車業界及び自動車部品業界向けが占めており、当社グループの業績等は自動車生産及び販売動向の影響を受けております。また、電気自動車、燃料電池自動車等の普及進展によっても内燃機関向け既存製品の減少による影響を受けます。

自動車業界においては、自動車部品業界も含めて、グローバル化の一層の進展、世界規模での販売競争と業務提携や再編、調達コスト削減が進んでおり、加えて、国内完成車メーカー等における海外生産へのシフトも進んでおります。これに伴い、当社を含む部品メーカーに対しては、品質向上や納期厳守は当然のことながら、抜本的な原価低減、技術革新、グローバルな対応などの要請が強まっております。

これらに対応するため当社グループも徹底したTCD(Total Cost Down)、ムダ半活動(ムダの排除~すべてを半分に~)、顧客や技術動向把握のためのR&Dセンター設立、グローバル生産体制の構築等に取り組んでおります。

 

(3) 技術変化への対応について

各業界における技術革新や品質向上にかかる要求等への対応が困難となった場合又は当社グループが保有する技術等について陳腐化が生じた場合には、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、多岐にわたる業界の幅広い要求に対応すべく、長年にわたり蓄積した回転・固定・往復動の密封技術を基盤にシナジーある新製品の開発を進めております。また、近年においては、カーボンニュートラルをはじめ持続可能な社会実現に向け、電気自動車の開発や当社製品が搭載される各機器の省力化、小型化等も進んでおり、次世代モビリティ・次世代エネルギー市場をターゲットとした研究開発を進めております。

 

(4) 製品の品質問題が及ぼす影響について

当社グループは、各生産拠点において世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造しておりますが、万が一大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような製品の不具合が発生した場合、多大な対応コストや社会的信用の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは「永遠のゼロ」をスローガンとした品質改善活動を継続して実施しております。

 

(5) 海外展開について

当社グループにおける海外展開については、顧客の需要、品質及び生産コスト等を考慮し、最適地生産を行うことを基本方針としております。また、顧客の海外展開についても必要な対応を進めており、国内に加えて、アジア・オセアニア、欧州等の地域において製品供給体制を構築しております。

さらに、ドイツを中心としてメカニカルシール等の製造販売を行うイーグルブルグマンジャーマニー社との間で、一般産業機械業界向けメカニカルシール等の製造及び販売について合弁事業を推進しております。

当社グループにおける海外事業の拡大に伴い、海外情勢や為替変動、海外市場の需給動向、所在地の法令改正等が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、イーグルブルグマンジャーマニー社との今後のアライアンス及び海外事業展開が当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 

(6) 原材料・部品等の調達について

当社グループが調達する一部の特殊な原材料・部品等については、限られたサプライヤーに依存する場合があります。また、サプライヤー及びサプライヤーに関係する原材料メーカー等における被災、事故、倒産などによる、想定を超える原材料・部品等の供給中断、需要の急増による供給不足が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、原材料・部品等を複数のサプライヤーから購入することにより安定した調達を図り、生産に必要な原材料・部品等が十分に確保されるよう努めております。

 

(7) 情報セキュリティについて

当社グループは、事業活動を通して入手した顧客・取引先に関する情報並びに当社グループ内の営業、技術、知的財産、ノウハウ等を含む機密情報や個人情報(以下、情報資産という)を保有しております。このため、サイバー攻撃、コンピュータ・ウィルスの感染、その他不測の事態によりこれらの情報資産が消失、改ざん、漏洩した場合、当社グループの社会的信用低下や損害賠償請求等により、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、サイバー攻撃の高度化や被害の甚大化を受け、情報セキュリティ対策を適切に実施し、被害を防止・極小化することは重要課題の一つとして認識しております。その維持向上に向け当社グループの情報セキュリティ基本方針を定め、専門部署を設置し、グループ全体の情報セキュリティの強化を推進しております。これらに関する実務においては、セキュリティインシデントを含む情報漏洩に関しての事件、事故等の各事例の共有等とそれらの未然防止のためのサイバーセキュリティ対策の実施、周知等を実施しており、当社事業活動に応じた、情報セキュリティに関する規程・基準の制定・運用を進めております。

また、情報セキュリティに関する従業員の知識向上・トレーニングを図るためのセキュリティ教育を継続実施しております。

 

(8) 災害・パンデミックや社会インフラの障害について

想定を超える大地震や天変地異、パンデミック等による社会インフラの損壊等により生産・販売活動に著しい障害が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは従業員の安全確保を第一とし、被災した際の目標復旧期間をあらかじめ定め、減災対策の徹底、安全在庫の確保、調達先の複数化、代替部材の確保等、生産活動の停止や製品供給面での混乱を最小限におさえるBCM(Business Continuity Management)の構築を進めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループを取り巻く環境は、各国経済の成長率は落ち着きを見せ、安定的なものとなった一方、急激な円安や原材料の高騰、各国の金融政策及び継続した地政学的リスク等の影響によって、先行き不透明感が強まりました。

このような事業環境のもと、当社グループの事業領域においては、自動車・建設機械業界向け事業と半導体業界向け事業は伸び悩みましたが、その他の事業は堅調に推移し、グループ全体としては売上・営業利益ともに前期を上回る結果となりました。経常利益は、前期に計上した為替差益が為替差損に転じたことにより減益となりました。これに加えて、減損損失などの特別損失の計上及び一般産業機械業界向け事業でのグループ内組織再編に伴い発生した非支配株主に帰属する当期純利益の計上等により、親会社株主に帰属する当期純利益についても前期を下回りました。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ64億29百万円減少し、2,034億84百万円となりました。負債合計は、前連結会計年度末に比べ32億77百万円減少し、809億64百万円となりました。純資産合計は、前連結会計年度末に比べ31億52百万円減少し、1,225億19百万円となりました。

b.経営成績

当連結会計年度の売上高は1,681億72百万円(前期比0.7%増)、営業利益は84億94百万円(前期比4.8%増)、経常利益は120億24百万円(前期比12.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は48億77百万円(前期比34.9%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

[自動車・建設機械業界向け事業]

当事業は、グローバルで自動車の電動化が進み、内燃機関向けのシールや制御弁など従来製品の販売が減少しました。特に国内、東南アジア地域で減少し、当セグメントの売上高は875億92百万円(前期比3.2%減)、営業利益は5億59百万円(前期比65.3%減)となりました。

[一般産業機械業界向け事業]

当事業は、年間を通じてインド・アジアパシフィックが好調に推移しました。特に東南アジア地域における石油精製、石油化学プラント向けの補修需要が伸長し、当セグメントの売上高は408億36百万円(前期比6.2%増)、営業利益は53億84百万円(前期比66.8%増)となりました。

[半導体業界向け事業]

当事業は、生成AI関連分野を中心に半導体業界は回復したものの、当社製品の市場での在庫調整が遅れていることにより、当セグメントの売上高は125億84百万円(前期比16.6%減)となりました。販売減に加えて今後の需要増加に備えた先行投資により固定費も増加し、営業損失は37億66百万円(前期は営業損失7億53百万円)となりました。

[舶用業界向け事業]

当事業は、旺盛な新造船需要に加え、修繕需要が地政学的な問題等も背景に増加し、当セグメントの売上高は180億47百万円(前期比20.4%増)、営業利益は52億78百万円(前期比56.4%増)となりました。

[航空宇宙業界向け事業]

当事業は、防衛関連を含む航空機向け製品及び宇宙向け製品が伸びたことにより、当セグメントの売上高は91億12百万円(前期比13.2%増)、営業利益は10億27百万円(前期比64.3%増)となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は248億90百万円となり、前連結会計年度末に比べ61億63百万円の減少となりました。

各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は136億92百万円(前期比22.8%減)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益115億57百万円、減価償却費105億35百万円を計上した一方、法人税等の支払いにより37億96百万円支出したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は104億40百万円(前期比13.2%減)となりました。これは主に有形固定資産の取得により106億57百万円支出したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は83億12百万円(前期比29.7%増)となりました。これは主に長期借入れにより110億円獲得した一方、長期借入金の返済により125億12百万円、配当金の支払(非支配株主への支払いを含む)により76億7百万円支出したことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

当連結会計年度における生産、受注及び販売の実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

a.生産実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

自動車・建設機械業界向け事業(百万円)

87,311

98.2

一般産業機械業界向け事業(百万円)

41,249

108.3

半導体業界向け事業(百万円)

9,603

89.6

舶用業界向け事業(百万円)

17,805

120.7

航空宇宙業界向け事業(百万円)

8,088

127.5

合計(百万円)

164,057

103.3

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b.受注実績

セグメントの名称

受注高

前年同期比(%)

受注残高

前年同期比(%)

自動車・建設機械業界向け事業(百万円)

86,820

95.1

5,328

87.3

一般産業機械業界向け事業(百万円)

40,807

103.9

6,835

99.6

半導体業界向け事業(百万円)

12,735

149.7

2,024

108.1

舶用業界向け事業(百万円)

23,054

137.1

13,147

161.5

航空宇宙業界向け事業(百万円)

11,103

137.3

8,985

128.5

合計(百万円)

174,521

106.4

36,319

121.2

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c.販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

自動車・建設機械業界向け事業(百万円)

87,592

96.8

一般産業機械業界向け事業(百万円)

40,836

106.2

半導体業界向け事業(百万円)

12,584

83.4

舶用業界向け事業(百万円)

18,047

120.4

航空宇宙業界向け事業(百万円)

9,112

113.2

合計(百万円)

168,172

100.7

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

NOK株式会社

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

21,902

13.1

18,109

10.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、当初計画に対して為替が円安で推移したことにより売上高を押し上げました。事業別では、舶用業界向け事業が、新造船・修繕需要ともに前年度から引き続き好調に推移し、一般産業機械業界向け事業及び航空宇宙業界向け事業も当初計画を達成しましたが、自動車・建設機械業界向け事業及び半導体業界向け事業の低迷により、グループ全体では当初計画に対して未達となりました。

利益面では、自動車・建設機械業界向け事業及び半導体業界向け事業の減益影響はありましたが、前年度に続き過去最高の売上高と営業利益を達成した舶用業界向け事業をはじめ、一般産業機械業界向け事業、航空宇宙業界向け事業の収益拡大が寄与し、グループ全体の営業利益は当初計画を上回りました。

当連結会計年度末の資産合計は2,034億84百万円(前期比3.1%減)となりました。新規の借入を抑えるとともに株主還元施策の拡大を図ったこと及びグループ内組織再編の実施に伴う非支配株主への配当支払い等により、現金及び預金が減少しました。加えて、円高による為替換算の影響で海外関係会社に係る資産が減少しました。

負債合計は809億64百万円(前期比3.9%減)となりました。国債利回りが上昇し、退職給付債務算定のための主要な前提条件である割引率が上昇したことにより退職給付に係る負債が減少しました。

純資産合計は1,225億19百万円(前期比2.5%減)となりました。メキシコ・ペソや韓国ウォンなど当社グループの主要拠点に係る通貨に対して、期末日で円高になったことにより為替換算調整勘定が減少しました。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

[自動車・建設機械業界向け事業]

グローバル自動車生産台数に占めるEV等の割合は今後も増加し、内燃機関向けの従来品目の販売減少傾向は続く見通しです。加えて米国の貿易政策の動向などもあり、事業の見通しは極めて不透明な状況にありますが、継続したコストダウン活動と合わせ、さらなる販売価格の見直しを進め、収益確保に努めてまいります。

また、EVを始めとした次世代主力製品の開発拡販においては、EV車両重量増加による安定性向上のためのサスペンション用ソレノイドバルブの引き合いが進み、将来の販売増加に向けた取り組みを継続しております。内燃機関向け製品の減少をカバーすべく、今後も次世代主力製品の開発拡販を進めてまいります。

 

[一般産業機械業界向け事業]

本事業は、石油精製、石油化学プラント等に設置されるポンプ・コンプレッサーにメカニカルシールを納入し、その後のアフターサービスで収益を得るビジネスモデルです。そのため新規納入時に損失が生じても正味現在価値がプラスの案件は、投資回収期間にかかわらず積極的に受注を確保していくこととしております。

2024年度は、本方針に基づき、東南アジア地域で過去に納入した案件のアフターサービスが増加したため、大幅な増益となりました。2025年度は、新規プラント建設プロジェクト案件の受注を見込んでいるため、売上高は増加しますが営業利益は前期比減の見通しです。一方で、プロジェクト受注により将来のアフターサービスが期待できますので、新規プロジェクト、アフターサービスのバランスを見ながら、中長期的な収益拡大に努めてまいります。

[半導体業界向け事業]

2024年度は、市場における当社製品の在庫過多により当初計画を下回る結果となりました。一方で、下期後半からの販売は回復傾向に入っており、2025年度の販売は2年前の2023年度と同程度と見込んでおります。

当社の強みである幅広いシール製品、ラインナップを活かした新製品開発を続け、半導体製造装置各社及び大手ファウンドリーへの拡販を進め、2026年度以降の黒字回復を図ってまいります。

[舶用業界向け事業]

2024年度は、物流増加と地政学リスク等の拡大を背景に船舶の稼働が活発化し、売上・利益ともに当初計画を上回る結果となりました。

本事業の主要製品は、1万トン以上の中大型船のスクリュー部分に設置される船尾管シールです。主要造船国において約6割のマーケットシェアを有しており、新造船に納入した後のアフターサービスで収益を確保していくビジネスモデルです。2025年度は、主に新造船向けの販売が増加することから、プロダクトミックスにより営業利益が落ち込む見通しではありますが、船舶の稼働状況によってはアフターサービスの増加も見込まれますので、造船、船舶の稼働動向を注視してビジネスを進めてまいります。

[航空宇宙業界向け事業]

航空機分野は、官民ともに航空機エンジン向けシールの販売が増加し、2025年度も増産計画であります。また宇宙産業分野においては、H3ロケットや衛星へのシール製品・機器製品等の販売が増加する見込みであり、さらには民間宇宙開発や海外からの引き合いも増えていますので、今後100億円以上のビジネスに拡大する見込みであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

当社グループの基本的な資本の財源は自己資金であり、営業活動によるキャッシュ・フローによって獲得した資金を、国内外で設置しているキャッシュ・マネジメント・システムを通じて集約し、設備投資等の企業価値向上に資する使途に用いております。設備投資等についてはフリーキャッシュフロー黒字の範囲内を原則としており、手元流動性を確保することに努めておりますが、不足する資金につきましては金融機関からの借入により調達しております。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は447億72百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は248億90百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5【重要な契約等】

主要な契約は次のとおりであります。

(1)販売代理店契約

契約会社名

相手先

契約年月日

内容

期間

イーグル工業㈱

NOK㈱

1982年9月30日

当社製品(自動車用、家電用及び建機用メカニカルシール、その他)の代理店販売

3年

(その後1年

毎の更新)

 

(2)合弁事業契約

契約会社名

相手先

契約年月日

内容

名称

国名

イーグル工業㈱

EagleBurgmann Germany GmbH&Co.KG

ドイツ

2005年10月17日

一般産業機械業界向けのメカニカルシール等の製造販売に係る合弁事業契約

Burgmann International
GmbH

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、グローバルに展開される回転装置軸封部品のソリューションプロバイダーとしての責務を果たすべく、トライボロジー、材料工学、流体力学をベースとして、当社のコア技術である材料・成膜技術、分析・評価技術、精密微細加工技術、数値解析技術を融合させた研究開発活動を行っております。

特に、近年の脱炭素化・カーボンニュートラルを目指す世界的な動きを背景に、各マーケット分野に対して最適な低摩擦技術の開発に重点を置いております。その中でも、急速な拡大をみせる電動自動車(xEV)をはじめとする電動モビリティにおける電費向上、水素関連機器や再生可能エネルギー発電機器における動力損失の大幅な削減等、当社技術の果たすべき役割は非常に大きいものと認識し、国内外の大学、研究機関、および国内関係省庁との積極的な協業も行いながら活動を進めております。

新たな分野として、センシング機器の研究開発にも力を入れて活動しております。その成果のひとつとして、電池・無線式で遠隔地から機器や設備の状態(圧力・温度・振動)を検知する「IoTマルチセンサ」を開発し、リリースしております。このIoTマルチセンサは、様々な機器や設備の効率運転、故障の未然防止、保守点検の省人化を可能にします。現在、搭載するセンサの種類や仕様を拡充すると共に、クラウド上でAI技術を駆使した状態診断やユーザーのDXを実現させるなど、製品の付加価値と利便性を高めるべく研究開発を継続しております。

なお、当社グループの研究開発活動は当社技術本部が主体となり、当社グループの各技術部門・生産部門・営業部門との連携のもとに、各セグメントで推進しております。

研究スタッフは188名でこれは総従業員数の3.0%にあたり、当連結会計年度の研究開発費は3,582百万円であります。

当連結会計年度における各部門別の研究開発状況は次のとおりであります。

(1) 自動車・建設機械業界向け事業

グローバル自動車業界のEVシフトへの対応として、EV市場にとって重要な中国とEUの拠点と連携し、グローバルな研究開発を展開しております。海外拠点においては、EV市場の開拓のため、グローバルにマーケットリサーチを行い、顧客の製品ニーズを吸い上げ、日本と情報を共有する役割を持たせております。このようにグローバルに迅速かつ的確にEV関連の技術情報を把握し、EV関連製品の開発・拡販を行っております。

シール製品については、表面テクスチャリング技術を用いたEV駆動モータ軸水冷用高速メカニカルシールを開発し、高密封性能と低トルク性能の両立により顧客から高い評価を頂き、量産を開始すると共に更なる拡販を図っております。更に、EV減速機などの高速回転機器向けに、表面テクスチャリング技術を応用した油潤滑用高速メカニカルシールの開発を推進しております。

電動ウォーターポンプ用製品については、耐摩耗性に優れ、摩擦力低減を狙ったカーボン軸受の量産を拡大しております。

メカトロニクス製品及び金属ベローズ応用製品については、次世代自動車用として、FCV車用水素逆止弁の量産立ち上げからの次期モデルの検討、EV車用の温調システム、ヒートポンプシステム等の熱マネジメントシステム用アイテムの開発を行っております。熱マネジメントシステムに用いられるLLC切替弁については、長年培ってきたメカニカルシールのしゅう動技術を応用し、高い密封性と低摩擦を両立し、システム全体の効率化に貢献できる製品の開発を進めております。

次世代自動車を含む全車両タイプへの採用が期待できるセミアクティブサスペンション用ソレノイドバルブにおいては、機能向上、搭載性向上を狙った新仕様の量産準備を進めると共に、更なるシェア拡大に向け、活動を継続しております。

さらには、油圧機器全般に適用できるエネルギー回生装置「HyBEKSTER」の開発を進めております。これは油圧ショベルやフォークリフト、油圧プレスなど、油圧で負荷を上下させるシリンダからの戻り油を、独自の自己圧作動型増圧器を通してアキュムレータに畜液し、高圧エネルギーとして再利用することでシステムの省エネを図る、環境保全に貢献する画期的な油圧ハイブリッドシステムであります。経済産業省 「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業補助金、工場・事業場型 先進設備・システム」として認定されています。

自動車・建設機械業界向け事業に係る研究開発費は2,097百万円であります。

(2) 一般産業機械業界向け事業

一般産業機械業界向けには、各種プラント、原子力発電所に設置されるポンプ、コンプレッサーなどに使用されるメカニカルシールやカップリングの研究開発生産を手がけております。

工業用メカニカルシールについては、東南アジアを中心とした石油精製、石油化学プラント建設において、米国石油協会のメカニカルシール規格API682に対応した多数のメカニカルシールとシール液サプライシステムを受注し、設計、製造、納入を行っております。また、高圧・高速条件で使用される機器向けには、表面テクスチャリング技術により摩擦力と発熱を大幅に低減させ、長寿命化を図ったメカニカルシールを積極的に展開しております。

ダイアフラムカップリングについては、海外の石油精製、石油化学コンビナート及びLNG関連のコンプレッサーや、発電所向けに採用されており、大型及び高速用途の製品開発に引き続き取り組んでおります。

一般産業機械業界向け事業に係る研究開発費は985百万円であります。

(3) 半導体業界向け事業

半導体業界向けには、半導体チップや液晶パネル、太陽電池パネルなどの半導体製造装置に使用される各種製品を展開しております。

磁性流体真空シールについては金属ベローズシール、ロータリージョイントも組み合わせたハイブリッドシールやモータ一体型などの開発も進めております。

また、スリップリング(静止体から回転体に電力や電気信号の伝達を可能とする回転コネクタ)について、半導体製造装置向けとして開発に取り組んでおります。

半導体業界向け事業に係る研究開発費は350百万円であります。

(4) 舶用業界向け事業

中・大型船舶における油潤滑式船尾管シールについては、将来の環境規制改定を見据え、生分解性油をはじめ様々な油種に適合するシール材の開発、量産拡大に向けた活動に引き続き取り組んでおります。併せて、高荷重下での軸受潤滑特性改善に向けた生分解潤滑油の改良にも取り組んでおります。

また、水潤滑環境下でも信頼性を向上させた中・大型船用の船尾管システムの開発に加え、電動推進システムへの対応や小型船への環境貢献型船尾管システムの開発にも取り組んでおります。

船舶の安全航行維持を目的に、軸系システムの機器状態監視システムについても開発を進めております。

舶用業界向け事業に係る研究開発費は17百万円であります。

(5) 航空宇宙業界向け事業

民間航空機エンジンは、低燃費とCO2排出量削減を目指した次世代エンジン向けに表面テクスチャリング技術を用いた低トルクシールを開発中であり、固有技術獲得に引き続き取り組んでおります。

宇宙業界ではロケットの構成部品であるターボポンプや高圧配管、燃料タンクにシール部品を、人工衛星にはバルブ・フィルターなどの機器製品を納入しております。新型基幹ロケットH3をはじめ、次世代が期待される再使用ロケットや民間ロケット用のシール開発にも参画しております。

航空宇宙業界向け事業に係る研究開発費は132百万円であります。