第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

私たちは「防ぐ」を合言葉に、すべてのユーザーへ安全・安心・快適・感動を提供し、持続可能な社会づくりに貢献します

[経営ビジョン]

(1)社会への貢献

   「防ぐ」をキーワードに、ユーザーのいまと未来を守ります

(2)企業力を磨く

   社会から常に必要とされる企業となるために、企業品質を磨き続けます

(3)独創性と挑戦

   ニッチな発想力と果敢な実行力により、新たなマーケットの開拓を進めます

(4)人財の育成

   熱意と誇りを持って自ら動き、お客さまに信頼される企業人を育成します

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、2025年度を初年度とする新たな中期経営計画『TOYO ADVANCE 5』(2025年5月14日公表)をスタートすることといたしました。

当社グループは、「防ぐ」を合言葉にすべてのユーザーへ安全・安心・快適・感動を提供し持続可能な社会づくりに貢献するという新たな経営理念の実現のため、5年後のあるべき姿を掲げ、社員一人ひとりが使命を果たし共有・協力することをスローガンに、高い理想に向かって一歩一歩着実に前進してまいります。

[中期経営計画重点施策]

(1)基幹事業の強化と、企業品質向上への取り組み

  ①戦略部門への重点的な経営資源投入および組織改革

  ②提案力強化による基幹商品の販売力強化

  ③付加価値の高いサービス提供による販売価格の維持向上

  ④営業・製造・技術・設計・施工部門の連携強化による生産性向上

  ⑤製造部門の品質向上と原価低減推進

  ⑥施工品質向上と施工力の増強

  ⑦聖域の無い業務見直しによるコスト圧縮の徹底推進

(2)成長戦略と人的資本投資への取り組み

  ①フェーズフリー製品など競争力の高い成長戦略商品の開発強化

  ②成長戦略商品のプロモーション強化と販売促進

  ③果敢なキャッシュアロケーションの実行

  ④PBR1倍以上に向けたIRの更なる充実と企業認知度の飛躍的向上

  ⑤人財育成

  ⑥社員エンゲージメントの定期的計測と向上に向けた諸施策の実行

(3)サステナビリティへの取り組み

  ①環境配慮型製品の研究とCO2削減目標達成への取り組み

  ②ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みと実践

  ③社会貢献

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する中で、景気は緩やかに回復しました。しかしながら、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクや、原材料価格やエネルギー価格の高止まり、物価の上昇等により、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

当シャッター業界を取り巻く状況としましては、民間設備投資需要は持ち直しの動きがみられますが、中・大型物件における受注競争は依然激しく、引き続き予断を許さない環境にあります。

今後の見通しにつきましては、景気は緩やかな回復が続くことが期待される一方で、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響や、米国の政策動向による影響、金融資本市場の変動などが我が国の景気下押しリスクとして懸念され、依然として先行き不透明な状況が続くものと見込まれます。

当社グループは、中期経営計画『TOYO ADVANCE 5』において9つの重要業績評価指標(KPI)を設定し、その最終年度の数値目標である売上高250億円、営業利益20億円、ROE10%、PER10倍、戦略的キャッシュアロケーション15億円などの達成に向けて、基幹事業の強化や企業品質向上、成長戦略と人的資本投資、サステナビリティなどの重点施策に取り組んでまいります。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、売上高、営業利益を経営上の重要な指標と考えております。また、収益性の判断指標として売上総利益率、営業利益率、財務上の安定性の判断指標として自己資本比率を重要な指標と考えております。

当連結会計年度においては、売上高は20,871,090千円(前年同期は21,487,506千円)、営業利益は1,301,165千円(前年同期は1,480,614千円)となり、売上総利益率は27.3%(前年同期比0.7ポイント減少)、営業利益率は6.2%(前年同期比0.7ポイント減少)、自己資本比率は50.7%(前年同期比6.6ポイント上昇)となりました。

当社グループは企業価値の向上を目指し、2025年度から新たな中期経営計画で設定した重要業績評価指標の向上に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス及びリスク管理

 当社グループは、「『防ぐ』を合言葉にすべてのユーザーへ安全・安心・快適・感動を提供し持続可能な社会づくりに貢献する」ことを経営理念とし、建物における防災や防犯に資する製品について、製造・販売・施工・メンテナンスを事業としていることから、その事業そのもので社会的課題の解決を目指しております。

 このような社会・環境課題の解決に資する製品開発につきましては、取締役会において商品開発担当の取締役より報告を行っております。また、役員全員を中心として構成するリスク管理委員会において、グループ全体に関するサステナビリティ全般のリスク事項を洗い出し、識別された重要な課題について、その対応策の立案・実行を進めております。

 

(2)戦略

 当社グループは、以下に記載のように、社会的な課題及びサステナビリティ関連のリスクと機会を把握し、対応するための取組を行っております。

a:安全・安心・快適・感動を提供する商品開発

 当社グループの商品は防犯用、或いは防火、防煙という用途で使用されることが多く、また最近の地球温暖化が原因と思われるゲリラ豪雨から被害を防ぐ止水ドアなどにより、お客様の生命と財産を守ることや、「アクションフリー」「フェーズフリー」「カーボンニュートラル」を意識した商品開発を通じ、より快適・感動を与える企業であり続けます。

b:環境保全活動

・工場を中心に照明のLED化を推進しており、化石燃料使用量の削減を図っております。

・空調効率を向上させる高速シートシャッターの積極的な販売により、温室削減ガスの排出削減へ貢献しております。

・生産設備機械については、CO2削減に向けて、より環境負荷の少ない機械への切り替えを推進しております。

c:社会貢献活動

・工場周辺の小中学校からの工場見学を定例的かつ積極的に実施しております。

・大学に対する特別講義への要員派遣及び生徒支援募金への協力を実施しております。

・環境保全設備の導入にあたり、SDGsリースを利用し寄付を行っております。

・持続可能な社会づくりという開催趣旨に賛同し、奈良県で開催されるハーフマラソン大会への協賛を行っております。

・社会的課題の解決に資するソーシャルボンドの趣旨に賛同し、日本学生支援債券への投資を実施しております。

・地域社会との共生を目的とし、当社つくば工場は筑波東部地区工業団地連絡協議会の一員として、毎年の献血活動や環境美化活動にも参画しております。

・大阪・関西万博の開催の意義である、「いのち輝く未来社会へ」「SDGs達成・SDGs+beyondへの飛躍の機会」「Society5.0実現に向けた実証の機会」「日本の飛躍の契機に」に賛同し、サプライヤーとして協賛しております。

 

①気候変動

当社は、サステナビリティを進めていく上で気候変動を重要な要素であると考えております。2018年度より事業活動に伴うCO2排出量を算出しており、本有価証券報告書提出時点で、2023年度が算出可能な直近の年度となります。

その結果、2018年度以降、概ねCO2排出量は減少傾向にありますが、2023年度のScope1,2の合計は2,977t-CO2となり、基準年度である2019年度の3,602t-CO2と比較して、17%強の削減結果となっております。

より一層の温室効果ガス排出量の削減のため、2025年1月より、当社の主力工場である奈良工場においては、再生可能エネルギー100%由来の「再エネECOプラン」電力を導入しております。

当社のCO2排出量の主たる排出先は工場の生産設備によるものと、営業車両のガソリン使用量が大きな要因であると把握しております。今後、温室効果ガスの排出が少ない生産設備の導入や、営業車両の電気自動車への置き換えに加え、カーボンオフセットや更なる再生エネルギーの導入等により、2025年度までに2019年度比30%の減少、2030年度までに46%減少のCO2排出量とすることを目標に掲げ、毎年のCO2排出量の数値確認と、必要に応じて新たな削減対策を実行してまいります。

 

②人材育成方針

当社は、経営ビジョンに掲げているとおり、人「財」の育成は当社永続のために欠かすことのできない要素であると認識しております。

採用後の人材マネジメントについては、基本的な人材育成体系図を整備しております。教育企画課を設置し、従来の階層別教育とは別に社内専門技能に関する教育企画や各職種における年次毎の業務習得基準を策定するなど、人材育成についてその状況を適宜モニタリングし、改善に繋げてまいります。

経営幹部層のサクセッションプランに関しては、社長自らが塾長となり「ひとづくりセミナー」を主宰し、次世代のリーダー育成に取り組んでおります。また、指名報酬委員会においては次世代リーダー像の意見交換を実施しております。今後、将来を担うであろう人材に対しては、経営に関わる重要ポストへ配置してまいる予定です。また、バランスの取れた経営幹部構成のために当業界以外の外部人材の採用も実施しております。

また、人「財」のベースとなる採用活動において、2025年1月よりリファラル採用制度を導入し、2025年3月末までに1名の採用に至ったほか、多様性の観点から新卒の外国人採用にも挑戦し、2名の採用となりました。同時に処遇の改善策も推進し、ベースアップにより約5%の賃上げも実施しております。

そして、主たる顧客が建設業である影響を受けて、女性社員の占める割合が少ない現状ではありますが、人材の多様性を確保するために、女性の採用拡大(2025年4月新卒入社13名のうち3名が女性)及び管理職への積極的な登用を進めてまいります。

さらに、経営に多様な知見を取り込み、環境変化への対応力を高める必要があることから、女性社員の活躍を推進する研修制度を実施しております。

当社の人材育成の体系は以下のとおりです。

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③社内環境整備方針

従業員の心身の健康は、会社運営にあたり大きな影響を及ぼすことから、定期健康診断後の再検査を勤務時間中に受診可能にする規則改訂を実施しております。また精神的な健康管理(ストレスチェック)も2017年より全社的に実施しており、2024年は95%の社員が受検しています。今後も高水準を保持できるよう健康増進に向けた働きかけに努めてまいります。

加えて多様な働き方を可能にする「時間単位有給制度」も2022年度より実施しており、2024年度は年間合計123名(前年比38名減少)が利用しております。

なお当社の主たる顧客である建設業は一般的に労働災害の多い事業の一つですが、協力会社も含めた安全衛生委員会を地区ごとに開催し、各地域のヒヤリハットの共有等により危険への感受性を高め、安全意識の高揚を図ってまいります。2024年度については重大な労災事故は発生しませんでした。

 

その他に、社員の安全確保も重要な要素であると認識しており、外部委託の「安否確認サービス」をグループ全体で導入しており、気象庁からの直接のデータに基づき、地震、津波、特別警報時に自動通知が発信され、社員の安全確認には万全の体制を維持しております。定期的な訓練も実施しており、2024年9月の訓練時には回答率:訓練開始後12時間時点で78.6%(前年は82.4%)、参加企業全体では12時間経過後は81.4%(前年は81.0%)であり、一定水準の回答率となったものの課題が残った水準であったと認識しております。

また、ワークライフバランスの充実のため、新たに男性従業員の育児休業取得を推進し、2023年度より取得目標数値30%を掲げて全社を挙げて取得しやすい職場環境づくりに努めた結果、約43%の取得となりました。2030年3月期には100%取得達成の目標を掲げ、一層の職場環境整備を実施してまいります。

なお2024年3月に従業員意識調査を実施しました。ワークエンゲージメント(2.96)や帰属意識(3.22)の数値を2030年3月度までにそれぞれ、3.20と3.50に高めるべく、2024年度よりメンター制度を導入したほか、2025年度は自律的キャリア形成をサポートする研修制度や定年延長制度の導入検討等により、従業員エンゲージメントの向上に努めてまいります。

 

(3)指標及び目標

 当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。なお、連結子会社では当該指標を目標として設定していないため、提出会社の指標及び目標を記載しております。

 

指標

実績(当事業年度)

目標

達成時期

女性管理職比率

2.2(前年度2.3%)

10

2030年3月期

育児休業取得率(男性)

43(前年度50%)

100

2030年3月期

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1 経済環境

 当社グループは、主に大型商業施設、オフィスビルや物流施設等のシャッター、ドアの取付を行っており、経済環境に伴う設備投資動向によって、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 経済環境については様々な要因で変動するため予測には困難を伴いますが、当社グループは、経済環境の変化による設備投資動向の影響を軽減するために、主要顧客との良好な関係を維持する一方、新規顧客の取引開拓を推進し、強固な営業基盤の形成を図っております。

2 原材料

 当社グループは、製品の主材料である鋼材の需給動向、価格変動により、当社グループの生産、経営成績及び財政状態に影響を及ぼすリスクを認識しております。

 当社グループでは、当該リスクの対応策として、鋼材の確保については複数の供給元との定期的なやり取りを通し、情報の共有を図ることで、適正な調達状況の把握に努め、価格高騰による原価増大に陥らないよう万全の体制を取っております。

3 特定の仕入先への依存

 当社グループは、シャッターの重要部品の一部をグループ外の特定供給元に依存しております。そのため、特定供給元からの重要部品の供給が滞った場合、当社グループの生産に影響が及び、受注に対応できなくなる可能性があります。

 当社グループでは、当該リスクの対応策として、適正な在庫水準を維持しつつ、特定供給元と定期的にヒアリングを行うことで重要部品の確保ができるよう努めております。

4 特定の商品への依存

 当社グループの主要製品は、シャッター・スチールドアであります。殆どが受注生産で堅実な対応に努めておりますが、代替商品の開発等の予期しない変化により需要に極端な影響があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは今後も顧客ニーズに対応した新しい商品の開発を行ってまいります。

 

5 債権の貸倒れ

 当社グループは大手ゼネコンをはじめ大口の得意先が多いため、予期しない事象により大口の貸倒れが発生する可能性があります。

 当社グループでは、当該リスクの対応策として、貸倒れの発生防止については普段より業務監査部が中心となり、取引開始時における与信管理や売上計上後における売掛金の滞留管理を徹底して行っております。

6 固定資産の減損について

 売上高の減少等により資産グループの将来キャッシュ・フローの見込額が減少、あるいは、資産グループの時価の著しい下落等の要因により固定資産の減損処理が必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、当該リスクの対応策として、各資産グループごとに損益管理を行い、原価改善や原価低減を図ることで将来キャッシュ・フローが著しく減少することのないように努めております。

7 災害・事故

 当社グループは普段より、災害・事故の防止に努めております。しかし、自然災害も含め、予期しない事象により大規模な災害・事故が発生し、当社グループの営業・生産体制の維持が困難となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、当該リスクの対応策として、自然災害、事故等が発生した場合であっても、全国に営業拠点を展開しており、生産拠点も関東地方、関西地方及び九州地方の3カ所に分けておりますので、被害のあった地域を他の拠点でカバーし、事業を継続できる体制を整えております。

8 法的規制

 当社グループは、事業展開を行う国内において、建設業法や建築基準法等の事業関連法規、その他さまざまな法的規制の適用を受けております。これらの規制等に抵触するような行為が指摘された場合には、行政処分等を課される等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法的規制の改定等があった場合も経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、当該リスクの対応策として、全従業員向けに毎月1回コンプライアンス勉強会を実施するなど、コンプライアンス遵守を徹底し、内部統制の充実に努めており、豊富な経験と優れた技術により関連法律に対応した商品を製造しております。また、研究開発部門では、高度化する社会的ニーズと多様化する顧客ニーズに対応するため日々研究を重ね、法的規制が変更となった場合も、新しい対応商品の開発ができるように取り組んでおります。

9 排除措置命令及び課徴金納付命令に対する審判について

 提出会社は、2010年6月、公正取引委員会よりシャッター等の販売及び受注に関し独占禁止法第3条に違反する行為(全国価格カルテル、近畿地区受注調整)があるとして、2件の排除措置命令及び課徴金納付命令を受け、課徴金を納付しました。この排除措置命令及び課徴金納付命令について、2010年7月に公正取引委員会に審判手続開始を請求し、2020年8月に公正取引委員会から課徴金納付命令の一部を取り消し、その余の審判請求を棄却する旨の審決を受けました。当社は審決の内容を慎重に精査し検討しました結果、2件の排除措置命令及び課徴金納付命令のうち全国価格カルテルについて、当社の審判請求を棄却した審決を不服として、2020年9月に東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起いたしました。

 そして、2023年4月に東京高等裁判所から、本件提訴を棄却する旨の判決を受けました。その後当社は、判決の内容を慎重に精査し対応を検討してまいりましたが、判決の内容を不服として、上告提起および上告受理申立を行うことを決定いたしました。

 かかる中、最高裁判所より2025年2月26日付で、当社の上告を棄却し上告審として受理しない旨の決定の通知を受けました。当社としましては誠に遺憾でありますが、今回の決定により排除措置命令及び課徴金納付命令が確定しました。

 なお、現時点において本件が、当社の決算及び財務状況に大きな影響を与える見込みはないものと判断しております。

10 財務制限条項について

 当社グループの取引金融機関との金銭消費貸借契約においては、財務制限条項が付されている契約があります。その条項は2点あり、①連結貸借対照表の純資産の部における純資産の残高の維持に関する事項、②連結損益計算書における経常損益に関する事項であります。

 財務制限条項に抵触する場合、契約における期限の利益喪失請求が行われる可能性があります。

11 新たな感染症等の発生に関するリスクについて

 新たな感染症等が長期間にわたり拡大、蔓延した場合は、従業員の罹患による業務の支障、海外及び国内の経済情勢の悪化等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、感染拡大を防ぐために行政指針に従った感染防止策を徹底し、従業員の安全と健康を最優先に考えた感染防止の取組みを実施することで、売上高等への影響が軽減できるよう努めてまいります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 また、当社グループは、単一の報告セグメントであり、当事業内容に関して記載しております。

 

①財政状態及び経営成績の状況

[財政状態の概況]

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末に比べて1,912,769千円減少し、11,414,836千円となりました。これは主に下請法に準拠した手形サイトの短縮に伴う現金及び預金の減少によるものです。

 固定資産は前連結会計年度末に比べて305,422千円増加し、7,305,086千円となりました。これは主にリース資産の増加によるものです。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末に比べて4,231,502千円減少し、5,998,505千円となりました。これは主に手形サイト短縮に伴う支払手形の減少によるものです。

 固定負債は前連結会計年度末に比べて2,105,760千円増加し、3,227,933千円となりました。これは主に1年内返済予定の長期借入金の借換えに伴う長期借入金の増加によるものです。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べて518,394千円増加し、9,493,483千円となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものであります。

 

[経営成績の概況]

 当社グループは、中期経営計画『TOYO REBORN 3』の最終年度として、販売価格水準の更なる向上や生産効率の改善等により基幹事業の収益力向上に取り組むと共に、戦略的な受注活動や受注済み案件の採算改善などに注力してまいりました。

 その結果、当連結会計年度における受注高は前年同期比1.0%減の21,576,697千円となり、売上高は20,871,090千円(前年同期比2.9%減)、営業利益は1,301,165千円(前年同期比12.1%減)、経常利益は1,210,830千円(前年同期比11.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は792,635千円(前年同期比17.4%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて900,342千円減少し、3,799,282千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は、160,640千円(前年同期は1,542,740千円の資金増加)となりました。これは主に手形サイトの短縮に伴う仕入債務の減少によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は前連結会計年度末に比べて79,193千円減少し、66,837千円となりました。これは主に固定資産の取得による支出の減少によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は前連結会計年度末に比べて495,863千円増加し、672,864千円となりました。これは主に長期借入金の返済による支出の増加によるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、報告セグメントが単一であるため、セグメントごとの記載を省略しておりますが、以下に製品別の生産、受注及び販売の実績を示しております。なお、当連結会計年度より、新中期経営計画『TOYO ADVANCE 5』をスタートすることを契機に、品種別の受注実績及び販売実績について製品、サービス区分の見直しを行い、変更後の区分により記載しております。

 

a.生産実績

 当連結会計年度における製品別の生産実績は、次のとおりであります。

品名

数量

前年同期比(%)

軽量シャッター

104,583㎡

98.96

重量シャッター

105,096㎡

80.63

シャッター関連

9,283㎡

95.85

シャッター計

218,963㎡

89.11

 

b.受注実績

 当連結会計年度における製品別の受注実績は、次のとおりであります。

品名

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

軽量シャッター

2,649,133

98.52

297,750

99.23

重量シャッター

6,142,728

88.97

4,577,141

107.90

シャッター関連

2,790,923

108.54

286,921

256.17

シャッター計

11,582,784

95.22

5,161,812

110.91

スチールドア

4,210,718

108.55

2,114,530

104.52

建材他

632,316

122.53

132,262

214.26

修理・点検

5,150,879

98.20

380,213

110.41

合計

21,576,697

98.95

7,788,817

109.96

 

c.販売実績

 当連結会計年度における製品別の販売実績は、次のとおりであります。

品名

金額(千円)

前年同期比(%)

軽量シャッター

2,651,431

99.16

重量シャッター

5,807,562

91.15

シャッター関連

2,616,007

101.76

シャッター計

11,075,000

95.34

スチールドア

4,119,266

103.29

建材他

561,783

85.60

修理・点検

5,115,041

97.86

合計

20,871,090

97.13

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績に関する分析

イ.売上高及び売上総利益

 当連結会計年度における受注高は前年同期比1.0%減の21,576,697千円となり、売上高は前年同期比2.9%減の20,871,090千円となりました。品種別の構成率では重量シャッターが5,807,562千円と27.8%、軽量シャッターが2,651,431千円と12.7%でこの2品種で40.5%となっています。売上総利益は5,697,920千円と、工事損失引当金繰入額の増加等もあり、前年同期比313,411千円減少となりました。

 

ロ.営業利益

 営業利益は1,301,165千円で、人件費等の減少もありましたが、売上総利益が減少したことにより、前年同期比179,449千円減少となりました。

ハ.営業外損益、経常利益及び税金等調整前当期純利益

 経常利益、税金等調整前当期純利益は1,210,830千円で、営業外費用が減少しましたが、前年同期比156,505千円減少となりました。

ニ.法人税等及び親会社株主に帰属する当期純利益

 法人税等合計418,195千円を差し引いて親会社株主に帰属する当期純利益は792,635千円で、前年同期比167,000千円減少となりました。

 

b.当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因について

(収益変動要因)

 当社グループを取り巻く事業環境は同業者間の競争が激しく、利益率低下の要因が内在しております。また、主要原材料であります鋼板類については市況価格による仕入を行っており市場動向によっては売上原価に影響を与え、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループの販売先は建設業者が主でありますが特定の販売先に依存していることはありません。また、海外からの輸入は少なく、為替等の変動が経営成績に及ぼす影響は極めて軽微であります。

 当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」にも記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは事業活動を適切に維持するための資金確保及び資金の流動性の維持を図るために営業活動で得られた資金により事業活動の維持、設備投資の資金を賄うことを基本にしております。必要に応じて主として金融機関からの借入金により資金調達しております。

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料や商品の仕入、外注費等の製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用及び設備投資であります。

 主なキャッシュ・フローの状況は「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 当社における重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 3 会計方針に関する事項」に記載のとおりです。

 重要な会計方針のうち、見積りや仮定等により連結財務諸表に重要な影響を与えると考えられる項目は下記のとおりです。

(一定の期間にわたり収益を認識する方法による売上高)

 工事契約については、期間がごく短い工事契約を除き、一定の期間にわたり履行義務が充足されると判断し、履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しております。履行義務の充足に係る進捗度の見積りの方法は、見積総原価に対する発生原価の割合(インプット法)で算出しております。将来の発生原価を合理的に見積っておりますが、発注者との交渉の状況により工事収益総額が変動した場合や想定していなかった原価の発生等により工事原価総額が変動した場合は、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(工事損失引当金)

 請負工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末において、損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積ることができる工事について、損失見込額を計上しております。市況の変動や気象条件等の外的要因によりその見積り額が変動した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(繰延税金資産)

 将来減算一時差異等のスケジューリングに基づいて回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について繰延税金資産を計上しております。将来における経営環境の変化等その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(固定資産の減損処理)

 固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。事業計画や市場環境の変化により見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

5【重要な契約等】

(シンジケートローン契約の締結)

当社は、2003年に発行した優先株式を2016年に当社が取得し消却した際の借入金の借換えを目的に、2021年3月25日付けで株式会社みずほ銀行他3行を貸付人としてシンジケートローン契約を締結しております。弁済期限は2026年3月26日で、担保はありません。借入残高は129,000千円であります。

また、経常的な運転資金調達を目的に、2025年3月18日付けで株式会社みずほ銀行他4行を貸付人としてシンジケートローン契約を締結しております。弁済期限は2028年3月22日で、担保は奈良工場財団、つくば工場財団、九州工場財団であり、借入残高は2,000,000千円であります。

上記2つの契約には財務制限条項が付されており、その詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)(財務制限条項について)」に記載のとおりであります。

(その他の契約)

2024年4月1日より前に締結された契約については、記載を省略しております。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、「私たちは、企業品質の向上を目指し、安全・安心・快適・感動を提供するとともに持続可能な社会づくりに貢献します」を念頭に置き、設計・製造・施工・メンテナンスの観点より製品の開発・改良・改善を実施すると共に高度化する社会的ニーズと多様化する顧客ニーズに対応するため、日々研究を重ね、お客様にとって付加価値の高い商品を提供できるよう努力しております。

当連結会計年度は、SDGsに対応する自然災害や防災関連のシャッター・ドア製品に加え、ユニバーサルデザインに対応できる「防音引き戸」に気密性能追加とCAS認定(遮煙性能を有する複合防火設備)を取得し、顧客ニーズに応えた付加価値の高い製品化も行って参りました。

今後も、従来の製品に対する安全性向上及び機能・性能向上に取り組み、お客様から必要とされる商品の開発を行うと共に、併行して来期に向けての更なる新商品の取り組みとして、企業品質の更なる向上と「「防ぐ」を合言葉に、すべてのユーザーへ安全・安心・快適・感動を提供し、持続可能な社会づくり」を目標に社会的ニーズに沿った商品開発を目指して参ります。

当連結会計年度の研究開発費の総額は237,144千円であります。なお、当社グループは、報告セグメントが単一であるため、セグメントごとの記載を省略しております。