当社代表取締役社長田中滋及び代表取締役副社長片岡実は、当社及び連結子会社(以下「当社グループ」)の財務報告に係る内部統制を整備及び運用する責任を有しており、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」並びに「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」に準拠して内部統制を整備及び運用しております。
なお、内部統制は判断の誤り、不注意、複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場合や当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定形的な取引等には必ずしも対応しない場合があり、固有の限界を有するため、その目的の達成にとって絶対的なものではなく、財務報告の虚偽の記載を完全に防止又は発見することができない可能性があります。
当社代表取締役社長田中滋及び代表取締役副社長片岡実は、2022年3月31日を基準日とし、一般的に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、当社グループの財務報告に係る内部統制の評価を実施いたしました。
当社グループにおける財務報告に係る内部統制の評価につきましては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)を評価し、その結果を踏まえ評価対象とする業務プロセスを選定いたしました。当該業務プロセスの評価におきましては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を選定し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行いました。
また、財務報告に係る内部統制の評価の範囲は、会社並びに連結子会社について、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定いたしました。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、金額的及び質的影響の重要性を考慮して決定しており、会社及び連結子会社1社を評価の対象として行った全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定いたしました。
業務プロセスに係る内部統制の評価範囲につきましては、各事業拠点の前連結会計年度の連結売上高(連結会社間取引消去後)の金額が高い拠点から合算していき、前連結会計年度の連結売上高の概ね2/3に達している1事業拠点を「重要な事業拠点」といたしました。選定した重要な事業拠点においては、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目として売上高、売掛金及び棚卸資産に至る業務プロセスを評価の対象といたしました。
更に、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点をも含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積もりや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスを財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスとして評価対象に追加いたしました。
下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備に該当するため、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断いたしました。
記
当社は、当社の連結子会社である北陸ケーティシーツール株式会社(以下「北陸KTC」)において一部の仕掛品を過大に計上するという不適切な会計処理の疑義があること(以下「本事案」)が判明し、2025年5月7日に当社と利害関係を有さない外部専門家を加えた調査チームを設置し全容の解明に努めてまいりました。その調査過程で、本事案に北陸KTCの経営層の関与がある疑義、仕掛品以外にも一部の原材料や製品などについて不適切な会計処理が過年度に亘り行われていた疑義、並びに、当社取締役常勤監査等委員が2025年3月期における不適切な会計処理を知りながら適切に対応していなかった疑義が確認されました。
当社は、事実関係のさらなる調査により原因を究明し、再発防止を徹底する必要があると考え、2025年6月2日付で調査チームを解消し、特別調査委員会を設置しました。当社は、2025年6月30日に特別調査委員会から調査報告書を受領し、その結果、北陸KTCにおいて親会社に対して業績を良く見せることを企図して、製品や仕掛品、原材料や貯蔵品等の過大計上による不適切な会計処理を行っていたことが判明いたしました。
これに伴い当社は、本事案に関する棚卸資産等の金額を過年度に遡って訂正する必要があると判断し、2024年3月期の有価証券報告書、2025年3月期にかかる半期報告書、2024年3月期第1四半期以降の四半期報告書について、訂正報告書を提出いたしました。
当社は、本事案に関し調査報告書で判明した事実と原因分析に関する報告等を踏まえ、改めて財務報告に係る内部統制の再評価を行った結果、全社的な内部統制及び業務プロセスに係る内部統制に不備があったことを識別いたしました。
全社的な内部統制の不備
本事案における仕掛品等の過大計上の不適切な会計処理は、親会社に対して月次の営業黒字達成について、北陸KTCにおいてプレッシャーを感じていたことから営業利益の積み増しを行っておりました。
北陸KTCには、信頼性のある財務報告の作成のための、適切な階層の経営者、管理者を関与させる有効なリスク評価の仕組みが存在しておらず、独立的評価の範囲と頻度を、リスクの重要性、内部統制の重要性及び日常的モニタリングの有効性に応じて適切に調整することに関連した全社的な内部統制(リスク評価と対応、モニタリング)に不備があったと認識しております。
当社の経営陣が、子会社管理を行う上で北陸KTCがこのような不適切な会計処理を行うに至る動機、原因、背景を踏まえ、適切にリスクを評価すること及び独立的評価の範囲と頻度をリスクの重要性、内部統制の重要性及び日常的モニタリングの有効性に応じて適切に調整することに関連した全社的な内部統制(リスク評価と対応、モニタリング)に不備があったと認識しております。
また、当社の常勤監査等委員がその職務を逸脱し、業務執行に関する助言を行うとともに、自ら北陸KTCにおける不適切な会計処理の隠ぺいを実行し、当社の取締役会においてそれらの監督・監視ができていなかったことから、経営者が信頼性のある財務報告の作成に必要な能力を有するものを配置し、当社の取締役会及び監査等委員が財務報告とその内部統制に関し経営者を適切に監督・監視する責任を実行することに関連した全社的な内部統制(統制環境)に不備があったと認識しております。
業務プロセスに係る内部統制の不備
北陸KTCの在庫管理プロセスにおいて使用されている在庫管理システムでは、各製造ロットがどの工程にあるかを管理するためのシステムとして活用されているに過ぎず、実地棚卸の際の在庫管理及び在庫金額の評価が手作業で行われていたため改ざんが容易となっていたことから、結果として、北陸KTCの在庫管理システム外で在庫数量等の変更が実行可能となっており、実地棚卸の結果が正確に会計データに反映されておりませんでした。
これらの全社的な内部統制及び業務プロセスに係る内部統制の不備は財務報告に重要な影響を及ぼすことから、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
なお、上記事実は当事業年度末日後に発覚したため、当該不備を当事業年度末日までに是正することができませんでした。
当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、これらの開示すべき重要な不備を是正するために、調査委員会からの指摘・提言も踏まえ、以下の改善策を講じることにより、適正な内部統制の整備及び運用を図ってまいります。
(1)北陸KTCにおける内部統制の整備・運用
① 実地棚卸の結果を正確に会計帳簿に反映させる手続きを構築
不正の機会を作ることとなった在庫管理に関する内部統制の不備を是正するために、実地棚卸後に棚卸明細を作成する際の書式や承認フローを再構築し、棚卸金額を計算する際のダブルチェック体制の構築など、実地棚卸から会計帳簿に反映されるまでの業務フローの再構築を行い、手入力による棚卸明細の改ざんが行われないように一連の手続きのルールを整備・運用するとともに、それらを北陸KTCの管理部門がモニタリングする体制を整備・運用いたします。
また、実地棚卸から棚卸明細の作成を通じて会計帳簿に反映されるまでの業務フローにおいて、親会社の内部監査部門によるモニタリング体制も整備・運用いたします。親会社の内部監査部門による内部監査結果は、親会社の監査等委員や北陸KTCの監査役への報告を通じて北陸KTCの内部監査に活用いたします。
② 在庫管理システムを整備(仕掛品管理をシステム化、不正の機会・人為的ミスを排除)
上記①の業務を手作業ではなく、在庫管理システムを改良することにより、不正の機会や人為的なミスを未然に防止または不正や人為的なミスを早期に発見できるようにいたします。
また、在庫管理システム上に理論在庫をより精緻に計算できる仕組みを新たに構築することで、実地棚卸だけでなく、月次決算においても適切な棚卸資産の金額算定を可能とし、更に理論在庫と実在庫の差異分析を行うことで、在庫管理の適正化を進めてまいります。
これらの業務を親会社主体で行い、システムの改良が完了するまでは親会社も実地棚卸や在庫明細の作成支援を行うことで手作業の業務手順・統制手順の有効性を高めることで不正の機会や人為的ミスを排除し、親子間の管理レベルに差異が生じないようにいたします。
③ モニタリング手続きを親会社手続きと共通化
不適切な会計処理を未然に防ぐため親会社の業務フローを参考に、北陸KTCの業務フローを見直し内部統制を強化いたします。
親会社の内部監査部門が定期的なモニタリングを実施することでグループ全体を統一的な視点で効果的かつ効率的に監査することといたします。
④ 親会社の内部監査部門を3線とする3ラインモデルを確立
北陸KTCでは1線と2線の牽制機能が失われていたため、3ラインモデルを確立すべく、先ずは1線、2線の業務及び権限を明確にするために業務分掌を改めて周知し、それぞれの職責に応じた権限の見直しをいたします。また、1線、2線の部門の職員に対し、改めて外部専門家によるサポートを得ながら定期的な研修を実施し、自身の責務が果たせるように継続的な教育を実施いたします。
3線に対しましては、北陸KTCでは人的リソースが不足しているため、上記③のとおり、親会社の内部監査部門が外部専門家の協力も得ながら定期的なモニタリングを実施することで、3ラインモデルを確立いたします。また、内部統制委員会など3線が運用していた会議を2線による運用に変更し、内部監査部門が独立した立場で評価できる体制を構築いたします(2線と3線の責務の明確化)。
⑤ 親会社の管理部門(経理、内部監査)の人員を増強(上記①~④を実現)
現在の北陸KTCの人的リソースでは、3ラインモデルを単独で確立することは難しい状況にあります。そのため、上記④の3線のみならず、2線においても親会社がグループ全体を管理するグループ統制モデルへの移行を検討してまいります。
しかしながら、これらを実現するためには、親会社におきましても人的リソースが不足しており、先ずは2線の要である経理部門、3線を担う内部監査部門の必要人員を決定し、短期的にはキャリア採用を進めると共に外部専門家を活用しながら必要人員を確保し、中長期的には管理部門の要員計画に基づいた再配置と育成計画を実行してまいります。
(2)グループとしての一体感の醸成を主眼とした北陸KTCの位置づけの見直し
① 不採算事業を見直し(親子間取引価格の改定、赤字外部取引の解消)
既に親子間取引価格について改定を実施いたしましたが、現在、北陸KTCの経営状況を鑑み、不採算品の見直し及び更なる価格改定の必要性について精査しております。また、不採算事業そのものにつきましても、事業の在り方を含めた抜本的な見直しの検討を開始しております。
② グループ戦略拠点としての位置づけを明確化(当社への統合も選択肢に検討)
サプライチェーンの観点からグループの生産拠点としての位置づけを明確にすると共に、管理の一体化など業務の有効性と効率性を高めることを目的として、当社への統合も視野に入れ、グループ戦略の検討を進めております。
③ 人的交流を活発化(製造部門、管理部門)
業務の有効性と効率性を高めるため、管理の一体化を中心とした人的交流の活発化を図ります。特に主たる業務である製造部門や管理部門に関し、親会社の関与を強化すると共に、北陸KTCから親会社への出向などによる人材育成にも積極的に取り組んでまいります。
④ 中長期的な事業計画・投資計画・人員計画を策定
グループ全体の中期経営計画に掲げております、「サプライチェーンマネジメント強化」の一環として、親会社への統合も視野に、戦略的な生産品目の見直しとそれに見合った投資計画を再構築すると共に、工具事業、メタル事業、精密鋳造事業の夫々において、親会社との生産バランスを見直し、各事業部門における人員の最適化を図ります。
(3)ガバナンスの再構築
① 取締役会、監査等委員会におけるモニタリング機能を強化(執行と監督の分離を徹底)
取締役会規程とは別に、新たに「取締役会がなすべきガイドライン」を定め、それを稟議規程に反映し、取締役会の役割・責任を明確にすることで、執行との分離を徹底いたします。また、監査等委員会につきましては、メンバーを刷新し、新たな視点で内部監査部門、取締役会、会計監査人との連携体制を再構築することで、モニタリング機能の強化に取り組んでまいります。
② 指名委員会によるサクセッションプランニングを強化
特に高い専門性を有する重要ポストについて、任命基準や任命プロセスを改めて明確化したうえで、重要ポストの候補者について指名委員会でレビューを実施し、策定したサクセッションプランを定期的に取締役会に諮る仕組みを構築いたします。不足するスキル等がある場合には、教育的施策を実施し、将来的なキャリアとスキルマップを候補者と協議のうえ、中長期的な視点で重要ポストの担い手となる人材の育成に取り組んでまいります。
③ 新たな経営体制を構築(上記①②の実現を見据え人選)
新たな経営体制では、臨時株主総会を開催し、先ず社内取締役5名(うち常勤監査等委員1名)を3名(うち同1名)に減員し、社外取締役2名(うち監査等委員2名)を刷新いたします(取締役常勤監査等委員も社内から新たに選任)。また、2026年6月に開催を予定しております定時株主総会までに社外取締役を更に1名追加選任する計画であり、外部の知見を積極的に取り入れることでガバナンスを再構築し、経営の健全性を高めてまいります。
(4)上場会社としての信頼性確保に向けた全社的な意識改革
① グループ全役職員を対象に、定期的にコンプライアンス研修を実施
グループ全役職員を対象に、不正を含めコンプライアンスに知見のある弁護士や公認会計士等の外部専門家やイントラネットを活用して継続的なコンプライアンス研修の受講を義務化いたします。特に当面は、財務報告の重要性や、不正事案を踏まえた研修を加えるとともに、入社時及び管理職への昇進時等のコンプライアンス意識の強化が特に必要となるタイミングに改めてコンプライアンス研修を実施する体制を整備し、グループ全体でのコンプライアンス意識の浸透を推進いたします。
② 役員に対し、定期的に外部の有識者によるガバナンスに関する勉強会を実施
グループのガバナンスを強化すべく、法改正をはじめ、上場会社の役員に求められる最新の知識の習得を通じて、役員としての職務遂行能力を維持、向上させることを目的に、弁護士などの外部専門家による自社研修や、外部セミナーなどへの参加による役員としてのガバナンス意識の維持、強化を、定期的に実施してまいります。
③ 新任役員に対し、上場会社の役員として必要な知識に関する外部研修の受講を義務化
役員への登用にあたっては、上記(3)②のサクセッションプランニングで定める任命基準を充足する教育的施策を新たに設け、中長期的に役員候補者の育成に取り組みます。また、これまでも新任役員には、外部研修への参加を義務付けておりましたが、本事案が惹起したことを踏まえ、役員としての義務と責任を全うできるよう、不祥事対応を含むコンプライアンス研修を必須とした新任役員研修カリキュラムの見直し(充実)を図ってまいります。
財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象等はありません。
特記すべき事項はありません。