第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、創業100周年を迎える2030年を見据え、持続的な企業価値の向上に向けた変革を進めております。2025年度から2027年度を対象とした新たな中期経営計画では、「収益性・資本効率の改善」と「次の100年に向けた経営基盤の再構築」を掲げ、経営全般にわたる改革を推進してまいります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、経営理念のもと「選ばれる企業グループ」として全てのステークホルダーの信頼にお応えすべく、収益性と資本効率の向上ならびにESG・サステナビリティを意識した経営を基本方針としております。

 

『経 営 理 念』

不二サッシは窓から夢をひろげていきます

私たちはお客様との絆を大切にします

私たちは心をこめた商品を世に出します

私たちは活力あふれる気風づくりに努めます

 

(2)経営環境

 米国における輸入関税強化や長期化するウクライナ情勢、中東情勢の不安定化など、地政学的リスクが継続しており、日本国内にも引き続き物価上昇や為替リスク、諸資材価格の高騰などの影響をもたらしております。

 国内の建設市場におきましては、依然として続く諸資材価格の高騰とそれに伴う建築計画の見直し、労働人口の減少に伴う工期の延長など、厳しい事業環境が続くものと見込まれており、事業全体での変革が求められております。また、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応が、重要な要素となりつつあります。

 加えて、東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」等を通じ、企業には経営効率向上とその説明態勢整備の両面で高度なマネジメントが求められております。

 こうした経営環境のもと、当社グループは、「事業構造改革」「省人化・自動化」「人的資本投資」の3本柱を軸に、競争力のさらなる向上とともに、持続的成長に向けた経営基盤の強化に取り組んでおります。

(3)前中期経営計画(2022~2024年度)の振り返り

 前中期経営計画では「稼ぐ力の向上」をテーマに収益改善に取組んでまいりました。その間、エネルギーや諸資材価格の高騰、物流コストや人件費の上昇等の環境変化により一部計画未達も見られましたが、建材事業での適正価格の浸透、ビル新築事業およびリニューアル事業などでの堅調な受注、形材外販事業における加工品への注力等に取組んだ結果、稼ぐ力は着実に向上してまいりました。

 主要な財務指標は以下のとおりとなっております。

 

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(4)新中期経営計画(2025~2027年度)の基本方針と戦略

 新中期経営計画では「収益面・経営面の双方で確固たる基盤を構築し、誰もが安定・安心できる企業グループとなる」ことを基本方針とし、以下の指標目標を設定のうえ、主要セグメント毎にそれぞれの戦略を策定しております。

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 また、2030年に創業100周年を迎えるにあたり、次の100年を生き抜くため、次世代社員を中心とした「F30プロジェクト」を始動し、「三方よし」の考えの下、新中期経営計画期間内に、「営業利益33億円以上」「年3.0%以上のベースアップ」「一株あたり配当金30円」の3つの「サンマル」達成を目指してまいります。

 

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 収益面、経営面の双方で確固たる基盤を構築し、誰もが安定・安心できる企業グループを目指し、以下の事業別戦略を推進してまいります。

[建材事業]

 業務プロセスをイチから見直し、重要な業務の徹底や業務の効率化等、徹底した合理化を進め基幹事業の高収益性化を目指してまいります。

[形材外販事業]

 加工品の売上拡大に注力し、高付加価値事業としての拡大を推進してまいります。

 あわせて、医療用マグネシウム合金の実用化への研究開発を進めてまいります。

[物流事業]

 当社製品等の運送・倉庫管理を行っております。今後は、既存アセットの活用・強化を進めることで総合物流企業への転換を図ってまいります。

[環境事業]

 都市ごみ焼却飛灰処理事業、リサイクル・粗大ごみ処理事業、薬剤事業を行っております。今後は、継続的人材育成に努め、新規顧客の開拓、価格の見直しに取り組んでおります。

[経営基盤]

 不二サッシグループは、2030年に迎える創業100周年を超えて持続的に成長する未来像に向けて、サステナビリティビジョン2050を策定いたしました。このうち、カーボンニュートラルに向けた排出削減目標についてはSBT認定を取得しております。

 本ビジョンを指針として持続可能性向上に資する事業を展開し、経営基盤の強化に繋げてまいります。

(5)今後の課題と対応

・キャッシュアロケーションの最適化

 資本コストを意識した経営のもと、成長投資(DX・GX、自動化、人材育成等)と株主還元(安定配当の継続)とのバランスの最適化を図り、中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。

・人的資本戦略の高度化

 人材獲得競争の激化に対応するため、2024年度より人事・給与制度を抜本的に見直し、採用・育成・配置・リテンションまで一貫した人材マネジメント体制を構築中であります。また、従業員としての誇りや帰属意識の醸成を図るべく、障がい者就労施設の運営や災害支援、地域清掃等の社会貢献活動を継続的に実施してまいります。

 

・ESG戦略の強化

 脱炭素社会の実現に向け、2024年度にSBT認定を取得いたしました。GHG排出削減、再生アルミや再生可能エネルギーの活用、EVの導入に加え、Scope1・2・3の全領域における対応を進めるとともに、今後はサプライヤーの排出量管理体制整備の支援にも取り組んでまいります。

 また、人権尊重を基本方針とし、社内外における人権デューデリジェンス体制の構築を通じて、ESG経営の一層の定着を図ってまいります。

・資産効率の向上とPBR改善

 政策保有株式の縮減、遊休資産の売却等によりバランスシートの適正化を進めてまいります。加えて、戦略的IR施策を通じた情報発信力の強化策を検討し、投資家との積極的な対話に努め、PBRの継続的改善を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、中期経営計画~2030年度/創業100年に向けた再構築~(FY25-27)において、基本方針として「収益面・経営面の双方で確固たる基盤を構築し、誰もが安定・安心できる企業グループとなる」と掲げております。本計画は、財務・非財務両面からの企業価値向上を目指すものであり、その土台となる経営基盤に重きをおく成長投資と株主還元の拡大に努めてまいります。PBR向上に向けては、ROE8.0%以上を継続しつつPERを引き上げるための施策の方向性として、持続可能性(サステナビリティ/ESG)向上に資する事業展開、人的資本投資の拡充などを設定しております。

 これらの取り組みの総体が当社グループのサステナビリティ経営であり、「不二サッシグループ サステナビリティビジョン2050」(以下、「サステナビリティビジョン2050」)は、中期経営計画も含む、経営理念の実現を通じて中長期的な企業価値の向上に努める上での基本方針であります。この長期ビジョンにおいて、「経営理念」とサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)、さらに環境方針、人権方針やコーポレートガバナンスなどの各種方針との結び付きを示しております。なお、現在のマテリアリティは2022年度に特定したものであり、特定にあたっては持続可能な開発目標(SDGs)やISO26000などを参照し、社会情勢や事業環境を踏まえて「環境」「社会」「ガバナンス」の観点別に整理しております。このビジョンの行動指針に基づき、脱炭素社会やサーキュラ

ーエコノミーの実現、社会の期待する製品づくり、人権を尊重した公正な事業活動を推進してまいります。

 

 

図:サステナビリティ経営の概要(左)、サステナビリティビジョン2050(右)

 

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 当社グループではアルミサッシ製品をはじめとした「ものづくり」を原点とするメーカーかつエンジニアリング企業の責任として、事業と気候変動および自然資本との関わりについてバリューチェーン全体を通じて検討し、リスク低減と機会の活用に努めております。

 この取組の一環として、事業との関係性から生まれるサステナビリティ関連課題のうち気候変動及び生物多様性に関する重要情報を、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)フレームワーク及びTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フレームワークに沿って文中で開示しております。

 

1.ガバナンス

 当社グループは、2025年を初年度とする新中期経営計画~2030年度/創業100年に向けた再構築~を定め、持続可能性に資する事業を展開しサステナビリティ経営を推進してまいります。気候変動、生物多様性や自然環境に関連する課題につきましても当社にとっての重要課題として認識しております。

 

 ガバナンスの中核となるのはサステナビリティ委員会であり、その事務局はサステナビリティ経営を効率的に進めるための専門組織であるサステナビリティ推進室が担っております(ともに2023年度立ち上げ)。

 この委員会は四半期に一度開催され、代表取締役社長が委員長を務め、代表取締役専務・経営会議メンバー、および不二ライトメタル社長で構成されております。

 具体的役割として、サステナビリティの基本方針の策定およびサステナビリティ推進活動における計画、短期・中期・長期の目標策定、取組の推進・モニタリングを実施しております。これには気候変動および自然資本課題も含まれており、サプライチェーンにおける依存、影響、リスク、機会の管理・監督に関しても、本委員会によるモニタリングのもとサプライチェーン全体におけるリスクおよび機会への対応を行っております。

 対応の一環として、サステナブルな社会実現に向けた「不二サッシグループ人権方針」を定め、販売先・調達先を中心としたビジネスパートナーとの関係において人権を尊重し、これに則ったエンゲージメントを行えるような体制づくりを進めております。

 

 当委員会で議論された内容は、サステナビリティ委員長から取締役会へ四半期に一回の頻度で報告しております。

 取締役会は委員会で検討したサステナビリティや気候変動に関する課題について審議、必要に応じて委員会へ諮問を行い、これらの課題の決定と取組(KPIとしてのGHG排出量の削減など)をサステナビリティ委員会委員長の責任のもと、モニタリングしております。

 

 なお、このガバナンスの内容はサステナビリティ全般に関する説明であり、気候変動および生物多様性関連、人権だけでなく、人的資本および多様性などについても包含するものであります。

 

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2.戦略

 前記、当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組に記載しております通り、中長期的な持続可能性・将来性向上のためには、サステナビリティに関する戦略に基づく事業展開が重要であると考えております。

 この戦略は、サステナビリティ推進室及びサステナビリティ推進部会が立案し、サステナビリティ委員会における審議を経て策定されております。

 当社グループは、建材品・アルミ形材の製造及び販売を主な事業としていることから、環境分野において、脱炭素に向けた取組(気候変動への対応)、循環型社会の形成、サプライチェーンマネジメントをマテリアリティに設定しております。

 

 特に、脱炭素推進に際し、2024年6月13日、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量削減に関するSBT(Science Based Targets)認定を短期目標およびネットゼロ目標とも取得しております。また、2024年2月からGXリーグ(GX:グリーントランスフォーメーション)へ参画し、GX ETS(GHG排出量取引制度)におけるGroup X企業(2021年度Scope1(直接排出量)10万t-CO2e未満)としてGHG排出量削減目標および実績を公開しております。いずれも、当社グループが関わるサプライチェーン全体のGHG排出量削減に向けたコミットメントとして、今後も選ばれる企業グループであり続けるために必要な取り組みであると認識しております。

 脱炭素社会の構築のための具体的な取り組みとしては、脱炭素関連の商品開発(GHG排出量算定および関連認証取得、断熱・省エネ、創エネ、リサイクル、樹脂または木製組み合わせ等)、アルミリサイクル材・グリーンアルミの積極的利用、太陽光発電による再生可能エネルギーの導入、燃料転換や先進製造設備の導入等を推進しております。

 また、社会分野におけるマテリアリティの取組の中で、人的資本への投資について、従業員一人ひとりの成長を支援する「働きがいのある会社」と、多様な人材の多様な働き方を支援する「働きやすい会社」を目指し、従業員が能力を発揮できる制度・環境の整備を包含する持続的な人材輩出サイクルを構築してまいります。

 これらの他にも、持続可能な暮らしとまちづくりへの貢献に向けて、リニューアル事業の拡大や防災システム製品の研究にも取り組んでおります。

 

(1)脱炭素(気候変動対応)

分析のプロセス

 TCFD提言で示された各リスク・機会の項目を参考に、気候変動問題が当社グループの事業に及ぼすリスク・機会に関して、以下のステップで検討いたしました。

 また、1.5℃~2℃シナリオと、4℃シナリオの二つのシナリオを用いて、政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と、災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施いたしました。

 

気候変動シナリオ

シナリオ名

想定する世界観

1.5℃~2℃シナリオ

(脱炭素シナリオ)

気候変動の影響を抑制するためにカーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化。移行リスクが大きくなると想定している。

4℃シナリオ

(高排出シナリオ)

気候変動対策は現状から進展しない。物理リスクにおける異常気象の激甚化や海面上昇リスクによる影響が大きくなると想定している。

 

リスク・機会のインパクト評価と対応策の選定

・リスク

 2℃未満シナリオにおいては規制の強化によるエネルギー転換にかかる費用の増加、低炭素商品の投資額の増加、4℃シナリオでは自然災害の激甚化による費用の増加リスクが予想されます。

 

 

リスク

分類

ドライバー

(要因)

リスク内容

時間軸

影響度

重要度

対応策

法規制

・政策

炭素税等による負担

自社排出量に対する排出量取引などのコスト発生

中期

〔Scope1〕
・省エネ設備等の導入・設備の電化や水素化
〔Scope2〕
・再生可能エネルギーの導入

法規制

・政策

再生可能エネルギー価格の高騰

エネルギー費用抑制のための設備省エネ化や燃料転換コスト発生

中期

・生産の集約化・効率化

・排熱の有効活用およびそれを可能にする生産・設備の最適化

技術・市場

低炭素製品への投資

脱炭素関連製品(注)1の需要増加に対応するための開発・設備投資額(注)2増加

中期~

長期

・脱炭素をテーマとする研究開発の強化

・新製品への投資に関するグリーンファイナンス活用

・脱炭素市場動向の調査と製品への反映

急性

自然災害の激甚化

〔売上被害〕

自然災害(注)3に伴う営業停止による売上減少

〔直接被害〕

事業所の浸水等により被災した施設等の復旧費の発生

短期~

長期

〔短中期〕

・排水設備の増設

〔長期〕

・工場・設備の防災強化

・リスク分散のための生産協力体制の構築

・重要な設備や在庫への防水提の設置、床面の上昇

 

・機会

 環境配慮型事業の拡大や防災需要の高まりによる売上の増加が予想されます。

機会

分類

ドライバー

機会内容

時間軸

影響度

重要度

対応策

資源効率

エネルギーの効率的利用

燃料使用量削減による運用コストの削減

中期

〔Scope1〕

・ヒートポンプをはじめとする省エネ設備等の導入

・廃棄物・廃熱利用の促進

〔Scope2〕

・再生可能エネルギーへの切り替え拡大(PPA、太陽光発電、グリーン電力証書等)

エネルギー源

再生可能エネルギー発電設備の導入

太陽光発電や蓄電技術の導入・拡大による、電力や燃料購入コストの削減

中期

・社内炭素価格の導入による省エネ投資の促進

・設備導入におけるグリーンファイナンス活用

製品及びサービス

低炭素製品の選好

脱炭素関連製品(注)1の需要増加に伴う売上増加

短期~

長期

・脱炭素をテーマとする研究開発の強化と市場動向の分析

・新製品への投資額の増加

製品及びサービス

防災需要の高まり

防災性能の高い製品需要の増加に伴う売上増加

短期~

長期

・防災をテーマとする研究開発の強化と市場動向の分析

・新製品への投資額の増加

(注)1.省エネ・高断熱・ZEB対応、リサイクル、CFPなどの認証付与、アルミ・樹脂または木複合等

2.スクラップ専用炉、電気炉も含む

3.台風、高潮や洪水による浸水、自然災害によるサプライチェーン断絶など

・使用シナリオ:〔移行リスク〕 IEA WEO2023 NZE2050

        〔物理リスク〕 ・IPCC RCP8.5 ・IPCC AR6 SSP5-8.5

・時間軸   :短期 1年以内、中期 ~2030年、長期 ~2050年

・影響度   :大 影響額3億円以上、中 1億円以上~3億円未満、小 1億円未満

・重要度   :時間軸と影響度を勘案して3段階で総合的に判断

 

気候変動に関するリスク・機会への対応策に関する実績

・全体像

 気候変動に関するリスクおよび機会への対応の全体像として、2024年度に「不二サッシグループ 脱炭素ロードマップ」をトランジション戦略も兼ねて策定いたしました。長期的思考が必要となる、設備の低炭素化、太陽光発電量の拡大や低炭素アルミ製品の強化から取り組みを始め、社会課題対応を推進力として価値創造を進めております。

 

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 以下、 主な取り組みの進捗および実績を説明いたします。

 

・Scope1,2の削減

 生産拠点の省エネ施策として、将来的なインターナルカーボンプライシングの活用の準備段階として、年間の設備更新計画の事前評価にGHG排出量削減を組み込みました。計画上の削減量あたりの投資額に関する基準を設けることによって、排出量削減に資する計画は評価が向上し、また、インターナルカーボンプライシングの設定の参考といたします。

 さらに、当社グループの排出量削減において重要な生産設備を所有する拠点の設備投資については、サステナビリティ推進部会も共同で計画を評価しており、その方針に沿った設備更新を順次実施しています。

 

 なお、これらの設備投資計画の評価に基づき、SBT認定目標およびGX ETSに対するリスクヘッジとして、カーボンクレジットの調達も段階的に実施しております。

 

・再生可能エネルギー発電設備の導入

 当社グループ全体として、主に生産拠点の建屋屋上を利用した太陽光発電システムの導入を進めております。

既に稼働している千葉事業所第一発電所・第二発電所、関西不二サッシ発電所に加え、2024年度には不二ライトメタル本社および不二サッシフィリピン社でも太陽光発電所の稼働を開始いたしました。

 2025年度も、千葉事業所に太陽光発電所を増設するほか、不二ライトメタル本社工場で当社グループ初となる再生可能エネルギー電力契約(非化石証書付き)を締結しており、今後もさらなる太陽光発電設備の導入を計画しております。

 

・脱炭素関連製品の強化

 現在、建築物のライフサイクルカーボン算出・評価の動きが行政および建築業界で活発化しております。

 建築物ライフサイクルカーボン(生涯CO2排出量)のうち、居住などの使用時におけるオペレーショナルカーボンに関しては、当社グループは多種多様な断熱サッシを製造・販売しており、その中には既存の窓を変更することなく簡易に断熱性を高めたいというニーズに応える樹脂内窓も含まれております。

 建築物の使用時を除くエンボディードカーボンに関しては、LCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方に基づく低炭素アルミ建材「Reサッシ R100」および「Reサッシ グリーン」の新投入を2025年5月に発表しております。

 さらに、2025年6月には、千葉事業所で製造する建材用アルミ形材が、LCAに関する第三者認証である「SuMPO EPD」に登録されました。今後、同様のEPD(Environmental Product Declaration:製品環境宣言)取得を「Reサッシ R100」などへ拡大してまいります。

 

 こうした製品LCAあるいは製品CFP(カーボンフットプリント)には、GHG排出量削減において大きく2つの効果があります。1つは、当社グループのGHG排出量削減の活用です。アルミニウムは「電気の缶詰」と呼ばれるほどエネルギー負荷の高い素材ですが、アルミリサイクル材を使用することで調達する原材料としての排出量を大幅に削減できるため、当社グループのScope3削減に加えて、この削減を反映した数値を製品単位でも確認することが可能となります。Scope1、2の削減も同様に反映されます。もう1つは、販売先にとってのScope3の削減です。LCAが算出されている製品を使用することによって、当社グループの排出量削減が反映された、より低炭素な製品を調達することが可能となります。

 さらに、「Reサッシ R100」「Reサッシ グリーン」はいずれもサッシ等の最終製品の構成部材であるため、断熱サッシやアルミ・樹脂または木複合製品へ適用することでより効果の高い低炭素建材とすることも視野に入れております。

 

 また、アルミサッシは解体後の回収材(スクラップ)を再溶解すれば同じ品質のアルミサッシを再生産することができるため、その点でアルミリサイクル材の積極的利用はサーキュラーエコノミー(循環経済)の実現にも資する取り組みとなっております。

 ただし、アルミサッシ由来のリサイクル材は建物の解体を起点として市場へ供給される材料であるため、それだけに頼ることは、受注から完成までのサイクルが長くなる傾向にある建築業に対して調達の安定性を損なうというリスクもあります。そのため当社グループでは、再生可能エネルギーで製錬された低炭素な原材料であるグリーンアルミの調達にも戦略的に取り組んでおります。

 

・自然災害への対策

 対応策の第一段階として、当社グループの各生産拠点が実施している浸水等への備えを取りまとめており、今後は有用な施策を横展開するなどグループ全体のBCPを高めてまいります。

 

・防災をテーマとする研究開発の強化

 地震発生後すぐに建物の損傷度合いを把握し、安全性を判断する仕組みとして、建物の変形度合いを測るセンサとLEDを組み込んだ「LED光センサアラートシステム」付きカーテンウォールを開発・検証しております。これまでは、産学連携により実験施設における非構造部材や設備機器などの損傷状況を把握する実験を実施し、迅速な被害判定システムの開発に取り組んでまいりました。2024年度には次のフェーズとして、実建物(小学校)における瞬時損傷判定技術の実証実験を開始いたしました。

 

 

(2)生物多様性

LEAPアプローチの実施

当社グループでは、TNFDの提供するLEAPアプローチの手法を活用し、自然との依存影響関係の特定、自然関連のリスク・機会の特定、及び環境負荷の低減施策やリスク・機会への対応策の検討を行っております。

 

2024年度3月時点でのLEAPアプローチ対象

調査対象

アルミニウム原材料のボーキサイト(当社ビジネスの主要材料におけるサプライチェーン最上流資源)

対象事業範囲

アルミニウム製サッシ・ドア製造業(リニューアル事業含む)、アルミニウム・同合金圧延業

調査・分析する場所

上記事業に関係する当社グループの工場拠点、ボーキサイト鉱山の採掘段階

 

上記対象については適宜拡大及び深堀を実施いたします。

なお、現段階では、LEAPアプローチの「LE(Locate=発見、Evaluate=診断)」に該当するフェーズを行い、事業と自然との依存影響関係や、要注意地域(TNFDの定義に基づく、生物多様性の観点で重要な地域)を特定いたしました。次の段階である「AP(Assess=評価、Prepare=準備)」についても引き続き実施しており、リスク・機会の特定などを進めているところです。

また、使用したツールにつきましても、以下にお示しいたします。

 

図:LEAPアプローチの実施フロー

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表:分析に使用したツール

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自然資源との依存影響項目の把握

事業が自然とどう係わっているかを把握するために、外部ツール「ENCORE」を使用いたしました。これは、事業種別ごとに業界代表値としてどのような自然資源を使い、どう影響を与えるかを評価できるツールとなっております。

自社拠点及びボーキサイト鉱山に関する評価結果と、実際の事業活動(自然資源のインプット/アウトプット)を元に、以下のようなヒートマップを作成し、特に懸念すべき自然との依存影響関係を把握いたしました。

 

図:ENCOREにおける依存影響項目

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※同一事業内で複数の経済活動が考えられる場合には結果の大きいものを採択

 

直接操業の製造プロセスでの依存と影響

・ 製造過程で出る化学物質や廃棄物が、土壌や水域を汚す可能性がある(影響)

・ 工場の機械による騒音が、周囲の環境に影響を与える可能性がある(影響)

・ 一部の工程で大量の取水を行っており、水資源への依存が高い(依存)

当社グループではいずれの該当項目においてもその影響が最小限となるように対応し、法規制の対象となる項目については規定値以下を順守しておりますので、本結果においては配慮すべき依存影響項目としての認識を持ったうえで引き続き操業を行ってまいります。

 

サプライチェーン上流(ボーキサイト)の調達プロセスでの依存と影響

・ 鉱山での採掘に大量の水を使っているため、水資源への依存、影響が共に高い(依存・影響)

・ 排ガスや有害物質が出る可能性がある(影響)

調査範囲選定時における認識の通り、採掘段階では自然資本への依存影響はいずれも高い評価となりました。

 

 

要注意地域の把握

TNFDは、以下の4つの観点から「要注意地域」を判断するよう推奨しております。

1. 生物多様性の観点での重要性

2. 生態系の健全性の高さ

3. 水資源のリスクの高さ

4. 自然環境の文化的価値

これらをもとに地図分析ツールを使用して、生物の指定保護地域や生物多様性重要地域、洪水リスクや水ストレス(水不足リスク)の状況など、外部データを参考に調査いたしました。(上記 表:分析に使用したツール参照)

 

・直接操業拠点について

当社保有拠点工場では主にアルミサッシ等を製造しております。国内の拠点では、熊本県有明地域の工場が鳥獣保護区やラムサール条約に基づく湿地に位置していることがわかりました。他にもいくつかの拠点が鳥獣保護区に含まれております。水ストレスや生態系への影響が特に大きい拠点は見られませんでした。

 

表:直接操業拠点における要注意地域分析結果

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・ボーキサイト資源の調達地域について

当社グループにとって重要な原材料であるボーキサイトは鉱山から調達される自然資源のひとつです。このような資源を得るためには、その地域の自然環境や社会の変化を把握することがサステナビリティ課題に対応していく上でも重要であると認識しております。この背景を踏まえ、LEAPアプローチの手法に基づき資源調達地域における自然との関係性の状況を調査いたしました。

 

調達対象鉱山の選定においては、一次サプライヤー各社とも時期などで調達先が変動するため、確定情報を得ることが困難と判断いたしました。そのためこの度の調査は、収集可能な範囲の情報と外部文献をもとに、主な調達先と見られる地域を調査いたしました。

調査結果は以下の通りであり、調達地域にはそれぞれ異なる特性があることが分かりました。

・ 主要調達先の国の鉱山は、水ストレスの高い地域や保護地域にある可能性がある。

・ 別の主要調達先では、生物多様性が豊かな地域や先住民族との共生が求められる地域が含まれている可能性がある。

・ 特にリスクが高くない地域も存在している。

 

総括

この度実施した分析においては、対象事業におけるサプライチェーンにおいて特に自然との関連性が強く、注意が必要となる拠点を把握することができました。直接操業においては各拠点の自然保護区域該当箇所などの具体的な情報などが得られ、環境負荷が高いと事前に想定していた調達段階においても想定から大きく逸脱することなく、特に依存影響項目において数多くの自然資本への高い関係性を確認いたしました。

 

当社では、自然と共にある社会の実現「ネイチャーポジティブ」達成に向け多様なステークホルダーとの連携が必要不可欠であると考えております。その一環として、現在は千葉県主導で行われている絶滅危惧種の保存貢献活動である「ヒメコマツの回復計画」に系統保存サポーターとして2020年より参加しており、苗木の育成と管理を行っております。今後はLEAPアプローチの分析結果を踏まえ、自治体等の外部組織との連携体制も念頭に置きつつ、更なる具体的活動を検討・実施してまいります。

(3)人的資本

 当社では企業発展の原動力は優秀な社員であるとの認識に立ち、経営理念・経営方針に則り、仕事に対する生きがいをもった創造的な従業員の育成を図ることを基本的な考え方としております。

 今年度より従業員エンゲージサーベイを導入し、その結果をもとにPDCAサイクルを回すことによって組織全体のエンゲージメントの向上に取組んでおります。また、年齢、性別等に囚われない昇進、昇格基準の明確化、多様な業務ごとの公平、公正な評価制度等を骨子とする人事制度改定に着手しており、2025年度の導入を予定しております。

 従業員育成に向けた具体的な取組みとして、次世代を担う若手社員を対象に、当社の将来像を考察する機会として「新中期経営計画の策定」「新オフィスビル移転プロジェクト」等に参画させております。また、自らのキャリアパスを自発的に考える仕組みとして社内インターンシップ制度の活用も推進しております。

 深刻な労働力不足への対応として、若いサッシ施工技能者の雇用、育成を目的とする「不二サッシ施工技能者育成プロジェクト」を発足、その専担会社として当社の非連結子会社である大沼工業所を母体とする不二サッシS・Cを2025年4月に設立致しました。当社では本プロジェクトを通じ、「少子高齢化社会への対応」と「技能伝承」の両立に努めてまいります。

 

(4)人権

 当社グループは、事業活動における人権尊重の責任を果たすため、2022年度に「不二サッシグループ人権方針」を策定いたしました。グループ社員全体への人権課題意識の浸透および、サプライチェーンに対しても人権を尊重した事業活動の促進を図ってまいります。

 また、人権リスクの把握及び防止・軽減のため、人権デューデリジェンスのプロセスに基づいた取り組みを推進してまいります。2022年度より、当社サプライヤーに向けたアンケートにおいて人権デューデリジェンスの認識・取り組み状況をヒアリングし、その結果に合わせた情報提供などを実施しております。

 今後は、人権課題に取り組む社内ワーキンググループの設置を行い、人権リスクへの対応を進めてまいります。その準備段階として、新たに、不二サッシグループのビジネスにおいて重要な原材料であるボーキサイトの鉱山について、周辺地域のリスク等の調査にも着手いたしました。調査の詳細は前記(2)生物多様性において記載しておりますが、当社グループは一次サプライヤーを介してアルミ新地金を調達しており、それらのサプライヤーが人権も含む様々な情報を勘案するため採掘段階の鉱山は各社時期などで変動することが把握できております。現時点では、それらの中で主要と推測できる鉱山を調査対象とし、先住民族も含む周辺地域のリスク把握に努めております。

 

3.リスク管理

 当社グループは、マテリアリティの特定のプロセスにおいて、リスク及び機会を十分に検討しており、特にリスクについては、その内容に応じた各所管管理部署が経営レベルへ定期的な報告を実施しております。今後は、サステナビリティに関するリスクを一元的に管理し、対応する委員会の設置等も検討してまいります。

 

(1)特定・評価プロセス

 サステナビリティに関するリスクの特定は、サステナビリティ推進室およびサステナビリティ推進部会によって実施しております。特定されたリスクは、サステナビリティ委員会で審議と定量化の評価と対応策の実施難易度に応じて優先順位の評価がつけられ、対応に向けた戦略方針の策定を行うことでリスクを管理しております。

 

(2)管理監督プロセス

 サステナビリティ委員会にて策定した対応策は四半期に一度取締役会に報告・監督され、各事業部に展開されます。対応策の内容により、サステナビリティ推進部会で実施方法を議論し、サステナビリティ推進室が経営会議等を通じてさらに詳細な指示を事業部へ行っております。

 

(3)全社統合プロセス

 各事業部およびグループ会社から抽出されたサステナビリティ関連以外の全社的なリスクもサステナビリティ委員会が評価し、取締役会へ報告しております。今後全社的なリスク管理を行う組織の設立は、別途取締役会および経営会議等で検討いたします。

 

なお、このリスク管理の内容は、ガバナンスに関する事項と同様にサステナビリティ全般に関する説明であり、気候変動関連、人的資本および多様性、人権についても包含するものであります。

サステナビリティに関するリスクについては、第2.事業の状況3.事業等のリスクを併せてご参照ください。

 

4.指標及び目標

 サステナビリティに関する指標及び目標は、サステナビリティビジョン2050及びマテリアリティの区分に則り設定しております。設定プロセスとしては、サステナビリティ推進室およびサステナビリティ推進部会によって立案され、サステナビリティ委員会における審議を経ております。

 現在は、マテリアリティの中で優先順位が高いと判断した項目から順に指標及び目標を設定しております。

 

(1)脱炭素(気候変動対応)

 当社グループは、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、GHGプロトコルの基準に基づき2023年度の温室効果ガス排出量の算定を実施いたしました。温室効果ガス排出量の削減目標は、2021年度比2030年度までにScope1+2を42%削減、Scope3はカテゴリ1、4、11を対象に30%削減を目指しております。長期目標として2050年度までにネットゼロを目指します。

 なお、この温室効果ガス排出量の削減目標は、SBTiの審査を受け認定されたものであります。

 目標期間における進捗としては、2023年度はScope1+2およびScope3ともに順調に削減が進行し(Scope1+2:線形的な削減で仮定したベンチマーク9%に対して10%削減となり1%先行、Scope3:同様に7%に対して16%削減となり9%先行)、2024年度はScope1+2(内、特にScope1)について削減ペースが落ちたもののScope3は継続して順調に削減を進めております(Scope1+2:ベンチマーク14%に対して11%削減となり3%遅延、Scope3:同様に10%に対して20%削減となり10%先行)。

 

 

Scope1+2

Scope3

2021年度実績(基準年)

77,726 t-CO2e

830,411 t-CO2e

2023年度実績

69,727 t-CO2e

696,987 t-CO2e

2024年度実績

69,066 t-CO2e

665,800 t-CO2e

2030年度目標

基準年:2021年度

42%削減

▲32,645 t-CO2e

30%削減

▲240,349 t-CO2e

2050年度目標

ネットゼロ達成

(注)1.当社グループSBTにおいては、海外グループ会社を目標の対象から除外しております。

2.当社グループSBTにおけるScope3の2030年度目標の削減対象はカテゴリ1、カテゴリ4、カテゴリ11です。

3.台風、高潮や洪水による浸水、自然災害によるサプライチェーン断絶など

 

また、当社グループの脱炭素施策において重要なアルミリサイクル率の目標も設定しております。対象は建材事業、アルミリサイクル率の定義は日本サッシ協会に準拠しており、2050年度までにアルミリサイクル率100%を目指してまいります。これに対する2024年度の実績は約70%となっております。

 

(2)生物多様性

 TNFDガイダンスにて開示が要求される項目での、LEAPアプローチによる分析結果を踏まえた自然関連課題の管理指標について現時点で把握可能であった開示指標について以下にお示しいたします。

 

表:グローバル中核指標

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 目標設定においては、当社のサステナビリティ経営に関する方針である「サステナビリティビジョン2050」に則り、気候変動課題と生物多様性のトレードオフや相乗効果に対しても考慮しながら現在検討を進めております。

 

(3)人的資本

 当社グループは、女性活躍推進の観点より、2024年6月に女性社外取締役を招聘し、採用者に占める女性割合を30%以上とする目標に向け採用活動を行った結果、当連結会計年度において目標を達成いたしました。

 

前連結会計年度

当連結会計年度

採用者に占める女性割合

28.2%

30.2

 

 国際人材の登用では不二サッシフィリピン社に不二サッシ設計センターを開設いたしました。現地への講師派遣、日本国内の研修等を通じてスキル向上に努めるとともに社内における日本語教育充実等により高度外国人材の採用等を通じて更なる人員の増強を進めてまいります。

 また、2022年7月以降、カンボジアから毎年10名の技能実習生の受け入れを継続しており、2025年度はこの中から、特定技能検定合格者を社員として迎えいれる予定であります。

 障がい者雇用については社会福祉法人メイプルの運営支援と通じて障がい者の就業機会の確保に努めております。

 

(4)人権

 人権に関する指標及び目標の設定に向けた準備の一環で、2022年度より、当社サプライヤーに向けたアンケートにおいて人権デューデリジェンスの認識・取り組み状況をヒアリングし、回答状況を集計しております。

 今後は、人権に関する調査・分析結果を実情に合わせて整理し開示を検討してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の内容、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下の様なものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経済状況について

 当社グループにおける営業収入の大部分は、日本国内における需要に大きく影響を受けます。このため、当社グループの経営成績は、日本国内の景気動向、建設会社の建設工事受注残高や住宅着工戸数の変動等の影響を受ける可能性があります。

 また、国内景気の悪化により、売掛金、受取手形等の債権が劣化した場合、貸倒引当金の積み増しが必要となるなど、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)金利の変動について

 当社グループは、金融機関等からの借入金など有利子負債を有しております。金利が上昇した場合は、支払利息が増加し、当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

(3)為替動向について

 当社グループは、外貨建て取引が増加しております。そのため、急激な為替変動は損益に大きな影響を及ぼす可能性があります。為替変動等のリスクを最小限に抑えるため、金融機関等と為替予約等のヘッジ取引を行っております。

(4)原材料の市況変動の影響について

 当社グループは、アルミ地金を主たる原材料とする事業(建材事業、形材外販事業)が売上高の大半を占めております。このアルミ地金価格は、市況(為替相場およびロンドン金属取引所(LME)の価格相場)の変動により影響を受けることから、今後も市況が上昇する局面では、原材料費の上昇が抑えきれず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)市場環境について

 営業活動を展開する上で協業他社との競争は避けられませんが、そのような状況に耐えうるべく製品・サービスの向上に努めております。しかしながら、市場環境が大きく変化した場合、厳しい価格競争にさらされるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6)特定事業への依存について

 当社グループは、売上・利益ともに建材事業への依存率が高く、この事業の業績に全体の経営成績が大きく影響される傾向があります。建築投資全体が縮小傾向で推移する状況に対して当社グループは、形材外販事業や環境事業等非サッシ事業およびリニューアル事業の拡大を積極的に推進しております。

(7)法的規制について

 当社グループは、商品の設計・製造・施工に関連して、多くの法的規制を受けております。「建設業法」に基づき、建材事業は建具工事業、環境事業は機械器具設置工事業の許可を受けて営業を行っており、この他にも水質汚濁防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律など環境関連法や消費生活用製品安全法など様々な法的規制を受けながら事業を展開しております。今後、これらの規則の改廃や新たな法的規制が設けられる場合には、当社の業績が影響を受ける可能性があります。

(8)自然災害及び事故等の発生による影響について

 地震・津波などの自然災害、火災・停電等の事故災害および感染症のパンデミックなどによって、電力・水・ガス等の供給停止、公共交通機関や通信手段の停止、当社グループの生産・販売・物流拠点および設備の破損などを引き起こし、当社グループの事業活動が中断し、生産および出荷に影響を及ぼす可能性があります。災害などによる影響を最小限に抑える対策を講じていますが、災害などによる被害を被った場合は、当社の業績が影響を受ける可能性があります。

(9)環境問題

 当社グループは産業廃棄物の処理に関する法律及び大気、水質、騒音、振動、土壌汚染等の環境諸法令の適用を受けており、環境基本方針・行動指針に基づき環境マネジメントシステムの下、環境保全活動を行っております。しかしながら、今後何らかの環境問題が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは脱炭素に向けた取り組みを推進しており、脱炭素関連の商品開発、アルミリサイクル材やグリーンアルミの積極的利用、太陽光発電による再生可能エネルギーの導入、燃料転換や先進製造設備の導入等を推進しており、更なる脱炭素化への対応が必要となる可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度の当社グループ(当社及び連結子会社)の業績は、主力とするビルサッシを中心とした建材事業分野においては、ビル新築事業およびリニューアル事業が好調に推移いたしましたが、建設資材の高騰、労働人口の減少などの厳しい事業環境の改善は見通せない状況が続いております。形材外販事業分野においては、加工品を中心に安定した収益基盤の構築に向けて歩みを進めております。このような事業環境の下、全セグメントにおいて前年対比で増収増益を達成いたしました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度に比べ51億2千2百万円減少し、842億8千6百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度に比べ77億5千9百万円減少し、606億9千4百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度に比べ26億3千7百万円増加し、235億9千1百万円となりました。

b.経営成績

 当連結会計年度の業績は売上高1,047億5千4百万円(前年同期比3.5%増)、営業利益24億7千5百万円(前年同期は営業利益17億7千3百万円)、経常利益27億4千2百万円(前年同期は経常利益21億8千6百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益22億2千5百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益17億1千4百万円)となりました。

 

セグメント毎の経営成績は次のとおりであります。

〔建材〕

 建材事業においては、堅調に推移した受注状況の下、ビル新築事業、リニューアル事業などが牽引した結果、売上高は753億6千5百万円(前年同期比1.9%増)と増収になり、価格改定の浸透などの影響に加えて、営業強化による利益率の良化などにより、セグメント利益は34億5千5百万円(前年同期はセグメント利益26億円)と増益になりました。

〔形材外販〕

 形材外販事業においては、収益性の高い加工品の販売が拡大したことなどにより、売上高は232億5千4百万円(前年同期比9.0%増)と増収になり、加工品の販売拡大に加えて、内製化による外注費の低減や設備投資による生産性向上などの結果、セグメント利益は3億6千6百万円(前年同期はセグメント利益3億1千3百万円)と増益になりました。

〔環境〕

 環境事業においては、プラント部門の基幹改良工事を中心とした新規プラント工事が好調に推移したことなどにより、売上高は27億4千4百万円(前年同期比2.5%増)、セグメント利益は1億6千1百万円(前年同期はセグメント利益1億5千1百万円)と増収増益になりました。

〔物流〕

 物流事業においては、営業倉庫の活用による取引拡大に加え、傘下に加わった企業の業績が寄与したことなどにより、売上高は30億8千6百万円(前年同期比3.6%増)と増収になり、適正価格の浸透や配車効率化などのコスト管理の徹底に取り組んだ結果、セグメント利益は4億2百万円(前年同期はセグメント利益3億1千2百万円)と増益になりました。

〔その他〕

 その他事業には、不動産等がありますが、売上高は3億3百万円(前年同期比7.6%増)、セグメント利益1億8千2百万円(前年同期はセグメント利益1億6千2百万円)となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ35億3千4百万円減少し、当連結会計年度末には120億9千1百万円となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は、7千4百万円(前年同期は58億8千4百万円の獲得)となりました。これは主に仕入債務の減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、15億9千3百万円(前年同期は24億9千万円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、18億7千1百万円(前年同期は13億1千7百万円の使用)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

建材(百万円)

73,875

102.2

形材外販(百万円)

23,254

109.0

環境(百万円)

1,806

113.5

合計(百万円)

98,936

103.9

 (注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

建材

58,361

97.4

65,676

99.0

 (注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

建材(百万円)

75,365

101.9

形材外販(百万円)

23,254

109.0

環境(百万円)

2,744

102.5

物流(百万円)

3,086

103.6

報告セグメント計(百万円)

104,450

103.4

その他(百万円)

303

107.6

合計(百万円)

104,754

103.5

 (注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の数値、各連結会計年度における収入・費用の数値に影響をおよぼす見積り計上を行っております。主に繰延税金資産、貸倒引当金、工事損失引当金、退職給付に係る負債、資産除去債務等に対し過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、これらの見積りについては、実際の結果と異なる場合があります。

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループは、堅調に推移した受注状況の下、価格改定や収益性の高い加工品の販売拡大、コスト管理の徹底などに取り組んでまいりましたが、諸資材価格の高騰、労働人口の減少などのリスクが引き続き顕在化しており、厳しい事業環境の改善は見通せない状況が続いております。

 

(売上高)

 建材事業については、ビル新築事業、リニューアル事業などが堅調に推移しました。また、形材外販事業については、収益性の高い加工品の販売が拡大しました。その結果、当連結会計年度の売上高は、1,047億5千4百万円(前年同期比3.5%増)と増収になりました。

(営業利益)

 建材事業については、価格改定の浸透などに加えて、営業強化による利益率の良化などにより、また形材外販事業については、加工品の販売拡大に加えて設備投資による生産性向上などの結果、24億7千5百万円(前年同期比7億1百万円増)と増益になりました。

 なお、セグメント別の売上高及び営業利益につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 営業利益が大幅に良化したことに加え、特別損益においては、投資有価証券売却益が前連結会計年度より増加したこと等により、税金等調整前当期純利益は28億4千3百万円(前年同期比7億7千2百万円増)と増益になり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましても、税金費用の増加は見られましたが、22億2千5百万円(前年同期比5億1千1百万円増)と増益になりました。

 

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は478億3千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ45億2百万円減少いたしました。これは主に売掛金が4億9千8百万円、商品及び製品が1億4千2百万円、原材料及び貯蔵品が9億4百万円増加し、現金及び預金が35億5千6百万円、受取手形が11億3千3百万円、電子記録債権が10億9千1百万円減少したことによるものであります。固定資産は364億4千6百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億1千9百万円減少いたしました。これは主に有形固定資産が1億3千万円増加し、投資その他の資産が7億2千万円減少したことによるものであります。この結果、総資産は842億8千6百万円となり、前連結会計年度末に比べ51億2千2百万円減少いたしました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は359億8千6百万円となり、前連結会計年度末に比べ56億8千8百万円減少いたしました。これは主に契約負債が6億6千5百万円増加し、支払手形及び買掛金が26億6百万円、電子記録債務が25億4千3百万円、短期借入金が8億8千1百万円減少したことによるものであります。固定負債は247億7百万円となり、前連結会計年度末に比べ20億7千1百万円減少いたしました。これは主に社債が1億6千万円、リース債務が1億5千2百万円、退職給付に係る負債が16億4千5百万円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は606億9千4百万円となり、前連結会計年度末に比べ77億5千9百万円減少いたしました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は235億9千1百万円となり、前連結会計年度末に比べ26億3千7百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が19億7千3百万円、退職給付に係る調整累計額が8億8千6百万円増加し、その他有価証券評価差額金が1億9千5百万円減少したことによるものであります。この結果、自己資本比率は27.7%(前連結会計年度末は23.2%)となりました。

 

(キャッシュ・フローの状況の分析・資本内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報)

 財務戦略の基本的な考え方

 当社グループは、強固な財務基盤の構築を目指しながら、企業価値向上を図るため、収益や成長ができる事業へ資源を集中する戦略(事業ポートフォリオ戦略)を推進し、グループの経営資源を最適配分することを財務戦略の基本としております。

 経営資源の配分に関する考え方

 当社グループは、企業価値向上に資する経営資源の配分に努めます。

現預金および多様な資金調達の活用により、成長のための投資、株主還元の充実を図ってまいります。

 資金需要の主な内容

 当社グループの資金需要の主なものは、製品製造のための原材料、部品の購入、外注加工費、人件費等の営業活動資金と、持続的な成長のために商品競争力を高める研究開発投資や、生産性向上を図る設備投資を実施する投資活動資金となっております。

 資金調達

 当社グループの事業活動の維持および拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金および外部資金を調達し有効に活用しております。設備投資は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを基本としておりますが、多様な資金調達手段を活用し、金融機関からの借入やリースによる固定資産購入等を行っております。

 

(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産・負債及び収益・費用の測定並びに開示に与える影響のうち、将来事象の結果に依存するため確定できない金額については見積りを必要とします。これらの見積りについては、過去の実績や適切な仮定に基づいて合理的な判断を行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる可能性があります。

 繰延税金資産の回収可能性の判断にあたっては、受注状況、原材料価格や電力料金等の諸資材価格の高騰、米国による輸入関税強化や、長期化するウクライナ情勢、中東情勢の不安定化など地政学的リスクが継続しており、日本国内にも物価上昇や為替リスク、諸資材価格の高騰などの影響が続くものと見込まれることから、不確実性が高くなっており、連結財務諸表作成時点で入手可能な情報に基づいてこれらの不確実性を考慮した会計上の見積りを行っております。

 しかし、米国の関税強化や緊張感が増す世界情勢により発生する為替リスクの影響などが長期化することにより、上記仮定に変化が生じた場合には、翌連結会計年度以降の当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

 当社グループは、収益性と資本効率の向上、並びにESG・サステナビリティを意識した経営を経営方針として位置づけております。

 当連結会計年度においては、堅調に推移した受注状況、収益性の高い加工品の販売の拡大したことなどにより、売上高は1,047億5千4百万円(前年同期比3.5%増)と増収になり、価格改定の浸透や加工品の販売拡大などの様々な施策を推進した結果、営業利益は24億7千5百万円(前年同期比7億1百万円増)と増益になりました。

 2025年度は、2030年に創業100年を迎えるにあたり、次の100年を生き抜くため、「収益面・経営面の双方で確固たる基盤を構築し、誰もが安定・安心できる企業グループとなる」ことを基本方針とした、新中期経営計画を策定し推進してまいります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、一般サッシからカーテンウォールまで総合外装メーカーとして一貫した商品開発を行っております。多様化する顧客ニーズへの対応と安全・安心社会実現に向けた開発をテーマに掲げ、さらには、持続可能な社会実現のために環境負荷低減や高耐久化技術を取り入れた新商品の開発にも注力しております。
 当社の研究開発は、技術本部管轄の商品開発部、技術管理部、性能研究部が推進しており、研究開発スタッフは、全体で75名にのぼり、これは全従業員数の約8.2%に当たっております。
 また、次世代素材分野開拓に向け、連結子会社の不二ライトメタル㈱の製品本部、資材本部が研究開発に注力しております。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、1,312百万円となっております。

 

[建材]

 市場では、2024年度の新設住宅着工戸数は約79.2万戸で、5年連続で90万戸を下回り、前年比3.3%減、2年連続の減少となりました。当社の主力分野であるマンションにつきましても、10.2万戸で前年比5.1%減となり、2年連続の減少となりました。将来的には新設住宅着工戸数は減少傾向にあり、人口の減少に伴ってニーズも減っていくと考えられています。

 政策においては2050年までにCO2排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現に向け、2030年には2013年度比46%の削減目標が掲げられ、更に50%の高みに向けた取組みを行っています。この目標に対しては単にCO2の排出量を削減するだけでは困難であり、エネルギー源については太陽光発電など再生可能エネルギーの大幅な普及促進、水素やアンモニウムガスによる火力発電に関する技術開発などエネルギーミックスに関連する法整備などを含めた変革が求められています。

 国土交通省では我が国のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野における取組が急務として、2022年6月17日には改正建築物省エネ法が一部改正し公布されました。主な改正内容は、基準適合義務化の廃止、木材利用の促進、住宅トップランナー制度の対象拡充などとなっており、2025年度より全ての新築住宅、非住宅に省エネ基準適合が義務化されました。また、省エネ基準の適用対象を拡大するため、法規制を視野に入れた検討会を設置し、省エネルギー住宅について従来から指摘されている①外壁の高断熱化、②高遮熱性開口部、③高効率の空調設備などの新たな基準や既存ストック対策、再生可能エネルギーの利用拡大などが継続的に検討されており、住宅・建築物ストックの省エネ改修を対象とする支援事業などの施策も強力に実施されています。

 ビル建材の開発におきましては、住宅・建築物の省エネルギー対策を受け、高断熱サッシの商品ラインアップの拡充に注力しました。高層向け市場にはアルミ樹脂複合構造「FNS-Ⅱ100R」のバリエーションを順次追加し、中低層向けにはアルミ樹脂複合サッシ「FNS-Ⅱ100RS」を、改装向けアルミ樹脂複合サッシ「FNS-RER」を、さらには、既存の窓を変更することなく簡易に断熱性を高めたいニーズに応え、樹脂内窓「インプラードⅡ」のバリエーション追加を行い、CO2排出量の削減と建物の省エネルギー化に貢献しております。今後更なる高断熱化に向け、ウッドフレンズ社との共同開発によるアルミクラッド構造を用いた木製サッシの開発を行うとともに、物価高騰に対応した価格競争力のある商品の開発にも取り組んでいます。

 住宅建材の開発におきましては、住宅建築物の断熱性能はさらに高いものが求められ、住宅市場では今後縮小していくなど厳しい環境が予測されていますが、先行して次世代用高断熱サッシの開発及び現行商品をベースとしたリフォーム用断熱サッシの開発に取り組んでおります。

 光建材事業においては、当社の魅力あるビルファサードを提案する「アルビームシリーズ」の新たなラインナップとして、TOPPAN株式会社の化粧シートラッピングを施した高意匠・高性能ルーバー 『アルビームプラス フォルティナ®』 のバリエーション追加に向け開発に取り組んでいます。

 特需事業におきましては、現行商品シリーズのシャワーユニットのオプション設定の追加及び商品の改善・改良に注力し、更なる品質向上に取り組んでおります。また、ユニットハウスの生産数量を拡大するため、不二ライトメタル㈱での生産を開始いたしました。

 なお、建材事業に係る研究開発費は1,222百万円であります。

 

 

[形材外販]

 連結子会社の不二ライトメタルにおいて、2002年より研究開発をスタートしました次世代高強度・耐熱マグネシウム合金(KUMADAI耐熱マグネシウム合金)は、各種輸送機器への適用に向け邁進しております。

 マグネシウム合金専用の鋳造設備、押出設備を用いて、お客様のご要望に応じて、特注の各種マグネシウム合金の製造を行っております。

 医療デバイスの基材として期待されます生体吸収性マグネシウム合金は、素材作製から加工までの自社内一貫製造供給(溶解・鋳造→押出→引抜)設備にて素材の製作を行い、研究機関及び医療機器開発メーカーと共に医療デバイスの実用化推進を行っております。

 なお、形材外販事業に係る研究開発費は90百万円であります。

 

 当社グループの研究開発活動を担う技術本部は、「ISO9001品質マネジメントシステム」及び「ISO17025試験品質マネジメントシステム」の認証を取得しており、それぞれのシステムに基づき、様々な要求にお応えする商品の開発に取り組んでおります。また、試験所におきましては、社内外を問わず依頼される試験は積極的に行い、高度な要求にもお応えできるように最新の計測技術を使った試験方法の開発に取り組んでおります。

 研究分野においては産学官連携による共同研究を強化し、現在は防災科学技術研究所、名古屋大学、文化シヤッター㈱と、大地震後の建物応急危険度判定を即時に行う「光センサアラートシステム」の開発を行っております。2023年2月には大型振動破壊実験施設「E-ディフェンス」で検証実験を行い、2024年6月からは防災科学技術研究所を中心とするプロジェクトに参加し、自治体の協力のもとで実用化に向けた実証実験を開始しました。

 今後も持続可能な社会の実現に貢献するため、必要とされる商品をスピーディに開発し、お客様にご満足のいただける商品を提供してまいります。