第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、日本の機械鋸産業界のパイオニアとして、1913年の設立以来、一貫した生産を行う鋸刃専門メーカーであり、国内はもとより広く海外のマーケットに事業を展開してきました。また、社是である「誠実と和」を以って全社一丸となり、経営理念である「感謝の心をもって、従業員の幸せと株主の幸せを追求し、社会の幸せに結びつけます」の精神のもと総力を結集し、社業発展に邁進しております。

当社グループは、メーカーとして引き続き最適・最良の製品・サービスを開発・製造・提供することに努め、顧客の満足と信頼を獲得するとともに、就業環境の整備を図り従業員の自己啓発を高め多様化する市場環境に順応できる企業体質の向上や地域社会の発展に貢献し魅力ある企業に発展させることを経営方針としております。

(2) 経営戦略等

当社グループは、2024年5月14日の取締役会において、「中期経営計画(2024年度~2026年度)」を決議しました。その主な内容については、下記の「(3)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」において記載しております。

(3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

米国トランプ大統領による各種政策、米中の貿易摩擦の再燃への懸念、地政学的緊張の高まりなどにより、経営環境は依然として予断を許さない状況が続くと見込まれます。

このような状況下、2025年度は、当社の中期経営計画(2024年度~2026年度)中間年度となり、以下の重点戦略4項目の達成を目指してまいります。

①環境負荷の低減に寄与する新製品の開発及び既存技術の向上を追求します。

a.チップソーの刃先の厚さを薄くすることにより歩留まりの向上及び切断時の電力使用量の削減に繋げられたが、さらなる生産技術の向上を図り環境負荷低減製品の開発を継続する。

b.環境に配慮した原材料の見直しや梱包・副資材の脱プラ・エコ化を一層推進する。

②CO2排出削減を図るため新規設備投資を実施し、脱炭素生産の確立を目指します。

 a.設備の非化石エネルギーへの転換によりCO2排出量を削減する。

 b.主力製品への設備投資を積極的に行い自動化・省電力化を推進する。

③グローバル市場に対応する販売・技術サポート体制を強化し、環境に配慮した製品及び高付加価値製品の拡販を図ります。

 a.営業業務におけるDX化を推進し業務効率の向上を図る。

  b.販売・製造・開発の情報共有化を一層強化し市場ニーズへタイムリーに対応する。

④人的資本経営、ウェルビーイング経営を実現するために、ハード・ソフト両面から就業環境の整備や健康増進策を実施します。

 a.本社事務棟の建替えや老朽化施設の躯体・設備の点検、補修、交換を行う。

 b.階層別及び職位別研修の開催など研修体系・体制の構築をさらに図る。

 c.各部門にて業務フローの見直しを行い、IT化の推進により業務効率の向上を図る。

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、安定した営業利益の確保が健全な経営基盤を堅持するために最も重要であるという認識から、従来より「売上高営業利益率」を経営指標としております。また、今般、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け「ROE」、「PBR」を経営指標に追加しました。

中期経営計画(2024年度~2026年度)の中間年度である2025年度の目標は、以下のとおりです。

・売上高営業利益率:13.3%

・ROE(自己資本利益率):4.1%

・PBR(株価純資産倍率):0.58倍

なお、中期経営計画(2024年度~2026年度)の初年度である2024年度の実績及び2025年度~2026年度の目標は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりです。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに関する取組みが重要な経営課題であると認識しており、「誠実と和」という社是のもと、「感謝の心をもって、従業員の幸せと株主の幸せを追求し、社会の幸せに結びつけます」という経営理念のほか、「企業行動規範」、「環境方針」及び「SDGs取り組み方針」を制定し、脱炭素や気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適切な取引、自然災害等への危機管理などに対する考えを含め、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献できる体制を構築しております。

 また、代表取締役社長が委員長を務め、社外を含む取締役・監査役を委員とするサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティに関わる経営の基本方針を定め、必要に応じて従業員や外部アドバイザーを招へいし、推進活動の基本計画を立案しております。これに基づき、事業活動の方針・戦略について企画・立案し、取締役会へ提言を行い、全社横断的に着実に実行する役割を担います。また、そのために必要な実行戦略・KPI・活動手順を明確にし、取締役会の承認を得る体制としております。

(2)戦略

〈中期経営計画(2024年度~2026年度)〉 

  当社グループは中期経営計画(2024年度~2026年度)において、以下の4点を重点戦略として推進しております。

  ①環境負荷の低減に寄与する新製品の開発及び既存技術の向上の追求

 a.前中期経営計画(2021年度~2023年度)の重点戦略の推進により、チップソーの刃先の厚さを薄くすることで歩留まりの向上及び切断時の電力使用量の削減に繋げられましたが、さらなる生産技術の向上を図り環境負荷低減製品の開発の継続に努めております。

 b.環境に配慮した原材料の見直しや梱包・副資材の脱プラ・エコ化の推進に努めております。

②CO2排出削減を図るため新規設備投資を実施し、脱炭素生産の確立

 a.設備の非化石エネルギーへの転換によりCO2排出量の削減に努めております。

 b.主力製品への設備投資を積極的に行い自動化・省電力化の推進に努めております。

③グローバル市場に対応する販売・技術サポート体制を強化し、環境に配慮した製品及び高付加価値製品の拡販

 a.営業業務におけるDX化を推進し業務効率の向上に努めております。

 b.販売・製造・開発の情報共有化を一層強化し市場ニーズへタイムリーな対応に努めております。

④人的資本経営、ウェルビーイング経営を実現するため、ハード・ソフト両面から就業環境の整備や健康増進策

 を実施

 a.本社事務棟の建替えや老朽化施設の躯体・設備の点検、補修、交換に努めております。

 b.階層別及び職位別研修の開催など研修体系・体制の構築に努めております。

  c.各部門にて業務フローの見直しを行い、IT化の推進により業務効率の向上に努めております。

 

  〈ウェルビーイング経営、社内環境整備に関する方針〉

当社グループは、ウェルビーイング経営を掲げて、以下の3点を重点戦略として推進しております。

   ①社内環境の改善

 従業員が安心して仕事に従事できることを念頭に、健康経営優良法人認定の取得(2019年から7年連続)や育児・介護休業等の休業制度の充実を図っております。また、若者の働きやすさを追求する中で2024年10月にユースエール認定も取得しました。さらに、人事評価制度や再雇用制度の見直しを継続することにより、多様な人材が働きやすい環境整備に努めております。前述のとおり、中期経営計画(2024年度~2026年度)において、築後40年を経過した本社事務棟の建替えを予定し、職場環境の飛躍的な改善を図ってまいります。

 

  ②多様化への対応

 2023年2月に発足した「女性活躍推進プロジェクト」は、所属部署や年齢のバランスを考えた男女4名ずつの総勢8名にて、健康で働きがいのある職場環境や制度づくりについて毎月会議を開催し、随時、会社側への上申等を行っております。2024年度の実績として、女性事務員の制服に不具合が見つかり執務に支障があると判断されたために変更しております。

 ③エンゲージメントの強化

  2023年3月に従業員へのエンゲージメントサーベイを開始し、半期に1回、定期的に実施してきました。エンゲージメントサーベイの結果から特に問題と思われる事項については、さらにアディショナルサーベイ(追加調査)を実施し、従業員の声を吸収しております。2種類のサーベイにより抽出された問題点に優先順位をつけ、可及的速やかに解決することで、従業員のエンゲージメントと満足度向上に努めております。なお、2025年度からはサーベイの実施を年1回とし、要望に対する実行をより重視することとしております。

 

  〈人的資本経営、リスキリング、人材育成に関する方針〉

①当社グループは、企業発展の原動力は優秀な従業員であるとの認識にたち、人財育成方針を定め、以下の求めるべき人物像を掲げています。

a.協調性があり、感謝の心をもってチームワークを大切にできる人。

  b.常に新しいことに挑戦し、仕事に生きがいをもった創造的な人。

  c.時代の変化に対応できる応用力をもち、最後まで諦めずにやり遂げられる人。

②従業員教育は、長期的な視野に立って、計画的かつ継続的に行われる必要があり、当社グループは、時代や環境の変化に応じて必要な教育研修の把握に努め、次の方針に基づいて実施しております。

a.従業員教育は、従業員各自が向上意欲に燃え、自ら学ぼうとする姿勢によってその成果が期待されるもので、当社グループはこれを促進するため必要な施策を行う。

 ・2023年度より、管理職のリスキリングの一環として、文章作成・コミュニケーション能力向上のための通信講座「思考力文章講座」を導入し、2024年度には一般社員まで対象を広げて継続しております。また、職位別集合研修として、管理職研修「PHP~5つの原則」・リーダー育成研修「後輩指導力の向上と中堅・ベテラン従業員の役割」を実施しております。

 ・全従業員を対象に、金融リテラシーの向上や健康増進のため、「金融セミナー」・「社会保障制度の基礎知識セミナー」・「住宅関連セミナー」・「ストレッチセミナー」を実施しております。

 ・効率的な業務研修と積極的な自己啓発にハイブリッドに活用できるWeb研修ツールを導入しました。

b.従業員教育は、管理監督者が職場における日常業務の遂行を通じて、継続的に個人及び集団指導することがその基本である。また、当社グループはこの職場教育訓練(OJT)を推進するため必要な施策を行う。

    ・新入社員教育を担当するOJTリーダー・チューター制度の充実を図っております。

c.当社グループは従業員の自己啓発及びOJTを促進するため、必要に応じて、全社的又は各部門別の集合研修あるいは、社外研修などの職場外研修(Off-JT)を行う。

 

(3)リスク管理

当社グループのリスク管理は取締役会及びサステナビリティ委員会が主体となって行っております。

同委員会は次の事項をサステナビリティを巡る重要な課題として取り組んでおります。

①主に脱炭素、気候変動、SDGs、ESG、社会貢献策について議論し、当社グループの事業活動をいかに持続可能なものとするか、現状を把握するとともに課題を抽出する。

②抽出した課題の解決のために策定した目標を全社横断的に着実に実行する役割を担い、そのために必要な戦略・KPI・活動手順を明確にする。

③SDGs、脱炭素の社内活動の進捗状況や活動方針の報告・提案を受ける。

④上記①~③により、サステナビリティ並びにESGに関わる推進活動の基本方針を立案する。これに基づき、事業活動の方針・戦略について企画・立案し、取締役会へ提言する。2024年度の実績として、太陽光発電設備稼働、ペットボトルキャップ・使用済み切手・書き損じハガキ・ベルマークの回収、福祉チャリティーバザーへの訪問をしております。

(4)指標及び目標

指標

2024年度目標

2024年度実績

2025年度目標

①コーティング製品
(※1)の販売促進

2020年実績の23%増
(2020年を基準年とする)

2020年実績の3.3%増
(同左)

2020年実績の26%増
(同左)

②環境負荷低減製品
(※2)の新規採用
アイテム数

年間30

2024年実績22

年間30件

③ペーパーレス化の推進
(紙の使用量)

2023年使用量の3%減
(▲13,155枚A4換算)

2023年使用量の2.5%増
(+11,120枚A4換算)

2024年使用量の3%減
(▲13,160枚A4換算)

④CO2排出量削減

2023年排出量の1%減
(▲35t)

2023年排出量の3.1%減
(▲110t)

2024年排出量の8%減
(▲270t)

⑤採用した労働者に
占める女性割合

25以上

2024年度実績60.0
(男性2名・女性3名)

25%以上

⑥社員に対する
アンケート調査の
職場環境に対する満足度

70以上

2024年度実績65.0

70%以上

 

 ※1 コーティングとは、真空環境でプラズマを利用して硬質素材の薄膜を生成する技術。

    刃先にコーティング加工を施すことによって、刃先超硬チップの耐摩耗性を向上させて、鋸刃の長寿命化を実現。

 ※2 環境負荷低減製品とは、従来製品より刃先を薄く設計し、被削材料の歩留まりの向上及び切断時電気使用量を削減。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 為替相場の変動によるリスク

当社グループは、グローバルな事業拡大に伴い、ドル・ユーロ・元など円以外の取引通貨が増えております。これらの通貨の為替相場の変動は売上高や利益等の損益に影響を与えます。また、海外における資産や負債の価値は、財務諸表上で日本円に換算されるため、為替相場の変動の結果、換算差による影響が生じます。従って為替相場の変動は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 価格競争のリスク

当社グループは、グローバルに事業活動を展開しておりますが、近年は価格による差別化が競争優位を確保する主要な要因になっており、日本、中国、アジア及び欧米等で競合する同業他社との価格競争が激化しております。当社グループでは、こうした価格競争に対して、継続的なコストダウンや収益性の向上に努めておりますが、市場からの価格引き下げ圧力は一段と強まっております。さらに原材料価格・エネルギーコスト及び労務費の高騰に加え、米国トランプ政権の関税政策の影響もあり、これらによる価格動向が当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 海外進出に内在するリスク

当社グループの事業活動は、国内はもとより、広く海外のマーケットに展開しております。こうした海外市場への事業進出には、以下に掲げるようなリスクが内在しており、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

① 進出先における予期しない法律又は規制の変更

② 進出先における政治体制の変化

③ 進出先における経済環境の変化

④ 進出先における人材の採用と確保

⑤ 進出先における伝染病の蔓延等による事業活動停止等の可能性

⑥ テロ、戦争その他の要因による社会的混乱

(4) 自然災害等のリスク

当社グループでは、地震などの自然災害、火災などの事故、又は国内外におけるテロ等、当社グループのコントロールの及ばない事由により、生産拠点や設備が損壊した場合、あるいは電力・水道・ガスなどの供給停止、さらには国内外の物流の停滞が発生した場合には、操業が中断され、生産及び出荷の遅延を招く可能性があります。これにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(5) OEM顧客への依存リスク

当社グループは、住宅資材用チップソー等を中心にOEM顧客へ販売しております。OEM製品の売上は、その顧客企業の経営成績や財政状態、事業戦略などにより大きな影響を受けます。また、OEM顧客からの価格引き下げの要請や調達方針の変化等は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(6) 感染症のリスク

当社グループは、各種感染症に対して、従業員・家族・関係者の生命と安全の確保を最優先にしながら、事業損失の最小化に努めております。しかし、従業員の感染が多数及び深刻化した場合には、ロックダウン等による操業の一時停止やサプライチェーンの混乱、顧客企業の事業活動の停止や縮小による売上等の減少により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(7) 人材の確保のリスク

当社グループは、持続的に事業を発展させるため、生産、営業、開発、財務等それぞれの分野で、専門知識に精通した人材やマネジメント能力に優れた人材を確保し、育成していくことが必要となります。また、グローバルに事業活動を展開していくうえで、国内外を結ぶ語学や情報に精通した人材を確保・育成する必要もあります。これらの人材の安定的な確保・育成ができない場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(8) 情報システムのリスク

当社グループは、セキュリティ対策や情報管理を徹底しておりますが、それらを凌駕するコンピュータウイルスやサイバー攻撃等によりシステム運営上の支障の発生、重要情報・顧客情報等の漏洩、データの破壊・改ざん等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(9) 品質のリスク

当社グループは、品質管理基準に基づいて生産活動を行い、品質の維持・向上に努めておりますが、予期し得ない不具合が発生した場合、顧客からの信頼を損ない、ブランド価値や競争力に影響を及ぼす可能性があります。さらに製品回収や賠償対応により、多額の費用が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(10) 原材料調達のリスク

当社グループは、原材料等を複数の外部供給先から購入しておりますが、これらの調達において、供給先の操業停止又は供給能力の制約などにより、必要な原材料の調達ができなくなった場合、もしくは原材料価格の高騰により生産コストが上昇した場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(11) 技術革新のリスク

切断技術の進歩や変化により、既存の製品やサービスが陳腐化してしまう可能性があります。こうした技術革新の動向が当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 固定資産の減損のリスク

当社グループでは減損会計を適用しておりますが、保有資産について実質的価値の下落や収益性の低下等により減損処理が必要となった場合、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、米国では、生産活動は活発化するも個人消費が減少し、景気を下押ししています。欧州では、インフレ率は低下するも消費マインドは悪化しており、減速傾向にあります。中国では、内需主導で持ち直しが見られるものの、外需の低迷により持続的な回復が見込めない状況です。

わが国経済は、一部で足踏みするも好調なインバウンド需要に支えられて、緩やかながら回復が続いています。

このような状況下、当社グループにおきましては、中期経営計画(2024年度~2026年度)の初年度であり、掲げた重点戦略である「環境負荷の低減に寄与する新製品の開発」、「既存技術の向上」等を推し進めるとともに、販売活動の強化に取り組んでまいりました。また、住宅資材用チップソーの需要回復が堅調で、当連結会計年度における売上高は、13,131百万円(前年同期比10.0%増)となりました。利益面では、受注増加により海外工場の稼働率が上昇するとともに、生産設備の自動・省人化の推進により生産効率が向上したことから、営業利益は1,826百万円(前年同期比47.1%増)、経常利益は2,099百万円(前年同期比20.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,506百万円(前年同期比22.8%増)となりました。

なお、当連結会計年度より、規模が拡大するなど重要性が増したインドの子会社「TENRYU SAW INDIA PRIVATE LIMITED」を連結の範囲に含めており、セグメントは「アジア」であります。

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 日本

住宅資材用チップソーの販売好調を主因に、売上高は10,430百万円(前年同期比7.0%増)、セグメント利益(営業利益)は、原材料の高騰や人件費などの経費増加を主因に、747百万円(前年同期比1.2%減)となりました。

 中国

住宅資材用チップソーの受注増加により、売上高は4,633百万円(前年同期比31.5%増)、セグメント利益(営業利益)は、工場稼働率の向上が寄与し、664百万円(前年同期比215.2%増)となりました。

 アジア

中国と同様に、住宅資材用チップソーの受注増加により、売上高は2,100百万円(前年同期比83.4%増)、セグメント利益(営業利益)は、工場稼働率の向上が寄与し、223百万円(前年同期比369.6%増)となりました。

 アメリカ

金属用・住宅資材用チップソーともに販売が好調に推移し、売上高は1,694百万円(前年同期比12.3%増)、セグメント利益(営業利益)は、円安効果や人件費などの経費削減により196百万円(前年同期比47.0%増)となりました。

 ヨーロッパ

金属用・製材木工用チップソーの販売が減少し、売上高は714百万円(前年同期比11.8%減)、セグメント利益(営業利益)は、人件費などの経費増加により、39百万円(前年同期比60.3%減)となりました。

 

 

流動資産は、前連結会計年度に比べ4.5%増加し、20,398百万円となりました。主な要因は、「現金及び預金」が661百万円、「有価証券」が499百万円増加したことなどによるものです。

固定資産は、前連結会計年度に比べ8.3%増加し、19,607百万円となりました。主な要因は、「投資有価証券」が1,580百万円増加したことなどによるものです。

この結果、資産合計は前連結会計年度に比べ6.3%増加し、40,006百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度に比べ22.1%減少し、1,407百万円となりました。主な要因は、「支払手形及び買掛金」が154百万円、「その他」に含まれている「未払金」が219百万円減少したことなどによるものです。

固定負債は、前連結会計年度に比べ16.1%増加し、1,831百万円となりました。主な要因は、「繰延税金負債」が235百万円増加したことなどによるものです。

この結果、負債合計は前連結会計年度に比べ4.3%減少し、3,239百万円となりました。

純資産合計は、前連結会計年度に比べ7.4%増加し、36,767百万円となりました。主な要因は、「利益剰余金」が1,106百万円、「為替換算調整勘定」が1,323百万円増加したことなどによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローでは、税金等調整前当期純利益の計上などにより、2,496百万円のキャッシュを得ました。(前連結会計年度は、1,188百万円を得ました。)

投資活動によるキャッシュ・フローでは、投資有価証券の取得による支出などにより、1,281百万円のキャッシュを使用しました。(前連結会計年度は、1,174百万円を使用しました。)

財務活動によるキャッシュ・フローでは、配当金の支払いなどにより、831百万円のキャッシュを使用しました。(前連結会計年度は、597百万円を使用しました。)

以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、8,795百万円(前年同期比11.5%増)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

日本

4,172,882

△2.6

中国

5,268,200

20.7

アジア

1,421,859

30.5

アメリカ

ヨーロッパ

合計

10,862,942

11.6

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記金額は、平均販売価格によっております。

 

b. 受注実績

セグメントの名称

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

日本

8,435,805

1.1

1,676,794

16.3

中国

1,667,336

61.5

483,780

26.5

アジア

970,220

136.5

84,982

13.9

アメリカ

1,858,941

16.8

313,399

119.6

ヨーロッパ

659,925

△13.5

314,760

△14.5

合計

13,592,229

11.9

2,873,716

19.1

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。「アジア」の受注高は、重要性が増したTENRYU SAW INDIA PRIVATE LIMITEDを連結の範囲に含めたため増加しております。また、「アメリカ」の受注残高は、流通在庫の調整の影響により減少していた受注が回復したことにより増加しております。

 

 

c. 販売実績

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

日本

8,200,982

0.8

中国

1,566,043

40.9

アジア

962,707

159.1

アメリカ

1,688,230

12.0

ヨーロッパ

713,295

△11.9

合計

13,131,261

10.0

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。「アジア」の販売実績は、重要性が増したTENRYU SAW INDIA PRIVATE LIMITEDを連結の範囲に含めたため増加しております。

3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱マキタ

2,121,981

17.8

2,666,222

20.3

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高・営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度を上回る結果となりました。なお、セグメント別の当連結会計年度の経営成績等は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

a. 売上高

売上高は、住宅資材用チップソーの需要回復が堅調のため、前連結会計年度に比べ10.0%増の13,131百万円となりました。

b. 売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価は、8,548百万円で、受注増加により海外工場の稼働率が上昇するとともに、生産設備の自動・省人化の推進により生産効率が向上したことから、売上原価率は65.1%となり、前連結会計年度に比べ2.8ポイントの減少となりました。

販売費及び一般管理費は、2,755百万円で、前連結会計年度に比べて6.5%増加したものの売上高の増加に伴い対売上高比率は21.0%となり、前連結会計年度に比べ0.7ポイントの減少となりました。

その結果、営業利益は1,826百万円で連結売上高営業利益率は13.9%となりました。

c. 営業外損益

営業外損益は、前連結会計年度に比べ223百万円(純額)の減少となりました。主な要因は、前連結会計年度では為替差益を計上していましたが、当連結会計年度では為替差損の計上となったことなどによるものです。

d. 特別損益

特別損益は、前連結会計年度に比べ37百万円(純額)の増加となりました。主な要因は、固定資産売却益を計上したことなどによるものです。

e. 親会社株主に帰属する当期純利益

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ22.8%増の1,506百万円となりました。

 

 

当社グループは、中期経営計画(2024年度~2026年度)において、下記の指標等を主要な目標として取り組んでおり、2024年度の実績及び各年度の目標は記載のとおりです。

 

2024年度実績

2024年度目標

達成率(%)

2025年度目標

2026年度目標

売上高(百万円)

13,131

13,000

101.0

13,800

14,000

営業利益(百万円)

1,826

1,630

112.1

1,830

2,100

営業利益率(%)

13.9

12.5

111.2

13.3

15.0

ROE(%)

4.2

3.8

110.5

4.1

4.7

PBR(倍)

0.47

0.49

95.9

0.58

0.62

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

b. 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。当連結会計年度における運転資金及び設備投資資金等は主として自己資金をもって充当しております。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度は、技術力の持続的な向上と技術領域ごとの専門性をより高めるために人事異動を含めた研究開発体制の強化を図り、環境負荷の低減を意識した、より効率的で長寿命化を目指した製品開発に取り組んでまいりました。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は226百万円です。当社グループの研究開発活動をセグメントで示すと「日本」であります。

① 住宅資材用チップソー

従来品よりも刃先の厚さを薄くすることで歩留まりを向上させ、さらに刃先材種の最適化を図ることにより長寿命かつ高性能な製品を開発いたしました。

② 金属用チップソー

刃先部分の表面処理技術の高度化などにより、刃先の耐摩耗性及び耐熱性が向上し、一層の長寿命化を実現いたしました。

③ 製材・木工用チップソー

新規加工技術を導入し、研究を重ねることで、付加価値の高い窯業向けダイヤモンドチップ製品を開発いたしました。