第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社は、わが社の方針「常に新しい技術を生み出し、私達が心から誇れ、お得意が安心して販売でき、使用者にいつまでも愛される、よい商品をつくる」を社是として全ての活動の基本方針としております。

 

(2) 経営戦略等

 中長期的な経営戦略といたしましては、厳しい競争環境が継続するなか、当社の中核事業であります石油暖房機器事業及び加湿器事業においては専門メーカーゆえに経営資源を集中投下できたことにより着実に成長を続け、石油ファンヒーター及び加湿器において確固たる地位を維持してまいりました。石油暖房機器事業及び加湿器事業は冬季における天候や気温によって需要が増減し、売上総利益や営業活動によるキャッシュ・フローが大きく影響を受けますので、需要動向をタイムリーに生産計画に反映させることで効率的な経営に取り組んでおります。また、高付加価値機種の売上高構成比率を高めることで、さらなる収益の向上に努めております。

 さらに、継続した成長のため研究開発部門を強化し、石油暖房機器及び加湿器で培った燃焼技術・暖房技術・気流制御技術等のコア技術を進化させることで、新規分野での商品開発に取り組むとともに、その商品群を育成してまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、目標とする経営指標といたしましては、収益性と経営効率の観点から売上高経常利益率10%以上の確保を経営目標としております。

 

(4) 経営環境

 当社の主力商品であります石油暖房機器は、普及率の向上により買い替え需要が主となっており、市場全体の拡大を見込むことは困難であります。また、暖房機器は石油以外に電気やガスと多様化しており、業界間競争は激化すると考えております。

 雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって緩やかな回復が続くことが期待されるものの、通商政策などアメリカの政策動向、金融資本市場の変動等により先行き不透明な状況が続くものと想定されます。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 現状の環境のもと、石油暖房機器の市場をリードする商品の地位を確実なものとし、同時に高収益体質への変革を進めていくこと、当社の環境機器に位置づけられる加湿器のシェアと収益性を向上すること、及び新規分野で商品開発を行うとともに、その商品群を育成することが企業存続のための大きな課題と認識しております。

 また、賃上げや原材料の値上がりなどを背景とした国内の物価上昇の影響が懸念されるため、販売価格の改定を進めるとともに、継続的なコスト削減と最適な生産体制の構築に取り組んでまいります。

 これらの課題に対しまして当社は、地球環境への負荷の低減を心がけ、「お客様重視」「製品安全の確保」を基本とした他社にはない商品を開発、製造し、積極的に営業を行ってまいります。また、お客様に安心して使用していただけるようにアフターサービス体制の充実を図ってまいります。

 これらの方針のもと、環境面におきましては、ISO14001の規格に基づき当社の環境方針を定めて、事業活動の全ての領域で環境に与える影響を認識し、環境負荷の低減と汚染の予防に努める活動、商品本体の環境負荷物質の問題について継続的に取り組んでまいります。

 品質・安全面におきましては、仕入先を含めた生産活動における品質管理の強化とともに、市場における品質情報の収集・分析体制を強化して、関連部署による情報の評価・検討の迅速な対応により品質と安全性の向上を継続的に目指しております。

 商品開発については、お客様が求める商品、好まれるデザイン、機能や価格等の要望を的確に把握して、お客様第一の商品作りを継続し、営業面におきましては販売店との一層の関係強化を進め、プロモーションの強化等とともに営業提案を行い、高機能商品のウエイトを高めてまいります。

 物流面におきましては、取扱店の納期短縮の要請に応えるため情報共有化をはかり、配送体制を強化して短期間に集中する出荷業務に対して、迅速かつ効率的に対応することで販売機会の損失低減に努めております。

 

 サービス面ではアフターサービスの迅速化と質の向上をはかり、お客様満足度向上のための活動を継続的に展開することで信頼されるブランドの確立、リピーター作りを目指してまいります。

 また、ITを活用した社内外のネットワークを構築し、情報の一元化と共有化をはかることで、経営環境の変化に対し迅速に対応するための業務体制強化に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの概要

①サステナビリティに関する基本的な考え方

・基本方針

 当社は、社会全体の発展があってこそ企業が発展することができるという考えのもと、持続可能性を巡る課題への対応を経営における重要なテーマとして位置付けております。

 将来世代が安心して暮らせる社会を作るという普遍的な使命を実践し、社会の一員として存続、発展していくため、従業員全員で方針の実現に取り組んでまいります。

 

1.お客様

・経営理念「わが社の方針」に基づき、安全かつ安心できる高品質の商品とサービスの提供に努めます。

・商品の安全で正しい使い方をわかりやすく周知するよう努めます。

 

2.従業員

・従業員の基本的人権を尊重し、不合理な一切の差別を排除します。

・人材育成や能力開発の機会を提供し、また働きやすい職場環境づくりと福利厚生に関する諸制度の充実に努めます。

 

3.取引先

・関連法令及び健全な商慣習を遵守し、また高い倫理観に基づいて行動し、取引先と対等で公正な取引を行います。

 

4.地球環境

・環境関連法令を遵守し、すべての事業において環境負担低減の取り組みを推進します。

・従業員一人ひとりが資源の有効利用、廃棄物の再資源化、省エネルギー等に積極的に取り組みます。

 

5.地域社会

・地域行事への参加や工場見学等を行い、地域社会への情報開示と双方向のコミュニケーションにより地域の人々との信頼関係を育みます。

・企業活動により地域社会に雇用の場を創出します。

 

6.株主・投資家

・公正かつタイムリーな企業情報開示、及び積極的なIR活動に取り組みます。

 

②ガバナンス

 当社は、上記の方針が遵守されているかを管理・監督するための機能として、吉井久夫、吉井唯、野口武嗣、海保雅裕の取締役(監査等委員である取締役を除く。)4名で構成する「経営会議」を、リスク認識・対策検討を専管する組織として毎月1回開催し、その下部組織として「リスク管理委員会」「システム推進委員会」「品質保証委員会」「環境管理委員会」「安全衛生委員会」を設置し、リスク管理活動を推進しております。

 詳細については、4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要「③企業統治に関するその他の事項」をご参照ください。

 

③リスク管理

 当社の「経営会議」の下部組織において、「リスク管理委員会」にて当社を取り巻く内部及び外部環境に対するリスクと機会について、「システム推進委員会」にて情報セキュリティ及びサイバーセキュリティ対策の推進について、「品質保証委員会」にて製品の安全と品質の維持、製品不具合の未然防止について、「環境管理委員会」にて省資源・省エネルギーを目的として資源の再利用やエネルギー及びエネルギー資源の使用量等について、「安全衛生委員会」にて従業員の健康と職場環境等のリスクと機会について、それぞれ識別・評価しております。

 詳細については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

(2)気候変動について

①ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスにつきましては、(1)サステナビリティの概要「①サステナビリティに関する基本的な考え方」をご参照ください。

 

②指標及び目標

 当社では、CO₂の排出量を指標としており、その推移は以下のとおりであります。目標については今後、検討してまいります。

 当事業年度におきましては、空調設備の一部を灯油式ヒートポンプ空調(KHP)から電気式ヒートポンプ空調(EHP)へ交換し、CO₂の排出量を削減いたしました。

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

前期比

Scope1(t-CO₂)

923

917

875

95.4%

Scope2(t-CO₂)

1,980

1,918

1,467

76.5%

 

 

(3)人的資本について

①戦略

 当社では、社員が重要な経営資本であるという認識のもと、社員一人ひとりが経営理念「わが社の方針」を実現できる人材となるべく、人材育成に取り組んでいます。社員が自らの能力を充分に発揮でき、また潜在的可能性を発掘できる教育研修の体制を整備し、人材育成や能力開発の機会を提供してまいります。

 また社員一人ひとりが自分らしく活躍するためには、安心して働ける環境が必要と考え、公正かつ客観的な人事考課・処遇を行います。加えて、安全衛生やメンタルヘルスに配慮した職場環境づくりや、社員それぞれのライフイベントに対応した福利厚生に関する諸制度の充実に努めます。

 

②指標及び目標

 当社は、上記の戦略に基づき、①平均年間給与、②離職率、③障がい者雇用率、④女性の採用比率・育児休業取得率・女性の管理職比率を指標とし、それぞれ目標と実績を管理しております。詳細は以下のとおりです。

 

イ.平均年間給与

 当社は従業員の平均年間給与を指標の一つとしており、その推移は以下のとおりであります。目標については今後、検討してまいります。なお、( )内の数字は前期比であります。

 

2018年

3月期

2019年

3月期

2020年

3月期

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

平均年間給与

(千円)

5,602

(+279)

5,848

(+246)

5,582

(△265)

5,821

(+238)

6,040

(+219)

6,118

(+77)

6,156

(+38)

6,321

(+165)

(注)1.当事業年度より、平均年間給与は、2024年4月1日から2025年3月31日までの全期間において、給与等の支給を受けた従業員に対する平均年間給与額(賞与含む)となります。嘱託契約の従業員の給与等は含まれておりません。

2.2018年3月期~2024年3月期の数字につきましても、同様の基準にて再集計し、開示しております。

 

ロ.離職率

 当社は安心して働ける環境づくりを推進しており、自己都合退職者の離職率をモニタリングしております。その推移は以下のとおりであります。

 

2018年

3月期

2019年

3月期

2020年

3月期

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

自己都合退職者の退職率

2.0

1.8

1.6

1.6

1.0

1.4

3.7

2.1

 

ハ.障がい者雇用率(6月1日時点)

 当社は障がい者雇用率を指標の一つとしており、法定雇用率以上の障がい者雇用の遵守だけではなく、それ以上の障がい者雇用を行っております。それぞれの推移は以下のとおりであります。

 

2018年

3月期

2019年

3月期

2020年

3月期

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

障がい者雇用率

2.7

2.7

2.7

3.2

3.3

3.0

3.1

3.0

法定雇用率

2.0

2.2

2.2

2.2

2.3

2.3

2.3

2.5

(注)「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭和35年法律第123号)の規定に基づき算出したものであります。なお、当社の障がい者雇用率の小数第一位未満は切捨てております。

 

ニ.女性の採用比率・育児休業取得率・女性の管理職比率

 当社は従業員の男女比の差異を減少させることを目標としており、それぞれの推移は以下のとおりであります。

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

新卒採用  女性比率

 16.7

 22.2

 50.0

経験者採用 女性比率

  -

  -

  -

女性育児休業取得率 ()(注)1、2

 87.5

 83.3

100.0

男性育児休業取得率 ()(注)2

 19.0

 37.5

 75.0

女性管理職比率   ()(注)3

  7.2

  7.6

  7.8

(注)1.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)に基づき算出したものであり、3月31日時点では産前産後休業の者は育児休業取得者に算入されませんが、各事業年度において、その後に育児休業を100%取得しております。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1) 暖房機器への依存度が高いことについて

 当社は、暖房機器への依存度が高く、売上高の6割以上を占めております。このため、冬季における天候や気温の影響を受ける可能性があります。また、石油暖房機器市場は、長期的に見て縮小していく可能性があります。

 当社といたしましては、石油暖房機器の収益性を向上させるとともに、暖房機器以外の売上高構成比を高めることで、天候による業績の変動や石油暖房機器需要の低下による影響を少なくするよう努めております。

 最近2期間の主要品目別の売上高及びその構成比は、次のとおりであります。

区分

前事業年度

当事業年度

売上高

(百万円)

構成比

(%)

売上高

(百万円)

構成比

(%)

暖房機器(石油暖房機器、電気暖房機器、ガス暖房機器)

14,420

73.4

13,556

68.1

環境機器(加湿器、空気清浄機、燃料電池ユニット)

3,928

20.0

5,052

25.4

その他(部品、コーヒー機器他)

1,301

6.6

1,294

6.5

19,650

100.0

19,902

100.0

 

(2) 業績が下半期に偏重していることについて

 当社は、季節商品である暖房機器が主力であるため、売上高は第3四半期(10月~12月)に集中する傾向にあります。また、第4四半期(1月~3月)は、3月に返品が集中し、重要な返品処理は決算日までに行うこととしております。

 当社といたしましては、2019年10月より「燃料電池ユニット(貯湯タンク内蔵)」の受託製造、並びに2022年10月より空気清浄機、及び2023年4月よりコーヒー豆焙煎機の新モデルの製造・販売を開始し、売上高が特定期間に集中するリスクの低減を図っております。

 最近2期間の各四半期の売上高、営業利益及びその構成比は、次のとおりであります。

 

前事業年度

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

売上高(百万円)

1,301

6,383

10,659

1,305

19,650

(構成比%)

(6.6)

(32.5)

(54.3)

(6.6)

(100.0)

営業利益又は営業損失(△)(百万円)

△514

1,002

1,470

△858

1,100

(構成比%)

(△46.8)

(91.1)

(133.7)

(△78.0)

(100.0)

 

 

当事業年度

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

売上高(百万円)

1,163

5,381

10,992

2,365

19,902

(構成比%)

(5.9)

(27.0)

(55.2)

(11.9)

(100.0)

営業利益又は営業損失(△)(百万円)

△531

635

1,774

△497

1,381

(構成比%)

(△38.5)

(46.0)

(128.5)

(△36.0)

(100.0)

 

 

(3) 原材料価格等の高騰について

 当社は、複数の仕入先より原材料を購入しており、原材料の安定的な確保と最適な価格での調達に努めております。

 エネルギー価格、原材料費及び労務費等が著しく上昇した場合には、仕入先との価格交渉、生産性向上による原価低減及び可能な限りの商品価格の改定により対処してまいりますが、価格高騰が長期化しコストアップ分を吸収しきれない場合は、当社業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティについて

 当社は、事業活動を通してお客様の個人情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報を保有しています。当社では、情報セキュリティ基本方針を定めるとともに、社内にシステム推進委員会を設置して、これらの情報に対するシステムのセキュリティ対策やリスク管理体制の強化を推進しております。

 しかしながら、万一これらの情報が外部に漏えいあるいは不正使用された場合、重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社の信用低下や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5) サイバーセキュリティについて

 当社はサイバーセキュリティ対策を経営の重要課題と認識し、社内にシステム推進委員会を設置して、継続的にサイバーセキュリティ対策を推進しています。このサイバーセキュリティ対策の推進状況につきましては、取締役会で報告を行っております。

 また、社内に担当部署を配置し、統合SOC(Security Operation Center)等による24時間365日の監視体制を整え、ウイルス解析、多層的防御等、レジリエンス態勢の強化に取り組んでおります。

 しかしながら、このような強化策が奏功せず、当社の想定を上回るサイバー攻撃や不正アクセス等により、重要データの破壊、改ざん、情報漏えい、システム停止等が生じた場合には、当社の信用低下や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 製品の品質について

 当社は、ISO9001の規格に基づき製品の品質管理を徹底しておりますが、市場において予期せぬ不具合が発生して製造物責任を問われることや商品回収に至る可能性があります。

 当社は製造物責任保険に加入し、万が一の際のリスクヘッジを行っておりますが、保険適用範囲を超える負担が発生した場合には、当社業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 災害による影響について

 当社の主力商品である石油暖房機器の生産拠点は1ヶ所であるため、火災、水害、地震等の災害により操業が停止する可能性があります。

 当社は石油暖房機器の生産を1年間継続して行い、需要期に向けて在庫を確保しており、また商品を全国の複数箇所の倉庫にストックしているため、操業停止が短期間の場合は注文に対応できますが、復旧に長期間を要した場合には出荷不能となり、当社業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8) 市場競争力について

 石油暖房機器市場は既に成熟した市場ではありますが、当社よりも事業規模の大きい企業も含めて数社が競合しており、価格や機能を含む様々な要素で競争しております。

 当社が技術的、あるいはその他の競争力を持つ商品において優位性を保てなくなった場合や、競合他社との競争による価格下落又は販売コストの上昇について効果的に予測し対応できない場合には、当社業績に影響を及ぼす可能性があります。

(9) 灯油の価格変動について

 石油暖房機器の燃料は灯油であるため、原油価格に連動して変動する灯油価格によって消費者の購買行動が変化する場合があり、当社業績は影響を受ける可能性があります。

(10) 受託製造について

 当社では、一部の製品において受託製造を行っております。委託元の販売状況等によって十分な受注が確保できない場合は、当社業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 減損会計について

 当社では、事業の用に供する不動産をはじめとする様々な資産を所有しております。こうした資産は時価の下落や、将来のキャッシュ・インフローの状況により、減損会計の適用を受ける可能性があり、当社業績に影響を及ぼす可能性があります。

(12) 有価証券の時価変動について

 当社では、売買を目的とした有価証券は保有しておりませんが、様々な理由により、売却可能な有価証券を保有しております。これらの有価証券のうち、時価を有するものについては、全て時価にて評価しておりますので、市場における時価の変動は当社業績に影響を及ぼす可能性があります。

(13) 退職給付債務について

 当社では、確定給付年金制度に関する会計基準に従い、一定の会計に基づいて資金を拠出しております。また、社内に年金資産運用委員会を設置して運用状況をモニタリングするとともに、運用委託先は日本版スチュワードシップ・コードを受け入れていることを条件として選定しております。

 株式や債券市場等の予測し得ない市況変動により制度資産の収益性が低下すれば、追加的な資金拠出と費用負担が必要になるリスクがあります。

(14) 知的財産権について

 当社は、特許権、商標権及びその他の知的財産権を保持しています。また、知的財産権の管理業務に専門の人員を配置し、知的財産権の強化を図っています。

 しかしながら、当社が知的財産権に関する争訟に巻き込まれた場合、当社業績に影響を及ぼす可能性があります。

(15) 未知の感染症について

 未知の感染症の蔓延による消費の低迷、国内外のサプライチェーンの混乱、従業員や取引先への感染等により事業活動に多大な影響を及ぼす可能性があります。その一方で、感染症対策として、加湿器の需要が増加する可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度(2024年4月1日~2025年3月31日)におけるわが国経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している状況となりました。

 先行きにつきましては、雇用・所得環境が改善する中で、緩やかな回復が続くことが期待される一方、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響や、アメリカの政策動向による影響などがわが国の景気を下押しするリスクとなっております。また、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある状況です。

 こうしたなかにあって当社は、市場や住環境の変化に対応した商品開発に取り組みました。また、需要に応えるための生産活動と在庫確保、販売チャネルの拡大に取り組みました。

 

 a. 財政状態

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ7億26百万円増加し、319億10百万円となりました。

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ1億19百万円減少し、39億70百万円となりました。

 当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ8億46百万円増加し、279億39百万円となりました。

 

 b. 経営成績

 当事業年度における業績は、売上高は199億2百万円(前期比1.3%増)、営業利益は13億81百万円(同25.6%増)、経常利益は15億72百万円(同21.5%増)、当期純利益は11億61百万円(同30.7%増)となりました。

 

 当社は住環境機器を製造・販売する事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績の記載を省略しております。なお、主要品目別の業績を示すと次のとおりであります。

 

<暖房機器>

 主力商品であります石油暖房機器では、日本国内の自社工場での生産による迅速な商品供給力と、安心して商品をお使いいただくための品質保証体制がお客様に評価されて業界内で確たる地位を築いております。

 当事業年度におきましては、上下にスライドするだけでファンフィルターの掃除ができる業界初のお手入れ機能「かんたんフィルタークリーナー」を搭載した機種を含む家庭用石油ファンヒーター全12タイプ27機種の商品を販売いたしました。

 また、電気暖房機器では、センサーで部屋の温度をチェックして室温を約18℃に自動でキープする「自動」+「エコ(eco)」運転モードを搭載したセラミックファンヒーターを含む2機種を販売し、脱衣所やキッチンなどスポット暖房の需要にお応えしてまいりました。

 当事業年度は、国内では今年2月に入って今期最強の寒波の到来となりましたが、12月の後半までは暖冬傾向が強く、家庭用石油ファンヒーターの販売が減少しました。また、海外への石油暖房機器の輸出も国内同様に暖冬の影響が大きく、販売は前期実績を下回りました。

 この結果、暖房機器の売上高は135億56百万円(前期比6.0%減)となりました。

 

<環境機器>

 加湿器では、50・55・60・65・70%で湿度設定ができる新機能「湿度設定5%刻み」を搭載した11機種を含む全9タイプ25機種の商品を販売いたしました。

 また、空気清浄機では、新たに台湾への輸出を開始したほか、運転開始から15分間は最大風量で運転し、その後は約60分に一度、強運転で気流を循環させることで浮遊花粉を捕集する「花粉」運転モードを搭載した機種を販売しております。

 当事業年度は、太平洋側を中心に空気が乾燥したことや、全国的にインフルエンザが流行したことにより加湿器の販売が好調に推移しました。また、空気清浄機は「がっちりマンデー!!」(TBSテレビ系列)で紹介された反響もあり、販売が前期実績を上回りました。さらに、燃料電池ユニットの販売が増加しました。

 この結果、環境機器の売上高は50億52百万円(前期比28.6%増)となりました。

 

<その他>

 その他では、4月に本体カラーを一新した焙煎機能付きコーヒーメーカーとコーヒー豆焙煎機を発売しました。

 当事業年度は、コーヒー機器及び加湿器のフィルターの販売が堅調に推移したものの、金型の販売が減少し、売上高は12億94百万円(前期比0.6%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ4億88百万円減少し、当事業年度末に100億86百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は28億21百万円(前事業年度末は1億11百万円)となりました。これは主に、税引前当期純利益15億69百万円、棚卸資産の減少額9億83百万円、減価償却費6億46百万円、売上債権の減少額3億59百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は29億54百万円(前事業年度末比230.6%増)となりました。これは主に、有価証券の取得による支出25億円、定期預金の預入による支出10億円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は3億56百万円(同0.1%増)となりました。これは主に、配当金の支払額3億55百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

 a. 生産実績

 当事業年度の生産実績を主要品目別に示すと、次のとおりであります。

区分

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

暖房機器(石油暖房機器、電気暖房機器、ガス暖房機器)(千円)

12,833,243

85.4

環境機器(加湿器、空気清浄機、燃料電池ユニット)(千円)

4,627,330

124.4

その他(部品、コーヒー機器他)(千円)

1,124,534

75.6

合計(千円)

18,585,108

91.9

(注)1.金額は平均販売価格で表示しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 b. 受注実績

 当社は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

 c. 販売実績

 当社は住環境機器を製造・販売する事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載を省略しております。なお、当事業年度の販売実績を主要品目別に示すと、次のとおりであります。

区分

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

暖房機器(石油暖房機器、電気暖房機器、ガス暖房機器)(千円)

13,556,032

94.0

環境機器(加湿器、空気清浄機、燃料電池ユニット)(千円)

5,052,336

128.6

その他(部品、コーヒー機器他)(千円)

1,294,295

99.4

合計(千円)

19,902,665

101.3

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱ケーズホールディングス

2,275,303

11.6

2,352,417

11.8

角田無線電機㈱

1,853,041

9.4

2,161,638

10.9

㈱ヤマダホールディングス

2,275,427

11.6

2,062,368

10.4

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 1)財政状態

 (資産合計)

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ7億26百万円増加の319億10百万円(前事業年度末は311億83百万円)となりました。

 流動資産は215億80百万円(前事業年度末比11億63百万円増)となりました。これは主に、製品が8億23百万円、現金及び預金が4億88百万円減少したものの、有価証券が30億円増加したことによるものであります。

 固定資産は103億29百万円(同4億36百万円減)となりました。これは主に、前払年金費用が1億71百万円増加したものの、投資有価証券が4億19百万円、建物が1億49百万円減少したことによるものであります。

 (負債合計)

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ1億19百万円減少の39億70百万円(前事業年度末は40億89百万円)となりました。

 流動負債は30億55百万円(同2億2百万円減)となりました。これは主に、預り金が3億93百万円減少したことによるものであります。

 固定負債は9億15百万円(同82百万円増)となりました。これは主に、役員退職慰労引当金が50百万円減少したものの、繰延税金負債が1億26百万円増加したことによるものであります。

 (純資産合計)

 当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ8億46百万円増加の279億39百万円(前事業年度末は270億93百万円)となりました。

 株主資本は270億74百万円(同8億5百万円増)となりました。これは主に、繰越利益剰余金が8億6百万円増加したことによるものであります。

 評価・換算差額等は8億65百万円(同41百万円増)となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金が44百万円増加したことによるものであります。

 

 2)経営成績

 (売上高)

 売上高は前事業年度に比較して2億51百万円増加し、199億2百万円(前期比1.3%増)となりました。これは主に需要期全般で太平洋側を中心に空気が乾燥したことや、全国的にインフルエンザが流行したことにより加湿器の販売が好調であったことによるものです。また燃料電池ユニットの販売が増加したことも影響いたしました。

 (売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)

 売上原価は141億64百万円と前事業年度に比べ62百万円減少(同0.4%減)となり、売上原価率は前事業年度の72.4%から当事業年度は71.2%と1.2ポイント減少いたしました。

 販売費及び一般管理費は前事業年度に比較して32百万円増加いたしました。これは主に研究開発費の増加によるもので、販売費及び一般管理費は43億56百万円(同0.8%増)となりました。

 以上の結果、営業利益は前事業年度に比較して2億81百万円増加し13億81百万円(同25.6%増)となりました。

 (営業外損益、経常利益)

 営業外収益は前事業年度に比較して1百万円減少いたしました。これは主に作業屑収入の減少によるもので、営業外収益は1億92百万円(同0.6%減)となりました。

 営業外費用は前事業年度に比較して2百万円増加いたしました。これは主に雑損失の増加によるもので、営業外費用は2百万円(前事業年度は0百万円)となりました。

 以上の結果、経常利益は前事業年度に比較して2億77百万円増加し15億72百万円(同21.5%増)となりました。

 (特別損益、当期純利益)

 特別利益は前事業年度に比較して5百万円増加いたしました。これは主に投資有価証券売却益の増加によるもので、特別利益は5百万円(前事業年度に特別利益はありません)となりました。

 特別損失は前事業年度に比較して31百万円減少いたしました。これは固定資産除却損の減少によるもので、特別損失は7百万円(同80.5%減)となりました。

 以上の結果、当期純利益は前事業年度に比較して2億72百万円増加し11億61百万円(同30.7%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、運転資金及び設備資金は、内部資金又は借入により資金調達することにしております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 この財務諸表の作成にあたりまして、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 重要な会計方針」に記載のとおり重要な資産の評価基準及び評価方法、重要な引当金の計上基準等においての継続性、網羅性、厳格性を重視して計上しております。

 

5【重要な契約等】

 業務提携契約

相手先の名称

契約内容

契約締結日

契約期間

株式会社ノーリツ

ガスファンヒーターの製造受託

2017年4月27日

 1年間

 以後1年間の自動更新

京セラ株式会社

燃料電池システムの製造受託

2019年4月1日

 1年間

 以後1年間の自動更新

 

6【研究開発活動】

当社の研究開発活動は、創業当時からの経営方針である「常に新しい技術を生み出し、私達が心から誇れ、お得意が安心して販売でき、使用者にいつまでも愛される、よい商品をつくる」のもと、お客様の要望に応え、安全に安心して愛用していただける商品を提供し続けることを基本とし、主として暖房機器、加湿器、燃料電池、その他新規商品についての研究開発を推進しております。

石油暖房機につきましては、更なる利便性性向上を追求。1週間に1度、上下にスライドすることで、簡単にファンフィルターのお掃除ができる「かんたんフィルタークリーナー機能」を搭載した高付加価値モデル「SGX、GRタイプ」、自社運営のECサイト「ダイニチWebShop」向けのデザイン性に優れた新商品FX-72ERなど、全12タイプ27機種のラインナップを構築。様々なニーズを満たせる商品供給を可能といたしました

加湿器につきましては、最上位モデル「LXタイプ」を含む5タイプ11機種に「湿度設定5%刻み」機能を搭載。お客様の多様化するニーズや物価・電気代高騰による節約意識に合わせ、より細やかな湿度設定ができるようになりました。

空気清浄機では、近年PM2.5などの大気汚染対策をはじめとした空気質への意識が高まっている台湾向けに、現地代理店より強い要望を受け、台湾仕様「ハイブリッド式空気清浄機CL-HB919T」を輸出しました。

また、コーヒー機器では『カフェプロ』2モデルの本体カラーを、カフェにも家庭にも馴染むマットブラックに一新。昨年リリースのMR-F60Aと共にコーヒー関連事業の活性化に寄与しました。

燃料電池システムにつきましては、2019年より製造を行っている家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファームミニ・燃料電池システム(貯湯タンク内蔵)」の新型モデルを京セラ株式会社及びパーパス株式会社との共同で開発し、2023年1月より東京ガス株式会社を通して発売されております。新型モデルは、定格発電量は従来モデル同等の400Wを維持しつつ、定格発電効率50%(従来モデル比3ポイント増)を達成いたしました。これにより更なる省エネ効果が期待できます。また、本体重量を世界最軽量となる63kg(従来モデル比17kg減)に抑えることができたことに加え、設置に必要なスペースの削減も実現したことで、従来置くことができなかった場所への設置が可能となり、幅広いユーザーに提案できるものとなっております。

これらと並行し、全商品におきまして消費者安全を最優先とした信頼性・安全性の向上活動に継続して取り組んでおります。

当社は顧客志向に基づく研究開発を推進すると共に、環境を考慮した社会志向の考えも加味しながら、今後も研究開発を進める所存であります。

なお、当事業年度における研究開発費は769百万円であります。