第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 企業理念

 当社グループは1933年に「加藤発條製作所」として創業し、自動車や電気通信向けの精密金属ばねの生産からスタートしました。1969年には樹脂製の自動車用ファスナー類の開発・製造に事業拡大、1990年代には医療機器分野に進出する等、金属と樹脂の両方に精通した独自の製品開発と製造技術を強みに、新たな製品開発と販路拡大により成長を続け、広く産業や社会に貢献してまいりました。

 当社グループがこの先も持続的に成長・発展していくため、創業90周年を機に新しい企業理念「パイオラックス ウェイ」を策定しました。これまで金属や樹脂をはじめ、あらゆる素材の「弾性(Elasticity)」を追求した製品の開発・販売を行ってきましたが、それに加えて人や社会、サステナビリティなどさまざまな可能性を追求し、新しい価値を創造することで、すべてのステークホルダーの期待に応えるとともに飛躍を目指してまいります。当社が永年培ってきたコアコンピテンスである技術の力で、人・モノ・社会をつなぎ、より豊かで安全快適な未来を実現することを経営の基本方針としております。

 

 

<パイオラックスグループ企業理念「パイオラックス ウェイ」>

[パーパス]人と社会を技術でつなぎ、心弾む未来を実現する

[ビジョン]新しい価値の創造 -弾性を創造するパイオニアからその先へ-

[バリュー]1.パイオニアを志し、挑戦と変化を続ける

2.最良を目指し、熱意と信頼を以て協調する

3.創造性を尊び、自由にしなやかに発想する

 

 <社是> 至誠・協力・奉仕

 

 

(2) 経営環境

 当社の主要な取引先である自動車業界においては、CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応の加速、部品メーカー同士のコラボレーション、異業種の自動車業界への参入など、100年に一度の大変革期と言われております。また、インフレ率の上昇や金利の引き上げ、米国追加関税政策や地域紛争等の地政学リスクが及ぼす世界情勢への影響が懸念されております。原材料や電力料をはじめとした各種エネルギー価格の高騰や中国経済の成長の鈍化等の要因から不透明感が継続しております。

 

 

(3) 経営方針

 これまで当社は、自動車の生産台数の増加と共に成長してまいりました。ファスナー部品、燃料系部品、駆動系部品、開閉機構部品の4つの商品群からなる事業部体制の下、これらの商品に注力した経営を行ってまいりました。しかし、自動車を構成する部品の変化、生産台数の伸びの鈍化、開発スピードの加速、そして様々なコストの増加など、事業環境の変化に対応するため、自動車生産台数に頼らない経営方針へシフトいたします。

 

 

(4)対処すべき課題

 ①商品戦略

 当社の強みである技術と開発力を活かし、既存商品群の枠を超え、自動車市場の動向に追従した高付加価値製品の創出に取り組んでまいります。特に注力していく商品として、先進運転技術(ADAS)関連商品やバッテリー、eアクスル向けのバスバーなどがあり、新真岡工場(栃木県)を中心とした大型成形機の導入など、設備投資も積極的に進めてまいります。

 

 ②地域・顧客戦略

 地域別にメリハリをつけ、市場成長が期待できる地域へ積極的な投資を進めていきます。海外では、日系以外の海外自動車メーカーへの拡販を推進してまいります。米国では、生産体制見直しと製造現場における省人化の推進、中国では現地自動車関連メーカーの開発スピードに負けない体制づくり、特に成長が期待できるインドでは、生産能力増強のため、第2工場の建設を計画し、ADAS関連商品など付加価値の高い商品への参入を行ってまいります。

 

③組織改革

 当社は事業部の壁を超え、迅速で柔軟な事業展開ができる体制の構築を目指しております。その実現のため、これまでの4つの商品群からなるSBU(戦略的ビジネスユニット)制を廃止し、2025年4月から機能別の体制へ改編をすることとしました。経営環境が大きく変化する中、機能別の体制を敷くことにより、戦略立案と実行、意思決定の迅速化や適正なリソース配分の実現を加速させ、企業価値の向上と持続的な成長を目指してまいります。

 

④医療機器事業の展開

 子会社の㈱パイオラックス メディカル デバイスは、IVR(血管内治療)からスタートしましたが、消化器に使用する内視鏡治療、脳外科用の整形分野へと業容を拡大し、血管や管腔を利用し身体になるべく傷をつけずに治療する「低侵襲治療」に取り組んでおります。大学病院等との共同研究により、商品企画力・営業力の強化を図りつつ、高齢化社会のニーズを捉え、「人に優しい弾性材料」で作られた医療用具の開発・製造・販売を推進してまいります。

 

⑤サステナビリティに関する取組

 「人と社会を技術でつなぎ、心弾む未来を実現する」をパーパスに掲げ、利益を追求するだけでなく、当社のステークホルダーの方々と協力し、社会への貢献を目指しております。

 当社ではサステナビリティ課題の解決に向け、2030年に向けたビジョン「PIOLAX ESG Vision 2030」を掲げ、重点方策を定め、KPIに落とし込んで活動を継続しております。脱炭素社会と循環型社会を目指した企業活動、安心して働ける活気ある職場づくり、公正・公平な取引と信頼関係の向上、ガバナンス強化による安定した組織運営をESG Visionに掲げ、持続可能な社会の実現に向けた取組を、中長期的な視点で着実に実行してまいります。

 

⑥資本政策の見直し

 当社グループでは、資本効率を改善し、企業価値を向上させるために2024年11月に資本政策を大幅に見直しました。2025年3月期~2027年3月期の3ヵ年における主な取組は以下の3件です。

 

 1.3年間における累計自己株式取得300億円

 2.3年間における年間配当金92円以上、連結配当性向100%の継続

 3.㈱佐賀鉄工所との業務提携基本契約変更

 

 今後も資本効率を意識した経営を実践してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、気候変動への対応や人権尊重など、サステナビリティに関する課題への対応が重要な経営課題の1つであると考えております。これらの課題に対応していくため、サステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ方針を制定しております。本委員会ではサステナビリティやESG経営に関する方針検討、目標設定と進捗モニタリング等を行っております。詳細な取組については、毎年サステナビリティレポートを発行してステークホルダーの皆様に情報開示しております。財務的価値だけでなく、事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献していくことが、当社の中長期的な企業価値向上に資すると考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティに関する取組を審議するための機関として、「サステナビリティ委員会」を設置しております。本委員会は代表取締役を委員長とし、委員は取締役を中心に構成し、年に4回開催します。サステナビリティに関する全社的な方針及び目標の策定、具体的な施策については、本委員会で審議後、経営会議で経営戦略との関係性や整合性を協議し、最終的に取締役会で決定します。代表取締役は、経営会議での協議に参加するとともに、取締役会で決定した施策をグループ全体に対して執行します。サステナビリティ委員会の傘下に関連テーマ毎に分科会を設置し、機動的な活動を推進しております。

 

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サステナビリティ委員会の活動状況

 2024年度は年4回開催しました。

 主な議案は以下の通りです。

 ・ESG目標管理

 ・カーボンニュートラルへの取組と達成方策について

 ・サプライチェーンに対するカーボンニュートラル取組活動

 ・従業員エンゲージメント

 ・人権への取組

 ・サステナビリティレポートの発行

 ・行動規範ガイドブック制定

 ・ESG関連の外部評価

 

(2) 戦略及び目標と指標

 当社は、当社グループとステークホルダーにとっての8つの重要課題(マテリアリティ)を定め、それに基づきESGの観点から2030年に向けた目指すべき姿と重点活動項目をまとめたESGビジョン「PIOLAX ESG Vision

2030」を設定しております。事業活動の中でESGビジョンを実現することが、様々なステークホルダーの期待に応え、当社の信頼やブランド力の向上に繋がり、当社の持続的な成長に寄与していくと考えております。

 

<サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)>

(E) エネルギー、大気への排出、廃棄物

(S) 雇用、労働安全衛生、多様性・機会均等

(G) ガバナンス、コンプライアンス

 

<PIOLAX ESG Vision 2030>

 1) 脱炭素社会と循環型社会を目指した企業活動

 2) 安心して働ける活気ある職場づくり

 3) 公正・公平な取引と信頼関係の向上

 4) ガバナンス強化による安定した組織運営

 

(E) 環境 Environment

 環境対応については、ISO14001:2015の認証を取得し、全てのお客様及び環境法規制の要請に応える体制を築いております。当社の主要な事業である自動車関連事業は、気候変動に対する影響が特に大きいと認識しており、カーボンニュートラル実現に向けた取組を今後も強化してまいります。

 当社のカーボンニュートラルに向けた計画では、2019年比で2030年CO₂削減46%、2050年カーボンニュートラルをグループ全体で達成する目標を掲げています。(対象:Scope1、2)

 

①TCFD提言への取組

 2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言への賛同を表明し、TCFDに基づく情報を開示し、2023年3月には北米・中国の海外拠点を、2024年4月には医療機器事業を分析対象に追加し、情報を更新して開示いたしました。今後も気候変動に関連する事業リスクやビジネス機会についての情報開示を拡充してまいります。

 

 

TCFDに沿って抽出された主要なリスクと機会

(移行リスク)

 

 

調達関連

製造・物流関連

開発・販売関連

リスク

共通

炭素税の導入やエネルギー転換による原材料費・輸送費の高騰

製造工程の脱炭素化に係わる設備投資の増加

自動車

・環境未対応材料による市場逸失

・電動化進展による材料需要変化とコスト増加

・各国の環境規制への対応コスト増加

・カーボンニュートラル達成に向けたエネルギーコスト増加

・CASE進展による既存製品の受注減

・人口減少、MaaS進展による新車販売減少

医療

・材料規制による調達コスト増加

・資源循環対応によるコスト増加

化学物質削減への対応コスト増加

環境対応に伴う販売戦略の見直し

機会

自動車

北米・中国における原材料の地産地消によりコスト低減と安定調達

ファクトリーオートメーションによる生産性向上と脱炭素に向けた取り組み

・CASE対応製品の開発・販売に向けた顧客との共創活動の強化

・北米・中国における非日系OEMへの拡販強化とシェア拡大

医療

製造現場等の環境配慮シフトによる競争力向上

顧客ニーズに対応した環境配慮製品の開発・販売による競争力向上

対応策

自動車

・環境配慮原材料の採用

・地産地消化によるコスト削減

・脱炭素エネルギー源の購入

・真岡工場リニューアル

・省エネ徹底、設備更新

・CASE対応製品の開発・販売

・短期的なICE車、PHEV車需要への対応

医療

環境配慮製品に対応する原材料・資材メーカーの選定と確保

・再生可能エネルギーへの転換

・環境対応先行他社との共創活動

・環境配慮製品の開発・販売

・人体負荷軽減や手技標準化に寄与する高付加価値製品の開発

 

(物理リスク)

 

 

慢性リスク

急性リスク

リスク

共通

・気温上昇による空調コスト増加

・従業員の健康被害

・原材料・製品の品質悪化

・輸送プロセスの混乱によるサプライチェーン分断

・自然災害増加による工場・倉庫の操業停止・修繕コスト増加

・異常気象によるエネルギー供給の不安定化

対応策

共通

・工場や倉庫のレジリエンス強化に向けたインフラ整備

・熱マネジメントによる環境改善

・地産地消化の拡大による在庫コスト圧縮

・サプライチェーンの多極化、原材料の標準化

 

 

詳細は当社ホームページ掲載資料をご覧ください。

 https://www.piolax.co.jp/jp/csr/environment/environmental_tcfd/

 

②カーボンニュートラルに向けた取組

 当社は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けたロードマップを公表しております。2024年度から新たに海外子会社も対象に加え、グループ全体で取り組む体制に変更しております。カーボンニュートラル達成に向けて、真岡工場、富士工場、医療機器子会社に加えて、2024年度は国内物流拠点の電力をCOフリー電力に切り替えております。脱炭素社会と循環型社会を目指した積極的な活動を今後も展開してまいります。

 

 

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(CO₂削減目標と実績) ※2019年をベンチマークとした削減率

 

2022

2023

2024

2030

2050

目標

△10%

△13%

△17%

△46%

△100%

実績

△21.0%

△38.0%

-※

※2024年度実績につきましては、現在集約中です。

 

③その他の指標と実績

 その他の環境に関する目標と実績、活動内容はサステナビリティレポート内に掲載しております。

(P.20, 23-43)

https://www.piolax.co.jp/resources/pdf/csr/report_2024/PIOLAX_Sustainability_Report_2024_all_R2.pdf

 

(S) 社会 Social

 当社グループは、従業員の個性や多様性を尊重し、安全で働きやすく一人ひとりが能力を発揮できる職場環境づくりを目指しております。

 

①人権の尊重

 当社グループは「パイオラックスグループ 人権方針」を定めており、社会からの要請や国内外の法規制などに応じて適宜改訂し、都度、全グループ会社に通知します。また、人事担当取締役を統括責任者とする人権推進に向けた体制を整備し、グローバルで人権を尊重し、適正な労働環境の整備を推進しております。

 

②人的資本に関する取組

 当社グループでは、社員は企業を支える重要な基盤であると認識し、「人材」ではなく「人財」と捉えています。社員一人ひとりの成長を支援する「働きがいのある会社」と、多様な人財の多様な働き方を支援する「働きやすい会社」を目指し、社員が能力を発揮できる教育制度・環境の整備に取り組んでおります。

 

a.人財多様性の確保

 一人ひとりが個性を活かし、能力を発揮することが企業の成長と個人の幸福につながると考え、あらゆる雇用の場面において、人種・民族や出身国籍・宗教・性別等を理由とした差別を行いません。多様な人財が重要なパートナーとして尊重し合い、活躍できる職場づくりに努め、ダイバーシティに対する積極的な取組を進めてまいります。

(女性活躍推進)

 当社では、女性活躍推進法に基づき、女性が活躍できる環境づくりに取り組んでおります。育児関連制度の見直しや上司・同僚の理解を高めるための施策等を進めており、えるぼし 最高位(3段階目)を取得しております。また、女性の経営参画を企図し、管理職に占める女性の割合を2030年度末に約20%とする目標を掲げて取組を進めてまいります。

)

 

2022年度

2023年度

2024年度

採用した従業員に占める女性の割合

21.4

22.2

27.3

従業員に占める女性の割合

19.6

20.2

20.8

管理職に占める女性の割合

3.9

5.2

6.3

役員に占める女性の割合

20.0

20.0

22.2

男性育児休業取得率

55.6

60.0

50.0

(注)1.上表は株式会社パイオラックス(以下、当社)のデータです。

2.従業員は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む)であり臨時従業員(契約社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイト等)は含みません。

 

b.人財育成

 2022年に「パイオラックスグループ 人財基本方針」を制定しました。当社の目指すべき人物像を定義し、継続的に育成していくことで、当社グループの成長と社会の発展に貢献できる人財の創出を図ってまいります。

 

<パイオラックスグループ 人財基本方針>

 パイオラックスグループでは、社員は会社の重要な経営資源であり大切な財産であると考え、「人材」ではなく「人財」と表現しております。

 「人と社会を技術でつなぎ、心弾む未来を実現する」というパーパスのもと、社員一人ひとりの個性を尊重し、多種多様な能力を発揮・成長できる企業風土を醸成することで、会社の成長と社会の発展に貢献できる人財の育成を目指しております。

 

 「目指すべき人物像」として、以下の要素を定義しております。

 

 ・企業理念やビジョンに共感し、個性と多様性を大切にしながら、チームワークで取り組める人財

 ・高い創造性・専門性を持ち、主体的かつ挑戦的に取り組める人財

 ・グローバルな視野と問題意識を持ち、変革を起こせる人財

 ・高い志を持ち、誠実かつ公正に行動できる人財

 

(教育・研修制度の整備)

 当社では、従業員一人ひとりの能力開発、知識や技能向上の支援とともに、社会に貢献できる人財の育成に取り組んでいます。具体的には職位に応じた階層別教育に加え、語学教育などを実施し、ビジネス環境の変化に対応できるグローバル人財の育成に力を入れています。

 

c.環境整備に関する方針

 当社では、「安心して働ける活気ある職場づくり」を目指し、仕事とプライベートの両立支援制度や柔軟で多様な働き方を推進し、ワークライフバランスの向上に努めております。当社の健康経営課題である「全ての従業員とその家族の心身の健康増進と、ワークライフバランスの確保」を解決・実現するため、「健康経営宣言」を掲げ、健康経営戦略を見える化して社内外のステークホルダーに伝えるための戦略マップも作成して推進しております。

 なお、当社ではサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)と「PIOLAX ESG Vision 2030」に基づいた具体的なKPIを定め、活動を推進しております。具体的な資料は当社ホームページに掲載しております。

 

https://www.piolax.co.jp/jp/csr/esg_objectives/

 

 

③安全衛生

 当社では、従業員の安全と健康の増進を最重要経営目標の1つと捉えて、全従業員が安心して働ける職場環境の構築に取り組んでおります。「安全衛生基本方針」のもと、労働安全衛生に関する法令や社内ルールの遵守を徹底し、定期的な教育・訓練を通じて安全意識の向上を図っております。また、産業医や従業員との連携による職場環境の継続的改善、リスクアセスメントの実施、緊急時対応の整備などの取組を推進し、グループ全体での安全文化の醸成に努めております。

 

(G) ガバナンス Governance

 当社グループは、中長期的な企業価値の向上を目指すため、コーポレート・ガバナンス体制の構築に努めております。2016年の監査等委員会設置会社への移行後、取締役への株式報酬制度の導入(2017年)、取締役の3分の1を独立社外取締役体制化(2018年)、指名・報酬諮問委員会の設置(2019年)、女性取締役就任(2020年)とガバナンス体制の強化を進めてまいりました。2023年には役員報酬制度を見直し、中期経営計画期間における業績との連動要素を追加するなど、ガバナンス強化に努めてまいりました。今後も、当社グループは株主、顧客、従業員、取引先など様々なステークホルダーとの関係において、透明性を確保した企業経営の基本的枠組みのあり方を発展させてまいります。

 

(3)リスク管理

 サステナビリティ委員会において、サステナビリティに関するリスクと機会に対する全社統合的なマネジメントを実施しております。当社グループの事業活動に影響を与えうるリスクと機会を特定し、重要性の評価に応じた対応計画の策定と進捗状況のモニタリングを実施します。気候変動に関するリスクと機会については、当社グループの事業活動に与える影響が特に大きいものと考えられることから、中長期的な対応計画を検討するとともに、外部評価も踏まえた継続的な見直しを行い、適切な管理に努めてまいります。

 なお、当社ではサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)と「PIOLAX ESG Vision 2030」に基づいた具体的なKPIを定め、活動を推進しております。具体的な資料は当社ホームページに掲載しております。

 

 https://www.piolax.co.jp/jp/csr/esg_objectives/

 

3【事業等のリスク】

以下において、当社グループの事業その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも事業展開上のリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
 当社は、これらのリスクの存在を認識した上で、その回避及び顕在化した場合の対応に努める所存であります。
 なお、本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において、当社グループ及び当社経営者が判断したものであります。

(1) 自動車産業の動向

 当社グループの売上は、その90%超が自動車産業向けのものであり、なかでも日系自動車メーカーを主要な取引先としていることから、当社グループの業績は日系自動車メーカーの生産販売動向に影響を受けます。この動向に関係する事象として中国やタイにおける日系OEMの販売低迷やEV車のシェア増加、米国追加関税政策などがあります。また、自動車業界の競争激化が進んでおり、当社グループとしては、合理化による原価低減並びに製品構成の高付加価値化により、製品価格引下げが収益性低下につながらないよう努力いたしております。しかし、サプライヤー間の競争上、収益性を低下させる原材料費や物流費、エネルギー費用などの増加、製品価格の引下げを実施せざるを得ない可能性があり、その場合には当社の収益にも影響することが考えられます。当社としては、今後も取引先との連携を強化し、リスク管理を実施してまいります。

 また今後、カーボンニュートラル実現に向けた取組が急速に進む自動車産業において、CASEに対応した商品の開発、特に電動化対応商品の需要が高まる反面、燃料系部品、駆動系部品などの一部の製品で需要が減退する可能性があります。当社グループはこの受注減のリスクを打ち返すべく、「商品開発部」「MIRAI開発部」「最適開発推進部」を統括する「商品開発本部」を設立し、全社レベルで開発を推し進める体制を整備しております。高付加価値製品の技術開発を推進し、急成長が見込めるCASE新分野での活動を具体化し、CASE対応商品の受注拡大を目指してまいります。

(2) 特定取引先への依存

 当社グループは、日産自動車、そのグループ会社及びこれらに対する部品サプライヤー向け販売の売上に占める比率が高く、当社業績は日産自動車グループの生産販売動向に大きく影響を受けます。そのため、自動車生産台数だけに頼らない経営を目指します。実現に向けた施策の1つとして、2025年4月付でこれまでの商品群別の事業部制を廃止し、機能別の組織体制へ改編いたしました。機能別の体制を敷くことで、戦略の立案、意思決定の迅速化を図り、当社グループの持続的な成長につなげてまいります。また、日系以外の海外自動車メーカーへの拡販活動に注力し、引き続き取引先の多角化に努めてまいります。

 

(3) 品質関連

 当社グループは世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しております。全ての製品について欠陥がなく、不良品が発生しない製造を行っておりますが、不良品が発生した場合は製品回収費用並びに取引先に対する費用の補填などのコストが発生するリスクがあります。特に販売先である自動車メーカーのリコールにつながる製品の欠陥は多額なコスト負担が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす事があります。そのため、国内外の品質の監理を担う「品質監理室」と「品質保証部」を統括した「品質保証本部」を2025年4月に新設いたしました。品質マネジメントシステムに沿った保証体制を構築することで、品質をさらに向上させ、リコールを発生させないような体制を整えております。

(4) 海外事業に潜在するリスク

 当社グループは、北米・欧州並びにアジア地域で事業展開をしており、これらの海外市場の事業展開において以下に挙げるいくつかのリスクが内在しております。米国の追加関税政策などの地政学的リスクによる事業影響についても今後注視していく必要があります。
 ① 予期しない法律又は規制の変更
 ② 不利な政治又は経済要因
 ③ 潜在的に不利な税影響
 ④ 地政学リスクによる社会的混乱

 ⑤ 諸外国同士による貿易摩擦

 これらの事項が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、海外事業に係る現地通貨建ての会計項目は、連結財務諸表作成のために円換算されていますので、為替相場の変動が業績及び財務状況に影響を及ぼします。

(5) 知的財産保護の限界

 当社グループは、知的財産に関する法律及び契約上の規制に基づき一定の固有財産権を確立し、保護するための措置を講じております。しかしながら、知的財産を保護するための措置は技術の不正流用の防止、第三者による類似技術の開発、もしくは取得の抑止等の防止には十分でないことが、判明する可能性があります。

 結果として、当社グループの技術の不正流用、第三者による類似技術開発及び権利侵害のクレームへの関与が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、知的財産権に知見を有する部門を設置しリスクの未然防止を図る体制を整えています。

 

(6) 原材料の価格高騰・調達難

 当社グループの製品は、原材料の大部分と一部の部品を外部より調達しておりますが、価格高騰や需給逼迫、調達先の不慮の事故等により、原材料・部品不足が生じ、その結果、当社グループの業績に影響を及ぼすリスクが存在します。そのため、調達先との安定的な取引関係維持に努めております。

 

(7) 物流の混乱と物流費高騰

 地域紛争等の世界情勢の混乱や異常気象に伴い、流通の混乱が発生しております。一部混乱は解消されつつあり、物流費の高騰も収まりつつありますが、北米・欧州並びにアジア地域で事業展開している当社グループの業績に影響を及ぼすリスクが存在します。

 物流費高騰への対策として、当社グループは物流合理化をさらに強化してまいります。

 

(8) 環境規制

 自動車部品業界は、広範囲な環境その他の法的規制の適用を受けております。燃費、安全性及び生産工場からの汚染物質レベル等規制が広範囲に渡っております。その規制の変更等により、規制を遵守するための費用が発生する可能性があることから、常に情報収集及び法規対応に取り組んでおります。

 

(9) 人財の確保

 当社グループの成長には、有能な人財を採用・育成し、雇用の維持を図ることが重要であると考えております。近年、労働市場における人財獲得競争は、ますます激しくなってきており、従業員の高齢化やダイバーシティ対応への遅れにより、多様性が確保できなかった場合や有能な人財を採用、育成できなかった場合、企業の発展が阻害されるリスクがあります。当社グループでは、「パイオラックスグループ人財基本方針」を制定し、多様な人財の確保と育成に積極的に取組、新たな発想力による企業発展を目指しております。

 

(10) 自然災害、感染症等

 国内のみならず全世界的に予期せぬ大規模な自然災害や感染症が発生した場合、原材料の調達を含む製品の製造や物流、販売活動に被害が出ることにより、当社の業績に影響を与えるリスクがあります。そのため事業継続計画(BCP)を策定し、リスクの未然防止を図る体制を整え、日常のリスク体制強化にも取り組んでいます。

 

(11) 情報セキュリティ関連

 当社グループは、情報システムに様々なセキュリティ対策を講じておりますが、外部からのサイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウイルスの侵入等により、情報システム等に障害が生じた場合や、企業情報及び個人情報等が社外に流失した場合は、事業活動の停滞や社会的信用の低下等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、年々多様化、巧妙化するサイバーセキュリティ上の脅威への対策として、情報システム部門が中心となり、情報セキュリティレベル向上の取組を進めております。サイバーセキュリティの脅威に対する技術的な対策に加え、定期的な教育・訓練を通じ、従業員の情報セキュリティに対する意識レベルの向上に努めております。

 

(12) 為替レートの変動

 当社グループの海外売上高比率は約6割を占め、為替変動は、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。将来における為替相場の変動に伴うリスクの軽減を図るため、為替予約を行っております。しかしながら想定を超える急激な為替変動により、当社グループの収益に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 気候変動等による影響

 気候変動が事業に与える影響について、シナリオ分析を通じてリスクと機会を特定し、対策を実施しておりますが、対応の不足や遅れにより以下のリスクが顕在化する可能性があります。

 

①気候変動によるリスク

(移行リスク)

 短中期においては、製造工程の脱炭素化に向けた設備投資、各国の環境規制への対応コスト、カーボンニュートラル達成に向けたエネルギーコスト等の増加リスクがあります。中長期においては、炭素税の導入やエネルギー転換による原材料費、輸送費の高騰、自動車業界におけるCASE動向、特に電動化の加速による既存製品の受注減等のリスクがあります。

(物理リスク)

 中長期においては、異常気象によるサプライチェーンの分断、工場・倉庫の操業停止、修繕コストの増加、エネルギー供給の不安定化等のリスクがあります。

 

②リスクへの対応策

(移行リスク)

 短中期におけるリスクへの対応策として、生産性向上を目的とした真岡工場リニューアルや徹底した省エネ施策等に取り組んでおります。中長期においては、環境配慮原材料の採用、地産地消化による調達コストの削減、CASE対応製品の開発及び販売を実施しております。

(物理リスク)

 地産地消化の拡大による在庫コストの圧縮、サプライチェーンの多極化や原材料の標準化による安定調達、工場や倉庫のレジリエンス強化に向けたインフラ整備等を実施しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度のわが国経済は、社会・経済の正常化が進み景気は緩やかな回復傾向が継続しましたが、エネルギー価格や物価の高止まり、金融資本市場の変動の影響など、依然として先行き不透明な状況が続いております。世界経済につきましても、経済活動が活発になる中、終わりの見えない地域紛争などの地政学的リスクの高まりなど、経済の先行きは不透明な状況が続いております。

 当社グループの主要なお取引先である自動車業界につきましては、一部の自動車メーカーの不正問題による生産・出荷停止の影響により生産台数が減少し、また、中国自動車市場における日系自動車メーカーの販売低迷や急速なEV化へのシフトなど、依然として厳しい状況が続いております。

 このような需要環境のもと当社グループといたしましては、お取引先からのニーズを確実に捕捉し、日系のお取引先に加え非日系のお取引先にもグローバルに拡販活動を継続的に推進いたしました。この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して15,951百万円減少し、105,464百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比較して211百万円増加し、13,683百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比較して16,162百万円減少し、91,781百万円となりました。

b.経営成績

当連結会計年度における売上高は63,351百万円(前期比1.9%減)、営業利益は2,382百万円(前期比49.9%減)、経常利益は3,402百万円(前期比39.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,792百万円(前期比55.3%減)となりました。

 

 セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

(自動車関連等)

 米国や中国をはじめ新興国市場等にグローバルに拡販活動を積極的に推進いたしましたが、主要取引先である日系自動車メーカーの減産の影響を受け、売上高は58,178百万円と前期比△1,623百万円(△2.7%)の減収となりました。一方利益面においては、主要取引先である日系自動車メーカーの減産による限界利益の減少や労務費上昇等により、営業利益は3,095百万円と前期比△2,789百万円(△47.4%)の減益となりました。

 

(医療機器)

 拡販を積極的に推進いたしました結果、売上高は5,172百万円と前期比423百万円(8.9%)の増収となりました。

一方利益面においては、増収による限界利益の増加に加え、合理化活動を推進した結果、営業利益は328百万円と前期比283百万円(631.3%)の増益となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益3,402百万円及び減価償却費4,353百万円等の収入要因があり、有形固定資産の取得による支出4,552百万円及び配当金の支払額3,472百万円等の支出要因により、前連結会計年度末と比較して5,486百万円(前期末比22.2%増)増加し、当連結会計年度末には30,236百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は8,124百万円(前期比2.9%減)となりました。前連結会計年度と比較して減少し

た主な要因は、税金等調整前当期純利益の減少等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果得られた資金は3,340百万円(前期は8,573百万円の使用)となりました。前連結会計年度と比較して増加した主な要因は、定期預金の払戻による収入の増加及び有形固定資産の取得による支出の減少等によるものであります。

 

 なお、営業活動により得られたキャッシュ・フローと投資活動により使用したキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは11,465百万円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は6,469百万円(前期比37.8%増)となりました。前連結会計年度と比較して増加し

た主な要因は、自己株式の取得による支出の増加等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比

自動車関連等

58,227

96.9%

医療機器

5,152

106.3%

合計

63,380

97.6%

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

(2)受注実績

 当社グループは受注より出荷までの期間が極めて短いため、原則として一部の確定受注や過去の販売実績等を参考とした見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比

自動車関連等

58,178

97.3%

医療機器

5,172

108.9%

合計

63,351

98.1%

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.単独で売上高の10%を超える主な相手先が存在しないため、「最近2連結会計年度の10%を超える主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合」の記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、期末時点での状況を基礎に連結貸借対照表及び連結損益計算書に影響を与えるような項目・事象について見積りを行ないますが、これらの見積りについては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる基準を設定して継続的に実施しております。なお、当連結会計年度末におきましては、材料の供給問題・価格高騰、経済活性化に伴う輸送コストの増加やエネルギーコストの高騰等による影響について、翌連結会計年度以降も一定の影響が継続するという前提に基づいて、足元の実績をもとに当初の事業計画値に反映し会計上の見積りとしております。しかし実際の結果は、見積りには不確実性が伴うため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 

(固定資産の減損処理)

 当社グループは原則として、事業用資産については管理会計上の区分を基にグルーピングを実施し、遊休資産については個別資産ごとにグルーピングを行って、減損兆候の判定に基づき、必要に応じて帳簿価額を回収可能価額まで減損しております。なお、詳細につきましては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載の通りであります。

 

(投資有価証券の減損処理)

 当社グループは、保有する有価証券について、市場価格のない株式等以外のものについては、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合に時価まで減損処理を行い、30%以上50%未満下落した株式等の減損にあっては、個別銘柄毎にその回復可能性を総合的に検討し実施しております。将来、株式の市況又は投資先の業績が悪化した場合には、さらなる評価損の計上が必要となる可能性があります。

 

(繰延税金資産)

 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っております。なお、詳細につきましては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載の通りであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は64,398百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,664百万円減少しました。前連結会計年度末と比較して減少した主な要因は、現金及び預金や売掛金の減少等によるものであります。固定資産は41,066百万円となり、前連結会計年度末と比較して13,287百万円減少いたしました。前連結会計年度末と比較して減少した主な要因は、投資有価証券の減少等によるものであります。

 この結果、総資産は105,464百万円となり、前連結会計年度末と比較して15,951百万円減少いたしました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は12,218百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,776百万円増加いたしました。前連結会計年度末と比較して増加した主な要因は、未払金の増加等によるものであります。固定負債は1,464百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,564百万円減少いたしました。前連結会計年度末と比較して減少した主な要因は、繰延税金負債の減少等によるものであります。

 この結果、負債合計は13,683百万円となり、前連結会計年度末と比較して211百万円増加いたしました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は91,781百万円となり、前連結会計年度末と比較して16,162百万円減少となりました。前連結会計年度末と比較して減少した主な要因は、利益剰余金の減少等によるものであります。

 この結果、自己資本比率は85.8%(前連結会計年度末は87.5%)となりました。

 

2)経営成績

 当連結会計年度における、わが国の経済は、社会・経済の正常化が進み、景気は緩やかな回復傾向が継続しましたが、エネルギー価格や物価の高止まり、金融資本市場の変動の影響など、依然として先行き不透明な状況が続いております。世界経済につきましても、経済活動が活発になる中、終わりの見えない地域紛争などの地政学的リスクの高まりによって、経済の先行きは不透明な状況が続いております。

 当社グループの主要なお取引先である自動車業界につきましては、一部の自動車メーカーの不正問題による生産・出荷停止の影響により生産台数が減少し、また、中国自動車市場における日系自動車メーカーの販売低迷や急速なEV化へのシフトなど、依然として厳しい経営環境が続いております。

 このような需要環境のもと、当社グループといたしましては、お取引先からのニーズを確実に捕捉し、日系のお取引先に加え、非日系のお取引先にもグローバルに拡販活動を継続的に推進しましたが、主要取引先である日系自動車メーカーの減産による影響を大きく受け、売上高は63,351百万円(前年同期は64,551百万円、1.9%減)と前期比△1,200百万円の減収となりました。セグメント別では、自動車関連事業は米国や中国をはじめ新興国市場等にグローバルに拡販活動を積極的に推進いたしましたが、主要取引先である日系自動車メーカーの減産の影響を受け、売上高は58,178百万円(前年同期は59,802百万円、2.7%減)と前期比△1,623百万円の減収となりました。医療機器事業は、拡販を積極的に推進いたしました結果、売上高は5,172百万円(前年同期は4,749百万円、8.9%増)と前期比423百万円の増益となりました。

 一方利益面におきましては、より一層の合理化を推進いたしましたが、主要取引先である日系自動車メーカーの減産による限界利益の減少や労務費の上昇等により、営業利益は2,382百万円(前年同期は4,756百万円、49.9%減)と前期比△2,373百万円の減益となりました。セグメント別では、自動車関連等事業は、3,095百万円(前年同期は5,885百万円、47.4%減)と前期比△2,789百万円の減益となりました。医療機器事業は、328百万円(前年同期は44百万円、631.3%増)と前期比283百万円の増益となりました。

 また経常利益は3,402百万円(前年同期は5,650百万円、39.8%減)と前期比△2,247百万円の減益、親会社株主に帰属する当期純利益は、1,792百万円(前年同期は4,013百万円、55.3%減)と前期比2,220百万円の減益となりました。

 

3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 なお、当社グループの資金につきましては、単体及びグループ全体でも月商売上高の6ヶ月以上の現金同等物を有しており、主として換金が容易であるため充分な流動性をもって事業活動を行っておりますが、今後不測の事態が生じた場合には、コミットメントライン21.5億円の実行と併せ、固定費の圧縮等に努め、挽回策を講じていく所存であります。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 世界的なインフレや地政学リスクが高まる中、米国の保護主義政策や中国の経済対策が世界経済に与える影響が懸念されています。当社の主要な取引先である自動車業界においては、CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応の加速、異業種の自動車業界への参入など、100年に一度の大変革期と言われております。また、中国市場では中国系自動車メーカーの台頭による、日系自動車メーカーの販売不振が続いております。原材料や電力料をはじめとした各種エネルギー価格などのコストの高騰等の要因、為替の動向など、経営環境は不透明感が継続しております。

 自動車関連をコア事業とする当社は、これまで自動車の生産台数の増加と共に成長してまいりました。4つの商品群からなる事業部体制の下、これらの商品に注力した経営を行ってまいりました。しかし、自動車を構成する部品の変化、生産台数の伸びの鈍化、開発スピードの加速、そして様々なコストの増加など、事業環境の変化に対応するため、自動車生産台数に頼らない経営方針へシフトすることを決定いたしました。今後は、当社の強みである技術と開発力を活かし、既存商品群の枠を超え、自動車市場の動向に追従した高付加価値製品の創出に取り組んでまいります。また、市場成長が期待できる地域へ積極的な投資を進め、海外では日系以外の海外自動車メーカーへの拡販を推進してまいります。コスト高への対策としては、更なる合理化と併せ、価格転嫁も継続してまいります。

 グローバル供給体制の最適化に向け、現地生産、現地調達も推進してまいります。

 2024年11月に資本政策を見直し致しました。資本効率を改善し、企業価値を向上させるため、中期経営計画(2024~2026年度)の中で、3年累計自己株式取得300億円、3年間配当金92円以上維持を掲げております。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

資金需要の主な内容

 当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための費用等の販管費が主な内容であります。

 投資活動については、新規対応・自動化及び生産性向上等を目的とした設備投資と金型投資及び国内リニューアル投資が主な内容となります。

財務政策

 当社グループは現在、運転資金・設備資金とも内部資金で充当しております。

 また、不足が生じた場合に備えて、21.5億円のコミットメントラインを設定しております。

 

d.経営上の目標の達成・進捗状況

 2024年度は、連結売上高633億円、連結営業利益23億円となり、2024年度目標としておりました連結売上高635億円、連結営業利益24億円に対し、減収減益となりました。

 2025年度につきましては、日本経済は、2024年度に引き続き、エネルギー価格の高騰や物価上昇等による個人消費や経済活動への影響が懸念されます。世界経済では景気停滞や中国経済の減速、地域紛争等による地政学リスクの長期化、原材料費、エネルギー価格の高止まりが見込まれるなど、先行き不透明な状況が継続すると予想されます。このような環境下の中で業績予想といたしましては、内外カーメーカーに対するグローバル拡販の更なる推進を図る一方で、全社一丸となって合理化活動を推進することにより、連結売上高630億円、連結営業利益29億円を見込んでおります。

 今後は電動化の推進により、当社製品群の一部である燃料系部品等の売上が減少することが想定されますが、それを補うべく、既存商品群の枠を超え、自動車市場の動向に追従した高付加価値製品の創出に取り組んでまいります。

 

5【重要な契約等】

(1)当社が現在締結している主要な技術供与契約は次のとおりであります。

技術供与契約

相手方の
名称

国籍

契約品目

契約内容

契約期間

三加産業股份
有限公司

台湾

金属・樹脂ファスナー

金属・樹脂ファスナーの製造技術援助契約

1987年10月6日から
2007年10月5日まで

以後5年毎の自動契約更新

パイオラックス
コーポレーション

米国

自動車、電子工業などに使う各種プラスチック精密クリップ、各種精密スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、及びマーケティング・サービス契約

1993年4月1日から
無期限

パイオラックス
リミテッド

英国

自動車、電子工業などに使う各種プラスチック精密クリップ、各種精密スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、及びマーケティング・サービス契約

1995年8月8日から
無期限

パイオラックス
株式会社

韓国

自動車、電子工業などに使う各種プラスチック精密クリップ、各種精密スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、及びマーケティング・サービス契約

1996年6月20日から
2006年6月19日まで

以後1年毎の契約更新

パイオラックス
(タイランド)
リミテッド

タイ国

自動車、電子工業などに使う各種プラスチック精密クリップ、各種精密スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、及びマーケティング・サービス契約

2000年8月10日から
無期限

東莞百楽仕
汽車精密配件
有限公司

中国

自動車、電子工業などに使う各種プラスチック精密クリップ、各種精密スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、及びマーケティング・サービス契約

2024年7月1日から

無期限

パイオラックスメキシカーナ

メキシコ国

自動車、電子工業などに使う各種プラスチック精密クリップ、各種精密スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、及びマーケティング・サービス契約

2011年1月1日から

無期限

パイオラックス インディア プライベート リミテッド

インド国

自動車、電子工業などに使う各種プラスチック精密クリップ、各種精密スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、及びマーケティング・サービス契約

2010年1月1日から

無期限

ピーティー

パイオラックス インドネシア

インドネシア共和国

自動車、電子工業などに使う各種プラスチック精密クリップ、各種精密スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、及びマーケティング・サービス契約

2012年12月1日から

無期限

百奥来仕(中国)投資有限公司

中国

自動車、電子工業などに使う各種プラスチック精密クリップ、各種精密スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、及びマーケティング・サービス契約

2021年7月30日から

無期限

武漢百楽仕

汽車精密配件

有限公司

中国

自動車、電子工業などに使う各種プ

ラスチック精密クリップ、各種精密

スプリング、関連組み立て部品等

契約品目のライセンス技術、エンジニアリング、

及びマーケティング・サービス契約

2024年1月1日から

無期限

 (注) 上記については技術指導料として売上高の一定率を受けとることになっております。

(2)当社が現在締結している主要な業務提携は次のとおりであります。

業務提携

相手方の名称

国籍

提携内容

契約期間

株式会社佐賀鉄工所

日本

資本関係を含む包括的業務協力

2001年3月23日から2006年3月22日まで

6ヶ月前の予告がない限り毎年自動延長

 

 (注) 当社は2025年2月12日に当社が所有する㈱佐賀鉄工所の株式の一部売却を行ったため当第4四半期連結会計期間より持分法の適用範囲から除外しております。

 

(3)当社が現在締結している主要な技術援助・生産及び販売契約は次のとおりであります。

技術援助・生産及び販売契約

相手方の
名称

国籍

契約品目

契約内容

契約期間

A.RAYMOND

et Cie SCS

フランス

ファスナー商品

1.営業協力

2.技術支援協力

3.生産及び販売協力

2017年10月16日から
2027年10月15日まで

 (注) 両社間の資本提携は行わず、両社の独立性及び販売方針は維持いたします。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループのパーパス「人と社会を技術でつなぎ、心弾む未来を実現する」と、ビジョン「新しい価値の創造-弾性を創造するパイオニアからその先へ-」を指針に、常にパイオニアを志す研究開発活動の中で、人・社会・サスティナビリティなどさまざまな可能性を熱意と信頼を以て協調・追求し、自由でしなやかな発想で新たな価値創造を自動車・生活関連・メディカルの各分野で進めてまいります。

 現在、研究開発は、最適開発推進部、MIRAI開発部、生産技術部、商品開発部の各開発グループ(海外拠点含む)、及び子会社の株式会社パイオラックス メディカル デバイスの開発部門により推進しております。

 なかでも、自動車産業では100年に一度ともいわれる大変革期にあり、当社も次世代車両の新たなニーズに対応すべく新商品の開発に取り組んでおり、これらは環境に配慮した設計、製品になるよう心掛けております。生産技術部門では省スペースで多品種の生産に対応する汎用性の高い自動化設備の開発や樹脂金型の開発を通じて生産性向上、生産コスト低減に取り組んでおります。また、DX関連(IoT、AI、IT)の取組にも力を入れ、工場管理、生産性の向上に取り組んでおります。2025年度は、各SBUの生産技術機能を統合し効率化を図り、バスバー、ADAS関連部品などの技術開発に注力してまいります。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、687百万円であり、個別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次の通りであります。

 

(1) 自動車関連等

①精密ばね関連

 従来から取り組んできた変速機ユニットの小型化・軽量化・低コスト化に寄与する製品の量産化、変速機ユニットへの組付け作業を容易にした複合ばねの開発拡大に継続して力を注ぎ、金属ばねと樹脂部品の複合品も量産化しました。更に、これらの取組で培ってきた応力や挙動等の解析技術を駆使し、電動車の冷熱切替バルブ用ばねや、変速機からe-Axleに置き換わる環境対応車用の製品拡大にも取り組んでおります。また、新興国を始めとした海外カーメーカー向けには中国を中心とした現地製ばね材料の量産採用を実現し更なる採用拡大を進めております。

 

②工業用ファスナー・EV関連

 自動車のEV(電気自動車)化に伴って車体の造り方も変わり、ダイキャスト製のボディの採用が今後、増加予測されております。それにより締結部品も変化・進化が必要となり、その商品開発を推進しております。

 また、自動車の静粛性、安全性のニーズが高まり、従来製品についても、内装トリムの繰り返し脱着性や耐衝撃保持性能等の機能向上に向けた製品開発を行っております。

 環境対応として、CO₂排出低減を目的とした軽量化への取組は勿論のこと、お客様の困り事をキャッチし、部品の簡素化&統合化を実現した商品開発を実施し、採用に至っております。

廃車規制ELVRへの対応として、モノマテリアル可能な締結部品の検討にも着手しており、製品のPRをしながらより具体的なニーズを収集し採用に向けて活動しております。

 低価格で高品質な製品をグローバルに提供できるよう、海外子会社との情報交換を行い、製品開発に反映しております。また、EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)向け部品について、バッテリーやモーター関連及び静粛性を狙った製品や安全性に関与する製品開発を行っております。

 これまで培ってきた金属ファスナーの加工技術を駆使し、電動車のモーターなどに使われるバスバーを採用いただいております。更に、絶縁材となる樹脂を導電材と一体化したインサート成形品の採用拡大に向けた開発にも取り組んでおります。

 

③小型ユニット関連

 車室内の開閉する物入れ等に、その機構部品であるラッチシステム、ダンパー、ヒンジ等を供給しております。なかでも代表的物入れであるグローブボックスにおいて長年供給をしているラッチシステムは、改良を重ねながらお客様の要求に応え続けており、近年においてはサステナブルな思想を織り込んだラッチ製品の供給を開始し、簡便かつ安全に運転席から操作ができる電動ラッチの量産供給も開始します。また、ソフトオープンさせるためのダンパーや、最近ではグローブボックスの閉じフィーリング向上並びに走行中の雑音低減に繋がるスプリング内蔵クッションの開発も行ってまいりました。この結果、上記主要3商品は国内全乗用車メーカー、国内トラックメーカーの一部、並びに海外でも北米、中国、ASEAN、欧州と主要な地域にて多くのカーメーカーに採用されております。環境も意識した軽量化等の継続的な改善を行いながら採用車種の拡大を目指し、開発活動を実施しております。

 

④流体制御関連

 HEV、P-HEVなどのガソリンタンクに使用されるロールオーバーバルブ、インレットチェックバルブ、フィルリミットベントバルブなど性能向上、コスト低減を狙った開発を継続しており、中国・インド・インドネシア等海外子会社での生産も拡大しております。

 BEV向けバッテリーパック内の流体配管用JOINT、付加価値を向上させたクイックコネクターなどの開発も行っており採用車種の拡大を目指し、開発活動を実施しております。

 

⑤その他

 環境対応としては、SDGs、循環型経済、CSRといった新たな視点で、環境経営への取組の重要な要素の一つである化学物質管理をサプライチェーン含めて行っております。年々厳しくなる各国環境法規により規制物質も増加傾向にある中、それらの法規及び顧客要求への適合を管理しております。

 また、環境に配慮しCO₂排出量の少ない電炉材をはじめ、樹脂リサイクル材の採用推進、地産地消を念頭に海外地場材の採用拡大に向け、金属材料及び樹脂材料の機械的性質や性能評価を行い、製品への適用を増やす研究を続けております。更には当社製品の高機能化に向けた、当社独自材料の機能改良研究も積極的に進めております。

 

以上、自動車関連に関わる研究開発費は、595百万円であります。

 

(2) 医療機器関連

 消化器内視鏡用ガイドワイヤを基幹技術に育成するため、新しいガイドワイヤの開発及び、それらと併用される新商品の開発を進めております。また、この分野での競争力を高めるため、新素材や新技術、製造装置を導入し、技術の蓄積を図っております。

 基礎技術開発の一環として、医療機器の性能を大きく影響する表面状態のコントロール研究を継続しております。恒久的な品質安定化を目指し、新しい製造装置を導入と工程の確立に取り組んでおります。

 今後も海外展開を視野に入れた新しい開発システムの下、グローバル市場で競争力のある製品を開発し、患者さんに笑顔を届けられる特長のある商品開発を進めてまいります。

 

以上、医療機器関連に関わる研究開発費は、91百万円であります。