文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、溶射加工を中核とする表面処理加工の専業メーカーとして「技術とアイデア」「若さと情熱」「和と信頼」「グッド・サービス」を社是として掲げ、株主、取引先、社員、地域社会等あらゆるステークホルダーとの良好な信頼関係を基礎に、表面処理皮膜が持つ省資源化、省力化、環境負荷の低減等の諸機能を通じて社会に貢献し、「高技術・高収益体質の、内容の充実した企業グループ」を実現することを経営の基本理念としております。
当社は、「高技術・高収益体質の、内容の充実した企業グループ」を実現するため、以下の6項目を経営の基本方針として掲げております。
2021年11月に公表いたしました「中期経営計画(2022年3月期~2026年3月期)」では、当社グループの「ビジョン(2030年の目指す姿)」及び「ミッション」を次のとおり定めました。
≪ビジョン(2030年の目指す姿)≫
「人と自然の豊かな未来に貢献する」
≪ミッション≫
ESGを重視した継続的な成長による企業価値の向上
・高品質・高付加価値商品(皮膜)を生み出し顧客に提供すること
・いつまでも顧客・株主・取引先・地域の皆様から信頼されること
・地球環境保全に資する技術に貢献すること
・トーカロでイキイキと安全に働くことが従業員やその家族の誇りに思えること
2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現に向けて大きく動き出している世界の中で、特に当社グループの成長の鍵となる社会の大きな変化(メガトレンド)は、①環境問題の深刻化、②ICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)/デジタル化へのテクノロジーシフト、③資源・食料不足・人口増加の3つであり、これらの変化・課題に対して、トーカロの成長戦略、すなわち「新商品開発」と「新市場開拓」を推進してまいります。
「中期経営計画(2022年3月期~2026年3月期)」では、当社グループの成長戦略として特に注力する取組み分野を、大きく「人」「環境(自然)」の2つといたしました。「人」への取組み分野としては、半導体、FPD(フラットパネルディスプレイ)、医療・農業・食品などがターゲットとなります。「環境(自然)」への取組み分野としては、エネルギー、素材、輸送などが挙げられます。
既存事業である「半導体・FPD」「環境・エネルギー」分野における用途を拡大しつつ、新事業領域である「農業」や「医療」分野などを上乗せしていくことで、中期経営計画の最終年度における業績イメージとして、連結売上高530億円(うち、半導体分野向け売上260億円)、経常利益120億円を想定しております。
「人」と「環境(自然)」への取組み分野において、既存事業と新事業領域それぞれで案件創出や適用拡大を図ることにより、テクノロジー(人)、環境(自然)の両面で社会に貢献し、継続的成長による企業価値向上に努めてまいります。
「中期経営計画(2022年3月期~2026年3月期)」において、当社グループが目標として定めた財務関連指標は次のとおりであります。
<強い財務体質の維持>
・自己資本比率(70%程度)の維持(実質無借金継続)
<収益力の維持>
・ROE(自己資本利益率)の維持(15%を目標)
・経常利益率の維持(20%を目標)
・EPS(1株当たり当期純利益)の維持・向上
<配当性向>
・純利益の1/3以上を目途に安定配当※
※2023年度より適用される最新の配当方針では、連結配当性向50%程度を目標としています。
・DOE(自己資本配当率)の維持(5%を目標)
<設備投資>
技術優位性の維持・向上に向けた投資の継続 合計250-350億円(50-70億円/年)
半導体増産関連、新技術プロセス関連、生産効率化関連等
<研究開発費+技術開発費>
研究開発費:連結売上高比3%程度を維持
技術開発費:各工場の生産技術部門で投資継続
なお、上記記載の数値目標に関しては、当連結会計年度末現在において当社グループが判断した一定の前提に基づいたものであり、その達成を保証するものではありません。
当社の対処すべき主要な課題は、ウェブサイトにマテリアリティとして公開している以下5項目であり、これらの達成に向けて取り組んでおります。
当社は、「人と自然の豊かな未来に貢献する」をビジョンとして掲げており、半導体、インフラ、医療、農業など人々の暮らしを支える分野及び、水力や風力、地熱発電、二次電池など温室効果ガス排出削減に寄与する分野の高機能皮膜開発を主要テーマとして潜在市場の開拓を進めてまいります。
脱炭素化(カーボンニュートラル)については、「2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減する」ことを目標に置き、定期的に開催するサステナビリティ委員会を通じて、省エネ、創エネ、廃棄物の削減、リサイクルなど、温室効果ガス排出量の削減に取り組みを進めております。
ものづくりの高度化については、DXの活用によるスマートファクトリー化を進めてさらなる生産性の向上を図ってまいります。
また、今後も安定的に顧客要求を満たす品質を提供し続けるため、デザインレビュー、スペックレビューに注力するとともに、社員に対し資格取得を推奨するなど、社内教育を充実させることで、更なる品質管理体制の向上を推進してまいります。
当社が持続的に成長するためには人財育成が必要不可欠であると認識し、教育機会の提供、健康経営、ダイバーシティ推進、ワークライフバランスの充実など、さまざまな取り組みを進めております。また、安全衛生に配慮した、「きれいで、機能的で、人にやさしい職場」を実現するために、労働安全衛生マネジメントシステムであるISO45001/JISQ45100の認証に沿った安全を担保する体制の維持・向上を図ってまいります。
当社は、誠意と創意を持って、健全な事業活動を推進し、豊かな社会の実現に貢献する企業として、行動指針を定めております。コンプライアンス遵守の徹底については、コンプライアンスハンドブックを作成し、全従業員に配布しております。また、社員一人ひとりが自律した行動を徹底するよう、e-ラーニングを活用するなど、コンプライアンス教育を定期的に実施しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティに関する方針の策定、計画の立案、取り組みの進捗確認を担う組織としてサステナビリティ委員会を設置し、気候変動に関する対応についても審議しています。同委員会は、代表取締役社長執行役員を委員長(責任者)とし、常勤取締役や各部門長などから構成され、基本的に年4回開催することとしています。
取締役会は、同委員会から気候変動を含むサステナビリティ課題全般に関する報告を受け、審議・承認を行っています。2021年10月に開催した取締役会では気候変動に関する目標を含む中期経営計画を、2021年12月に開催した取締役会では気候変動に関する取り組みを含むマテリアリティ(当社が重点的に取り組むべき課題)を承認しました。
当社は、2021年12月に「先進的皮膜開発と潜在市場の開拓」「環境負荷低減への対応」「ものづくりの高度化と品質向上」「多様な人財の育成と活躍」「コンプライアンスの徹底(企業倫理に則った行動の実践)」の5つのマテリアリティを特定し、各マテリアリティに対する取組みを進めています。
当社は「人と自然の豊かな未来に貢献する」ことをビジョンに掲げ、気候変動対応を経営における重要課題の一つと位置づけています。
2022年、気候変動に関するリスクと機会の洗い出しに着手しました。2022年6月にはトーカロ株式会社単体を対象範囲とし、主要なリスクと機会、およびその対応策を抽出しました。さらに分析を深化させるため、2023年6月にはそれぞれのリスクと機会について財務インパクトの試算を行い、その結果から特に重要と思われる対応策について指標および目標を設定しました。
2025年6月は、シナリオ分析をアップデートし、対応策の進捗を確認しました。アップデートにおいては、1.5℃を目標とする世界的な動向をふまえ、「脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃)」と「温暖化進行シナリオ(4℃)」を用いて分析を実施しています。今後も、分析のさらなる精緻化とともに、設定した指標および目標に基づきリスク軽減と機会増加の対応策を推進してまいります。
<リスク・機会の内容と財務インパクト及びその対応策>
・対象範囲:炭素税の項目はトーカロ株式会社連結、その他の項目はトーカロ株式会社単体
・対象期間:現在~2050年
・主な参照シナリオ:
(注)短期:5年以内、中期:2035年、長期:2050年
当社が求める人財像は、社是である「技術とアイデア」「若さと情熱」「和と信頼」「グッド・サービス」をもとに、「今よりもっと」を考えて取り組む人財です。
当社は、表面改質技術(皮膜)による価値創造を通じて顧客のベストパートナーとなるために、4つの重点テーマ「市場開拓の強化」「技術開発体制の強化」「ものづくりの高度化」「100年企業を目指した持続的成長」に自律的に取り組む人財を育成する必要があります。そのために、社員が持っている可能性や意欲を引き出すとともに、一人ひとりのキャリア開発を支援するさまざまな成長機会を提供します。
具体的な人財育成の方策は、以下のとおりです。
顧客の多種多様なニーズを捉え、その課題に対して最適なソリューションを提供するため、重点分野プロジェクト参画や営業事例発表大会などの社内連携の機会を通して専門知識やアプリケーション事例の吸収・展開を促進し、提案営業力をさらに高める。
(ⅱ)ものづくりの創意工夫とその基盤固め(ひとづくり)
顧客の要望に応じたオーダーメイド皮膜の実現と生産能力の増強を両立するため、QA発表大会(ものづくり改善活動)などで生産効率化に向けた創意工夫の動機付けを行う。また、職長の指導・監督下で仕様書や作業手順書どおり確実に施工するための仕組み(ひとづくり)を維持・発展させる。
(ⅲ)品質管理手法を探求するためのスキル獲得
皮膜の状態は施工後に確認することが難しく、製造プロセス管理が極めて重要であることから、品質マネジメントシステムの運用を基礎とし、QC検定や非破壊試験技術者資格を奨励する。それによって、もっと優れた品質管理手法を探求するためのスキル獲得を促す。
(ⅳ)技術開発に柔軟な発想で取り組む風土の醸成
技術的成果を競う技術レポート発表大会や技術会議は、当社の社是「技術とアイデア」の原点ともいえるイベントである。このような取り組みで技術開発への情熱を湧き上がらせ、既成概念にとらわれない柔軟な発想で開発に取り組む風土を醸成する。
(ⅴ)デジタル教育の実施とDX人財の選出
デジタル化・DXはあらゆる業務の生産性や品質を向上するための手段として重要であり、デジタル教育を幅広く実施して全社のデジタルリテラシー(理解して活用できる能力)向上に取り組む。また、データやデジタル技術を活用してイノベーションに結び付けることのできる社員(DX人財)を選出し育成していく。
(ⅵ)グローバルチャレンジ制度で視座を高め戦略的思考を育む
グローバル展開の核となる人財のみならず、中長期的目線で当社を将来担っていく中核人財を育成するために、新たにグローバルチャレンジ制度を発足させる。それによって、チャレンジ精神をもった社員の視座を高め戦略的思考を育む。
当社は、社員がその個性と能力を発揮し、仕事と生活の調和を図ることができるよう、すべての社員が働きやすい社内環境の整備を行います。
具体的な社内環境整備の方策は、以下のとおりです。
自分の意見や気持ちを誰に対しても安心して発言でき、チャレンジングな姿勢をみんなで後押しする風通しのよい企業風土を醸成する。
(ⅱ)安全衛生に配慮した快適な作業環境の維持向上
労働基準法・労働安全衛生法などに基づき、職場における社員の安全と健康を確保するとともに、きれいで、機能的で、人にやさしい作業環境の維持向上に努める。
(ⅲ)成長機会の公平な提供と実力本位の評価
女性活躍の推進をはじめ、さまざまな属性(国籍、年齢、障碍の有無など)の社員が働きがいをもって能力を発揮できるよう、多様な人財を積極的に採用する。また、成長機会の公平な提供と実力本位の評価を行う。
(ⅳ)仕事と育児・介護の両立支援
育児や介護の状況にあっても安心してキャリア(仕事を通じた成長)を継続できるよう、育児や介護に関する各種制度(休業、休暇、時短勤務など)の整備・周知を行う。また、上司を含めた職場の理解と協力を促す。
(ⅴ)柔軟な働き方と健康的に働くことのできる職場環境づくり
柔軟な勤務制度(勤務場所、労働時間など)の導入・拡大と、社員が心身ともに健康的に働くことができる職場環境づくりに努める。それによって、生産性の向上とワーク・ライフ・バランスの実現を図る。
(ⅵ)学習機会の提供と表彰制度の設置
さまざまな学習機会を提供して社員の能力向上や自己啓発を支援する。さらに、表彰制度などを設けて社員の働きがいを高める。
気候変動に関するリスクを経営における重要リスクの一つと位置付け、各部門においてその管理に取り組んでいます。また、サステナビリティ委員会がリスク管理の状況を横断的に監視しています。取締役会では、こうした監視結果等の報告を受けて全社的な対応策を検討・決定しています。
当社の使用するエネルギー(CO2換算)は、電気によるものが全体の85.80%にあたり、CO2排出量のほとんどを占めています。
当社は、スコープ1及び2の2030年度の温室効果ガスの削減目標を「2013年度比46%減(54%以下に抑える)」と設定するとともに、その中間目標として、2025年度までに単体ベースで2013年度排出量の54%以下を達成することを目指して取り組んでいます。
また、金属の需要増加及び採掘減少による加工材料費高騰への対応策として、廃棄物リサイクル率の向上(2025年度目標40%)に取り組んでいます。
受注機会の増加への対応策としては、当社のコーティング技術が顧客の省エネ、GHG排出低減に結びつくことから、環境分野の受注金額(環境エネルギー機器、補修・再生品)に2050年度目標を定めて、コーティング技術の開発とPRを推進しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、下記事項のうち、将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
当社グループは自然災害や事故等から受ける生産活動への影響を可能な限り限定化し早期復旧を図るための対策・手順として危機管理マニュアルを作成するほか、従業員の安否確認等を適宜実施するなど事業継続のための体制の整備を進めております。しかし台風、豪雨、地震、津波又は火山活動等の自然災害や、事故、火災、テロ、ストライキ、騒乱等により、生産活動の停止、設備の損壊や給水・電力供給の制限等の不測の事態が発生する可能性があります。また、取引先においても同様に生産活動に支障をきたす可能性があり、いずれも長期間におよんだ場合には当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症は5類に移行していますが、今後変異ウイルスや新型感染症の拡大による影響により、受注の先送りや取消しが多数発生した場合、当社グループの従業員に感染者が多数発生し、長期間の生産活動停止に陥った場合、仕入先や外注先の生産活動や物流等、サプライチェーンに発生した混乱や分断が長期間におよんだ場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの主力である溶射加工(単体)の中で、2001年3月期以降、半導体・FPD製造装置分野の売上高が大幅に増加し、2025年3月期では連結ベースの総売上高に占める割合は44.5%となっております。
このため、半導体・FPD関連業界の市況、関連装置の需要動向が悪化した場合や、特に海外などで競合企業との価格競争が本格化した場合には、装置メーカー等からの受注減や値下げ要請により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、半導体・FPD製造装置が溶射を必要としない構造に変更された場合にも、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。
これらのリスクに対応するため、既に納入された装置部品へのメンテナンス需要や非溶射部品の溶射化等の開拓、次世代装置の適用皮膜の開発を進め、半導体装置メーカー向けの受注変動による影響を最小限に止めるよう努力してまいる考えであります。
溶射加工は、当社のような専業者だけでなく、材料メーカーやメタリコン業者が手がけているほか、大手機械メーカー等が製造プロセスの一部として自社内で溶射加工を行っている場合もあります。これらの大手機械メーカー等は、生産能力的にオーバーフローした場合や、自社で技術対応できない場合、自社に当該溶射装置を保有しない場合などに当社をはじめとする溶射加工業者に委託しておりますが、これらの大手機械メーカー等が全面的に溶射加工を内製化したり、内製化の比率を高めたりした場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループは顧客から被加工品を受け入れて、当該被加工品に表面改質を行なっていることから、主要顧客の近隣に加工工場を設けるなど、顧客密着型の事業展開を行なっておりますが、主要顧客が生産拠点を海外等の遠方に移転させた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(注) メタリコン業者とは、構造物等の防食目的で、亜鉛、アルミニウム及びそれらの合金溶射による加工を行なう企業をいいます。
(4)原材料の調達リスク
希土類を含む当社グループの原材料は、限られた購買先からの調達となっております。当社は主要な購買先との強固な取引関係の構築・維持に努めておりますが、特定の供給元からの調達に制約が発生した場合、生産活動に悪影響を及ぼすだけでなく、技術供与先への供給責任の遂行に問題が生じ、結果当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの東京エレクトロン株式会社グループへの販売依存度(総売上高に占める同社グループへの売上高の割合)は高水準であるため(2025年3月期については27.2%)、同社グループの半導体・FPD製造装置等の生産動向や同社グループからの受注動向が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、多様な業界に顧客を有し、溶射加工を中心とした表面改質加工を提供しており、それぞれの製品に合わせた品質管理体制のもと、製品を出荷しております。製品の不具合を防止するため、品質保証に関わる人員と組織の充実を図るとともに、新たな品質管理手法を取り入れるなど体制の強化に努めております。
また、当社の品質不具合を原因として製造物責任賠償を請求されるような万一の事態に備えるため生産物賠償責任保険等にも加入し、こうした事態の発生にともなう費用負担に対応しております。
しかし品質に対するクレームの内容や不具合の規模によっては製造業としての当社グループの評価の低下につながり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社は、新皮膜開発を通じて多くの新技術やノウハウを生み出しており、これらの知的財産を特許出願し、権利保護と経営資源としての活用を図っておりますが、特定の地域では十分な保護が得られない可能性や知的財産権の対象が模倣される可能性があり、知的財産権が侵害されるリスクがあります。また、当社グループが認識しない第三者の特許が既に成立しており、当該第三者より知的財産権を侵害しているとの事由により、損害賠償等の訴えを起こされた場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、半導体・FPD関連をはじめとして、顧客から預かった部品図面など重要技術情報を多数保有しております。これらを適切に管理するため、情報セキュリティに係る規程・細則の整備のみならず、情報技術の進歩や社会情勢の変化に応じた情報セキュリティルールの強化、適切な技術的対策のための設備投資、社内管理体制の整備や社員教育に努めております。しかし不正アクセスによる重大なシステム障害が発生した場合や、不測の事態により情報漏洩が明らかとなった場合等には、対応のための多額の費用負担や顧客からの信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、中国・台湾などのアジアや米国にて海外事業を展開しております。そのため、事業展開している各国の文化、宗教、商慣習、社会資本の整備状況等の影響を受けるとともに、経済情勢、政治情勢及び治安状態の悪化や急激な為替変動が、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
また、主要な顧客の中には国際的に広く事業展開している企業もあるため、国際政治情勢の変化により、懲罰的な関税措置を含む輸出入規制や、商品販売に係る許認可等の一方的な規則変更などにより、当該顧客が深刻な事業活動の制限を受ける可能性があります。この場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(10)気候関連のリスク
当社は「人と自然の豊かな未来に貢献する」ことをビジョンに掲げ、気候変動対応を経営における重要課題の一つと位置づけています。温室効果ガス排出削減をはじめとする様々なサステナビリティ課題の対応が遅れた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、情報収集を図るとともに、「第2 事業の状況、2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)」に記載の戦略に基づき、気候変動による環境問題の深刻化という社会的課題に対する取り組みを進めてまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高は前期比74億95百万円(16.0%)増の542億31百万円、営業利益は同30億74百万円(33.4%)増の122億71百万円、経常利益は同28億98百万円(30.0%)増の125億61百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同17億25百万円(27.3%)増の80億52百万円となりました。
なお、セグメント別の状況につきましては、以下のとおりであります。
半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)分野は、生成AI・データセンターなどの新技術分野が半導体需要を押し上げたことから大幅な増収となりました。また、鉄鋼、その他分野も好調に推移した結果、当セグメントの売上高は前期比53億54百万円(15.8%)増の392億13百万円、セグメント利益(経常利益)は同25億83百万円(41.1%)増の88億68百万円となりました。
国内子会社は、日本コーティングセンター株式会社が自動車生産の減産継続の影響を受け、主力の切削工具関係の受注が伸びずに減収減益となったものの、2024年8月に子会社化した株式会社寺田工作所の業績が加算された結果、当セグメントの売上高は前期比1億98百万円(8.1%)増の26億56百万円、セグメント利益(経常利益)は1億43百万円(29.1%)減の3億49百万円となりました。
海外子会社においては、半導体関連、鉄鋼関連の受注が好調であったことに加え、円安の影響もあり、当セグメントの売上高は前期比20億61百万円(28.4%)増の93億19百万円、セグメント利益(経常利益)は同14億38百万円(76.0%)増の33億30百万円となりました。
溶射加工(単体)、国内子会社、海外子会社以外のセグメントについては、新技術の適用による底上げを図ることができた一方で、農業機械部品の在庫調整によりTD処理加工が低迷したことから、売上高の合計は前期比1億38百万円(4.6%)減の28億80百万円、セグメント利益(経常利益)の合計は同1億12百万円(21.0%)減の4億22百万円となりました。
当連結会計年度末における総資産は816億76百万円となり、前連結会計年度末比37億36百万円増加いたしました。これは、現金及び預金の減少などで流動資産が3億82百万円減少した一方、設備投資の実施、株式会社寺田工作所の買収に伴うのれんの発生、タイ現地法人の完全子会社化(非連結子会社)などで固定資産が41億18百万円増加したことによるものであります。
一方、負債は159億44百万円と前連結会計年度末比20億70百万円減少いたしました。これは主に当社支払条件の見直し(短縮化)による仕入債務の減少や長期借入金の返済などによるものであります。
また、当連結会計年度末における純資産は657億31百万円と前連結会計年度末比58億06百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金の増加によるものであります。この結果、当連結会計年度末の1株当たり純資産は1,020円04銭(前連結会計年度末比86円96銭の増加)、自己資本比率は74.3%(同3.1ポイントの上昇)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ20億65百万円減少し、175億91百万円となりました。
なお、当連結会計年度における各活動別のキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は、前期比12億00百万円(15.2%)増の90億77百万円となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益121億97百万円、減価償却費32億83百万円であり、支出の主な内訳は法人税等の支払額23億46百万円、仕入債務の減少額20億18百万円であります。
当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は、前期比15億59百万円(33.7%)増の61億94百万円となりました。支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出55億24百万円、タイ現地法人の完全子会社化(非連結子会社)に伴う投資有価証券の取得による支出10億19百万円であります。
当連結会計年度における財務活動の結果使用した資金は、前期比18億82百万円(58.1%)増の51億24百万円となりました。支出の主な内訳は、配当金の支払額34億46百万円、長期借入金の返済による支出13億26百万円であります。
前年度に引き続き、慎重な資金運営を行った結果、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー)は28億83百万円と健全な状態を維持していると考えております。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額は、販売価格によっております。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、所得環境の改善に伴う個人消費の持ち直しによる経済活動の活発化や、企業の設備投資の継続などから緩やかな回復基調で推移しました。一方、世界経済においては、地政学リスクの高まりやエネルギー価格の高止まりなどの影響により、依然として不透明な状況が続いております。
このような状況のもと、当社グループの売上高は、産業機械分野や農業機械分野が減収となったものの、生成AI・データセンターなどの世界的な需要増を背景に好調な受注が継続した半導体分野をはじめ、鉄鋼分野や紙・パルプ、フィルム、エネルギーなどの各分野も堅調に推移し、前期比で大幅な増収となりました。利益面につきましても、半導体分野の需要回復による高機能・高付加価値製品の販売が拡大したことに加え、一層のコスト削減を行った結果、大幅な増益となりました。
最大セグメントの溶射加工(単体)が、売上高を牽引するほか、海外子会社も好調であったことから、当連結会計年度の売上高は542億31百万円(前期比16.0%増)となりました。
セグメント別の内訳は、溶射加工(単体)が392億13百万円(前期比15.8%増、構成比72.3%)、国内子会社が26億56百万円(前期比8.1%増、構成比4.9%)、海外子会社が93億19百万円(前期比28.4%増、構成比17.2%)、その他が28億80百万円(前期比4.6%減、構成比5.3%)、受取ロイヤリティー等が1億61百万円(前期比13.7%増、構成比0.3%)となっております。
利益率の高い半導体分野の売上増加や退職給付会計における数理計算上の差異一括償却の影響による退職給付費用の戻入があった一方で、賃上げの実施・人員増、積極的な設備投資による減価償却費の増などの結果、売上原価は339億84百万円、販売費及び一般管理費が79億75百万円となり、当連結会計年度の営業利益は122億71百万円(前連結会計年度の営業利益91億97百万円に比べ30億74百万円(33.4%)増)となりました。なお、売上高営業利益率は、前期比2.9ポイント増の22.6%であります。
また、当連結会計年度における研究開発費の総額は15億69百万円(連結売上高比率は2.9%)であり、目標とする連結売上高比3%程度の水準を維持しております。
当連結会計年度における営業外損益(収益)は、円安幅の減少による為替影響もあり、純額で2億89百万円となりました。この結果、経常利益は125億61百万円(前連結会計年度の経常利益96億62百万円に比べ28億98百万円(30.0%)増)となりました。なお、売上高経常利益率は、前期比2.5ポイント増の23.2%であり、前期に引き続き目標とする20%を維持しています。セグメント別の内訳は、溶射加工(単体)が88億68百万円(前期比41.1%増、売上高経常利益率22.6%)、国内子会社が3億49百万円(前期比29.1%減、売上高経常利益率13.1%)、海外子会社が33億30百万円(前期比76.0%増、売上高経常利益率35.7%)、その他が4億22百万円(前期比21.0%減、売上高経常利益率14.7%)となりました。
当連結会計年度においては、特別利益として保険解約返戻金31百万円、固定資産売却益1百万円、特別損失として環境対策費1億94百万円、減損損失1億57百万円、固定資産除売却損44百万円を計上いたしました。この結果、税金等調整前当期純利益は121億97百万円(前連結会計年度の税金等調整前当期純利益96億55百万円に比べ25億41百万円(26.3%)増)となりました。
当連結会計年度における実効税率(税金等調整前当期純利益に対する法人税等の比率)は29.2%で、当期純利益は86億38百万円となりました。非支配株主に帰属する当期純利益が5億86百万円となったため、親会社株主に帰属する当期純利益は80億52百万円(前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益63億26百万円に比べ17億25百万円(27.3%)増)となりました。また、1株当たり当期純利益は135円45銭(前年度105円53銭)となりました。また、自己資本純利益率(ROE)は13.9%と前年度(11.6%)に比べ改善したものの、目標とする15%に届きませんでした。株主資本価値を更に高めるため、引き続き3つの施策(収益力の向上、現預金水準の最適化、株主還元の強化)を通じてROE15%の安定的な達成を目指します。
財政状態に関する認識及び分析・検討内容は下記となります。なお、資産については、事業セグメントに配分していないため、財政状態についてのセグメント別内訳は記載しておりません。
当連結会計年度末における流動資産の残高は399億60百万円で、前連結会計年度末に比べ3億82百万円減少いたしました。主な要因は、現金及び預金の減少24億21百万円、受取手形及び売掛金の増加11億88百万円、原材料及び貯蔵品の増加6億54百万円であります。
なお、当連結会計年度末における流動比率(流動資産の流動負債に対する割合)は295.9%(前連結会計年度末は281.9%)であります。
当連結会計年度末における固定資産の残高は417億16百万円で、前連結会計年度末に比べ41億18百万円増加いたしました。主な要因は、積極的な設備投資により有形固定資産が23億24百万円増加したことや、タイ現地法人の完全子会社化(非連結子会社)等により、投資その他の資産が14億93百万円増加したこと、株式会社寺田工作所の買収に伴うのれんの発生等により、無形固定資産が3億00百万円増加した事などによるものであります。なお、当連結会計年度の設備投資総額は50億32百万円であります。
また、当連結会計年度末における固定比率(固定資産の純資産に対する割合)は63.5%(前連結会計年度末は62.7%)、固定長期適合率(固定資産の長期資本(純資産と固定負債の合計)に対する割合)は61.2%(前連結会計年度末は59.1%)であり、当社グループの設備投資の現状に関して、問題のない水準であると判断しております。
当連結会計年度末における流動負債の残高は135億06百万円で、前連結会計年度末に比べ8億01百万円減少となりました。主な要因は、当社支払条件の見直し(短縮化)により電子記録債務が32億59百万円減少した一方で、未払法人税等が14億65百万円増加したことなどによります。
当連結会計年度末における固定負債の残高は24億38百万円で、前連結会計年度末に比べ12億68百万円減少いたしました。主な要因は、長期借入金の返済による減少11億94百万円であります。
当連結会計年度末における純資産の残高は657億31百万円で、前連結会計年度末に比べ58億06百万円増加いたしました。これは主に、株主資本の増加46億39百万円、非支配株主持分の増加6億20百万円、為替換算調整勘定の増加5億36百万円などによるものであります。
この結果、当連結会計年度末の1株当たり純資産は1,020円04銭(前連結会計年度末比86円96銭の増加)、自己資本比率は74.3%(前連結会計年度末比3.1ポイントの増)となりました。今後も目標とする経営指標である70%程度の自己資本比率を維持することで、健全な財務体質を確保していくことが、当社グループにとりまして重要であると判断しております。
なお、当連結会計年度の剰余金の配当につきましては、中間配当は1株当たり30円を実施し、期末配当は1株当たり38円を2025年6月26日開催予定の定時株主総会で決議して実施する予定であります。この結果、連結配当性向は50.2%、純資産配当率(DOE)は7.0%となります。
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は20億65百万円減少し、期末残高は175億91百万円となりました。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、次のとおりであります。
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループの運転資本や設備投資に係る財源としましては、営業活動により得られる資金以外に、資金需要に応じた金融機関からの借入を基本としております。
手許資金の流動性につきましては、適正な水準の現預金残高を維持するよう財務部門での資金計画に基づいた管理を行なっておりますが、運転資金の効率的な調達のため、取引銀行と30億円の貸出コミットメント契約を締結しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」における(重要な会計上の見積り)に記載しております。
(注) 上記については、ロイヤリティーとして販売価格の一定率を受取るほか、イニシャルペイメントを受取っている場合もあります。
中期経営計画のビジョンに沿い、当社は74期も「人と自然の豊かな未来に貢献するコーティング技術開発」を研究開発活動の理念として掲げ、表面改質技術を軸に新たなビジネスモデルの確立を目指しました。先進的コーティングの開発、環境負荷の低減、モノづくりの高度化、そして人材育成を活動の基本とし、独創的な研究開発を進めております。多様化する顧客のニーズに対応するため、様々な技術的アプローチを通じて、表面改質技術を核とした顧客満足度の高い総合的なソリューションを徹底的に追求し、その実現に尽力いたします。
当社の研究開発活動は、将来を見据えた先行的な基礎研究と、顧客のニーズに迅速に対応する商品開発という2つの柱で推進し、以下の3点を重点的な研究開発領域としております。
① 溶射技術開発(一般的な産業機械・装置の部材開発、溶射プロセスの開発)
② 半導体部品化技術(溶射技術を中心とした半導体・液晶パネル製造装置部品などの開発)
③ 成膜プロセス開発(レーザ応用、PVD、CVD、TD、ZAC)、有機コーティング
当社グループの研究開発活動は、主に溶射技術開発研究所が中心となり推進しており、顧客ニーズに対応した機能性皮膜の開発を行うため、近い将来の技術動向の調査・検討、新たな機能性皮膜の創出、知的財産の取得推進、学術・業界団体への参加や発表、そして技術情報の収集を通じて研究開発レベルの向上を図っております。一方で、多様化する顧客ニーズへの対応が求められる次世代商品の開発や生産技術上の課題については、各工場や事業所の営業、製造、技術部門と溶射技術開発研究所が緊密に連携しながら、迅速な対応を進めております。なお、PVD(物理蒸着)やDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの薄膜プロセスに関しては、連結子会社である日本コーティングセンター株式会社と協力しながら研究開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は
74期では、当社の中期経営計画および研究開発活動の方針にあわせ、「半導体製造装置」および「環境・エネルギー」分野の用途拡大を重点テーマとして、表面改質技術の適用開発による環境負荷低減や高機能部材の提供を推し進めてまいりました。半導体分野におきましては、製造装置メーカ向けにメモリICやロジックICの製造装置を構成するチャンバー部品や静電チャックへのコーティング開発を継続しております。特にプラズマエッチング装置部品では、ナノレベルの配線幅を持つ集積回路の増産にも対応できる高性能なコーティングとして、皮膜組織の緻密化を目的とした成膜プロセスの開発、部材の温度制御に係る溶射ヒータや測温技術開発、計算科学を用いた皮膜構造設計ならびに成膜条件の最適化、製品展開における生産技術開発、またこれらの開発に必要となる評価機器設備の導入や評価技術の高度化など、様々なコーティング開発を進めております。環境・エネルギー分野におきましては、脱炭素と資源循環社会の実現に向けた取り組みの中で、従来からの高効率ガスタービン火力発電などの設備に適用する熱遮蔽皮膜だけでなく、水素、アンモニア燃料による発電に対応すべく、皮膜模索やその性能評価を進めました。また、ボイラ発電設備におけるバイオマスおよびアンモニア混焼時に発生する高温腐食に耐える溶射皮膜の開発も継続的に進めております。また、一方、事業活動における環境負荷低減策として、溶射施工時に発生する二酸化炭素の排出を抑制するためのグリーン燃料導入の検討や、成膜時の歩留まり向上、溶射時に発生する粉塵の廃材のリサイクルにも積極的に取り組んでおります。
国内子会社の日本コーティングセンター株式会社では、主にPVDやDLCの受託加工を行っております。自動車産業向けのエンドミル、ドリルなどの切削工具や歯切り工具、プレス金型、機械部品への表面処理を手広く実施しております。昨年度は、株式会社デンソーと共同で、切削工具のリユース回数を増やしても工具径の減少が極めて少なく、工具寿命を大幅に延長する環境貢献型製品「Decоatα」を開発し上市しました。また、半導体装置向けに、耐プラズマエッチング性、耐熱性を備えたPVD膜のELIPシリーズ、均一なDLC薄膜のスリックnanоシリーズ、ESD対策用DLC膜のTHОRスリックの拡販を進めました。その他、自動車のEV化に伴う各種部品を対象に、様々な加工方法に対応した被膜開発の検討を実施しました。
海外子会社である台湾の漢泰国際電子股份有限公司では、主に半導体、FPD製造装置部品への再コーティングを行っております。台湾の半導体製造メーカでは最先端製品の生産が行われており、漢泰国際電子股份有限公司では最新の皮膜分析装置を導入し皮膜開発を進めております。
昨年度は薄膜技術の需要に注目し、PVD皮膜の外注販売を開始しました。またその皮膜品質の改善のため洗浄の改善評価を行いました。さらに同社においても同様のPVD装置を導入することで客先からのコストと納期短縮における要求に応えてまいります。
当社は溶射加工以外に、TD処理加工やZACコーティング加工、PTA処理等の肉盛り加工など、機能皮膜の継続的な商品開発を行っております。このうちZACコーティング加工の部門では、ステンレス製配管内面に被覆可能な薄膜を開発し、半導体製造装置の部品に対する適用開発を進めています。その他、レーザ技術の応用開発におきましては、LMD(レーザクラッディング)施工時の基材ひずみを制御するべく、計算科学を用いたシミュレーション技術の研究を進めました。また、LMDよりも皮膜の残留応力が小さいEALA(ハイスピードレーザクラッディング)皮膜の基礎評価や、実機製品に対する適用開発を積極的に進めました。
当社グループは積極的な特許出願によって、開発した技術及び皮膜商品の権利化に努めております。当連結会計年度の実績は、特許出願32件、特許登録27件であります。