当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「橋梁、建築、沿岸構造物等の社会インフラの建設・維持・補修の事業を通じ、豊かな国土と明るい社会創りに貢献する」ことを経営理念としております。この経営理念に基づき、コンプライアンス・リスク管理体制を整備・適切に運用して、公正な競争、社会や顧客のニーズに応える安全で優れた製品・施工・サービスを提供し、グループの持続的な成長の実現・維持を目指すとともに、株主・投資家をはじめ取引先、従業員、地域社会などのすべてのステークホルダーに対して企業としての社会的責任を全うできるよう努めてまいります。
(2)経営環境、経営戦略及び優先的に対処すべき課題
わが国経済の見通しにつきましては、「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージにむけて~」およびその裏付けとなる令和5年度補正予算ならびに令和6年度予算が迅速かつ着実に執行され、30年来続いてきたコストカット型経済から持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済へ変革するため、新しい資本主義の取組が加速されることが期待されます。しかしながら、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスク、物価上昇や中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
そのような状況下において、当社グループの主力である橋梁事業につきましては、2024年度の発注見通しとして新設関連で2,500億円(当社推定値)、大規模更新・保全関連で2,800億円(当社推定値)と前年度と同規模程度の発注量が見込まれております。依然として通常の新設橋梁においては熾烈な受注競争が続いている一方、質的にも量的にも高い技術力と施工能力が求められている高速道路の大規模更新工事(事業規模約7兆円)においては今後も順調な発注が見込まれており、さらには高難度ビッグプロジェクトの発注も予定されていることから、中期的に当社グループが飛躍する事業環境であると考えます。また、鉄道関連についても、首都圏ではターミナル駅の再開発事業や連続立体交差事業、大型跨線橋や改築工事などを中心に数多くの計画が予定されており、当社グループが持つ安全・安心で高度な技術力の強みを、これまで以上に発揮できるものと考えております。
このような事業環境の中、グループとしての経営管理体制を一層強化してより強固な収益基盤にするとともに、グループの中核である宮地エンジニアリング株式会社とエム・エム ブリッジ株式会社と一体となり、他社よりも一歩先を行く会社としてステークホルダーの皆様と「共に歩み」「共に成長する」企業とするため、当社は2022年度を初年度とする中期経営計画を策定して取り組み、2年目となる当期においては目標を上回る業績を達成することができました。今後も引き続き、国内鋼橋市場の変化・動向を踏まえ、持てる経営資源を新設関連工事、大規模更新・保全関連工事、民間工事(鉄道関連、大空間・特殊建築物、沿岸構造物の工事を含む)に適切に配分した最適経営を行うとともに、技術開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)に基づく生産性向上ならびに人材の確保・育成、女性活躍を推進し、働き方改革を進め、中期経営計画の達成に努めてまいります。
なお、2025年3月期の連結業績につきましては、中期経営計画の中間目標を上回る、売上高730億円、営業利益95億円、経常利益96億円、親会社株主に帰属する当期純利益44億円と予想しております。
宮地エンジニアリンググループは、「橋梁、建築、沿岸構造物等の社会インフラの建設、維持・補修の事業を通じ、豊かな国土と明るい社会創りに貢献する」との経営理念のもと、グローバルな社会課題解決に向け、事業を通じて取り組み、サステナブルな社会の実現に向けて貢献してまいります。
(1)ガバナンス
当社は、取締役の過半数以上を占める社外取締役が委員を務める監査等委員会設置会社を採用して、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を図るとともに、内部統制システムの実効性を高め、コンプライアンスの推進・徹底とリスクマネジメントの構築・推進に積極的に取り組んでおります。
①コーポレート・ガバナンス
当社のコーポレート・ガバナンスへの取り組みについては、「
②株主との建設的な対話に関する方針
当社は、株主の意見を真摯に受け止め、経営に反映するため、的確かつ迅速な経営情報の開示を行うとともに、株主との建設的な対話を通じて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めております。
その方針に基づき、IRの担当取締役とIR室を中心として、株主との積極的な対話を心がけております。また、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会(2回/年)を開催し、その資料と動画を当社ホームページに掲載しております。なお、会社概要、経営方針、グループ構成、コンプライアンス(企業行動憲章)、IR情報(招集通知、報告書、中間報告書、決算短信、有価証券報告書、その他開示書類等)などの情報につきましては、当社ホームページにおいて即時開示に努めております。
③会社情報の適時開示に係る社内体制
当社は、投資者に適時適切な会社情報の開示を行うことを基本姿勢として、以下の社内体制により対応しております。
ⅰ)決定事実に関する情報
決定事実に関する情報は、定例取締役会、必要に応じて開催される臨時取締役会、その他重要な会議において決定した事実に対して、株式会社東京証券取引所の定める適時開示基準または法令に基づき適時開示を行っております。
ⅱ)発生事実に関する情報
発生事実に関する情報は、発生した事象に係る所管部署が、取締役会等に報告を行います。この情報について、適宜、会計監査人、顧問弁護士等の専門家に助言・指導を受けながら、情報取扱責任者を中心にIR室、総務・人事部、企画・管理部において適時開示の必要性の有無を検討しております。
適時開示基準に該当する発生事実に関する情報は、原則として取締役会での決議を受けた後、遅滞なく適時開示を行っております。
ⅲ)決算に関する情報
決算に関する情報は、適宜、会計監査人に助言・指導、監査を受け、取締役会において決定し、適時開示を行っております。
ⅳ)事業子会社に関する情報
当社は、持株会社としてグループの統括・管理を行っております。
事業子会社の取締役会等重要な会議での決定事項ならびに外的要因による事象の発生については、情報管理部門からIR室、総務・人事部または企画・管理部に報告が行われ、社内規則に定める基準に則り、当社においても取締役会等で決定、もしくは報告が行われます。
事業子会社より報告された事業子会社に関する情報は、適宜、会計監査人、顧問弁護士等の専門家に助言・指導を受けながら、情報取扱責任者を中心にIR室、総務・人事部、企画・管理部において適時開示の必要性の有無を検討しております。
適時開示基準に該当する事業子会社に関する情報は、原則として取締役会での決議を受けた後、遅滞なく適時開示を行っております。
ⅴ)その他の重要な情報
その他の重要な情報は、適宜、会計監査人、顧問弁護士等の専門家に助言・指導を受けながら、情報管理責任者を中心にIR室、総務・人事部、企画・管理部において適時開示の必要性の有無を検討しています。
適時開示基準に該当するその他の重要な情報は、原則として取締役会での決議を受けた後、遅滞無く適時開示を行っております。
④取締役会の役割・責務
当社の取締役会の役割・責務については、「
⑤ガバナンス強化
当社は、2023年度に当社グループの経営活動上の課題として特定したマテリアリティに対する取り組みを強化するため、代表取締役を委員長、取締役を副委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、課題解決に向けた積極的な議論を行い、対策を推進しております。また、取締役会への報告等をより積極的に推進し、マテリアリティへの経営陣の関与をさらに高めるためのガバナンス強化を進めております。(下記体制図参照)
(2)戦略
宮地エンジニアリンググループは、企業としての社会的責任を認識した上で、サステナブルな社会に必要な課題の解決に向けて、企業として適切な取り組みを行うことをコンプライアンス・リスク管理基本規程に定め、その具体的な行動指針として、企業行動憲章と行動規範を定めており、SDGsの達成に向けて積極的な取り組みを行っております。
①コンプライアンスの推進
当社および各事業子会社は、社内で就業するすべての人々の法的および社会的安全と価値を守るとともに、社会的責任を追及する企業統治の確立を図るため、別に定める企業行動憲章および行動規範に従い、次に掲げる基本方針でコンプライアンスに取り組んでおります。
ⅰ)基本的な考え方
1)コンプライアンスに照らして問題ある活動に関与しない。
2)違反、逸脱、過失等は素直に認め、速やかに是正措置と再発防止措置を講じる。
3)組織における役割、責任、権限ならびに情報の伝達経路を明らかにする。
4)すべての役員および社員等に対して十分な教育と厳格な評価を継続して行う。
5)管理方針と企業行動憲章および行動規範に基づき、宮地エンジニアリンググループ各社は毎年度、適切な自己監査を行う。
6)企業としての社会的責任を認識した上で、サステナブルな社会に必要な課題の解決に向けて、企業として適切な取り組みを行う。
7)経営の優先課題としてコンプライアンス推進活動に取り組む。
ⅱ)コンプライアンスの推進体制について
当社は、コンプライアンスの推進・徹底を図るための組織として、取締役会の下に「コンプライアンス・リスク管理委員会」を設置する。
ⅲ)コンプライアンスの定義について
コンプライアンスとは、組織の業務や組織が扱う財・サービス、組織が生み出す価値(以下、「企業価値」という。)、組織としての社会的責任(以下、「社会的責任」という。)および組織に対する社会的評価(以下、「社会的評価」という。)に関連する法令等(各種法令の他、通達・告示・ガイドライン・要綱等や、当社が定める定款、社内規程類、その他社会一般の求められるルール等を含む。詳細については「ⅳ)対象とする法令等の範囲について」に記載のとおり。)への抵触リスクを対象とし、かつ損失の未然防止を図る組織内活動をいう。
ⅳ)対象とする法令等の範囲について
当社におけるコンプライアンスが対象とする法令等の具体的な範囲は下記のとおりとする。
1)国が定める各種法令
2)各種行政機関が定める通達・告示・ガイドライン・要綱等
3)当社または事業子会社が所属する組織が定める各種規程等
4)当社が定める定款、経営理念、企業行動憲章、行動規範およびその他各種社内規程
5)社会一般のルール
6)社会通念上の各種規範および倫理観
7)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)
ⅴ)反社会的勢力排除に向けた基本的な考え方およびその整備状況
1)基本的な考え方
当社は、グループ企業行動憲章および行動規範において、反社会的勢力とは一切関係を持たないことを明確に定めており、社員に周知徹底しております。
2)整備状況
総務・人事部が担当となり、定期的に外部専門機関他との情報交換会に出席するなど、情報収集に努めており、被害防止に役立てております。また、不当な要求を受けるなどの事案が発生した場合には、外部専門機関・顧問弁護士と連携して対応する体制を構築しております。
②人材への取り組み
ⅰ)基本的な考え方
他業界同様、建設業界でも少子高齢化と生産年齢人口の減少に伴う人材不足という課題を抱える中、持続的成長を続けるためには、イノベーションを生み出すような職場環境の整備とともに、人材の確保と育成は重要な課題です。宮地エンジニアリンググループは、新たな価値を創造できる人材の育成と、そのために必要な人材確保へ向けた計画的な取り組みを行い、技術、技能、知識ならびに大切な企業文化の伝承および更なる向上に努めるとともに、グループとしてのサステナブルな成長を目指します。
ⅱ)ダイバーシティの推進
宮地エンジニアリンググループは、企業の持続的な発展のためには多様な背景を持つ人材が活躍することが必須であると認識しております。宮地エンジニアリンググループではかねてよりコーポレートガバナンス・コードに示された属性の登用などに係る測定可能な目標設定の努力とともに、事業環境の変化などを捉えて弾力的な運用を行うことができるように、過度な成果主義を改め、全社員を共通の基準(努力する業務姿勢と管理職にあってはマネジメント力)で評価する方針を採っており、指標となるべき企業行動憲章や行動規範を定め、女性・外国人・中途採用者を含めた全従業員が十分に活躍できる環境を整えております。中でも、「女性活躍・外国人活躍」は建設業界として積極的に進めなければならない課題であり、女性については、事務系のみならず技術系、技能系とともに積極的に採用して戦力化を進め、外国人についても、異文化の感性を社内に持ち込むことは会社の活性化、意識改革のためのメリットが大きいと考え、積極的に採用を進めております。
ⅲ)イノベーションを生み出す職場環境の整備
制度面も含めた職場環境の整備は、従業員エンゲージメントを高める上で重要な課題の一つです。宮地エンジニアリンググループでは、性別を問わずすべての従業員が仕事と家庭でより充実した生活を過ごすことができるように、さまざまな制度を設けるとともに、快適な職場環境の整備にも努めております。その具体的な内容の一部につきましては、次のとおりであります。
1)働き方改革による残業時間の抑制
従業員のメンタルおよびフィジカル面双方での健康管理のため、グループ各社では水曜日をノー残業デーに定めるとともに、DXを活用した業務効率化等による残業時間の削減等を進め、従業員が仕事と家庭の両立に取り組むことができる環境の整備に努めております。
2)育児休業制度の整備
グループ各社では、性別を問わず、子供が3歳未満の間に認められる育児休業制度や、中学生未満の間は1日4時間の短時間勤務を可能とする育児勤務制度等を定め、次世代育成および仕事と家庭の両立を積極的に支援しております。
3)介護に伴う制度の整備
グループ各社では、従業員に近親者の介護をする必要性が生じた場合に備え、一定期間の休暇を取得できる介護休業制度や、再雇用を前提とする退職制度、1日4時間の短時間勤務を可能とする介護勤務制度などを定め、個々の状況に応じたさまざまな支援制度を充実させております。
4)職場環境の改善
グループ各社は、従業員の増加に伴う作業スペースの拡張や引っ越し等による拡大などを適宜行うとともに適切な設備更新等を行い、快適な職場環境の維持と向上に努めております。
ⅳ)計画的な人材確保への取り組み
新卒ならびにキャリア採用ともに、必要とする人材のターゲットを多面的な要素から絞った採用活動を毎年計画的に進めると同時に、従業員満足度の向上により近年社会的な課題となっている若手従業員の定着率向上を図り、グループとしてこれからのサステナブルな成長に必要不可欠な人材の確保に努めております。具体的には、一般職や技能職から総合職への転換等、多様な働き方のメニューを取り揃えることにより、優秀な人材を登用する門戸を広げるとともに、若手従業員の仕事と能力のミスマッチによる離職を防ぐ取り組みを行っております。また、将来人材育成の一環として、大学院生への奨学金制度などの整備にも取り組んでおります。
ⅴ)技術・技能および企業文化伝承への取り組み
技術・技能および企業文化の次世代への伝承は、多くの貴重な経験と知見を有する従業員の高齢化が進む建設業界の重要な課題の一つであり、グループ各社も新入社員教育や中堅社員研修等の教育カリキュラムの設定や、各種資格取得の支援、現場OJTによるベテラン従業員の指導等により、それらの伝承および維持向上に取り組んでおります。その具体的な内容の一部につきましては、次のとおりであります。
1)公的資格取得奨励制度
グループ各社では、一級土木施工管理技士や技術士等の資格取得を奨励するため、受験料の他に資格取得のための受講料を援助するとともに、合格者に対しては奨励金等の支給も行っております。
2)具体的な職能基準の設定
グループ各社では、部門ごとに職能に応じた具体的に習得するべき技能や技術等の内容を定め、個人ごとにそれに基づくOJTを主体とした教育・指導方針を定めた上で人材育成に取り組んでおります。
3)博士号取得奨励制度
グループには、博士号取得のための大学院への留学制度や、支援制度等があります。
ⅵ)グループの将来を担う人材育成への取り組み
会社としてのマネジメント能力の強化は、サステナブルな成長のために重要な課題の一つです。グループでは経営幹部の共通した評価基準を定め、レポート提出により重要課題への施策や取り組み状況などを確認し、フォローしております。また、グループ各社では、個人の能力を適切に評価し、その能力に見合った立場を与える制度を充実させるとともに、一定以上の立場の管理職に対して複数年にわたる外部マネジメント研修を受講させる等の対応により、俯瞰的な視野を持ち、リーダーシップを発揮する優秀な人材を育成する取り組みを行っております。
③環境への取り組み
ⅰ)基本的な考え方
宮地エンジニアリンググループは、企業行動憲章および行動規範において「環境の保全」を行動基準として定め、環境に配慮した事業活動を推進するとともに、気候関連財務情報の開示を推進します。
ⅱ)環境に配慮した取り組みについて
宮地エンジニアリンググループは、工場・工事現場で発生する廃棄物の抑制等に取り組みます。特に建設副産物についてはリサイクルや適正処理に十分配慮した事業活動を行います。また、事業活動の全過程において、環境負荷の低減を目指し、省資源・省エネルギー化を推進し、地球環境の保全や温暖化防止のために努力します。
また、社会インフラづくりに資する新設橋梁事業はもとより、インフラの老朽化に対する橋梁の保全・維持補修事業そのものが「環境配慮型社会の実現」に資するものと捉え、積極的な事業展開を図っております。
ⅲ)環境負荷低減への取り組み
1)太陽光発電について
宮地エンジニアリンググループは、気候変動対策の一環として、松本工場跡地を利用して太陽光発電所を稼働させております。設置している太陽光パネルは7,980枚、発電量は一般家庭550世帯分の消費電力に相当する2,611,000kWh/年であり、年間469,858kgのCO2削減効果があります。今後も工場や機材センター等の建屋上への設置についても検討を進め、更なるCO2削減に努めてまいります。
2)浮体式ペロブスカイと太陽電池の共同実証実験について
当社グループの事業子会社であるエム・エム ブリッジ株式会社は、積水化学工業株式会社と恒栄電設株式会社と共に、閉校となった旧清至中学校跡地の学校プールを活用し、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を水上に設置する共同実証実験を実施しております。ペロブスカイト太陽電池の軽量性を活かした浮体構成や施工性の検証を目的として、2024年4月3日から1年間実証を行います。なお、この実験は4月3日現在、国内で最大規模のものです。当社グループは、今後も脱炭素社会への貢献を目指します。
ⅳ)省資源・省エネルギー化推進への取り組み
1)工場における具体的な活動について
すでに多くの省資源・省エネルギー化活動に取り組んできた工場においては、環境負荷を大幅に低減できる施策はなかなかないため、設備更新等に合わせて少しずつ対策を積み上げていくことが重要となります。電力使用量を従来機種よりも10%以上低減できるデジタル溶接機の導入を進めたり、照明を順次LEDに取り替える等して電力の使用効率を上げるとともに、各種設備の稼働効率を上げる等の工夫により、対策導入前より15%以上もの電力使用量を削減することができました。
2)機材センターにおける具体的な活動について
機材センターの環境負荷を低減するため、太陽光発電の導入や電動フォークリフト導入等の検討を進めております。最新の広島機材センターは、オール電化事業所として2020年より稼働しております。また、2022年度より更新工事を始めた栗橋機材センターにおいては、太陽光発電の導入を予定しております。さらには、電動フォークリフトの導入や有機溶剤の使用量削減を目標とした機材のメッキ処理推進等を順次進めており、周辺環境、職場環境の改善にも取り組んでおります。
ⅴ)地球環境保全への取り組み
1)サンゴの保全活動について
流電陽極法によって電気防食している浮桟橋で、電場が0~100mA/㎡の範囲において比較的強い場所を選ぶようにサンゴが生育していることを発見し、石垣港の沖合に電場条件の異なるサンゴ生育棚を4基設置し、無性生殖のサンゴ片を各棚に60個取り付け、成長促進効果について10年以上にわたって観察を行いました。その結果、微弱な電場はサンゴの成長を明らかに促進し、さらには微弱電流によって温度耐性が向上することが示唆されました。これらの知見を活用して、これからもサンゴの保全活動に取り組んでまいります。
ⅵ)気候関連財務情報の開示について
1)気候変動に対する宮地エンジニアリンググループとしての取組方針
ⅰ)当社グループは気候変動を重要な経営課題の一つとして認識し、2023年度より当社グループの事業活動に伴うGHG(CO2換算)排出量の開示を開始しております。当社グループは開示の質・量の高度化を進めており、2023年度に開示したScope1,2(2021年度実績)に加え、2024年度からは直接・間接排出以外のScope3 (2022年度実績)の開示も行います。
ⅱ)組織的対応としては、2022年度に実施したコンプライアンス・リスク管理基本規程の改定に加え、2023年度には環境対策を含むマテリアリティの設定をおこなうとともに、代表取締役を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、気候変動問題に対する取締役会レベルでの関与をさらに強化しました。また、当社グループに対する環境影響を測るシナリオ分析、リスク・機会分析も開始します。
ⅲ)今後も、当社グループはサステナビリティ推進委員会における活発な議論を通じ、取締役会レベルでもカーボンニュートラル方針の深化・強化を進めることで、ガバナンスを強化して全社一丸となり、気候変動課題への取り組みをより一層進めます。
2)開示項目: グループの事業活動に伴う自社のGHG(CO2換算)排出量を公表 (2022年度分)
Scope 1: 770.22 トン(前年比増加+34%)※昨年度Scope3と想定していた項目を見直したために増加
Scope 2: 2,329.81 トン(前年比減少△6%)
Scope 3:184,290.50 トン(本年度より開示)
3)排出削減目標
直接排出(Scope1)および間接排出(Scope2)につきましては、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2024年度より計画的に検討を進めてまいります。
4)気候変動に関するシナリオ分析に基づくリスク・機会への考察
ⅰ)2024年度より、当社グループに影響を与える気候変動関連のシナリオ分析を行い、環境影響から生じるリスク・機会の考察を開始します。想定されるシナリオとしては、国連気候変動政府間パネル(IPCC)の設定する1.5℃シナリオ(温度上昇を積極的に抑制)と4.0℃シナリオ(現状の延長線)を採択しております。
ⅱ)当社グループ全体としてリスクサイドのみならず、機会サイドについても将来の事業の進展に資するものと捉え、今後も積極的に分析の高度化を図ってまいります。
5)グループ全体のガバナンス強化
ⅰ)2022年度のコンプライアンス・リスク管理基本規程の改正に加え、2023年度は取締役会にて気候変動対策を含んだマテリアリィの策定・設定を行いました。
ⅱ)当社代表取締役を委員長、取締役を副委員長とするサステナビリティ推進委員会の下に、気候変動対策・カーボンニュートラル検討分科会を設置し、気候変動対策に関する積極的な議論を行い、2050年のカーボンニュートラルに向けた対策を推進します。
ⅲ)取締役会への気候変動課題の報告等をより積極的に推進し、同時に経営陣の関与をさらに高めるためのガバナンス強化を進めております。
6)シナリオ分析に基づくリスク・機会の考察
ⅰ)1.5℃シナリオ(積極的に緩和措置に対応)でのリスク
当社グループにおいての1.5℃シナリオ下のリスクは、主に以下の4点と想定される。
◇政策・法規制:環境対応規制強化によるコスト上昇、政府の方針変更による工事発注量減少、炭素税導入によるコスト上昇
◇技術・製品:環境対応製品等の供給逼迫とコスト上昇、同製品等への転用時の強度・安全性への懸念
◇市場:スペックの高度化・環境対応への負荷上昇、技術者・人員の不足。同業他社との競争熾烈化
◇レピュテーション・企業価値:環境対応遅延による株価低迷、入札機会の減少、採用活動への影響
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リスク・機会 |
サプライ チェーン |
影響度 (短期) |
影響度 (中期) |
影響度(長期) |
説明 |
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移行リスク |
現行の規制 |
調達 |
中 |
中 |
高 |
カーボンプライシング制度の導入が進み、CO2排出権の価格が高騰すると予測されるため、温室効果ガスの排出量が多い産業にとってはコスト増の要因となると想定されている。また、低炭素製品や技術への投資失敗等の長期的な技術リスクがある。 |
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売上 |
中 |
中 |
高 |
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新たな規制 |
調達 |
中 |
高 |
高 |
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売上 |
中 |
高 |
高 |
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法規則 |
調達 |
低 |
低 |
低 |
訴訟エクスポージャーなどのリスクがあるが、当社グループの主要な調達先や顧客への大きな影響は予想されない。 |
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売上 |
低 |
低 |
低 |
|||
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技術リスク |
調達 |
中 |
中 |
中 |
低炭素製品や技術へのシフトが進むことによるコストの上昇や、安全性への対応が懸念される。 |
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売上 |
中 |
中 |
中 |
|||
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市場リスク |
調達 |
高 |
中 |
中 |
環境対応による原価の変動により一時的なリスクが考えられるが、インフラ事業は中長期的には安定すると考えられる |
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売上 |
高 |
中 |
中 |
|||
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評判リスク |
調達 |
中 |
中 |
中 |
環境対策が不十分であることにより調達先や取引先からの評判リスクが断続的に考えられる。 |
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売上 |
中 |
中 |
中 |
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ⅱ)1.5℃シナリオ(積極的に緩和措置に対応)での機会
同時に、積極的な緩和措置に対応することで、当社グループへの機会も以下のとおり想定される。
◇政策・法規制:電力のカーボンニュートラル化を先行的に進めることで、炭素税導入コストの軽減に資することが可能となり、コスト軽減に繋がる
◇技術・製品:環境対応部材への適応を積極的に進めることで、低排出型製品・サービスを提供することが可能
◇市場:発注仕様・要件の高度化・環境対応への高度化・スピード化により、マーケットシェア向上に資する
◇レピュテーション・企業価値:環境対応優良企業としての高評価を獲得
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リスク・機会 |
サプライ チェーン |
影響度 (短期) |
影響度 (中期) |
影響度(長期) |
説明 |
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機会 |
市場 |
調達 |
中 |
高 |
高 |
低排出技術の導入等を積極的に進めることによる炭素税導入コストの軽減。入札条件に低炭素が加わった場合の発注依頼増加。 |
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売上 |
中 |
高 |
高 |
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レジリエンス |
調達 |
低 |
高 |
高 |
省エネ対策などの実施や再エネ化により機会が生まれる。 |
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売上 |
低 |
高 |
高 |
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資源の効率性 |
調達 |
中 |
中 |
高 |
効率的な輸送手段や生産プロセスによる機会の創出。 |
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売上 |
中 |
中 |
高 |
|||
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エネルギー源 |
調達 |
中 |
高 |
高 |
低排出エネルギー源を使用する建設の需要が高まり、新規受注につながる。 |
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売上 |
中 |
高 |
高 |
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製品・サービス |
調達 |
低 |
高 |
高 |
新技術の開発・導入等により低排出のサービスを提供することで将来的に機会が見込まれる。 |
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売上 |
低 |
高 |
高 |
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ⅲ)4.0℃シナリオ(現状の延長線上で推移)下のリスク・機会
4.0℃シナリオ下に想定される物理的リスクは、突発的に発生する急性リスクと恒常的な慢性リスクに大別される。
<急性リスク>
◇台風・豪雨・洪水の発生 ⇒ 土砂崩れ等による橋梁等の破損、橋梁架設・保全工事等対応時の事故リスク増加、保有機材の損壊
◇急激な天候変化 ⇒ 作業の安全性低下、機材の劣化・耐久性の低下
◇急性リスク由来の金属・非金属加工品の調達コスト上昇
<慢性リスク>
◇気温・湿度の上昇 ⇒ 野外労働環境の悪化・従業員の健康被害、塗料劣化・鋼材腐食による構造的劣化の危険、特に夏場の作業効率の低下
◇海面上昇 ⇒ 海上作業の危険性アップ、沿岸地区工場への悪影響
◇雨季の雨量増加 ⇒ 排水設備の強化・コスト増、工事中断リスクの顕在化
◇異常気象多発化による、電力供給の不安定化
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リスク・機会 |
サプライ チェーン |
影響度 (短期) |
影響度 (中期) |
影響度(長期) |
説明 |
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物理的リスク |
急性リスク |
調達 |
低 |
低 |
中 |
洪水、干ばつ、雪崩、熱波、山火事などあらゆる自然災害が予想される。主要調達のうち、金属加工や非金属加工は長期的になるほど影響を受け、調達コストが上昇する可能性がある。しかし、自然災害による橋の再建など、リスクのみでは無く機会も生まれると考えられる。 |
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売上 |
低 |
低 |
中 |
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慢性リスク |
調達 |
低 |
中 |
中 |
温度変化(空気・淡水・海水)、降水や風のパターン変化、海面上昇など自然の慢性的な変化を予想している。 建設業界においては夏場の作業効率の低下や雪や強風により工事がストップしたりなど、決して少なくはないリスクが考えられる。 |
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売上 |
低 |
中 |
中 |
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4.0℃シナリオ下で予見される物理的リスクに対しては、当社グループとして以下のような対応(機会)を想定する。
<急性リスク>
◇台風・豪雨・洪水の発生 ⇒ 架け替えや新規架設のニーズ、耐風・耐水性機材の開発
◇急激な天候変化 ⇒ 安全性の高い設計・施工技術等の開発
◇災害発生由来の土木再建ニーズの増加
<慢性リスク>
◇気温・湿度の上昇 ⇒ 安全性の高い設計・施工技術等の開発、高耐久性素材や塗料等の導入検討、快適労働環境の整備(衣類等)
◇海面上昇 ⇒ 浮体式構造物の開発・導入、千葉工場の強靭化・改修
◇雨季の雨量増加 ⇒ 排水設備の強化・充実
◇気候変動多発化による、電力供給の不安定化 ⇒ 自家発電・バックアップ電源の整備
(3)リスクマネジメントへの取り組み
①基本的な考え方
当社およびその事業子会社は、自然災害、事故などの人為的災害、および経営上のさまざまなリスクに的確に対処し、経営理念および経営目標の達成を阻害するすべての要因を可能な限り防止または予防し、排除することにより、社会的責任を果たすため、次に掲げる基本方針でリスク管理に取り組んでおります。
ⅰ)リスク管理の実践を通じ、事業の継続・安定的発展とともに企業価値および社会的評価の維持・向上を図る。
ⅱ)製品・サービスの品質と安全性の確保を最優先に、企業価値および社会的評価毀損要因の除去・軽減に努めるとともに、顧客、取引先、株主・投資家、地域社会等の各利害関係者、ならびに役員および社員等の社会的評価および経済的利益阻害要因の除去・軽減に努める。
ⅲ)社会全般において幅広く使用されている製品・サービスを安定的に供給することを社会的使命として行動する。
ⅳ)すべての役員および社員等は、コンプライアンスの精神に則り、各種法令、規則等を遵守し、それぞれが自律的に、何が正しい行為かを考え、その判断に基づき行動する。
②リスクマネジメントの推進体制について
当社は、リスクマネジメントの構築・推進を図るための組織として、取締役会の下に「コンプライアンス・リスク管理委員会」を設置しております。
③リスクマネジメントの定義について
ⅰ)リスクとは、グループ各社の企業価値、将来生み出す社会的評価および収益に対して影響を与えると考えられる事象の発生の不確実性をいう。
ⅱ)リスク管理とは、リスクに関して、組織を指揮し管理する、調整された活動をいう。グループ各社にとって危険なこと・好ましくない結果をいかに低減するかを目指すものであって、利益を極大化するためのものではない。
ⅲ)リスク管理システムとは、リスクに関する戦略的な計画策定、意思決定および他の過程などリスク管理に関する組織のマネジメントシステムの諸要素をいう。
ⅳ)危機とは、人の身体に悪影響を及ぼすような事態、企業価値に悪影響を及ぼすような事態、社会的評価を著しく低下させるような事態または財物を損壊または使用不能とするような事態により、グループ各社の経営または事業活動に重大な影響を与える、または与える可能性があるものをいう。
ⅴ)危機管理とは、危機に直面し、緊急時に至った場合に備えた事前取り組み、実際の緊急時対応に関するマネジメントをいう。
④リスクマネジメントの対象とするリスクについて
リスクマネジメントの取り組みにおいて対象とするリスクの類型は、下記のとおりとする。
ⅰ)工事現場における社会的影響の大きな事故
ⅱ)社会的影響の大きな品質不適合問題
ⅲ)国が定める各種法令や行政機関が定める通達・告示・ガイドライン・要綱等に対する違反行為
ⅳ)グループ各社が所属する組織が定める各種規程等に対する違反行為
ⅴ)上記以外の社会的な信頼および評価を著しく低下させるような行動および事象
ⅵ)社会一般のルール、社会通念上の各種規範および倫理観に著しく抵触するような行為
ⅶ)地震や台風等による大規模な自然災害
ⅷ)気候変動リスク
ⅸ)上記いずれにも属さない当社に大きな悪影響を及ぼす事象
(4)指標および目標
当社は、2022年度にグループの持続的成長のための経営活動上の課題であるマテリアリティを特定し、サステナビリティ推進委員会主導のもと、現在は指標を含めた目標とKPIの設定作業を行っており、ホームページや統合報告書2024などにより9月頃に公表する予定としております。
なお、人的資本に関する「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」、「労働者の男女の賃金の差異」の実績につきましては、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)特定の製品への依存度について
当社グループの主力事業は橋梁等鋼構造物であり、公共事業が中心となっております。特定の製品、顧客への過度の依存リスクを回避するため、国・地方自治体のほか、各高速道路会社、鉄道会社、大手建設会社などから幅広く受注すべく、積極的に営業活動を展開しておりますが、国・地方自治体の財政政策の動向等によっては、発注量・金額が抑制されて受注量・単価が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)主要原材料の価格変動・調達リスクについて
当社グループの主力事業である橋梁等鋼構造物工事は、鋼材を主要原材料として使用しております。主要原材料については、可能な限り早期の内示・発注により、必要数量の確保や採算の確定に努めておりますが、原材料価格の動向、また供給状況によっては価格の高騰、品不足からの工程遅延や採算悪化を生じる可能性があります。
(3)工場の操業に伴うリスクについて
当社グループは、千葉工場・市原工場を主たる生産拠点とし、大型機械設備を使用しております。このため重大な事故、また地震や台風などの自然災害などによる損壊・損傷、感染症の拡大など予期せぬ事態が生じた場合には、工場の操業に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、大規模地震や水害、伝染病の発生に備えて事業継続計画(BCP)を策定し、災害等の発生時には速やかに復旧する体制を整えておりますが、想定を超える規模の災害等が発生した場合には、工場のみならず、本社等の事務所や施工現場においても重大な影響が発生する可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症対策として、子会社宮地エンジニアリング株式会社およびエム・エム ブリッジ株式会社において新型コロナウイルス対策本部を設置し、従業員の自衛・予防措置を徹底するほか、不要不急の外出・出張の自粛、TV会議やWeb会議の積極的利用、時差出勤制度導入など、感染リスクを極力抑えるための方策を実行し、他の子会社においても同様な取り組みを実施しております。
(4)事故などの安全上のリスクについて
当社グループの主力事業である橋梁等鋼構造物工事は、非常に大きな重量物を扱っております。また施工場所が市街地や道路、鉄道の営業線に近接することもあり、一旦事故が発生すると重大な事故に繋がるリスクがあります。
当社グループでは、外注先業者も対象とした安全衛生大会の実施、安全衛生管理方針説明会の実施、万が一事故が発生した場合の緊急連絡体制の整備など、事故防止について最善の努力を尽くしておりますが、万が一事故を起こした場合には第三者賠償責任保険などによる備えには限界があり、直接的損害のほか社会的信用の失墜、発注機関からの指名停止措置などの行政処分を受ける可能性があります。
(5)法的規制について
当社グループは、事業を営むにあたって建設業法等の法的規制を受けております。当社グループでは、コンプライアンス・リスク管理委員会の設置、定期的なコンプライアンス教育の実施など、法令等の遵守を徹底するよう努めておりますが、遵守できなかった場合には、発注機関からの指名停止措置などの行政処分、刑事処分、民事訴訟等により、損害賠償金等が発生した場合には、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)製品の欠陥について
当社グループでは、安全・品質を所管する部署を設置し、不具合発生時の迅速な連絡・情報共有体制を確保するなど、品質管理に万全を期しておりますが、当社グループの施工物件に重大な瑕疵担保責任が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、所々で景気の足踏みがみられたものの、緩やかな回復基調が続いております。その一方で、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが景気を下押しするリスクとなっており、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響についても、注意が必要な状況が続いております。さらには、2024年1月に発生した令和6年能登半島地震の経済に与える影響や被災者への支援などについても十分留意していくことが必要です。
そのような状況下においても、当連結会計年度の公共投資は底堅く推移しており、当社グループの主力である橋梁事業における道路橋・鉄道橋の新設関連につきましても、前連結会計年度並みとなる2,755億円(当社集計値)が発注されました。一方、大規模更新・保全関連につきましては、当連結会計年度当初に予想した3,200億円(当社推定値)を下回る2,338億円(当社集計値)の発注となりましたが、今後も継続して一定規模以上の発注が見込まれるものと考えております。
このような環境下、受注高につきましては、技術的難易度の高い大型の新設関連、大規模更新・保全関連、鉄道関連工事などの受注により、過去最高となる844億86百万円(前年同期比26.8%増)となりました。
その具体的な内容は次のとおりであります。
新設関連:技術的難易度の高い第二京阪道路 門真高架橋東(鋼上部工)建設工事その2(西日本高速道路株式会社)をはじめとした受注により、343億9百万円を受注しました。
大規模更新・保全関連:日本橋区間地下化事業の一環である高速6号向島線接続地区上部・橋脚・基礎工事(首都高速道路株式会社)をはじめとした受注により、330億51百万円を受注しました。
鉄道関連:広電広島駅高架化関連工事(株式会社大林組他JV)をはじめとした受注により、141億22百万円を受注しました。
売上高につきましては、手持ち工事が概ね順調に進捗し、こちらも過去最高となる693億65百万円(同15.1%増)となりました。
その具体的な内容は次のとおりであります。
新設関連:首都圏中央連絡自動車道 五霞高架橋(鋼上部工)工事(東日本高速道路株式会社)や第二京阪道路 門真高架橋東(鋼上部工)建設工事その1(西日本高速道路株式会社)などの進捗により、271億92百万円を売り上げました。
大規模更新・保全関連:中国自動車道(特定更新)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事(西日本高速道路株式会社)や令和2年度 佐世保道路 佐世保高架橋(拡幅)工事(西日本高速道路株式会社)などの進捗により、197億42百万円を売り上げました。
鉄道関連:京阪淀川東BO架設(鹿島建設株式会社)や品川駅構内環状4号線交差部新設他(鹿島建設株式会社)などの進捗により、132億41百万円を売り上げました。
大空間・特殊建築物:新香川県立体育館鉄骨工事(株式会社大林組他JV)などの進捗により、13億39百万円を売り上げました。
沿岸構造物:令和4年度ボートレース江戸川 浮消波堤製作工事(五洋建設株式会社)などの進捗により、68億9百万円を売り上げました。
損益につきましては、生産効率化、工事採算性向上の取り組み、働き方改革による業務効率化などの活動に加え、前年度からの繰り越しによる売上増の影響により、営業利益は79億4百万円(同54.2%増)、経常利益は79億8百万円(同47.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は43億54百万円(同41.5%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(宮地エンジニアリング)
受注高につきましては、新設関連と鉄道関連の受注が好調であったため、過去最高となる450億63百万円(同16.4%増)となりました。
売上高につきましては、手持ち工事が概ね順調に進捗したことと前年度からの繰り越しの影響により、397億29百万円(同15.3%増)となりました。
損益につきましても、生産の効率化、工事採算性の向上などの活動に加え、前年度からの繰り越しによる売上増の影響により、営業利益は44億52百万円(同43.8%増)となりました。
(エム・エム ブリッジ)
受注高につきましては、大型の大規模更新・保全関連工事の受注があったことにより、過去最高となる394億17百万円(同41.2%増)となりました。
売上高につきましては、手持ち工事が概ね順調に進捗したことと前年度からの繰り越しの影響により、こちらも過去最高となる296億39百万円(同14.3%増)となりました。
損益につきましても、生産の効率化、工事採算性の向上などの活動に加え、前年度からの繰り越しによる売上増の影響により、営業利益は34億26百万円(同69.7%増)となりました。
② 財政状態の状況
資産合計は、前連結会計年度末と比較して110億94百万円増加し、741億46百万円となりました。主な要因は、現金預金が54億99百万円、受取手形・完成工事未収入金等が38億30百万円、投資有価証券が19億38百万円、それぞれ増加したためであります。
負債合計は、前連結会計年度末と比較して60億48百万円増加し、275億32百万円となりました。主な要因は、支払手形・工事未払金等が27億12百万円、未払法人税等が8億83百万円、未成工事受入金が6億84百万円、工事損失引当金が5億16百万円、長期借入金が3億円、繰延税金負債が6億98百万円、それぞれ増加したためであります。
純資産合計は、前連結会計年度末と比較して50億46百万円増加し、466億14百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が26億53百万円、その他有価証券評価差額金が14億32百万円、非支配株主持分が8億59百万円、それぞれ増加したためであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して54億99百万円増加し、191億15百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況と増減要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、88億41百万円の資金増加(前連結会計年度は4億95百万円の資金増加)となりました。主な要因は、売上債権の増加38億30百万円、法人税等の支払額17億40百万円があった一方で、税金等調整前当期純利益80億48百万円の計上、減価償却費9億53百万円の計上、工事損失引当金の増加5億16百万円、その他流動資産の減少9億18百万円、仕入債務の増加23億45百万円、未成工事受入金の増加6億84百万円、その他流動負債の増加7億53百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、15億39百万円の資金減少(前連結会計年度は7億11百万円の資金減少)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出17億53百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、18億2百万円の資金減少(前連結会計年度は21億47百万円の資金減少)となりました。主な要因は、配当金の支払額16億89百万円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
宮地エンジニアリング(百万円) |
39,726 |
15.2 |
|
エム・エム ブリッジ(百万円) |
29,590 |
13.2 |
|
その他(百万円) |
5 |
50.8 |
|
調整額(百万円) |
△9 |
- |
|
合計(百万円) |
69,312 |
14.5 |
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 |
受注残高 |
||
|
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
当連結会計年度末 (2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
|
宮地エンジニアリング(百万円) |
45,063 |
16.4 |
62,596 |
9.3 |
|
エム・エム ブリッジ(百万円) |
39,417 |
41.2 |
53,148 |
22.5 |
|
その他(百万円) |
5 |
50.8 |
- |
- |
|
調整額(百万円) |
- |
- |
35 |
- |
|
合計(百万円) |
84,486 |
26.8 |
115,780 |
15.0 |
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
宮地エンジニアリング(百万円) |
39,729 |
15.3 |
|
エム・エム ブリッジ(百万円) |
29,639 |
14.3 |
|
その他(百万円) |
5 |
50.8 |
|
調整額(百万円) |
△9 |
- |
|
合計(百万円) |
69,365 |
15.1 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
西日本高速道路株式会社 |
19,046 |
31.6 |
19,867 |
28.6 |
|
国土交通省 |
9,462 |
15.7 |
11,238 |
16.2 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(2023年度)は、2022年度を初年度とする5か年にわたる中期経営計画(2022年5月13日公表)の2年目にあたっており、本計画の数値目標(最終年度)、当連結会計年度の計画および実績は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
|
項目 |
2026年度目標 |
2022年度実績 |
2023年度実績 |
|
売上高 |
75,000 |
60,279 |
69,365 |
|
営業利益 |
7,500 |
5,127 |
7,904 |
|
経常利益 |
7,500 |
5,373 |
7,908 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
4,000 |
3,077 |
4,354 |
|
自己資本比率(注)1 |
55% |
56.3% |
53.5% |
|
ROE(注)2 |
10%以上 |
8.9% |
11.6% |
|
ROA(注)3 |
10%以上 |
8.6% |
11.5% |
(注)1.自己資本/総資産
※自己資本は純資産から非支配株主持分を除いております。
2.親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本
3.経常利益/総資産
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、受注高につきましては、技術的難易度の高い高速道路の大規模更新や大型工事の受注により、過去最高となりました。また売上高につきましても、手持ち工事が概ね順調に進捗し、過去最高となりました。損益は、生産効率化、工事採算性向上の取り組み、働き方改革による業務効率化などを引き続き推進したことに加え、前年度からの繰り越し工事が売上、利益向上に寄与したことにより、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比大幅増となりました。この結果、自己資本比率は投資有価証券含み益増加の影響もあり前年度実績より減少しましたが、ROEとROAは共に2026年度目標を上回る数値となりました。
次年度につきましては、橋梁事業では、新設関連、大規模更新・保全関連で前年度と同程度の発注量が見込まれ、事業規模約7兆円の大規模更新工事の継続的な発注や、高難度ビックプロジェクトの発注も予定されていることから、中期的に当社グループが飛躍する事業環境にあると考えており、当初の目標値を超える増収増益を見込んでおります。今後も引き続き、数値目標の達成に向けて全社を挙げて邁進してまいります。
なお、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因として、国・地方公共団体の発注量、主要原材料である鋼材の価格動向、地震や台風などの自然災害および重大な事故の発生による生産設備や架設現場の損壊・損傷、建設業法や独占禁止法等の法的規制、施工物件に関わる瑕疵担保責任等が挙げられます。当社グループといたしましては、これらの要因に対し適切に対応(受注量の確保、生産性の向上、経費節減、安全対策の徹底、法令遵守、製品・施工品質の向上)し、安定的な業績の確保を図ってまいります。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ⅰ)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
ⅱ)契約債務
2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
|
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
|
長期借入金 |
300 |
- |
300 |
- |
- |
|
リース債務(短期) |
63 |
63 |
- |
- |
- |
|
リース債務(長期) |
26 |
- |
19 |
6 |
0 |
当社グループの第三者に対する保証は、従業員の金融機関からの借入に対する債務保証であります。保証した借入の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2024年3月31日現在の債務保証額は、2百万円であります。
ⅲ)財務政策
当社グループは、運転資金および設備資金につきましては、内部資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、短期運転資金については短期借入金で、長期運転資金および設備資金については長期借入金で調達しております。
また、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計7,500百万円のシンジケーション方式のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高はありません)。
該当事項はありません。
当社グループは、主に橋梁工事の建設コスト縮減、品質向上、橋梁新製品開発および既設橋梁の維持管理、鋼構造物の生産技術、沿岸構造物の開発・実証に関連した研究開発活動を行っております。
当社グループにおける研究開発活動は、連結子会社である宮地エンジニアリング株式会社技術本部、計画本部および千葉工場技術研究所、ならびにエム・エム ブリッジ株式会社技術部および建設部が中心となり推進しております。当連結会計年度における研究開発費の総額は
1.宮地エンジニアリング
当連結会計年度における研究開発費は
(1)施工技術に関する研究
① 大規模更新に関する研究
高速道路各社において、大規模更新、大規模修繕に関する工事が相次いで発注されており、今後もこれに貢献できる、老朽化した橋梁や床版の架け替えを短期間で可能とする技術の研究・開発に取り組んでおります。
② 溶接技術に関する研究
工場溶接および現場溶接の生産性向上を目的に、高能率溶接法の適用に取り組んでおります。特に、現場溶接作業者の高齢化や若年層の不足による現場溶接作業者の減少への対応として、小型可搬型溶接ロボットの適用拡大について研究を進めております。
③ 工場製作のDX推進への取り組み
工場製作のDX推進による生産性向上を目的に、協働ロボットの適用について検討を開始しました。工場製作には鋼板の切断や孔あけ等の加工に手作業に頼る作業がありますが、その作業に適した協働ロボットの適用について検討を行っております。
(2)新材料・新素材に関する研究開発
FRPの橋梁構造物への適用に関する研究
橋梁の計画的な維持管理の必要性から、今後市場の拡大が予測されるFRP検査路について、コスト削減のための構造の合理化や長支間化を実施しました。「FRP合成床版」の材料技術を生かした新たな商品として、歩道拡幅用床版や歩道橋用の取替床版、鉄道用の壁高欄・防音壁、道路橋用の壁高欄型枠を実用化し、さらなる構造改善や常設足場などへの用途の拡大を図っております。また、首都高速道路株式会社と共同で開発した、地震などで生じた橋梁の段差を、道路啓開時に車両の通行を可能とする渡し板「F-Deck」は、他の道路管理者への拡販を図るとともに、緊急輸送時にも対応できる新たな商品「ダンパスデッキ」を阪神高速技術株式会社と共同で開発しました。さらに、大規模更新工事における床版取替え時の交通解放技術としてFRP舗装覆工板を開発し、実証実験を終え、試験施工による検討に取り組んでおります。
(3)構造・強度・検査に関する研究開発
① 鋼・コンクリート合成構造に関する技術検討
中小規模の架け替えのための合成床版橋「QS Bridge」および鋼・コンクリート合成床版「QS Slab」について、コスト削減のための構造・製作および施工に関する合理化検討と、各種規準の更新に伴う技術改良を継続して進めております。
② 腐食・防食に関する研究
腐食・防食に関する研究を琉球大学と共同で実施しており、腐食した高力ボルト摩擦接合継手の残存すべり耐力評価手法を実験および解析の結果から検証しております。また、鋼橋の防食性能向上のためのFRPパネルによる多機能防食デッキの適用拡大のため、実験橋による実験結果から耐風設計法に関して研究を行っております。
(4)新製品・新技術に関する研究開発
① 橋梁のモニタリングシステムの適用に関する検討
既設構造物の延命化技術としてモニタリングシステムを用いた構造物の健全性診断技術、補修・補強技術の開発、改良に取り組んでおり、無線式の光ストランドセンサー(OSMOS)によるケーブル張力管理、補修工事における安全・品質管理等のためのモニタリングの新たな適用方法およびLPWA(Low Power Wide Area),BLE(Blue-
tooth Low Energy)を用いた新型センサーの導入による合理化・コスト低減に向けた開発を進めております。また、架設時の安全管理・品質管理におけるモニタリングシステムの適用実績を拡大しております。
② 複合・合成構造の研究開発
従来のCFT(コンクリート充填鋼管)と比較して耐荷力・靭性の向上が期待できるRCFT(鉄筋コンクリート充填鋼管)の適用について検討を行っております。
③ 環境配慮型の新製品や新技術の研究開発
社会的要請であるカーボンニュートラルに資する環境配慮型のボルト関連製品や新製品を使用した新しい施工技術等の研究開発を行っております。
④ インフラDXへの取り組み
構造物の3次元モデルをツールとした設計や施工を行うBIM/CIMおよびドローンやレーザスキャナ、VR等を駆使したICT(情報通信技術)関連技術の導入や開発を推進するとともに、鋼構造物の製作工場および施工現場の生産性と安全性の向上を図り、働き方改革につなぐDX化の取り組みを行っております。
(5)施工工法等に関わる研究、取り組み
① PC業者、異種業者、補修業者との連携
既設RC床版の更新技術、特に取り替え用プレキャストPC床版に関する技術(製品、施工)をPC業者、異種業者と連携し、共同で研究することにより、現在高速道路会社で計画されている鋼道路橋の大規模改修事業に対応すべく、新工法等に取り組んでおります。また、今後本格化する補修・保全工事への対応に向け、補修業者と連携し、各種の課題に取り組んでおります。
② 送り出し工法の合理化に関する研究
当社グループで請け負う鋼桁架設工事は鉄道・道路を跨ぐ工事が多いことから、送り出し架設工法が多く採用され、限られた時間内で安全かつ急速に鋼桁を送り出すことが求められております。社会のニーズに応えるため、当社戦略機材である「ジャッキ装置付全輪駆動式高速台車」を活用することで、急速送り出し架設を実現しております。さらに曲線桁・拡幅桁・および断面変化の桁送り出し架設に対し、従来型の送り出し装置と比較して送り出し速度やジャッキ操作による省力・省人化に優位性を持った「新型送り出し装置」の開発を行っております。また送り出し架設の照査業務効率化と解析精度の向上を目的とした照査ソフトの改良にも取り組んでおり、照査結果の色分け表示による「見える化」などの改善を行い、より安全な施工を目指してまいります。
③ 建築分野における大空間鉄骨建方の研究
当社グループの建築分野では大空間構造物である大屋根鉄骨建方工事を数多く手掛けています。今般、非対称な大屋根鉄骨ブロックの建方作業の効率化を図るため、遠隔操作で安全かつ迅速に吊上げ形状調整が可能となる油圧式玉掛装置を開発し、続いて2点吊りと4点吊りができるように更に改良いたしました。安全性等の検証のため実物大試験を実施し、現在、難易度の高い大規模開閉鉄骨建方工事において、本装置を活用し、高所作業の省力化および安全性の向上に貢献しております。
また全長600mにも及ぶ長大な発電施設、工場建屋鉄骨を、当社が保有する特殊機材を活用した「多機能式移動ステージ工法」により、高所作業の効率化、作業足場の省力化を実現して施工技術の有効性を実証しております。さらに今後も難易度の高い鋼構造物の建方工事に前向きに挑戦すると共に、先端技術を取り入れて、一歩進んだ施工技術を提供できるよう研究開発を推進いたします。
④ 建築構造物およびコンクリート床版切断技術の研究
先に開発した、建築構造物の鉄骨コンクリート柱・壁および橋梁のコンクリート床版を大パネル形状で切断する完全無水式ワイヤーソーシステムを用いた「M-SRシステム」により、実橋梁のコンクリート床版を粉塵や廃水を出さずに高効率に大型パネル形状での切断撤去工事を実施し、その有効性を実証しております。さらに橋面上への影響を最少とした新工法のM-SRシステムと排水処理設備を大きく省力化する吸水式道路カッターの組合せ工法についても、実証実験を終え高速道路床版更新時の床版撤去工事に適用すべく、更新工事に適用した効率的な急速施工の実現に向けて取り組んでおります。
⑤ 災害復旧(応急復旧橋)に関する取り組み
近年、日本各地で大規模地震や異常気象に伴う豪雨などの自然災害が頻発しています。災害発生時にまず求められるのは啓開(応急復旧の前に支援ルートを確保するために道を切り開くこと)であり、大型工事車両・重機を必要としない、汎用性のある山留材を利用した簡易的かつ軽量で施工性に優れる応急復旧橋やFRP覆工板による人道橋の開発を行っております。今後も有事の際には、早期のインフラ復旧に貢献するように取り組んでまいります。
2.エム・エム ブリッジ
当連結会計年度における研究開発費は
(1)施工技術・構造・材料・検査に関する研究開発
① 大規模更新・保全事業に関する研究
高速道路各社において需要が高まっている床版の取り替え、拡幅、架け替え工事を対象として、プレキャストPC床版の現場継手の開発を継続して進めております。
また、腐食・損傷した鋼部材の補修工法に関する研究を継続して実施しております。
② 橋梁の耐風設計に関する研究
従来は風洞試験により耐風性検討を行ってまいりましたが、風洞試験を補完する手法として期待される数値流体解析を橋梁に適用するための調査・研究を継続して実施しております。
③ モニタリングシステムの開発
点検・診断業務、保全工事で必要とされる変形や振動の計測を効率的に行うことを目的として、無線技術を活用したシンプルなモニタリングシステムの開発を行っております。開発したシステムは、フィールド試験により実地検証し更なる適用拡大を進めております。
(2)新製品・新技術に関する研究開発
① 沿岸構造物・環境技術に関する研究・実証
水産庁の新たな「漁港漁場整備長期計画」における養殖生産拠点の形成として、養殖適地の拡大を目的とした静穏水域の確保が施策として挙げられています。本施策の実現のために、静穏水域を沖合に展開するための長波長対応型の浮消波堤の開発を行っております。数値流体解析による性能検証に加えて大型水槽を用いた模型実験により消波性能の確認に取り組んでおります。
生物多様性を保全する上でサンゴ礁は特に重要な生態系とされております。生物多様性の保全に貢献する技術として、微弱電流が流れる浮桟橋で活発に生息するサンゴの生態に着目し、サンゴの移植・増殖技術の研究を継続して実施しております。新たな研究サイトを設け様々な環境下での適用性についての実証を継続しております。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとして、浮体橋や浮桟橋で培った浮体構造物のエンジニアリング技術を活用して、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を水上及び洋上に導入するための実証実験を開始しております。
② 省力化・安全性向上に資するDX技術に関する研究
国土交通省が推進するDXの推進に関連して、ICT(情報通信技術)を活用した省力化と安全性向上に向けた要素技術の開発、試行、検証に取り組んでおります。
③ 耐震補強工事に関する研究
従来、建築・機械分野で用いられている慣性接続要素について、長大橋他の耐震補強工事に適用するための実用化研究を継続して実施しております。