第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、「橋梁、建築、沿岸構造物等の社会インフラの建設、保全・更新の事業を通じ、豊かな国土と明るい社会創りに貢献する」ことを経営理念としております。この経営理念に基づき、コンプライアンス・リスク管理体制を整備・適切に運用して、公正な競争、社会や顧客のニーズに応える安全で優れた製品・施工・サービスを提供し、グループの持続的な成長の実現・維持を目指すとともに、株主・投資家をはじめ取引先、従業員、地域社会などのすべてのステークホルダーに対して企業としての社会的責任を全うできるよう努めてまいります。

 

(2)経営環境、経営戦略及び優先的に対処すべき課題

わが国経済の見通しにつきましては、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策~全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす~」およびその裏付けとなる令和6年度補正予算ならびに令和7年度予算が迅速かつ着実に執行され、デフレ脱却を確かなものとするため、「経済あっての財政」との考え方に立ち、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現していくことが期待されます。一方で、米国の通商政策の影響に加え、物価上昇の継続が消費マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、わが国の景気を下押しするリスクとなっております。また、金融資本市場の変動等の影響にも一層注意する必要があります。

そのような状況下において、当社グループの主力である橋梁事業につきましては、2025年度の発注見通しとして新設関連で2,200億円(当社推定値)、大規模更新・保全関連で1,900億円(当社推定値)と前年度と同規模程度の発注量が見込まれております。通常の新設橋梁においては、依然として熾烈な受注競争が続いている一方、予算の都合により前年度に発注量が大幅に減少した高速道路の大規模更新工事(事業規模約7兆円)においては、更新・保全工事が必要となる箇所が増え続けている現状を踏まえ、緩やかに発注量が回復していくことが見込まれており、さらには大阪湾岸線西伸部の連続斜張橋などの高難度ビッグプロジェクトも順調に進捗していることから、中期的には当社グループが飛躍する事業環境であると考えます。また、鉄道関連についても、首都圏ではターミナル駅の再開発事業や連続立体交差事業、大型跨線橋などの工事を中心に数多くの計画が予定されており、当社グループが持つ安全・安心で高度な技術力の強みを、これからも継続して発揮できるものと考えております。

このような事業環境の中、グループとしての経営管理体制を一層強化し、より強固な収益基盤を固めるとともに、主要な事業会社である宮地エンジニアリング株式会社とエム・エム ブリッジ株式会社が一体となり、他社よりも一歩先を行く会社としてステークホルダーの皆様と「共に歩み」「共に成長する」企業として中期経営計画(2022~2026年度)に取り組み、中間年度となる当期においては過去最高となる業績を達成することができました。今後は新しい経営体制の下、国内鋼橋市場の変化・動向を踏まえ、持てる経営資源を新設関連工事、大規模更新・保全関連工事、民間工事(鉄道関連、大空間・特殊建築物、沿岸構造物の工事を含む)に適切に配分した最適経営を行うとともに、技術開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)に基づく生産性向上ならびに人材の確保・育成、女性活躍を推進し、働き方改革を進め、2025年3月期第2四半期決算説明会において見直した中期経営計画の超過達成に向けて努めてまいります。

なお、2026年3月期の連結業績につきましては、2025年3月期第2四半期決算説明会において公表した目標値を上回る、売上高580億円、営業利益40億円、経常利益41億円、親会社株主に帰属する当期純利益25億円と予想しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

D 宮地エンジニアリンググループは、「橋梁、建築、沿岸構造物等の社会インフラの建設、保全・更新の事業を通じ、豊かな国土と明るい社会創りに貢献する」との経営理念のもと、グローバルな社会課題解決に向け、事業を通じて取り組み、サステナブルな社会の実現に向けて貢献してまいります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、取締役の過半数を占める社外取締役が委員を務める監査等委員会設置会社を採用して、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を図るとともに、内部統制システムの実効性を高め、コンプライアンスの推進・徹底とリスクマネジメントの構築・推進に積極的に取り組んでおります。

①コーポレート・ガバナンス

 当社のコーポレート・ガバナンスへの取り組みについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

②株主との建設的な対話に関する方針

ⅰ)基本方針

 当社は、株主の意見を真摯に受け止め、経営に反映するため、的確かつ迅速な経営情報の開示を行うとともに、株主との建設的な対話を通じて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めております。

 その方針に基づき、IRの担当取締役とサステナブル経営推進室を中心として、株主との積極的な対話を心がけております。また、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会(2回/年)を開催し、その資料と動画を当社ホームページに掲載しております。なお、会社概要、経営方針、グループ構成、コンプライアンス(企業行動憲章)、IR情報(招集通知、報告書、中間報告書、決算短信、有価証券報告書、その他開示書類等)などの情報につきましては、当社ホームページにおいて即時開示に努めております。

ⅱ)対話を行った株主・投資家の概要

 国内機関投資家等  SR面談20回、IR面談20回、決算説明会2回、工場見学会6回

 海外機関投資家等  SR面談5回、IR面談14回

ⅲ)株主・投資家との対話の主な対応者

 代表取締役社長      青田重利

 執行役員企画・管理部長  遠藤彰信

 サステナブル経営推進室長 平岡輝崇

 (注)対応者の役職はいずれも2025年3月31日時点のものです。

ⅳ)株主との対話で得られた事項や取り入れた事項(前年度までの対話によるものも含む。)

1)統合報告書2024における内容の拡充(2024年9月発刊)

2)英文開示(日英同時)への取組み(2024年4月より実施)

3)女性取締役の登用(2025年6月より現状の7名中1名から2名へ増員予定)

4)資本政策の拡充(2024年11月に中期経営計画期間中の配当金額を開示)

5)株式分割の実施(2024年10月実施)

6)政策保有株式の縮減(2025年3月期に2銘柄縮減)

7)取締役のスキル・マトリックスの内容充実(2024年3月期より実施)

8)株主総会における電子投票制度および議決権電子行使プラットフォーム採用
(2024年3月期定時株主総会より実施)

9)取締役会実効性評価の拡充(2025年3月期有価証券報告書より開示拡充)

③会社情報の適時開示に係る社内体制

 当社は、投資者に適時適切な会社情報の開示を行うことを基本姿勢として、以下の社内体制により対応しております。

ⅰ)決定事実に関する情報

 決定事実に関する情報は、定例取締役会、必要に応じて開催される臨時取締役会、その他重要な会議において決定した事実に対して、株式会社東京証券取引所の定める適時開示基準または法令に基づき適時開示を行っております。

ⅱ)発生事実に関する情報

 発生事実に関する情報は、発生した事象に係る所管部署が、取締役会等に報告を行います。この情報について、適宜、会計監査人、顧問弁護士等の専門家に助言・指導を受けながら、情報取扱責任者を中心にサステナブル経営推進室、総務・人事部、企画・管理部において適時開示の必要性の有無を検討しております。

 適時開示基準に該当する発生事実に関する情報は、原則として取締役会での決議を受けた後、遅滞なく適時開示を行っております。

 

ⅲ)決算に関する情報

 決算に関する情報は、適宜、会計監査人に助言・指導、監査を受け、取締役会において決定し、適時開示を行っております。

ⅳ)事業子会社に関する情報

 当社は、持株会社としてグループの統括・管理を行っております。

 事業子会社の取締役会等重要な会議での決定事項ならびに外的要因による事象の発生については、情報管理部門からサステナブル経営推進室、総務・人事部または企画・管理部に報告が行われ、社内規則に定める基準に則り、当社においても取締役会等で決定、もしくは報告が行われます。

 事業子会社より報告された事業子会社に関する情報は、適宜、会計監査人、顧問弁護士等の専門家に助言・指導を受けながら、情報取扱責任者を中心にサステナブル経営推進室、総務・人事部、企画・管理部において適時開示の必要性の有無を検討しております。

 適時開示基準に該当する事業子会社に関する情報は、原則として取締役会での決議を受けた後、遅滞なく適時開示を行っております。

ⅴ)その他の重要な情報

 その他の重要な情報は、適宜、会計監査人、顧問弁護士等の専門家に助言・指導を受けながら、情報取扱責任者を中心にサステナブル経営推進室、総務・人事部、企画・管理部において適時開示の必要性の有無を検討しています。

 適時開示基準に該当するその他の重要な情報は、原則として取締役会での決議を受けた後、遅滞無く適時開示を行っております。

④取締役会の役割・責務

 当社の取締役会の役割・責務については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

⑤ガバナンス強化

 当社は、2023年度に当社グループの経営活動上の課題として特定したマテリアリティに対する取り組みを強化するため、代表取締役を委員長、取締役を副委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、課題解決に向けた積極的な議論を行い、対策を推進しております。また、取締役会への報告等をより積極的に推進し、マテリアリティへの経営陣の関与をさらに高めるためのガバナンス強化を進めております。(下記体制図参照)

 

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(2)戦略

 宮地エンジニアリンググループは、企業としての社会的責任を認識した上で、サステナブルな社会に必要な課題の解決に向けて、企業として適切な取り組みを行うことをコンプライアンス・リスク管理基本規程に定め、その具体的な行動指針として、企業行動憲章と行動規範を定めており、SDGsの達成に向けて積極的な取り組みを行っております。

①コンプライアンスの推進

 当社および各事業子会社は、社内で就業するすべての人々の法的および社会的安全と価値を守るとともに、社会的責任を追及する企業統治の確立を図るため、別に定める企業行動憲章および行動規範に従い、次に掲げる基本方針でコンプライアンスに取り組んでおります。

ⅰ)基本的な考え方

1)コンプライアンスに照らして問題ある活動に関与しない。

2)違反、逸脱、過失等は素直に認め、速やかに是正措置と再発防止措置を講じる。

3)組織における役割、責任、権限ならびに情報の伝達経路を明らかにする。

4)すべての役員および社員等に対して十分な教育と厳格な評価を継続して行う。

5)管理方針と企業行動憲章および行動規範に基づき、宮地エンジニアリンググループ各社は毎年度、適切な自己監査を行う。

6)企業としての社会的責任を認識した上で、サステナブルな社会に必要な課題の解決に向けて、企業として適切な取り組みを行う。

7)経営の優先課題としてコンプライアンス推進活動に取り組む。

ⅱ)コンプライアンスの推進体制について

 当社は、コンプライアンスの推進・徹底を図るための組織として、取締役会の下に「コンプライアンス・リスク管理委員会」を設置する。

ⅲ)コンプライアンスの定義について

 コンプライアンスとは、組織の業務や組織が扱う財・サービス、組織が生み出す価値(以下、「企業価値」という。)、組織としての社会的責任(以下、「社会的責任」という。)および組織に対する社会的評価(以下、「社会的評価」という。)に関連する法令等(各種法令の他、通達・告示・ガイドライン・要綱等や、当社が定める定款、社内規程類、その他社会一般の求められるルール等を含む。詳細については「ⅳ)対象とする法令等の範囲について」に記載のとおり。)への抵触リスクを対象とし、かつ損失の未然防止を図る組織内活動をいう。

ⅳ)対象とする法令等の範囲について

 当社におけるコンプライアンスが対象とする法令等の具体的な範囲は下記のとおりとする。

1)国が定める各種法令

2)各種行政機関が定める通達・告示・ガイドライン・要綱等

3)当社または事業子会社が所属する組織が定める各種規程等

4)当社が定める定款、経営理念、企業行動憲章、行動規範およびその他各種社内規程

5)社会一般のルール

6)社会通念上の各種規範および倫理観

7)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

ⅴ)反社会的勢力排除に向けた基本的な考え方およびその整備状況

1)基本的な考え方

 当社は、グループ企業行動憲章および行動規範において、反社会的勢力とは一切関係を持たないことを明確に定めており、社員に周知徹底しております。

2)整備状況

 総務・人事部が担当となり、定期的に外部専門機関他との情報交換会に出席するなど、情報収集に努めており、被害防止に役立てております。また、不当な要求を受けるなどの事案が発生した場合には、外部専門機関・顧問弁護士と連携して対応する体制を構築しております。

ⅵ)コンプライアンス推進活動の実施状況

1)コンプライアンス教育の実施状況

 2024年度はグループ内の全従業員に対して、年2回のコンプライアンス教育に加え、取引の透明性および情報セキュリティの徹底に関する教育を行い、KPIとして定める受講率100%と重大な違反・事故0件を達成しております。

2)社会に誇れる企業風土の醸成

 2024年度はグループ内の新卒、中途採用者を含めた全従業員に対して、企業行動憲章および行動規範の読み合わせを実施し、従業員による認知度100%を達成しております。

3)コンプライアンス・リスク管理委員会の開催

 2024年11月と2025年5月に、すべての取締役が出席する定例のコンプライアンス・リスク管理委員会を開催し、コンプライアンス・リスク管理に関する2024年度の活動を振り返るとともに、2025年度の活動に向けた課題について協議を行っております。なお、2024年5月に開催した定例のコンプライアンス・リスク管理委員会においては、2023年度の活動に対する振り返りと2024年度の活動に向けた課題について協議を行っております。

②人材への取り組み

ⅰ)基本的な考え方

 他業界同様、建設業界でも少子高齢化と生産年齢人口の減少に伴う人材不足という課題を抱える中、持続的成長を続けるためには、イノベーションを生み出すような職場環境の整備とともに、人材の確保と育成は重要な課題です。宮地エンジニアリンググループは、新たな価値を創造できる人材の育成と、そのために必要な人材確保へ向けた計画的な取り組みを行い、技術、技能、知識ならびに大切な企業文化の伝承および更なる向上に努めるとともに、グループとしてのサステナブルな成長を目指します。

ⅱ)ダイバーシティの推進

 宮地エンジニアリンググループは、企業の持続的な発展のためには多様な背景を持つ人材が活躍することが必須であると認識しております。宮地エンジニアリンググループではかねてよりコーポレートガバナンス・コードに示された属性の登用などに係る測定可能な目標設定の努力とともに、事業環境の変化などを捉えて弾力的な運用を行うことができるように、過度な成果主義を改め、全社員を共通の基準(努力する業務姿勢と管理職にあってはマネジメント力)で評価する方針を採っており、指標となるべき企業行動憲章や行動規範を定め、女性・外国人・中途採用者を含めた全従業員が十分に活躍できる環境を整えております。中でも、「女性活躍・外国人活躍」は建設業界として積極的に進めなければならない課題であり、女性については、事務系のみならず技術系、技能系とともに積極的に採用して戦力化を進め、外国人についても、異文化の感性を社内に持ち込むことは会社の活性化、意識改革のためのメリットが大きいと考え、積極的に採用を進めております。

ⅲ)イノベーションを生み出す職場環境の整備

 制度面も含めた職場環境の整備は、従業員エンゲージメントを高める上で重要な課題の一つです。宮地エンジニアリンググループでは、性別を問わずすべての従業員が仕事と家庭でより充実した生活を過ごすことができるように、さまざまな制度を設けるとともに、快適な職場環境の整備にも努めております。その具体的な内容の一部につきましては、次のとおりであります。

1)働き方改革による残業時間の抑制

 従業員のメンタルおよびフィジカル面双方での健康管理のため、グループ各社では水曜日をノー残業デーに定めるとともに、DXを活用した業務効率化等による残業時間の削減等を進め、従業員が仕事と家庭の両立に取り組むことができる環境の整備に努めております。

2)育児休業制度の整備

 グループ各社では、性別を問わず、子供が3歳未満の間に認められる育児休業制度や、中学生未満の間は1日4時間の短時間勤務を可能とする育児勤務制度等を定め、次世代育成および仕事と家庭の両立を積極的に支援しております。

3)介護に伴う制度の整備

 グループ各社では、従業員に近親者の介護をする必要性が生じた場合に備え、一定期間の休暇を取得できる介護休業制度や、再雇用を前提とする退職制度、1日4時間の短時間勤務を可能とする介護勤務制度などを定め、個々の状況に応じたさまざまな支援制度を充実させております。

4)職場環境の改善

 グループ各社は、従業員の増加に伴う作業スペースの拡張や引っ越し等による拡大などを適宜行うとともに適切な設備更新等を行い、快適な職場環境の維持と向上に努めております。

ⅳ)計画的な人材確保への取り組み

 新卒ならびにキャリア採用ともに、必要とする人材のターゲットを多面的な要素から絞った採用活動を毎年計画的に進めると同時に、従業員満足度の向上により近年社会的な課題となっている若手従業員の定着率向上を図り、グループとしてこれからのサステナブルな成長に必要不可欠な人材の確保に努めております。具体的には、一般職や技能職から総合職への転換等、多様な働き方のメニューを取り揃えることにより、優秀な人材を登用する門戸を広げるとともに、若手従業員の仕事と能力のミスマッチによる離職を防ぐ取り組みを行っております。また、将来人材育成の一環として、大学院生への奨学金制度などの整備にも取り組んでおります。

 

ⅴ)技術・技能および企業文化伝承への取り組み

 技術・技能および企業文化の次世代への伝承は、多くの貴重な経験と知見を有する従業員の高齢化が進む建設業界の重要な課題の一つであり、グループ各社も新入社員教育や中堅社員研修等の教育カリキュラムの設定や、各種資格取得の支援、現場OJTによるベテラン従業員の指導等により、それらの伝承および維持向上に取り組んでおります。その具体的な内容の一部につきましては、次のとおりであります。

1)公的資格取得奨励制度

 グループ各社では、一級土木施工管理技士や技術士等の資格取得を奨励するため、受験料の他に資格取得のための受講料を援助するとともに、合格者に対しては奨励金等の支給も行っております。

2)具体的な職能基準の設定

 グループ各社では、部門ごとに職能に応じた具体的に習得するべき技能や技術等の内容を定め、個人ごとにそれに基づくOJTを主体とした教育・指導方針を定めた上で人材育成に取り組んでおります。

3)博士号取得奨励制度

 グループには、博士号取得のための大学院への留学制度や、支援制度等があります。

ⅵ)グループの将来を担う人材育成への取り組み

 会社としてのマネジメント能力の強化は、サステナブルな成長のために重要な課題の一つです。グループでは経営幹部の共通した評価基準を定め、レポート提出により重要課題への施策や取り組み状況などを確認し、フォローしております。また、グループ各社では、個人の能力を適切に評価し、その能力に見合った立場を与える制度を充実させるとともに、一定以上の立場の管理職に対して複数年にわたる外部マネジメント研修を受講させる等の対応により、俯瞰的な視野を持ち、リーダーシップを発揮する優秀な人材を育成する取り組みを行っております。

ⅶ)人権方針の策定

 当社はこの度、人権の尊重に対する当社グループのスタンスを具体的に示す人権方針を策定いたしました。本方針は当社グループのすべての役員・従業員に適用され、また協力会社をはじめ当社サプライチェーンに関わるステークホルダーの皆様方にも支持・遵守を求めるものです。

 当社グループはより実効性の高い人権方針策定に向け、準備を進めてまいりました。具体的には、当社グループの事業活動が引起こす、または助長する可能性がある人権への負の影響を洗い出し、社内実態の調査に基づく分析・評価を通じて、当社における各種人権リスクの「発生可能性」と「深刻度」を特定し、リスクマッピングを実施いたしました。

 コンプライアンス推進とサステナビリティ経営の観点では、代表取締役を委員長とするサステナビリティ推進委員会を既に設けております。また、コンプライアンス推進責任者を任命し、人権保護を含むコンプライアンス推進ならびにサステナビリティ経営の強化に努めております。なお、本方針の検討・策定や、推進・実行、管理・監督における体制は下図のとおりです。

 本方針策定にあたって特定した人権リスクに対しては、負の影響の防止・軽減やモニタリング、外部への情報公開等の人権デューデリジェンスのサイクルを定常的に回すとともに、リスク要因や国際規範等の変化にも適切に対応してまいります。

 

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宮地エンジニアリンググループ人権方針>

 

人権の尊重に対するコミットメントおよび基本姿勢

・当社グループは、「橋梁、建築、沿岸構造物等の社会インフラの建設、保全・更新の事業を通じ、豊かな国土と明るい社会創りに貢献する」との経営理念の下、企業行動憲章・行動規範を定め、また、行動規範において「人権の尊重」を掲げております。本方針は、この「人権の尊重」に対する当社グループのスタンスを具体的に示すものです。

・本方針は、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り策定しております。

・また、本方針は2023年に特定したマテリアリティの一つ「コンプライアンス遵守とガバナンスの強化」に対応するものでもあります。

・当社グループは、コンプライアンス推進とサステナビリティ経営の観点より、代表取締役の下にコンプライアンス推進責任者を任命し、本方針に基づく人権尊重への取組みを強化してまいります。

人権方針の適用範囲

・本方針は当社グループのすべての役員・従業員に適用されます。また、協力会社をはじめ当社サプライ
チェーンに関わるステークホルダーの皆様方にも、本方針の支持・遵守を求めます。

自社にとって重要な人権問題

・本方針策定にあたり「発生可能性」と「深刻度」の軸で人権に関するリスクマッピングを実施し、当社グループにとって重要な人権リスクを特定いたしました。特にこれらの重要な人権リスクに対し、その軽減に取り組んでまいります。

1. 従業員の労働時間・休日・休暇の適切な管理、特に従業員の過度な長時間労働の禁止:
私たちは、従業員の労働時間・休日・休暇を適切に管理します。特に長時間労働に対しては、全社に対する周知や各種会議体における労働時間の報告を徹底する等、時間外労働の削減に注力しております。

2. あらゆる形態の強制労働・児童労働の禁止:
私たちは、業務に関連するすべての場所において、あらゆる形態の強制労働および児童労働を当然に認めず、今後も積極的な取組みを続けてまいります。

3. 人種、性別、性自認、宗教および障がいの有無等による差別やハラスメント等の人権を侵害する行為の防止:
私たちは、企業行動憲章・行動規範にも示すとおり、個人の基本的人権と多様な価値観、個性、プライバシーを尊重し、国籍、性別、信条、年齢、障がいの有無を理由とする差別や、暴力行為、セクシャルハラスメント、業務上の優越的地位の乱用等の嫌がらせ、いじめ、職場秩序や業務遂行を阻害する行為を防止します。

人権デューデリジェンスの継続的実施

・当社グループは、人権尊重の責任を果たすため、人権デューデリジェンスの継続的な実施に努めてまいります。

救済と是正

・当社グループが人権への負の影響を引起こした、または助長したことが明らかになった場合には、適切な手段を通じてその是正・救済に取り組みます。また、内部通報窓口に対する通報内容に対して、適切な対応を続けてまいります。

ステークホルダーとの対話や協議

・当社グループは、事業活動による人権に対する負の影響やその防止・軽減やモニタリングに関して、ス
テークホルダーとの対話や協議を継続的に実施してまいります。

情報開示

・当社グループは、人権尊重に関わる取組みについて、適切に情報開示してまいります。

人権方針の周知浸透・教育

・当社グループは、コンプライアンス研修や企業行動憲章・行動規範の常時携行等を通じて、本方針の周知浸透・教育に継続的に取り組んでまいります。

 

③環境への取り組み

ⅰ)基本的な考え方

 宮地エンジニアリンググループは、企業行動憲章および行動規範において「環境の保全」を行動基準として定め、環境に配慮した事業活動を推進するとともに、気候関連財務情報の開示を推進します。

ⅱ)環境に配慮した取り組みについて

 宮地エンジニアリンググループは、工場・工事現場で発生する廃棄物の抑制等に取り組みます。特に建設副産物についてはリサイクルや適正処理に十分配慮した事業活動を行います。また、事業活動の全過程において、環境負荷の低減を目指し、省資源・省エネルギー化を推進し、地球環境の保全や温暖化防止のために努力します。

 また、社会インフラづくりに資する新設橋梁事業はもとより、インフラの老朽化に対する橋梁の保全・維持補修事業そのものが「環境配慮型社会の実現」に資するものと捉え、積極的な事業展開を図っております。

ⅲ)環境負荷低減への取り組み

1)太陽光発電について

 宮地エンジニアリンググループは、気候変動対策の一環として、松本工場跡地を利用して太陽光発電所を稼働させております。設置している太陽光パネルは7,980枚、発電量は一般家庭550世帯分の消費電力に相当する2,611,000kWh/年であり、年間469,858kgのCO2削減効果があります。今後も工場や機材センター等の建屋上への設置についても検討を進め、更なるCO2削減に努めてまいります。

2)浮体式ペロブスカイト太陽電池の共同実証実験について

 当社グループの事業子会社であるエム・エム ブリッジ株式会社は、積水化学工業株式会社と恒栄電設株式会社と共に、閉校となった旧清至中学校跡地の学校プールを活用し、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を水上に設置する共同実証実験を実施しました。ペロブスカイト太陽電池の軽量性を活かした浮体構成や施工性の検証を目的として、2024年4月3日から実証実験を開始し、現在はその2年目となっております。

ⅳ)省資源・省エネルギー化推進への取り組み

1)工場における具体的な活動について

 既に多くの省資源・省エネルギー化活動に取り組んできた工場においては、環境負荷を大幅に低減できる施策はなかなかないため、設備更新等に合わせて少しずつ対策を積み上げていくことが重要となります。電力使用量を従来機種よりも10%以上低減できるデジタル溶接機の導入を進めたり、照明を順次LEDに取り替える等して電力の使用効率を上げるとともに、各種設備の稼働効率を上げる等の工夫により、対策導入前より15%以上もの電力使用量を削減することができました。

2)機材センターにおける具体的な活動について

 機材センターの環境負荷を低減するため、太陽光発電設備の導入や電動フォークリフト導入等の検討を進めております。最新の広島機材センターは、オール電化事業所として2020年より稼働しております。また、2022年度より更新工事を始めた栗橋機材センターにおいては、太陽光発電設備を導入し、2025年度より発電を開始する予定です。また、現在整備を進めている兵庫機材センターにおきましても、同様の太陽光発電設備の導入を検討しております。さらには、電動フォークリフトの導入や有機溶剤の使用量削減を目標とした機材のメッキ処理推進等を順次進めており、周辺環境、職場環境の改善にも取り組んでおります。

ⅴ)地球環境保全への取り組み

1)サンゴの保全活動について

 流電陽極法によって電気防食している浮桟橋で、電場が0~100mA/㎡の範囲において比較的強い場所を選ぶようにサンゴが生育していることを発見し、石垣港の沖合のウニ礁に電場条件の異なるサンゴ生育棚を4基設置し、無性生殖のサンゴ片を各棚に60個取り付け、成長促進効果について約20年にわたって観察を行いました。その結果、微弱な電場はサンゴの成長を明らかに促進し、さらには微弱電流によって温度耐性が向上することが示唆されました。現在、サンゴの生育棚はウニ礁に設置されている4基の他に、石垣島の名倉湾に12基、長崎県長崎市高島に8基、和歌山県東牟婁郡串本町に3基を、それぞれ設置しております。当社グループはこれらの知見を活用して、これからもサンゴの保全活動に取り組んでまいります。

 

ⅵ)気候関連財務情報の開示について

1)気候変動に対する宮地エンジニアリンググループとしての取組方針

ア)当社グループは気候変動を重要な経営課題の一つとして認識し、2023年度より当社グループの事業活動に伴うGHG(CO2換算)排出量の開示を開始しております。当社グループは開示の質・量の高度化を進めており、2023年度に開示したScope1,2(2021年度実績)に加え、2024年度からは直接・間接排出以外のScope3(2022年度実績)の開示を行っております。

イ)SSBJによる非財務情報に関する開示基準の設定に伴い、開示するGHG排出量の算定期間を財務情報と同一期間にすることとしたため、これまでは1年遅れの開示となっていたものを見直すとともに、当期を含む直近3ヵ年分の開示を行うことに見直しました。

ウ)組織的対応としては、2022年度に実施したコンプライアンス・リスク管理基本規程の改定に加え、2023年度には環境対策を含むマテリアリティの設定を行うとともに、代表取締役を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、気候変動問題に対する取締役会レベルでの関与をさらに強化しました。また、2023年度より当社グループに対する環境影響を測るシナリオ分析、リスク・機会分析も開始しております。また、サステナビリティ推進委員会において行われた議論の内容については、取締役会においても定期的に報告を行い、情報の共有化を図っております。

エ)今後も、当社グループはサステナビリティ推進委員会における活発な議論を通じ、取締役会レベルでもカーボンニュートラル方針の深化・強化を進めることで、ガバナンスを強化して全社一丸となり、気候変動課題への取り組みをより一層進めます。

2)開示項目: グループの事業活動に伴う自社のGHG(CO2換算)排出量を公表

 

2022年度

2023年度

2024年度

Scope1

770.22t

842.87t

1,161.04t

Scope2

2,329.81t

2,065.13t

2,199.68t

Scope3

184,290.50t

157,737.09t

159,324.73t

合 計

187,390.53t

160,645.09t

162,685.45t

0102010_003.jpg

Scope3内訳

 

2022年度

2023年度

2024年度

カテゴリ1

180,108.51t

149,096.93t

148,761.61t

カテゴリ2

1,690.61t

5,775.36t

7,647.15t

カテゴリ3

497.21t

514.81t

697.75t

カテゴリ4

663.36t

838.64t

732.63t

カテゴリ5

57.27t

68.12t

52.02t

カテゴリ6

798.76t

1,026.20t

1,035.72t

カテゴリ7

474.78t

417.03t

397.85t

合 計

184,290.50t

157,737.09t

159,324.73t

 

3)排出削減目標

 直接排出(Scope1)および間接排出(Scope2)につきましては、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2024年度より計画的に検討を進めてまいります。

4)気候変動に関するシナリオ分析に基づくリスク・機会への考察

ア)2024年度より、当社グループに影響を与える気候変動関連のシナリオ分析を行い、環境影響から生じるリスク・機会の考察を開始します。想定されるシナリオとしては、国連気候変動政府間パネル(IPCC)の設定する1.5℃シナリオ(温度上昇を積極的に抑制)と4.0℃シナリオ(現状の延長線)を採択しております。

イ)当社グループ全体としてリスクサイドのみならず、機会サイドについても将来の事業の進展に資するものと捉え、今後も積極的に分析の高度化を図ってまいります。

5)グループ全体のガバナンス強化

ア)2022年度のコンプライアンス・リスク管理基本規程の改正に加え、2023年度は取締役会にて気候変動対策を含んだマテリアリティの策定・設定を行いました。

イ)当社代表取締役を委員長、取締役を副委員長とするサステナビリティ推進委員会の下に、気候変動対策・カーボンニュートラル検討分科会を設置し、気候変動対策に関する積極的な議論を行い、2050年のカーボンニュートラルに向けた対策を推進します。

ウ)取締役会への気候変動課題の報告等をより積極的に推進し、同時に経営陣の関与をさらに高めるためのガバナンス強化を進めております。

6)シナリオ分析に基づくリスク・機会の考察

ア)1.5℃シナリオ(積極的に緩和措置に対応)でのリスク

 当社グループにおいての1.5℃シナリオ下のリスクは、主に以下の4点と想定される。

◇政策・法規制:環境対応規制強化によるコスト上昇、少数与党となった石破政権下で、公共工事発注量減少の影響が現実化しつつある。原材料高騰によりコスト上昇の影響とともに業界への悪影響が表面化。低炭素燃料の導入や低炭素技術の開発が予想より遅れていることもあり、排出量の大きい鉄鋼業界等を中心に脱炭素関連訴訟リスクが中長期的に上がりつつある。

◇技術・製品:環境対応部材の供給ひっ迫とコスト上昇、環境対応部材への転用が、環境配慮型ボルト等の使用も含め、当初の想定どおりには進んでいない。工場や機材センターにおける電動フォークリフトへの切替えは順調に推移。技術開発の難しさから投資回収リスクが上昇し、中長期的リスクが高まりつつあると認識。

◇市場:スペックの高度化・環境対応への負荷上昇、技術者・人員の不足の他、同業他社との競争熾烈化などが予見される。現場への電動ラフタークレーンの導入等も検討中だが、コスト上昇への懸念はある。

◇レピュテーション・企業価値:環境対応遅延による株価低迷、入札離脱、採用敬遠の動きは現状は顕在化していない。

 

リスク・機会

サプライ

チェーン

影響度

(短期)

影響度

(中期)

影響度(長期)

指標

移行リスク

現行の規制

調達

・カーボンプライシングの仕組み

・排出量報告義務の強化

・既存製品・サービスの義務付けと
 規制

売上

新たな規制

調達

・カーボンプライシングの仕組み

・排出量報告義務の強化

・既存製品・サービスの義務付けと
 規制

売上

法規則

調達

・訴訟へのエクスポージャー

売上

技術リスク

調達

・既存製品・サービスを低排出オプ
 ションに置換

・新技術への投資失敗

・低排出技術への移行

売上

市場リスク

調達

・顧客行動の変化

・市場シグナルの不確実性

売上

評判リスク

調達

・消費者の嗜好の変化

・セクターの汚名

・利害関係者の懸念の高まりまたは
 否定的な利害関係者のフィード
 バック

 

 

 

イ)1.5℃シナリオ(積極的に緩和措置に対応)での機会

 同時に、積極的な緩和措置に対応することで、当社グループへの機会も以下のとおり想定される。

◇市場:スペックの高度化・環境対応への高度化・スピード化によりマーケットシェア向上に資する。

◇レジリエンス:電力のカーボンニュートラル化を先行的に進めることで、脱炭素税導入コストの軽減に資することが可能となり、コスト軽減に繋がる。宮地エンジニアリング株式会社所有の松本発電所(太陽光発電設備)で生み出した環境価値を当社グループ内で使用し、Scope2の削減に資する新スキームの導入を予定。

◇製品・サービス:環境対応部材への適応を積極的に進めることで、低排出型製品・サービスを提供することが可能。(機材センター等への太陽光発電設備・蓄電池の導入、電動フォークリフトへの切換え等)

◇レピュテーション・企業価値:環境対応優良企業としての高評価を獲得(CDP認定Bマイナス評価を獲得)

リスク・機会

サプライ

チェーン

影響度

(短期)

影響度

(中期)

影響度(長期)

説明

機会

市場

調達

・新市場への参入

・インセンティブ導入

・保険適用が必要な新たな資産およ
 び所在地への利用

売上

レジリエンス

調達

・再エネプログラムへの参加および
 省エネ対策実施

・リソースの代替・多様化

売上

資源の効率性

調達

・効率的な輸送手段の利用

・生産・流通プロセスの効率化

・リサイクルの利用

・効率的な建物への移転

・水の使用量・消費量の削減

売上

エネルギー源

調達

・低排出エネルギー源の利用

・支援的な政策インセンティブの利
 用

・新技術の活用

・炭素市場への参画

売上

製品・サービス

調達

・低排出製品・サービスの開発およ
 び拡大

・気候変動・レジリエンス・保険リ
 スクへのソリューション開発

・R&D・技術革新を通じた新製品
 やサービスの開発

売上

 

 

ウ)4.0℃シナリオ(現状の延長線上で推移)下のリスク・機会

 4.0℃シナリオ下に想定される物理的リスクは、突発的に発生する急性リスクと恒常的な慢性リスクに大別される。

<急性リスク>

◇台風・豪雨・洪水の発生 ⇒ 土砂崩れ等による橋梁等の破損、橋梁架設・保全工事等対応時の事故発生、保有機材の損壊

◇急激な天候変化 ⇒ 作業の安全性低下、機材の劣化・耐久性の低下

◇急性リスク由来の金属・非金属加工品の調達コスト上昇

<慢性リスク>

◇気温・湿度の上昇 ⇒ 野外労働環境の悪化・従業員の健康被害、塗料劣化・鋼材腐食による構造的劣化の危険。特に夏場の作業効率の低下に対しては、熱中症への全社的対策(空調服提供、塩分補給、休息室整備等)が奏功し、発生数の抑制に繋がった。

◇海面上昇 ⇒ 海上作業の危険性アップ、沿岸地区工場への悪影響(高潮・津波の危険性上昇)、高水敷保管場所への移転

◇雨季の雨量増加 ⇒ 排水設備の強化・コスト増、工事・作業ストップの顕在化

◇気候変動多発化による、電力供給の不安定化(停電リスクの上昇)

リスク・機会

サプライ

チェーン

影響度

(短期)

影響度

(中期)

影響度(長期)

説明

物理的リスク

急性リスク

調達

・台風、豪雨

・洪水

・熱波

・山火事

売上

慢性リスク

調達

・温度変化(空気、淡水、海水)

・降水パターン・種類の変化
 (雨、雷、雪/氷)

・海岸浸食

売上

 

 4.0℃シナリオ下で予見される物理的リスクに対しては、当社グループとして以下のような対応(機会)を想定する。

<急性リスク>

◇台風・豪雨・洪水の発生 ⇒ 新規架設のニーズ、耐風・耐水性機材の開発

◇急激な天候変化 ⇒ 高耐久性素材の開発

◇災害発生由来の土木再建ニーズの増加

<慢性リスク>

◇気温・湿度の上昇 ⇒ 高耐久性素材や塗料の開発・導入、快適労働環境の整備(空調服整備等)

◇海面上昇 ⇒ 浮体式構造物の開発・導入、千葉工場の強靭化・改修

◇雨季の雨量増加 ⇒ 排水設備の強化・充実

◇気候変動多発化による、電力供給の不安定化 ⇒ 機材センターへの太陽光発電設備・蓄電池導入、バックアップ電源の整備

 

(3)リスクマネジメントへの取り組み

①基本的な考え方

 当社およびその事業子会社は、自然災害、事故などの人為的災害、および経営上のさまざまなリスクに的確に対処し、経営理念および経営目標の達成を阻害するすべての要因を可能な限り防止または予防し、排除することにより、社会的責任を果たすため、次に掲げる基本方針でリスク管理に取り組んでおります。

ⅰ)リスク管理の実践を通じ、事業の継続・安定的発展とともに企業価値および社会的評価の維持・向上を図る。

ⅱ)製品・サービスの品質と安全性の確保を最優先に、企業価値および社会的評価毀損要因の除去・軽減に努めるとともに、顧客、取引先、株主・投資家、地域社会等の各利害関係者、ならびに役員および社員等の社会的評価および経済的利益阻害要因の除去・軽減に努める。

ⅲ)社会全般において幅広く使用されている製品・サービスを安定的に供給することを社会的使命として行動する。

ⅳ)すべての役員および社員等は、コンプライアンスの精神に則り、各種法令、規則等を遵守し、それぞれが自律的に、何が正しい行為かを考え、その判断に基づき行動する。

②リスクマネジメントの推進体制について

 当社は、リスクマネジメントの構築・推進を図るための組織として、取締役会の下に「コンプライアンス・リスク管理委員会」を設置しております。

③リスクマネジメントの定義について

ⅰ)リスクとは、グループ各社の企業価値、将来生み出す社会的評価および収益に対して影響を与えると考えられる事象の発生の不確実性をいう。

ⅱ)リスク管理とは、リスクに関して、組織を指揮し管理する、調整された活動をいう。グループ各社にとって危険なこと・好ましくない結果をいかに低減するかを目指すものであって、利益を極大化するためのものではない。

ⅲ)リスク管理システムとは、リスクに関する戦略的な計画策定、意思決定および他の過程などリスク管理に関する組織のマネジメントシステムの諸要素をいう。

ⅳ)危機とは、人の身体に悪影響を及ぼすような事態、企業価値に悪影響を及ぼすような事態、社会的評価を著しく低下させるような事態または財物を損壊または使用不能とするような事態により、グループ各社の経営または事業活動に重大な影響を与える、または与える可能性があるものをいう。

ⅴ)危機管理とは、危機に直面し、緊急時に至った場合に備えた事前取り組み、実際の緊急時対応に関するマネジメントをいう。

④リスクマネジメントの対象とするリスクについて

 リスクマネジメントの取り組みにおいて対象とするリスクの類型は、下記のとおりとする。

ⅰ)工事現場における社会的影響の大きな事故

ⅱ)社会的影響の大きな品質不適合問題

ⅲ)国が定める各種法令や行政機関が定める通達・告示・ガイドライン・要綱等に対する違反行為

ⅳ)グループ各社が所属する組織が定める各種規程等に対する違反行為

ⅴ)上記以外の社会的な信頼および評価を著しく低下させるような行動および事象

ⅵ)社会一般のルール、社会通念上の各種規範および倫理観に著しく抵触するような行為

ⅶ)地震や台風等による大規模な自然災害

ⅷ)気候変動リスク

ⅸ)上記いずれにも属さない当社に大きな悪影響を及ぼす事象

 

(4)指標および目標

 当社は、2022年度にグループの持続的成長のための経営活動上の課題であるマテリアリティを特定し、サステナビリティ推進委員会主導のもとに目標とKPIを設定し、ホームページおよび統合報告書2024により公表しております。

 なお、人的資本に関する「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」、「労働者の男女の賃金の差異」の実績につきましては、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)特定の製品への依存度について

当社グループの主力事業は橋梁等鋼構造物であり、公共事業が中心となっております。特定の製品、顧客への過度の依存リスクを回避するため、国・地方自治体のほか、各高速道路会社、鉄道会社、大手建設会社などから幅広く受注すべく、積極的に営業活動を展開しておりますが、国・地方自治体の財政政策の動向等によっては、発注量・金額が抑制されて受注量が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)主要原材料の価格変動・調達リスクについて

当社グループの主力事業である橋梁等鋼構造物工事は、鋼材を主要原材料として使用しております。主要原材料については、可能な限り早期の内示・発注により、必要数量の確保や採算の確定に努めておりますが、原材料価格の動向、また供給状況によっては価格の高騰、品不足からの工程遅延や採算悪化を生じる可能性があります。

(3)工場の操業に伴うリスクについて

当社グループは、千葉工場・市原工場を主たる生産拠点とし、大型機械設備を使用しております。このため重大な事故、また地震や台風などの自然災害などによる損壊・損傷、感染症の拡大など予期せぬ事態が生じた場合には、工場の操業に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、大規模地震や水害、伝染病の発生に備えて事業継続計画(BCP)を策定し、災害等の発生時には速やかに復旧する体制を整えておりますが、想定を超える規模の災害等が発生した場合には、工場のみならず、本社等の事務所や施工現場においても重大な影響が発生する可能性があります。

また、公共投資が金額ベースでは堅調に推移していくことが見込まれているものの、物価上昇の影響により新設関連橋梁においては重量ベースでの発注量が減少する傾向が続いております。さらに高速道路案件の大型化に伴い特定の案件を受注出来るか否かによる重量ベースでの受注実績に大きな変動が生じる上、詳細設計や同時並行で施工される下部工などの影響により製作時期が見通せないことも多いことから、工場操業度の平準化が難しい状況となっております。工場操業が不安定化することにより、損益に大きな影響を与える可能性もあります。

(4)事故などの安全上のリスクについて

当社グループの主力事業である橋梁等鋼構造物工事は、非常に大きな重量物を扱っております。また施工場所が市街地や道路、鉄道の営業線に近接することもあり、一旦事故が発生すると重大な事故に繋がるリスクがあります。

当社グループでは、外注先業者も対象とした安全衛生大会の実施、安全衛生管理方針説明会の実施、万が一事故が発生した場合の緊急連絡体制の整備など、事故防止について最善の努力を尽くしておりますが、万が一事故を起こした場合には第三者賠償責任保険などによる備えには限界があり、直接的損害のほか社会的信用の失墜、発注機関からの指名停止措置などの行政処分を受ける可能性があります。

(5)法的規制について

当社グループは、事業を営むにあたって建設業法等の法的規制を受けております。当社グループでは、コンプライアンス・リスク管理委員会の設置、定期的なコンプライアンス教育の実施など、法令等の遵守を徹底するよう努めておりますが、遵守できなかった場合には、発注機関からの指名停止措置などの行政処分、刑事処分、民事訴訟等により、損害賠償金等が発生した場合には、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(6)製品の欠陥について

当社グループでは、安全・品質を所管する部署を設置し、不具合発生時の迅速な連絡・情報共有体制を確保するなど、品質管理に万全を期しておりますが、当社グループの施工物件に重大な瑕疵担保責任が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7)金利上昇について

当社グループは、運転資金の一部を銀行など金融機関からの借入金で調達しております。急激な金利上昇などがあった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境、企業収益や雇用情勢などに改善の動きがあり、景気が緩やかに回復しているものの、米国の通商政策等による不透明感がみられました。

そのような状況下において、当連結会計年度の公共投資は予算ベースで堅調に推移しているものの、既契約工事において大幅な追加予算が必要となったことなどの影響を受け、新規契約工事の規模を縮小する動きが活発化しており、当社グループの主力である橋梁事業における道路橋・鉄道橋の大規模更新・保全関連においては、前連結会計年度実績(2,338億円)を大幅に下回る1,710億円(いずれも当社集計値)の発注となりました。また、新設関連につきましても、前連結会計年度実績(2,755億円)を下回る2,490億円(いずれも当社集計値)の発注となりました。そのような厳しい環境下においても受注高につきましては、技術的難易度の高い大型の新設関連、大規模更新・保全関連、鉄道関連工事などの受注により、過去最高となった前連結会計年度に次ぐ714億41百万円(前年同期比15.4%減)となりました。

その具体的な内容は次のとおりであります。

新設関連:技術的難易度の高い市道高速1号線他新洲崎工区改築事業(工事)(名古屋高速道路公社)、淀川左岸線延伸部 門真ジャンクション東(鋼上部工)工事(西日本高速道路株式会社)をはじめとした受注により、453億76百万円を受注しました。

鉄道関連:品川駅構内環状4号線交差部新設他(鹿島建設株式会社)をはじめとした受注により、164億28百万円を受注しました。

売上高につきましては、手持ち工事が概ね順調に進捗し、過去最高となる747億25百万円(同7.7%増)となりました。

その具体的な内容は次のとおりであります。

新設関連:川崎港臨港道路東扇島水江町線主橋梁部上部工事(国土交通省関東地方整備局)や第二京阪道路 門真高架橋東(鋼上部工)建設工事(西日本高速道路株式会社)などの進捗により、361億90百万円を売り上げました。

大規模更新・保全関連:喜連瓜破橋大規模更新工事(阪神高速道路株式会社)や令和2年度 佐世保道路 佐世保高架橋(拡幅)工事(西日本高速道路株式会社)などの進捗により、197億46百万円を売り上げました。

鉄道関連:品川駅構内環状4号線交差部新設他(鹿島建設株式会社)や広電広島駅高架化関連工事(株式会社大林組他JV)などの進捗により、144億61百万円を売り上げました。

損益につきましては、生産効率化、工事採算性向上の取り組み、働き方改革による業務効率化などの活動により、営業利益は91億68百万円(同16.0%増)、経常利益は94億96百万円(同20.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は48億63百万円(同11.7%増)といずれも過去最高となりました。

セグメントの業績は、次のとおりであります。

(宮地エンジニアリング)

受注高につきましては、450億42百万円(同0.0%減)となりました。

売上高につきましては、444億35百万円(同11.8%増)となりました。

損益につきましては、営業利益は40億13百万円(同9.9%減)となりました。

(エム・エム ブリッジ)

受注高につきましては、263億93百万円(同33.0%減)となりました。

売上高につきましては、302億78百万円(同2.2%増)となりました。

損益につきましては、営業利益は51億56百万円(同50.5%増)となりました。

 

② 財政状態の状況

資産合計は、前連結会計年度末と比較して164億51百万円増加し、905億97百万円となりました。主な要因は、現金預金が26億12百万円減少したものの、受取手形・完成工事未収入金等が186億74百万円増加したためであります。

負債合計は、前連結会計年度末と比較して147億51百万円増加し、422億67百万円となりました。主な要因は、工事損失引当金が10億22百万円減少したものの、短期借入金が75億円、未成工事受入金が61億26百万円、未払金が21億70百万円、それぞれ増加したためであります。

純資産合計は、前連結会計年度末と比較して16億99百万円増加し、483億30百万円となりました。主な要因は、自己株式を14億95百万円取得、その他有価証券評価差額金が1億54百万円減少した一方で、利益剰余金が22億79百万円、退職給付に係る調整累計額が1億86百万円、非支配株主持分が9億30百万円、それぞれ増加したためであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して26億12百万円減少し、165億2百万円となりました。

各キャッシュ・フローの状況と増減要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、26億52百万円の資金減少(前連結会計年度は88億41百万円の資金増加)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益95億74百万円の計上、減価償却費12億82百万円の計上、その他流動資産の減少7億69百万円、未成工事受入金の増加61億26百万円、その他流動負債の増加21億24百万円があった一方で、工事損失引当金の減少10億22百万円、売上債権の増加186億74百万円、法人税等の支払額29億81百万円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、24億58百万円の資金減少(前連結会計年度は15億39百万円の資金減少)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出24億92百万円があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、24億98百万円の資金増加(前連結会計年度は18億2百万円の資金減少)となりました。主な要因は、短期借入金の増加75億円があった一方で、自己株式の取得による支出14億95百万円、配当金の支払額25億74百万円、非支配株主への配当金の支払額8億59百万円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

宮地エンジニアリング(百万円)

44,427

11.8

エム・エム ブリッジ(百万円)

30,496

3.1

その他(百万円)

4

△15.0

調整額(百万円)

6

合計(百万円)

74,935

8.1

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

当連結会計年度末

(2025年3月31日)

前年同期比(%)

宮地エンジニアリング(百万円)

45,042

△0.0

63,203

1.0

エム・エム ブリッジ(百万円)

26,393

△33.0

49,263

△7.3

その他(百万円)

4

△15.0

調整額(百万円)

28

合計(百万円)

71,441

△15.4

112,496

△2.8

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

宮地エンジニアリング(百万円)

44,435

11.8

エム・エム ブリッジ(百万円)

30,278

2.2

その他(百万円)

4

△15.0

調整額(百万円)

6

合計(百万円)

74,725

7.7

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

西日本高速道路株式会社

19,867

28.6

18,098

24.2

国土交通省

11,238

16.2

15,676

21.0

阪神高速道路株式会社

4,462

6.4

9,225

12.3

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度(2024年度)は、2022年度を初年度とする5か年にわたる中期経営計画(2022年5月13日公表)の3年目にあたっており、本計画の数値目標(最終年度)、当連結会計年度までの実績および2025年度予想は以下のとおりであります。なお、数値目標は2024年11月に見直しを行っております。

(単位:百万円)

項目

2026年度目標

2022年度実績

2023年度実績

2024年度実績

2025年度予想

売上高

68,000

60,279

69,365

74,725

58,000

営業利益

6,000

5,127

7,904

9,168

4,000

経常利益

6,100

5,373

7,908

9,496

4,100

親会社株主に帰属する当期純利益

4,000

3,077

4,354

4,863

2,500

自己資本比率(注)1

55%

56.3%

53.5%

44.7%

50.3%

ROE(注)2

10%

8.9%

11.6%

12.1%

6.2%

ROA(注)3

10%

8.6%

11.5%

11.5%

4.8%

(注)1.自己資本/総資産

※自己資本は純資産から非支配株主持分を除いております。

2.親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本

3.経常利益/総資産

 

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、受注高につきましては、発注量が大幅に減少する中、技術的難易度の高い大型の新設関連、大規模更新・保全関連、鉄道関連工事の受注により、過去最高となった前連結会計年度に次ぐ実績となりました。売上高は、手持ち工事が概ね順調に進捗し過去最高となり、損益につきましても、生産効率化、工事採算性向上の取り組み、働き方改革による業務効率化の活動により、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも過去最高となりました。この結果、自己資本比率は売上債権増加の影響により前年度実績より低下しましたが、ROEとROAはともに2026年度目標を上回る実績となりました。

次年度につきましては、橋梁事業では、新設関連、大規模更新・保全関連で2024年度と同規模程度の発注量が見込まれ、事業規模約7兆円の大規模更新工事の継続的な発注や、高難度ビックプロジェクトが順調に進捗していくことが予想されるものの、当社グループが現在受注している大型工事は受注から売上・利益計上までに長い期間を要することから、業績は一時的に落ち込むものと予想しておりますが、中期的には引き続き当社グループが飛躍する事業環境にあると考えており、当社は、引き続き中期経営計画(2022~2026年度)期間中において、中長期的な持続的成長とさらなる企業価値の向上を目指すとともに、総還元性向60%を目安に配当金額の継続的な維持・拡大を目指します。

なお、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因として、国・地方公共団体の発注量、主要原材料である鋼材の価格動向、地震や台風などの自然災害および重大な事故の発生による生産設備や架設現場の損壊・損傷、建設業法や独占禁止法等の法的規制、施工物件に関わる瑕疵担保責任等が挙げられます。当社グループといたしましては、これらの要因に対し適切に対応(受注量の確保、生産性の向上、経費節減、安全対策の徹底、法令遵守、製品・施工品質の向上)し、安定的な業績の確保を図ってまいります。

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ⅰ)キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

ⅱ)契約債務

2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

7,500

7,500

長期借入金

300

300

リース債務(短期)

36

36

リース債務(長期)

239

64

52

121

当社グループの第三者に対する保証は、従業員の金融機関からの借入に対する債務保証であります。保証した借入の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2025年3月31日現在の債務保証額は、1百万円であります。

 

ⅲ)財務政策

当社グループは、運転資金および設備資金につきましては、内部資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、短期運転資金については短期借入金で、長期運転資金および設備資金については長期借入金で調達しております。

また、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計7,500百万円のシンジケーション方式のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高7,500百万円)。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、主に橋梁工事の建設コスト縮減、品質向上、橋梁新製品開発および既設橋梁の維持管理、鋼構造物の生産技術、沿岸構造物の開発・実証に関連した研究開発活動を行っております。

当社グループにおける研究開発活動は、連結子会社である宮地エンジニアリング株式会社技術・開発本部、計画本部および千葉工場技術研究所、ならびにエム・エム ブリッジ株式会社技術部および建設部が中心となり推進しております。当連結会計年度における研究開発費の総額は428百万円となっており、セグメントごとの研究開発活動の概要は以下のとおりです。

 

1.宮地エンジニアリング

 当連結会計年度における研究開発費は167百万円であり、主な研究開発の状況は以下のとおりであります。

(1)施工技術に関する研究

① 大規模更新に関する研究

高速道路各社において、大規模更新、大規模修繕に関する工事が相次いで発注されており、今後もこれに貢献できる、老朽化した橋梁や床版の架け替えを短期間で可能とする技術の研究・開発に取り組んでおります。

② 接合技術に関する研究

 工場溶接および現場溶接の生産性向上を目的に、高能率溶接法の適用に取り組んでおります。特に、現場溶接作業者の高齢化や若年層の不足による現場溶接作業者の減少への対応として、小型可搬型溶接ロボットの適用拡大について研究を進めております。ボルト接合においては,大規模更新等で採用される接合面の種類が異なる異種接合において、効率的なボルト接合を実施工に反映するために、各種異種接合面のすべり係数を検証しております。

③ 工場製作のDX推進への取り組み

 工場製作のDX推進による生産性向上を目的に、協働ロボットの適用について検討を開始しました。工場製作には鋼板の切断や孔あけ等の加工に手作業に頼る作業がありますが、その作業に適した協働ロボットの適用について検討を行っております。

 

(2)新材料・新素材に関する研究開発

  FRPの橋梁構造物への適用に関する研究

橋梁の計画的な維持管理の必要性から、今後市場の拡大が予測されるFRP検査路について、コスト削減のための構造の合理化や長支間化を実施しました。「FRP合成床版」の材料技術を生かした新たな商品として、歩道拡幅用床版や歩道橋用の取替床版、鉄道用の壁高欄・防音壁、道路橋用の壁高欄型枠を実用化し、さらなる構造改善や常設足場などへの用途の拡大を図るため、耐衝撃性や耐火性を確認するための試験を行っております。また、首都高速道路株式会社と共同で開発した、地震などで生じた橋梁の段差を、道路啓開時に車両の通行を可能とする渡し板「F-Deck」および阪神高速技術株式会社と共同で開発した、緊急輸送時にも対応できる製品「ダンパスデッキ」は、他の道路管理者への拡販を図っております。さらに、大規模更新工事における床版取替え時の交通解放技術としてFRP舗装覆工板を開発し、実証実験を終え、試験施工による適用性の確認を進めております。

 

(3)構造・強度・検査に関する研究開発

① 鋼・コンクリート合成構造に関する技術検討

中小規模の架け替えのための合成床版橋「QS Bridge」および鋼・コンクリート合成床版「QS Slab」について、コスト削減のための構造・製作および施工に関する合理化検討と、各種規準の更新に伴う技術改良を継続して進めております。

② 腐食・防食に関する研究

腐食・防食に関する研究を琉球大学と共同で実施しており、腐食した高力ボルト摩擦接合継手の残存すべり耐力評価手法を実験および解析の結果から検証しております。また、鋼橋の防食性能向上のためのFRPパネルによる多機能防食デッキの適用拡大のため、実験橋による実験結果から耐風設計法に関して研究を行っております。

 

(4)新製品・新技術に関する研究開発

① 橋梁のモニタリングシステムの適用に関する検討

既設構造物の延命化技術としてモニタリングシステムを用いた構造物の健全性診断技術、補修・補強技術の開発、改良に取り組んでおります。無線式の光ストランドセンサー(OSMOS)によるケーブル張力管理、補修工事における安全・品質管理等のためのモニタリングの新たな適用方法およびLPWA(Low Power Wide Area)、BLE(Blue-tooth Low Energy)を用いた新型センサーの導入による合理化・コスト低減に向けた開発を進めており、LPWAを用いた安全管理におけるLPWAを用いたベント傾斜監視システムおよびBLEを用いた新型OSMOS変位計を実工事にて適用開始いたしました。また、架設時の安全管理・品質管理におけるモニタリングシステムの適用実績を拡大しております。

② 複合・合成構造の研究開発

従来のCFT(コンクリート充填鋼管)と比較して耐荷力・靭性の向上が期待できるRCFT(鉄筋コンクリート充填鋼管)の適用について検討を行っております。

③ 環境配慮型の新製品や新技術の研究開発

社会的要請であるカーボンニュートラルに資する環境配慮型のボルト関連製品や新製品を使用した新しい施工技術等の研究開発を行っております。

④ インフラDXへの取り組み

構造物の3次元モデルを活用した設計・施工を実現するBIM/CIMの導入に加え、ドローン、レーザスキャナ、VRなど、ICT(情報通信技術)を活用した先進技術の導入・開発を推進しています。また、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による業務の自動化・効率化にも取り組み、鋼構造物の製作工場および施工現場における生産性と安全性の向上を図るとともに、働き方改革につながるDXを推進しています。

 

(5)施工工法等に関わる研究、取り組み

① PC業者、異種業者、補修業者との連携

既設RC床版の更新技術、特に取り替え用プレキャストPC床版に関する技術(製品、施工)をPC業者、異種業者と連携して共同で研究することにより、高速道路各社の大規模更新事業に対応すべく継続して取り組んでおり、新たなプレキャストPC床版の現場継手の開発を進めております。

② 送り出し工法の合理化に関する研究

当社グループで請け負う鋼桁架設工事は鉄道・道路を跨ぐ工事が多いことから、送り出し架設工法が多く採用され、限られた時間内で安全かつ急速に鋼桁を送り出すことが求められております。社会のニーズに応えるため、当社戦略機材である「ジャッキ装置付全輪駆動式高速台車」を活用することで、急速送り出し架設を実現しております。さらに曲線桁・拡幅桁・および断面変化の桁送り出し架設に対し、従来型の送り出し装置と比較して送り出し速度やジャッキ操作による省力・省人化に優位性を持った「新型送り出し装置」を開発し、運用を開始しております。

また送り出し架設の照査業務効率化と解析精度の向上を目的とした照査ソフトの改良にも取り組んでおり、照査結果の色分け表示による「見える化」などの改善を行い、より安全な施工を目指してまいります。

③ 建築分野における大空間鉄骨建方の研究

当社グループの建築分野では大空間構造物である大屋根鉄骨建方工事を数多く手掛けています。今般、非対称な大屋根鉄骨ブロックの建方作業の効率化を図るため、遠隔操作で安全かつ迅速に吊上げ形状調整が可能となる油圧式玉掛装置を開発し、続いて2点吊りと4点吊りができるように改良いたしました。本装置を活用することで高所作業の省力化を図り、更なる現場施工の安全性の向上を進めてまいります。

また全長600mにも及ぶ長大な発電施設、工場建屋鉄骨を、当社が保有する特殊機材を活用した「多機能式移動ステージ工法」により、高所作業の効率化、作業足場の省力化を実現して施工技術の有効性を実証しております。今後も難易度の高い鋼構造物の建方工事に挑戦するとともに、先端技術を取り入れて一歩進んだ施工技術を提供できるよう研究開発を推進いたします。

④ 建築構造物およびコンクリート床版切断技術の研究

先に開発した完全無水式ワイヤーソーによる建築構造物の鉄骨コンクリート柱・壁の切断および完全無水式ワイヤーソーシステムを用いた「M-SRシステム」により、高速道路大規模更新工事での合成桁の床版撤去時に床版ブロックを主桁上でスタッドジベルごと水平切断することで撤去作業の効率化を図り、現場施工でその有効性を実証しております。

⑤ 災害復旧(応急復旧橋)に関する取り組み

近年、日本各地で大規模地震や異常気象に伴う豪雨などの自然災害が頻発しています。災害発生時にまず求められるのは啓開(応急復旧の前に支援ルートを確保するために道を切り開くこと)であり、大型工事車両・重機を必要としない、汎用性のある山留材を利用した簡易的かつ軽量で施工性に優れる応急復旧橋やFRP覆工板による人道橋の開発を継続して行っております。今後も有事の際には、早期のインフラ復旧に貢献するように取り組んでまいります。

 

2.エム・エム ブリッジ

 当連結会計年度における研究開発費は260百万円であり、主な研究開発の状況は以下のとおりであります。

(1)施工技術・構造・材料・検査に関する研究開発

① 大規模事業・保全事業に関する研究

高速道路各社において需要が高まっている床版の取り替え、拡幅、架け替え工事を対象として、プレキャストPC床版の現場継手の開発を継続して進めております。あわせて、大規模事業に適用できる施工技術の開発を行っております。

また、腐食・損傷した鋼部材の補修工法に関する研究を継続して実施しております。

② 橋梁の耐風設計に関する研究

従来は風洞試験により耐風性検討を行ってまいりましたが、風洞試験を補完する手法として期待される数値流体解析を橋梁に適用するための調査・研究を継続して実施しております。

また、風洞試験における計測の合理化を目的として、各種デジタルセンサーを用いた計測方法の風洞試験への適用検討を進めております。

③ モニタリングシステムの開発

点検・診断業務、保全工事で必要とされる変形や振動の計測を効率的に行うことを目的として、無線技術を活用したシンプルなモニタリングシステムの開発を行いました。このシステムを受注工事での各種計測に適用することで検証を重ねており、信頼性の向上、適用拡大を進めております。

 

(2)新製品・新技術に関する研究開発

① 沿岸構造物・環境技術に関する研究・実証

水産庁の新たな「漁港漁場整備長期計画」における養殖生産拠点の形成として、養殖適地の拡大を目的とした静穏水域の確保が施策として挙げられています。本施策の実現のために、静穏水域を沖合に展開するための長波長対応型の浮消波堤の開発を行っております。数値流体解析による性能検証に加えて大型水槽を用いた模型実験により消波性能の確認と設計手法の評価に取り組んでおります。

生物多様性を保全する上でサンゴ礁は特に重要な生態系とされております。生物多様性の保全に貢献する技術として、微弱電流が流れる浮桟橋で活発に生息するサンゴの生態に着目し、サンゴの移植・増殖技術の研究を継続して実施しております。新たな研究サイトを設け様々な環境下での適用性についての実証を継続しております。

また、サンゴの増殖をモニタリングする際に使用できる、水中ドローンが撮影した画像から、深層学習を用いたAIでサンゴを自動抽出する画像解析技術を開発しました。この技術により、ダイバーの潜水機会を減らすことが可能となり、省人化、安全性の向上、リモート作業による作業環境の改善が可能となります。今後は、教師データの拡充と、アルゴリズム改良により精度向上に向けた検討を進めてまいります。

② 省人化・生産性向上・スムーズで効果的な技術伝承に資するDX技術に関する研究

国土交通省が推進するDXの推進に関連して、ICT(情報通信技術)を活用した省人化と生産性向上に向けた要素技術の開発、試行、検証に取り組んでおります。また、社内プロセスをワークフローにより見える化し、プロセスの改善・省人化の検討を進めております。

③ 耐震補強工事に関する研究

従来、建築・機械分野で用いられている慣性接続要素について、長大橋他の耐震補強工事に適用するための実用化研究を継続して実施しております。