当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループの経営方針は、景気に左右されない経営基盤を構築し、その結果として社会への貢献を通し、従業員一人一人が『胸を張って誇れる会社』を実現させることを基本方針としております。
この基本方針を実現させるための指針として、「経営理念」のもとに「安全衛生管理方針」・「品質方針」・「コンプライアンス方針」・「環境方針」を掲げております。
<経営理念>
1.私達は、諸法令・社内規程を遵守し、社会倫理に沿った企業活動を実践します。
1.私達は、顧客第一主義に徹し、信頼される品質を創り上げます。
1.私達は、積極的に新しい技術の開発と導入を図り、広い分野に製品を提供します。
1.私達は、全員の力を結集して豊かな価値を創造し、活力に満ちた会社を築きます。
1.私達は、地球環境に配慮し、社会への貢献を通して、常に胸を張って誇れる会社を目指します。
<安全衛生管理方針>
1.『安全は全てに優先する』(永年方針)
2.『ゼロ災』は、永年の最重要目標
① 本年の安全衛生基本方針は、従業員一人一人が安全に対する知識と強い自覚を持ち、安全衛生活動を推進することにより、従業員の労働災害及び交通災害をなくすこと。
② 全員で健康な身体と心が宿る快適職場を築く。
<品質方針>
私達は、「品質の維持向上は企業の社会的責任」との認識に立って、お客様に満足いただける品質を追求し、創り上げてお届けします。
<コンプライアンス方針>
1.法令その他の社会的規範を遵守し、公平で健全な企業活動を行います。
2.経営に関する情報を、適時・適正・公平に開示します。
3.企業機密、顧客又は役職員等の個人情報、その他一切の情報を適正に保護します。
4.社会的秩序や企業の健全な活動に悪影響を与える個人・団体とは、一切係わりません。
<環境方針>
私達は、緑豊かな美しい地球環境を守り、これを次の世代に引き継ぐことは人類共通の課題であるとともに、期待される社会的責任でもあると認識し、企業活動、製品及びサービスが環境に及ぼす影響と常に向き合い、自然の保全と調和に努め、地域環境の継続的改善及び汚染防止を最重要視した企業活動を実践します。
1.企業活動が地球環境に及ぼす影響を的確に把握して、環境マネジメントシステムを構築し、環境目標を定め
て、計画的、継続的に活動します。
2.環境に配慮した製品及び技術の提供を通して、環境汚染の防止に努めます。
3.業務改善活動を進め、資源・エネルギーを有効活用し、廃棄物の再利用と排出量低減に努めます。
4.企業活動に関連する法令・条例・協定及び業界規範等を遵守します。
5.全従業員が環境汚染の予防と改善に対する意識を向上するための教育を実施し、環境マネジメントシステム
の運用、維持、改善を推進します。
6.この環境方針は、社内全員に周知徹底するとともに、広く社外にも公開します。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
1933年に創業、1950年に特殊電極株式会社として設立以来、特殊溶接材料のメーカーとして事業を展開してまいりました。
当初は溶接材料の販売収益に限られていましたが、顧客の要望で特殊溶接工事も手がける事となり、工事施工の売上高比率は、2025年3月期には75.7%となりました。この間、「技術のトクデン」として顧客第一主義を基本方針とし、企業価値の増大を図ってまいりましたが、わが国経済環境は大きく変化し、企業再編、経営のグローバル化等の動きが顕著となっており、当社グループの関わる業界におきましても、企業の統合や業務提携が行われている現状であります。
このような環境の中、当社グループは以下に掲げる施策に積極的に取り組み、経営基盤の強化を図ってまいります。
1.研究開発の推進による技術的な優位性の確保
企業価値増大のため、研究開発を更に推進してまいります。今後における展開としては、研究開発も得意先や公共機関などとの共同研究を更に推進して「技術のトクデン」として市場における優位性の確保に努めてまいります。
2.顧客密着型営業の推進並びに直販体制の堅持
顧客第一主義を標榜する当社は、サービスのスピードも含め、顧客に密着し直販体制をとることは、顧客満足度を充分に維持するためには不可欠の体制であるとの認識に立って、今後とも堅持してまいります。
3.収益性を勘案した既存分野の見直し
数多い商品ラインアップの中で、成熟期を越して衰退期の域に入った分野に関しては、管理に要する費用等、収益性を勘案して商品から除去し、新しい商品への置換を図ります。
4.工事施工の工程管理などコスト削減への対応強化
今後においても激しい価格競争が続くため、工事施工の工程管理など、コスト削減への対応を強化してまいります。
5.人的資源の能力向上と意識改革の推進
従業員一人一人が、自らの業務に常に問題意識を持って立ち向かう意識改革と、改善行動を積極的かつ円滑に起こすことのできる専門知識の習得と技術の伝承を図ります。
6.職場の安全確保と業務効率化対策への積極的な投資の実行
職場の安全確保なくして企業の繁栄はなく、また、業務の効率化なくして売上の拡大は望めないとの観点から、これらに対する積極的な投資を実行してまいります。
7.海外市場の開拓
国内市場は縮小化の傾向にあり、今後の事業展開において海外市場を視野に入れた活動を推進してまいります。
8.新規得意先の獲得
研究開発の成果による新商品、新技術をもって新しい業界への浸透を図り、新規得意先の獲得に努めてまいります。
9.人材育成
企業継続に不可欠な人材の確保と育成を進めてまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後において、企業価値の向上、顧客の拡大を実現していくため、以下の重点実施項目を掲げ、経営基盤の強化充実を図ってまいります。
1.安全は全てに優先する
安全面においては、災害予知感度を向上させる教育を必ず実施し、労働、交通での無災害の達成に取り組んでまいります。
健康衛生面においては、「整理・整頓・清掃・清潔・躾」を意識し、健康な身体と心の宿る快適職場を築いてまいります。
2.組織体制の連携強化
各本部間の連携は徐々に強化され、シナジー効果を感じるようになってまいりました。営業部門と工事部門のコミュニケーションの活性化を図ることで、事業拡大を図ってまいります。
3.既存顧客への深掘や新業界の開拓
循環型社会を形成していくための取組である4R(リデュース、リユース、リサイクル、リペア)という考え方が急速に浸透してまいりました。「設備の再生・延命」をキーワードに、既存顧客へは深掘りをし、新業界の開拓を強力に推し進めてまいります。
4.溶接材料拡販
特殊溶接材料に関わるメーカーやサプライヤーは、後継者や収益性の問題から事業継続の転換期となっております。部門間の連携強化を図ることで、リスクを機会にしてまいります。
5.部会・委員会・チーム活動の強化
販売強化を目的とした部会、委員会活動や、ビジネス環境の変化に対応するためのチーム活動を積極的に推し進めてまいります。
6.品質管理強化及び徹底したコスト削減
品質管理を強化し、不適合品、重大クレームを撲滅するとともに、各本部間の連携と応援体制強化により、受注量の拡大と徹底したコスト削減を実行してまいります。
7.新技術、新製品、新装置の早期開発
これまで通り、客先が要求する新技術、新製品、新装置を早期に開発してまいります。また、創出された開発品を既存顧客、新規顧客に積極的に販売してまいります。
8.海外事業の売上拡大
「設備の再生・延命」をキーワードに事業を行ってきた当社の特殊溶接材料の製造、その材料を使った肉盛技術は海外でも認められると確信しております。海外事業開発推進部が中心となり、海外子会社の組織力の強化、設備強化により受注量を拡大して完全黒字化を実現してまいります。
9.内部統制のレベルアップ
「しっかりした体制の維持」「心理的安全性の高い風土の醸成」に取組み、「業務の有効性および効率性」「財務報告の信頼性」「法令遵守」など内部統制の充実を図ってまいります。
10.サステナビリティや貢献活動の向上
企業の透明性や責任を示し、投資家やステークホルダーとの信頼関係を築くためには、サステナビリティや社会貢献活動へ取組んでいき、情報を開示していかなければなりません。企業価値向上に資する、気候変動やESG・SDGsへの取組、女性活躍の推進などへ積極的に取組んでまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、毎期、安定的な利益を継続的に確保するとともに、株主利益の重視と経営の効率化の視点から、「売上高」「売上総利益」「営業利益」「経常利益」を重要な指標として位置づけ、景気に左右されない経営基盤の構築を目指しております。
(1)ガバナンス
当社グループは、企業価値向上の観点から、サステナビリティをめぐる課題対応を経営戦略の重要な要素と認識しており、優先的に取組むべき中長期的な課題について議論を行っております。特に、気候変動問題は国際的な課題として重要視されていることから、当社グループとしても、その他の環境関連課題と共に、管理・監督する体制を構築しております。
取締役会による監督体制としては、毎月開催される幹部会において、各種課題に対する進捗モニタリング結果が報告され、随時開催される経営委員会において、当社グループのサステナビリティに関する様々な課題を含め重要なリスクを識別し、当リスクの対応策などの経営戦略を協議しております。当協議結果は取締役会に報告され、取締役会では重要なリスク、経営戦略の審議、決定がなされております。
経営委員会は代表取締役社長を議長とし、監査等委員を除く取締役にて構成、幹部会は取締役を中心に各本部長を含めて構成しております。
(2)戦略
当社グループは、サステナビリティをめぐる課題の中から、気候変動対応を重点的に取り組むべき課題と考え、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が提言する情報開示フレームワークに沿った開示に向けて進めております。
<気候変動関連>
当期は単体における工事施工事業、溶接材料事業について、シナリオ分析を行いました。識別された気候関連リスク・機会は以下の通りです。対象範囲は当社の工事施工及び溶接材料事業、対象期間は現在~2050年としております。
TCFD提言に沿った取り組み
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ガバナンス |
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戦略 |
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リスク管理 |
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指標及び目標 |
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気候関連のリスクと機会に関する組織のガバナンス |
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気候関連のリスクと機会とそれによる事業、戦略、財務への影響 |
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気候関連リスクを特定、評価、管理するプロセス |
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気候関連のリスクと機会を評価、管理するための指標及び目標 |
移行リスク
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種類 |
主なリスク要因 |
概要 |
影響 |
対応策 |
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政策・法規制 |
炭素価格 (カーボンプライシングメカニズム) |
・炭素税等の影響による原材料のコス トアップ |
大 |
・供給者への再生可能エネルギー導入を含む GHG排出量の削減を要請 ・コストの一部を製品価格に反映(市場において 競争力を維持しつつ、製品の付加価値を向上) |
|
・炭素税等の影響によるエネルギー コストのアップ |
中 |
・世界情勢や事業の収益状況をみながら、徐々に 炭素税の影響を受けないエネルギー環境を整備 (クリーンエネルギーを使用) |
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各国の炭素排出目標/政策 |
・化石燃料を使用する発電設備向けの 既存溶接技術の需要減少 |
大 |
・顧客変化に対して必要な技術開発 |
|
|
市場 |
顧客行動の変化 |
・製鉄業界が電炉から水素還元へ変革 ・ガソリン車からEV車への移行 |
大 |
・顧客変化に対して必要な技術開発 ・新市場の開拓 |
|
低GHG排出技術への移行 |
・低GHG排出技術への対応遅れ (既存溶接技術の需要減少) |
中 |
・水素等の低GHG排出の次世代エネルギーに 向けた溶接技術開発 |
|
|
・太陽光パネル等で使用される非鉄 金属の需要増加 |
中 |
・価格変動の注視 |
物理的リスク
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種類 |
主なリスク要因 |
概要 |
影響 |
対応策 |
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慢性・急性 |
異常気象の頻発化と深刻化(豪雨、洪水等) |
・水害等の発生による、サプライヤー の操業停止・物流網混乱による調達 遅延 |
中 |
・供給者とのリスク管理体制を強化し、円滑な 情報共有 ・適切な在庫を確保 ・代替サプライヤーとの関係を構築 |
|
・水害等の発生による、製造工場の 稼働停止 |
中 |
・水害が発生した場合の対策プランを策定 |
機会
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種類 |
主な機会要因 |
概要 |
影響 |
対応策 |
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政策・法規制 |
低GHG排出技術への移行 |
・低GHG排出技術への対応先行 (売上シェアの増加) |
大 |
・水素等の低GHG排出の次世代エネルギーに向けた溶接技術開発 |
|
資源効率性 |
・新規投資ではなく既存設備の延命や 有効利用(他社サービスよりGHG 排出量が少ない) |
大 |
・当社技術である補修や表面改質技術による設備寿命延長が低GHG排出に繋がる技術であることを積極的に周知 ・需要の増加に対応した生産能力向上 |
|
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市場 |
低排出量商品及び サービスの開発又は拡張 |
・脱炭素要請への対応のため設備投資 が増加することで、溶接需要も増加 |
大 |
・当社技術である補修や表面改質技術による設備寿命延長が低GHG排出に繋がる技術であることを積極的に周知 ・需要の増加に対応した生産能力向上 |
(3)リスク管理
経営戦略の取組みの進捗管理、識別されたリスクの評価などについては、毎月開催される幹部会に対し各本部から報告がなされ、定期的に取締役会に報告しております。幹部会は取締役を中心に各本部長を含めて構成しております。経営戦略の取組みは、取締役会にて定められた方針に基づき、経営委員会・幹部会・各本部と連携しながらリスク低減に取組んでおります。
(4)指標及び目標
<気候変動対応>
当社グループは、気候変動に関する指標及び目標を設定する必要性を認識しております。気候変動リスクが経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(GHG)排出量を指標とすべく、現状把握・分析を続けておりますが、当社事業活動に起因する温室効果ガス排出量(注)の50%程度が、主力事業である溶接工事施工の電気使用に起因することがわかりました。温室効果ガス排出量の削減に向けて、事業の収益状況を見ながら、再生可能エネルギー活用や自社設備の更新を進めてまいります。また、受注機会の増加への対応策として、当社の溶接肉盛技術が省エネやGHG排出低減に繋がる技術であることから、技術の開発と合わせて、顧客等への周知を積極的に行っていきます。
(注)当社事業活動に起因する温室効果ガス排出量とは、社用車のガソリン・軽油、各事業所でのガス・電気使用量をCO₂排出量に換算したものをいう(Scope1、Scope2)
<人材育成方針>
当社グループでは部門毎に部門目標を設定しており、従業員一人一人の強みを最大限に引き出すため、例えば溶接施工部門においては、溶接技能の向上を目標の一つとして策定しております。また、部門毎に5段階の力量評価項目を設定しております。この評価項目は各部門で業務に要求される力量を検討した上で設定しているため多岐に渡ります。従業員毎に目標とする評価項目の達成や部門目標の達成に向けた教育訓練計画を立案して教育訓練を実施し、従業員のスキル向上や資格取得につながるよう取組んでいます。人材育成に関する指標及び目標については経営委員会で議論し、溶接施工者のJISに定める溶接技能者資格について取得率向上への取組みを強化しており、取得率100%の目標に対して前期の68%から70%に向上しております。
<社内環境整備方針>
当社グループは、「安全は全てに優先する」という方針のもと、全従業員が安全意識を高め、健康と安全を十分に保護するよう、各種の活動に取組んでいます。取締役会の諮問機関である安全衛生専門委員会にて安全衛生管理方針を策定し、目標として掲げる完全無災害達成のため、安全に関する意識の向上を目的とし、各部門での安全衛生活動の結果を取りまとめて社内表彰も実施しております。具体的な活動としては、溶接施工工場における着工前の危険予知活動(KY活動)の徹底や、顧客と合同で定期安全教育等を行っております。当期も安全パトロールを強化した結果、完全無災害は達成できなかったものの休業災害ゼロを達成しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
1.事故及び自然災害による影響
当社グループは、主要工場の操業停止の影響を最小限にするため、生産拠点を国内で分散するとともに、設備点検の実施、安全装置、消火設備等安全対策を実施しておりますが、これらの施策に関わらず事故や地震等の自然災害が起こった場合は、生産能力や信用力の低下による販売への影響等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2.取引先メーカーの設備投資動向の影響について
当社グループの売上高に占める販売先上位10社の割合は、2025年3月期において47.8%となっており、これら上位10社の中でも鉄鋼業及び自動車産業が上位を占めております。当社グループの経営成績は、これらの業界をはじめとした顧客の設備投資動向の影響を強く受けることから、当社グループは、他業種への営業展開を図るとともに広い分野に供給できる新技術、新装置、新製品、新商品の開発を推し進めることにより、リスクの分散化及び更なる売上拡大に努めておりますが、これらの施策に関わらず当社グループの顧客の設備投資需要が悪化した場合には、工事施工の受注減少、あるいは、受注価格または当社グループ製・商品価格の値下げ要請による同業他社との競合の激化等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
3.仕入先への依存について
当社グループのブランドにて販売している溶接材料の一部、並びにトッププレートの原材料となる混合粉末の配合及びブレンド加工については、特定の協力会社に対して、当社グループの技術標準に基づき製造委託または加工委託を行っております。
当社グループの当該溶接材料の一部は、1980年からニツコー熔材工業株式会社(大阪市)に製造委託を行っており、2025年3月期の商品仕入高に占める同社からの仕入割合は12.5%となっております。
一方、混合粉末は、1990年から昭和KDE株式会社(東京都品川区)に加工委託を行っており、2025年3月期の原材料仕入高に占める同社からの仕入割合は32.6%と高い水準にあります。
当社グループは両社との間において、基本契約の他に機密保持に関する覚書等を交わしており、原材料及び商品の安定調達を図るとともに、独自の技術及びノウハウの流出防止に努めております。
しかし何らかの事情により、これらの安定調達に支障が生じたり、あるいは、当社グループ独自の技術やノウハウが第三者に流出した場合には、製造・加工委託の代替先の確保に時間を要し、あるいは、競合商品の新たな市場投入によるシェアの低下等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
4.協力会社への外注について
当社グループは、機械加工または熱処理加工等、社内の設備や技術では対応が困難な工程、あるいは汎用的な溶接作業等、原価の低減または生産能力の補完に寄与する工程等については外注を活用しております。
当社グループは、外注先の品質管理及び納期管理に努めるとともに、能力の高い外注先の確保・育成に努めておりますが、当社グループの外注先が、必要な技術的・経済的資源を維持できない場合、あるいは、当社グループが適時・適切に有能な外注先を確保・活用できない場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
5.原材料価格の変動について
近年、当社グループの製・商品の原材料価格が上昇しております。これに対処するため、当社グループは顧客に対する販売価格への転嫁の要請、当社グループの生産性向上及びコスト削減等を実施しておりますが、今後、原材料価格が大幅に高騰した場合には、適時・適切に販売価格へ転嫁できる保証はなく、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
6.固定資産の減損処理
当社グループは、保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等により事業の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合には、固定資産の減損会計の適用による減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
7.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、経営環境の変化などを踏まえその回収可能性を考慮して将来の課税所得を合理的に見積もっておりますが、その見積額が減少した場合には、繰延税金資産の回収可能性が変動し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善するもとで、緩やかな回復が続くことが期待されました。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなって存在しました。また、物価上昇、米国の政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等、先行きの見通せない不透明な状況で推移しました。
このような状況の中にあって当社グループは、営業部門におきましては、営業活動の効率化と高度化を推進し、売上拡大に鋭意努力してまいりました。
生産工場及び工事工場におきましては、安全第一のもと、技術の伝承を進めるとともに品質の向上や作業の効率化を推し進めてまいりました。
研究開発などの技術部門におきましては、新技術、新製品、新装置の開発ならびに既存技術の向上に取り組んでまいりました。
海外子会社におきましては、販売体制の強化を進めてまいりました。
その結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ335百万円増加し、11,911百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ59百万円減少し、4,256百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ395百万円増加し、7,654百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上高は10,539百万円(前連結会計年度比9.9%増)となりました。損益面におきましては、営業利益は635百万円(同28.4%増)、経常利益は646百万円(同24.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は467百万円(同23.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
工事施工は、積極的な提案型営業と高度技術の提供、徹底したコスト削減の実行により、受注拡大に努めた結果、プラズマ粉体肉盛工事の受注は減少しましたが、粉砕ミル工事、連続鋳造ロール肉盛工事、鉄鋼関連の保全工事の受注が増加したことにより、売上高は7,978百万円(前連結会計年度比11.8%増)、セグメント利益は1,184百万円(同8.5%増)となりました。
溶接材料は、直販体制の優位性を活かし、新規顧客の開拓と既存顧客の更なる深耕による販売力強化に努めましたが、当社の主力でありますフラックス入りワイヤなどの製品の売上高は539百万円(前連結会計年度比0.2%減)、また、商品のアーク溶接棒、TIG・MIGなどの溶接材料の売上高は782百万円(同8.8%減)となり、溶接材料の合計売上高は1,321百万円(同5.5%減)、セグメント利益は133百万円(同22.1%減)となりました。
環境関連装置は、自動車産業用粗材冷却装置、自動車産業用試験装置・検査装置の受注が増加したことにより、売上高は583百万円(前連結会計年度比52.0%増)、セグメント利益は56百万円(同248.9%増)となりました。
その他は、自動車関連のアルミダイカストマシーン用部品の受注が減少したことにより、売上高は656百万円(前連結会計年度比1.5%減)、セグメント利益は31百万円(同9.5%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ286百万円減少し、1,703百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、税金等調整前当期純利益609百万円に、減価償却費の計上382百万円、未払金の増加243百万円などの資金増加要因がありましたが、売上債権の増加357百万円、契約資産の増加363百万円、棚卸資産の増加203百万円、仕入債務の減少607百万円などがあり、107百万円の支出(前連結会計年度は308百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、有形固定資産の取得による支出319百万円などがあり、429百万円の支出(前連結会計年度は894百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、長期借入金の返済による支出100百万円、配当金の支払147百万円などの資金減少要因がありましたが、短期借入金の純増額500百万円があり、250百万円の収入(前連結会計年度は101百万円の収入)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
|
工事施工 |
348,228 |
102.4 |
|
溶接材料 |
813,790 |
129.3 |
|
合計 |
1,162,018 |
119.9 |
(注)1.金額は製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.工事施工の数値は、工事材料として使用されるトッププレート(耐摩耗用クラッド鋼板)の生産実績であります。
b.商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
仕入高(千円) |
前年同期比(%) |
|
溶接材料 |
682,455 |
98.7 |
|
その他 |
625,877 |
104.8 |
|
合計 |
1,308,332 |
101.5 |
(注)金額は仕入価格によっております。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
|
工事施工 |
7,984,278 |
112.0 |
224,857 |
102.6 |
|
環境関連装置 |
587,773 |
152.9 |
6,166 |
398.8 |
|
合計 |
8,572,051 |
114.1 |
231,023 |
104.7 |
(注)金額は販売価格によっております。
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
工事施工 |
7,978,518 |
111.8 |
|
溶接材料 |
1,321,422 |
94.5 |
|
環境関連装置 |
583,153 |
152.0 |
|
その他 |
656,779 |
98.5 |
|
合計 |
10,539,874 |
109.9 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
日本製鉄株式会社 |
1,320,131 |
13.8 |
1,836,393 |
17.4 |
|
JFEスチール株式会社 |
967,534 |
10.1 |
- |
- |
(注)当連結会計年度のJFEスチール株式会社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産残高は7,610百万円となり、前連結会計年度末に比べて428百万円増加しました。これは、現金及び預金286百万円、受取手形143百万円、その他(流動資産)210百万円の減少がありましたが、売掛金570百万円、契約資産363百万円、商品及び製品143百万円の増加が主な要因です。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産残高は4,301百万円となり、前連結会計年度末に比べて92百万円減少しました。これは、投資有価証券27百万円の増加がありましたが、建物及び構築物(純額)118百万円の減少が主な要因です。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債残高は3,021百万円となり、前連結会計年度末に比べて118百万円増加しました。これは、支払手形及び買掛金1,435百万円の減少がありましたが、電子記録債務747百万円、短期借入金500百万円、未払法人税等112百万円、その他(流動負債)166百万円の増加が主な要因です。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債残高は1,234百万円となり、前連結会計年度末に比べて178百万円減少しました。これは、長期借入金100百万円、退職給付に係る負債75百万円の減少が主な要因です。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産残高は7,654百万円となり、前連結会計年度末に比べて395百万円増加しました。これは、利益剰余金318百万円の増加が主な要因です。
b.経営成績
(売上高)
売上高は、溶接材料の受注の減少がありましたが、粉砕ミル工事、連続鋳造ロール肉盛工事、鉄鋼関連の保全工事など工事施工の受注の増加、自動車産業用粗材冷却装置、自動車産業用試験装置・検査装置など環境関連装置の受注の増加により、10,539百万円(前連結会計年度比9.9%増)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は、7,734百万円(前連結会計年度比11.8%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、運搬費、消耗工具器具備品費、租税公課の減少などにより、2,169百万円(前連結会計年度比0.3%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、467百万円(前連結会計年度比23.1%増)となりました。
また、売上高に対する親会社株主に帰属する当期純利益率は、前連結会計年度に比べ、0.4ポイント増加し、4.4%となりました。
セグメント毎の経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
また、当社グループの経営に影響を与える大きな要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本の財源及び資金の流動性についての分析について、当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造のための原材料の購入及び商品の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費及び販売諸掛(販売に係る諸費用)であります。
研究開発費は、一般管理費として計上されておりますが、研究開発に係る材料費及び研究員の人件費がその主要な部分を占めております。
なお、運転資金及び設備投資資金については、内部資金または借入金により資金調達することとしております。
③ 重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表作成にあたって、資産、負債、損益の計上金額並びに関連する偶発事象の見積りの判断は、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等により事業の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合には、固定資産の減損会計の適用による減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、経営環境の変化などを踏まえその回収可能性を考慮して将来の課税所得を合理的に見積もっておりますが、その見積額が減少した場合には、繰延税金資産の回収可能性が変動し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、毎期、安定的な利益を継続的に確保するとともに、株主利益の重視と経営の効率化の視点から、「売上高」「売上総利益」「営業利益」「経常利益」を重要な指標として位置づけ、景気に左右されない経営基盤の構築を目指しております。
2025年3月期の連結業績の目標値は、売上高9,497百万円、売上総利益2,472百万円、営業利益296百万円、経常利益305百万円としておりました。
売上高の達成率は、111.0%となり、目標値を上回りました。工事施工事業及び環境関連装置事業の売上総利益率が計画より向上したことに加え、諸経費の圧縮に努めたことにより、損益面の達成率は、売上総利益113.5%、営業利益214.2%、経常利益211.3%となりました。
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指標(連結) |
2025年3月期(計画) |
2025年3月期(実績) |
2025年3月期(達成率) |
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売上高 |
9,497百万円 |
10,539百万円 |
111.0% |
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売上総利益 |
2,472百万円 |
2,805百万円 |
113.5% |
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営業利益 |
296百万円 |
635百万円 |
214.2% |
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経常利益 |
305百万円 |
646百万円 |
211.3% |
該当事項はありません。
当社グループは、多様化された顧客ニーズに対応するため、溶接技術をキーワードに、地球環境、作業環境へ配慮した製品、商品、装置の研究開発を基本コンセプトとして取組んでおります。
研究開発体制は、開発委員会の統制のもと、研究開発部及び環境技術室において推進し、研究開発スタッフは18名で、これは総従業員の約7%に当たっております。
当連結会計年度における各セグメント別の主な開発テーマ、研究開発状況は次のとおりであります。また、当連結会計年度における各セグメント別の研究開発費は、①工事施工
① 工事施工
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研究・開発テーマ |
研究・開発状況 |
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トッププレート新グレードの開発 |
新グレードの耐摩耗プレート開発を目指し、試作及び各種データによる分析検討を進めてきた結果、一定の目途がつきました。 |
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レーザークラッディング技術の展開 |
エネルギー関連部材の耐用度向上を目指し、レーザークラッディングを用いた施工技術の確立をお客様と共同で進めてきた結果、次期ステップ(実機試験)に移行する事となりました。 |
② 溶接材料
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研究・開発テーマ |
研究・開発状況 |
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PTA粉末材料の開発 |
多層盛が可能であり、耐摩耗性が良好な粉末材料開発に関して特許を取得しました。 |
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MTワイヤの作業性改善と生産性の向上 |
フラックス入りワイヤにおける製造コスト抑制に努めてまいりました。引き続き原材料調達方法や品質の調査及び生産性、作業性、能率向上等の改善を継続します。また、今までにない新しい考え方の溶接材料(ワイヤ)も開発しました。 |
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アルミ鋳造設備における耐溶損性溶接材料の開発 |
産学連携案件として、現有溶接材料以上の耐アルミ溶損性を有した溶接材料の開発を進めてまいりました。 |
③ 環境関連装置
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研究・開発テーマ |
研究・開発状況 |
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加熱技術の装置化開発 |
従来技術を活かし、新たな顧客に新設計の加熱装置を提案・評価し、実機導入に繋げることができました。また、省エネ化・差別化を図るため、熱風加熱に新たな手法を取り入れる基礎評価の準備ができました。 |
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冷却技術の装置化開発 |
従来技術(空冷)に冷却効率向手法を加え、新たな顧客に新設計の装置を提案・評価し、実機導入に繋げることができました。また、他社よりも知見のある空冷技術を更に向上させるための準備をしております。 |
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カーボンニュートラルに向けた商品開発 |
カーボンニュートラルに向けて、地球環境に配慮した、エネルギー低減を目指した抑制装置に着手し、設計・試作・評価を行ってきました。実機導入に向けて更に評価を行っていきます。 |
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自動化による省人化設備開発 |
協働ロボット、2Dビジョンカメラを使用し、生産工程の無人化を目指して社内評価を行いました。実機導入に向けて更に評価を行っていきます。 |