第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

<経営理念>

○伝統と革新スピリットを融合

「永くに亘る歴史と伝統を基盤にし、革新的スピリットの融合で、機動的かつ柔軟な経営を推進する」

○社会と業界の発展に貢献

「環境対応と経済性を両立した技術と品質向上への飽くなき挑戦で、社会、海運・造船業界の発展に

 貢献する」

○総合力を発揮し、世界へ飛躍

「社員の力を結集し、開発・設計・製造・販売・サービスの一貫体制で、世界に伍していける企業を

 目指す」

○無災害職場の確立

「危険予知の徹底と闊達なコミュニケーションで、災害ゼロを目指す」

 

<経営ビジョン>

「世界的視野に立ち、伝統と革新を融合させ、日の丸舶用エンジンをお客様とともに育て、次代を拓く」

 

(2)経営戦略等

当社は、2017年の事業統合後、PMI(Post Merger Integration)を推進し、経営基盤を強化することで、厳しい市況にも耐えうる企業体質へと変容を遂げました。これを原動力に攻めの経営に転じ、将来の飛躍に向けた各種施策を講じたことで、次なる新たな成長ステージに移行しております。こうした当社の今後の目指す姿として、2022年5月に中期事業計画を策定しており、以下の3点について重点的に取り組みを進めることで、ESG経営を深化するとともに、新たな価値を社会に提供する持続可能な企業として業績を伸長させています。

 

①環境分野での新製品開発加速

環境規制の強化に適応し、既存製品の競争力を強化するとともに、アンモニア・水素燃料エンジンという新機軸の製品の、開発、製造、社会実装を世界に先駆けて進めることで、業界のゲームチェンジを実現していきます。

②ライセンス事業の伸長

新規ライセンシーを開拓するとともに、ライセンシーにおけるUEエンジンの受注、製造を支援することで、事業のグローバル展開を加速させ、市場シェアの伸長でUEライセンサーとしての飛躍を具体化していきます。

③事業基盤の深耕による収益性の更なる向上

デジタルトランスフォーメーションの推進で、製品の付加価値向上や、社内オペレーションの効率化を実現するとともに、社内リソースの再配置で、事業伸長に備えて組織を最適化してきます。

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営指標としては、「経常利益」を重視し、安定した収益体質の確立を目指してまいります。

 

(4)経営環境

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行により、社会経済活動の正常化が進み、個人消費や設備投資、輸出等に持ち直しが見られるなど景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化、中東情勢の緊迫化などによる地政学リスクの高まり、中国経済の先行き懸念・成長率鈍化、根強いインフレと各国中銀の金融引き締め継続など、不確実性の影響を絶えず注視していく必要があります。

当社と関連性の高いわが国海運・造船業界は、海運業界では、コンテナ船において荷動きの伸び悩みや新造船の供給増加により、需給の軟化が見られたものの、自動車船やエネルギー輸送船などでは、限定的な新造船竣工量を背景に船腹需給の引き締まり傾向が継続し、市況は底堅く推移しました。また、造船業界においては、海運各社による省エネ・新鋭船の新造発注が活発化し、国内造船所は総じて豊富な手持ち工事量を確保しております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2025年3月期の通期業績予想につきましては、前期比で増収・増益となる、売上高26,650百万円(前期比5,680百万円、27.1%増)、営業利益3,400百万円(前期比1,211百万円、55.3%増)、経常利益3,870百万円(前期比351百万円、10.0%増)、当期純利益3,000百万円(前期比451百万円、17.7%増)を見込んでおります。2025年3月期においても、各事業領域で、弛まず成長軌道を描くことで、売上高・利益ともに前期を上回り、過去最高を2期連続で更新する見通しです。売上高および損益の詳細は以下の通りです。

 

<売上高>

①主機関

当社UEエンジンの優れた環境・燃費性能を訴求する積極的な営業活動を展開することで、最新鋭省エネ主機関であるLSH型を中心に、受注残高を豊富に積み上げております。設備工事の影響も解消していることから、効率的な生産を通期で継続し、販売台数の増加に繋げていきます。また、マーケットの旺盛な需要に応えるべく、当期においても、国内ライセンシーへの製造委託を継続致します。販売単価においても、窒素酸化物3次規制(NOxTierⅢ)に適合する環境対応設備(EGR/SCR)の搭載を継続しており、加えて、最先端の層状噴射技術を適用したLSJ型機関の販売も予定していることから、高位で推移する見通しです。

 

②修理・部品等

アフターサービスは、船舶の高稼働運航が継続する見通しであり、これにより発生するメンテナンス需要を確実に取り込んでまいります。また、省エネビジネス拡販強化と、中国ライセンシー製主機のアフターサービス取込みについても推進していきます。ライセンスでは、ライセンシーと一体となったUEブランドプロモーションを推進し、ライセンスビジネスの拡大を図っていきます。

 

<損益>

主機関では、引き続き同型エンジンの連続生産などで更なる効率化を図りつつ、豊富な受注残を梃子に工場操業を高位で保持していきます。また、UEファミリー全体での戦略的なサプライチェーンマネージメント構築活動も推進することで、資機材のロット発注を具体化し、メリットを享受していきます。

修理・部品等では、アフターサービス、ライセンス、部品供給の全ての事業領域で、引き続き、堅調な収益を見込んでおります。

研究開発については、引き続きグリーンイノベーション基金事業のご支援のもとで、アンモニア・水素燃料エンジンの実機開発を進捗させ、受領する交付金は営業外収益に計上予定です。なお、大型試験設備への投資を前期で完了したことから、研究開発費は前期からの減少を見込んでおります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 当社は、経営理念の一つに「環境対応と経済性を両立した技術と品質向上への飽くなき挑戦で、社会、海運・造船業界の発展に貢献する」と定めており、気候変動を始めとする環境問題に対応し、環境と調和した事業活動と地球環境に配慮した製品・サービスの提供を通じて、「脱炭素社会の実現」などの環境問題に積極的に取組み、社会の持続的な発展に寄与していく方針です。

 

① ガバナンス

 当社は、環境方針として、環境活動に関する基本理念と基本方針を定め、本方針に基づく環境保全活動計画を策定すると共に、ISO14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)を構築し、全ての事業領域において、全従業員参加のPDCAサイクルを回し、環境活動を推進しています。

 毎月開催される環境保全委員会において、環境保全活動計画に対する進捗状況の確認を行い、年2回のマネジメントレビューでは、その活動内容を報告し、経営トップコミットメントによる環境経営を推進しています。

 また、GX戦略推進室とも連携を図り、脱炭素推進活動について討議・推進しております。

 

② リスク管理

 環境マネジメントシステム(EMS)に基づき、当社を取り巻く状況に関して、外部・内部の課題及び、ステークホルダー及び環境側面、順守義務を含むニーズと期待を広く理解し、各部門にて取り組む必要があるリスク及び機会を決定し、環境保全計画書を策定しています。

 また、サプライチェーンにおける人権尊重についても、継続して状況確認しています。

 

③ 戦略

 当社は、「社員の力を結集し、開発・設計・製造・販売・サービスの一貫体制で、世界に伍していける企業を目指す」という経営理念のもと、事業を通じて海運・造船業の発展に貢献し、永続的に新たな価値を社会に提供できるよう、また、社員が健康で活き活きとして、働き続けられる企業に発展するよう、弛まぬ努力と挑戦を続けていくことをESG経営のコンセプトとして掲げています。

 また、ESG経営を進めるためには、多様な人材を活用し、個人の能力開発の支援にも力を入れ、一人ひとりの能力を最大限に引き出すことと、安心して働き続けられる職場環境の整備が必要であると考えており、当社の基本方針のひとつとして、「人的資本への投資拡大、健康経営の推進」を掲げ、自律的に成長できる人材の育成と、ライフステージに応じた職場環境を整備することで雇用を維持し、企業の持続的な成長につなげることを目指します。

 

 <人材育成方針>

 イ.多様な人材が持つ知識、技能、経験、能力から成る人的資本と、エンジン開発にて蓄積した知的財産を当社の重要な経営資源と捉え、投資を拡大。

 ロ.教育制度の拡充・リスキリングの徹底で人財を育成、あわせて社員評価制度を闊達に運用し組織風土の改革。

 ハ.従業員の労働環境改善に資する健康投資拡大で、持続的な健康経営を実現。

 ニ.従業員エンゲージメント向上に資する各種施策の展開で、社員の満足度を向上させ、顧客満足度の向上や、当社業績の伸長に繋げる好循環を実現。

 

 <社内環境整備方針>

   当社は、ウェルビーイング向上により、従業員が身体的・精神的・社会的に満たされ、活き活きと働ける職場環境において、多様な人材が成長し、活躍し続けることが企業価値の向上に繋がるものと考え、下記の取り組みを行っています。

 

 イ.多様な人材の活躍を支援

   新卒・中途採用に加え、派遣から正社員への登用も積極的に進めています。また、外国籍社員、障がい者、高齢者雇用についても、スキルと経験を活かした雇用の機会を提供し、安心・安定した働き方を支援する制度を導入しています。さらに、若手社員の経験拡大と離職防止を目的とした「キャリアパス面談制度」、女性活躍推進のための「キャリアリターン制度」(配偶者の都合などで退職した社員を再雇用する制度)を導入しています。

 ロ.自律的に成長できる人材の育成

   「社員階層別研修制度」により、全社員を対象に、一人一人のポジションや役割に応じて必要となるスキルの習得を図っています。また、自己啓発支援制度も導入・拡充し、積極的にスキルアップに取り組む社員をサポートしています。さらに、目標管理制度やフィードバック面談などを含む社員評価制度の闊達な運用により、社員の自律的な成長を支援しています。

 ハ.社員エンゲージメントの向上

   各部門において顕著に活躍し、他の社員にも業務姿勢などで模範となる社員に対しては、社長名での年間MVP表彰を行っています。また、従業員向けに「社員意識調査」を実施し、人事制度や会社施策に対する社員の本音を聞き取り、会社施策や職場改善に反映することで、社員エンゲージメントの持続的な向上を目指しています。

 ニ.ウェルビーイング向上を実現する職場環境

   当社では、残業時間の削減と年次有給休暇の取得推進に取り組んでいます。残業時間の削減には、週2回の「定時退社日」を設け、効率的な業務遂行と働き方の改善を推進しています。また、年次有給休暇の取得を推進するために、年間計画休暇日(会社全体で同時に有給休暇を取得する日)を年に5日間設定し、プライベートの時間を充実させる取り組みを行っています。さらに、フレックスタイム制度、育児・介護休暇制度、時短勤務制度など、様々な働き方の選択肢を設けることで、それぞれの社員に合わせた柔軟な働き方を実現しています。これにより、社員一人一人がやりがいや充実感を持ちながら働ける環境を提供しています。

 ホ.安全・安心して働ける職場環境と健康経営の推進

   安全風土の構築と全社員の安全意識の向上によって、完全無災害職場の達成を目標としており、あらゆる人が安心して働ける職場環境の整備に取り組んでいます。

   さらに、従業員の健康管理も重要な経営課題と捉え、人間ドック受診費用補助拡大、禁煙や生活習慣病等に関するセミナーや福利厚生イベントを開催するなど様々な健康に関する取組みを実施しており、これらの取組みが評価され、2024年3月には、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において、3年連続で「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」に認定されました。さらに、「健康経営優良法人の中でも優れた企業」かつ「地域において、健康経営の発信を行っている企業」として優良な上位500法人に対して表彰される「ブライト500」に2年連続で認定されました。

 ヘ.知的財産権の尊重

   長年のエンジン開発にて取得した特許は、知的財産権として適切に管理しており、当社社員の職務上の発明については、職務発明規程によって、会社としての取扱いを明確に定めています。また、知的財産権に関する教育も実施しており、他社の権利を尊重し、不正な使用を行わず、使用する場合は、正当な手続きを遵守すること、また、自社の権利については、権利が侵害された場合の適切な手続きや法的手段を理解することで、技術革新を促進、公正な競争環境を確保します。

 

 

④ 指標及び目標

 上記「③ 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度)

新卒採用人数

10

6人(女性比率33.3%)

中途採用人数

-

8(女性比率38%)

上記のうち、派遣社員からの登用

-

3(女性比率67%)

女性社員比率

20

13.4

外国籍社員比率

10

5.7

障がい者雇用

法定雇用率2.3

1.73

月平均残業時間

20H/月・人以下

22.5H/月・人

年次有給休暇取得日数(有給休暇取得率)

-

15.1(74.8%)

育児休業取得者数(割合)

-

7人(男5人、女2人)

取得率:63(男55%、女100%)

休業労災発生件数

0

1

 

(2)気候変動に関する取組み

 当社は、2050年カーボンニュートラル達成に向け、次世代脱炭素燃料エンジンの開発などを推進し、需要家からの温室効果ガス(GHG)排出量を削減するとともに、事業活動におけるGHG削減についても進めております。

 

① ガバナンス

 脱炭素経営を推進するためのガバナンス体制として、取締役会、経営会議の管理監督下のもと、担当役員及びエネルギー管理統括者を設置し、社内各部門に配置する推進者を統率しています。

 

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② 戦略

 イ.製品を通じたGHG排出量の削減

  ・当社製品である舶用エンジンからのGHG排出量を削減することで、需要家におけるGHG排出量の削減に貢献していきます。現行の重油燃料エンジンについては、性能改善を追求し、高効率・低燃費化を実現しています。また、燃料をMGO(Marine Gas Oil)とすることで、重油燃料エンジンよりも環境負荷を軽減するMGO専焼エンジンについても開発、製品化しています。

  ・これらに並行して、燃料転換によるGHG排出削減にも積極的に取組んでおり、ファーストムーバーとして世界に先駆けて、アンモニア及び水素を燃料とする次世代脱炭素燃料エンジンの開発を進捗させております。

 ロ.当社生産活動におけるGHG排出量の削減

  ・当社生産プロセスからの排出は、直接排出(Scope1)と間接排出(Scope2)に分類され、直接は、エンジンの組立完了後、工場出荷前に実施する試運転で使用する燃料からの排出が主に該当します。また、間接は、工場・事務所等で使用する電気が主に該当します。当社は、自社における研究開発やDX推進の成果なども反映しながら、短期・中長期の時間軸で、直接・間接の双方ともに削減を進めています。

 

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  ・直接排出(Scope1)については、短期的には、低燃費エンジンの開発、製品化によって、工場試運転時に使用する重油燃料の削減を進めていきます。また、中長期的には、研究開発の成果として、次世代脱炭素燃料エンジンを製品化することで、工場試運転時に使用する燃料を、脱炭素燃料へと転換していきます。

  ・間接排出(Scope2)については、短期的には、空調設備の更新や、工場・倉庫・事務所の照明をLED化することなどで電気使用量を削減していきます。DX推進の成果として、電力監視システムを活用し、社内各所での電気使用量を把握することで、使用量を効率化し、省エネ活動を推進していきます。また、中長期的には、太陽光発電システムを導入し、自社消費することで、工場使用電力を自然由来の再生可能エネルギーへと転換していきます。なお、太陽光発電システムについては、事務所棟・倉庫棟などの屋上に2023年に設置済です。さらに、消費する電力からのGHG排出量を更に削減する手段として、CO2フリー電気への切替えについても検討していきます。

 ハ.サプライチェーン全体での環境負荷軽減

  ・当社トランジション戦略を、サプライチェーン全体で共有することで、GHG排出量削減に向けた取組みを、自社に留まらず、サプライチェーン全体に広げ、関係者が一丸となって推進していきます。さらに、直接材、間接材ともにグリーン調達を進め、サプライチェーン全体での環境負荷軽減を進めていきます。

  ・ビジネスパートナー(サプライヤー)様向け事業戦略説明会において、当社トランジション戦略を説明し、理念を共有する予定です。また、再生素材を利用したリターナル容器(通い箱)を導入しております。さらに、当社調達品の納品にあたりミルクラン方式の導入についても調整中です。

 ニ.グリーンファイナンスによる資金調達

  ・当社のトランジション戦略を支える資金について、グリーンファイナンスによる調達手法を取り入れており、次世代脱炭素燃料エンジンの開発・製造に要する資金をグリーンローンにて調達を実施しております。(2023年3月から5年間)

 

 ホ.グリーン市場の創出・拡大

  ・業界団体を通じた活動や、関係先とのコンソーシアム組成、共同出資の新会社設立、産学連携の共同研究などを通じて、イノベーションを共創し、グリーン市場を創出・拡大していきます。

  ・NEDOグリーンイノベーション基金事業として、下記の開発において、需要家や船級協会と連携したコンソーシアムを組成するとともに、大学と連携した研究開発も推進しております。

   アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発(2021年度~2027年度)

   舶用水素エンジン及びMHFSの開発(2021年度~2030年度)

  ・舶用水素エンジンの共同開発などを目的とし、共同出資の新会社HyEng株式会社を2021年に設立しております。

 

③ リスク管理

 気候変動に関わるリスクについては、「(1)サステナビリティ全般 ②リスク管理」に記載のとおり、環境マネジメントシステム(EMS)に基づき、主要なリスクを評価・特定し、その低減活動を行っています。

 

④ 指標及び目標

 ・2050年カーボンニュートラル

 ※中間段階 2030年度時点で、2013年度対比▲39.2%を達成。

 

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 <削減目標の考え方>

  ・2015年にパリ協定が採択される中で、海事産業においては、IMO(国際海事機関)において、GHG削減目標を以下の通り定めており、わが国では、国際海運GHGゼロエミッションプロジェクトとして、2050年カーボンニュートラルを目指しております。

 

 <IMO GHG削減戦略>

  ・2030年までに 2008年比で30%削減(最低20%削減)を目指す。

  ・2050年頃までにネット排出ゼロ

 

  ・また、日本のNDC(Nationally Determined Contribution)として、わが国は、2030年度において、GHGを2013年度から46%削減することを目指しており、当社が基盤を置く兵庫県においては、産業部門で、2030年度に、2013年度比で39.2%削減を目標としております。

   よって、当社では、2050年にカーボンニュートラル達成を目標とし、その中間段階である2030年度においては、2013年度対比で39.2%削減を目標として取組みを進めていきます。

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)受注環境について

今後の世界景気、船腹需給及び海運市況の動向等によっては、新造船需要や、アフターサービス需要の変動が予想され、当社の受注・販売ひいては経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(2)特定の取引先への依存について

当社の主力製品である主機関の構成部品の多くは、社外調達に依存しており、主要な部品の一部には特定供給元に依存しているものがあります。これらについて、供給元の状況によっては調達が不安定になる可能性があります。

 

(3)原材料・購入部品等価格の変動について

当社製品は、製造原価に占める原材料費・購入部品費の比率が高く、国内での廉価調達や海外を含めた新たな調達先開拓など、継続的に調達コストの低減に取り組んでおりますが、将来の原材料・購入部品等の価格高騰が今後の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)為替の変動について

当社は、購入部品の一部を海外から調達しており、また、顧客との間で、米ドルやユーロ等の外貨建てにて取引を行うことがあります。為替予約等によりリスクをヘッジする場合もありますが、将来の為替の変動が今後の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)売掛債権回収リスクについて

当社は取引先に対して売掛債権を有しております。

金融情勢の変化や景気の動向等を勘案し、与信先の業況を常に把握し、不良債権や貸倒損失の発生を防ぐ対策をしておりますが、市場環境の急速な変化や突発的な取引先の信用不安等により、今後の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)工事量について

当社の工場では、主力製品である主機関と並んで、他製品向けの部品の機械加工・組立工事も取り込むことで、工事量の確保・平準化に努めております。これらの工事量が、所期の計画値を大きく下回る場合、工事量不足による作業レート悪化等により、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度の売上高は、20,969百万円となり、前期比5,720百万円(37.5%)の増収となりました。このうち主機関は、9,493百万円で、前期比3,056百万円(47.5%)の増収となりました。上期は、豊富な受注残を背景に、資機材のロット発注や先行部品組立などを推進しつつ、次世代脱炭素燃料エンジン生産に向けた各種設備工事を順調に進捗させました。下期は設備工事の影響が解消し、先行してサブアッセンブリ―していた部分組立品も活用しつつ、同型エンジンの連続生産で売上を拡大させました。また、窒素酸化物3次規制(NOxTierⅢ)に適合する環境対応設備(EGR/SCR)の搭載、最先端の層状噴射技術を適用したLSJ型機関の販売などで、販売単価も上昇しました。更に、マーケットの旺盛な需要に応えるべく、当社での生産に加えて、国内ライセンシーへの製造委託も進捗させました。これらの各種打ち手が的確に奏功したことで、想定を上回る速度で事業が伸長し、前期からの大幅な増収を達成しました。

 

また、修理・部品等は、11,475百万円となり、前期比2,664百万円(30.2%)の増収となりました。アフターサービスでは、船舶の高稼働運航が継続しており、きめ細かい客先対応を続けることで、電子制御部品や燃焼室部材を中心とするメンテナンス需要を取り込みました。ライセンスでは、UEエンジンのグローバル展開で世界シェアを拡大させており、特に中国市場において、リプレース需要の見込まれる内航船マーケット向けを中心にライセンシーでの受注が進み、UEエンジンの連続生産を実現しました。これに伴い、当社は、エンジンのキーコンポーネントをライセンシーへ販売するとともに、ライセンシーからロイヤリティーを受け取りました。

 

 損益面では、主機関では生産計画の最適化で、同型エンジンを連続生産し、リピート効果を享受しました。下期は先行組立したブロックの活用で、生産効率が更に改善しました。また、修理・部品等では、アフターサービス、ライセンス、部品供給の全ての事業領域が堅調に推移することで、増益に寄与しました。この他に、研究開発関連として、グリーンイノベーション基金事業のご支援のもとで、アンモニア・水素燃料エンジンの開発を予定通り進捗させており、実機製造・試運転に向けた大型試験設備への投資も進めました。これにより、研究開発費は前期比で大きく増加しましたが、その影響を業績伸長で吸収することで、営業利益の段階でも、前期比で増益を達成しました。また、経常利益については、業績伸長による増益に加え、開発進捗見合いで受け取る交付金を営業外収益に計上したことで、前期比で大幅な増益となりました。この結果、当期純利益についても、前期比で大幅な増益となりました。これらの結果、営業利益は2,188百万円となり、前期比1,746百万円(395.1%)の増益、経常利益は3,518百万円となり、前期比2,836百万円(415.9%)の増益、当期純利益は2,548百万円となり、前期比1,739百万円(215.0%)の増益となりました。

 

流動資産は、前事業年度末に比べ32.6%増加し、20,164百万円となりました。これは主として売掛金が2,336百万円、製品が2,448百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

固定資産は、前事業年度末に比べ7.1%減少し、4,839百万円となりました。これは主として投資その他の資産に含まれる繰延税金資産が367百万円減少したことなどによるものであります。

この結果、総資産は、前事業年度末に比べ22.5%増加し、25,003百万円となりました。

 

流動負債は、前事業年度末に比べ15.6%増加し、12,073百万円となりました。これは主として電子記録債務が1,854百万円、買掛金が580百万円、前受金が372百万円増加したことなどによるものであります。

固定負債は、前事業年度末に比べ21.1%増加し、3,179百万円となりました。これは主として長期借入金が595百万円増加したことなどによるものであります。

この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ16.7%増加し、15,253百万円となりました。

 

純資産合計は、前事業年度末に比べ32.8%増加し、9,749百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ18百万円増加し、4,280百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税引前当期純利益による収入3,366百万円、仕入債務の増加による収入2,171百万円、棚卸資産の増加による支出2,378百万円、売上債権の増加による支出2,170百万円などがあり、営業活動によるキャッシュ・フローは391百万円の収入(前年同期は2,500百万円の収入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出684百万円などがあり、投資活動によるキャッシュ・フローは761百万円の支出(前年同期は1,062百万円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

長期借入れによる収入1,000百万円、長期借入金の返済による支出363百万円などがあり、財務活動によるキャッシュ・フローは389百万円の収入(前年同期は1,263百万円の支出)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社の事業は、舶用内燃機関及びこれらの付随業務の単一セグメントであるため、「生産、受注及び販売の実績」については、事業区分別に記載しております。

 

a.生産実績

当事業年度における生産実績を事業区分別に示すと、次のとおりであります。

 

事業区分

生産高(千円)

前期比(%)

舶用内燃機関

12,157,407

169.1

修理・部品等

11,475,601

130.3

合計

23,633,008

147.7

(注)金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

当事業年度における受注実績を事業区分別に示すと、次のとおりであります。

 

事業区分

受注高

受注残高

金額(千円)

前期比(%)

金額(千円)

前期比(%)

舶用内燃機関

19,841,998

174.9

22,768,300

183.3

修理・部品等

10,576,227

96.5

3,764,501

80.7

合計

30,418,225

136.3

26,532,801

155.3

(注)当事業年度における受注実績の著しい変動(増加)の要因は、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

c.販売実績

当事業年度における販売実績を事業区分別に示すと、次のとおりであります。

 

事業区分

販売高(千円)

前期比(%)

舶用内燃機関

9,493,898

147.5

修理・部品等

11,475,603

130.2

合計

20,969,501

137.5

 

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自  2022年4月 1日

至  2023年3月31日)

当事業年度

(自  2023年4月 1日

至  2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱名村造船所

3,473,700

16.6

今治造船㈱

3,044,080

14.5

Guangzhou Diesel Engine Factory Co., Ltd.

2,832,894

13.5

㈱大島造船所

2,625,560

17.2

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社は、「開発から、設計、製造、販売、アフターサービスまでの一貫体制」を有するグローバルライセンサーとしてのメリットを活かしつつ、外部環境の変化に柔軟に対応しながら、ESG経営を深化させ、持続的な成長と企業価値の向上に努めております。当社は、中期事業計画のもと、主機関、アフターサービス、ライセンス、部品供給の全ての事業領域で、適時・的確に打ち手を講じることで、売上高・利益ともに伸長し、新たな成長ステージに突入しております。更に、脱炭素の取り組みを進める顧客や業界、社会の要請に応えるべく、ファーストムーバーとして世界に先駆けて、次世代アンモニア・水素燃料エンジンの開発、製造、社会実装に取り組むことで、新たな価値創出を進め、社会課題の解決と事業成長を両立させております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の資本の財源及び資金の流動性について、運転資金需要のうち主なものは、主機製造用部品、アフターサービス用部品等の購入、製造、販売、一般管理の諸経費、人件費であります。投資を目的とした資金需要は、生産設備、ITインフラ設備等によるものであります。当社は、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、設備投資等の長期運転資金については、金融機関からの長期借入にて調達することを基本方針としており、十分な流動性を有していると考えております。

なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,205百万円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高4,280百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社の研究開発能力は、製品競争力を維持し、事業を伸長させていくための重要な経営資源として位置付けております。
 当社は、将来の主力事業育成に向けた先端技術領域への戦略的な先行投資として、アンモニアおよび水素を燃料とするGHGゼロエミッションエンジンの開発および市場投入を、グリーンイノベーション基金事業のもとで着実に進捗させております。また、既存製品(重油燃料エンジン)の更なる競争力強化として、環境規制をクリアする、超低燃費のLSHシリーズ、バイオ燃料などの多様な燃料との混焼も可能とする層状噴射技術を搭載したMGO専焼/LSJシリーズなどの開発・市場投入を進めております。

 これらに加え、デジタルトランスフォーメーションを用いた製品の付加価値向上として、UEエンジンのデジタライゼーションを推進しております。IoT、AI技術の活用で、エンジンの状態監視を高度化し、メンテナンス時期の最適化を提案する取組みや、次世代型エンジン制御システムの製品化、国土交通省/高度船舶安全管理システムの導入、デジタルツインの確立、自律・自動運転実現などの取組みを発展させていきます。

 

 当事業年度においては、研究開発費の総額は、1,779,927千円となりました。その主な成果として、アンモニア燃料エンジンの開発では、試験機によるアンモニア混焼運転を開始しました。これは、大型低速2ストロークエンジンで世界初となる取組みです。また、水素燃料エンジンの開発では、水素燃料船の基本設計承認(AiP)を世界で初めて取得しました。更に、アンモニア・水素燃料エンジン実機を製造・試運転するための工場設備を、本社工場内に建設しております。