第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

<経営理念>

○伝統と革新スピリットを融合

「永くに亘る歴史と伝統を基盤にし、革新的スピリットの融合で、機動的かつ柔軟な経営を推進する」

○社会と業界の発展に貢献

「環境対応と経済性を両立した技術と品質向上への飽くなき挑戦で、社会、海運・造船業界の発展に

 貢献する」

○総合力を発揮し、世界へ飛躍

「社員の力を結集し、開発・設計・製造・販売・サービスの一貫体制で、世界に伍していける企業を

 目指す」

○無災害職場の確立

「危険予知の徹底と闊達なコミュニケーションで、災害ゼロを目指す」

 

<経営ビジョン>

「世界的視野に立ち、伝統と革新を融合させ、日の丸舶用エンジンをお客様とともに育て、次代を拓く」

 

(2)経営戦略等

当社は、2022~2024年度の「第1次中期事業計画」期間中に、外部環境の変化に柔軟に対応しながら、攻めの経営を推進し、将来の飛躍に向けた成長戦略を適時・適切に遂行したことで、「新たな成長ステージ」へと突入し、全ての事業領域において、想定を大きく上回る活動成果を得ました。これらを踏まえて、2025年度からの3ヶ年を対象に、「第2次中期事業計画」を策定しており、主に以下の3点の取り組みを進めることで、持続的な事業成長と企業価値の向上に努めてまいります。

 

①環境対応への取り組み深化

国際海運における脱炭素・環境保全の取り組みは前進を続けており、当社は、環境規制の進展や環境意識の高まりにあわせ、社会・業界の需要に応える新製品を開発し、市場へ投入しております。当社は、GHG(温室効果ガス)排出量削減に向け、ファーストムーバーとして世界に先駆けて、次世代脱炭素(アンモニア・水素)燃料エンジンの開発、製造、社会実装を押し進めることで、将来の成長ドライバーの育成と新たな市場創造を目指してまいります。また、足元では引き続き、堅調な需要が見込まれる重油燃料エンジンについても、全方位で製品競争力強化を図り、高品質製品の安定供給を実現してまいります。

 

②UEエンジン世界シェアの更なる拡大

ライセンスビジネスは、造船市場の発展が著しい中国を主軸に、グローバル展開を強化することで、UEエンジン世界シェアの更なる拡大を具体化してまいります。これにより、ライセンス関連事業(ロイヤリティー収入および部品供給ビジネス)を伸長させるとともに、急増する海外ライセンシー製エンジンのアフターサービスについても、新たな市場として取り込みを進めることで、アフターサービス事業も伸長させてまいります。

 

③企業価値の持続的な向上

当社は、「新しい成長ステージ」に突入することで「収益力」も向上しております。厚みを増してきた経営資源をもとに、中長期での事業伸長を見据えた成長投資を間断なく実行するとともに、資本コストや株価を意識した経営の実現、サステナビリティ経営の深化、人的資本への投資の拡充なども推進し、当社企業価値を持続的に向上させてまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営指標としては、「経常利益」を重視し、安定した収益体質の確立を目指してまいります。

 

(4)経営環境

当事業年度における我が国経済は、企業収益や雇用・所得環境が改善するなか、緩やかな回復基調で推移しました。世界経済については、インフレの緩やかな低下を背景に底堅い成長を維持したものの、ウクライナ、中東情勢等の地政学リスクに加え、米国の通商・経済政策の不確実性や中国の景気後退懸念等、先行きは依然として、不透明な状況が続いております。

当社と関連性が高い我が国海運・造船業界は、海運業界では、限定的な新造船の供給圧力と中東情勢に起因する紅海から喜望峰周りへの迂回運航等も相まって船腹需給は引き締まり傾向が継続しました。また、造船業界では、将来的な海上荷動きの伸長に備えた新造船建造需要の好況が継続し、造船所は超先物商談も受注することで、豊富な先行き工事量を確保するに至りました。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2026年3月期の通期業績につきましては、売上高の続伸により、前年同期比で増収、そして営業利益については、研究開発費の増加により前年同期比で減益となりますが、経常利益段階以降では、交付金の受領で増益を見込むことで、売上高29,120百万円(257百万円、0.9%増)、営業利益4,760百万円(△330百万円、△6.5%減)、経常利益5,850百万円(428百万円、7.9%増)、当期純利益4,340百万円(13百万円、0.3%増)を予想しております。売上高・利益(経常、当期純利益)は、3期連続での過去最高更新を見込んでおります。

売上高および損益の詳細は以下の通りです。

 

<売上高>

舶用内燃機関では、新造船市場での好況が継続しており、既受注案件の生産で、工場操業は引き続き高位で推移する見通しです。こうした状況下で、ファーストムーバーとして先行者利益を獲得するべく、次期主力製品となる次世代脱炭素燃料エンジンの開発・製造も進捗させております。2026年3月期は、戦略的な先行投資として、世界に先駆けて、工場生産ラインの一部を、アンモニア・水素燃料エンジン初号機の実証運転に割り当てる予定です。このため、エンジンの生産・販売台数は、前年度との対比では、一時的に減少する見通しです。初号機の完成は、アンモニアは2026年3月期を、水素は2027年3月期を、各々予定しておりますが、主機関は、既に超先物案件まで生産枠取りおよび受注を終えており、実証運転終了後には、生産・販売台数は増加する見通しです。また、更に2029年3月期には、当社新工場の完成・稼働開始を予定しており、主機関の生産・販売台数は続伸していく見通しです。

修理・部品等では、アフターサービスでは、船舶の高稼働運航が一定水準で継続することで、売上高も堅調に推移する見通しです。また、更なる事業拡大に向け、海外ライセンシー製エンジンのアフターサービス支援を新たな市場として開拓を進めていきます。ライセンスでは、海外ライセンシーで建設中の新工場が稼働を開始することで、UEエンジンの生産台数も順次、拡大する見通しであることから、ロイヤリティー収入および部品供給ビジネスともに、前期からの更なる伸長を見込みます。

これらの結果、舶用内燃機関で一時的に減収となるものの、修理・部品等の事業拡大による増収が継続することで、売上高全体としては前年同期比で増収になる見通しです。

 

<損益>

舶用内燃機関では、一時的な減収による減益を見込む一方、修理・部品等では、アフターサービスおよびライセンス事業ともに堅調に推移することで、増収による増益を見込んでおります。この結果、全体としては、前年同期比で増益を見込んでおります。研究開発費につきましては、グリーンイノベーション基金事業のご支援のもとで、水素燃料エンジン初号機の製造を進捗させることから、前年同期比で計上額が大きく増加する見通しです。この結果、営業利益を押し下げますが、一方で、開発進捗見合いで受け取る交付金も、前年同期比で大きく増加する見通しであることから、営業外収益を押し上げ、経常利益段階では前年同期比で増益となる見通しです。なお、利益段階につきましては、研究開発費の計上と交付金の受け取りの影響を大きく受けることから、当社の現状を把握するための経営指標としては、これらの増減を織り込んだ後の「経常利益」を重視しております。

また、2029年3月期にかけて進捗させる新工場建設工事につきましては、今後、工事を進捗させる過程で、既存建屋・設備を再配置することで一時的な費用の発生も見込んでおりますが、2026年3月期については、建設仮勘定への計上が主となる見通しであることから、利益への影響は軽微と見込んでおります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 当社は、経営理念の一つに「環境対応と経済性を両立した技術と品質向上への飽くなき挑戦で、社会、海運・造船業界の発展に貢献する」と定めており、気候変動を始めとする環境問題に対応し、環境と調和した事業活動と地球環境に配慮した製品・サービスの提供を通じて、「脱炭素社会の実現」などの環境問題に積極的に取組み、社会の持続的な発展に寄与していく方針です。

 

① ガバナンス

 当社は、環境方針として、環境活動に関する基本理念と基本方針を定め、本方針に基づく環境保全活動計画を策定すると共に、ISO14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)を構築し、全ての事業領域において、全従業員参加のPDCAサイクルを回し、環境活動を推進しています。

 毎月開催される環境保全委員会において、環境保全活動計画に対する進捗状況の確認を行い、年2回のマネジメントレビューでは、その活動内容を報告し、経営トップコミットメントによる環境経営を推進しています。

 また、GX戦略推進室とも連携を図り、脱炭素推進活動について討議・推進しております。

 

② リスク管理

 環境マネジメントシステム(EMS)に基づき、当社を取り巻く状況に関して、外部・内部の課題及び、ステークホルダー及び環境側面、順守義務を含むニーズと期待を広く理解し、各部門にて取り組む必要があるリスク及び機会を決定し、環境保全計画書を策定しています。

 また、サプライチェーンにおける人権尊重についても、継続して状況確認しています。

 

③ 戦略

 当社は、「社員の力を結集し、開発・設計・製造・販売・サービスの一貫体制で、世界に伍していける企業を目指す」という経営理念のもと、事業を通じて海運・造船業の発展に貢献し、永続的に新たな価値を社会に提供できるよう、また、社員が健康で活き活きとして、働き続けられる企業に発展するよう、弛まぬ努力と挑戦を続けていくことをサステナビリティ経営のコンセプトとして掲げています。

 また、サステナビリティ経営を進めるためには、多様な人材を活用し、個人の能力開発の支援にも力を入れ、一人ひとりの能力を最大限に引き出すことと、安心して働き続けられる職場環境の整備が必要であると考えており、当社の基本方針のひとつとして、「人的資本への投資拡大、健康経営の推進」を掲げ、自律的に成長できる人材の育成と、ライフステージに応じた職場環境を整備することで雇用を維持し、企業の持続的な成長につなげることを目指します。

 

 <人材育成方針>

 イ.多様な人材が持つ知識、技能、経験、能力から成る人的資本と、エンジン開発にて蓄積した知的財産を当社の重要な経営資源と捉え、投資を拡大。

 ロ.教育制度の拡充・リスキリングの徹底で人財を育成、あわせて社員評価制度を闊達に運用し組織風土の改革。

 ハ.従業員の労働環境改善に資する健康投資拡大で、持続的な健康経営を実現。

 ニ.従業員エンゲージメント向上に資する各種施策の展開で、社員の満足度を向上させ、顧客満足度の向上や、当社業績の伸長に繋げる好循環を実現。

 

 <社内環境整備方針>

   当社は、ウェルビーイング向上により、従業員が身体的・精神的・社会的に満たされ、活き活きと働ける職場環境において、多様な人材が成長し、活躍し続けることが企業価値の向上に繋がるものと考え、下記の取り組みを行っています。

 

 イ.多様な人材の活躍を支援

   新卒・中途採用に加え、派遣から正社員への登用も積極的に進めています。また、外国籍社員、障がい者、高齢者雇用についても、スキルと経験を活かした雇用の機会を提供し、安心・安定した働き方を支援する制度を導入しています。さらに、若手社員の経験拡大と離職防止を目的とした「キャリアパス面談制度」、一度、当社を退職した社員を再雇用する「キャリアリターン制度」や「リファラル採用制度」等、多様な採用制度を導入しています。

 ロ.自律的に成長できる人材の育成

   「社員階層別研修制度」により、全社員を対象に、一人一人のポジションや役割に応じて必要となるスキルの習得を図っています。また、自己啓発支援制度も導入・拡充し、積極的にスキルアップに取り組む社員をサポートしています。さらに、目標管理制度やフィードバック面談などを含む社員評価制度の闊達な運用により、社員の自律的な成長を支援しています。

 ハ.社員エンゲージメントの向上

   各部門で顕著な活躍を見せ、業務姿勢などにおいて他の社員の模範となる社員に対し、社長名による年間MVP表彰を実施しています。また、従業員やそのご家族を対象とした職場見学会(工場、事務所)や、サッカー・野球のプロスポーツ観戦イベントも開催しています。さらに、東京駅の新幹線ホームや関西の主要沿線における交通広告の掲出を通じて、ブランディングや認知度の向上を図るとともに、社員エンゲージメントの持続的な向上、さらには採用力の強化にもつなげています。

 ニ.ウェルビーイング向上を実現する職場環境

   当社では、残業時間の削減と年次有給休暇の取得推進に取り組んでいます。残業時間の削減には、週2回の「定時退社日」を設け、効率的な業務遂行と働き方の改善を推進しています。また、年次有給休暇の取得を推進するために、年間計画休暇日(会社全体で同時に有給休暇を取得する日)を年に5日間設定し、プライベートの時間を充実させる取り組みを行っています。その他、フレックスタイム制度、育児・介護休暇制度、時短勤務制度など、様々な働き方の選択肢を設けることで、それぞれの社員に合わせた柔軟な働き方を実現しています。また、入社後の奨学金返還という経済的・精神的な負担の軽減を目的とした奨学金返還支援制度も導入しており、これらの制度により、社員一人一人がやりがいや充実感を持ち、且つ、安心して働ける環境を提供しています。

 ホ.安全・安心して働ける職場環境と健康経営の推進

   安全風土の構築と全社員の安全意識の向上によって、完全無災害職場の達成を目標としており、あらゆる人が安心して働ける職場環境の整備に取り組んでいます。

   さらに、従業員の健康管理も重要な経営課題と捉え、人間ドック受診費用補助拡大、禁煙や生活習慣病等に関するセミナーや一定期間内の歩数を競うウォーキングラリーの開催等、様々な健康に関する取組みを実施しており、これらの取組みが評価され、2025年3月には、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において、「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。また、昨年度までの「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の認定も含め、4年連続の認定になります。

 ヘ.知的財産権の尊重

   長年のエンジン開発にて取得した特許は、知的財産権として適切に管理しており、当社社員の職務上の発明については、職務発明規程によって、会社としての取扱いを明確に定めています。また、知的財産権に関する教育も実施しており、他社の権利を尊重し、不正な使用を行わず、使用する場合は、正当な手続きを遵守すること、また、自社の権利については、権利が侵害された場合の適切な手続きや法的手段を理解することで、技術革新を促進、公正な競争環境を確保します。

 

④ 指標及び目標

 上記「③ 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度)

新卒採用人数

10

8人(女性比率12.5%)

中途採用人数

-

12(女性比率33.3%)

上記のうち、派遣社員からの登用

-

1(女性比率100%)

女性社員比率

20

15.2

外国籍社員比率

10

4.7

障がい者雇用

法定雇用率2.5

1.64

月平均残業時間

20H/月・人以下

24.9H/月・人

年次有給休暇取得日数(有給休暇取得率)

-

14.0(69.4%)

育児休業取得者数(割合)

-

7人(男6人、女1人)

取得率:58(男54%、女100%)

休業労災発生件数

0

0

 

(2)気候変動に関する取組み

 当社は、2050年カーボンニュートラル達成に向け、次世代脱炭素燃料エンジンの開発などを推進し、需要家からの温室効果ガス(GHG)排出量を削減するとともに、事業活動におけるGHG削減についても進めております。

 

① ガバナンス

 脱炭素経営を推進するためのガバナンス体制として、取締役会、経営会議の管理監督下のもと、担当役員及びエネルギー管理統括者を設置し、社内各部門に配置する推進者を統率しています。

 

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② 戦略

 イ.製品を通じたGHG排出量の削減

  ・当社製品である舶用エンジンからのGHG排出量を削減することで、需要家におけるGHG排出量の削減に貢献していきます。現行の重油燃料エンジンについては、性能改善を追求し、高効率・低燃費化を実現しています。また、燃料をMGO(Marine Gas Oil)とすることで、重油燃料エンジンよりも環境負荷を軽減するMGO専焼エンジンについても開発、製品化しています。

  ・これらに並行して、燃料転換によるGHG排出削減にも積極的に取組んでおり、ファーストムーバーとして世界に先駆けて、アンモニア及び水素を燃料とする次世代脱炭素燃料エンジンの開発を進捗させております。

 ロ.当社生産活動におけるGHG排出量の削減

  ・当社生産プロセスからの排出は、直接排出(Scope1)と間接排出(Scope2)に分類され、直接は、エンジンの組立完了後、工場出荷前に実施する試運転で使用する燃料からの排出が主に該当します。また、間接は、工場・事務所等で使用する電気が主に該当します。当社は、自社における研究開発やDX推進の成果なども反映しながら、短期・中長期の時間軸で、直接・間接の双方ともに削減を進めています。

 

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  ・直接排出(Scope1)については、短期的には、低燃費エンジンの開発、製品化によって、工場試運転時に使用する重油燃料の削減を進めていきます。また、中長期的には、研究開発の成果として、次世代脱炭素燃料エンジンを製品化することで、工場試運転時に使用する燃料を、脱炭素燃料へと転換していきます。

  ・間接排出(Scope2)については、短期的には、空調設備の更新や、工場・倉庫・事務所の照明をLED化することなどで電気使用量を削減していきます。DX推進の成果として、電力監視システムを活用し、社内各所での電気使用量を把握することで、使用量を効率化し、省エネ活動を推進していきます。また、中長期的には、太陽光発電システムを導入し、自社消費することで、工場使用電力を自然由来の再生可能エネルギーへと転換していきます。なお、太陽光発電システムについては、事務所棟・倉庫棟などの屋上に2023年に設置済です。さらに、消費する電力からのGHG排出量を更に削減する手段として、CO2フリー電気への切替えについても検討していきます。

 ハ.サプライチェーン全体での環境負荷軽減

  ・当社トランジション戦略を、サプライチェーン全体で共有することで、GHG排出量削減に向けた取組みを、自社に留まらず、サプライチェーン全体に広げ、関係者が一丸となって推進していきます。さらに、直接材、間接材ともにグリーン調達を進め、サプライチェーン全体での環境負荷軽減を進めていきます。

  ・ビジネスパートナー(サプライヤー)様向け事業戦略説明会において、当社トランジション戦略を説明し、理念を共有する予定です。また、再生素材を利用したリターナブル容器(通い箱)を導入しております。さらに、当社調達品の納品にあたりミルクラン方式の導入についても調整中です。

 ニ.グリーンファイナンスによる資金調達

  ・当社のトランジション戦略を支える資金について、グリーンファイナンスによる調達手法を取り入れており、次世代脱炭素燃料エンジンの開発・製造に要する資金をグリーンローンにて調達を実施しております。(2023年4月から5年間)

 

 ホ.グリーン市場の創出・拡大

  ・業界団体を通じた活動や、関係先とのコンソーシアム組成、共同出資の新会社設立、産学連携の共同研究などを通じて、イノベーションを共創し、グリーン市場を創出・拡大していきます。

  ・NEDOグリーンイノベーション基金事業として、下記の開発において、需要家や船級協会と連携したコンソーシアムを組成するとともに、大学と連携した研究開発も推進しております。

   アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発(2021年度~2027年度)

   舶用水素エンジン及びMHFSの開発(2021年度~2030年度)

  ・舶用水素エンジンの共同開発などを目的とし、共同出資の新会社HyEng株式会社を2021年に設立しております。

  ・ファーストムーバーとして、世界に先駆けてアンモニア燃料エンジンの増産体制を構築するべく、「ゼロエミッション船等の建造促進事業」のもと、アンモニア燃料エンジンの組立・試運転工場の新設と、それに応じたアンモニア燃料供給能力の増強に着手しております。

 

③ リスク管理

 気候変動に関わるリスクについては、「(1)サステナビリティ全般 ②リスク管理」に記載のとおり、環境マネジメントシステム(EMS)に基づき、主要なリスクを評価・特定し、その低減活動を行っています。

 

④ 指標及び目標

 ・2050年カーボンニュートラル

 ※中間段階 2030年度時点で、2013年度対比▲39.2%を達成。

 

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 <削減目標の考え方>

  ・2015年にパリ協定が採択される中で、海事産業においては、IMO(国際海事機関)において、GHG削減目標を以下の通り定めており、わが国では、国際海運GHGゼロエミッションプロジェクトとして、2050年カーボンニュートラルを目指しております。

 

 <IMO GHG削減戦略>

  ・2030年までに 2008年比で30%削減(最低20%削減)を目指す。

  ・2050年頃までにネット排出ゼロ

 

  ・また、日本のNDC(Nationally Determined Contribution)として、わが国は、2030年度において、GHGを2013年度から46%削減することを目指しており、当社が基盤を置く兵庫県においては、産業部門で、2030年度に、2013年度比で39.2%削減を目標としております。

   よって、当社では、2050年にカーボンニュートラル達成を目標とし、その中間段階である2030年度においては、2013年度対比で39.2%削減を目標として取組みを進めていきます。

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)受注環境について

今後の世界景気、船腹需給及び海運市況の動向等によっては、新造船需要や、アフターサービス需要の変動が予想され、当社の受注・販売ひいては経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(2)特定の取引先への依存について

当社の主力製品である主機関の構成部品の多くは、社外調達に依存しており、主要な部品の一部には特定供給元に依存しているものがあります。これらについて、供給元の状況によっては調達が不安定になる可能性があります。

 

(3)原材料・購入部品等価格の変動について

当社製品は、製造原価に占める原材料費・購入部品費の比率が高く、国内での廉価調達や海外を含めた新たな調達先開拓など、継続的に調達コストの低減に取り組んでおりますが、将来の原材料・購入部品等の価格高騰が今後の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)為替の変動について

当社は、購入部品の一部を海外から調達しており、また、顧客との間で、米ドルやユーロ等の外貨建てにて取引を行うことがあります。為替予約等によりリスクをヘッジする場合もありますが、将来の為替の変動が今後の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)売掛債権回収リスクについて

当社は取引先に対して売掛債権を有しております。

金融情勢の変化や景気の動向等を勘案し、与信先の業況を常に把握し、不良債権や貸倒損失の発生を防ぐ対策をしておりますが、市場環境の急速な変化や突発的な取引先の信用不安等により、今後の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)工事量について

当社の工場では、主力製品である主機関と並んで、他製品向けの部品の機械加工・組立工事も取り込むことで、工事量の確保・平準化に努めております。これらの工事量が、所期の計画値を大きく下回る場合、工事量不足による作業レート悪化等により、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度の売上高は、28,862百万円となり、前期比7,893百万円(37.6%)の増収となりました。このうち舶用内燃機関は、16,780百万円で、前期比7,286百万円(76.8%)の増収となりました。新造船市場が長期的な好況局面に突入している中、最新鋭省エネ主機関LSHシリーズの受注が好調に推移しました。当社は、同型エンジンの連続生産により効率化を図りつつ、一部案件についてはピーク対策として国内ライセンシーに製造を委託し、販売台数を最大化しました。また、窒素酸化物3次規制(NOxTierⅢ)に適合する環境対応設備(EGR/SCR)の搭載や、最先端技術となる層状噴射技術を適用したLSJ型機関の販売、インフレ動向を踏まえた価格改善の進展などで販売単価が上昇しました。

 

修理・部品等は、12,081百万円となり、前期比606百万円(5.3%)の増収となりました。アフターサービスでは、好況な輸送需要を背景に、船舶の高稼働運航が継続し、電子制御部品や燃焼室関連部品の販売が堅調に推移しました。また、ライセンスでは、中国ライセンシーにおけるUEエンジンの受注・製造・販売の好循環が拡大し、ライセンシーへの部品供給ビジネスや、ロイヤリティー収入が堅調に推移しました。

損益面では、舶用内燃機関では、同型エンジンの連続生産で、ロット・マスプロダクション効果を計画的に刈り取り、生産性を高めたことに加え、販売価格の改善も増益に寄与しました。また、修理・部品等では、アフターサービス、ライセンスともに好調に推移したことで、増収による増益となりました。この他に、研究開発関連として、グリーンイノベーション基金事業のご支援のもと、アンモニア・水素燃料エンジンの開発を予定通り進捗させており、研究開発費を計上する一方で、交付金を受け取り、営業外収益に計上しました。これらの結果、営業利益は5,090百万円となり、前期比2,901百万円(132.6%)の増益、経常利益は5,421百万円となり、前期比1,902百万円(54.1%)の増益、当期純利益は4,326百万円となり、前期比1,777百万円(69.8%)の増益となりました。

 

流動資産は、前事業年度末に比べ13.0%増加し、22,787百万円となりました。これは主として現金及び預金が3,130百万円増加、製品が1,352百万円減少、仕掛品が740百万円増加したことなどによるものであります。

固定資産は、前事業年度末に比べ110.2%増加し、10,172百万円となりました。これは主として機械及び装置が978百万円、土地が3,462百万円、投資有価証券が630百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

この結果、総資産は、前事業年度末に比べ31.8%増加し、32,960百万円となりました。

 

流動負債は、前事業年度末に比べ24.7%増加し、15,057百万円となりました。これは主として未払金が1,062百万円、前受金が1,101百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

固定負債は、前事業年度末に比べ26.5%増加し、4,022百万円となりました。これは主として長期借入金が1,013

百万円増加したことなどによるものであります。

この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ25.1%増加し、19,080百万円となりました。

純資産合計は、前事業年度末に比べ42.4%増加し、13,880百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ3,130百万円増加し、7,411百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税引前当期純利益による収入5,458百万円、仕入債務の減少による支出1,295百万円、前受金の増加による収入1,101百万円などがあり、営業活動によるキャッシュ・フローは6,750百万円の収入(前年同期は391百万円の収入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出4,340百万円などがあり、投資活動によるキャッシュ・フローは4,702百万円の支出(前年同期は761百万円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

長期借入れによる収入2,000百万円、長期借入金の返済による支出387百万円、配当金の支払額446百万円などがあり、財務活動によるキャッシュ・フローは1,082百万円の収入(前年同期は389百万円の収入)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社の事業は、舶用内燃機関及びこれらの付随業務の単一セグメントであるため、「生産、受注及び販売の実績」については、事業区分別に記載しております。

 

a.生産実績

当事業年度における生産実績を事業区分別に示すと、次のとおりであります。

 

事業区分

生産高(千円)

前期比(%)

舶用内燃機関

15,273,972

125.6

修理・部品等

12,081,887

105.3

合計

27,355,859

115.8

(注)金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

当事業年度における受注実績を事業区分別に示すと、次のとおりであります。

 

事業区分

受注高

受注残高

金額(千円)

前期比(%)

金額(千円)

前期比(%)

舶用内燃機関

15,507,878

78.2

21,495,402

94.4

修理・部品等

14,178,844

134.1

5,861,458

155.7

合計

29,686,722

97.6

27,356,860

103.1

 

c.販売実績

当事業年度における販売実績を事業区分別に示すと、次のとおりであります。

 

事業区分

販売高(千円)

前期比(%)

舶用内燃機関

16,780,776

176.8

修理・部品等

12,081,887

105.3

合計

28,862,663

137.6

 

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自  2023年4月 1日

至  2024年3月31日)

当事業年度

(自  2024年4月 1日

至  2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱名村造船所

3,473,700

16.6

8,321,150

28.8

㈱大島造船所

3,193,200

11.1

Guangzhou Diesel Engine Factory Co., Ltd.

2,832,894

13.5

2,896,406

10.0

今治造船㈱

3,044,080

14.5

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社は、「開発から、設計、製造、販売、アフターサービスまでの一貫体制」を有するグローバルライセンサーとしてのメリットを活かしつつ、外部環境の変化に柔軟に対応しながら、サステナビリティ経営を深化させ、持続的な成長と企業価値の向上に努めております。当社は、中期事業計画のもと、主機関、アフターサービス、ライセンス、部品供給の全ての事業領域で、適時・的確に打ち手を講じて売上高・利益を伸長させ、「新たな成長ステージ」に突入しております。また、GHG(温室効果ガス)排出量削減の取り組みを進める顧客や業界、社会の要請に応えるべく、ファーストムーバーとして世界に先駆けて、次世代アンモニア・水素燃料エンジンの開発、製造、社会実装に取り組むことで、新たな価値創出を進め、社会課題の解決と事業成長を両立させております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の資本の財源及び資金の流動性について、運転資金の需要は、舶用内燃機関およびアフターサービス用の部品の購入、製造・販売・一般管理の諸経費、人件費などであり、長期性の資金の需要は、生産設備の取得などであります。必要資金は、自己資金及び金融機関からの調達などで確保しており、加えて、資金の効率性・安定性を盤石とするべく、取引銀行との間でコミットメントライン契約も締結していることから、資金については、十分に流動性を有していると考えております。

なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は4,735百万円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高7,411百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社の研究開発能力は、製品競争力を強化し、事業を伸長させていくための重要な経営資源として位置付けております。
 当社は、将来の主力事業育成に向けた先端技術領域への戦略的な先行投資として、グリーンイノベーション基金事業のご支援のもと、GHGゼロエミッションとなる、アンモニア・水素燃料エンジンの開発、製造、社会実装を推進しております。また、足元で需要が継続している重油燃料エンジンについても、更なる競争力強化として、環境規制をクリアする、超低燃費のLSHシリーズや、バイオ燃料などの多様な燃料との混焼も可能とする層状噴射技術を搭載したMGO専焼LSJシリーズなどを開発し、市場投入しております。

 

 当事業年度の研究開発費総額は、1,009,173千円となりました。取り組みの主な成果としては、アンモニア燃料エンジンでは、2023年5月に大型低速2ストローンエンジンとして世界初となるアンモニア混焼運転を開始して以降、試験エンジンによる各種検証運転を継続しておりましたが、2024年9月に完了しました。そして、これらの成果をフィードバックした本船搭載用のフルスケール商用初号機を完成させ、2025年4月にアンモニア混焼運転を開始しております。また、並行して、本社工場内に、アンモニア燃料供給設備を完成させております。水素燃料エンジンでは、キー技術のひとつとなる水素燃料噴射装置およびフルスケール初号機を開発中で、本社工場内には、水素燃料供給設備を設置しております。