(1) 会社の経営の基本方針
当グループは、「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」ことを存在意義(Purpose)とし、企業理念(Vision)の実践を通して、社会価値の創造と企業価値の向上を目指してまいります。
企業理念:「オークマは、統合一貫した“ものづくりサービス”を通して、世界中のお客様の価値創造に
貢献することで、オークマと共に歩むすべての人々の幸せを実現します。」
労働人口の減少とデジタル革新技術の進展がもたらす社会変化と共に、地政学リスクの高まり、そして気候変動への対応等により、産業構造の変化がグローバルに急速に進んでいます。
新たな感染症の発生や頻発する大規模な自然災害に対し、自動化・省人化、製造拠点の分散等、ものづくりの強靭化が求められ、経済安全保障の観点からも、サプライチェーンの再編・複線化、製造拠点の再配置等、リスク対応が一層重要となってきています。
そして多様化する顧客要求や環境対応に伴う脱炭素化の流れにより、ものづくりのあり方は変革が求められております。
■ ビジネスモデル「総合ものづくりサービス」
製造業全体が大きな転換点に差し掛かる中、当グループは、工作機械を制御する数値制御装置(NC装置)を自社開発する世界有数の総合工作機械メーカーとしての強みを活かし、「機電情知(機械、電気(制御)、情報、知識創造)」の融合技術を基盤に、ものづくりをトータルで支援、提供するというトータルレスポンシビリティの思想のもと、「総合ものづくりサービス」を提供しております。
「総合ものづくりサービス」は、独自のスマートマシン(知能化・AI技術を搭載した工作機械)だけでなく、加工技術、そして自社工場で培ってきたスマートファクトリー構築のノウハウをスマートファクトリーソリューションとして提供していくこと、そしてさらには工場全体の自動化・工場運営支援を提供する「ものづくりDXソリューション」まで個々のお客様におけるものづくりのライフサイクル全体において課題を解決し、新たな価値を提供します。そして労働人口減少や脱炭素社会の実現等、社会課題の解決に貢献すると共に、当グループとしての成長を図り、「世界の製造業における社会課題を解決する企業」を目指してまいります。
■ 中期ビジョン
「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」という存在意義(Purpose)の実現に向け、基本戦略(Basic Strategy)として、スマートマシンからスマートファクトリーソリューションを徹底的に強化しながら、ものづくりDXソリューションの展開の加速を進めてまいります。
世界の課題解決の需要に応えること、 そしてものづくりの課題解決を通じてお客様に貢献することが当グループの成長につながります。その上で、成長産業、強みの産業を大きくカバーすることによる成長、さらにグローバル70(海外売上高比率70%以上)の実現を目指して、グローバル市場における成長を掛け合わせ、当グループの中長期的な成長を図ってまいります。
中期ビジョン

■ 中期経営計画2025の基本方針と重点的な取組
中期ビジョンの達成に向けて2023年度~2025年度の中期経営計画2025では、5つの基本方針を定め、収益性の向上を図ると共に、需要変動に左右されにくい事業構造・企業体質の構築を進めてまいります。そして事業活動を通じて社会課題を解決することで、新たな価値を生み出し、当グループの持続的成長、企業価値向上につなげてまいります。
中期経営計画2025における重点的な取組
当グループは、中期ビジョンにおいて2030年度の連結売上高を3,000億円、連結営業利益率15%以上、ROE13~15%を目指しています。その中間地点として2025年度に達成を目指す経営目標としては、中期経営計画2025の基本方針に基づく取組を展開して収益力強化と高効率経営の実践を図り、連結売上高2,500億円、連結営業利益率13~15%、ROE・ROICを10%以上とする経営目標を設定しています。
株主還元の方針としましては、安定した財務基盤と将来の成長に向けた投資枠を確保しながら、平均して総還元性向35%以上を実施してまいります。また、フリーキャッシュフローの状況に応じて、投資のタイミング、財務の健全性、キャッシュの保有レベルを加味しながら、追加的な株主還元も柔軟に行う考えです。
なお、中期経営計画2025の最終年度となる2025年度の経営環境は、米国の関税政策によるグローバルな影響、サプライチェーンの混乱等の地政学リスク、また為替変動や金融市場の不安定さが続く等、不透明な情勢が続くと予想されます。工作機械需要につきましては、労働人口減少、脱炭素化等、社会課題への対応に伴う需要が中長期的に底堅く推移することが見込まれます。他方、米国の関税政策の発動に伴い、各国における米国向け輸出産業が受ける負の影響が危惧されますが、米国市場においては、製造回帰の流れ、生産拠点の再編による米国内での設備投資の進展が見込まれます。あわせて、2025年度の後半以降は半導体製造装置、航空宇宙、エネルギー関連等、各種産業の設備投資の回復が進むことが期待されます。
このような経営環境、工作機械需要の見通しを踏まえ、2025年度の連結業績予想(2025年5月9日公表)は、連結売上高2,300億円、連結営業利益率9.6%と、中期経営計画2025の経営目標を下回る予想となっております。当グループは、グローバルでの顧客獲得、生産・業務効率向上による収益確保と体質強化を図ると共に、スマートマシンや自動化ソリューション、脱炭素化ソリューション等の、ものづくりDXソリューションの提供を基本戦略として展開し、成長産業からの需要を確実に取り込み、中長期的な成長、中期ビジョンの実現を目指してまいります。
当グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。
(1) 全般的なサステナビリティ課題への対応
ガバナンスとリスク管理
当グループは、安全保障、情報セキュリティに関する組織及び会議体、そして社会・環境に関する会議体を設け、サステナビリティに関する重要事項はこれらの組織、会議体での議論を経て、執行役員会で審議、決定され、必要に応じて取締役会に報告又は付議されます。またESG推進室は、カーボンニュートラル、人権尊重等、環境や社会に関わる課題を見出し、提言を行うと共に、課題対応の取組を企画しその推進を図ります。
サステナビリティ体制

(2) 事業戦略を通じた社会課題の解決
世界が多岐にわたる環境・社会課題に直面する中、当グループは、企業理念や存在意義(Purpose)、そして事業活動をSDGsのゴールや課題に整合させることによって、当グループの「持続的成長」を図りながら「持続可能な社会」の実現に貢献していく考えです。
持続可能な社会の実現に向け、当グループはイノベーションの創出を通して、少子高齢化に伴う労働力不足や脱炭素社会の実現等の社会課題の解決に貢献してまいります。またイノベーションを生み出す源泉は人材と考え、先端技術の研究・熟練技術の習得促進、ダイバーシティの推進、心身の健康の保持・増進、働きやすい環境づくり等、人的資本の強化を進めています。

マテリアリティ分析のプロセス
Step 1 課題と機会の抽出
国連グローバルコンパクトが発行するSDG Com-pass等のフレームワーク、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)等が発行する報告基準を参照しながら、バリューチェーン全体(材料調達から製品の廃棄まで)を見渡して、当グループの技術・製品、販売、生産活動等が環境や社会へ与える、あるいは与える可能性のある正と負の影響について、また社会情勢や自然環境が当社の事業に与える影響について、各本部の事業計画の取組をSDGsのゴールに紐づけながら分析し、課題や機会を抽出しました。
Step 2 優先課題(マテリアリティ)の選択
当グループは、抽出した課題に対して、当グループが経済、環境、社会に与えるインパクトの大きさ、ステークホルダーや社会・環境にとっての重要度、コスト増加やリスクになる可能性、競争力強化や企業成長の機会という観点から重要性を評価し、マテリアリティを抽出しました。
労働人口の減少や省エネルギー・脱炭素化等、ものづくりに関わる社会課題に直面する中で、自社工場「Dream Site」においてこれらの課題解決を実証しています。そして、そこで得られた知識や技術を製品と共にソリューションとして提供しています。
このビジネスモデルでは、自社での課題解決のための取組が社会課題の解決につながります。また、当グループの工作機械はお客様に長期にわたって使用される生産財であることから、人や環境に大きな影響を与えると同時に、当グループの成長に大きな財務的影響を及ぼします。
高効率生産、省エネルギー、省資源等、気候変動や環境負荷低減に向けた技術・製品、また加工技術の向上、生産効率向上のためのソリューションを開発・提供し、「イノベーションの創出を通して、ものづくり産業の持続的な成長に貢献する」ためには、「イノベーションの源泉である人材を育成する」ことが重要であると考えています。
Step 3 課題に対する施策の立案、KPIの設定
選択した優先課題である「イノベーションの創出を通して、ものづくり産業の持続的な成長に貢献する」、「イノベーションの源泉となる人材を育成する」は、より具体的なテーマに落とし込み、KPIを定めて推進しています。
半期ごとに定める各本部の事業計画では、施策とマテリアリティやSDGsのゴールとの関連性が示され、各本部の事業計画は執行役員会で承認後、取締役会で報告が行われます。
(3) 脱炭素社会の実現への貢献
当グループは、低環境負荷の製品を開発し提供することが、お客様のニーズに応えることであると共に、脱炭素社会の実現に資するものと考え、2021年9月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、TCFDのフレームワークを踏まえた気候変動への対応を進めています。
当グループは、気候変動への対応をマテリアリティに位置づけています。具体的な目標や計画、施策は、当社の環境マネジメントシステムを統括する安全・環境会議、及び機会管理を行うESG推進室の提言を踏まえて、半期に1回、当社の全部門が参加する会議において事業計画として策定しています。同計画は執行役員会での承認を経て、その内容や進捗は取締役会に報告しています。また施策の進捗状況は全ての部門が参加して毎月開催される当社の経営会議で報告・議論され、必要に応じて追加措置や強化策等を施しています。
「環境委員会」は毎月1回開催され、環境に関するリスクを評価・管理しています。評価結果は当社の各本部の担当役員及び本部長で構成する「安全・環境会議」で審議され、特に重要とされたリスクについては、代表取締役社長を議長とする執行役員会で審議しております。
当グループは主要生産拠点である国内の本社、可児、江南工場について、4℃シナリオと2℃シナリオの2つのシナリオにより気候変動が及ぼすリスクと機会について評価を行いました。その結果、物理リスクは軽微であると判断しております。移行リスクにつきましては、主にはScope2に相当する電力消費に伴う間接的な温室効果ガスの排出に伴うものであり、自社内において温室効果ガスが大量に発生する機器、工程はないことを確認いたしました。
また、気候変動への対応は、製品を生産する際の温室効果ガス排出量削減はもとより、お客様の工場で稼働する際の電力消費量の削減が重要になります。高い生産性と高エネルギー効率を併せ持つ環境負荷を低減する技術・製品を提供することでお客様の脱炭素化のニーズに応え、脱炭素社会の実現に貢献すると共に、気候変動、脱炭素化の対応は当グループの成長の機会としています。
移行リスク・物理リスク
機会
当グループは、脱炭素に向けた取組を加速するため、Scopeごとのネットベース及びグロスベースの温室効果ガス排出目標を設定しています。温室効果ガス排出目標は、パリ協定を踏まえた我が国の気候変動への取組に沿って、中間目標として2030年度までにScope1及びScope2の温室効果ガス排出量をネットベースでカーボンニュートラルの達成、グロスベースで2013年度比90%削減を設定しています。また、長期的目標として2050年までにScope1、Scope2及びScope3の温室効果ガス排出量をネットベースでカーボンニュートラル化することを設定しています。
また、2030年度までにネットベースでScope1及びScope2の温室効果ガス排出目標を達成するため、2022年度からカーボン・クレジットを使用しています。具体的には、当グループの国内拠点は日本が認証するJ-クレジットの再生可能エネルギー由来のクレジットを使用し、当グループの海外拠点は団体が認証するVCS(Verified Carbon Standard)やCAR(Climate Action Reserve)等のボランタリークレジットを使用しています。
a. 省電力の取組
当グループの温室効果ガス排出量のうち生産拠点の電力消費が約80%を占めており、温室効果ガス排出量の削減には生産工場の電力消費量の抑制が重要となります。生産における電力消費量を抑制するため、加工時間を短縮する加工技術を開発する等さらなる生産性向上を図り、あわせて加工機及びその周辺機器のアイドリング時間を削減する等、機械の運転制御も一段と高度化します。また当社の加工設備の大半は自社製工作機械であることから、さらなる省エネ化を進めた工作機械の開発を進め、それを製品として提供することで、お客様の工場での電力消費量の削減に貢献していきます。
b. 照明のLED化、太陽光パネルの設置等
省電力の取組と共に、照明のLED化、太陽光パネルの設置、省エネ型空調機器への切り替え等、ハード面からの温室効果ガス排出削減の取組も計画的に、費用対効果を見極めて適切に判断して進めていく考えです。
c. 再生可能エネルギー由来の電力導入
当グループは、温室効果ガスを多く排出する鋳物、鋼材等を外部から調達していることから、温室効果ガス排出量はScope2が大半です。従ってカーボンニュートラルの達成には、生産性向上や省エネ機器への切り替えを図った上で、再生可能エネルギー由来の電力の導入が不可欠となります。
Scope1、2におけるカーボンニュートラルの達成に向けて、製造技術の革新、独自の省エネ技術の適用により生産効率の大幅向上を図った上で、再生可能エネルギー由来の電力の導入も進めており、2022年10月より国内の生産拠点(本社、可児、江南)はカーボンニュートラル工場とし、2024年4月から当社の国内拠点及び国内連結子会社、2024年10月から海外連結販売子会社のScope1、2はカーボンニュートラル化を達成しました。
⑥温室効果ガス排出量
当グループでは、当社の国内生産拠点が「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」(以下、「温対法」という)の対象となっています。一方、当グループのほとんどの拠点は温対法の対象となっていないため、当グループのScope1及びScope2の温室効果ガス排出量については、サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」第49項本文に従い、「温室効果ガスプロトコルの企業算定及び報告基準(2004年)」(以下、「GHGプロトコル(2004年)」という)に従って算定し情報開示しています。
当グループは、次の方法により温室効果ガス排出量を算定しています。
a. Scope1の温室効果ガス排出量
当グループにおけるScope1の温室効果ガスの発生要因は、主にガス空調で使用する都市ガス及び天然ガスです。その他に、フォークリフトで使用するLPガス及び軽油、空調機器等から漏洩するHFCs等を含みます。
当グループは「GHGプロトコル(2004年)」に基づき、当連結会計年度における各燃料の使用量に、当連結会計年度末において入手可能な国立研究開発法人 産業技術総合研究所の「AIST-IDEA」における排出係数を乗じることにより、Scope1の温室効果ガス排出量を算定しています。
b. Scope2の温室効果ガス排出量
当グループにおけるScope2の温室効果ガスの発生要因は、主に部品の機械加工及び製品の組立で使用する電力です。さらに、当グループはロケーション基準によるScope2の温室効果ガス排出量に加え、マーケット基準によるScope2の温室効果ガス排出量を開示することを選択しています。
・ロケーション基準
当グループ国内拠点は「GHGプロトコル(2004年)」に基づき、当連結会計年度における電力消費量に、当連結会計年度末において入手可能な環境省の「電気事業者別排出係数」における全国平均係数を乗じることにより、ロケーション基準によるScope2の温室効果ガス排出量を算定しています。また、当グループ海外拠点は「GHGプロトコル(2004年)」に基づき、当連結会計年度における電力消費量に、当連結会計年度末において入手可能な国際エネルギー機関(IEA)の「Emission Factors」における国別排出係数を乗じることにより、ロケーション基準によるScope2の温室効果ガス排出量を算定しています。
・マーケット基準
当グループ国内拠点は「GHGプロトコル(2004年)」に基づき、当連結会計年度における電力消費量に、当連結会計年度末において入手可能な環境省の「電気事業者別排出係数」における電力契約ごとの排出係数を乗じ、電力契約ごとの排出係数を把握できない場合は、全国平均係数を乗じることにより、マーケット基準によるScope2の温室効果ガス排出量を算定しています。また、当グループ海外拠点は「GHGプロトコル(2004年)」に基づき、当連結会計年度における電力消費量に、原則として当連結会計年度末の電力契約ごとの排出係数を乗じ、電力契約ごとの排出係数を把握できない場合は、当連結会計年度において入手可能な国際エネルギー機関(IEA)の「Emission Factors」における国別排出係数を乗じることにより、マーケット基準によるScope2の温室効果ガス排出量を算定しています。
当グループは、原則として当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)を算定期間として温室効果ガス排出量を算定しています。このうち、一部の情報については、当グループの連結会計年度とは異なる算定期間(2024年1月1日から2024年12月31日まで)を対象としています。当該情報は、サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」第64項に定める要件をすべて満たしていることから、当グループは温室効果ガス排出に関する情報を作成するにあたり、当該情報を用いています。また当グループは、開示内容の透明性及び信頼性の向上のため、Scope1及びScope2の温室効果ガス排出量について、2021年度から一般財団法人 日本品質保証機構による限定的保証水準における第三者検証を受けており、2024年度についても第三者検証を実施中です。
当グループにおける2024年度の温室効果ガス排出量は、Scope1とScope2のマーケット基準を合わせて9.6千t-CO2eとなりました。また、中間目標として設定したScope1及びScope2の温室効果ガス排出目標は、ネットベースで4.9千t-CO2e、グロスベースで2013年度比73%削減となりました。このうち当社における2024年度の温室効果ガス排出量は、Scope1の温室効果ガス排出量削減のための取組として、ガス空調及びフォークリフトの電化等を実施し前年度に対して2.3千t-CO2eを削減し、Scope2の温室効果ガス排出量削減のための取組として、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替え、Scope1とScope2のマーケット基準を合わせて4.4千t-CO2eとなりました。また、当社は日本が認証するJ-クレジットの再生可能エネルギー由来のクレジットを4.4千t-CO2eを活用し、ネットベースでのScope1及びScope2の温室効果ガス排出量は0.0千t-CO2eとなり、カーボンニュートラルを達成しました。
(単位:千t-CO2e)
(注) 1.当連結会計年度から当グループになったOkuma Austria GmbHは含まれておりません。
2.カーボン・クレジットによるオフセットは含みません。
Scope1及びScope2の温室効果ガス排出目標に対する進捗

(注) 1.2013年度の値には一部、推計値を含みます。
2.ネットベースの温室効果ガス排出量には、カーボン・クレジットによるオフセットを含みます。
(4) サプライチェーンを含めた人権尊重の取組
当グループは工作機械のグローバルメーカーとして、多岐にわたるサプライチェーンとつながりを持ち、また製品は幅広い産業分野、顧客層のユーザーに及んでいます。サプライチェーンにおける人権尊重は当グループの事業を営む上で重要な基盤のひとつと考え、人権リスクの把握と低減を図っております。また取引先をはじめとするビジネスパートナーに対しても人権尊重を働きかけてまいります。
当グループは、国際的に認められた人権(「国際人権章典」で表明されたもの、及び「労働における基本的原則及び権利に関するILO(国際労働機関)宣言」に挙げられた基本的権利に関する原則等)を尊重し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」等のガイドラインに沿って、人権尊重に取り組んでおります。また、事業活動を行うそれぞれの国や地域で適用される法令を遵守し、国際的に認められた人権と各国や地域の法令の間に矛盾がある場合には、国際的な人権の原則を可能な限り尊重するための方法を追求してまいります。
(5) 人材戦略
当グループの果たす役割は、工作機械メーカーとしての従来のものづくりによる価値提供に加えて、お客様のバリューチェーンの一員として、お客様と共に新たな価値を創り出すこと(コトづくり)にあると考えています。「総合ものづくりサービス企業」としてこの使命を達成するプロセスでは、社員が競争力の源泉になると考えており、当グループでは「人づくり」に重きをおいています。
存在意義(Purpose)の実現のためには、お客様の価値創造と社員のやりがい・成長の両立が重要と考え、当社においては、2024年7月より、“一人ひとり誰もがみんな主人公”という人財マネジメントポリシーを掲げております。人的資本を強化する施策の一つとして、2025年度より当社の全社員を対象に新人事制度の運用を開始することを目標とし、当年度はシニアコース社員を対象として新人事制度の導入を決定いたしました。
以下の3点を重視した新人事制度により、組織と個人(社員)の変革を促し、また、多様な人材がその能力を最大限発揮できるよう人材ポートフォリオの活用や環境づくり等を進めることにより、「コトづくり」企業へと大きく変容してまいります。
① 発揮能力・生み出した成果への適切な評価
(評価基準の見直しと意欲を高める処遇の実施、昇格条件における最低在籍年数の廃止等)
② 成長課題の明確化と適切なフィードバック
③ 「知・経験の多様化」促進と柔軟な異動配置
a.人材育成についての考え方
当グループの事業領域が「ものづくり」から「コトづくり」、即ち工作機械単体の販売からお客様の生産や加工の課題を解決するソリューションの提供へと拡大する中、「コトづくり」を強化するためには、ものづくりのプロフェッショナルとして、自身の専門領域を磨いた上で、幅広い領域で知識・スキルを吸収・応用することが重要と考えています。当社は、2019年に教育に関しての総称を「Okuma University」とし、「創発と熟練」、「ものづくり教育」、「階層別教育」、「キャリア自律」といったテーマを軸に、部門ごとの必修プログラムを定め、新たに本部の垣根を越えて学ぶ場の提供までを行っています。
一方で変化する事業環境に対し、不変なものもあります。ミクロンレベルの加工を要求される工作機械には、それを上回る部品精度や組立精度が求められ、その高い品質を支えているのが「現代の名工」に代表される卓越した加工・組立の技能です。当グループの生産拠点では、長年にわたって鍛え上げ、受け継がれてきた匠の技を製品の1台1台に注ぎ込み、また、次の世代に技能を伝承する人材教育にも注力しています。
b.多様な社員が最大限能力を発揮できる環境づくり(社内環境整備)についての考え方
企業価値向上に繋がる新たな価値創造を実現するには、多様な個人が最大限能力を発揮することが不可欠と考え、当グループでは、異なるバックグラウンドを持つ人材の採用・登用、そして活躍できる仕組み・環境の整備を進めています。
当社における女性活躍の促進としては、育児をしながら働き続けられる環境整備としての短時間勤務制度の拡充や時間単位有休制度の導入等、柔軟な働き方を推進しています。また部門横断の活発なコミュニケーションにより新たな気づきやイノベーションの創出を促進するため、談話スペースを設ける等、オフィスフロアの改装、リノベーションも段階的に進めております。
ダイバーシティの推進の重点指標(当社(提出会社))
女性が働きやすい環境づくりの重点指標(当社(提出会社))
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、2025年3月末日現在で当グループが判断したものであります。
工作機械の需要は、主要消費地域(日本、米州、欧州、中国を含むアジア)の経済状況と同地域における設備投資需要の変動に左右されます。特に、当グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は、当連結会計年度において70.1%、前連結会計年度においても69.2%といずれも高い比率となっており、海外消費地域の経済状況の悪化により需要が低下した場合は、当グループの業績への影響が懸念されます。
当グループは、中国及び台湾の子会社にて工作機械を製造しており、米州、欧州及びアジア・パシフィック地域の子会社を通じて製品の販売及びアフターサービスの提供をしておりますが、これらの国または地域において、政情の悪化、予期せぬ法律・規制の変更等があった場合は、当グループの業績への影響が懸念されます。
また、グループ会社間の取引価格に関しては、適用される日本及び相手国の移転価格税制を順守するよう細心の注意を払っておりますが、税務当局から取引価格が不適切である等の指摘を受ける可能性があります。さらに政府間協議が不調となる等の場合、結果として二重課税や追加課税を受ける可能性があります。これらの事態が発生した場合は、当グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当グループはグローバルに販売及び生産活動を展開しているため、外貨建て商取引及び投資活動等は為替変動の影響を受けます。また、有利子負債の削減を軸に財務体質の強化に努めておりますが、金利上昇は支払利息の増加を招き、当グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当グループは、為替変動及び金利の変動リスクを回避すべく、輸出地域の分散、社内管理規定に従ったヘッジ取引等を実施しておりますが、その影響を完全に回避できるとは限りません。また、当社は、取引先企業や金融機関等の株式を保有しており、株価が大幅に下落した場合は投資有価証券評価損が発生し、当グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
当グループは、事業用の資産や企業買収の際に生じるのれん等様々な有形・無形の固定資産を計上しており、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。事業環境の大幅な変動が生じた場合や土地等の固定資産価格が下落した場合には減損損失が発生し、当グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
工作機械の主要原材料として使われる鋳物・鋼材等は、原油価格の動向、国際的な需給の状況等により価格が変動し、コストアップ要因となる場合があります。また、海上運賃の高騰は工作機械の輸送費として、コストアップ要因となります。このコストアップに対しては、コストダウン推進や製品価格への転嫁によってカバーする方針でありますが、さらなる価格の高騰が続いた場合には、当グループの業績への影響が懸念されます。
当グループは製造、販売及びサービス拠点をグローバルに展開しているため、予測不可能な自然災害、疫病の蔓延、コンピュータウイルス、テロといった多くの事象によって引き起こされる災害に影響を受ける可能性があります。
特に、当グループの本社機能及び主要な製造拠点があります愛知・岐阜両県は、東海大地震の防災強化地域であり、ひとたび大きな地震が発生した場合には、大きな損害が発生し、当グループの業績への甚大な影響が懸念されます。当グループといたしましては、建物等の耐震工事、防災訓練の実施及び従業員への啓蒙等の地震対策を逐次実施しており、リスクの極小化に努めております。疫病については、感染拡大を防止するため、衛生管理の徹底や時差出勤・テレワーク等の効率的な事業運営を実施しております。また、政府や地方自治体による要請や声明等の趣旨を鑑みて、主要な製造拠点の操業休止や一時帰休の実施等を行う可能性があります。
自然災害、疫病の蔓延等によって調達先の生産が滞ることや、製造業の繁忙に伴い、工作機械の構成部品やユニットの調達難が生じ、安定した生産が阻害される可能性があります。調達部品の確保のために、調達難の要因となる事象の監視と対応、代替手段の確保等により、リスクの極小化に努めております。
発電所の停止等により電力供給不足に陥った場合、節電対応により、安定した生産が阻害される可能性があります。
(9) 情報システム・情報セキュリティのリスクについて
当グループの事業活動において、情報システムの利用は不可欠となっており、コンピュータウイルス、システム障害等により情報システムの機能に支障が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また電子取引等、業務のデジタル化の拡大は情報漏洩等、情報セキュリティに係るリスクを伴います。
このようなリスクへの対応として、当グループは、サイバーセキュリティ対策を継続的に講じており、また情報システムの運用手順、機密情報の管理規則を厳格に定め、システム障害や情報漏洩等の防止を図っております。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当期における当グループの経営環境は、地政学的リスクやインフレの継続等、世界経済の先行きが不透明な状況が続きました。こうした中、工作機械の需要は大手企業向けでは底堅く推移しましたが、中堅・中小事業者においては設備投資の様子見が続き、国内外とも需要は総じて緩やかな回復基調で推移しました。
こうした中、当グループは「中期経営計画2025」に基づき、高精度・高効率生産とエネルギー消費量削減を自律的に両立し、脱炭素化に貢献する当グループの工作機械を「Green-Smart Machine」と位置付け、自動化やものづくりDXソリューションと共にグローバルに展開しました。また、受注獲得に注力すると共に収益力改善、資本効率向上を図り、ものづくりを巡る社会課題の解決を通じて企業価値向上に努めました。
地域別の市況については、日本では、上期に中堅・中小規模の事業者で業界や大手企業の動向を見極めようとする等、投資の様子見が続きましたが、下期はさまざまな業種、顧客層で引き合いが緩やかに増加しました。
米国では、中堅・中小事業者においては金融緩和の時期や規模、新政権の経済政策の影響等を意識し、設備投資の先送りが続きましたが、大手企業からの需要は底堅く推移しました。
欧州では、サプライチェーンの再配置の動きが一巡する中、ドイツ等の主要国の景気後退や中国等、海外経済の減速を背景にした欧州の輸出産業の停滞により、工作機械の需要は緩やかな回復となりました。
中国では、不動産不況の影響を受け、設備投資を控える動きが続きましたが、大手EVメーカーからの大型投資案件が下支えとなり、厳しい市況の中にあっても底堅い受注につながりました。
その他のアジアにおいては、国・地域や産業により濃淡はありますが、市況は緩やかな回復傾向が続きました。
このような市況の下、米国では、シカゴで開催されたIMTS(国際製造技術展、2024年9月開催)に出展、日本では東京で開催されたJIMTOF(日本国際工作機械見本市、2024年11月開催)に出展する等、5軸制御マシニングセンタ、複合加工機等の工程集約型工作機械や自動化システムによる生産性向上ソリューションを積極的に提案しました。
そして、2024年12月には「お客様との協創」の場として国内で7拠点目となるCS(Communication & Solution)センターとして九州CSセンター(熊本県)を開設し、半導体関連企業が集積する地域で最先端の生産加工のソリューション提供を開始する等、「ものづくりDXソリューションの展開」を着実に進めました。
また、中期経営計画2025の取組の一環として、革新的な自動化技術の開発やお客様の生産改革に向けたサポートビジネスを展開するため、江南工場の再開発に着手しました。この再開発では、自動化ソリューションの提案や生産・出荷等を行うエンジニアリングセンター、そして次世代の自動化ソリューション開発やお客様の生産改革を協創するイノベーションセンターの建設を進めています。
利益面では、工作機械需要が緩やかな回復に留まる中、部材コスト等の高止まりに対し、内製化の拡大等、生産効率向上に注力すると共に、販売価格への転嫁に努めました。他方、需要が伸びを欠く中、工場の操業度は本格回復に至らず、利益の下押し要因となりました。
これらの結果、当期の連結受注額は215,627百万円(前期比5.7%増)、連結売上高は206,822百万円(前期比9.3%減)、連結営業利益は14,651百万円(前期比42.2%減)、連結経常利益は15,528百万円(前期比39.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は9,590百万円(前期比50.5%減)となりました。
次に、セグメント別の業績は、次のとおりであります。
① 日本
日本は、上期に中堅・中小規模の事業者で業界や大手企業の動向を見極めようとする等、投資の様子見が続きましたが、下期はさまざまな業種、顧客層で引き合いが緩やかに増加しました。
このような状況の下、売上高は167,635百万円(前期比4.2%減)となりました。損益面では、工作機械需要が緩やかな回復に留まる中、部材コスト等の高止まりに対し、内製化の拡大等、生産効率向上に注力すると共に、販売価格への転嫁に努めました。他方、需要が伸びを欠く中、工場の操業度は本格回復に至らず、利益の下押し要因となり、営業利益は9,241百万円(前期比38.8%減)となりました。
② 米州
米国は、中堅・中小事業者においては金融緩和の時期や規模、新政権の経済政策の影響等を意識し、設備投資の先送りが続きましたが、大手企業からの需要は底堅く推移しました。
このような状況の下、売上高は63,167百万円(前期比10.6%減)、営業利益は3,017百万円(前期比44.5%減)となりました。
③ 欧州
欧州は、サプライチェーンの再配置の動きが一巡する中、ドイツ等の主要国の景気後退や中国等、海外経済の減速を背景にした欧州の輸出産業の停滞により、工作機械の需要は緩やかな回復となりました。
このような状況の下、売上高は33,988百万円(前期比18.2%減)、営業利益は1,000百万円(前期比66.5%減)となりました。
④ アジア・パシフィック
中国は、不動産不況の影響を受け、設備投資を控える動きが続きましたが、大手EVメーカーからの大型投資案件が下支えとなり、厳しい市況の中にあっても底堅い受注につながりました。中国以外のアジアでは、国・地域や産業により濃淡はありますが、市況は緩やかな回復傾向が続きました。
このような状況の下、売上高は22,981百万円(前期比19.3%減)、営業利益は953百万円(前期比31.4%減)となりました。
(2) 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における当グループの連結生産実績は、214,571百万円(前期比7.2%減)であります。なお、日本での生産高が90%以上であるため、セグメントごとの記載を省略しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主要な販売先については、総販売実績の100分の10以上を占める販売先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示、並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、見積りや前提が必要となります。当グループは、過去の実績、または各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しております。
以下、当グループの財政状態や経営成績にとって重要であり、かつ相当程度の経営判断や見積りを必要とする重要な会計方針についてご説明いたします。
① 貸倒引当金
当グループは、貸倒れによる損失に備えるため、連結会社間の債権債務を相殺消去した期末の金銭債権に対し、一般債権につきましては貸倒実績率により、また貸倒れが懸念される債権につきましては、回収可能性を勘案して貸倒見積り額を計上しております。取引先の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
② 棚卸資産
当グループは、棚卸資産について、推定される将来需要及び市場状況に基づく時価の見積り額と原価との差額に相当する陳腐化の見積り額について、評価損を計上しております。将来需要または市場状況が当グループの見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
③ 繰延税金資産
繰延税金資産のうち、将来において回収が見込めない部分については評価性引当額を設定しております。繰延税金資産の評価は将来の課税所得の見積りに依拠します。将来の課税所得が、経済環境の変化や収益性の低下により予想された額よりも低い場合には、繰延税金資産の金額は調整される可能性があります。
④ 退職給付債務及び費用
従業員の退職給付債務及び費用の計算は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当グループは、使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、実績との差異または仮定自体の変更により、退職給付債務と将来の費用に影響を与える可能性があります。
⑤ 投資有価証券の減損
当グループは、その他有価証券のうち、取得価額に比べ実質価額が著しく下落したものにつきましては、回復可能性があると認められる場合を除き、減損処理を行っております。市場価格のない株式等以外のものにつきましては、期末日における時価の簿価に対する下落率が50%以上の場合には、回復可能性はないものと判断し、30%以上50%未満の下落の場合には、当該有価証券の発行会社の財務状況及び将来の展望等を総合的に勘案して回復可能性を判断しております。市場価格のない株式等につきましては、その有価証券の発行会社の1株当たり純資産額が、取得価額を50%程度以上下回った場合に回復可能性がないものとして判断し、30%以上50%未満の場合には、当該有価証券の発行会社の財務状況及び将来の展望等を総合的に勘案して回復可能性を判断しております。
将来の時価の下落または投資先の業績不振や財政状態の悪化により、評価損の計上が必要となる可能性があります。
⑥ 固定資産の減損
減損損失の認識及び回収可能価額の算定に際し、将来キャッシュ・フローについて見積りを行っております。当グループは将来キャッシュ・フローの見積りは合理的であると考えておりますが、予測不能な事業上の仮定の変化による将来キャッシュ・フローの見積りの変化が、固定資産の評価に影響する可能性があります。
当グループは、持続的な「利益ある成長」をすべく、収益性、効率性を高めていく考えで事業戦略を進めております。併せて、中長期的な視点で「利益ある成長」を続けるために、財務の健全性を維持し、企業価値の向上に繋げてまいりたいと考えております。このため、売上高営業利益率を重要な指標として位置付けております。
なお、当連結会計年度における経営成績等の状況は以下のとおりであります。
① 売上高
当グループは、オークマブランドの強化・浸透、生産性向上に結び付くソリューションの提案等、顧客拡大に向けた諸施策を進め、受注・売上高の拡大を図ってまいりました。
その結果、連結売上高は206,822百万円(前期比9.3%減)となりました。
② 営業利益
生産効率向上、コストダウン施策に注力し、収益力の強化を進め、連結営業利益は14,651百万円(前期比42.2%減)となり、売上高営業利益率は、前連結会計年度に比較して4.0%減少の7.1%となりました。売上総利益率は、前連結会計年度に比較して1.0%減少の31.7%となり、販売費及び一般管理費の対売上高比率は、前連結会計年度と比較して3.2%増加の24.7%となりました。
③ 経常利益
営業外収益から営業外費用を差し引いた純額は876百万円の利益となりました。そのうち、受取利息及び受取配当金から支払利息を差し引いた金融収支は1,558百万円の利益となりました。また、その他の営業外費用として、為替差損582百万円等を計上し、連結経常利益は15,528百万円(前期比39.2%減)となりました。
④ 親会社株主に帰属する当期純利益
税金等調整前当期純利益は15,039百万円となりました。また、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額、非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は9,590百万円(前期比50.5%減)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前年同期と比較して966百万円減少し、48,276百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、17,802百万円の収入となりました(前年同期は5,251百万円の収入)。主な資金の増加項目としては、税金等調整前当期純利益15,039百万円、減価償却費9,209百万円、及び売上債権の減少
5,378百万円等であります。一方、主な資金の減少項目としては、法人税等の支払額6,470百万円、棚卸資産の増加3,648百万円、及び仕入債務の減少1,098百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、15,257百万円の支出となりました(前年同期は12,579百万円の支出)。主な資金の増加項目としては、投資有価証券の売却による収入582百万円等であります。一方、主な資金の減少項目としては、無形固定資産の取得による支出6,970百万円、有形固定資産の取得による支出6,629百万円、及び投資有価証券の取得による支出2,182百万円等であります。有形固定資産の取得による支出の主な要因としましては、世界的に高まる工作機械の需要に応えるべく、エンジニアリングセンター、イノベーションセンター建設390百万円、㈱日本精機商会における物流センターの建設681百万円の投資を行ったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、3,498百万円の支出となりました(前年同期は10,727百万円の支出)。主な資金の増加項目としては、長期借入れによる収入5,000百万円等であります。主な資金の減少項目としては、配当金の支払額6,066百万円、自己株式の取得による支出1,227百万円、及びリース債務の返済による支出1,118百万円等であります。当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。
当グループの運転資金需要のうち主なものは、部材の購入費のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。
当グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
資金調達は、将来の資金需要、資本コスト、資本構成等を総合的に勘案し、手元流動性資金の活用、金融市場からの調達も視野に入れ、最適な資金調達方法を選択しております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は11,931百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、48,276百万円となっております。
2025年度における重要な資本的支出としては、江南工場のエンジニアリングセンター、イノベーションセンターへの投資、及び㈱日本精機商会の物流センターへの投資を予定しております。その資金の調達源は、主に自己資金を予定しております。
該当事項はありません。
当グループでは、基礎及び応用研究、そして、これらの研究により裏付けされた新製品の開発までの一連の研究開発活動を、当社の技術本部及びFAシステム本部を中心として行っております。当連結会計年度は、研究開発費として
研究開発活動の概要は、次のとおりであります。
一般産業機械、半導体製造装置、自動車の生産に関わる設備投資の底堅さを受け、2024年暦年の日工会受注総額は前年比0.1%減の1兆4,851億円となりました。2024年後半からと見込んでいた本格的な回復局面は2025年以降に持ち越されてはいるものの、特に、労働人口減少、脱炭素化、サプライチェーン再編等、社会課題や地政学リスクへの対応に伴う需要は堅調に推移しました。
こうした中、「ものづくりDXソリューションの展開」を基本戦略とし、存在意義(Purpose)である「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」ため、当社の強みである「機電情知(機械、電気(制御)、情報、知識創造)」の融合技術を活かし、高い生産性と安定した稼働を実現する新機種(スマートマシン)・新技術開発を進めています。「自動化、省人化」「工程集約」対応につきましては、開発した新技術を自社のスマートファクトリー「Dream Site(ドリームサイト)」で実証確認すると共に、お客様と共同で実行した経験をノウハウとして蓄積し、一層の信頼性向上を図っております。また、「脱炭素」対応につきましては、知能化技術を応用展開することで工作機械が自律的に高精度の安定維持と省エネルギーを実現するスマートマシンを「Green-Smart Machine」と位置づけて「脱炭素化」への取組を継続強化しております。
2024年度は、成長するEVや半導体製造装置部品等の生産を革新する新コンセプトの小型横形マシニングセンタ「MS-320H」を開発しました。多品種少量生産から量産、省人化から自動化まで小物部品加工に最適化し、人手不足の課題解決と働き方改革への貢献を図ってまいります。切粉処理性等安定稼働に必要な要件を見直した機械構造に、知能化技術、AI技術活用を適用することで、コンパクトでありながらも多様化する自動化ニーズに柔軟に応えることが高く評価され「2024年十大新製品賞本賞」(日刊工業新聞社主催)を受賞いたしました。
労働人口減少による自動化・省人化への要望の高まりは、生産性向上を目的とするものであり、そうした課題に 対応する技術開発を行っております。省スペースで長時間の自動運転を実現するパレット搬送システムの需要拡大に対し、タワー型APCや昇降2段式APC等の製品を強化しました。横形マシニングセンタ「MA-4000H」に搭載した新開発の多本数工具収納マガジンでは、最大で260本の工具を収納可能としながらもフロアスペースを従来機比で20%削減しました。加工の工程集約については、研削盤の製造販売で培った研削技術を複合加工機や5軸制御マシニングセンタに盛り込み提供を行っております。また、工作物を工作機械に投入するロボット操作においては、産業ロボットの操作にあたり工作機械とは異なったロボット特有の言語と取り扱い方を習得する必要があり、中小企業におけるロボット導入の障壁となっています。この課題に対して、生産を担う「工作機械オペレーターがすぐに使える自動化」をコンセプトとして新たな操作技術を開発し展開しております。工作機械とロボットを完全融合したロボットシステム『ARMROID(アームロイド)』をはじめ、ロボットと工作機械を組み合わせた加工セルでは、ロボットの動作順を表形式の工程表で指定するだけで動作可能なスマート加工セルコントローラ「smarTwinCELL(スマートツインセル)」を開発しました。Green-Smart Machineの複合加工機MULTUS B300Ⅱと組み合わせ、2023年度より提供を開始しております。2024年度は、旋盤LB3000 EX Ⅲ、5軸制御マシニングセンタMU-4000V、立形マシニングセンタMB-46,56V Ⅱと適用機種を拡大しました。一方で、現状の生産現場に対する自動化展開を図るため、生産の繁忙に合わせて柔軟に自動化することを目的に、移動可能なワークストッカとロボットを組み合わせた移動式協働ロボット「OMR」を開発し、提供を開始しました。自動化したい工作機械に対して約4分半で自動運転を可能とするだけでなく、最大10台の工作機械に対応ができること、最大30種の加工部品に対応可能であることが特徴で多品種少量生産の生産現場の生産性向上に貢献いたします。さらに、自働化において重要となるワークの品質管理にも取り組んでおります。品質管理の目的で使用される機内計測装置の校正において、手動で30分要していた作業を自動で5分にて完了する技術を開発し、提供しております。また、稼働の安定化に対しては、ドリル加工時に工作機械が自動で加工不具合を防ぐ「AI加工診断機能(ドリル)」を提供しております。2024年度は、タップ加工にも適用範囲を拡大しました。ドリル加工同様に、Dream Site(ドリームサイト)で実証確認すると共に、お客様でも効果を実証しています。
国内外の大手の製造業が脱炭素化に向けた取組を開示し、サプライチェーン全体への波及が進んでいることから、中小規模企業においても脱炭素化の取組が必要となっています。このような状況を踏まえ、部品加工工場の電力消費量の多くを占める工作機械の省エネルギー(温室効果ガス排出量の削減)技術の開発を進めております。具体的には、精度安定化のために必要となる工作機械の暖機運転や工場の環境温度変化を抑制するための空調を削減しても工作機械が自律的に高精度の安定維持を行うと共に、周辺機器の稼働を自動できめ細かく運転することで省エネルギーを実現するスマートマシンを「Green-Smart Machine」として展開し、提供しております。
当グループは今後とも、お客様の利益の最大化に向けて「高精度と高生産性」を追求し、お客様が求める「ソリューション(課題解決や付加価値向上のための提案)」の実現に必要な技術開発、新製品開発を行い、「最高のものづくりサービス」を提供することで、世界の工作機械のエクセレントカンパニーを目指してまいります。
当グループは、1963年(昭和38年)に自社製NC装置「OSP」の開発に成功して以来、機械とNC装置を一体でサポートする「トータルレスポンシビリティ」を基本理念とし、現在では、「機電情知(機械、電気(制御)、情報、知識創造)」の融合をコンセプトとして、お客様のものづくりを支えるソリューションを提供する先進技術と機能の開発を続けております。
近年、社会における人々の志向の多様化、脱炭素社会への移行、安全保障、地政学的リスクへの対応等、時代が大きく転換している中で、ものづくり産業における生産革新、スマート化が進展しております。こうしたスマートなものづくりを支えるのが、スマートマシンであり、スマートマニュファクチャリング(スマートなものづくりの仕組み)であります。
スマートマシンを支えるNC装置では、お客様の「ものづくりDX(デジタル・トランスフォーメーション)」を実現する新世代CNC「OSP-P500」を2023年5月より当社工作機械への搭載を開始しました。高性能CNCハードウエアとソフトウエア制御を最適化し、一般部品加工における加工中の非切削時間を削減、高度なデジタル技術に基づく加工形状に最適な軸制御により、金型や自由曲面形状の加工性能、加工面品位の向上、あわせて、加工時間を短縮しました。加えて高精度・高生産性と環境対応を両立する脱炭素ソリューション、セキュアな環境を実現する強固なセキュリティを備えています。
さらには、迅速かつ正確なフロントローディングを実現するデジタルツイン、初心者でも簡単に加工が可能な革新的操作性を強化し、幅広い産業の製造現場においてお客様の「ものづくりDX」の実現を支援し、社会課題解決と高精度・高生産性を両立したものづくりを推進します。
1) スマートマシンを支える新世代CNC「OSP-P500」での機能開発
1-1) 2つのデジタルツイン
実際の機械から収集した様々なデータを元に、限りなく実際の機械に近いシミュレーションを可能とするデジタルツイン技術を活用し、迅速かつ正確なフロントローディングを実現するPC上でのデジタルツインと、実際の機械上で機械動作を高速、高精度でシミュレーション可能なデジタルツインの2つのデジタルツインを開発しました。
PC上でのデジタルツイン(「デジタルツイン オンPC」)では、実際の機械の軸動作だけでなく、ATC等の周辺装置等の様々な動作情報をNC装置(OSP-P500)により収集、PCに送出することにより、PC上においても精度の高い機械動作のシミュレーションを高速で実行することにより、より精度の高い工具パスや干渉チェックの検証、高精度の加工時間見積を可能にしました。
実際の機械上でのデジタルツイン(「デジタルツイン オンマシン」)では、実際の機械を制御するための制御データをそのままシミュレーションに用いることにより、加工を開始する前の作業者が設定したデータ設定ミス等を事前に確認できるようになりました。
この2つのデジタルツイン(「デジタルツイン オンPC」および「デジタルツイン オンマシン」)により、迅速かつ正確なフロントローディングや実際の機械上での作業確認時間の短縮を図り、生産性の向上を実現します。
1-2) スマートOSP操作
製造業での人手不足、熟練技能者の高齢化が叫ばれる中、NCプログラムを全く知らない初心者の方でも、簡単に加工を行えるよう作業者を支援する「スマートOSP操作」を開発しました。
「スマートOSP操作」の加工においては、加工に必要データを表形式に順に入力することにより、加工するための動作を定義でき、加工工程、工具、切削条件を自動決定し、直ぐに加工が行えます。加工をするための原点設定や工具の取付け等の段取り作業についても、手順をガイダンスし、作業者の作業を支援します。
これにより、作業者は短期間で機械の操作や加工を習得できます。
1-3)セキュリティ機能
製造現場でのIoTが加速しています。工場内の機械や様々な機器がネットワークで繋がるだけでなく、グローバルに拡がる複数の工場間、あるいは、取引先を含めたサプライチェーンがネットワークで繋がっていきます。最近、お客様の工場でのサイバー攻撃等のセキュリティインシデントの報告が増加しています。このようなサイバー攻撃のリスクから工作機械を守るために、工作機械での強固なセキュリティ機能を開発しました。
不正なアクセスや接続を防ぐオペレーター認証機能による「防衛」、被害を抑制するホワイトリスト方式のウイルス対策による「防御」、万が一に備える制御ソフトウエアとデータのバックアップ機能による「復旧」の3つの観点で、サイバー攻撃のリスクからお客様の大切な資産を守ります。
1-4) ECO suite plus
環境対応として、脱炭素社会の実現に向け、工作機械の使用による温室効果ガス排出量(消費電力)を見える化すると共に、加工中は、必要な時に必要な分だけ周辺機器を運転するよう制御し、加工完了後は、機械が自律的に不要な周辺機器をアイドルストップしたり、作業者の作業状況を自動で判別して周辺機器のアイドルストップと復帰を自動化したりする等、様々な機能により当グループが提案する「Green Smart Machine」を支えています。2024年度には主軸冷却装置の消費電力を40%削減(従来機比)するオイルコントローラ自動制御機能を横形マシニングセンタMA-4000Hに搭載しました。従来の非加工中に加え、加工中にも対応した主軸冷却装置の自動運転制御を開発し適用しています。順次、他の横形マシニングセンタにも展開していきます。
2) スマートファクトリー実現の取組
次世代のものづくりが拡がる中、当グループ工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」では、当グループが目指すスマートファクトリーとして、導入した自社製スマートマシンを活用し、全体最適の見える化工場、部品加工プロセスの制御周期の高速化によるスループット向上、ロボット・自動化システムによる自動化・省人化に取り組んでいます。さらには、業務・製造プロセスのデジタル化を進め、デジタルマニュファクチャリングの実現に向けて、着実な成果を上げております。
加えて、この取組を会社全体の業務プロセスに拡張し、当グループにおいて「ものづくりDX」として取り組んでいます。
今後は、「ものづくりDX」ソリューションとして、上記の当グループ工場や社内の業務プロセスにおけるDXの取組の成果やお客様のものづくりの現場でこれまで培ってきたノウハウや成功事例を、個人や個別組織の経験値として蓄積するだけでなく、デジタル化により全体で共有し、リードタイム短縮、生産性向上、品質向上に利活用し、変化する顧客や社会のニーズに迅速に適合できるように変革することをお客様と共に協創して取り組み、お客様の価値創造を支援していきます。
当グループでは、半世紀に渡る自社製NC装置開発の基本理念を今後も継承すると共に、当グループの強みである「機電情知」融合のコンセプトを基盤として、先進のサーボ技術、先進の情報技術、オンリーワンの知能化技術、先進のAI活用技術の開発と強化を進め、スマートマシンの実現を推進すると共に、当グループ工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」で実証されたデジタルマニュファクチャリングを、「ものづくりサービス」として提供し、世界中のお客様の価値創造の実現と社会に貢献できるように推進してまいります。