(1)経営の基本方針
当社グループは、事業活動の基本となる経営理念として、「経営は創造である。習慣を打破し独創性豊かな技術開発で世界に貢献し、溌剌とした人材の結集で自己啓発を促進し、その能力を最高に発揮する。」を掲げており、この経営理念のもと、生産財の一隅を担うメーカーとして産業界の創造的製品並びに新素材の出現及び加工技術の進展に常に追随しうる情報収集力を養い、技術力と開発力を備え、本業による収益を高めて株主に報い、従業員の生活環境を満たし、各種取引先との共存に配慮して社会に貢献することを経営の基本方針としております。
具体的な行動指針として、以下の4つを設定し、経営の基本方針の推進に邁進しております。
①自身で自由な発想で行動し、斬新な発想で既成概念を打ち壊す溌溂とした社員が独創的な新製品、新技術、新生産技術を開発して、新しい価値を世界に広げる。
②出来ないと思うより、まずやってみる。そのうえで改善、工夫、協力で実現させる。
③前を見つめ、一歩先のイノベーションを追求する。
④意識改革を断行し、初心に帰ってやり直すことで、今後の飛躍を果たす。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、合金から切削工具・耐摩耗工具まで社内で一貫して製造するメーカーであり、顧客ニーズに対して、開発・製造・販売の各部門が共同してタイムリーに製品提供することにより、業績を向上していくことを目標としております。この目標の達成状況を判断する経営指標として売上高営業利益率を用いており、中長期的に10%以上とすることを目指してまいりましたが、第100期からは、これに加えてROIC5%以上とすることもあわせて目指してまいります。
また、配当に関しましては、安定した配当を維持すべきことを基本方針としており、業績に応じた適正な利益配分を行い、配当性向25%を目標としておりましたが、第100期からは配当性向35%を目標とすることといたしました。配当性向につきましては、売上高営業利益率を向上させ、更なる引き上げを目指してまいります。
(3)経営環境
我が国産業におきましては、国内の雇用・所得環境の改善等により、緩やかな回復基調で推移した一方で、長期化するロシア・ウクライナ情勢や中東問題、中国経済の減速懸念、円安の進行による物価の上昇等が及ぼす影響を注視する必要があり、今後も不透明な経営環境が続くことが予想されます。
機械工具業界におきましても、当連結会計年度は機械工具の生産高が前年比でプラスに転じておりますが、大口の需要先である自動車業界や航空機業界等の動向に注視が必要な状況が続いております。
当社グループの業績への影響に関しましては、国内向けの売上高は当連結会計年度の下期より回復基調となり、円安の影響もあった海外向けの売上高とともに前連結会計年度を上回る結果となりました。(地域別売上高前年同期比:国内;4.5%増加、海外;6.1%増加)。
当社グループといたしましては、後記「(4)事業上及び財務上の対処すべき課題」に記載しております、各種施策を継続することで、より収益性が高く、効率的な事業活動の基盤を構築していく所存であります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
①販売体制の強化
・得意商品の受注生産体制の確立
・得意商品の拡販と、得意商品を創造・育成する販売体制の構築
・海外拠点と本社の連携強化と、持続可能な世界販売体制の整備
・マーケティング戦略に基づく自社製品の強みに適合した市場の開拓
②収益性の向上・生産技術力の強化
・原材料等の価格上昇リスクにも対応できる原価低減の徹底
・自動化と業務効率改善による製造工程の短縮・生産性の最大化
・アワーレート※1の低減やプロダクトライフサイクル※2に基づいた製品管理
※1 製造の際に発生する、従業員・設備にかかる1時間あたりのコスト
※2 製品が市場に投入されてから、寿命を終え衰退するまでのサイクル
③新製品の開発促進
・「高速・高能率・高精度」をキーワードとした最速製品化を実現できる新製品開発体制の再構築
・ユーザーニーズに即した提案型商品、革新的なオリジナル商品及びコア商品の開発推進
・環境負荷低減・EV化部品等に対応した次世代製品の開発
④人事労務施策の推進
・新人事制度の定着による人材育成の促進
・働き方改革及び健康経営の推進による生産性の向上と労働環境の整備
・女性活躍推進への取組み
⑤社会的責任の対応
・持続可能な企業価値の向上のため、コーポレートガバナンスの更なる充実
・コンプライアンス体制の整備及び運用の徹底
・リスクマネジメント体制の推進
・大規模自然災害への対策推進
・ESGを重視したサステナブル経営の推進
当社グループは、創業以来長きにわたり、経営理念「経営は創造である。習慣を打破し独創性豊かな技術開発で世界に貢献し、溌溂とした人材の結集で自己啓発を促進しその能力を最高に発揮する。」を実践し、社会へ貢献することを目指して事業活動を展開し、その社会的責任を果たすことによって、社会との信頼関係を築いてまいりました。
サステナビリティについても、経営理念の実践により、継続的・安定的な収益を確保し、社会から信頼される企業活動を行うことで、持続的な企業価値の向上を目指すことが基本であると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、サステナビリティ関連のリスクを含めた全社的なリスクをマネジメントする組織として、取締役会の下にリスク管理委員会を設置しております。同委員会の役割は、「リスクマネジメントの取組み全体の方針・方向性の協議・承認」、「各リスクテーマ共通の仕組みの協議・承認」等であり、それらの実施内容について取締役会に定期的に報告することになっております。
当社グループのリスクマネジメントの取組みにおいて対象とするリスクの類型は、外的要因リスク、オペレーショナルリスク、財務リスクとに区分しており、サステナビリティ関連のリスクもこの区分の中で管理しております。各リスクが当社グループに与える影響を総合的に評価し、リスクマネジメントの優先順位の決定及びリスクマネジメントによるリスク低減効果を確認いたしております。
その結果認識したリスクのうち、サステナビリティ関連のリスクの主なものは、以下のとおりであります。
①気候変動などの地球環境への配慮
「気候変動などの地球環境への配慮」は、まず、地球規模で広がる環境問題に対して、環境問題の原因となる環境負荷の多くが企業の事業活動から生じていることを認識し、自社の事業活動において環境配慮を志向していくことが、社会から強く求められています。
そのような地球環境に配慮した取組みは、将来の環境問題の解決に大きく貢献するとともに、当社グループの事業活動においても継続的な発展や成長に資するため、経営の重要課題であります。
当社グループにおきましては、地球環境の保全、環境汚染の予防を認識し、循環型社会の視点に立った事業展開を目指し、以下の取組みを実施しております。
・CO2排出量の削減
・省エネ・省資源
・環境負荷の低減
・環境関連法・その他の各種協定の遵守
②人権の尊重
「人権の尊重」は、企業が社会的責任を果たすうえで重要な基盤となる要素であり、企業のグローバル化が進展する中、自社の事業活動が人権に及ぼす影響を認識・把握し、対応することが重要となっています。当社グループは、人権問題への取組みの重要性を認識し、経営の重要課題として、以下の取組みを実施しております。
・従業員の人権意識の向上
・取引先の審査
③取引先との公正・適切な取引
「取引先との公正・適切な取引」は、取引先との関係を常に公正かつ透明なものとすることで信頼関係を維持することが、環境・社会に配慮した事業活動を行ううえで経営の重要課題であり、以下の取組みを実施しております。
・サプライチェーンマネジメントの強化
・原材料の調達管理
・独占禁止・下請代金関連法の遵守及び反社会的勢力との断絶
④自然災害等への危機管理
「自然災害等への危機管理」は、重大事故・重大災害も含め、大規模自然災害等の有事や危機が生じた場合に、従業員をはじめ人身の安全確保と事業の復旧・継続、損害の最小化を図れるように事前に備えておくことであり、当社グループのリスクマネジメントの一環として必要な取組みでもあり、経営の重要課題であります。
当社グループにおきましては、大規模自然災害等の発生時の人身の安全確保とリスクや損害の低減を目指し、以下の取組みを実施しております。
・重大事故・重大災害の防止
・大規模自然災害への対応
・サイバー攻撃・情報漏洩への対応
人材は事業活動における価値創造の源泉であり、その価値を最大限に引き出すことで、当社の中長期的な企業価値の向上を目指しております。
人的資本に関する方針は以下のとおりです。
当社の人材育成方針は、評価制度と研修制度の二本柱からなり、管理職と担当者のコミュニケーション強化により、人材育成を強力に推し進めるものです。評価制度につきましては、2020年度から導入した新たな人事制度に基づき、全従業員が目標を設定し取り組んでおり、業績評価と行動評価の両面で評価されます。研修制度につきましては、階層別研修の実施により、各層に求められるマネジメント力等の向上に努めております。
当社は、従業員一人ひとりの能力開発と女性の積極的登用の二つをダイバーシティの柱としています。ダイバーシティ経営への第一歩は、中核人材登用など女性の活躍推進を図りジェンダーギャップをなくすことであると考え、さらに社員の個々の成長を促し、その個性や能力を発揮することで、多様な人材がいきいきと働くことのできる職場環境の構築・企業風土の醸成を促進し、ダイバーシティの推進へとつなげていくことを目指しております。
中核人材の多様性を企業の競争力とするために、当社では特にジェンダーギャップの解消を重要な経営課題として位置づけています。2035年に管理職の女性比率を10%以上とすることを目標に掲げ、それに向けて、現在大卒採用における女性比率を50%以上確保することを目標としております(2021年4月~2025年4月入社5年間累計実績45.5%)。その他の多様性ある人材確保については、現在、中途採用者の管理職への登用や、外国人社員の業務役員への登用等を行い、多様な人材が幅広く活躍することのできる環境を確保しております。今後も引き続き、事業展開を鑑みた上で、職歴・年齢等のアイデンティティにも考慮し、適材適所に多様性ある人材の登用を推進していきます。
「従業員の健康・労働環境への配慮」は、企業が人的資本を有効活用して、継続的に発展し社会に貢献していくための、経営の重要課題と認識しております。
当社は、「全ての従業員が仕事にやりがいを感じ、当事者意識と挑戦意欲を持って改善に取り組むようになること」を目標に掲げており、その実現に向け、「健康経営の実践」、「安全衛生の推進」、「労働環境の整備」等の取組みを強化しております。
当社グループは、リスクを「経営における一切の不確実性」と定義し、具体的には以下の項目を例示しております(ただし、これらに限定されるものではありません)。
・当社グループに直接又は間接に経済的損失をもたらす可能性
・当社グループの事業の継続を中断・停止させる可能性
・当社グループの信用を毀損し、ブランドイメージを失墜させる可能性
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を及ぼす可能性があるリスクのうち、重要なものについては以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
・原材料の調達
当社グループが製造する製品の原材料は、タングステンとコバルトがその大部分を占めており、いずれも、生産地が極端に偏在しているレアメタルであることから、安定調達ができなかったり調達価格が急騰することにより、生産が困難となり製造コストが上昇する可能性があります。当社グループといたしましては、調達先からの原材料に関する情報収集を継続的に実施し調達ソースを分散するとともに、常に適切な在庫水準を維持することにより、リスクの軽減に努めております。
・生産及び製造
当社グループが生産する製品は、標準品と特殊品とに分類されますが、いずれも当社グループの予想を上回る需要が発生した場合、生産能力の調整が十分に行えない可能性があります。当社グループといたしましては、適切な設備投資を実施することにより十分な生産能力を備えるとともに、適切な営業活動を通じてお客様の需要動向を十分に把握することにより、リスクの軽減に努めております。
・為替相場の変動
当社グループの売上高の概ね50%が海外向けで、うち約10%がドル建て、約15%がユーロ建てとなっており、為替相場の変動により売上高や収益の減少となる可能性があります。当社グループといたしましては、生産性の向上を柱とした原価引き下げにより、リスクの軽減に努めております。
・大規模災害等
当社グループは、国内及び海外に事業拠点を有しており、地震、台風、津波等の自然災害、伝染病、感染症の世界流行、及びテロ等の犯罪行為等により業務遂行が阻害される可能性があります。当社グループといたしましては、工場を分散立地するとともに、非常事態発生に備えた事業継続計画の整備等により、リスクの回避に努めております。
・借入金
2025年3月期における、当社グループの借入金は4,308百万円(短期借入金1,523百万円、長期借入金2,784百万円)で、総資産に対する割合は27.0%となっており、今後の金融情勢が当社グループの業績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、棚卸資産の圧縮や収益力強化により借入金を削減し、財務体質を改善することで、リスクの軽減に努めております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(資産)
資産は前連結会計年度末に比べ512百万円減少し15,955百万円となりました。このうち流動資産は374百万円の減少、固定資産は137百万円の減少となりました。
流動資産の変動の主な要因は、現金及び預金が43百万円、棚卸資産が304百万円それぞれ減少したことであります。
固定資産のうち、有形固定資産は253百万円減少しました。変動の主な要因は、減価償却費の計上による減少903百万円、設備投資の実施による増加651百万円であります。投資その他の資産は80百万円増加しました。変動の主な要因は、投資有価証券が34百万円、関係会社出資金が45百万円それぞれ増加したことであります。
(負債)
負債は前連結会計年度末に比べ646百万円減少し、8,016百万円となりました。このうち流動負債は465百万円の減少、固定負債は180百万円の減少となりました。
流動負債の変動の主な要因は、電子記録債務が101百万円増加し、短期借入金が599百万円減少したことであります。
固定負債の変動の主な要因は、リース債務が101百万円、退職給付に係る負債が67百万円それぞれ減少したことであります。
(純資産)
純資産は前連結会計年度末に比べ134百万円増加し7,939百万円となりました。このうち株主資本は、親会社株主に帰属する当期純利益が205百万円であったこと等により131百万円増加し6,748百万円となりました。また、その他の包括利益累計額は1,190百万円となりました。
連結売上高は、前年同期比5.4%増の8,793百万円となりました。このうち国内販売は前年同期比4.5%増の3,748百万円となり、輸出は同6.1%増の5,044百万円となりました。輸出の地域別では、北米向けが前年同期比0.1%減の1,078百万円、欧州向けが同1.4%減の1,339百万円、アジア向けが同13.0%増の2,589百万円、その他地域向けが同39.1%増の36百万円となり、この結果、連結売上高に占める輸出の割合は、前年同期に比べ0.4ポイント増加し57.4%となりました。
製品別では、焼肌チップが前年同期比5.0%増の556百万円、切削工具が同5.6%増の7,269百万円、耐摩耗工具が同4.6%増の922百万円となりました。
売上原価率は前年同期に比べ1.8ポイント改善し、65.8%となりました。
販売費及び一般管理費は前年同期比7.6%増の2,791百万円となりました。
売上高の増加や売上原価率が改善したこと等により、営業利益は前年同期比95.5%増の219百万円となりました。
営業外収益は前年同期比31.7%減の118百万円となりました。営業外費用は前年同期比27.9%増の141百万円となりました。
経常利益は前年同期比12.3%増の195百万円となりました。
投資有価証券売却益を15百万円計上いたしました。
親会社株主に帰属する当期純利益は205百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失130百万円)となりました。
営業活動により獲得した資金は1,404百万円であります。資金流入の主な要因は、税金等調整前当期純利益210百万円、減価償却費964百万円、棚卸資産の減少295百万円、仕入債務の増加79百万円であり、資金流出の主な要因は、退職給付に係る負債の減少119百万円であります。
投資活動により流出した資金は519百万円であります。主な要因は、有形固定資産の取得による支出489百万円であります。
財務活動により流出した資金は924百万円であります。主な要因は、長期借入による収入(純額)12百万円、短期借入の返済による支出(純額)600百万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出262百万円、配当金の支払73百万円であります。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末と比べ、43百万円減少し1,346百万円となりました。
当社グループは事業の種類として、超硬合金・工具の製造及び製品等の販売を営んでいる単一事業であり、当連結会計年度における製品分類ごとの生産、受注及び販売実績は次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格をもって計上しております。
当社グループでは、一部見込による生産もありますので、次表は契約の成立したものを受注高として計上し、契約成立後未出荷のものを受注残高として計上しております。
(注) 1 主要な販売先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における我が国経済は、国内の雇用・所得環境の改善等により、緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、地政学リスクの高まり、中国経済の減速懸念、円安の進行による物価の上昇等が及ぼす影響を注視する必要があり、依然として先行き不透明な状況が続いております。
さらに当社グループを取り巻く経営環境につきましては、米国による関税引き上げの影響により、自動車産業等で輸出や生産の減速懸念が高まっており留意が必要な状況です。
そのような中、当社グループにおきましては、「JIMTOF2024」や「IMTEX2025」等、国内外の展示会に積極的に出展するとともに、超硬シャンクアーバー「頑固一徹」をお使いの顧客を対象とした会員制クラブ「頑固クラブ」にも多くの加入をいただき、顧客ニーズの吸い上げに注力いたしました。
切削工具につきましては、小径・多刃仕様荒加工工具SKSエクストリーム「EXSKS05形」の低抵抗PLインサート、高能率アルミ加工用工具エアロチッパーミニ「MAM/AMX形」のDLCコートインサート、刃先交換式ドリル「TAEZドリル」のプリハードン鋼用インサート、モジュラーヘッドタイプ等、顧客ニーズに応えたラインナップを追加し、販売の拡大に努めました。
また耐摩耗工具につきましては、当社独自の開発材料であるサーメタルにおきまして、高硬度と高強度の両立を実現し、耐摩耗性・耐衝撃性の両分野での特長を活かして、従来の金型素材では対応しづらい、環境関連等の分野で成果を挙げ、販路を拡げております。
連結売上高は、前年同期比5.4%増の8,793百万円となりました。このうち国内販売は前年同期比4.5%増の3,748百万円となり、輸出は同6.1%増の5,044百万円となりました。輸出の地域別では、北米向けが前年同期比0.1%減の1,078百万円、欧州向けが同1.4%減の1,339百万円、アジア向けが同13.0%増の2,589百万円、その他地域向けが同39.1%増の36百万円となり、この結果、連結売上高に占める輸出の割合は、前年同期に比べ0.4ポイント増加し57.4%となりました。
利益に関しましては、売上高が増加した事等が要因となり、増益となりました。売上高営業利益率は、前年比1.2ポイント改善して2.5%となりましたが、当社が目標としております10%に対しては、未達の状況であります。
当連結会計年度は、棚卸資産が減少した事等により、営業キャッシュ・フローは改善いたしました。
当社は、円滑な事業活動に必要十分な流動性の確保と財務の安定性維持を資金調達の基本方針としております。資金調達は銀行からの借入金によりますが、5年の長期資金を中心とし、約定弁済を付することにより借り換えリスクの低減を図っております。その他、中長期的な財務の安定性と資金調達の柔軟性・機動性の向上を図る目的で、2,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。
現金及び現金同等物の保有額については厳密な目標水準を定めておりませんが、単体ベースの売上高の約1.5か月分の1,000百万円を目安に運用しております。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、当社経営陣は資産、負債及び収入・費用の各報告数値に影響を与える見積りの仮定を過去の実績や状況に応じて合理的に設定し、算定しておりますが、状況の変化によりこれらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(a)繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の認識に際して用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(b)退職給付債務の算定
当社グループでは、当社のみが確定給付制度を採用しております。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、長期期待運用収益率、昇給率、退職率等の様々な計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(8)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
特記すべき事項はありません。
当社グループにおいて、研究開発活動は連結財務諸表を作成する当社のみが行っております。当社の研究開発については以下のとおりであります。
当社グループにおける研究開発は、超硬工具の一貫製造メーカーの強みを活かし、超硬合金・切削工具・耐摩耗用工具の研究開発部門が連携をとり、市場変化、顧客ニーズに即応した商品性の高い新製品開発を行っております。基本方針としましては、高能率・高精度化及び長寿命化によりお客様のリードタイム短縮と加工コスト低減に貢献する。また、製造時の消費エネルギー削減により環境に優しい製品を開発することを掲げております。
・材料及びコーティング被膜の開発
基本方針のもと、切削工具用超硬合金材種、コーティング材種及び耐摩耗用工具材種の改良・開発を行い、生産効率、品質、精度向上を目指した取組みを実施しております。
当連結会計年度の研究開発におきましては、耐食性超硬合金材種SD40を開発し、市場投入しております。また、超硬母材との密着性を改善し、微少剥離を抑制した鋼切削用コーティング材種や耐摩耗用の工具材種として硬さと強度を兼ね備えた超微粒子超硬合金HS10及びHS20の開発を完了し、性能評価を開始しました。良好な結果が得られれば、標準化を行い市場投入してまいります。
・耐摩耗用工具の開発
耐摩耗用工具分野では、合金から工具までを社内で一貫して製造するメーカーとしてのノウハウを活かした当社独自の材料を開発し、自動車業界を中心に新規事業分野へ金型を投入しております。
また、顧客ニーズに応えるべく、開発材料の加工方法の違いによる残留応力の疲労寿命への影響や各種基礎データの蓄積を行うと共に、加工技術において、切削工具部門との連携により疲労寿命の向上が期待できる直彫り加工を推進し、金型形状の再現性を高め、寿命の安定化を目指した取組みを進めております。
今後も当社の開発材料や加工技術等の独自技術を活かした金型を投入してまいります。
・切削工具の開発
切削加工分野では、世界の電気自動車の普及から大型部品を一体成形する金型の技術動向を捉え、加工振動を抑制する加工方法の提案と低抵抗な工具の開発に取り組むとともに、刃先交換式ドリルのシリーズ拡張を図り、環境負荷を低減する新製品を多種開発しております。
①オール超硬シャンク「頑固一徹MSN形」のシリーズ開発
オール超硬シャンク「頑固一徹MSN形」は、モジュラーヘッドと呼ばれるヘッド交換式工具を取り付けて使用する超硬合金からなるアーバーです。スチールシャンクに比べ工具剛性が高く、たわみ量が抑制でき、大きく複雑な形状を持つ金型の加工でも生産性を落とさず、高能率な加工を可能としております。この度、従来よりさらに突出しの長い工具で加工できるように「頑固一徹MSN形」のシリーズを拡張しました。
②高能率荒加工用刃先交換式高送りカッタの低抵抗インサートの開発
機械加工現場の省人化・自動化の要望から、より高能率かつ安定的に加工できる小径多刃の刃先交換式高送りカッタSKSエクストリーム「EXSKS05形」の低抵抗PLインサートを開発しました。EXSKSシリーズは、片面6コーナー仕様の超硬インサートを採用し、ランニングコストを削減した刃先交換式高送りカッタとしてご好評いただいております。
③刃先交換式TAEZドリルのシリーズ開発
穴あけにおいてドリル加工が占める割合は大きく、部品加工や金型加工等で重要な役割を担っています。難削材や難加工への顧客ニーズも多くあるため、インサート交換が容易で、繰り返し精度に優れた刃先交換式TAEZドリルにおいて、プリハードン鋼や焼入れ鋼等の難削材への穴あけ加工が可能なインサートを開発し、シリーズを拡張しました。
なお、当連結会計年度の試作製造・技術改良等を含めた研究開発活動に要した費用は