文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社の経営方針は、工作機械メーカーとして「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械、自動化システム、デジタル技術を、最善のサービスとコストでお客様に供給すること」です。コネクテッド・インダストリーズ(IoT、インダストリー4.0)の高まりを背景に、工作機械(マシニングセンタ、ターニングセンタ、複合加工機、5軸加工機及びその他の製品)、ソフトウエア(ユーザーインタフェース、テクノロジーサイクル、組込ソフトウエア等)、計測装置、修理復旧サポート、アプリケーション、エンジニアリングを包括したトータルソリューションの提供を行い、全世界のお客様にとってなくてはならない企業を目指しております。
(2) 経営戦略及び経営環境
経営環境につきまして、連結受注高は2018年の第1四半期にピークを付けた後、米中貿易摩擦により2019年中は減少を続け、2020年3月にCOVID-19が全世界に拡大したことでさらに落ち込みましたが、当第2四半期を底に緩やかな回復傾向にあります。お客様は、工程集約化、自動化、デジタル化投資への関心を強めており、引合いは非常に強くなってきております。しかし、2020年末ないし2021年の初めからCOVID-19の感染が再度増加し、引合いから受注成約までのリードタイムの長期化が続いております。今後、ワクチンの効果の確認が期待される2021年(以下、「来期」)下期からは本格的に受注が増加するものと考えており、来期の連結受注高を3,800億円と当期実績2,797億円に対し36%増を見込んでおります。
経営戦略におきましては、当期は、春先からのCOVID-19の拡大による経済環境の急激な変化にさらされ、その危機への対応力を試される年となりました。外出規制等の制約はあったものの、グローバル43カ国137拠点に分散した直販・直サービスが十分に機能し、さらにデジタル化も進めていたことから、お客様のサポートを継続することができました。マーケティングにおいては、デジタルツインショールームの開設により当社の高速・高精度の5軸加工機、複合加工機、フルターンキー技術へのアクセスの利便性を図り、テクノロジーフライデーの少人数によるリアルの見学会、商談等、新たな手法も生まれました。また、コスト削減にも早期に着手し損益分岐点を大きく引き下げたことにより、営業利益107億円、当期利益17億円と黒字を確保することができました。
当社の使命は、産業の根幹をなすグローバルの既存のお客様15万件と潜在のお客様15万件の生産維持・向上に努めることであり、その役割を担うことができたと確信しております。また、今回の環境変化を受けて、お客様はより工程集約、自動化、デジタル化への関心を高められ、当社の取り組みに対する評価がますます高まるものと期待しております。
自動化においては、既に52の製品で標準化を行っておりますが、5G技術を用いた自律走行型ロボット (AGV)により設備配置の柔軟性を高め、安全かつ正確な搬送システムの実用化に目途を付けました。また、AI(人工知能)を活用した切屑の自動洗浄ソリューションの他、株式会社ニコンとの提携の中で、最新のセンシング技術を用いて工作機械上でワークの自動計測を行う「非接触機上計測システム」を開発し、お客様の加工精度の向上、生産性向上に貢献いたします。
デジタル化では、ポータルサイトの「my DMG MORI」が順調に登録件数を伸ばし、2020年末には約40,000件となりました。お客様とのコミュニケーションが密となったのに加え、情報の伝達がより正確になり、お客様、DMG MORIの双方にとって業務効率が改善しております。修理復旧、部品の交換依頼等で「my DMG MORI」の利便性が増していくものと考えております。今後、機械のトラブルに迅速に対応するためには機械とのつながりが重要となりますので、12月には、他社製品を含めて機械の接続を可能とするIoTconnectorをDMG森精機製の工作機械に標準搭載することを発表いたしました。
また、当社は、業界のリーディング・カンパニーとして、幅広いステークホルダーの期待に応えるべく、SDGs(Sustainable Development Goals)への取り組みを強化しております。環境面においては、業界内でいち早く部材の調達から出荷までのScope3の上流工程までのカーボンニュートラルを実現いたしました。2021年1月より出荷する全世界の工作機械がカーボンニュートラルとなっております。他にも、従業員の生活の質的向上を強化しており、「よく遊び、よく学び、よく働き」を経営理念に掲げ、健康経営に取り組む企業として「DMG森精機 健康経営宣言」を行いました。コーポレート・ガバナンスにおいては、取締役会の多様性を重視しており、社外取締役、外国籍取締役、ジェンダーの構成等に注目しています。2021年3月29日の株主総会の承認により、社外取締役の構成比は40%、外国籍取締役の構成比は20%、女性の取締役構成比は10%と なっております。
以上のように、顧客価値創造と社会との共生を実現し、事業規模、収益性、財務基盤において、継続的な企業価値向上に努めてまいります。
(3) 目標とする経営指標
需要変化の激しい工作機械業界の事業環境や市場動向に迅速に対応し、工作機械業界におけるグローバルワンの地位を維持・継続するためには、利益率の向上、財務体質の強化、資本収益性の向上が最重要課題であると考えております。
来期は、連結受注高3,800億円、売上収益3,300億円、営業利益110億円をそれぞれ計画しております。中期的には、前回ピーク同水準の売上収益5,000億円程度時に、営業利益率10%の確保を目指し、お客様への価値提案並びに費用管理を徹底してまいります。
当社グループでは、顧客価値創造並びに企業価値のさらなる向上のために、たゆまぬ努力を継続してまいります。
(4) 優先的に対処すべき課題
①ショールームのデジタル化
昨年は、JIMTOFを始めとする、多くの対面による展示会が中止になりました。この状況に対し当社では「デジタルツインショールーム」を開設し、オンラインで展示会と同様の体験を可能とするサービスを開始いたしました。展示機は伊賀事業所のグローバルソリューションセンタと同様に配置されており、加工デモの実施、デジタルセミナーの聴講、カタログダウンロードが可能になっております。2021年はこのショールームをさらに発展させた「デジタルツインテストカット」を開始いたします。5軸加工機や複合加工機による加工をコンピュータ上で仮想的に実現することで、切削時間、切削負荷、干渉、加工状況等の結果が即座に確認可能になります。また、これらのテスト加工結果をノウハウとして蓄積し、改善改良を継続することによって、より良い加工法や機械を提案いたします。
②製品開発
昨年より、IoT化の取り組みとして、ネットワーク接続機能「IoTconnector」を出荷するすべてのCELOS搭載機に標準搭載しております。このインフラを活用して、収集した機械のアラーム情報を分析し、早期のサービス対応及び機械の改善改良を実現するプロジェクトを開始しております。従来はサービスコールを受けたサービスエンジニアが対処しておりましたお客様のトラブルに対し、機械のアラームより分析・推論することで、自動で対策や修理方法を提示いたします。これらの解決方法のノウハウ蓄積・自動提示により、素早いトラブル解決のみならず、トラブルを未然防止できる工作機械を実現いたします。
自動化についてはモジュラー化ロボットシステム「MATRIS」の販売を2017年より開始しており、ラインの入れ替えや機械の増設に対して柔軟に対応可能な導入しやすいシステムとしてご好評をいただいております。2021年はさらに柔軟な自動化システムの構築を目的として、35mmのダクトを乗り越えられる走破性、人が作業する環境下においても安全な経路を生成・走行する能力を有する、レールレスで自律走行可能なロボット搭載型AGV(無人搬送車)システム「WH-AGV」をリリースいたします。
さらに新機種として、2年の開発期間を経た新世代の横形5軸マシニングセンタを発表いたします。自動化、ミーリング、ターニング、研削の複合化・工程集約のみならず、当社の最先端技術である非接触機上3D計測機能を搭載し、完全な切屑・クーラント・ミスト処理を可能とした最重要戦略機種になります。
以上の最先端技術によって、お客様の高付加価値製品の生産、及び生産性の向上に貢献いたします。
③品質
経営理念の「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械、自動化システム、デジタル技術を、最善のサービスとコストでお客様に供給することを通して、ターニングセンタ、マシニングセンタ、複合加工機、研削盤、加工オートメーションで、グローバル ワンを目指す」を基本方針として、品質=お客様満足を合言葉に、DMG MORI AGとともにグローバルに製品・サービスの品質向上を展開しております。特に、お客様からのご要求が増えている5軸化、複合化、自動化、デジタル化を実現するための工作機械本体、周辺装置、システム、アプリケーションソフトの品質強化に注力しております。また、リモートでお客様機の問題をいち早く発見し迅速な問題解決に導くサービスも開始いたしました。このように製品・サービスの継続的な改善改良、品質向上を行い、お客様満足を獲得することを行動の基本としております。
④安全保障貿易管理
近年、世界の安全保障環境の不安定化が益々顕著になってきたことに伴い、大量破壊兵器の不拡散や通常兵器の過度の蓄積防止に対する国際的な関心が一段と高まり、諸外国においても安全保障に関する法整備の強化・改定が行われております。このような環境の中、当社グループにおいては、輸出関連法規の遵守に関する内部規程(コンプライアンス・プログラム)を定め、厳正に適用しております。さらに、当社製品には、不正な輸出を防止する目的で、据付場所からの移設を検知すると稼働できないようにする装置を搭載し、厳格な輸出管理を実践しております。なお、2012年より中国・天津、そして2019年10月よりインド・コインバトールにて工作機械の製造を開始しております。輸出関連法規上、より厳格な管理が必要となる国での海外生産を行うにあたり、訪問を含む定期監査や輸出管理研修を行っております。日本のみならず海外の関連法令遵守も必要な安全保障貿易管理につきましては、重点課題として今後とも継続して取り組んでまいります。
⑤法令遵守
経営者自ら全従業員に対し法令及び企業倫理に基づいた企業活動の徹底を指示し、役員・従業員のコンプライアンス意識の向上と浸透を図っております。当社グループでは、グローバルな事業展開に対応したコンプライアンス体制を構築するために、日本を含む各国においてコンプライアンス担当者を選任し、これらを連携させることにより、各国の制度に適応しながら統制の取れた体制の確立に取り組んでおります。また、コンプライアンスに関する問題の予防、早期発見・対策のため、2020年より多言語対応の通報窓口を設置し、海外 グループ企業も含めたグローバルでのコンプライアンス体制を強化いたしました。以上の他、内部監査部を主管部署とした定期的な法令遵守活動のモニタリングも継続しております。
勤務間インターバル制度については、当社では2018年より導入し、2020年度からは在社時間の制限を原則10時間、勤務間インターバルを12時間として従業員の健康維持、ワークライフバランスの適正化に取り組んでおります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性のあると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 主要市場(日本、米州、欧州及び中国・アジア等)の状況
当社グループの地域別連結売上収益の構成比は、当連結会計年度において、日本18.0%、米州19.4%、欧州53.9%、中国・アジア8.7%となっております。当社グループが製品又は修理復旧を販売、提供するいずれかの地域において景気動向が悪化することで当該製品又は修理復旧に対する需要が低下した場合は、当社グループの業績は悪影響を受ける可能性があります。
(2) 設備投資需要の急激な変動
工作機械産業は従来から景気の変動に左右されやすいと言われてまいりましたが、アジア並びにBRICs、中央 ヨーロッパ等の新興国の経済が拡大してきております。日本、米州、欧州各地域の工作機械市場も中長期的には安定的に成長してきておりますが、当社グループの業績は景気変動による設備投資の増減の影響を大きく受ける傾向にあり、何らかの要因で各地域で設備投資需要が落ち込んだ場合には、製品単価、販売数ともに急速かつ大幅に下落することがあり、当社グループの事業、業績及び財務状況は悪影響を受ける可能性があります。
(3) 市場競合の影響
工作機械業界は参入企業数が多く、低コストで製品を供給する海外の会社も加わり、当社グループはそれぞれの市場において厳しい競争にさらされており、当社グループにとって有利な価格決定を行うことが困難な状況になっております。当社グループとしては、技術力強化による差別化製品の開発、原材料等のコスト削減、営業力強化のための諸施策を推進しておりますが、将来的に市場シェアの維持及び拡大又は収益性の保持が困難となった場合は、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 企業合併・買収及び資本・業務提携
当社グループは、企業の合併・買収や資本・業務提携を事業基盤の強化を図るための重要な戦略の一つと位置付けており、今後、かかる企業合併・買収や資本・業務提携の成否によっては、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、2015年4月にDMG MORI AGを連結対象会社としておりますが、同社の事業、業績及び財務状況の動向は、当社グループに大きな影響を与える可能性があります。
(5) 米ドル、ユーロ等の対円為替相場の大幅な変動
当社グループの事業、業績及び財務状況は、為替相場の変動によって影響を受けます。為替変動は、当社グループの外貨建取引から発生する資産及び負債の日本円換算額に影響を与えます。また、為替変動は外貨建で取引されている製品・パーツ及び修理復旧の価格及び売上収益にも影響を与えます。この影響を低減するため、日本、中国・アジアの円建取引、米州の米ドル建取引、欧州のユーロ建取引のバランスをとるように努めておりますが、それでもなお、為替相場の変動によって当社グループの事業、業績及び財務状況が悪影響を受ける可能性があります。
(6) 天然資源、原材料費の大幅な変動
想定を大幅に超えた原材料価格の急激な高騰に見舞われた場合は、当社グループの業績は悪影響を受ける可能性があります。原材料価格の高騰に対しては、仕入先への価格交渉等によるコストダウンの推進や製品価格への転嫁によってカバーする方針ですが、価格の高騰が続く場合や仕入先への価格交渉等が実現しない場合は、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 安全保障貿易管理
当社グループが事業を展開する多くの国及び地域における規制又は法令の重要な変更は、当社グループの事業、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループのコア事業であります工作機械は各国の輸出関連法規上、規制貨物に分類されており、国際的な輸出管理の枠組みにより規制を受けております。国際情勢の変化により規制が強化されることとなれば、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 特定業種への依存
当社グループの販売は、自動車及びその関連業界に対する割合が相対的に高くなっております。したがって、当該業界における経営環境の変動が、今後の当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 取引先の信用リスク
当社グループとしても取引先の信用リスクについては細心の注意を払っておりますが、取引先の業績悪化等により取引額の大きい得意先の信用状況が悪化した場合、当該リスクの顕在化によって、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)財務制限条項
コミットメントライン契約等の一部借入金の契約には財務制限条項が付されております。今後、財務制限条項への抵触等があった場合、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)知的財産権
当社グループは、研究開発、新製品開発を通じて多くの新技術やノウハウを生み出しており、これらの貴重な技術・ノウハウを特許出願することにより、知的財産権の活用を図っております。しかし当社グループの知的財産権に対して第三者からの無効請求や、侵害差止請求等が提起された場合、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12)訴訟に関するリスク
当社グループは、顧客の要求する機能・仕様を満足し、かつ安全性に配慮した適性品質の追求に努めており、グローバルベースで品質管理の徹底を図っております。しかしながら、当社グループの製品に重大な不具合が存在し、重大な事故やクレーム、リコール等の起因となった場合、多額の製品補償費用等が発生する可能性があります。
この他、当社グループは、国内外において業務を展開しておりますが、こうした業務を行うにあたり、業務上発生する責任に基づく損害賠償請求訴訟等の提起を受ける可能性があります。
現時点では当社グループの業績に重大な影響を与えるような訴訟は提起されておりませんが、今後、重大な訴訟が提起され、当社グループに不利な判断が下された場合、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(13)自然災害・疫病等の影響
当社グループは、販売及び修理復旧拠点をグローバルに展開しているため、予測不可能な自然災害、疫病、コンピュータウィルスといった多くの事象によって引き起こされる災害によって影響を受ける可能性があります。
当社グループの製造拠点は、国内では三重県、奈良県、神奈川県及び新潟県にあり、海外ではアメリカ、中国、欧州各地等6ヵ国にあります。これらの製造拠点のいずれかが、地震・洪水等の天災の影響や疫病等による工場閉鎖により、製品供給が不可能、あるいは遅延することとなった場合は、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)環境問題
当社グループは、事業の遂行にあたり、様々な環境関連の法令及び規制の適用を受けております。当社グループは、これらの法規制に細心の注意を払いつつ事業を行っておりますが、現在行っている又は過去に行った事業活動に関し、環境に関する法的、社会的責任を負う可能性があります。また、将来、環境関連の法規制や環境問題に対する社会的な要求がより厳しくなることによって、法令遵守に係る追加コストが生じたり、事業活動が制限される可能性があります。したがって、今後の環境関連の法規制の動向によっては、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及び キャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度(当期)における業績は、売上収益が328,283百万円(2,695,269千EUR)(前期比32.4%減)、営業利益は10,674百万円(87,641千EUR)(前期比71.4%減)、税引前当期利益は5,106百万円(41,922千EUR)(83.8%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,745百万円(14,334千EUR)(前期比90.3%減)となりました。
当社は、機械加工のトータル・ソリューション・プロバイダとして、5軸・複合加工機等の工程集約機やアディティブマニュファクチャリング(積層造形技術)機・超音波加工機等の最先端機械を基盤とした自動化・デジタル化を推進しております。2020年9月には、デジタル化により製造現場の生産性向上を支援するアプリケーション作成ツール「TULIP」の国内販売強化を目的とし、「株式会社T Project」を設立いたしました。「TULIP」ではプログラミングの専門知識なしに作業手順書のデジタル化や機器のモニタリング等を行うことができ、現場主体の工程改善に貢献いたします。また、コロナ禍においても最適なサポートを実現できるようポータルサイト「my DMG MORI」の提供を推進しており、このサイトを通じてお客様は保有機の情報を一元管理し、遠隔での修理復旧サポートを依頼することができます。AI(人工知能)のチャットボットによるサポート実験も開始しており、今後も機能の拡充を図ってまいります。その他のサービスとして、オンライン会議システムを活用した「工作機械のデジタル立ち会い」やいつでも学習可能なeラーニング形式の「デジタルアカデミー」、社内外の専門家によるオンラインセミナーや記事の提供等も行っており、様々な面から製造現場における自動化・デジタル化を促進しております。
技術面につきましては、工作機械での加工中に発生する切屑をAIを用いて自動で効率的に除去することができる「AIチップリムーバル」の提供及び、IoTによるデータの蓄積や分析により生産の効率化を可能とする「IoT connector」のCELOS搭載機への標準搭載を開始しております。また、2019年11月より包括的な業務提携を行っている株式会社ニコンのレーザスキャナを使用した非接触機上計測システムを販売開始いたしました。株式会社ニコンが持つ計測技術のノウハウと当社の最新技術を融合させることで、従来以上に高速・高精度な計測が可能となっております。当社は、今後もより多くのお客様に最適な最先端技術を提案できるよう、様々な新製品を開発してまいります。
こうした最先端技術をわかりやすくお伝えするため、当社はデジタルとリアル双方でのマーケティング活動を強化しております。デジタル面では、2020年7月に公開した「デジタルツインショールーム」の機能を拡充し、機械の内外や周辺機器をより詳細に確認できるようになった他、新たなエリアとして「デジタルシステムソリューションセンタ」を増設し、16種類の自動化システムを閲覧することが可能となりました。また、11月にはオンライン展示会「JIMTOF2020 Online」に出展し、その開催に合わせて初のオンライン自社展示会「DMG MORIオンラインテクノロジーデイズ」を開催いたしました。リアルの面では、6月より少人数制での自社展示会「テクノロジーフライデー」を伊賀事業所・東京グローバルヘッドクォータで実施しており、今後は当イベントを全世界14ヵ所の工場へも展開してまいります。
当社では、「よく遊び、よく学び、よく働く」を経営理念に掲げ、従業員が自律的に自身の時間をマネジメントし、心身ともに充実した生活を送りながらスキルアップする企業文化を熟成しております。新型コロナウイルス感染防止の観点から在宅勤務を励行している他、有給休暇の完全取得や在社時間制限内での効率的な働き方を推進しております。2021年1月には、従業員の心身の健康が当社の持続的発展において重要であるとの認識を「DMG森精機 健康経営宣言」として明文化いたしました。管理管掌取締役を委員長とする「健康経営推進委員会」主導のもと、健康増進活動に取り組む従業員への支援と、組織的な健康増進施策を推進してまいります。また、地球環境保護の観点から、2020年5月に欧州を拠点とするDMG MORI AGでカーボンニュートラルを達成しております。2021年には、欧州のみならず日本を含む全世界において、自組織の事業活動に加えて部品の調達におけるCO₂排出量に対しても達成いたします。その他、当社の外洋セーリングチームDMG MORI SAILING TEAMによる海洋中のマイクロプラスチック調査への協力、人材育成助成事業への寄付等様々な活動を通して地域・社会へ貢献しております。今後も、グローバル企業としての社会的責任を果たし、継続的に企業価値を高めてまいります。
当社の2020年の連結受注額は2,797億円となり、前年度比では32%減となりました。2018年後半からの米中貿易摩擦による影響に加え、特に2020年3月頃からのCOVID-19のグローバル感染拡大による経済活動の停滞の影響を受け、世界的に工作機械需要が大きく減少いたしました。このような需要減少局面においても当社は、工程集約機、自動化、デジタル化等の付加価値提案により、1台当たりの受注平均単価は前年度並みを維持することができました。
地域別の機械受注金額は、日本が前年度比39%減、米州は同18%減、中国を含むアジアは同22%減となった他、当上半期に各国で厳しい移動制限が実施された欧州では、同48%減となりました。産業別では、半導体製造装置関連、金型、SMEsが引き続き堅調に推移し、2年程調整局面にあった自動車関連向けもようやく回復の動きが見られました。一方、民間航空機関連向けの需要は引き続き弱含みの展開となっております。
当期における四半期毎の受注は、第2四半期を底として緩やかな回復傾向にあります。中でも全社受注の25%を占める修理復旧サービス・補修パーツ事業は、第4四半期にほぼ前年並みまで回復し、お客様の生産活動が着実に正常化しつつあることを認識しております。また、第3四半期から前年同期比3%増とプラスに転じた中国での受注は、第4四半期には同42%増と勢いを増しております。その他の地域の受注も、概ね前四半期では横ばい圏の金額を確保しており、需要が回復局面にあることを裏付けております。短期的にはCOVID-19の感染再拡大により、引き合いから受注までのリードタイムが伸長しておりますが、お客様は中長期の成長、収益改善や省人化対策に向けて、工程集約化、自動化、デジタル化等の投資を検討しており、潜在需要は十分に見込まれます。また、グローバルでの脱炭素化に向けた動きも急速に拡大しており、当社の活躍の場が益々広がりつつあることを確信しております。当社の直販・直サービスの強みを活かし、デジタルとリアルでの顧客接点を最大限に活用し、着実に受注増に結び付けてまいります。
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
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売上収益 |
(百万円) |
485,778 |
328,283 |
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営業利益 |
(百万円) |
37,339 |
10,674 |
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親会社の所有者に帰属する当期利益 |
(百万円) |
17,995 |
1,745 |
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基本的1株当たり当期利益 |
(円) |
138.64 |
3.40 |
セグメントの動向及び業績は以下のとおりであります。なお、以下の売上収益及びセグメント損益には、セグメント間の内部取引を含めております。
マシンツールセグメントでは、電気・精密・半導体・金型向けの業績が堅調に推移した一方で、航空・宇宙向けは調整局面となりました。その結果、売上収益は378,445百万円(前期比27.9%減)となり、セグメント利益は16,944百万円(前期比50.7%減)となりました。
インダストリアル・サービスセグメントでは、パーツ販売、修理復旧の業績が軟調に推移いたしました。その結果、売上収益は119,374百万円(前期比27.5%減)となり、セグメント利益は9,949百万円(前期比49.5%減)となりました。
②財政状態の状況
(ⅰ)資産
流動資産は、主として現金及び現金同等物が6,058百万円増加した一方で、主として営業債権及びその他の債権が12,751百万円減少したことにより、209,557百万円(前期比8,852百万円の減少)となりました。
非流動資産は、主としてその他の無形資産が4,171百万円、その他の金融資産が3,764百万円それぞれ増加したことにより、316,969百万円(前期比10,772百万円の増加)となりました。
この結果、資産合計は526,526百万円(前期比1,920百万円の増加)となりました。
(ⅱ)負債
流動負債は、主としてその他の金融負債が40,420百万円、営業債務及びその他の債務が6,943百万円、未払法人所得税が3,936百万円それぞれ減少したことにより、217,674百万円(前期比54,878百万円の減少)となりました。
非流動負債は、主としてその他の金融負債が2,576百万円増加した一方で、主として社債及び借入金が8,126百万円減少したことにより、118,957百万円(前期比5,289百万円の減少)となりました。
この結果、負債合計は336,631百万円(前期比60,168百万円の減少)となりました。
(ⅲ)資本
資本は、主としてハイブリッド資本が69,229百万円増加した一方で、利益剰余金が5,947百万円、その他の資本の構成要素が4,453百万円それぞれ減少したことにより、189,895百万円(前期比62,088百万円の増加)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
(百万円) |
43,647 |
13,647 |
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投資活動によるキャッシュ・フロー |
(百万円) |
△23,546 |
△18,859 |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
(百万円) |
△19,019 |
10,792 |
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現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
(百万円) |
327 |
6,058 |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
(百万円) |
27,695 |
33,754 |
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前期末に比べ6,058百万円増加し、当連結会計年度末は33,754百万円となりました。
(ⅰ)営業活動によるキャッシュ・フロー
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、13,647百万円の収入(前期は43,647百万円の収入)となりました。主な増加要因は、減価償却費及び償却費24,118百万円、営業債権及びその他の債権の減少額12,498百万円、税引前当期利益5,106百万円であり、主な減少要因は、営業債務及びその他の債務の減少額10,106百万円、法人所得税の支払額8,408百万円であります。
(ⅱ)投資活動によるキャッシュ・フロー
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、18,859百万円の支出(前期は23,546百万円の支出)となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出12,062百万円、無形資産の取得による支出8,080百万円であります。
(ⅲ)財務活動によるキャッシュ・フロー
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、10,792百万円の収入(前期は19,019百万円の支出)となりました。主な増加要因は、ハイブリッド資本の発行による収入69,229百万円、長期借入れによる収入37,801百万円であり、主な減少要因は、長期借入金の返済による支出46,148百万円、外部株主への支払義務に対する支出42,289百万円、リース負債の返済による支出5,780百万円であります。
④生産、受注及び販売の状況
(ⅰ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) |
前年同期比(%) |
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マシンツール(百万円) |
288,687 |
△28.0 |
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インダストリアル・サービス(百万円) |
18,640 |
△9.2 |
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合計(百万円) |
307,328 |
△27.1 |
(注)1.上記金額は販売価格によっております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(ⅱ)受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
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受注高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
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受注実績 |
279,732 |
△31.7 |
95,648 |
△34.4 |
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(ⅲ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) |
前年同期比(%) |
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マシンツール(百万円) |
228,201 |
△33.3 |
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インダストリアル・サービス(百万円) |
100,061 |
△30.4 |
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全社(百万円) |
21 |
0.4 |
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合計(百万円) |
328,283 |
△32.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計方針及び見積り
連結財務諸表作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載のとおりであります。
②経営成績の分析
経営成績の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。
なお、2020年度の目標とした経営指標に対しては、全社受注2,797億円(目標4,200億円)、売上収益3,282億円(目標4,000億円)、営業利益107億円(目標200億円)、フリーキャッシュフロー△52億円(目標130億円)で未達、純有利子負債644億円(目標700億円以下)Net Dept/Equityレシオ(純有利子負債株主資本比率)0.35(目標0.5)で達成となりました。
③資本の財源及び資金の流動性
当社は、主に工作機械の製造及び販売事業を行うため、事業活動における資金需要に基づき、必要な資金の一部を新株発行、社債発行、銀行からの借入金及び売掛債権流動化により調達しております。なお、効率的な資金調達を行うため、主要取引金融機関と総額72,000百万円の貸出コミットメントライン契約を締結しております。当期末における当該借入残高は、22,000百万円であります。
当期末における当社グループの有利子負債の残高は、102,406百万円(前期末比6,290百万円の減少)となっております。
当社の連結対象会社であるDMG MORI GmbHとDMG MORI AGとの間でのドミネーション・アグリーメントが2016年8月24日に発効されました。
詳細については、「連結財務諸表注記 34.ドミネーション・アグリーメント」をご参照下さい。
R&Dカンパニーが2019年に発足し3年目を迎えました。機械・要素開発とソフトウェア開発をバランスよく開発できる布陣としております。従来は他社より少しでも高速で、加工領域が広くて、多くの工具が収納できる機械を出すことが最重要課題でした。今でもそれは重要ですが機械の価値の半分くらいはソフトウェアが占めるようになってきたと言えます。
新機種開発においては、トポロジー最適化で学んだ解析技術と最適化技術を用いて、機械を製作する前に徹底して最適化を繰り返し、静剛性、動剛性、熱変位抑制を最適化しております。機械を試作する前に加工能力、精度等が見えるようになっております。より性能の高い機械を、素早くリリースすることに大きく貢献しております。またこの技術を応用してデジタルツインテストカットが実施できるようになりました。これは5軸加工機や複合加工機による加工をコンピュータ上で仮想的に実現する技術で加工時間、加工負荷、干渉、加工状況等の結果を素早く確認可能になります。特に手間のかかる大型で複雑なワーク等で有効に活用でき、デジタルツインテストカットで素早くお客様の要望に応えること、実テスト加工の時間を短縮することが可能です。
2020年末から2021年にかけ、R&Dカンパニー発足時から力を入れて取り組んでいたAIチップリムーバルと非接触機上計測を相次いでリリースいたしました。AIチップリムーバルは機内の切屑堆積箇所をAIにより特定し、制御ノズルを用いて堆積した切屑を効率的に洗い流す経路を自動生成し効率よく切屑を洗い流します。自動化システムのトラブルの多くは切屑の堆積によるものであり、自動化システムを安定的に稼働させます。また機内清掃の負担や切屑流しのクーラントに必要な電力を大幅に削減する効果があります。このユニークな技術は他社に先駆けて開発したもので数多くの特許も出願しております。本年は切屑流しに続いて、ミスト、クーラント処理の画期的な商品をリリースする予定です。
非接触機上計測は、株式会社ニコンとの技術協力により生まれた商品で、機上で複雑形状ワークを高速に高精度で計測します。これまでは加工したワークを3次元計測装置で測定し、精度の修正が必要な場合には再度機械に戻していましたが、機上ですべての作業が可能になったため、作業者の負担を減らし、工数を大幅に削減します。風力発電にもちいられる大型ギヤ等を3次元測定器と同等の精度で、レーザスキャナにより高速に測定します。ギヤ計測においてはギヤのパラメータを入力するだけで計測パスを自動生成する機能があり、容易に高精度な計測が可能となっております。まずはドイツ製の5軸マシニングセンタ用にリリースし、日本製の複合加工機にも展開します。今後もニコンの光学技術や画像処理技術を工作機械に搭載しさらなる高機能化、高精度化を実現します。
自動化においては、これまで開発を進めていたAGVに共同ロボットを搭載したフレキシブルな搬送装置をお客様へ導入し始めております。また弊社事業所内でも利用を開始する予定です。このAGVロボットはレール等の軌道や安全柵が不要なためレイアウト変更が容易に可能です。変種変量生産に対応できる自動化システムとしてさらに発展させる所存です。
セル制御システムについては、DMG MORI AGとDMG森精機株式会社で共通のフレームワークを用いております。リニアパレットプールを自動化システムのコアとして、数千本の工具倉庫から工具の自動入れ替えを行うような大規模で長時間の無人運転にも対応しております。ドイツ製の高精度な5軸工作機械の自動化対応ができるようになっております。
2021年は新機種、要素技術、周辺技術、自動化、ソフトウェアをバランスよくリリースする計画にしております。お客様の効率化とグリーンマニュファクチャリングに貢献する製品群を提供してまいります。
以上の研究開発活動の結果、無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費の総額は