当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、創立以来「開発は企業の保険なり」の社是のもと事業活動に取り組み、産業界の省力・省人化、作業環境の改善を通じて社会に貢献することを基本方針に掲げております。この基本方針に基づいて、高機能・高品質・高信頼性の製品づくりに努め、日東工器ブランドを浸透させることによって、企業価値を高めてまいります。
(2) 経営戦略等
当社グループは経営理念の実現に向け、中期経営計画(2024年度~2026年度)に基づき、「地球環境と省力・省人化への貢献」を基本方針に掲げています。市場戦略として、環境対応ビジネスの着手、販売チャネルの拡大、連携パートナーの発掘、商品戦略として、自動化・環境対応製品の展開、脱炭素ビジネスの拡大にグループ全体で取り組んでまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営目標における指標は、売上高、営業利益、自己資本利益率(ROE)であります。中期経営計画(2024年4月(第69期)~2027年3月(第71期))の2年目である2026年3月期は、連結売上高292億90百万円、営業利益6億円を目指しております。自動化・省力化・環境対応製品の積極展開、水素用カプラを中心にエネルギー関連事業への注力、更なる海外戦略の強化により、売上高の増加を見込んでいますが、その一方で米国の関税措置が事業環境の不確実性を高めています。また、コスト面では人件費の上昇、新工場の稼働に伴う減価償却費の増加などを見込んでいます。
(4) 経営環境
当連結会計年度における世界経済は、米国新政権の政策運営に起因する不透明感や、地政学リスクの高まりや金融引き締めの継続など、依然として先行きが不透明な状況が続きました。日本経済は、自動車の生産回復や賃上げの定着を背景に緩やかな回復基調を維持しましたが、エネルギー価格や材料費の高止まりによる影響が景気の下押し要因となりました。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(連結子会社における棚卸資産の過大計上への対応について)
当社は2024年9月12日付 「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」で公表しましたとおり、連結子会社である栃木日東工器株式会社における棚卸資産の残高について過大計上の疑義があることに関し、事案の解明、連結財務諸表への影響額の確認等のために外部の専門家を含む特別調査委員会を設置し、調査を進めました。
2024年11月1日付 「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」で公表しましたとおり、特別調査委員会による調査報告書を受領し、その調査の結果、栃木日東工器株式会社の棚卸資産の評価額が意図的に過大計上されていたことが判明し、本事案が連結損益に与える重要性を鑑み2024年11月14日に過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信等の訂正を行っております。
(再発防止の取り組み)
当社は、2024年11月26日付 「特別調査委員会の調査結果を受けた再発防止策の策定等に関するお知らせ」で公表した以下の再発防止策の取り組みを進めてまいりました。
①栃木日東工器株式会社における原価計算関連業務プロセスの見直し及びこれに沿った運用の徹底
・原価計算関連業務の文書化の見直し、整備
・原価計算関連業務プロセスにおけるチェック体制の再構築
・在庫残高推移に関するモニタリングの改善、強化
②栃木日東工器株式会社におけるシステム管理者と経理担当者の兼務の制限
・本事案に関係する部門の職務権限及び業務分掌の見直し
・システム権限の付与状況の再確認及び見直
③栃木日東工器株式会社におけるジョブローテーション
・ジョブローテーションを可能とする必要人員の確認、人材育成計画の検討
・ジョブローテーション計画の策定
④在庫残高推移のモニタリング改善
・栃木日東工器株式会社におけるモニタリング体制の見直し、再構築
・栃木日東工器株式会社を含む生産子会社が算出した棚卸資産評価額に対する本社関連部門の確認プロセスの明確化及び運用の徹底
⑤全社的な視点での内部統制の再構築及びモニタリングの改善
・財務報告に係る内部統制の評価業務の改善
- 財務報告委員会の機能回復に向けた取り組み
- 財務報告委員会のメンバー増員等による体制強化
・本社監査機能の強化
・内部統制に関するリスクマネジメント体制の見直し、強化
その内、①、②、③の栃木日東工器株式会社における再発防止策につきましては、リスクの特定、統制手続きを明確化するための内部統制関連文書の再整備、文書化によって明確化された統制手続きの実効的な運用のための教育と研修の実施、業務の属人化を防ぐ体制の整備、またITシステム改修およびユーザー権限の見直しによるデータの改ざん防止等の改善を行いました。
④の在庫残高推移のモニタリング改善につきましても、栃木日東工器株式会社において棚卸資産増減について月次で比較分析を行い、著しい増減についてその要因を同社内の会議体および親会社である当社の執行役員会に報告する体制を再構築し、運用しております。また親会社である当社においても、連結グループ在庫について同様の比較分析を行い、著しい増減の要因を取締役会に報告する体制を再構築し、運用しております。
⑤の全社的な視点での内部統制の再構築及びモニタリングの改善につきましては、特に財務報告に係る内部統制の評価を行う財務報告委員会の体制を見直し、上記の再発防止策に取り組みました。コンプライアンス意識をより一層高めて健全な組織風土を醸成することで、皆様からの信頼回復に努めてまいります。
(事業の持続成長を目指す取り組み~中期経営計画2026)
当社グループは、2024年4月(第69期)~2027年3月(第71期)を期間とする中期経営計画2026を実行しております。この中期経営計画は、100年企業を目指すために、当該期間を更なる飛躍と持続的な成長に向けた基盤固めの時期と位置づけ、企業価値の再創造を図るものです。事業ポートフォリオの見直しを推進し、当社グループの本来の強みである“稼ぐ力”の再構築を進めることで激化する経営環境変化への対応力を強化、企業価値の再創造を図り、持続的な成長を目指します。
研究開発面では、創立以来の開発テーマである「省力・省人化」を更なる次元に高めていく開発に注力していきます。具体的には、水素をはじめ脱炭素社会に貢献する製品開発、ロボット及びファクトリー・オートメーション(FA)と親和性の高いツールの開発、半導体、データセンター、医療等の先端技術分野の技術開発に取り組んでいきます。そのために技術開発投資、DX推進人材の育成を強化していきます。
生産面では、2022年11月より建設計画を進めてきた東北日東工器の新工場が2025年6月に操業開始します。
新工場では最新鋭の設備を導入し自動化、バリアフリー化等、安全で働きやすい環境を推進していきます。同工場をモデル工場として、国内外すべての工場について将来を見据えた自動化・IT化に積極的な投資をしていきます。これらを推し進めることにより、更なる品質向上、コストダウン、納期短縮を実現させていきます。
販売面では、開発部門との連携を強化し、脱炭素、環境対応製品の拡販、先端技術分野の需要開拓に注力し、既存事業の更なる成長を目指します。同時に販売チャネルの拡大、連携パートナーの発掘を行い、当社製品の事業領域の拡大と深化に努めます。
海外営業は、海外販売市場の拡大とともに海外事業価値の拡大を目指します。欧米の伝統市場においては、半導体、医療等のハイエンド需要の深掘りを行い、新興市場においては販売チャネルの拡大と多様化に取り組みます。2024年9月にはインド現地法人NITTO KOHKI INDIA PVT LTDを設立しました。今後も自動車、空調、医療等、当社が強みを発揮できる業界市場の更なる拡大が予想されるインドにおいて、より主体的な取り組みを行い、更なる事業拡大を進めていきます。
管理面では、安心安全で、心身ともに健康的に働ける環境整備を進めるとともに、激変する経営環境の中でも成長していくために、挑戦に向けた人的資本投資を積極的に実施してまいります。具体的には、先端技術分野開発、販売や海外事業拡大のための専門人材獲得、IT推進人材の育成、各種研修の見直しおよびリスキリングの充実等の施策を積極的に推進し、多様な人材の活躍による企業価値向上を目指します。
詳細については、2[サステナビリティに関する考え方及び取組](3)戦略 (人材)をご参照ください。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1)当社グループのサステナビリティ基本方針とマテリアリティ(重要課題)
当社グループが経営方針として掲げる「社会への貢献」「従業員の幸福」「会社の発展」を実践し、持続可能な社会の実現に貢献する企業であり続けるために、「サステナビリティ基本方針」を2023年に定め、当社グループ全体でサステナビリティ経営を推進しております。
<サステナビリティ基本方針>
「私たちは、社会への貢献、従業員の幸福、会社の発展という経営方針の実践を通じて、社会の、そして当社のサステナビリティの実現を目指します。」
<マテリアリティ:重要課題>
当社グループと社会のサステナビリティ(持続可能性)を実現するために、経営方針と関連するマテリアリティ(取り組むべき最も重要な課題)を以下の流れで特定しております。サステナビリティ委員会では最新のリスクと機会に呼応する6つの重要課題を審議し、中期経営計画2026をはじめとする、持続成長に向けた具体的な活動内容を当社グループで進めております。具体的な戦略や目標の詳細は、当社グループ統合報告書2024に詳しく記載しておりますのでご確認ください。
(参考情報)
当社グループ 統合報告書2024(初号・日本語版)
https://www.nitto-kohki.co.jp/company/environment/report/index.html
(2)ガバナンス
サステナビリティを推進するため、2024年度は、2023年に引き続いて体制構築について取組んでまいりました。取締役会の諮問機関として、サステナビリティ委員会を設置することを2023年5月10日の取締役会で決議のうえ設置し、2025年5月までに累計5回開催しております。同委員会は、委員長を代表取締役社長、副委員長を管理統轄役員とし、弁護士、グローバル企業経営経験者、女性など多様な視点を考慮した合計5名の委員で構成しております。
また統合報告書の初めての発行(日本語版2024年8月・英語版2024年12月)などを通じて、ガバナンス体制を含む当社グループでのサステナビリティ体制の理解を深める活動を強化しております。
2023年4月 サステナビリティに関する部門(サステナビリティ推進部)設置
2023年5月 サステナビリティ委員会設置(取締役会の諮問機関)
2023年8月 第1回サステナビリティ委員会(基本方針の策定・マテリアリティの特定)
2023年11月 サステナビリティ基本方針・マテリアリティ(重要課題)公開
2024年4月 第2回サステナビリティ委員会 (アクションプラン検討など)
2024年6月 第3回サステナビリティ委員会 (開示方針審議など)
2024年11月 第4回サステナビリティ委員会(最新の基本方針・マテリアリティ審議など)
2025年5月 第5回サステナビリティ委員会 (開示方針審議・体制構築の確認など)
<サステナビリティ委員会:2025年6月開催 株主総会後の体制>
<参考情報>
サステナビリティ委員会設置のお知らせ(2023年5月10日)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6151/tdnet/2271410/00.pdf
サステナビリティ基本方針・マテリアリティ制定のお知らせ(2023年11月24日)
https://www.nitto-kohki.co.jp/news/cms-assets/5f67d20d7addb37a3e19caed874dd980fea4cf27.pdf
企業理念、行動規範及び社会貢献活動
https://www.nitto-kohki.co.jp/company/philosophy/
当社グループ 統合報告書2024(初号・日本語版)
https://www.nitto-kohki.co.jp/company/environment/report/index.html
NITTO KOHKI Group Integrated Report 2024(初号・日東工器グループ 統合報告書2024英語版)
https://www.nitto-kohki.co.jp/e/company/environment/
(3)戦略
マテリアリティに関連して各種アクションプランの検討を行い、サステナビリティに関して活動を強化してまいります。また前述の統合報告書の初めての発行(日本語版2024年8月・英語版2024年12月)などを通じて、当社グループでのサステナビリティ体制における活動状況や、中期経営計画2026、新工場建設などの各種戦略に関する情報公開を行う活動を強化しております。
(人材)
当社では、従業員が安心して働ける環境づくりに力を入れております。人的資本に係るリスクと機会を検討し、マテリアリティとして『「技術で、人を想う。」人材が集い、活躍する環境の実現』掲げ各種施策に取り組んでいます。その一環として、育児中の短時間勤務制度の拡充、配偶者同行休業制度、延長保育費用の補助、男性育児休業の推奨など、育児等を理由に離職が発生しないよう取り組んでおります。また育児等の理由で離職した従業員のカムバック制度も整備しております。
また独創的で高品質な製品の開発および海外を含めた新市場の開拓に挑戦していくため、プロフェッショナル人材の採用や、階層別をはじめ様々な研修を実施し人材の育成を行っております。「開発は企業の保険なり」の社是のもと、各自が自己啓発目標と他者育成目標を定める当社独自の目標管理制度を導入し、自らの自己啓発と共に従業員同士で育成を促すことに取り組んでおります。
当社および国内子会社における、正規雇用のキャリア採用者の割合は、当連結会計年度では33.9%を占めております。
様々な人材が働きがいをもって能力を発揮するために、社内環境を向上する取り組みを行っております。キャリアビジョンに関する自己申告制度の導入や、健康診断やストレスチェックをはじめとする様々な健康経営について推進してまいります。当社および国内子会社における、当連結会計年度の離職率は、6.7%となりました。
(環境)
当社グループは環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」を基本として、環境と人に配慮した持続可能な経営を推進してまいります。
事業活動の中で環境に影響を与える主要な環境課題となるものは、以下のとおりです。
①事業活動や開発製品の環境負荷の低減
②製品含有化学物質の管理と体制の構築
③効率的な生産体制の構築
④二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガス排出量の見える化と削減
カーボンニュートラルへの取り組みにつきましては、マテリアリティとして『事業活動を通じた地球環境への貢献』を掲げており、国の環境方針である2050年のカーボンニュートラルの目標を念頭に、温室効果ガスの見える化と削減に取り組んでまいります。当社グループでは、「ISO14001」認証を2001年に取得するなど、早い時期から環境対応を積極的に進めており、環境などの各種委員会での活動をはじめ、設計・開発から調達、生産、販売・物流、使用、廃棄までのバリューチェーン全体にわたり、総合的な視点で環境負荷の低減を推進しています。
2024年度は、統合報告書の初発行(日本語版2024年8月・英語版2024年12月)、気候変動や温室効果ガスに関する環境教育の実施、当社グループ全体の温室効果ガス排出量の初算定(2023年度スコープ3)と公開などを通じて、当社グループでの環境面でのサステナビリティへの対応や、情報開示に向けた活動を強化しています。
(参考情報)
2023年度当社グループ温室効果ガス排出量(統合報告書2024 P52非財務 ESGデータ参照)
https://www.nitto-kohki.co.jp/company/environment/report/index.html
(4)指標及び目標
人的資本に関して「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「男女間賃金格差」「離職率」の指標及び目標を定めております。当社および国内子会社における、当該指標に関する目標及び実績は、下表のとおりです。管理職は、男女隔てなく能力・将来性などを総合的に判断し登用しております。当社の製品は、様々な分野や業界で使用されております。製品の開発や拡販において必要とされる技術職や営業職は、性別を問わない採用を強化しております。
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指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 災害リスク
パンデミックや自然災害によって、正常な事業活動ができなくなるリスクがあります。経済活動の遮断及び抑制によるリスク軽減のため、従業員の時差出勤や在宅勤務の実施、WEBや動画などを活用した販売促進、部品発注の前倒し、物流ルートの確保など、事業活動の継続に向けた対策を行い、お客様へ製品の供給を継続するよう取り組んでまいりますが、受注及び売上げの減少、部品調達の遅延、輸送手段の停止などが発生し、当社グループの業績に影響を与えるリスクがあります。
(2) 素材の供給に関するリスク
当社グループは、鉄、ステンレス、真鍮、アルミなど各種の素材を使用した製品を製造しております。そのため、資源国から輸入される原材料の円安による値上り、原油価格上昇による素材価格の高騰、自然災害や事故、テロ、戦争等によって素材調達の価格や数量の安定性に影響を受けることも考えられます。素材価格上昇の影響を受けた場合の値上り分は一部の製品には価格転嫁を行いますが、原価率の上昇が避けられない状況も考えられます。当社グループはコストダウンに鋭意努力してまいりますが、今後素材価格が上昇する場合は利益を押し下げるリスクがあります。
(3) 海外製造拠点における製造不能リスク
当社は、タイ国に製造子会社を有しており、迅速流体継手、機械工具、リニア駆動ポンプの製品の一部を当該会社に製造委託しております。タイ国において、予期しない法律・規制の変更や政情不安・テロ・暴動・戦争及び自然災害・パンデミック等の不可抗力による事故が発生した場合は、当社への製品が一時滞ることになり、当社グループの業績に影響を与えるリスクがあります。
(4) 協力会社の確保リスク
当社グループは、協力会社に製造の一部を委託しております。当社グループは、今後とも協力会社を活用していく方針でありますが、必要な技術を保有する協力会社を確保できなくなった場合には、当社グループの業績に影響を与えるリスクがあります。
(5) 取引先の信用リスク
当社グループは、主に代理店を通じて販売しております。これらの取引先は、長年の取引がある企業が大半を占めており、社内規程(与信管理)に従って売掛債権の保全に努めて、リスクを最小限に抑えております。しかしながら、取引先に不測の事態が発生した場合には、売掛債権の貸倒れ損失及び販売ルートを一時的に失うことによる売上げ減少リスクがあります。
(6) 為替変動リスク
当社グループは、2026年3月期の為替レートを1米ドル145円、1英ポンド185円、1ユーロ160円、1タイバーツ4.20円、1豪ドル98円、1インドルピー1.75円と想定して予算を策定しております。
販売子会社がある米国、欧州、豪州、インドの通貨に対して、円安に振れると売上高・利益共に押し上げ効果があります。一方、海外製造子会社があるタイ通貨に対して円安に振れると、原価が上昇し利益を押し下げます。
通貨によって影響額が異なりますが、仮に米ドルの為替変動が他の通貨にも連動すると仮定した場合、変動が小幅なら海外販売子会社への売上げの影響と、海外製造子会社からの仕入れの影響が相殺されることにより、当社の利益に与える影響は軽微であります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績、及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概況は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、米国新政権の政策運営に起因する不透明感や、地政学リスクの高まりや金融引き締めの継続など、依然として先行きが不透明な状況が続きました。日本経済は、自動車の生産回復や賃上げの定着を背景に緩やかな回復基調を維持しましたが、エネルギー価格や材料費の高止まりによる影響が景気の下押し要因となりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産残高は、前連結会計年度末に比べて15億38百万円増加し666億5百万円となりました。
当連結会計年度末の負債残高は、前連結会計年度末に比べて5億29百万円増加し84億21百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産残高は、前連結会計年度末に比べて10億8百万円増加し581億83百万円となりました。
b.経営成績
当社グループは2024年4月から2027年3月までの3年間を実行期間とする「中期経営計画2026」を策定し、①収益力の強化と成長領域への投資拡大、②生産体制の最適化とコスト競争力の強化、③持続的成長実現に向けた経営基盤構築を解決すべき主要課題として掲げ、持続的成長を目指し、国内外の市場変化に対応するため、新技術・新製品の開発や経営基盤の強化に取り組むとともに、成長投資やDX、人的資本への投資を進め、産業界の発展、人々の豊かな暮らし、そしてサステナブルな社会の実現に向けて、活動を進めています。
本中期経営計画の初年度となる2025年3月期の業績は、国内と欧米市場での売上増加により、増収となりましたが、原価率の上昇および人件費の増加により減益となりました。
当連結会計年度の業績は以下のとおりです。
売上高 272億56百万円(前連結会計年度比 0.7%増収)
営業利益 23億42百万円(前連結会計年度比 12.6%減益)
経常利益 25億10百万円(前連結会計年度比 11.0%減益)
親会社株主に帰属する当期純利益 13億45百万円(前連結会計年度比 26.9%減益)
事業のセグメント別の業績は、次のとおりです。
[迅速流体継手事業]
迅速流体継手事業は、前期後半より好調であった産業機械向け製品の在庫調整による需要減少の影響を受けましたが、生成AIの普及に関連する半導体製造装置向け製品の需要増により、売上高は119億94百万円(前連結会計年度比0.9%の増収)となりました。利益面では、原価率の上昇および製品構成の影響により、営業利益20億67百万円(同13.6%の減益)となりました。
[機械工具事業]
機械工具事業は、国内外の売上げ減少により、売上高は86億5百万円(同2.6%の減収)となりました。利益面では、減収により、営業利益4億15百万円(同27.8%の減益)となりました。
[リニア駆動ポンプ事業]
リニア駆動ポンプ事業は、欧州でのブロワの需要回復により、売上高は43億65百万円(同4.3%の増収)となりました。利益面では、営業損失1億43百万円(前連結会計年度は2億32百万円の営業損失)となりましたが、増収、経費節減により損失幅が減少しました。
[建築機器事業]
建築機器事業は、国内外ともに物件受注が堅調に推移し、売上高は22億90百万円(同6.1%の増収)となりました。利益面では、増収により、営業利益2百万円(前連結会計年度は56百万円の営業損失)となりました。
海外売上高は、欧米での売上増加により、92億48百万円(前連結会計年度比1.0%の増収)となり、海外売上高の連結売上高に占める割合は33.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、定期預金の預入による支出137億67百万円、主として新工場建設に伴う有形固定資産の取得による支出47億91百万円、無形固定資産の取得による支出12億73百万円、親会社による配当金の支払い6億74百万円、棚卸資産の増加6億6百万円、法人税等の支払い5億21百万円等による減少があったものの、定期預金の払戻による収入134億51百万円、税金等調整前当期純利益23億40百万円、減価償却費12億70百万円等があったため、前連結会計年度末より53億76百万円減少し、当連結会計年度末には134億29百万円となりました。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は、27億9百万円(前連結会計年度比17.4%増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益23億40百万円、減価償却費12億70百万円等による資金の増加があったものの、棚卸資産の増加6億6百万円、法人税等の支払い5億21百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は、68億52百万円(前連結会計年度比1,957.0%増)となりました。これは、定期預金の払戻による収入134億51百万円等による資金の増加があったものの、定期預金の預入による支出137億67百万円、有形固定資産の取得による支出47億91百万円、無形固定資産の取得による支出12億73百万円等による資金の減少があったことによるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度における財務活動の結果使用した資金は、13億85百万円(前連結会計年度比63.0%減)となりました。これは、親会社による配当金の支払い6億74百万円、自己株式の取得による支出4億21百万円、リース債務の返済による支出2億87百万円等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
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迅速流体継手(百万円) |
10,745 |
96.2 |
|
機械工具(百万円) |
9,069 |
107.4 |
|
リニア駆動ポンプ(百万円) |
3,621 |
118.3 |
|
建築機器(百万円) |
2,788 |
117.8 |
|
報告セグメント計(百万円) |
26,224 |
104.7 |
(注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
(2) 受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(3) 販売実績
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
迅速流体継手(百万円) |
11,994 |
100.9 |
|
機械工具(百万円) |
8,605 |
97.4 |
|
リニア駆動ポンプ(百万円) |
4,365 |
104.3 |
|
建築機器(百万円) |
2,290 |
106.1 |
|
報告セグメント計(百万円) |
27,256 |
100.7 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
㈱山善 |
5,103 |
18.8 |
5,151 |
18.9 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産残高は、前連結会計年度末に比べて15億38百万円(前連結会計年度末比2.4%)増加し666億5百万円となりました。これは主に新工場建設に伴う建設仮勘定の増加39億25百万円、無形固定資産の増加11億82百万円、商品及び製品の増加6億61百万円、投資有価証券の増加4億73百万円、現金及び預金の減少48億52百万円等によるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債残高は、前連結会計年度末に比べて、未払法人税等の増加2億96百万円、買掛金の増加2億11百万円等により5億29百万円(前連結会計年度末比6.7%)増加し84億21百万円となりました。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産残高は、前連結会計年度末に比べて10億8百万円(前連結会計年度末比1.8%)増加し581億83百万円となりました。これは自己株式の減少47億16百万円、為替換算調整勘定の増加7億73百万円、利益剰余金の減少44億70百万円等によるものであります。
2) 経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、272億56百万円(前連結会計年度比0.7%の増収)となりました。期初の売上目標は282億40百万円を計画していましたが、前期後半より好調であった産業機械向け製品の在庫調整による需要減少により迅速流体継手事業が伸び切らず、また、機械工具事業の売上減少により、計画に比べて3.5%の減収になりました。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は、23億42百万円(同12.6%の減益)となりました。期初の営業利益目標は30億60百万円を計画していましたが、上記要因による減収に加え、中間期に連結子会社である栃木日東工器株式会社において過年度からの棚卸資産の過大計上が判明しましたが、期初計画には当該影響を織り込んでいなかったため、実態と乖離が生じ、計画に比べて23.5%の減益となりました。
売上高と営業利益の各製品セグメントの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
(経常利益)
当連結会計年度の経常利益は、25億10百万円(同11.0%の減益)となりました。期初の経常利益目標は31億60百万円を計画していましたが、計画に比べて20.6%の減益となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、13億45百万円(同26.9%の減益)となりました。期初の親会社株主に帰属する当期純利益目標は22億20百万円を計画していましたが、計画に比べて39.4%の減益となりました。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における世界経済は、米国新政権の政策運営に起因する不透明感や、地政学リスクの高まりや金融引き締めの継続など、依然として先行きが不透明な状況が続きました。日本経済は、自動車の生産回復や賃上げの定着を背景に緩やかな回復基調を維持しましたが、エネルギー価格や材料費の高止まりによる影響が景気の下押し要因となりました。
このような経営環境の中で当社グループは、2024年4月から2027年3月までの3年間を実行期間とする「中期経営計画2026」を策定し、①収益力の強化と成長領域への投資拡大、②生産体制の最適化とコスト競争力の強化、③持続的成長実現に向けた経営基盤構築を解決すべき主要課題として掲げ、持続的成長を目指し、国内外の市場変化に対応するため、新技術・新製品の開発や経営基盤の強化に取り組むとともに、成長投資やDX、人的資本への投資を進め、産業界の発展、人々の豊かな暮らし、そしてサステナブルな社会の実現に向けて、活動を進めています。
本中期経営計画の初年度となる2025年3月期の業績は、国内と欧米市場での売上増加により、増収となりましたが、原価率の上昇および人件費の増加により減益となりました。
なお、経営成績等の分析の具体的数値については、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及
びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況および②キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
直近、3年間の経営成績の推移は以下のとおりです。
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
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売上高(百万円) |
28,091 |
27,072 |
27,256 |
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営業利益(百万円) |
3,459 |
2,680 |
2,342 |
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営業利益率(%) |
12.3 |
9.9 |
8.6 |
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関わる情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、当社グループは、持続的な成長のための資金確保と自然災害等の不測の事態があっても顧客に商品を提供できるように内部留保の充実に努めており、研究開発、生産設備等の投資は自己資金での実施を原則としますが、成長投資のための投資は、適宜、借入の活用も検討します。
事業運営上必要な資金の流動性は、十分に確保しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。本連結財務諸表の作成にあたりましては、当連結会計年度末における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、ならびに当連結会計年度における収入・費用の報告数値に影響する様な重要な変動に関する事項の予見、予想等を行わなければなりません。将来に関する事項につきましては、本有価証券報告書提出日現在で過去の実績や状況に応じて合理的な基準に従って見積り及び判断したものであります。実際の結果は、見積り予測困難な不確実性があるため、これらの見積りと乖離する可能性がありますのでご留意下さい。
当社グループは、以下の会計上の見積りが連結財務諸表に重要な影響を及ぼすと考えております。
固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損について、主として営業活動から生ずる損益(翌連結会計年度以降の見通しを含む)及び土地等の市場価格に基づいて兆候の判定を行っています。減損の兆候があると判断した場合には、年度計画や中期経営計画における売上高及び営業利益の計画値等に基づき割引前将来キャッシュ・フローを見積ります。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、当社(日東工器株式会社)が行っております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
各セグメントの研究開発状況につきましては、以下のとおりであります。
(1) 迅速流体継手事業
迅速流体継手事業の研究開発は、当社カプラ開発統括部が担当し、半導体製造装置用や省エネルギー関係等新しい用途開発を行っております。当事業に係る研究開発費は、
(2) 機械工具事業
機械工具事業の研究開発は、当社機工開発統括部が担当し、工場環境関連や電機関連等の省人化・省力化製品の開発を行っております。当事業に係る研究開発費は、
(3) リニア駆動ポンプ事業
リニア駆動ポンプ事業の研究開発は、当社リニア開発統括部が担当し、圧縮空気応用技術による各種製品の開発を行っております。当事業に係る研究開発費は、
(4) 建築機器事業
建築機器事業の研究開発は、当社機工開発統括部が担当し、ドアクローザの開発を行っております。当事業に係る研究開発費は、