第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営の基本方針

当社グループは、経営の基本方針を「基本理念」として掲げており、その内容は次のとおりであります。

「公明正大」

内外の法およびその精神を遵守し、公正で透明な企業活動を実践する

「社会貢献」

各国、各地域の文化や慣習を尊重し、経済・社会の発展に貢献する

「環境保全、品質第一」

企業活動を通じて住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組むとともに、クリーンで安全な優れた品質の商品を提供する

「顧客優先、技術革新」

時流に先んずる研究と新たな価値の創造に努め、お客様に満足していただける商品・サービスを提供する

「全員参加」

労使相互信頼・自己責任を基本に、一人ひとりの個性と能力を伸ばし、全体の総合力が発揮できる活力ある企業風土をつくる

 

 

(2) 経営環境、対処すべき課題

今後の見通しにつきましては、世界中の多くの地域での金融・関税等の政策などに伴う景気後退の懸念や為替変動リスク、欧州や中東情勢をはじめとした地政学リスクは増大しており、その先行きは依然として不透明な状況が続いております。

他方、持続可能な社会の実現に向けた国際社会からの要請は多様化し、またIT・デジタル技術の進展などテクノロジーの分野における変化が著しいなか、当社の主要な事業である自動車、産業車両の分野においても、電動化、自動運転技術の進展や、IT・デジタル技術の活用による新規参入、業界構造の変化など、企業間の競争は厳しさが増しております。そのようななか、当社は物流ソリューション事業を軸に、モビリティ関連のモノづくりと結びついた総合力の発揮、次世代R&D等への挑戦を通じて、持続的な成長や企業価値の向上に取り組んでまいります。

一方で、当社は、2024年1月29日にエンジン国内認証に関する調査結果について公表、2月22日付で国土交通省から是正命令を受領し、それに対し3月22日に同エンジン認証問題の再発防止策を国土交通省へ報告し、その後、同省にご指導いただきながら全社をあげた取り組みを進めております。

当社は、「安全、安心な品質の製品」をお客様に提供し、社会に貢献し続けるという原点に立ち返り、正しいことを正しく行うための「風土」「しくみ」「組織/体制」の3つの改革をそれら再発防止策に落とし込み、引き続き、全員が心をひとつにして取り組み、豊田自動織機の再出発を果たしていくとともに、次に挙げる2点に取り組んでまいります。

 

(基本の再徹底)

経営の土台である法規遵守、コンプライアンスを徹底し、加えて、モノづくりにおける「安全第一、品質第二、生産第三」の優先順位を堅持してまいります。さらに、当社で働く一人ひとりが持てる力を発揮できるよう、心と体の健康増進やオープンで対等なコミュニケーション等を推進し、健全な職場、風土を作ってまいります。

(体質の変革)

世の中の動き・変化を的確に捉え、内外のリスクに対して早期に対応するとともに、各事業・部門の強みや弱みを把握し、より良く変えるために何をすべきかを自ら考え、全員参加で取り組んでまいります。

 

これらの取り組みを通じて、次の成長を確かなものとするための強固な経営基盤を築きあげてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが合理的な一定の前提に基づいて判断したものであり、その実現を約束する趣旨のものではありません。実際の結果は不確実性により変更される可能性があります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは取締役会の下位の会議体に、サステナビリティへの取り組みを含む経営ビジョンや中期経営戦略を扱うマネジメント・コミッティ、特定の専門分野を扱うサステナビリティ委員会、リスク管理委員会、コンプライアンス委員会、環境委員会を組織しております。

当社グループでは、「豊田綱領」(社是)および「基本理念」を実現していくことが、持続可能な社会への貢献であるとの認識のもと、「豊田自動織機グループサステナビリティ方針」に基づく全社の取り組みについて、方向性を決定し、活動計画の承認と実績の評価を行うことを目的に、サステナビリティ委員会を設置しております。

サステナビリティ委員会では、「サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)」をはじめとする、当社グループのサステナビリティ分野の課題やリスクについて、審議・決定し、必要に応じ、取締役会でも報告・審議しております。各部門や当社グループ各社は、それらを具体的な活動に落とし込み、推進しております。

リスク管理委員会では、当社グループとして対処すべきリスクを的確に捉え、未然防止や有事に適切に対処するため、全社として特に重点的に管理すべきリスクとしての重点リスクの策定、対策案の審議、進捗管理および有事対応の振り返りと改善計画の審議・承認などを行っております。コンプライアンス委員会では、当社グループ全体で、社会の一員としての倫理観や社会規範を重視したコンプライアンス活動が有効に機能するよう、全社コンプライアンス活動計画、「内部統制の整備に関する基本方針」の運用状況の確認、コンプライアンスに関する重大事案への対応状況および再発防止策の確認などを行っております。環境委員会では、当社グループの生産活動および製品に起因する環境負荷低減に対して、継続的に取り組み、地球環境の保全と経済の発展を両立した“環境経営”を推進するため、活動方針、環境目的など環境経営推進上の重要課題の審議や、活動状況の進捗確認、改善提案などに関する審議などを実施しております。

 

サステナビリティ委員会

開催頻度

(原則)1回/年

委員長

リスク統括担当役員

委員

会長、社長、副社長、事業部(室)長、事務統括、人事担当役員、経理担当役員、環境担当役員、技監、関係経営役員・執行職、常勤監査役、外部専門家

事務局

リスク統括部

審議内容

・世の中の動向を見据えたサステナビリティの方向性の決定

・サステナビリティの活動計画と目標値(中期・年度)の承認および活動実績の評価

・「豊田自動織機グループサステナビリティ方針」の見直し

 

 

コーポレート・ガバナンス体制図については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」を参照ください。

 

 

(2) 戦略

① 2030年ビジョンとサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)

当社グループは創業以来、社是である「豊田綱領」とそれに基づく基本理念の考え方である「住みよい地球と豊かな社会づくり」のもと、事業を通じて積極的に社会課題の解決に取り組んでまいりました。2030年に目指す姿である「2030年ビジョン」は、創業以来の事業「繊維機械」を原点として「自動車」「産業車両・物流」を両輪に事業展開し、社会と調和しながら、持続的に成長していく方向性を示しております。当社グループは、これからも社会のお役に立つとともに、持続的に成長することを目指して、取り巻く社会の変化や課題に真摯に向き合い取り組んでまいります。

 

(2030年ビジョン)


 

 

この2030年ビジョンに掲げる「住みよい地球と豊かな生活、そして温かい社会づくり」に貢献することを目指し、当社グループが事業を通じて持続可能な社会の実現に向けて取り組むべき特に重要な事項を次のとおりサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)として定義し、その解決に努めております。

 


 

 

② 気候変動

当社グループの経営方針、経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連の取り組みのうち、気候変動を重要な項目の1つとして位置付けております。気候変動のリスクと機会が当社グループに与える影響を把握するため、主要事業である産業車両事業についてシナリオ分析を実施しました。時間軸としては中期経営計画と長期環境ビジョンの2030年と2050年とし、選択したシナリオは移行リスクが顕在化する「2℃未満シナリオ」および物理リスクが顕在化する「4℃シナリオ」を設定しました。分析にあたり気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書「代表的濃度経路に関する将来シナリオ(RCP2.6、8.5シナリオ)」、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlookより「持続可能な開発シナリオ(SDS)」、「公表政策シナリオ(STEPS)」を参照しました。

 

(シナリオ分析前提条件)

 

分析条件

対象事業

産業車両事業

対象範囲

バリューチェーン

時間軸

2030年と2050年

シナリオ

2℃未満シナリオと4℃シナリオ

 

 

(各シナリオにおける当社グループを取り巻く社会像)

 

2℃未満シナリオ

4℃シナリオ

市場

物流量、輸送量増大、物流施設の分散化

・倉庫自動化、無人搬送車(AGV)、自律走行搬送ロボット(AMR)市場拡大

・電動、燃料電池フォークリフトの需要拡大

2℃未満の社会像に比べ影響は緩慢

政策・規制

・炭素税導入による操業費用や調達費用上昇

・気候変動の緩和に向けた新たな規制

・既存の規制強化

評判

・気候変動関連の情報開示要求強化

・ESG投資拡大

自然環境

4℃の社会像に比べ影響は緩慢

・慢性的な気温の上昇

・洪水の発生頻度増加

・海面上昇

 

 

 

これらのシナリオが事業に与えるリスクと機会のうち影響が大きなものを次の表のとおり抽出しました。その上で、例えば、気候変動緩和に向けた規制強化による売上減少のリスクや環境性能に優れた製品の需要拡大による売上増加の機会を特定し、サステナビリティ重要課題の目標として掲げ、事業戦略へ織り込んでおります。

 

(シナリオ分析による財務影響の評価)

 

短期、中期、長期の気候変動関連のリスクと機会、

想定される影響

リスク

移行リスク

(2℃未満)

・炭素税導入により操業費用が増加

・炭素税の価格転嫁により材料、部品の調達費用が増加

・気候変動の緩和に向けた新たな規制、既存の規制強化に

 よる内燃機関車需要減少に伴い売上が減少

・気候変動関連の情報開示が投資家に消極的と判断された

 場合、株式市場での評価が低下

物理リスク

(4℃)

・自然災害(大雨による冠水等)によるサプライヤーの操業

 停止や物流機能への被害により売上が減少

機会

・環境性能に優れた製品の需要拡大により売上が増加(電動化、水素燃料、

 バイオ燃料車両の拡大など)

・自然災害に対する強靭な物流の構築に向けた物流拠点分散化に伴う小型物流

 倉庫増加により売上が増加

・物流倉庫内の照明や空調からのCO排出量の低減を目的とした物流倉庫

 無人化により自動化製品の売上が増加

 

 

(リスクと機会への対応)

 

リスクと機会への対応

生産

・生産活動におけるCO排出量削減

・再エネの効率的な導入促進

・水素設備の実証導入

・水素サプライチェーンの構築に貢献

製品

・環境問題を含めた社会課題解決に貢献する新たな技術や製品の開発

・新たな物流自動化技術や製品の開発と販売拡大

・電動化関連製品の販売拡大

・クリーンで高品質な燃料電池ユニットおよび車載電池の提供

情報開示

・情報開示の充実、コミュニケーション強化

・グローバルスタンダードに準じたGHG算定

・第三者認証の取得

 

 

 

③ 人的資本

当社グループは、社是である「豊田綱領」を基盤に、従業員を最も大切な経営資本と位置づけ、価値創造を行ってきました。企業の持続的な成長を支え牽引するのは、一人ひとりの人材であります。その価値を高めることは、経営において最も重要な取り組みであり、これまでも、そしてこれからも変わることのない根幹の考え方であります。

事業環境の変化が激しい現代において、従業員一人ひとりが個性を活かし能力を高めることは、企業全体の総合力を引き上げる鍵であると考えております。その実現に向け、次の4つのテーマの人材戦略に基づき、人材育成と働く環境の整備に取り組んでおります。

 

 人材戦略

[1]経営人材の育成

[2]専門性・活躍領域の拡大

[3]多様な人材の活躍推進

[4]活躍を後押しする環境の整備


 

 

<人材の育成及び社内環境整備に関する方針および主な取組>

 

[1]経営人材の育成

  積極的なグローバル化やM&Aを行う中で、国内外の多様なリーダーの育成がより重要となっております。それを受け、将来の経営リーダー候補を対象としたリーダー研修を実施し、会社のビジョン・グループ共通の価値観の共有、革新を担う人材の早期・計画的育成をはかっております。

 

ⅰ) 価値観共有「創業の精神・豊田綱領セッション」

従業員の多様化を踏まえ、「当社グループ共通の価値観」の共有を目指し、社祖の創業の精神や「豊田綱領」を再認識する幹部職向け研修を国内外で実施しております。

ⅱ) サクセッションプラン

当社グループの部門長・拠点長等の後継者候補を特定し、異動経験を含む育成計画を策定・実施しております。求められる要件をグローバル共通で明確化し、育成について関係者で議論する場を年1回設けております。

ⅲ) グローバルリーダー育成プログラム

当社グループの幹部職からの選抜者を対象に個人課題と集合研修を組み合わせたプログラムを実施しております。経営者視点や未来を構想する力を高め、グローバルな成長を担う経営リーダーの育成に取り組んでおります。

ⅳ) 上級マネジメント研修

広い視野・高い視座・グローバル感覚を持ち、革新に向けたリーダーシップを備える人材育成のため、基幹職からの選抜者を対象に自主課題と集合研修を組み合わせたプログラムを実施しております。

ⅴ)北米・欧州リーダー育成プログラム

フォークリフト・物流ソリューション事業の成長を支える人材育成のため、米国で1年、欧州で半年の研修プログラムを実施しております。

 

[2]専門性・活躍領域の拡大

  一人ひとりの専門性・活躍領域の拡大が会社の競争力向上につながるという考えのもと、職場を越えた成長・活躍機会の提供、各職場におけるOJT(業務を通じた育成)とそれを補完する各種研修を実施しております。

 

職場を越えた成長・活躍機会の提供

ⅰ) 上司・部下間の対話、個別キャリアプラン

半期に一度、上司と部下が成長・活躍志向や能力の振り返りについて対話を行っております。対話を踏まえ個別キャリアプランを策定し、異動を含む育成を通じて、やりがいや成長を促進しております。

ⅱ)戻り前提ローテーション

他事業部・他部署での一時的ローテーションを実施し、異なる環境での経験を通じ個人の成長と組織力の向上をはかる仕組みを実施しております。

ⅲ)海外研修制度

グローバルに活躍できる人材を早期・継続的に育成するために、若手従業員を海外研修生として派遣し、現地での業務や生活を通じてコミュニケーション力、現地感覚、文化適応力を養成しております。

ⅳ)社内公募・社内副業

従業員が自ら希望し異動できる社内公募制度や、他部署の業務を経験できる社内副業制度により、やりがいの向上や成長への挑戦を後押ししております。

ⅴ)社内技能競技会・技能五輪への挑戦

社内技能競技会や技能五輪への挑戦を通じ、高度な技能と知識・人格を備えたリーダーの育成を推進し、従業員のモチベーション向上やものづくりの発展に貢献しております。

 

OJT(業務を通じた育成)と研修制度

ⅰ) 管理者向け研修

新任部室長・グループ長研修:職制としての役割理解や受講者間の相互啓発を目的とした集合研修を実施し、行動変容を促しております。

国内外関係会社役員研修:法務・経理・広報・人事・コンプライアンスといった取締役・執行職としての責任・役割について講義を行い、経営責任の自覚と遵守事項の理解・実践を促しております。

ⅱ)360度フィードバック

役職者(部長・室長・グループ長)が、直属上司以外の他者からフィードバックを受け、自身の強み・弱みを認識して行動を見直し、更なる成長につなげる施策を実施しております。

ⅲ)職場先輩制度・部門長面談(新入社員向け)

新入社員には職場先輩が付き、社会人としての基礎習得と職場融和をはかっております。配属1年後には、部門長との面談を行い、困りごとの解消や成長に向けた期待値の伝達を行っております。

ⅳ)階層別研修

昇格者に対し、各階層の役割や必要となる知識・スキルの理解、職場での実践をねらいに、eラーニングと集合研修を実施しております。これらの研修は、国内関係会社従業員も受講できるものとなっております。

ⅴ) 品質教育

当社グループでは、全従業員を対象に、実務で必要な品質保証スキルを身につけるため、体系化された品質教育を実施しております。コンプライアンスが土台であることを認識した上で、自ら考え、自ら学び、自ら行動することができる人材の育成を推進しております。その一環として、SQC(統計的品質管理)と機械学習の基礎教育などを実施し、機械学習の実践活用を拡大するため、職場の問題解決を通じた中核人材の育成をしております。また、技能系職場を対象にQCサークル活動に全員参加で取り組んでおり、それらの成果として、全国のQCサークル大会で発表し多くの賞を受賞しております。海外生産拠点でもQCサークル活動に活発に取り組んでおり、各拠点にグローバルQCサークルトレーナーを育成、認定して、自律した活動ができるよう指導しております。さらに、創意工夫提案の取り組みでは、全員が日々改善に取り組んでおります。

ⅵ)その他の取り組み

技術者の基礎レベル底上げ・成長加速をねらいとした基礎技術講座・ステップアップ講座や、デジタル技術を理解し活用できる人材の育成をねらいとしたデジタル教育を実施しております。また、従業員の自ら学ぶ姿勢を後押しするため自己啓発制度を通じ、現在の業務への関係性を問わず幅広く学ぶ機会を提供しております。

 

[3]多様な人材の活躍推進

 環境変化やお客様ニーズの多様化に柔軟に対応し新たな価値を生み出すために、さまざまな考え、価値観を持つ人材が最大限能力を発揮し、共創できる組織を目指しております。性別、年齢、国籍、人種、宗教、性的指向、性自認、性表現、 障がい、経験、価値観など目に見えない違いも含め、従業員が互いの違いを認め合い、尊重し合う組織風土の実現に向けた取り組みを進めております。

 

ⅰ)女性活躍推進

性差なく活躍できることを目指し、従業員の意識改革、女性キャリア支援、柔軟な働き方の推進等を実施しております。また、女性特有の健康課題に関する動画配信や相談窓口の設置等の取り組みを行っております。各種取り組みの結果、「えるぼし認定」や「あいち女性輝きカンパニー優良企業表彰」を受賞しました。

(女性活躍推進の取り組み)


ⅱ)障がい者採用、活躍の促進

採用前に就労体験を行い、より安心して入社できる機会を提供しております。入社後は、公平な成長・活躍機会が得られるよう、研修時の手話通訳士の派遣、ブギーボードやUDトーク(リアルタイムに発言を文字化するアプリ)等、各種支援ツールの活用や工場総務、独身寮、人事部などに相談員を設置し、職場をサポートする体制を構築しております。また、障がい者自身を講師に招いた研修を実施し、障がい者に対する理解をより深め、職場風土の醸成をはかっております。

ⅲ)年齢によらず活躍し続ける環境整備

技能職高年齢者の増加に対応し、身体的負担を軽減したラインづくりや高年齢者に配慮した作業基準の設定、デジタル技術の活用等の工程改善を進め、働きやすい環境づくりを進めております。

ⅳ)海外の仲間との相互理解促進

多様な国・地域で働く人材が相互理解を深めることを目的として、海外拠点へ出向者、駐在員、海外研修生を派遣しております。さらに、海外拠点の従業員が当社で一定期間勤務するICT制度(Intra Company Transferee)を積極的に活用し、外国人人材の受け入れを進めております。

ⅴ)キャリア採用の強化

外部から多様な知見を取り入れるため、キャリア採用を強化しております。事務・技術職では、従来の専門性に特化した採用に加え、第二新卒やリファラル採用(自社の従業員に採用候補者を紹介してもらう採用方法)を導入しております。生産現場では、優秀な人材の確保による安定生産に向け、期間従業員からの正社員登用を積極的に進めております。

 

[4]活躍を後押しする環境の整備

 従業員がそれぞれのライフステージにおいて、自分らしく能力を発揮しやりがいを感じられるよう、支援の充実に取り組んでおります。また、毎年実施する従業員意識調査の結果をもとに、職場改善活動を進め、組織の成長につなげております。加えて、設備や制度の両面から従業員が安心して働ける環境を整備し、さらなる活躍を後押ししております。仕事を離れた場面においても、家族を含めた交流の場を定期的に提供し、人間関係や信頼関係づくりをサポートしております。

 

ⅰ) 仕事と家庭の両立支援

育児支援:短時間勤務制度(子が小学校卒業まで)、託児所設置、学校行事への参加にも対応可能な子の看護公休、不妊治療に関する公休や資金支援等を整備しております。育休復職前には、本人・上司・人事総務部門の三者で面談を行い、復帰時の不安解消にも取り組んでおります。

介護支援:732日の介護休職期間や分割取得の上限撤廃等、法定を超える制度を設け、ハンドブックや動画配信、メールマガジンによる知識普及や職場風土の醸成を進めております。

これらの取り組みにより「プラチナくるみん認定」や「愛知県ファミリーフレンドリー企業表彰」を受賞しました。

ⅱ)男性の育児参画支援

男性の育児参画を支援するため、育児支援制度や男性育休取得者の体験談紹介、パタニティハラスメント防止に向けた上司向け研修など育休の申し出をしやすくするための風土醸成に取り組んでおります。

ⅲ)柔軟な働き方の整備

柔軟な働き方の実現に向け、コアタイムのないフレックスタイム制度や在宅勤務制度、裁量労働制度等を導入しており、各人のライフスタイルに合わせ、高い生産性を発揮できる働き方の選択肢を整えております。

ⅳ)メリハリある働き方の推進

法令に基づいた労務管理を徹底し、長時間労働の抑制に取り組んでおります。有給休暇の取得奨励により、取得率は94%(24年度)を達成しております。寮・社宅の新築や自社所有の保養所、従業員向けレストラン等を擁した福利厚生施設を運営し、プライベートの充実や従業員の健康維持と活力向上をはかっております。

ⅴ)従業員意識調査

職場改善を目的に、全従業員対象の調査を毎年実施しております。結果は全従業員に公開し、職場改善に向けた取り組みを部門長が責任者となり部員全員で取り組んでおります。

ⅵ)仕事を離れた場面での人間関係・信頼関係づくり

人間関係・信頼関係づくりを後押しするため、様々なコミュニケーション活動に注力しております。会社が職場の親睦会費用の一部を負担し、従業員同士が交流を深めるきっかけとして活用しております。お祭りや全社駅伝大会等のコミュニケーション活動を通じて、従業員同士の相互理解を深め、当社グループ全体の一体感醸成に努めております。

 

(3) リスク管理

本的な考え方

当社グループはリスク管理について、次の項目を基本として取り組んでおります。

・リスクの未然防止や低減への取り組みを日々の業務の中に織り込み、その実施状況をフォローすること。

・リスクが顕在化した場合には、迅速かつ的確な緊急対応により、事業や社会への影響を最小化するための適切な行動を徹底していくこと。

 

推進体制

当社グループは毎年、安全、環境、品質、人事労務、輸出取引、災害、情報セキュリティなどにおけるリスクの未然防止や低減への取り組みを、各事業部および本社各部門の活動方針に織り込み、推進しております。その実施状況については、機能別の会議体であるリスク管理委員会や環境委員会などで評価、フォローしております。

リスク管理委員会ではリスク統括責任者を中心に、重点リスク(全社として特に重点的に管理すべきリスク)を策定し、各機能会議体での対策案の審議や進捗管理、複数の機能にわたる新たなリスクへの対策につなげる活動を推進しております。こうした重点リスクへの対応を含め、各事業部および連結子会社のリスク管理レベルの向上を支援するため、本社の安全、環境、品質などの各機能部門は、連結子会社を含むグループ全体的な視点で規則やマニュアルを制定し、業務監査や現場点検などで確認、フォローを行っております。

気候関連リスクをはじめとするサステナビリティ分野の課題やリスクについては、当社グループのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)として明確に定義した上で、管理指標や目標を明確にし、各委員会の中で定期的にモニタリングを行っております。

 

 

(4) 指標および目標

① サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)

当社グループはサステナビリティに関するリスクを緩和し機会を拡大するため、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)において、各分野での取り組み目標と活動、および中期目標値を設定し、活動を推進しております。なお、表中の「(単独)」の表記は、その取り組み目標と活動、および目標値が当社グループではなく当社のものであることを示しております。

サステナビリティ

重要課題

取り組み方針

取り組み目標と活動

目標値

達成年度

・地球温暖化防止

・循環型社会への貢献

 



生産活動における

CO排出量削減

生産CO排出量の削減 総排出量

△25% ※1

(2013年度比)

2025年度

再生可能エネルギーの導入 導入率

15%

2025年度

生産物流における

CO排出量削減

物流CO排出量の削減 排出量原単位

(単独)

△11%

(2013年度比)

2025年度

製品技術開発によるCO排出量削減

エネルギー効率のさらなる向上に寄与する技術開発

生産活動における

資源の有効活用

廃棄物排出量削減 排出量原単位

(単独)

△12%

(2013年度比)

2025年度

各国/各地域の水環境事情を考慮した水保全活動の推進

資源を有効に利用するため、3R設計

(リデュース、リユース、リサイクル)への取り組み

資源使用量削減と部品、素材のリユース、リサイクル推進

・新たな価値の創出

 


・新たな価値を創出する新技術の開発促進

 

・コア技術の伸長とともに、パートナーの新たな知見獲得による、既存ビジネスの周辺領域への拡大、新事業領域での技術や商品を開発、提供

・電動化、自動化の研究開発費比率

70%以上

2030年度

・周辺領域や新事業領域の拡大 売上額

1兆円超

2030年度

-環境問題を含めた社会課題解決に

貢献する新たな技術や商品の開発

-新たな物流自動化技術や商品の開発と販売拡大(産業車両事業)

 自動化商品売上(伸び率)

倍増(100%)

(2020年度比)

2030年度

 

 

サステナビリティ

重要課題

取り組み方針

取り組み目標と活動

目標値

達成年度

・安全・安心、快適な商品・サービスの提供

・地域社会への貢献と共生

 


・高機能で環境にやさしく、社会インフラにも活用可能な電動化関連商品やサービスの拡大

 

・高品質で安全な商品やサービスの提供と、そのための体制の維持向上

 

・社会の一員として、地域に根差し、ともに発展できる活動の継続的な推進

・電動化関連商品の販売拡大(全事業)

 売上高に占める電動化関連商品の比率

 

-静粛性、快適性に優れた高効率で省電力な電動コンプレッサーの提供(自動車事業)

-クリーンで高品質な燃料電池ユニットおよび車載電池の提供

(自動車事業、産業車両事業)

-災害時など社会インフラにも活用可能な、車載を含めた電源関連商品の提供(自動車事業)

70%以上

2030年度

・製品リスクアセスメント実施(対象製品) 実施率(単独)

100%

2030年度

・品質教育の推進

 対象者の研修受講率(単独)

100%

2030年度

・社会貢献活動の推進 支出額/参加数

-地域の生物多様性保全への寄与

-その他の地域貢献活動推進

 

 

 

 

・安全・健康な職場

・多様な人材の活躍

・持続可能な調達

・コンプライアンスとリスク管理

・誰もが安全、健康で働ける職場づくり

 

・誰もが機会均等に持てる力を伸ばし、発揮できる環境づくり

 

・社会から信用、信頼され、必要とされる存在であり続けるための基盤確立

・重大災害の撲滅

-重大災害件数

-休業災害度数率(単独)

 

0件

0.00

 

2030年度

2030年度

・多様な人材の活用

-女性管理職比率(単独)

-障がい者雇用率(単独)

 

3.6%

2.7%超

 

2030年度

2026年度

・サプライチェーン全体の健全な取引維持と体制強化

-対象サプライヤーへのサステナビリティチェック実施率(単独)

 

100%

 

2030年度

・重大コンプライアンス違反の撲滅

 違反件数

 

0件

 

2030年度

・リスクベースでの適正なリスク管理活動の推進

-BCPの実効性向上

-サイバーセキュリティリスク対応

重大インシデント件数

0件

2030年度

 

(注)1 ※1 挑戦目標として、2030年度に2013年度比△50%。

2 最新の取り組み方針、取り組み目標と活動、目標値などにつきましては、下記リンク先「サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)」に記載の「事業を通じた社会課題の解決に関する取り組み方針・目標・実績」および「事業活動の基盤に関する取り組み方針・目標・実績」を参照ください。下記リンク先は毎年8月頃に更新をしております。

https://www.toyota-shokki.co.jp/sustainability/management/materiality/index.html

 

② 気候変動

気候変動に関する指標および目標は、「① サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)」に含めております。

 

 

③ 人的資本

人的資本に関する指標および目標は、以下のとおりであります。

 

 

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合(単独)

2030年度まで3.6

2.2

障がい者雇用率(単独)

2026年度まで2.7

2.68

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの財政状態、経営成績および株価などに影響を及ぼす可能性のあるリスクとしては、以下のようなものがあります。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) コンプライアンスリスク

当社グループは、コンプライアンスの徹底を事業活動の大前提であり経営の最重要課題の一つと位置付け、国内外の法令遵守はもちろん社会規範に則して事業活動を遂行すべく、体制整備や役員と従業員への教育、啓発などを推進し、コンプライアンスリスクの回避または最小化に努めておりますが、当社グループにおいて重大な法令違反などが発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜やブランドイメージの毀損など、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 主要な販売先

当社グループは、車両およびエンジンなどの商品を主にトヨタ自動車株式会社に販売しており、当連結会計年度の販売額は当社グループの総売上高の12.9%となっております。そのため、同社の自動車販売動向によっては経営成績に影響を受ける可能性があります。なお、同社は、当連結会計年度末現在、当社の議決権の24.6%を所有しております。

 

(3) 商品開発

当社グループは、「魅力ある新商品の開発」という考えのもとに、年々高度化、多様化する市場のニーズを先取りし、お客様の満足が得られるよう、先進技術を導入した積極的な新商品開発を進めております。その主な活動は、現在の事業分野および周辺事業分野での開発、改良であります。この分野での収益が、引き続き、当社グループの収益の大部分を占めると考えており、将来の成長は主にこの分野での新商品の開発と販売に依存すると予想しております。当社グループは、継続して魅力ある新商品を開発できると考えておりますが、「新商品への投資に必要な資金を今後十分充当できる保証はないこと」「市場に支持される新商品を正確に予想できるとは限らず、商品の販売が成功する保証はないこと」「開発した新商品や技術が、知的財産権として必ず保護される保証はないこと」などのリスクをはじめとして、当社グループが市場のニーズを予測できず、魅力ある新商品のタイムリーな開発と市場投入ができない場合には、将来の成長を低下させる可能性があります。

 

(4) 知的財産権

当社グループは、事業活動を展開する上で、製品、製品のデザイン、製造方法などに関連する特許などの知的財産権を、海外を含め多数取得しておりますが、出願したものすべてが権利として登録されるわけではなく、特許庁で拒絶されたり、第三者からのクレームにより無効となる可能性があります。第三者が当社グループの特許を回避して競合製品を市場に投入する可能性もあります。また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、第三者の知的財産権に関する訴訟の当事者となる可能性があります。

 

(5) 商品の欠陥

当社グループは、「クリーンで安全な優れた品質の商品を提供すること」を経営の基本理念のひとつとし、総力をあげて品質向上に取り組んでおります。しかし、すべての商品に欠陥がなく、将来にリコールや製造物責任賠償が発生しないという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような商品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を及ぼし、売上や利益の減少、株価の低下などをまねく可能性があります。

 

 

(6) 価格競争

当社グループの収益基盤である自動車事業、産業車両事業をはじめ、各業界における競争は厳しいものとなっております。当社グループの商品は、技術的、品質的、コスト的に他社の追随を許さない高付加価値な商品であると考えておりますが、激化する価格競争の環境下で、市場シェアを維持もしくは拡大することによって収益性を保つことができなくなる可能性があります。このような場合は、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 原材料、部品供給元への依存

当社グループの生産は、原材料、部品を複数の供給元に依存しております。当社グループは供給元と基本取引契約を結び、原材料、部品の安定的な取引を安定的な生産の前提としておりますが、供給逼迫による世界的品不足や供給元の不慮の事故などにより、原材料、部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、生産の遅れをまねき、また、原価を上昇させる可能性があります。

 

(8) 環境規制、気候変動

当社グループでは、企業の社会的責任の観点から、環境への負荷の低減および適用される法規制遵守に取り組んでおります。具体的には環境規制に適合した商品開発および環境負荷物質の発生を低減する生産工程設計に努めております。しかし、環境に関するさまざまな規制は、今後も改正、強化される傾向にあり、その対応に失敗した場合には、商品の売上の減少、生産量の限定など、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。気候変動によるリスクについては、脱炭素社会への移行リスクとして、気候変動に伴う上述のような環境規制などの改正、強化のほか、物理リスクとして、洪水等の異常気象の深刻化と頻度の上昇が想定され、工場の停止やサプライチェーンの分断により、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 他社との提携

当社グループは、事業の拡大などを目的として、提携や合弁などの形で他社との共同による事業活動も行っております。しかし、業界の属するマーケットの変動が激しい場合、あるいは経営、財務およびその他の理由により両者の間で方針の不一致が生じた場合は、効果を享受できない場合があります。

 

(10) 為替レートの変動

当社グループの事業には、全世界における商品の生産と販売、サービスの提供が含まれております。一般に、他の通貨に対する円高(特に当社グループの売上の重要部分を占める米ドルおよびユーロに対する円高)は当社グループの事業に悪影響を及ぼし、円安は好影響をもたらします。当社グループが日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。このような可能性を低減するために、原則として先物為替予約などのデリバティブ取引を利用して、為替変動リスクをヘッジしております。

 

(11) 株価の変動

当社グループは、有価証券を保有しており、その多くが上場株式であるため、株価変動のリスクを負っております。各期末日の市場価額に基づき、当社グループは評価差益を認識しておりますが、有価証券に係る評価差益は将来の株価の変動によって減少する可能性があります。また、株価の下落は年金資産を減少させ、年金の積立不足を増加させる可能性があります。

 

 

(12) 災害や停電などによる影響

当社グループは、製造ラインの中断によるマイナス影響を最小化するため、生産設備の定期的な検査、点検を行っております。しかし、当社グループならびに仕入先の生産施設で発生する人的災害、自然災害、停電などの中断事象による影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。特に、南海トラフ巨大地震などの大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの国内工場や、仕入先などの取引先の多くが所在する中部地区において、生産、納入活動が遅延、停止する可能性があります。遅延、停止が長期間にわたる場合、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。このような可能性を低減するために、原材料や部品の供給を受ける地域の分散による代替供給手段の確保など、サプライチェーンの最適化に向けて仕入先とともに対策に取り組んでおります。

 

(13) 国際的な活動に潜在するリスク

当社グループは、さまざまな国で原材料や部品の調達、商品の生産と販売、サービスの提供を行っております。その国々における予期しない政治的要因、テロ、戦争、感染症の流行などの社会的混乱、経済状況の変化などに加え、移民労働や原材料調達に関連する人権保護が適切に遂行されない場合に発生するレピュテーションリスクにより、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 情報セキュリティリスク

当社グループは、さまざまなグループ内ネットワークや情報システムを使用しております。これらの社内ネットワークやシステムに対してはセキュリティ対策を講じるとともに、社内への情報セキュリティに関する教育や訓練を通じ、情報資産の保護をはかっているほか、適正な運用の定着に取り組んでおります。他方で、サイバー攻撃などの脅威は増大しており、想定を大きく超えるランサムウェア攻撃やその他のサイバー攻撃などを受けた場合には、生産、納入活動が遅延や停止、機密情報漏洩などの可能性があり、その結果、競争力やレピュテーションが低下し、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) エンジン認証問題

国内市場向けの産業車両用エンジンの複数機種について、認証手続き上の法規違反が2023年に判明し、国土交通省より、一部製品の型式指定・認定の取消および是正命令を受けました。また、北米および国内市場向けエンジンの認証問題については、現在も調査が進められており、関係各所との協議を継続しております。さらに、2024年9月には、当該問題に関連する不適切な行為を理由として、米国で集団訴訟が提起されました。これらに関連して、当社ブランドの信頼性低下や補償・訴訟関連費用等が発生するおそれがあり、その結果、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、以下の経営成績等は、IFRSに準拠した連結財務諸表に基づいて記載しております。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当期の経済情勢を概観しますと、世界経済はインフレ鎮静化を背景に緩やかな成長を持続したものの、欧州や中東情勢をはじめとした地政学リスク、各国の政策動向などによる不透明感が強まりました。また、日本経済は、賃上げや企業の設備投資意欲が継続するなど経済に前向きな動きはありましたが、緩やかな回復にとどまりました。このような情勢のなかで、当社グループは、品質優先を基本に、お客様の信頼におこたえしますとともに、各市場の動きに的確に対応して、販売の拡大に努めてまいりました。

その結果、当連結会計年度の売上高につきましては、前連結会計年度を2,517億円(7%)上回る4兆849億円となりました。

利益につきましては、人件費の増加、減価償却費や研究開発費を含む諸経費の増加などがありましたものの、売上の増加、為替変動による影響、国内エンジン認証関連費用の減少などにより、営業利益は前連結会計年度を212億円(11%)上回る2,216億円、税引前利益は前連結会計年度を423億円(14%)上回る3,514億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度を336億円(15%)上回る2,623億円となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

(自動車)

自動車におきましては、市場は欧州や北米などで低迷し、世界全体で縮小しました。こうしたなかで、当セグメントの売上高は前連結会計年度を638億円(6%)上回る1兆1,602億円となりました。営業利益は前連結会計年度を268億円(147%)上回る450億円となりました。

このうち車両につきましては、トヨタ「RAV4」が国内、海外向けともに減少したものの、部品出荷の増加などにより、売上高は前連結会計年度を17億円(2%)上回る1,025億円となりました。

エンジンにつきましては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンが増加したことにより、売上高は前連結会計年度を153億円(5%)上回る3,461億円となりました。
 カーエアコン用コンプレッサーにつきましては、販売台数は減少したものの、電動コンプレッサーの増加や為替変動による影響により、売上高は前連結会計年度を148億円(3%)上回る4,809億円となりました。
 電子機器ほかにつきましては、電池やDC-DCコンバーターなどが増加したことにより、売上高は前連結会計年度を320億円(16%)上回る2,305億円となりました。

 

(産業車両)

産業車両におきましては、市場は欧州やアジアで拡大し、世界全体で小幅に回復しました。そのなかで、主力のフォークリフトトラックが北米や欧州で減少したものの、値上げ効果や為替変動による影響により、売上高は前連結会計年度を1,991億円(8%)上回る2兆7,863億円となりました。営業利益は前連結会計年度を11億円(1%)上回る1,667億円となりました。

 

(繊維機械)

繊維機械におきましては、市場は主力市場であるアジア地域を中心に、低調に推移しました。こうしたなかで、紡機や繊維品質検査機器が減少したことにより、売上高は前連結会計年度を134億円(14%)下回る799億円となりました。営業利益は前連結会計年度を55億円(69%)下回る25億円となりました。

 

 

資産につきましては、主に投資有価証券の評価額が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ1兆6,750億円減少し、9兆4,034億円となりました。負債につきましては、主に繰延税金負債が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ5,369億円減少し、4兆3,882億円となりました。資本につきましては、前連結会計年度末に比べ1兆1,381億円減少し、5兆152億円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益を3,514億円計上したものの、法人所得税の支払額が2,138億円あったことで、1,715億円の資金の増加となりました。前年同期の4,435億円の増加に比べ、2,720億円の減少となりました。また、投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入が5,086億円あったものの、定期預金の預入による3,485億円の支出や、有形固定資産の取得による2,110億円の支出があったことで、434億円の資金の減少(前年同期は479億円の資金の増加)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による1,376億円の収入があったものの、長期借入金の返済による支出が1,337億円あったことや、自己株式の取得による支出が1,091億円あったことで、1,986億円の資金の減少となりました。前年同期の2,094億円の減少に比べ、108億円の増加となりました。

これらの増減に加え、換算差額、売却目的で保有する資産への振替に伴う現金及び現金同等物の増減額、期首残高を合わせますと、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,784億円となり、前連結会計年度末に比べ1,184億円(24%)の減少となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

ⅰ) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

自動車

1,160,323

5.9

産業車両

2,816,451

5.9

繊維機械

77,641

△16.9

その他

58,367

3.9

合計

4,112,784

5.3

 

(注)  金額は販売価格によっており、セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。

 

ⅱ) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

産業車両

2,739,640

△1.4

1,509,279

△3.0

繊維機械

71,026

△33.4

25,812

△56.4

その他

58,892

9.3

823

128.8

合計

2,869,559

△2.4

1,535,915

△4.9

 

(注)  自動車セグメントにつきましては、トヨタ自動車株式会社および株式会社デンソーから生産計画の提示を受け、生産能力を勘案し、見込生産を行っているため、記載を省略しております。

 

 

ⅲ) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

自動車

1,160,238

5.8

産業車両

2,786,321

7.7

繊維機械

79,994

△14.3

その他

58,428

3.9

合計

4,084,984

6.6

 

(注) 1 セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

491,409

12.8

527,194

12.9

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要性がある会計方針および見積り

当社グループにおける重要性がある会計方針および見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記 2.作成の基礎 (4) 見積りおよび判断の利用」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記 3.重要性がある会計方針」を参照ください。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の売上高につきましては、前連結会計年度を2,517億円(7%)上回る4兆849億円となりました。利益につきましては、営業利益は前連結会計年度を212億円(11%)上回る2,216億円、税引前利益は前連結会計年度を423億円(14%)上回る3,514億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度を336億円(15%)上回る2,623億円となりました。

 

(売上高)

売上高の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(営業利益)

営業利益の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(税引前利益)

税引前利益は、前連結会計年度を423億円(14%)上回る3,514億円となりました。これは、主に営業利益が前連結会計年度を212億円(11%)上回る2,216億円となったことによります。

 

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度を336億円(15%)上回る2,623億円となりました。基本的1株当たり当期利益は、前連結会計年度の736円86銭に対し、856円96銭となりました。

 

 

 当社グループの資本の財源および資金の流動性については、次のとおりであります。

 

(資金需要と株主還元)

当社グループの資金需要の主なものは、研究開発、設備投資、M&Aなどの長期資金需要と当社グループの製品製造のための材料および部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金需要であります。

当社グループは研究開発および設備投資に資金を重点的に配分するほか、事業の拡大、持続的発展に資すると判断する場合にはM&A等の投資にも資金を配分する方針であります。

株主還元につきましては、連結配当性向30%程度を目安に配当額を決定しております。配当政策に関する詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」を参照ください。

 

(財務政策)

当社グループは、事業活動のための適切な資金調達、適切な流動性の維持および健全な財政状態の維持を財務方針としております。

当社グループの財務状況は引き続き健全性を保っており、現金及び現金同等物、有価証券などの流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、社債の発行と金融機関からの借入れによる調達などを通じて、現行事業の拡大と新規事業の開拓に必要な資金を十分に提供できるものと考えております。

当社グループは、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社、ムーディーズ・ジャパン株式会社および株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、有利な条件での資金調達を実現するため、格付の維持、向上につとめております。

当社グループの資金マネジメントにつきましては、日本国内におきましては、当社が国内子会社を対象に資金集中管理を実施しており、北米におきましては、トヨタ インダストリーズ ノース アメリカ株式会社(以下、「TINA」という。)が北米の子会社の資金集中管理を実施しております。また、欧州におきましては、トヨタ インダストリーズ ファイナンス インターナショナル株式会社(以下、「TIFI」という。)が、欧州の子会社の資金集中管理を実施しております。

当社とTINA、TIFIが緊密な連携をとることにより、資金効率の向上をはかっております。

 

 

5 【重要な契約等】

(トヨタ不動産株式会社との間の「公開買付けに係る合意書」の締結)

 当社は、2025年6月3日開催の取締役会において、トヨタ不動産株式会社(以下、「トヨタ不動産」という。)が今後設立する株式会社(以下、「公開買付者」という。)による当社の普通株式に対する公開買付け(以下、「本公開買付け」という。)に関して、同日時点における当社の意見として、本公開買付けが開始された場合には、本公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、本公開買付けに応募するか否かについては、当社の株主の皆様のご判断に委ねる旨を決議し、当社株式を非公開化することを目的とする本公開買付け及びその後に実施する一連の取引等(以下、「本取引」という。)に関し、同日付でトヨタ不動産との間で、本公開買付け開始の前提条件、トヨタ不動産及び公開買付者並びに当社の表明保証事項、当社の義務、トヨタ不動産及び公開買付者の義務、並びに契約終了事由を定めた「公開買付けに係る合意書」(以下、「本合意書」という。)を締結いたしました。本合意書には、株主による議決権の行使に制限を定める旨の合意及び株主総会又は取締役会において決議すべき事項について株主の事前の承諾を要する旨の合意が含まれ、当該合意に係る以下の項目の内容は次のとおりであります。

 

(1) 本合意書を締結した年月日

  2025年6月3日

 

(2) 本合意書の相手方の氏名又は名称及び住所

  トヨタ不動産株式会社

名称

トヨタ不動産株式会社

本店の所在地

愛知県名古屋市中村区名駅四丁目7番1号

 

 

(3) 当該合意の内容

  当社は、トヨタ不動産との間で、以下の合意を含む本合意書を締結しております。

 

 ① 株主による議決権の行使に制限を定める旨の合意

 本取引の一環として、本公開買付けが成立し、その決済が完了することを前提として実施されるトヨタ自動車株式会社(以下、「トヨタ自動車」という。)による自己株式の公開買付けが成立し、その決済が完了した場合には、当社は、本株式併合(本公開買付けの結果、公開買付者が当社株式の全て(トヨタ自動車が所有する当社株式及び当社が所有する自己株式を除く。)を買い付けることができなかった場合に、当社の株主を公開買付者及びトヨタ自動車のみとするため、その他の当社の株主が保有する当社株式の数が1株に満たない端数となる株式併合をいう。以下同じ。)の効力発生後、分配可能額規制その他の法令等の規定上許容される範囲において、実務上可能な限り速やかに、本株式併合の結果、トヨタ自動車が保有する当社株式の全てを取得する(以下、「本自己株式取得」という。)ため、本自己株式取得の実行日の前日までに、株主総会を開催し、本自己株式取得を実施することに係る議案を上程するものとし、トヨタ不動産及び公開買付者は、自ら又は公開買付者をして、当該各議案に賛成する議決権の行使を行い、又は行わせるものとされております(会社法第319条第1項に基づく全株主の同意により株主総会の決議があったものとみなすことを含む。)。

 

 ② 株主総会若しくは取締役会において決議すべき事項について株主の事前の承諾を要する旨の合意

 当社は、本合意書締結日から本株式併合の効力発生日までの間、自ら又は他の当社グループに属する会社をして、従前の慣行に従った通常の業務の範囲内において、その業務を遂行し、又は遂行させるものとし、かつ、当社は、本合意書に明示的に定める事項及びトヨタ不動産又は公開買付者が事前に書面により同意した事項を除き、自ら又は他の当社グループに属する会社をして、以下に掲げる行為を行わず、又は行わせないものとされております。

(a) 定款の変更

(b) 剰余金の配当その他の処分(当社が2025年3月末を基準日として実施する1株あたり140円を上限とする期末配当を行う場合及び当社の完全子会社をして剰余金の配当その他の処分を行わせる場合を除く。)又は自己株式の取得(単元未満株式の買取請求に応じる場合を除く。)

(c) 株式又は株式を取得できる証券若しくは権利の発行、処分又は付与(単元未満株式の売渡請求に応じる場合を除く。)

(d) 株式の分割若しくは併合又は株式若しくは新株予約権の無償割当て

(e) 合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付、事業の全部又は重要な一部の譲渡又は譲受け(但し、当社又はその完全子会社のみが当事者となるものを除く。)

(f) 重要な子会社の株式の譲渡、取得その他重要な子会社の異動を伴う行為

(g) 資本金又は準備金の増減を伴う行為

(h) 解散、清算又は倒産手続等の開始の申立て

(i) 会計方針の重要な変更

(j) 新たな借入又は社債の発行その他金融負債の負担(本公開買付けに係る公開買付期間の末日までの間においては、専ら既存の金融負債の借換えのために行われるもの及び軽微なものを除く。)

(k) 訴訟等の提起又は取下げ、認諾、放棄若しくは和解その他の訴訟等(1件当たりの係争額が10億円を超えるものに限る。)を終了させる行為、その他訴訟等に関する重要な方針の決定

 

(4) 当該合意の目的

  ① 株主による議決権の行使に制限を定める旨の合意

 本取引の一環として、本自己株式取得を通じて当社の株主を公開買付者のみとすることを目的としております。

 ② 株主総会若しくは取締役会において決議すべき事項について株主の事前の承諾を要する旨の合意

 本取引の実行に重大な悪影響を与える事態その他本取引の目的の達成が困難となる事態が生じることを回避することを目的としております。

 

(5) 取締役会における検討状況その他の当該提出会社における当該合意に係る意思決定に至る過程

 当社は、本公開買付けが当社株式を非公開化することを目的とする本取引の一環として行われること等を踏まえ、本公開買付けに係る価格の公正性を担保するとともに、本取引に関する意思決定の恣意性を排除し、当社の意思決定過程の公正性、透明性及び客観性を確保し、利益相反を回避することを目的として、2025年1月31日開催の取締役会における決議により、半田純一氏(当社独立社外取締役、株式会社マネジメント・ウィズダム・パートナーズ・ジャパン代表取締役社長)、隅修三氏(当社独立社外取締役、東京海上日動火災保険株式会社相談役)及び清水季子氏(当社独立社外取締役、株式会社EmEco代表取締役社長)の3名によって構成される特別委員会(以下、「本特別委員会」という。)を設置し、本取引の是非や取引条件の妥当性等についての検討及び判断が行われる過程全般にわたってその公正性を担保する観点から、トヨタ不動産から独立した立場で本合意書の締結を含む本取引について検討いたしました。

 そのうえで、当社は、2025年6月3日開催の取締役会決議により、本取引に係る当社のリーガル・アドバイザーである西村あさひ法律事務所・外国法共同事業から受けた法的助言、本取引に係る当社のファイナンシャル・アドバイザーであるSMBC日興証券株式会社から受けた本取引に係る交渉等に関する専門的助言及び2025年6月2日付で提出を受けた当社株式の価値算定結果に関する株式価値算定書並びに本特別委員会がその独自のアドバイザーである三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社から取得した当社株式の価値算定結果に関する株式価値算定書の内容を踏まえつつ、本特別委員会から2025年6月3日付で提出を受けた答申書において示された本特別委員会の判断内容を最大限に尊重しながら、本公開買付けを含む本取引が当社の企業価値の向上に資するか否か並びに本取引に係る取引条件が妥当なものか否か等について、慎重に検討・協議を行い、トヨタ不動産との本合意書の締結を決定いたしました。

 

(6) 当該合意が当該提出会社の企業統治に及ぼす影響

 ① 株主による議決権の行使に制限を定める旨の合意

 本合意書に従い、本自己株式取得が実行された場合、前記(4)①の当該合意の目的のとおり、当社の株主は公開買付者のみとなりますが、本自己株式取得は、本取引の一環として行われるところ、本取引による当社の非公開化によって、迅速な意思決定とトヨタグループ各社との事業連携の深化によって短期的な業績期待にとらわれない中長期的な成長を目指すことを可能にすることで、本取引に関するシナジーの最大化を早期に達成し、その成長をより一層加速させることが、当社グループの企業価値の最大化を図るために最善かつ最適な手法であるため、本取引は当社の企業価値の向上に資するものであると考えられ、また、本取引後の当社の経営体制の構成について、現時点においては、本取引の実施に伴って当社の業務執行体制を変更することや、直接的に当社の業務執行の指示を行うような想定はされていないことから、当該合意が当社のガバナンスに与える影響については軽微であると考えております。

 

 ② 株主総会若しくは取締役会において決議すべき事項について株主の事前の承諾を要する旨の合意

 株主総会又は取締役会において決議すべき事項については適用される範囲が特定されており、また、トヨタ不動産又は公開買付者の事前の承諾を要するとされる期間は、本合意書の締結日から本株式併合の効力発生日までに限定されていることから、当該合意が当社のガバナンスに与える影響については軽微であると考えております。

 

 なお、本公開買付けの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記 37. 後発事象」に記載しております。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、提出会社を中心に「魅力ある新商品の開発」という考えに基づき、年々高度化、多様化する市場のニーズを先取りし、お客様の満足度向上に向けて先進技術を導入した積極的な新商品開発を進めております。その主な活動は、既存事業および周辺事業の分野での開発、改良であります。
 具体的な取り組みとしましては、省エネルギーや電動化、軽量化を中心とする環境技術や自動化関連技術に磨きをかけ、それらを主力事業である自動車および産業車両の新商品に展開しております。

当連結会計年度における当社グループの研究開発費は135,438百万円(資産計上分含む)であります。なお、この中には受託研究等の費用8,097百万円が含まれております。セグメントごとの主な内訳は次のとおりであります。

自動車セグメントにおきましては、ディーゼルエンジンや、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車など電動車向けの電動コンプレッサーおよび電子機器、ハイブリッド車用の車載電池などの開発に取り組みました。

産業車両セグメントにおきましては、エネルギー効率を高めた電動フォークリフトトラックやフォークリフトトラックの次世代モデル、産業車両機器の自動化技術、物流ソリューションに対応するシステム機器などの開発に取り組みました。

これらセグメント別の研究開発費は、自動車セグメントが54,017百万円、産業車両セグメントが70,734百万円、繊維機械セグメントが5,939百万円、その他セグメントが4,746百万円であります。