文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
◆長期ビジョン
Make a New Enshu for the World's manufacturing
私たちは3つの挑戦により、世界のモノづくりに貢献します
1. 社員一人一人が新しいモノづくりに挑戦します
2. 常により高いレベルの品質とコストに挑戦します
3. 3事業のシナジー発揮に挑戦します
(部品加工事業、工作機械事業、システムインテグレーター事業)
(2) 経営環境及び対処すべき課題
当連結会計年度における日本工作機械工業会(日工会)による受注総額は1兆5,097億円(前期比4%増)と増加に転じたものの、依然として国内需要は自動車関連の投資が伸び悩んでいると発表されています。
当社グループといたしましては、2025年3月期を初年度とする5か年の中期経営計画「Make a New Enshu」を策定し、売上高重視から利益額重視の方針のもと、部品加工事業の拡大強化、工作機械事業の自動車業界以外への新市場拡大に取り組んでまいりました。
部品加工関連事業におきましては、長期的には既存主力製品である大型二輪車用部品及び自動車関連部品の仕事量が不透明な中ではありますが、営業活動ならびに経営資源を投入することで想定通り仕事量を拡大することができております。一方で、財務目標の達成に向けては、収益力の向上が課題であり、工作機械関連事業、システムインテグレーター事業のノウハウを活かした生産の効率化と製造や技術部門を主体としたロス改善による原価低減を進めております。
工作機械関連事業におきましては、新市場拡大に向け、SIer、医療、半導体等の分野で一定の受注獲得は出来ているものの、初年度の受注状況が想定以上に停滞していることから、現状の事業構造(システム、汎用機販売を中心)のままでは事業成長が見込めないと判断し、事業構造の抜本的な見直しを推進しております。また、足元では現状の仕事量に合わせた生産体制となるよう構造改革を進めており、受注の変動に強い収益体質への転換も図ってまいります。
以上の課題に対し、2025年5月に中期経営計画の数値目標と施策を見直しました。引き続き、目標達成に向けて各施策に取り組んでまいります。
(3) 中期経営計画の見直しについて
[中期経営計画の基本方針]
①「売上高重視から利益額重視へ」不変ですが、より一層の徹底を図ります
②「ROE5%の達成」を図ります
◆部品加工事業戦略
■経営資源を投入し、利益拡大を目指していく
①EV、内燃機関、新領域3本柱での売上拡大
・EV:生産実績(バッテリー・モーター部品)を前面に押し出した受注活動展開
・内燃機関:新規部品取り込み計画を実行中
・新領域:2024年度より産業用機械部品取り込み済(大物・高付加価値部品)
②収益力の向上
・原価低減:生産性向上活動の継続、ライン別管理で改善のCAPDサイクル展開
・生産準備の強化:準備段階での早期課題解決、新規案件垂直立ち上げ
・品質ロスのミニマム化:変化点管理の徹底、”モノ”と”コト”の両面からの再発防止対策
③3事業のシナジー創出を引き続き推進
・自動化+省人化:SIer事業との協業、検査の自動化、工場内物流の自動化
・CO2排出量削減:工機ノウハウを部品加工設備へ展開→改善事例を工機販売へ
・自社工場を3事業のショールーム工場へ
◆工作機械事業戦略
■事業構造の見直し(既存事業+4新事業を合わせた5事業への移行)
①既存事業はターゲットを絞って継続
・システムは顧客を絞り重点的に活動
②開発型機械製造業(顧客共同)
・顧客ごとにMC、専用機、組立機を開発・製造(非自動車顧客も獲得)
・完全受注生産体制(試作機、量産機)
③レーザー加工システム
・自動車EV向け:軽量化に伴うアルミ(ダイカスト)溶接
・CO2削減ニーズへ対応
・半導体向け:半導体向け試加工対応中
④SIer&IoT
・労働力不足による自動化、DX化の需要取り込みを加速
・ロボット、搬送(内製又はM&A)、AMR/AGV、IoT
・非自動車への営業強化
④保全サービス
・自動車主要顧客向けパーツ、サービス(保全、修理)
・管理体制整備:支店サービスも本社でコントロールして拡販
■構造改革(人員の適正化)
受注の変動に強い収益体質への転換を図る。現状の売上規模に合った体制を構築。損益分岐点引き下げ。
→希望退職の実施、状況の厳しい工作機械事業から、売上が伸びている部品加工事業、好調なエンシュウコネ
クティッドへの人員再配置
◆中期経営計画 財務目標
※PBRの目標値については未定としておりますが、中計損益目標の早期達成とその後のPBR1倍の実現
を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、経営理念にもある“共生共栄”の考えに基づき、“ものづくり”で培った技術力をもって、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の向上を目指します。
これを実現するために私たちは、気候変動などの地球環境問題、人権の尊重、従業員の健康・労働環境や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、地域社会への貢献、自然災害等への危機管理などサステナビリティを巡る課題に対して、積極的に取り組んでおります。
当社グループは、気候変動への対応を含むサステナビリティ課題への対応として社内に「SDGs委員会」を設置しております。
委員長は技術・製造本部担当役員が務め、委員は、管理系本部、営業・開発本部、技術・製造本部の各本部からの選出と会社が選出するもので構成されております。
委員会の主要テーマとしては、気候変動、人的資本を重要課題とし、隔月で開催し、当社グループのサステナビリティに対する取組の推進を行い、経営会議に報告し、必要に応じて提言を行う体制となっております。また、同委員会の活動内容については、取締役会にも報告され、監査等委員会の構成員である取締役は、代表取締役社長を中心としたサステナビリティに関する取り組み状況を継続的に監査しております。
業務執行体制におけるサステナビリティ関連のリスク及び機会の評価に関しましては、(3)リスク管理に記載しております。
上記を含むコーポレート・ガバナンス体制の概要については、「
なお、当社のグループのサステナビリティ基本方針及び取組を弊社
URL:https://www.enshu.co.jp/ja/profile/sdgs/

(2)戦略(リスクと機会)
① 気候変動への対応
移行リスク
脱炭素化に伴う原材料等の高騰によるコスト増加が見込まれます。また、炭素税などの導入や環境に関する法令などの対応に伴い、事業コスト、開発コストの増加が見込まれます。
EV化への段階的な移行に伴い部品点数が減少すると言われており、工作機械業界全体として影響が見込まれます。その一方でモーターケースなどのEVに関係する部品加工や、省エネ型機械のニーズの高まりが見込まれ、省エネ型内燃機関に対する設備投資も当面の間見込まれます。また、風力発電などの環境設備投資については増加が見込まれます。
物理リスク
当社高塚工場においては、浜松市の天竜川ハザードマップにおいて、約2mの浸水が1000年に一度程度発生するリスクがあるとされております。当社としては、浜北工場を含め地震や浸水被害などを想定したBCPを推進しリスクの低減に努めてまいります。
機会
当社工作機械関連事業が得意とする自動化やインテグレート技術をお客様に提供することにより、労働力不足への対応、工場の効率化や環境負荷の低減に貢献することが出来ると考えております。また、軽量化・省エネ機器導入等の省エネ技術を搭載した製品やサービスを提供することでもお客様の環境負荷低減に貢献することが出来ると考えております。
② 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
企業の持続的な成長と企業価値向上のために、女性、外国人、様々なキャリアを持つ中途採用者などの多様な人材が、チャレンジングに仕事を行える職場環境の整備や人事施策を継続的に行うよう努めております。
・女性社員の登用
女性社員に対しては、女性キャリアアップ制度を設けております。キャリアアップを望む女性社員に対し、面談を通して育成計画を作成したうえでプログラムを実施し、キャリアアップを促進しております。
加えて、キャリアップセミナーの社内開催や外部のリーダー育成セミナーへ従業員を派遣し、リーダー職になるためのスキル習得や自身のキャリア展望について考える機会を設けております。
また、女性社員が働きやすい職場づくりのため、制度の企画・立案を行い、ライフイベントと就業の両立がしやすい環境整備に努めてまいります。
・中途採用者の登用
中途採用者につきましては、入社後は新卒・中途の区別なく公平・公正に扱っており、管理職登用状況は32.6%となっております。
また、新卒・中途の区別なく教育を受ける機会を提供し、階層に応じた教育を行っております。入社時には特別研修を実施し、社内規定や制度について学び、不安なくスタートできるようにしております。
中途採用者のフォロー窓口も設置し、安心して働ける環境づくりを行い、入社後の定着を図っております。
・外国人の登用
国籍に関わらず、各人が持つ能力を重視して採用を行っております。
国籍の区別なく公平に教育を受ける機会を提供し、希望者には日本の習慣や文化などを説明し、言葉の言い回しや立ち居振る舞いなどを解説しております。
また、外国人相談窓口を設置し、相談先を明確にすることで安心して働ける環境整備を行っております。
・男性育児休業推進
社内報による育児休業制度の周知を行っております。また、妊娠出産の申し出をした社員に対し、制度説明や給与シミュレーション等を行うことや、その上司の理解を促進するために制度の説明やハラスメント教育を実施し、取得の推進に努めております。今後は取得推進のための制度改定の検討をしてまいります。
(3)リスク管理
当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスク・コンプライアンス委員会にて行っております。サステナビリティに係るリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込みについては、SDGs委員会の中でより詳細な検討を行い、共有しております。優先的に対応すべきリスクの絞り込みに関しては、当社グループに与える財務的影響、当社グループの活動が環境・社会に与える影響、発生可能性など総合的に考慮して行っております。
気候変動に関するリスクについて、当社グループは事業所別の環境データを毎期測定し、エネルギー使用量及び原単位の推移をモニタリングしております。Scope1及びScope2のCO2排出量の実績推移も毎期算出しモニタリングしており、合わせて社長が議長を務める経営会議に報告しております。
SDGs委員会においては、お客様の環境負荷低減に向けた製品開発やサービスの提供、社内設備の環境負荷低減についてなど環境に関する取り組み状況を確認し、推進しております。また、サステナビリティ関連の機会の識別、評価や優先順位付けは、SDGs委員会において行われ、重要と認識された機会については経営会議に対して活動内容の報告、提言を行い、経営会議は必要な対応策を決議し、取締役会へ報告しております。
(4)指標及び目標
① 気候変動への対応
当社グループは、気候変動における指標をCO2排出量と定め、当社から排出されるScope1及びScope2のCO2排出量について算出し毎期モニタリングしております。また、2030年度に2014年度比△38%(売上高原単位)の削減目標を定め取り組んでまいります。部品加工事業における目標に向けた取り組みとして、既存生産設備の省エネ(モーター、間欠運転、エアー)、省エネ設備導入(高効率空調、LED)などを計画、推進しております。その結果、昨年度のScope1及びScope2の排出量に関しては前年度比で約10.3%削減しております。今年度は活動範囲を広げて引き続き社内設備の環境負荷低減を進めてまいります。また工作機械事業においては、開発型機械へ省エネ技術を搭載する提案をすることで既存機種と比較してエネルギー消費量削減を行い、客先での環境負荷低減に向けた製品の提供につとめてまいります。
CO2排出量
(注) Scope3カテゴリ8、9、10、14、15は算定対象外であります。
② 人材の多様性の確保を含む人材の育成
上記「(2) 戦略」において記載した「② 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針」に係る指標について、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する実績は連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
・女性社員の登用に関する状況
<指標> 女性社員採用比率
<目標> 対象期間(2021/4/1~2026/3/31)における女性社員の採用比率を5年の平均で20%以上とし、
女性社員の採用、育成、環境整備に注力してまいります。
<実績> 女性採用比率:2019年度~2024年度平均21.5%
・中途採用者の登用に関する状況
<指標> 管理職における中途採用者比率
<目標> 当社において、2024年度の中途採用者比率は30.2%、管理職比率は32.6%となっております。
中途採用に積極的に取り組んできたことにより、当社における中途採用者の各比率は高い水準にあると考えられます。今後も、中途採用者比率30%以上を目標として維持できるよう、積極的な採用活動や新卒・中途の区別無く公平・公正な人事評価と人材育成に取り組んでまいります。
<実績> 2024年度 中途採用者の管理職登用状況:32.6%(28名/86名)
2024年度 全社員における中途採用者の割合:30.2%(188名/622名)
・外国人の登用に関する状況
<指標> 外国人社員比率
<目標> グローバル化を促進するため、外国人の多様な考え方を取り入れることが重要ですが、現時点では、
目標年度・人数に基づく外国人社員比率を具体的に示すことは困難な状況です。当面は、特定技能外国人も含め、採用増を検討してまいります。
<実績> 2024年度 外国人社員比率:0.5%(3名/622名)
・男性育児休業推進
<指標> 男性労働者の育児休業取得率
<目標> 当社の男性労働者の育児休業取得率は、育児休業制度の周知、上司の理解の促進、ハラスメント教育の
実施に取組んできた結果、2か年連続で50%台を維持し改善が進んでおります。引き続き、上司の取得推進への取組み強化や職場の理解を高め、取得率の更なる向上に努めてまいります。また、男性従業員の育児参画に寄与する制度導入を進め、2026年3月末に60%以上の取得を目指してまいります。
<実績> 2024年度 男性労働者の育児休業取得率:50.0%(5名/10名)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの工作機械関連事業の受注は顧客の設備投資活動に直接結びついているため、市場の景気動向に対して極めて敏感であり、民間設備投資、特に主要顧客である自動車業界の設備投資の増減の影響を大きく受けます。その上、好況時と不況時の変動も大きく、不況時は需給関係により販売価格が低下する傾向にあります。
また、当社グループの主要顧客である自動車業界は、電動化による内燃機関の減少、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)やMaas(Mobility as a Service)による構造変化が想定され、顧客・社会のニーズは大きく変化しています。当社は非内燃機関向け、商社販売の拡大に注力しておりますが、引続き自動車業界の市場動向は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの部品加工関連事業においては、ヤマハ発動機株式会社への売上(受託加工)依存度が高い割合となっていますので、同社の事業方針は当社グループの業績に強い影響を与える可能性があります。
最近の同社向販売実績及び売上高全体に占める割合は、次のとおりであります。
(3) 為替レートの変動によるリスク
当社グループの全社の海外売上高比率は2025年3月期で30.6%となっております。決済は主に円建でありますが、USD建及びEUR建等の取引もあり為替レートの変動によるリスクを有しております。円建取引の増加や為替予約により影響を少なくするよう努力しておりますが、大幅な為替レートの変動は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの借入金依存度(借入金の総資産に対する割合)は、2025年3月期で38.6%となっております。当社グループでは将来の金利変動によるリスク回避を目的として、借入金の一部を金利スワップにより固定金利としておりますが、金利変動の影響を受ける可能性があります。
当社グループは、借入金依存度が相応に高いことから、金融機関の融資姿勢の変化等によって資金調達が困難になるリスクがございます。また、シンジケートローンにつきましては、契約内容に一定の財務制限条項等が付されている場合があり、当該事由に抵触した場合には当社グループの資金繰りに影響を与える可能性があります。
当社グループの工作機械関連事業は競合するメーカーが多く、価格競争により販売価格が低下する傾向にあります。特に汎用工作機械分野では競合メーカー製品との競合等により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループの工作機械関連事業は製品の製造に使用する原材料及び部品等について、当社グループ外の多数の供給業者から調達しています。一部については特定の供給業者に依存しており、需給状況、災害等の要因によっては納期遅延、コストアップ等の影響が生じることがあります。原材料価格の高騰等は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8) 棚卸資産の評価損に関するリスク
当社グループでは、「棚卸資産の評価に関する会計基準」を適用しており、販売目的の棚卸資産の収益性を期末において評価し、収益性が低下していると判断される場合には評価損を計上することになります。このため、当社グループの棚卸資産について、需給関係による販売価格の低下やシステム工作機械における追加費用の発生により収益性が低下していると判断し評価損を計上する場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループは、製品の品質には万全を期しておりますが、工作機械関連事業のシステム工作機械においてはオーダーメイド方式のため、より高度な品質管理が求められており、追加費用が発生する可能性があります。また、部品加工関連事業においても、予期しない品質トラブルにより多額の改修費用及び補償費用が発生する可能性があります。このような場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループといたしましては、海外拠点を含めて、品質の維持・向上を最優先課題として取り組んでおります。
当社グループは地震等の自然災害の発生により生産拠点が損害を受ける可能性があります。被害の影響を最小限に抑えるため、建物・設備などの耐震対策、防火対策等の予防策を順次進めていますが、万一、予想される南海トラフ巨大地震が発生した場合、当社グループの生産拠点が静岡県内に集中していることもあり、操業の中断、多額の復旧費用等、当社グループの業績が大きな影響を受ける可能性があります。
顧客情報や機密情報の漏洩等の防止は、会社の信用維持、円滑な事業運営にとって、必要不可欠の事項といえます。当社グループにおいては、社内規程の制定、社内教育、情報セキュリティシステムの構築等の措置を講じていますが、万一、情報漏洩等の事態が発生した場合、当社グループの信用低下、顧客等に対する損害賠償責任が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における経済は、景気が緩やかに回復して設備投資にも持ち直しの動きがある一方、欧米におけるインフレや高金利等の影響や中国経済の先行き懸念等、不透明な状況が続いております。
このような情勢の中、当社グループの当連結会計年度の売上高は、両事業部門ともに減少し21,886百万円(前期比9.2%減)となりました。
損益につきましては、本社及び現地法人での構造改革費用の計上等により、営業損失は705百万円(前期は営業利益540百万円)、経常損失は943百万円(前期は経常利益386百万円)となり、特別損失に工作機械事業における減損損失等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は2,261百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益221百万円)となりました。
また、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ3,389百万円減少し29,812百万円(前期末比10.2%減)となりました。このうち流動資産は2,892百万円減少し15,249百万円(前期末比15.9%減)となり、固定資産は509百万円減少し14,489百万円(前期末比3.4%減)となりました。流動資産の減少の主な要因は、仕掛品が1,823百万円、受取手形及び売掛金が1,083百万円減少したことによります。固定資産の減少の主な要因は、有形固定資産が567百万円減少したことによります。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べて1,960百万円減少し19,433百万円(前期末比9.2%減)となりました。このうち流動負債は1,531百万円減少し9,420百万円(前期末比14.0%減)となり、固定負債は429百万円減少し10,012百万円(前期末比4.1%減)となりました。流動負債の減少の主な要因は、電子記録債務が1,082百万円、短期借入金が521百万円減少したことによります。固定負債の減少の主な要因は、退職給付に係る負債が572百万円減少したことによります。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べて1,429百万円減少し10,379百万円(前期末比12.1%減)となりました。減少の主な要因は親会社株主に帰属する当期純損失2,261百万円を計上したことによるものであります。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
工作機械関連事業部門
工作機械関連事業におきましては、米国やインドで大型案件による売上が増加した一方で、国内及びASEAN、メキシコ等が前期比で減収となった結果、当連結会計年度の売上高は9,869百万円(前期比15.7%減)となり、セグメント損失(営業損失)は1,126百万円(前期は営業損失98百万円)となりました。
部品加工関連事業におきましては、国内において主要顧客向けの仕事量が減少する中、新規部品の受注・生産立ち上げを推進した結果、売上高は11,945百万円(前期比2.9%減)となりました。損益面におきましては、新規部品の生産本格化に加え、生産性向上活動による費用削減を進めてまいりましたが、仕事量減少による影響が大きくセグメント利益(営業利益)は371百万円(前期比37.0%減)となりました。
その他事業の部門におきましては、不動産賃貸事業により、売上高は70百万円(前期と同額)となり、セグメント利益(営業利益)は49百万円(前期比0.5%増)となりました。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しておりません。
2.金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前期と比べて124百万円増加し4,342百万円(前期末比2.9%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,513百万円の獲得(前期比278.8%増)となりました。これは主として減少要因である税金等調整前当期純損失2,364百万円を、棚卸資産の減少額1,440百万円、減損損失1,325百万円及び売上債権の減少額1,293百万円等が上回ったことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,345百万円の支出(前期比82.7%増)となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、168百万円の支出(前期比24.3%減)となりました。これは主として借入れによる収入を借入金の返済による支出が上回ったことによります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工作機械関連事業の製品製造のための材料費、外注費、人件費等であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
設備投資資金や長期運転資金の調達は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としており、短期運転資金の調達につきましては、金融機関からの短期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金、リース債務及び社債を含む有利子負債の残高は11,944百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,342百万円となっております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
(注) 上記の技術援助契約においては、ロイヤリティとして売上高の一定率を受け取っております。
当社グループでは、「Make a New Enshu for the World's Manufacturing」を長期ビジョンとし、社員各々が新しいエンシュウを作り上げていくという目的のもと、研究開発を行っております。
当社グループにおける研究開発活動は、提出会社のマーケット開発部及び工作機械開発部が行っております。既存の工作機械開発は工作機械開発部が担当し、より新しい市場や、新たな技術に向けての研究開発はマーケット開発部が担当しております。当連結会計年度を振り返りますと、昨年の4月にはアメリカの溶接最大手であるリンカーン・エレクトリック社との協業、今後ニーズが高まるとされているアルミ溶接技術への提案をし、4月のウエルデイングショー、10月のJIMTOF(日本国際工作機械見本市)では、多方面から関心が寄せられております。また、昨年9月に開催されましたIMTSや、10月のJIMTOFでは、当社主力の汎用機であるGE480Hのマイナーチェンジモデルを発表いたしました。マイナーチェンジではユーザーの期待に応える機械にするため、ユーザーから直接ニーズを聞き取り企画し、開発を行いました。
また、今後は中期経営計画にありますように、顧客共同での開発型ビジネスを中心に取り組んでまいります。この取組は、当社の持つ既存技術を活かしながら、お客様のニーズに合わせた新たな開発設計を行うことで、新しい工法・工程を成し得るための機械をお客様と共同で開発をしていく取組です。直近の取組事例としましては、ジーシー社と共同で開発を行った歯科加工機が挙げられます。また、日産自動車株式会社と共同開発を行ったホーニング加工機やトヨタ自動車株式会社と共同開発を行ったレーザクラッド加工機など、ユーザーからニーズを聞き取る形のビジネスモデルは従来から実績があり、当社の強みでもあります。このビジネスモデルを強化していくことで、自社技術の手の内化とレベルアップにつなげていきます。
さらに、部品加工関連事業に対しては、量産ラインを活用して要素技術の先行実証を積極的に取り組んでまいります。そのほかにも、カーボンニュートラルやSDGsの観点では、製品・技術利用による実生産性向上だけでなく、自社での生産時における資源及びエネルギーが従来機種より削減できるよう、技術開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費は