当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの一貫した基本方針は、「モノづくりに根ざした確かな技術と徹底した品質管理に基づく高品質な製品・設備を提供すること。」であります。
当社グループは、これまで培ってきた技術、経験、ノウハウを活用し、絶え間ない新製品、技術の開発、改良により、エンジニアリング、化学工業機械等の分野において、新しい時代のニーズに応えるとともに、既存の製品・技術にとらわれない新しい事業分野にも積極的にチャレンジし、顧客のあらゆる要望に応える製品、技術、サービスの提供を目指してまいります。
当社グループは、2021年11月に「三菱化工機グループ2050経営ビジョン」(以下「経営ビジョン」)を策定し公表いたしました。この経営ビジョンは、2050年を最終到達年として、2035年の当社創立100周年を見据えた長期的な道筋を示すものです。当社は、持続可能な発展を目指し、既存技術・製品をさらに深化させ、新しい分野の事業においても成長を遂げ社会の発展に貢献することにより、2035年には事業規模を1,000億円に拡大することを目指しております。
経営ビジョンでは、2050年までに、5つの社会課題「CO2・気候変動」「資源循環」「水・食料」「自然災害」「労働力不足」の解決に貢献する企業グループを目指し、全社目標に「持続可能な発展に挑戦し、快適な社会を実現する」を掲げ、以下の4つの戦略的事業領域を展開することといたしました。
①持続可能な循環型社会推進事業
②水素を核としたクリーンエネルギー事業
③デジタルを活用した省力・省エネ事業
④水・食・自然災害等の課題解決に向けた次世代技術開発事業
この度、当社グループは、新たな中期経営計画「『進化と変革へ』2.0」(2025年度~2027年度)を策定いたしました。前中期経営計画は、経営ビジョンの実現に向けた成長の足固め期としておりましたが、本中期経営計画は、成長期とし、GX事業の成長と売上拡大をはかる「飛躍の3年間」と位置づけております。本中期経営計画は、脱炭素化が進展する2035年に向けた動きに呼応し、社会課題の解決に資する「戦略的事業領域」におけるより具体的かつ着実な取り組みを進め、成果を創出し、経営ビジョン実現に向けた大きな飛躍を成し遂げるための活動計画であります。そのための原動力となる「戦略的事業領域」を「GX事業」として全社の注力領域に再定義し、その推進を担う組織として「GX事業推進室」を新設し、さらなる実践につなげてまいります。このような取組を中心に、事業ポートフォリオの進化と、資本コスト・株価を意識した経営を確立し、また、それを支える持続可能な経営基盤の強化、社会課題の解決と成長の具現化をはかってまいります。
経営環境につきましては、当社グループに関連する分野では、脱炭素社会実現に向けた国家レベルの動きは活発化しており、日本においても、2024年10月、脱炭素社会への円滑な移行を目指し、「水素社会推進法」、「CCS事業法」の2法案が施行、2025年2月には「GX2024ビジョン」が策定されました。また、日本政府の目指す2050年カーボンニュートラルに向けて、GXをはじめとするサステナビリティ推進の動きが加速しております。
加えて、資本コストを意識した経営の推進など、中長期的な企業価値向上に向けた自律的な取り組みの動機付けとなる枠組みづくりが求められております。
プラント事業においても、前連結会計年度に引き続き化学関連プラントの需要が堅調に推移している一方で、材料・資材価格の高止まり傾向は継続中であり、労働時間規制などの2024年問題も顕在化しつつあり、プラントコストは増大傾向にあります。
水素関連においては、カーボンニュートラルに関する案件が増加するとともに、クリーンエネルギーでは、水素関連市場の立ち上がりは依然として途上ですが、水素の利活用・CO2排出削減の社会的要請が強まっており、脱炭素化の加速により、水素のブルー及びグリーン化を求める動きが加速しております。
環境事業においては、大型案件でPPP/PFIの発注形態が増加しております。主力の下水処理分野における需要は、更新工事を基に需要は安定した状況が続きました。一方で、バイオガス関連では脱炭素化の加速により、民間でのバイオガス利用市場に活発な動きが昨年に引き続きみられました。
各種産業機械においては、化学・ファインケミカル、医薬、エネルギー・発電の分野で国内生産増強、老朽化設備の更新需要が堅調に推移しております。また、脱炭素化、生産効率向上を目的とした設備投資の検討が具体化しております。
主力の油清浄機においては、主要顧客である業績が好調な造船業界及び海運業界向けの販売が堅調に推移しておりますが、燃料のクリーンエネルギー化が加速しており、その対応が求められております。
NOx(窒素酸化物)規制においては、NOx3次規制に対応する船舶向けEGRエンジンの需要が増加するなど、欧州及び米国の規制海域(ECA)を航行する船舶向けの環境規制対応機器の販売が堅調に推移いたしました。
当社が策定いたしました中期経営計画で対処すべき課題は以下の4点であります。
①事業ポートフォリオの進化
1)GX事業の確立
経営ビジョンに揚げる社会課題解決に資する戦略的事業領域に係わる事業を「GX事業」とし、新たな報告セグメントといたしました。「GX事業」のさらなる推進・拡大に向けて、定量的にモニタリング可能な体制への移行をはかります。新設しましたGX事業推進室によるGX事業の一元管理と部門間調整によりビジネス規模の拡大、事業化を加速してまいります。
2)基盤事業の競争力強化
既存事業強化の仕組みとして、ROIC(投下資本利益率)を用いた評価ルールの運用を実施しております。成長性と収益性の観点から事業を評価し、低収益事業については、事業の見直し・再構築により、早期の収益改善をはかります。また、各既存事業の競争優位性を維持し、収益性のさらなる向上を実現してまいります。
3)事業拡大戦略の実践
2024年に設立いたしました営業統括本部を中心に、事業部間の連携を加速させるとともに、海外拠点のネットワーク化による販売網を拡大してまいります。また、全社的な海外戦略の再構築を行い、従来のEPC中心の海外アプローチを見直し、各国の市場・現地ニーズに合わせた製品の投入を促進してまいります。
②資本コスト・株価を意識した経営の確立
1)成長投資の実行
ステークホルダーの信頼に応え、持続可能な成長と経営基盤確保のために、事業成長のドライバーとなるGX事業を中心としたR&D,設備投資、M&A、基盤事業の強化にもつながる人的投資、DX投資を最優先に資本配分してまいります。また、本社・川崎製作所の再編投資を成長投資、ESG関連投資、既存施設の更新投資へ充て、2035年までの中長期的な発展の礎としてまいります。
2)資本効率の向上
本中期経営計画では、前中期経営計画から取り組んでおります事業ポートフォリオ戦略と資本政策を連動させ、ROICを意識した経営を行い、事業単位での売上拡大・コスト削減といったP/L改善だけでなく、B/Sマネジメントにも取り組むことで、営業CFの改善と非事業性資産の圧縮により資金創出してまいります。また、株主還元と最適資本構成とのバランスを意識した資源配分・調達を行うことによって資本効率の向上をはかってまいります。
3)株主還元の強化・成長期待を高める情報発信
株主還元につきましては、利益還元の充実をはかり、自己資本比率や業績見通し・外部環境を勘案し、配当性向は40%に引き上げ、配当の下限としてDOE3.5%を設定しております。
また、ステークホルダーとの対話を重視したIR・SR活動の強化、川崎発の脱炭素・循環型技術トップブランドとしての段階的なブランド構築と情報発信と認知拡大を通じ当社グループの成長期待への理解強化を実施してまいります。
③人的資本・技術資本の強化
1)人的資本戦略の推進
事業戦略実現のために人材ポートフォリオ管理を強化すると共に、GX事業の推進に資する人材育成強化・従業員全体のエンゲージメント強化・技術承継を行ってまいります。
2)モノづくり戦略の実践
再編する川崎製作所をGX事業の製品開発・生産拠点(マザー工場)と位置づけ、グループ内の各工場と有機的に連携し、事業拡大を実現、あわせて基盤事業のモノづくりを効率化・高度化し、収益性の改善を実現してまいります。
④経営ガバナンスの透明性向上
1)事業ポートフォリオ管理/ROIC経営の浸透
ROICツリーを起点とした経営管理を新たに取り入れ、ドライバー毎にKPIを設定、業務レベルへブレイクダウンし、改善策を実行していくことでそれぞれの指標の改善をはかってまいります。各KPIの達成状況と進捗状況のモニタリングを実施することで目標達成の確度を高め、全社としての営業利益率の向上と資本効率の向上をはかってまいります。
2)サステナビリティの推進
マテリアリティに係るKPI達成への取り組みを通じて、社会課題への対応を促進し、企業価値の向上及び持続的な成長をはかってまいります。
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)等については、新中期経営計画では、事業ポートフォリオの進化と資本コスト・株価を意識した経営の確立を実現し、また、それを支える持続可能な経営基盤の強化をはかることを目標としており、財務数値指標を市場評価、成長性、収益性、株主還元、財務健全性に分類した目標設定をしております。当社グループでは、利益指標を最重視しており、安定的高収益体制を構築するため営業利益率を、また、資本効率の向上で市場評価を高めることを目的としてROEをそれぞれ収益性の指標として取り組んでおります。
(注)上記KPIについては有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティについての取組
当社は、これまで培ってきた技術とノウハウを活かし、SDGsの取り組みも含め社会課題に対応する企業グループを目指し、「持続可能な発展に挑戦し、快適な社会を実現(MORE Sustainable, KEEP Innovating for a KINDHEARTED Society)」をビジョン・ステートメントに掲げた「三菱化工機グループ2050経営ビジョン」の実現に向けて取り組んでいます。
この経営ビジョンにおいて、当社グループが解決すべき社会課題として「CO2・気候変動」「資源循環」「水・食料」「自然災害」「労働力不足」を設定し、その解決に資する「循環型社会推進」「クリーンエネルギー」「省力・省エネ」「次世代技術開発」を中核とした戦略的事業領域の取り組みを進めています。その中で、2025年4月、戦略的事業領域を当社グループの注力領域に再定義するため、報告セグメントとして「GX事業」を追加し、その推進を担う組織として「GX事業推進室」を新設しました。
2025年度から3ヵ年の中期経営計画においては、最終年度である2027年度にGX事業において売上高230億円を達成するため、CO2の回収やバイオガスの利活用を推進する「循環型社会推進」及びブルー・グリーン水素の製造や水素の利活用を推進する「クリーンエネルギー」分野に注力し、当社の中核事業としての確立をはかります。また、経営ビジョンの実現を目的に特定したマテリアリティへ目標(KPI)を設定し、気候変動や人的資本等の社会課題への対応を着実に進めていきます。
このように、当社グループは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、当社グループの持続的発展を実現するため、サステナビリティの推進に注力してまいります。
①ガバナンス
当社取締役会は、サステナビリティへの対応を経営上の重要課題の1つであると認識しており、リスク管理の観点だけでなく事業創出の観点からも重要な施策の意思決定をするとともに執行状況を監督しています。
重要課題に対する進捗を測る経営指標と目標を定め、当社代表取締役社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を中心とした推進体制のもと、当社グループのサステナビリティ領域全般に係る全体計画の立案・進捗状況のモニタリング・達成状況の評価を行っています。また、当社取締役会が定期的に当委員会から当社グループのサステナビリティへの取り組み状況に関する報告を受ける体制を構築しています。

②戦略
企業理念や経営ビジョンの実現には社会価値の創造が不可欠であり、価値創造には当社グループが持つ強みやノウハウを活かした戦略的事業領域の展開、事業ポートフォリオの見直しや、事業活動を支える経営基盤の強化がキーとなります。このような価値創造力と経営基盤の強化が、当社グループの持続的な成長や企業価値の向上に重要だと考えています。
2023年5月、当社グループの事業活動や経営ビジョン実現への取り組み等を、SDGsその他国際的なサステナビリティ指標等と紐づけて6項目に絞り込み、社会価値の創造と経営基盤の強化を両立させ、経営ビジョンを実現させるためのマテリアリティ(重要課題)として取り纏めました。
a.6つのマテリアリティ(重要課題)
b.マテリアリティの特定プロセス
③リスク管理
サステナビリティに関連するリスクの管理については、①ガバナンスの体制図で示したとおり既存の「リスク管理委員会」と相互連携しています。その役割分担は、常設委員会である「サステナビリティ委員会」においてリスクの抽出・特定を管掌するとともに、「リスク管理委員会」においてリスク対応方針の決定・進捗管理を管掌しています。
「リスク管理委員会」においては、全社リスク管理において対象とするリスクの類型に気候変動問題などサステナビリティに関連するリスクがあることを明示するとともに、「サステナビリティ委員会」で重要と判断されたリスクを全社重要リスクとして管理し、その対応状況を定期的に取締役会に報告しています。
これらの活動を通じて、全社的な短期・中期・長期のリスクを抽出し、評価及び対応策の検討を行い、取締役会にて監督を行っています。
④指標と目標
当社は、「三菱化工機グループ2050経営ビジョン」を掲げ、(1)サステナビリティについての取り組みにあります社会課題の解決に資する4つの戦略的事業領域を「GX事業」として全社の注力領域に再定義するとともに、その推進を担う組織として「GX事業推進室」を新設し、さらなる実践につなげていくことにより、社会課題の解決と成長の具現化をはかってまいります。
また、当社グループは、気候変動、人的資本などの分野において、経営ビジョンを実現するためのマテリアリティ(重要課題)に対して目標(KPI)を設定し、サステナビリティの着実な推進をはかっています。また、人権尊重その他サステナビリティに係る分野について、経営ビジョン及び中期経営計画との関連性、並びに、当社事業にもたらすリスク・機会等を含め総合的に勘案し、個別の指標・目標設定を検討してまいります。
マテリアリティに対する目標(KPI)
※1 本中計期間内すべての期間における目標
※2 前中計期間3年間平均に対する、本中計期間3年間平均の目標
※3 前中計期間最終年度(2024年度)に対する、本中計期間最終年度(2027年度)の目標
当社は、2022年12月に賛同したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づき実施した気候関連のリスク・機会の分析結果を経営計画へ反映させることで、当社グループの持続的な成長をはかります。また、気候関連の目標設定及び同提言のフレームワークを活用した情報開示の充実により、気候変動への取り組みを積極的に推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
①ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に係るガバナンス体制に組み込まれております。詳細は、「(1)サステナビリティについての取り組み ①ガバナンス」に記載しております。
②戦略
当社は、2100年時点の世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して、1.5℃以下に抑制しながら経済成長を目指すシナリオ(以下「1.5℃シナリオ」)と現状ベースで化石燃料をエネルギーの主体として経済成長を目指し同4.0℃上昇することが想定されるシナリオ(以下「4℃シナリオ」)の2つの気候変動シナリオを設定し、分析を実施しています。
1.5℃シナリオでは、移行リスクとして、例えば炭素税の導入による資材・エネルギーコストの上昇、それによるエネルギー効率の低い設備需要の減少、並びに化石資源関連産業及び化石燃料を使用する設備向けの製品の需要減少などが想定される一方で、脱炭素化に対応した製品・技術へのニーズが一層高まることが想定されます。当社は水質汚濁防止・大気汚染防止などの環境分野をはじめとして社会課題に対応した装置・設備の設計・製作・建設で多くの実績を有しております。これらの要素技術は脱炭素化に対応する水素に係る製品・技術や藻類の培養・活用にも応用できる当社の強みと考えており、事業機会も十分に存在するものと考えております。
4℃シナリオでは、気候変動による自然災害の激甚化によるリスクに対応するレジリエントな装置・設備ニーズに対して当社の既存製品・技術を提供する機会が生ずるものと考えておりますが、洪水・海面上昇等による調達先や輸送網といったサプライチェーンへの影響や工程の遅延、及び平均気温上昇による作業効率の低下などによる物理的リスクの方が大きいものと考えております。
気候変動がもたらすリスク
※1 資材・電力の調達コスト増(利益減)は、利益率10%と仮定し、影響額÷10%=売上額の換算で影響度を評価
※2 エンジニアリング&マニュファクチャリング
気候変動がもたらす機会
気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティ全般に係るリスク管理プロセスに組み込まれております。詳細は、「(1)サステナビリティについての取り組み ③リスク管理」に記載しております。
当社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、温室効果ガス(GHG)サプライチェーン排出量の算定と削減及びカーボンニュートラルに資する事業の拡大の、2つの目標を設定し取り組みを進めています。
a.当社グループのGHG排出量(Scope1,2)を2050年までにNet Zeroへ(マテリアリティ:Ⅳ)
当社グループは、工場・オフィスからのGHG排出量を2050年までに実質ゼロとしてまいります。この長期目標の達成に向けて、再生エネルギー由来の非化石証書付きの電力受給契約のほか主力工場における太陽光PPAモデルによる使用電力の一部再生エネルギー化を実施する等により、2030年までに2021年度比で50%以上の削減をはかってまいります。
2023年度の排出量は、主力の工場・事業所における非化石証書付き電力を導入及び太陽光発電設備の増設、太陽光PPAモデルの活用等により前年比で大幅に減少し、2030年度目標を前倒しで達成しております。現在集計中の2024年度排出量は、連結子会社の増加及び従業員数増加に伴う事業所の拡大等がありましたが、2023年度中に実施した上記再エネ電力の導入等により、前年比で減少となる見込みです。
三菱化工機グループ 温室効果ガス(Scope1+2)排出量削減目標(単位:t-CO2)
※()内は基準年度比増減率を示しております。
※2024年に係る排出量は推計値を表示しており、算定完了後、
b.社会課題への貢献に寄与するGX事業の成長を加速(マテリアリティ:Ⅰ)
当社は、2025年4月、CO2・気候変動をはじめとする社会課題の解決に資する4つの戦略的事業領域のさらなる推進・拡大をはかるため、この事業領域を「GX事業」として全社の注力領域に再定義しました。GX事業のうち、①持続可能な循環型社会推進事業、②水素を核としたクリーンエネルギー事業、③デジタル技術を活用した省力・省エネ事業の3つは、当社グループのサプライチェーン全体のCO2排出量削減につながるものであり、2035年度までの中核事業化を目指しています。
このような事業ポートフォリオ改革を進め、2035年度までにGX事業の売上高を500~600億円にまで拡大すべく、取り組みを進めてまいります。
GX事業 売上高計画(単位:百万円)
(3)人的資本
当社グループは『モノづくりに根ざした確かな技術と徹底した品質管理に基づく高品質な製品・設備を提供し社会の発展に貢献する』ことを企業理念としています。この理念の実現に向け、「人」は最大の経営資本であり、重要なリソースであると考えています。経営ビジョンの実現に向けての当社グループ人材については、のAs is(現状)からTo be(理想)を描き、制度を通じた人材育成を行うための人事制度を導入し、整備・運用しています。さらに、従業員一人ひとりが心身ともに健康で、働きがい(働きやすさとやりがい)を感じながらイキイキと活動できる環境を育むことにより、個人と企業がともに成長・発展することのできる職場環境と風土づくりを推進しています。
①ガバナンス
取締役社長を含む経営陣幹部の任命は、すべてのステークホルダーにとって企業の中長期的発展・サステナビリティに関わる最も重要な事項のひとつであることから、当社においては指名報酬委員会を設置し、経営陣幹部の選解任及びサクセッションプランを意識した経営人材プール・人材育成状況のモニタリング等を行っています。また、従業員は事業活動を支える最も重要な経営資本であることから、職業能力を伸長・発揮することができるよう、経営陣幹部を構成員とする人事管理委員会を設置し、人事評価・昇降格その他人事管理に関する適正な運用の確保に努めるとともに、当該委員会に設けた分科会において主要役職の人材プールを設定し、計画的な人材育成に努めています。
②戦略
当社は、高い技術とプロ意識を持ち、「人の和」と「ルールの遵守」を重視する人材を育成することを人材理念の最初に掲げています。その理念に基づき以下の取り組みを行っています。
ⅰ)各部門において日常業務を通じて継続的に行われるOJT及び職場内教育
ⅱ)人事部門において計画的に実施する新入社員研修・若手フォローアップ研修
ⅲ)人事制度上の役割等級に応じた研修である階層別教育訓練・職能別専門教育訓練や次世代経営人材の選抜研修
ⅳ)従業員が自発的に受講することのできる通信教育や自己啓発支援金制度
ⅴ)業務を通じての能力発揮機会の提供
これらを組み合わせて継続的に実施していくこととしています。
これにより、国内連結会社における2024年度の教育訓練費実績は47百万円(前年比:108.6% ※前年度:43百万円)であり、予算を拡充して能力開発を支援しています。
経営ビジョンの実現に向けて事業領域のシフト・拡大を推進するとの観点から、行動力・実行力、自律性、高い技術力及び倫理観等の能力を備える人材を育成することが必要と考え、自らの役割を主体的にとらえて創造性を発揮する自律型人材の育成を進めるべく、各人の役割から具体的に導かれる遂行実績(成果)とそれを創出するための行動・プロセスを評価する人事制度、及び自律的な教育訓練・リスキリングを支援する研修制度を導入しています。
また、働き方改革や職場風土改革の活動を通じて自由闊達で一体感のある職場風土を醸成し、社内に異なる経験・技能・属性を有する多様な人材が活躍できる職場環境を整備し、会社の持続的な発展に努めています。
具体的な取り組みについては、以下のとおりです。
ⅰ)働き方改革・ワークライフバランス
2019年度に働き方改革PJチームを設置し、ダイバーシティと生産性向上の取り組みを継続して推進しています。従来から実施しているフレックスタイム制度に加えて、テレワーク勤務制度、電子化の促進、Web会議システムの導入等、柔軟かつ多様な働き方を実現できる環境整備を行っています。また、新しい働き方に対応すべく事務所の集約・移転を実施いたしました。加えて、現在進めています川崎製作所の建替えにあたっては、より一層の働き方改革につながるようワークプレイスコンサルを起用し、若手従業員が中心となって検討に参加し、エンゲージメントの向上も目指しています。
ⅱ)育児休業等取得のための環境づくり
次世代育成支援の取り組みとして、仕事と育児を両立させることのできる働きやすい職場環境づくりを進めております。法定の育児休業等に加えて、産前産後の配偶者の特別休暇制度、失効年休積立による看護・介護休暇の有給化、育児短時間勤務制度、ジョブリターン制度等を整備しています。女性従業員はもとより、特に男性従業員の育児休業取得率の向上を目標に施策を実施しており、2024年度の実績では男性育児休業の取得率は80%となっています。
ⅲ)職場風土改革の実践
2014年度より風土改革推進委員会を設置し、全従業員にエンゲージメント調査(エンゲージメントに影響する項目に係る全従業員の意識と組織状況を調査。)を行い、その結果に基づいた風土改革活動を継続して実施しています。2024年度は前年比で0.9ポイント向上し、従業員がより働きやすい環境を感じ組織への愛着や一体感を強めている傾向が確認できた一方、発言・意見や成果に対する承認や理念・戦略の共感などの項目に改善余地がある結果となりました。従業員一人ひとりが当社の従業員として誇りと責任を持ち、イキイキと働き、仕事を通して更なる自己実現ができる企業風土へと変革させ、多様な人材の活躍を価値創造につなげることができるよう、今後もこの活動を継続してまいります。
ⅳ)ダイバーシティ&インクルージョン
経営ビジョンの実現に向けての事業領域を推進・展開していくためには、多様な背景や価値観を持った従業員が共通の目的の下でさまざまな役割を担い業務活動を行っていくことにより組織全体の成長力を高めることが必要であり、多様性は当社にとって重要な財産であると考えています。多様性確保のため、女性従業員数・外国人従業員数の拡大、キャリアを中断させない仕組みづくり、障がい者雇用の促進をはかっています。
ⅴ)社内公募制度
従業員が当社における自らのキャリアを主体的にデザインし、自己研鑽や早期育成の促進をはかる仕組みを整備しています。また、本人希望や適性をマッチングさせたジョブローテーションや育成等に資するため、キャリアデザインシートによる自己申告を実施し、従業員のキャリア開発を支援しています。これに加えて2022年度からは、社内公募制度を開始し、従業員がより自律的、かつ積極的にキャリアを形成し、キャリアオーナーシップを持って働くことのできる環境を整備しています。これによって、従業員は自己の能力を最大限発揮し、多様な役割を経験する機会を得ることができ、やりたい業務に従事できることから組織力の強化にも好影響をもたらしています。
ⅵ)人権尊重の取り組み
当社グループは、社会の課題解決に積極的に取り組み、環境保全を含む持続可能な社会の実現に貢献することを経営ビジョンに掲げています。当社グループは、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権が尊重されなければならないことを理解し、「三菱化工機グループ行動憲章」並びに2011年6月に国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「三菱化工機グループ人権方針」を定め、当社グループ全体で人権尊重の取り組みを推進しています。
ⅵ)安全衛生に関する取組み
安全・衛生は経営の基盤であり、すべての事業活動に優先するという基本理念の下、安全で安心して働くことができる職場環境の実現に向けた活動を継続して実施しています。工場・建設現場での安全確保に関する取り組みはもとより、心の健康を守るための産業保健スタッフによる面談や研修を行うとともに、ハラスメント防止にかかる制度を導入し、2024年4月には安全衛生を専任とする部門を設置し、活動の強化と充実をはかっています。
③リスク管理
会社の事業活動においては、多様な人材が集まり、一人ひとりが職業能力を最大限発揮できることが重要と考えています。人材の流動性が高まり、少子化による売り手市場のもと、採用競争力が低下して計画した人材獲得ができなくなることや、従業員の離職により組織の総合力が低下することは、当社にとって重要なリスクであると認識しています。そのため、雇用・人事・人材流出をリスク管理委員会において重大なリスクの一つと捉え、定期的にリスクアセスメントの状況をモニタリングして必要な対策を講じています。
④指標と目標
上記の②戦略に係る指標につきましては、当社においてはこれらに係る具体的取り組み及び関連する指標のデータ管理が行われているものの、当社連結グループに属する全ての会社で一律には行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
(1)女性の採用促進と管理職への登用
当社は、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、女性が職業生活において一層活躍することのできる雇用環境の整備に努めてきましたが、女性従業員の割合が低いこと、女性管理職がいないことが課題でありました。近年は、正社員の採用者における女性比率の向上等に努め、2025年3月末現在、従業員に占める女性の割合は約14.4%であり女性の管理職5名の登用に至っております。女性従業員は増加しつつあるものの、従業員に占める割合をより高めることが、ダイバーシティの観点において人員構成の適正化につながると考えており、正社員の採用に占める女性比率を20%以上とすることを目標として採用活動を一層強化します。
(2)中途採用者の管理職への登用
当社は、上記の多様性の確保についての考え方に基づき、中途採用者の人材の確保にも取り組んでいます。2025年3月末現在、管理職の約49.4%を中途採用者が占めており、今後も現状以上を維持することを目標としております。
(3)外国人の管理職への登用
当社は、上記の多様性の確保についての考え方に基づき、外国人の人材の確保にも取り組んでいます。2025年3月末現在、外国人管理職1名の登用に至っており、今後も現状以上を維持することを目標としております。
当社グループは人的資本に関する取組みを通じて、持続可能な成長を実現するための基盤を強化し、社会貢献に努めます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、本項における将来に関する事項は、連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの主要顧客である化学・石油・ガス・海運業界及び公共下水処理等の設備投資の動向により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、経済情勢による業績への影響を最小限に抑えるため、アフターサービスやメンテナンス工事を拡大することで収益のベースロードを確保すること、また、2025年4月より「三菱化工機グループ2050経営ビジョン」で新たな成長分野として設定した5つの社会課題に対応する4つの戦略的事業領域に係わる事業を「GX事業」とし、新たな報告セグメントとして設定し、事業の推進・拡大に取り組んでおります。
当社グループの受注は請負契約が主体であり、激化する価格競争の中で、競合先に対して価格優位性が保てない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、差別化技術の深化・創出、コスト競争力の強化等により、競合先に対し価格優位性を保てるよう努めております。
受注から引渡しまでの工期が長期に亘る工事もあり、急激な素材価格等の上昇は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、販売価格への転嫁、早期発注の実施などの対策に努めると共に、調達体制の見直し、グループ調達・共同購買の強化による資材費圧縮に取り組んでおります。
多額のコストを必要とする製品欠陥が発生する場合、また、建設工事現場において事故・災害が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、製造する製品及び建設工事について安全・品質管理体制を整備し、高い品質の確保・維持に努めております。
海外企業を調達・下請先として利用することがある場合、これら海外企業の品質不良・納期遅延や倒産等により、プロジェクトの採算が悪化することがあります。海外取引先の選定・管理を誤ると、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、海外取引先に対し、事前の与信調査の実施、下請先として選定する際の評価基準を定め、安定したサプライチェーンの構築をはかっております。
雇用環境の変化が急速に進むなかで必要とする人材の確保ができなかった場合、当社グループの事業に必要な技術を有するエンジニアの確保と育成ができない場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、優秀な人材を確保及び育成するため、積極的な新卒・中途採用者の採用、部門別・階層別の研修の継続による社内教育に努めております。
研究開発の結果生み出した新製品・新技術及び技術提携により導入した技術が販売目標を達成できない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、第2「事業の状況」6 研究開発活動 の記載にありますとおり継続的な研究開発を行っており、販売活動へつながるよう努めております。
顧客企業及び仕入先企業の業績不振、倒産等によって入金遅延、納期遅延等が発生する場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事前の与信調査を実施するとともに、販売部門及び調達部門が、定常的に取引先の情報収集を実施することで経営成績等に与える影響を最小限にするよう努めております。
外貨建取引における他の通貨に対する円高は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、外貨取扱基準等を定め、為替予約を実施する等により為替リスクの極小化に努めております。
当社グループは取引先、金融機関等の市場性のある有価証券を保有しておりますが、株価の下落によって保有有価証券に評価損が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、保有有価証券は定期的に時価及び発行体の財務状況等を把握しております。また、政策保有株式については、個別銘柄ごとに保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを検証しております。
当社グループの退職給付費用は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率により算出しており、割引率の低下や年金資産運用利回りの悪化は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、このような数理計算上の差異の発生に伴う損益変動リスクに対応するため、年金資産の運用は、適宜、情報を取得し、安全性を考慮した投資配分に努めております。また、退職給付制度には確定給付型と確定拠出型を組み合わせた制度を導入しております。
(12) 借入金の財務制限条項
当社グループの借入金の一部については、シンジケーション方式によるコミットメントライン契約を締結しております。当該契約には、融資契約上の債務について期限の利益を喪失する財務制限条項が定められており、これに抵触した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、財務制限条項の要求基準を安定的に充足するべく業務運営に努めております。
従業員等による業務上の不法行為や違法行為により当社グループは刑事上、民事上、行政上の責任を負うことがあります。これらの処分に加え、社会的な信用を失うことは、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、内部統制委員会を設置しており、コンプライアンスの観点から、当社グループ全体の内部統制システムの構築運営状況のモニタリング、個々の業務活動の適正性の調査を行うとともに、各部門・各子会社により実施されるチェックの有効性を確認しております。
地震や風水害等の災害が発生した場合に、当社グループの主要な生産拠点における生産設備、製品等が破損することがあります。また、これらの災害に起因するサプライチェーンの混乱は、当社グループの生産活動をはじめとする事業全般に影響を及ぼすことがあります。これらの災害により直接的・間接的な被害が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、感染症のまん延などにより、当社関連工場や現場での当該感染者の発生、及び資機材の納期遅延などによる既存工事または計画における工程遅延の発生、そして、感染症の終息長期化に伴う景気後退による顧客の設備投資やメンテナンス工事などの減少、延期、中止などは、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、可能かつ妥当な範囲で保険を付保し、自然災害による損害軽減をはかるとともに、事業継続計画(BCP)の定期的な見直し、定期的な設備点検、従業員の衛生管理等予防措置を行っております。
(15)気候変動
世界の二酸化炭素の排出量の増加による地球温暖化は、大型台風や集中豪雨等の自然災害の激甚化・増加、平均気温の上昇による猛暑等をもたらすなど、経済社会環境へ様々な影響があります。また、これらの抑制のための社会的要求や、環境規制等に伴う製品・設備・職場環境等の低炭素、脱炭素への移行は、当社の製品の研究・開発、生産など、経営全般に亘って当社グループに影響をもたらします。これらは、当社グループのみならず、当社グループのサプライチェーンへの影響を通じて、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(16)情報セキュリティ
当社グループは、事業活動を通じて得意先情報や個人情報等の機密情報を保有しております。これらの情報について、外部からのサイバー攻撃等により機密情報が漏洩した場合、社会的信用の低下や損害賠償の発生等により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、情報システム運用に関する厳格な管理体制を構築し、情報の取扱い等に関する規程類の整備・充実やeラーニング等による教育等、従業員への意識向上に取り組んでおります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、個人消費は一部に足踏みが残るものの持ち直しの動きがみられ、企業収益の改善を背景に民間設備投資は堅調であり、景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方で、ウクライナや中東での紛争長期化等地政学的リスクの高まり、円安傾向が続く中での物価上昇、エネルギー価格や原材料価格の高騰、また、米国の政策動向等、依然として先行き不透明な状況が続きました。
このような事業環境の下、当社グループは、受注の確保及びコスト改善への取り組みを通じて、営業利益の確保と業績向上に努めるとともに、「三菱化工機グループ2050経営ビジョン」及び「中期経営計画」で目標としている戦略的事業領域での新規事業創出に向けて、関連案件への取り組みを推進するとともに、M&Aによる株式会社東総(2025年4月1日にMKK東北株式会社に商号変更。以下同じ。)の連結子会社化、本社・川崎製作所の再構築に関する基本計画の策定・公表を行う等、企業価値向上に努めてまいりました。
売上高は、59,202百万円と前連結会計年度と比べ23.9%の増加となりました。
損益面におきましては、人件費等の増加による販売費及び一般管理費の増加がありましたが、売上高の増加による売上総利益の増加等により、営業利益は前連結会計年度に比べ29.1%増加の5,694百万円、経常利益は前連結会計年度に比べ19.5%増加の5,626百万円となりました。また、特別利益に投資有価証券売却益939百万円、事業譲渡益540百万円を計上いたしましたが、前連結会計年度の特別利益に投資有価証券売却益を2,716百万円計上したこともあり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ9.6%減少の4,879百万円となりました。
エンジニアリング事業については、売上高41,171百万円(前年同期比26.6%増加)、営業利益1,924百万円(前年同期比21.1%増加)となりました。
単体機械事業については、売上高18,031百万円(前年同期比18.1%増加)、営業利益3,770百万円(前年同期比33.6%増加)となりました。
財政状態におきましては、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ3,004百万円増加の66,174百万円となりました。流動資産は、現金及び預金の減少4,359百万円等がありましたが、受取手形の増加288百万円、電子記録債権の増加2,222百万円、売掛金の増加1,016百万円、契約資産の増加2,294百万円、主として前渡金の増加による流動資産のその他の増加859百万円等の影響により、前連結会計年度末に比べ2,578百万円増加し、50,839百万円となりました。
固定資産は、政策保有株式を売却したこと等による投資有価証券の減少471百万円、有形固定資産の減少1,057百万円等がありましたが、退職給付に係る資産の増加391百万円、無形固定資産の増加1,801百万円等の影響により、前連結会計年度末に比べ426百万円増加し、15,335百万円となりました。
負債は、契約負債の増加2,410百万円、主として未払金の増加による流動負債のその他の増加412百万円等がありましたが、電子記録債務の減少2,821百万円、未払法人税等の減少700百万円等の影響により、前連結会計年度末に比べ644百万円減少し、27,947百万円となりました。
純資産は、政策保有株式を売却したこと等によるその他有価証券評価差額金の減少211百万円等がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加3,827百万円等の影響により、前連結会計年度末に比べ3,649百万円増加し、38,227百万円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、税金等調整前当期純利益の計上や、大型工事に係る契約負債の増加、投資有価証券売却による収入等により一部相殺されたものの、売上債権の増加や、固定資産の取得による支出、法人税等の支払い、配当金の支払い等の結果、前連結会計年度末に比べ4,359百万円減少し、当連結会計年度末には10,822百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は、3,311百万円となりました(前連結会計年度は1,360百万円の獲得)。これは、税金等調整前当期純利益の計上6,820百万円、減価償却費の計上862百万円、契約負債の増加2,292百万円等により資金が増加いたしましたが、退職給付に係る資産及び負債の減少523百万円、投資有価証券売却損益の計上939百万円、事業譲渡益の計上540百万円、売上債権及び契約資産の増加5,471百万円、仕入債務の減少3,111百万円、法人税等の支払2,677百万円等の影響によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により獲得した資金は、前連結会計年度に比べ1,326百万円減少し、43百万円となりました。これは、固定資産の取得による支出1,084百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得1,999百万円等がありましたが、固定資産の売却による収入1,551百万円、投資有価証券の売却による収入1,099百万円、事業譲渡による収入540百万円等の影響によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、前連結会計年度に比べ192百万円増加の1,047百万円となりました。これは、主に配当金の支払額999百万円等に資金を使用したことによるものであります。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価額によっております。なお、セグメント間の内部売上高又は振替高はありません。
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価額によっております。なお、セグメント間の内部売上高又は振替高はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の内部売上高又は振替高はありません。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりであります。
当連結会計年度における売上高は、エンジニアリング事業において前期までの大型案件の受注が売上に寄与し、単体機械事業では、前期に引き続き好調な造船業界及び海運業界を顧客とする三菱油清浄機本体及び部品、環境規制対応機器等の販売が増加し、前連結会計年度に比べ11,428百万円増加し、59,202百万円となりました。営業利益は、売上増加による販売手数料の増加、賃上げ等による人件費等の増加、広告宣伝費の増加等により販売費及び一般管理費が増加いたしましたが、売上高の増加により売上総利益が増加し、前連結会計年度に比べ1,284百万円増加し、5,694百万円となりました。経常利益は、前期に為替差益を計上しておりましたが、当連結会計年度では為替差損を計上したこと、営業利益が増加したことから前期に政策保有株式を売却したことによる受取配当金の減少による営業外収益の減少がありましたが、前連結会計年度に比べ916百万円増加し、5,626百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益に投資有価証券売却益939百万円、事業譲渡益540百万円を計上いたしましたが、前連結会計年度の特別利益に投資有価証券売却益を2,716百万円計上したこともあり、前連結会計年度に比べ517百万円減少し4,879百万円となりました。
当連結会計年度末における総資産は、現金及び預金の減少、有形固定資産の減少、政策保有株式の売却による投資有価証券の減少、繰延税金資産の減少等はありましたが、売上増加による売掛債権の増加、のれん及び顧客関連資産の増加による無形固定資産の増加、退職給付に係る資産の増加等により前連結会計年度末に比べ3,004百万円増加し、66,174百万円となりました。純資産についても、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により3,649百万円増加しましたが、総資産増加の影響が大きく、当連結会計年度末の自己資本比率は57.8%と前連結会計年度と比べ3.1ポイント増加いたしました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、当社グループは、2022年度から3ヶ年の中期経営計画において、売上高55,000百万円、営業利益3,200百万円、営業利益率5.0%以上、ROE7.0%以上を達成目標としておりました。中期経営計画(2022年度~2025年度)の最終年度となる当連結会計年度は、売上高は59,202百万円と計画を達成し、利益面でも、売上高が増加したこと、売上原価率の改善等により営業利益は5,694百万円、営業利益率は9.6%、ROE13.4%となり大幅に計画を達成することができました。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
エンジニアリング事業では、顧客ニーズの掘り起こしをはかり、民間向け各種プラント・装置及び官公庁向け下水処理装置の受注確保に努めてまいりました。昨年6月には、戦略的投資の取り組みの一つとして、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)製品の製造・販売及び公共施設の維持管理業を手掛ける株式会社東総の全株式を三菱マテリアルテクノ株式会社より取得し連結子会社化いたしました。また、クリーンエネルギー及びバイオガス関連の技術の拡充・強化のための協業、各種研究及び実証試験に引き続き取り組んでまいりました。海外関係では、半導体需要を背景に設備投資が旺盛な台湾の支店拡充をはかりました。
受注高は、国内の堅調な設備投資を背景に、民間向け案件では各種プラント・装置、また官公庁向け案件では下水処理装置の成約を得ることができましたが、前連結会計年度は大型案件の受注が複数あったため、44,464百万円(前連結会計年度は78,079百万円)と前連結会計年度を43.1%下回りました。
売上高は、41,171百万円(前連結会計年度は32,512百万円)と前連結会計年度を26.6%上回りました。
単体機械事業では、主力製品である三菱油清浄機の拡販と各種単体機械の提案型の営業活動を展開し、受注確保に努めてまいりました。また、モジュール型の医薬品製造設備「iFactory®」の開発事業と普及への取り組み、船舶環境規制対応機器等の受注確保、新型の小型連続ろ過機の市場投入、藻類分離・濃縮等クリーンエネルギー分野における三菱油清浄機の用途開発、案件開拓等を引き続き推進いたしました。
受注高は、三菱油清浄機本体及びそのアフターサービス部品並びに船舶環境規制対応機器が前連結会計年度を上回る成約を得ることができ、各種単体機械も前連結会計年度を上回り、20,463百万円(前連結会計年度は15,782百万円)と前連結会計年度を29.7%上回りました。
売上高は、18,031百万円(前連結会計年度は15,261百万円)と前連結会計年度を18.1%上回りました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係わる情報
キャッシュ・フローについては、税金等調整前当期純利益は大きなプラスとなりましたが、売上増加による売上債権の増加、支払サイトを短縮したこと等による仕入債務の減少等の影響が大きく、営業キャッシュ・フローはマイナスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却等によりわずかにプラスとなりましたが、営業キャッシュ・フローがマイナスとなったことの影響が大きく、フリーキャッシュ・フローは3,268百万円の減少となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、資金調達については銀行からの借入により行っております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は昨年より減少しておりますが、依然として高い水準を確保していることに加え、当社は取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメントライン契約を締結し資金の流動性を高めております。なお、当連結会計年度末における当該契約に基づく借入未実行残高は5,300百万円となっております。
当社グループの資金需要の主なものは、事業に係る運転資金と工場用機械設備等の設備投資資金であります。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針等につきましては、注記事項「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
当社は、2024年5月31日開催の取締役会において、株式会社東総の全株式を取得し子会社化することを決議するとともに、同日付で株式譲渡契約を締結し、2024年6月28日付で全株式を取得し子会社化しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当社グループの研究開発活動は、既存技術・各種装置の高度化並びに技術の差別化・競争力の向上を目指し、開発を行っております。また、新分野への積極的展開及び新技術・新製品開発を行っており、当連結会計年度におけるセグメント別の研究開発費は、エンジニアリング事業
(エンジニアリング事業)
「廃プラスチックのガス化及びメタノール化実証事業」
世界では海洋プラスチック問題が社会問題化するなど環境保護等の観点から、プラスチックのリサイクル方法確立の必要性が急速に高まっており、本事業はこれまで廃棄されていたプラスチックについて、ケミカルリサイクルによる資源循環システム構築を目指すものです。
現在、実用化されている廃プラスチックのリサイクル技術は、リサイクル品の品質を確保するため、原料に一定の純度・清浄度が求められております。
純度・清浄度が低く、リサイクルが困難な雑多なプラスチック(以下、雑多な廃プラ)は、単純焼却・熱利用焼却・埋立てにより処理されておりますが、プラスチック資源の循環と脱炭素化をいかに両立していくかが大きな課題となっております。
上記のような課題に対し、流動床ガス化技術を有する神鋼環境ソリューション、廃プラスチックのケミカルリサイクルを推進する大栄環境及びDINS関西、水素製造・合成ガス製造技術を有する当社及び環境循環型メタノール構想を推進する三菱ガス化学は、循環型社会の構築に貢献するために、廃プラスチックの有効資源化を進めたいという共通の思いのもと、雑多な廃プラであっても処理可能な流動床式ガス化技術をベースに、雑多な廃プラをガス化して得られた合成ガスからメタノールを合成する、国内初のケミカルリサイクル技術を構築する共同実証プロジェクトを実施しました。当社は、水素製造技術等で培った触媒技術・ガス改質技術を活用し、廃プラスチック等のガス化炉から得られる合成ガスをケミカルリサイクル可能なガスに改質するプロセスの検証を行い、メタノール合成に適した改質ガスを製造することに成功致しました。今後はスケールアップ検討を実施し、商用化に向けた取り組みを継続してまいります。
「高効率消化システムによる地産地消エネルギー活用化技術」
B-DASH実証事業として、唐津市浄水センターに建設した実証施設は、2019年度より自主研究として実負荷運転を継続してまいりました。2020年3月には、国土交通省及び国土技術政策総合研究所(国総研)より本技術に関するガイドラインが公表され、技術的な方向性が明確化されました。昨年度2024年度(自主研究6年目)は、国総研との契約に基づく最終年度として、自主研究の最終報告を2025年3月に完了しております。
また、唐津市浄水センターにおいては、2023年3月に既設の消化タンク(容量:1,860m³)の機械設備改修に伴い、当社の可溶化装置を加温設備として導入しております。本装置は、自治体向けとしては初の導入事例となります。
この導入により、当浄水センターで発生する汚泥の全量を高効率消化システム(熱可溶化方式)により処理するシステムが整い、導入効果の継続的な調査を実施しております。
2024年度の調査結果として、以下の成果が確認されました。
·排出汚泥量:約45%削減
·放流水質への悪影響:確認されず
これらの成果は、2025年8月に開催予定の「第62回下水道研究発表会」において報告を予定しております。
別途、今後の市場拡大が見込まれる汚泥集約処理に向け、外部汚泥の受け入れに対応した可溶化装置の適用に関する研究も進行中です。
国内の各自治体においても脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速する中、引き続き本システムの導入促進及び拡販を積極的に推進してまいります。
(単体機械事業)
「iFactory®の開発」
NEDO(*)が取り組む「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/テーマ設定型事業者連携スキーム」の一環で、当社は現在のバッチ式製造法にかわり、連続生産方式を採用した再構成可能なモジュール型の医薬品製造設備「iFactory®」(アイファクトリー)の開発に参画しております。
当社は連続真空ろ過機「CURUPO®」(クルポ)と連続棚段乾燥機「プレートドライヤ―」を、プロセスに応じて組み換え可能なモジュール「iCube」内へ組み込み、制御システムの動作検証、自動運転調整を行った後、2022年10月に株式会社高砂ケミカル様の掛川工場iFactoryに納入致しました。その後、iFactoryを構成する前後段のiCube、ユーティリティを構成する「iConnect」と連結され、消防検査を経て、2023年2月、掛川工場iFactoryの竣工式が執り行われ、iFactory全体の運転検証を開始しております。
2023年4月より開始した実証試験では3種類の化合物を連続生産し、バッチ生産と同等の品質が確保されていることを確認しました。更に本開発の功績が特に顕著であると認められ、2023年度「NEDO省エネルギー技術開発賞」最優秀事業者として「理事長賞」を受賞致しました。
また、最新の実証結果から、連続晶析したスラリーの濃縮装置として回転式セラミック膜ろ過機「DyF(ダイナフィルタ)」が新たなラインナップに加わりました。当社は「iFactory®」の普及により、生産性の向上とCO2排出量の大幅な削減を目指してまいります。
* NEDOは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の略称。本内容成果の一部は、NEDOの助成事業の結果得られたものです。
(その他)
「微細藻類によるカーボンニュートラル社会の実現を目指した研究開発」
当社は、製造機能を兼ね備えたエンジニアリング会社として、カーボンニュートラルな社会を実現できるよう取り組んでおります。その1つとして、微細藻類を原料としたバイオジェット燃料開発への研究協力など、微細藻類に関連する取り組みを進めております。
2022年度に国立研究開発法人科学技術振興機構「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)・共創分野(本格型)」に採択された、「バイオDX産学共創コンソーシアム(代表機関:国立大学法人 広島大学)」の『Bio-Digital Transformation(バイオDX)産学共創拠点』に当社も参画し、東京科学大学太田啓之名誉教授のもと「カーボンゼロを推進するバイオものづくり」を目標に、「微細藻類および植物による有用物質生産プラットフォームの開発」として、当社川崎製作所敷地内の実証エリア(200㎡)に、当社製品である都市型フォトバイオリアクターとレースウェイ培養装置を複数基設置し、多角的な微細藻類の研究開発を実施しております。藻類培養に必要な二酸化炭素は、隣接する当社の水素製造装置「HyGeia-A」の排ガスを供給源とし、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)をはかっています。
また、ちとせグループが運営する『MATSURI(まつり)』の活動に賛同し、ゴールドパートナー契約を締結しています。『MATSURI』は多様な業界から様々な企業が参加している藻類を活用した企業連携型プロジェクトで、光合成を活用した藻類の生産を通じてカーボンニュートラル実現を推進すると同時に、パートナー企業間で連携して事業開発を行い、再生燃料をはじめプラスチックや食品、化粧品など人々の生活を支える藻類製品を社会に普及させることを目指します。
ちとせグループの中核法人である株式会社ちとせ研究所は、2023年3月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/バイオものづくり技術による二酸化炭素を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」に「光合成によるCO2直接利用を基盤とした日本発グローバル産業構築」のテーマで採択され、マレーシアでの大規模実証が進められています。当社は微細藻類ソリューション技術やエンジニアリング技術を応用して、新規事業を見据えた新たなソリューションの開発・提案に取り組み、サステナブルな社会づくりに貢献してまいります。
「電界フィルターEle-Fil®の開発」
膜分離をはじめとする従来のろ過法は、微粒子をろ材が濾し取る直接ろ過方式です。ろ過はケーク形成や目詰まりによる性能低下という恒久的な問題を有しています。ケーク形成や目詰まりが進行すると、ろ液が流れにくくなり、処理量が低下していきます。この問題の解決に取り組んでいた際に、ろ液中の粒子は弱いマイナスの電荷を帯びていることに着目し、荷電粒子間に働く反発を利用する「電界ろ過法」を開発しました。本装置は電気を利用したろ過方法をイメージして、Electric Filter の略称「Ele-Fil®」と命名しました。
電界ろ過法とは、積層構造の電極ろ板に形成された電界バリアの電気的反発作用を利用した非接触ろ過方法です。ろ過室に供給されたスラリー液(原液)を、電界ろ過法によって精密にろ液と濃縮液に分離できます。ナノ(nm)レベルの細かい粒子のろ過が適応できます。
電界ろ過法は従来困難とされていた精密分離や、分離時間の短縮、メンテナンス性の向上など、様々な可能性が期待されます。社会実装に向けて、多くの用途開発を実施してまいります。
「CO2分離膜を利用したCO2分離回収型水素製造装置とCO2有効利用技術の開発」
当社と次世代型膜モジュール技術研究組合(以下、MGM組合という)は、両者が共同提案した「高圧用CO2分離膜の水素製造システムへの適用性検討」が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という)が公募した、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2分離・回収技術の研究開発/二酸化炭素分離膜システム実用化研究開発」の助成事業として、2024年5月に採択されました。
MGM組合が開発しているCO2分離用分子ゲート膜は、二酸化炭素を選択的に透過する特性があります。この分離膜を水素製造工程に適用するため、同組合は分圧・濃度が低い中圧水素製造工程ガスからでも安定的に高効率に二酸化炭素を分離・回収できるよう、分子ゲート膜をチューニングし、商用サイズの膜エレメントを提供します。当社は、水素製造装置に分離膜を組み込んで、高純度水素製造と二酸化炭素回収機能を有する実証機を設計・製作し、2026年度に実証試験を行う計画です。2024年度は水素とCO2の精製に関する要素試験を実施、またCO2分離膜の特性に適合した運転条件と制御方法を検討し、高効率なCO2分離回収型水素製造装置の基本設計を行いました。
当社では別途PSA法による二酸化炭素回収技術にも取り組んでいますが、分離膜を適用する本技術は、二酸化炭素を分離しやすい水素製造工程で分離するため、コスト低減が期待できます。
当社とMGM組合は、実証試験の結果をもとに二酸化炭素分離回収コスト、低炭素水素製造コストの評価を行い、2030年に予想される低炭素水素市場価格や二酸化炭素市場価格に経済的に見合った製造コストとするための課題を洗い出し、早期の社会実装を目指します。
また、二酸化炭素回収装置を普及させるためには、回収した二酸化炭素の有効利用方法も重要な課題です。当社ではその一つとして、メタネーション装置の開発に取り組んでいます。同装置は分離回収した二酸化炭素と水素を反応させメタンを合成する技術で、反応させる水素が再生可能エネルギー由来の場合には、カーボンニュートラルなメタンが製造可能となるため、カーボンニュートラルに貢献できる技術として期待されています。現在、ベンチスケールでの試験を行っており、今後実証機を製作し、当社川崎製作所内の実証水素ステーションで、実証試験を行う計画です。
「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステムの研究開発」
当社は、東海国立大学機構 岐阜大学、株式会社レゾナックと共同で、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題「スマートエネルギーマネジメントシステムの構築」の研究開発テーマ「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」に取組んでおります。
アンモニアは早期に社会実装可能な脱炭素エネルギー及び水素キャリアとして期待されておりますが、現状産業・運輸・民生分野でのアンモニア利用の用途は非常に少なく、アンモニア・水素利用の拡大を可能とする技術開発が喫緊の課題であり、2030年社会実装を目指して早急に取り組む必要があります。
SIPの研究開発テーマ「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」は、アンモニアの使用先として期待の高い、工業炉、ボイラー、ガスエンジン及び燃料電池発電システム、コミュニティ内水素搬送・利用システムの要素研究と実証研究を目的としており、当社はボイラー等の燃焼器向けアンモニア改質器ユニットと、燃料電池向けアンモニア改質器ユニットの研究開発を行っております。2024年度は、燃焼器向けアンモニア改質器ユニットの実証試験装置について設計を完了し、機器調達、製作に着手、加えて燃焼器向けアンモニア改質器ユニット用触媒(ATR触媒)のスクリーニングを実施しました。また、燃料電池向けアンモニア改質ユニットは全体システム検討と燃料電池向けアンモニア改質ユニット用触媒(分解触媒)のスクリーニングを行いました。
研究開発期間は2028年3月までを予定しており、今後は実用機設計・製作を進め、早期の社会実装を目指します。