第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

<長期ビジョン:「E-Vision2030」>

当社グループは1912年の創業以来、創業の精神である「熱と誠」のもとに、「水と空気と環境の分野で広く社会に貢献する」ことを企業理念とし、事業を行ってきました。創業当時は日本の水インフラの整備に貢献し、「水を安全かつ安定的に供給するための事業を通じて国づくりに貢献する」という意思をもって社会の要請に応えてきました。第2次世界大戦からの戦後復興と高度経済成長期には、産業インフラや都市化による建設需要に対して、さまざまなニーズに基づく多種多様な風水力製品・サービスや、市民生活の高度化に伴って生じる廃棄物を処理する焼却設備等を提供してきました。さらに、情報化社会の進展に伴う半導体の爆発的な需要拡大に対して半導体製造装置・機器を開発し、進化する情報化社会に貢献しています。近年は持続可能な社会の要請に対して製品の省エネ化を徹底するなど、事業を通じて社会の様々な課題の解決に貢献してきました。

今後100年の人類社会や地球環境を展望した場合、多くの課題が考えられますが、当社グループは、気候変動、特に温暖化現象の悪化による異常気象と自然災害の激甚化、海面上昇による高潮、陸地の浸食、さらには食料や水の資源枯渇等を大きな課題と捉えています。また、高度情報化社会はますます進化し、デジタル社会の加速によりライフスタイルが大きく変化することが予想され、社会を支える半導体の技術革新はさらに進むとともに需要も拡大していくと考えられます。

このように事業環境が見通しにくい中で、当社グループが今後も社会課題の解決を通じて更なる成長を続けていくためには、今後の社会の展望と課題を認識したうえで、将来のありたい姿を描き、その実現に向けた方針・戦略を明確にすることが不可欠と考え、2020年2月に長期ビジョン「E-Vision2030」を策定しました。


 

<5つのマテリアリティ>

荏原グループは今後も “荏原らしさ”、培われた技術力および信頼性を強みとして、事業を通じてさらに広く社会に貢献し続けていきます。また、2030年に向けて荏原グループが解決・改善していく重要課題を「5つのマテリアリティ」として設定し、その実現プロセスを価値創造ストーリーとして策定・実践していきます。

 

① 持続可能な社会づくりへの貢献

技術で、熱く、持続可能で地球にやさしい社会、安全・安心に過ごせる社会インフラ、水や食べるものに困らない世界を支えます。

② 進化する豊かな生活づくりへの貢献

技術で、熱く、世界が広く貧困から抜け出す経済発展と、進化する豊かで便利なくらしを実現する産業を支えます。

③ 環境マネジメントの徹底

二酸化炭素排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギー利用を含めた二酸化炭素削減を推進します。

④ 人材の活躍促進

多様な人材が働き甲斐と働き易さを感じながら活躍し、“競争し挑戦する企業風土”を具体化します。

⑤ ガバナンスの更なる革新

成長へのビジョンを描き、グローバルで勝ち続ける経営を後押しする攻めと守りのガバナンスを追求します。

 

(2)10年後のありたい姿

当社グループは、今後10年間、SDGsをはじめとする社会課題の解決に資する5つのマテリアリティの実現を通じて持続的に貢献し、①社会・環境価値と②経済価値を同時に向上させていくことで企業価値を向上させることにより、グローバルエクセレントカンパニーを目指します。2030年における企業価値向上の目安として、時価総額1兆円規模を設定します。

 

 <成果目標の代表例>

  ①社会・環境価値

  ・CO2約1億トン相当の温室効果ガスを削減する

  ・世界で6億人に水を届ける

  ・最先端の半導体デバイスである14オングストローム(100億分の1m)世代への挑戦により、くらしの進化に寄与する

  ②経済価値

  ・投下資本利益率(ROIC)10.0%以上

  ・売上高1兆円規模

 

ROE目標の追加

E-Vision2030の最初の3年間が経過した今、改めてE-Vision2030を見直した際に、その大きな方向性(価値創造ストーリーやマテリアリティなど)については、依然として色褪せず、現時点で特に抜本的な変更を要しないものと認識しています。一方で、これまで進めてきたROIC経営の取り組みを通じ、株主資本効率も向上させるという視点からROE 15%以上を目指すこととしました。

 

<ROIC経営>

「ROIC経営」は株主が重視する企業価値の最大化と、事業部門が重視すべき事業価値の最大化とを橋渡しする有用な経営手法と捉えています。当社の「ROIC経営」においては、管理すべき事業単位毎にWACC(ハードル・レート)を設定し、各事業単位でROIC・WACCスプレッドの最大化を目指した施策を展開しています。ROICツリーにより、事業単位で管理し易い指標にまで分解し、それらを各担当者レベルの評価指標として位置付けると共に、プロセスKPI*として進捗を月次でモニタリングしています。


 

(3)中期的な経営戦略と目標とする経営指標

E-Plan2022の振り返りをベースに今後3年間で取り組むべき戦略・課題と「E-Plan2022」の総括から明確になった解決すべき課題への対応等に基づき、「E-Vision2030」のありたい姿に着実に近づき実現するために、2023年度からの3か年の中期経営計画「E-Plan2025」を策定しました。

 

<E-Plan2022の振り返り>

 E-Plan2022では、当該計画期間(2020-2022 年度)を“E-Vision2030の実現に向けた「更なる成長に向けた筋肉質化」のステージ”と位置づけ、①事業成長への挑戦、②既存事業の収益性改善、③経営・事業インフラの高度化、④ESG 経営の進化の4つの基本方針の下、様々な施策を実行してまいりました。その結果、最重要経営指標と位置付けた投下資本利益率(ROIC)及び営業利益率の 1 年前倒し達成を含め、主要な指標で目標を達成し、全般的には良好な進捗であったと総括しています。

 


 


 

<E-Plan2025の位置付け・方向性>

E-Plan2022での成果をベースに次のステージとして、それぞれの事業で更なる競争力強化を図るべく、E-Plan2025では「顧客起点での価値創造」をテーマとしています。その上で、E-Plan2025期間を、E-Vision2030に掲げる「2030年にありたい姿」に着実に近づき、2030年にそれを確実に実現するための3年間と位置付け、以下のとおり方向性を定めました。

 

1.マーケットインを強化していくことで、プロダクトアウトから脱却し、「顧客起点での新たな価値創造」を行う企業文化を根付かせる。

2.対面市場に向かってそれぞれの事業がパフォーマンスを最大限に発揮する体制となることを企図し、対面市場別5カンパニー制へと組織改変を行う。

3.「2030年にありたい姿」の実現をより確かなものとしていくための資本投下(成長投資/基盤投資)を積極的に行う。

4.効率性/収益性指標(ROIC、営業利益率)については、2022年に実現したE-Vision2030で掲げた目標水準(ROIC 10%など)を維持する。

5.“ROIC経営の深化”を継続的に進めつつ、「2030年に時価総額1兆円」の実現をより強力に推進するために、E-Vision2030で目標として掲げるROEを重要指標として加え15%以上を目指す。

6.グループ全体最適と機能毎のグループガバナンス高度化を目的としてCxO制を導入する。

 

以上の1~6の実践を通じ、「2030年にありたい姿」実現への道筋がより確実に見通せる位置に到達していることがE-Plan2025の目標となります。事業成長については、E-Plan2025期間のトップラインのCAGRを7%と置くこととし、成長分野と位置付ける「建築・産業」と「精密・電子」の2事業を中心にそれを実現していくものとします。

 


 

<E-Plan2025のテーマと重点領域>

E-Plan2025では対面市場別組織が顧客起点での価値の創発を行うことで新たな事業創出を目指していきます。

 

テーマ: 「顧客起点での価値創造=起業化」

 

挑戦し続けるマインドセットをサポートする組織風土を醸成するとともに、会社全体を顧客の要望、課題に真摯に向き合う組織構造へと変化させ、ビジネスを創出する一連の流れを生み出すことにより、継続的な「起業」とそれによる価値創造を目指します。

また、テーマ実現を支える5つの重点領域を以下のとおり定めます。

1. 対面市場・顧客起点

2. 新たな価値創発

3. グローバル事業基盤の確立

4. 経営インフラの高度化

5. ESG経営の進化

 


 

<事業セグメントの変更>

当社グループでは、長期ビジョンの実現に向けた次の成長ステージとして、「E-Plan2025」の中で、より市場に向き合い顧客起点での価値創造を実現していくためには、従来の製品軸のセグメントから対面市場軸のセグメントへと事業セグメントを変更することが合理的と判断いたしました。

「風水力事業」「環境プラント事業」「精密・電子事業」の従来の3事業セグメントを、「建築・産業事業」「エネルギー事業」「インフラ事業」「環境事業」「精密・電子事業」の5事業セグメントに変更します。

 

具体的には、ポンプ、コンプレッサ・タービン、冷熱機械等の製品軸で構成される現行の「風水力事業」セグメントを、「建築・産業事業」「エネルギー事業」「インフラ事業」の3つの対面市場別セグメントに再構成した上で、それらを「環境事業」「精密・電子事業」と並ぶ事業セグメントに位置づけます。

 


 

 

<目標とする経営指標>

E-Plan2025の最終年度である2025年度に達成すべき目標として以下の各項目を設定します。

 

財務数値目標

分類

項目

2025年度目標

収益性

全社営業利益率

10.0%以上

<セグメント毎営業利益率>

- 建築・産業

7.0%以上

- エネルギー

12.0%以上

- インフラ

6.0%以上

- 環境

7.0%以上

- 精密・電子

17.0%以上

効率性

ROIC※1

10.0%以上

ROE

15.0%以上

成長性

建築・産業

売上CAGR(2022-2025年度)

6.0%以上

精密・電子

売上CAGR(2022-2025年度)

15.0%以上

健全性

D/E レシオ(倍)

0.3~0.5(管理目安)

 

※1 ROIC計算式

NOPLAT(みなし税引後営業利益)÷投下資本{有利子負債(期首期末平均)+株主資本(期首期末平均)}

 

非財務目標

分類

項目

2023年度~2025年度

目標

環境(E)

CDP評価(気候変動)

B以上を維持

SCOPE1,2 GHG排出量

2018年比32.0%削減

SCOPE3 

2030年1億トン
削減に向けた合理的測定手法の確立

社会(S)

競争し、挑戦する風土へ変革し、多様な社員が働きやすさを感じて活躍できる環境づくりを目指す
・エンゲージメントサーベイスコア向上(連結) 

2025年度 83以上

2030年度 86以上

グローバルモビリティの向上を目指す

・Global Key Position(GKP)における

非日本人社員比率(連結)

2025年度 30.0%以上

2030年度 50.0%以上

男女の賃金差異解消
①GKP女性ポジション比率(連結)

②女性基幹職比率(単体)

2025年度 8.0%以上

 2030年度 10.0%以上

2025年度 8.0%以上

性別に関係なく仕事と育児を両立できる企業風土を醸成

・男性育児休暇取得比率(単体)

2023年中にデータ収集方法を確立し、取得比率向上のアクションプランに基づく目標値を設定する

障がいのある社員の活躍促進

・障がい者雇用比率

(単体+グループ適用会社4社)

2025年度 2.6%以上

サプライヤー向けの人権DDの結果に基づく必要な施策の実施

ガバナンス(G)

取締役会の実効性の向上と G to V(Governance to Value)への貢献

 

 

E-Plan2025期間におけるキャッシュ・アロケーションの目安(3年間累計)

項目

内容

2023~2025年度

3年間累計

成長投資

事業ポートフォリオに基づく成長投資
(増産対応設備、研究開発、新規事業、M&A等)

1,800億円~2,250億円

(内、研究開発費650億円)

基盤投資

持続的成長を支える基盤の強化等
(維持更新設備、人的資本、ERP等のIT、ビジネスインフラ、ESG関連投資)

500億円~800億円

株主還元

配当方針:連結配当性向35.0%以上

自己株式取得:親会社所有者帰属持分水準、他の投資対象、手元現預金水準、株価の動向、業績の動向等を総合的に勘案し、適切な局面で機動的に実施する

 

 

(4)経営環境

E-Plan2025を策定するうえで前提とした経営環境は以下の通りです。


 

表中「市場別・地域別トレンド」の矢印は市場の成長動向を示す。

 

(5)E-Plan2025期間中に対処すべき課題

(5-1)事業別の対処すべき課題

各事業は、下記の基本方針と基本戦略で課題解決を行っていきます。

 

① 建築・産業
(ⅰ)基本方針

・建築・産業市場において、顧客視点でのポンプ・冷熱製品・サービスを組合せた新たなソリューション提供により、事業の更なる成長を目指す。

・DXを活用した業務・事業運営の高度化、効率化

(ⅱ)基本戦略

・ソリューション事業強化

-顧客へのソリューション提供によるモノ売りからコト売りへの転換

-新たなビジネスモデルの創出と展開

-IoT+クラウドを使った顧客との接点強化

・成長市場(海外)の取り込み

-M&A拠点製品(Vansan社、Hayward Gordon社)のグローバル展開

-高付加価値製品の投入による新市場の開拓

-食品、半導体市場を中心とした先進国の産業ユーティリティ市場への参入

-アフリカ地域での販路拡大と灌漑向け製品強化

-アフリカ、南米、アジア、北欧地域への新拠点の設立

・グローバルでの事業インフラ再構築

-海外生産拠点の拡充及び地政学リスクを考慮したグローバル調達・生産配分の見直し

 
② エネルギー
(ⅰ)基本方針

・エネルギーシフトをリードし、脱炭素社会に貢献するため、サステナビリティやサービス分野で新たなビジネスモデルを確立する。

・既存事業領域の収益性を更に向上させるため構造改革を行う。

・コンプレッサ・タービンとカスタムポンプの統合により、顧客や市場に新たな価値を提供する。

(ⅱ)基本戦略

・製品(New Apparatus)

選別受注の継続による、収益性の向上

-新規ソリューションの市場投入準備完了

・S&S(Global Service)

-サービス拠点の構造改革

-コンプレッサ・タービンとカスタムポンプのサービスリソース活用

-新たなS&Sビジネスの開発と市場投入

・グローバルでの生産体制(Global Manufacturing)

-荏原グループ全体最適化の視点でのエンジニアリングの最適化、統一の推進

-自動設計の対象機種拡大

-生産体制の再構築

-LCC(Low Cost Country)からの調達拡大による調達コストの低減

 

③ インフラ
(ⅰ)基本方針

・国内:生産工場との協働により製品開発力を強化し、底堅い官需のシェアと収益を維持する。

・海外:成長市場を見定めて、ポンプ設備や周辺技術、エンジニアリング技術を用いた新たな価値を創造する。

(ⅱ)基本戦略

・国内ポンプ市場でのシェア拡大

-製品開発力・エンジニアリング機能の強化

-大型機場の延命化提案の推進

-有資格技術者の増員と代理店の活用による、機会損失の低減

・海外ポンプ市場の深堀と利益確保

-国内で高評価を得ているエンジニアリング技術の海外拠点への展開による競争力の強化

-フロントローディングによる戦略受注の継続および収益性の確保

・国内外での生産性向上

-マーケットニーズに即した製品開発

-調達能力の強化

-生産拠点の連携の深化

-DX、AIを活用した生産技術の向上

 

④ 環境
(ⅰ)基本方針

・中核事業の基盤強化

・脱炭素や資源循環など市場の変化を適切に捉え、Life Cycle Assessment(LCA)を基軸とした、ソリューションプロバイダとしての取り組み強化

(ⅱ)基本戦略

・新規DBOの価格競争力向上・EPCの追加原価発生防止

     [EPC]

-工事費用・機器購入費・設計管理費などの削減

-設計の標準化や方針の見直しによる施設のコンパクト化

-設計の標準化や自動化等の設計業務プロセス改善成果の徹底活用

-計画精度の向上による、土木建築やプラント施工時の追加原価発生の防止

[O&M]

-長期包括案件におけるメンテナンスメニューの最適化、相見積によるコスト低減

・既設O&M案件の収益基盤のさらなる強化

-周辺業務の拡大

-施設運営期間の最大化

・LCAを基軸とした脱炭素・資源循環ソリューションプロバイダとしての取り組み強化

          -ケミカルリサイクル技術の精度向上と、実用化に向けたスキーム構築

          -ロボット開発による運転やメンテナンスなどの高度化

          -新技術やサービスの開発・提供

         ・地域戦略の推進

    -中国拠点との協業で、機器販売およびエンジニアリングビジネスの東南アジアへの拡大

 

⑤ 精密・電子
(ⅰ)基本方針

・製品・サービスを提供するのみでなく、顧客のプロセスやユーティリティにおける課題解決を通じてユニークな価値を提供する。

・地域戦略からグローバルアカウント戦略に転換し、顧客のグローバル展開に合わせた戦略立案とグローバル全体最適化によりシェア拡大を図る。

(ⅱ)基本戦略

・製品・ソリューション開発力の強化

[コンポーネント]

-顧客の半導体製造の脱炭素化への貢献、AI・DXを活用した新たな価値、半導体以外の産業領域への展開など、半導体工場のサブファブ領域全体に対する価値・ソリューション提供

-ドライ真空ポンプ、排ガス処理装置、半導体製造装置向けチラー、次世代EUV露光装置向け排気システムなどの製品開発

-データモニタリング、故障予知機能などのソリューション開発

[CMPおよびその他装置]

-マーケットインのソリューション開発体制構築

-研究開発施設の増強

-データサイエンス活用によるさらなる価値創造

・生産能力増強

[コンポーネント]

-ドライ真空ポンプは、自動化工場の稼働率向上、グローバルでのオーバーホール能力増強の実施

-EUV露光装置向け排気システムを含む各製品は、需要増に向けた設備投資

[CMPおよびその他装置]

-熊本事業所へ新棟建設

・事業規模拡大に対応したグローバルでの事業インフラ再構築

-ローカル中心の対応から、グローバルでの顧客サポート強化によるS&Sの強化

-サプライヤーのマルチ化、海外調達拠点の設立、在庫戦略の再構築によるサプライチェーンの強靭化

-需要増に対応したグローバル組織体制の再構築

 

(5-2)ESG経営上の対処すべき課題

    気候変動への対応
<TCFD提言に基づく気候関連シナリオ分析>

荏原グループでは、気候変動は世界が直面している重大な課題であると認識し、2019年にTCFDを支持する署名を行いました。ステークホルダーとの対話を通じて、気候変動に対するガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標について情報を開示し、取り組みを推進することの重要性を認識しています。

事業ごとに気候関連のリスクと機会をより明確にすることを目的とし、対面市場別のシナリオ分析に着手しました。脱炭素社会に向けて進化しているオイル&ガス市場と、社会全体の高効率化に欠くことのできない半導体製造市場向けの事業について、それぞれの事業が気温上昇を4℃未満に抑える4℃シナリオ、1.5℃未満に抑える1.5℃シナリオでどのような財務インパクトが生じるのかを推計し、その結果に基づき、気候関連リスク・機会に対する2050年までの対応策を検討しました。TCFD提言に基づく情報開示に際しては取締役会の確認を得るプロセスとしています。詳細につきましては以下のサイトに開示しています。

https://www.ebara.co.jp/sustainability/think/information/tcfd.html

https://www.ebara.co.jp/ir/library/annual-report/pdf/__icsFiles/afieldfile/2023/01/20/8_INT22_fvc_JP_1_1.pdf(P57~58 TCFD提言に基づく情報開示)

本開示は、環境省のシナリオ分析実践ガイド2022年度版のシナリオ分析開示例(国内外)に掲載されています。

上記に続き、建築産業市場向け事業、環境市場(固形廃棄物処理)向け事業、社会インフラ市場向け事業についても順次シナリオ分析を行い、気候変動に対してよりレジリエントな戦略の策定を進めています。

 
<カーボンニュートラル>

荏原グループは、自社とバリューチェーンにおけるGHG排出量を低減することにより、2050年にGHG排出ネットゼロを目指します。詳細につきましては以下のサイトに開示しています。
[2030年の目標]

1.Scope1+2 :2018年度比GHG排出量を55%削減

2.Scope3  :CO2換算として1億ton削減

https://www.ebara.co.jp/sustainability/environment/information/carbon-neutrality.html

 

② 人的資本経営への対応

E-Plan2022で重点課題として推進してきた「グローバルでの持続的成長」を実現するための基盤整備をより加速させ、「競争し、挑戦する」人材を育成し、グローバルモビリティの向上を通じて最適配置をグループ全体で強化していきます。更に、対面市場別への組織改変に対し、CHROオフィスを軸にグローバルに各種施策を強力に推進していきます。全社員が荏原グループで働くことへの誇りを持ち、事業成長のために自ら考え、チャレンジし、安心・安全にいきいきと働くことができる環境・体制を構築していきます。

 

②-1.多様な人材の活躍推進とグローバル基盤の確立

(ⅰ)学びたい人、挑戦したい人に対して機会を提供し、適所でモチベーション高く働けるよう支援していきます。そのために、様々なキャリアの可視化など、自らキャリアチェンジを目指せるような仕組みを構築し、リーダー候補の早期選抜・育成、必須の研修から希望者制の研修への転換、自由度の高い学びなおしの支援などを通じ、挑戦したい人材の選択肢を増やしていきます。

(ⅱ)海外グループ会社のローカル社員がより重要なポジションで活躍するには、GKP(グローバルキーポジション)※1における非日本人比率を高めることが重要であり、グローバルモビリティの活性化が必要です。そのために、グローバルに統一された役割等級制度導入の推進、グローバル人材育成プログラムの全社展開、国内外のサクセッションの戦略的実行などを推進していきます。

(ⅲ)リファラル採用やアルムナイ制度を継続するとともに、データドリブンで多様な人材の獲得を進めます。また、多様な人材がより働きやすい環境を提供するために、ENW(EBARA New Workstyle)の更なる拡大を行います。多様な働き方を実現することで、従業員エンゲージメントの向上につなげるとともに、多様な人材が活躍できる風土醸成を目指します。

 ※1 GKP(グローバルキーポジション):グループ全体の役割等級が高いマネージャー

 

②-2.グローバル共通人材マネジメント基盤の構築

人材ポートフォリオの基盤となる「グローバルHCM(Human Capital Management)プラットフォーム」を構築します。それにより、「人材の見える化」をグローバルに加速させ、各人事施策の効果を定量的にモニタリングしPDCAを回せる体制と人的資本可視化要件をグローバルにモニタリングできる体制を構築していきます。

 

②-3.ダイバーシティ&インクルージョン

(ⅰ)タスクダイバーシティの推進
イノベーションを起こせるチャレンジャー人材を、「増やす」「見つける」「育てる」「つなぐ」施策を進めます。サーベイに基づき現状把握を進め、性別、国籍などの目に見える違い(デモグラフィックダイバーシティ)だけではなく、経験、能力など目に見えない違い(タスクダイバーシティ)と心理的安全性の高い組織の実現に目を向けて、適材適所、インクルージョンが行える施策を、ピープルアナリティクス、メタバースなどの活用を通して進めていきます。

(ⅱ)ピープルアナリティクス
人事領域における施策について、データドリブンで客観的かつ科学的に意思決定を行っていきます。多様な人材の採用モデルを作り、データを活用した採用を進めます。スムーズなピープルアナリティクスが行えるように、データ基盤の整備、業務に必要なデータベースの設計、問題の見える化、業務標準化、業務無人化を行いながら、総合的な人事領域の組織・業務のデザインを構築していきます。このようにピープルアナリティクスを通して、データを活用して意思決定ができるよう推進していきます。

(ⅲ)障がいのある社員の活躍推進
法定雇用率上昇や対外環境の変化に確実に対応するため、荏原グループの障がい者雇用管理を一元化し、グループ一体で障がい者雇用・事業を推進していきます。キャリア形成の視点で障がいのある社員の能力開発を行い、挑戦・成長できる環境整備を進め、さらに、グループの事業プロセスへの参入拡大を図ることで、障がいの有無にかかわらず全グループ社員が「ともに働き、世の中に価値を提供し続ける」ことの実現を目指します。

 

③ コーポレート・ガバナンスでの対応

取締役会として、以下の方針の下、コーポレート・ガバナンスの強化・改善を継続し、実効性のさらなる向上を図ることで、ガバナンスが企業価値向上に貢献し具体的な成果を出していく「Governance to Value(G to V)」を目指していきます。

(ⅰ)中長期的課題の解決に向けた荏原グループの成長をサポート
E-Vision2030及びE-Plan2025の実現に向け、取締役会において荏原グループの中長期的課題(事業ポートフォリオ、人的資本、人材育成、多様性の推進、サステナビリティに関する重要課題等)について十分な議論を行い、執行側が改革のスピードを速めることができるように後押しを続けるとともに監督・検証を行っていきます。対面市場別組織への移行に合わせて執行側が進めるガバナンス体制の再構築について、事業の自立性とそれに基づく意思決定と、規律あるガバナンスの両立が図られているのか、荏原グループのコーポレート・ガバナンスの中核である当社取締役会において監督・検証を行っていきます。

(ⅱ)取締役会及び各委員会におけるサステナビリティに対する監督
執行側のサステナビリティに関する取組みを監督・後押しするため、取締役会における議題設定と議論に加えて、指名委員会(経営人材育成等)、報酬委員会(役員報酬への評価指標の反映等)、監査委員会(リスクの監督等)において、それぞれの役割と責務に応じた議論を深化していきます。

(ⅲ)取締役会とステークホルダーとの対話
サステナビリティ課題への取組み及び企業価値向上に資する経営を実施する上で、取締役会と株主・投資家をはじめとするステークホルダーとの対話とその結果について取締役会による監督・検証の重要性が増すと考えられるため、取締役会として前向きに取り組んでいきます。

(ⅳ)実効性向上に向けた取組みの継続

当社グループの成長とその価値の継続的な向上のためには、コーポレート・ガバナンスを有効に機能させることが必須であり、そのためには取締役会の役割と責務が実効性のあるものでなければいけないと考えています。当社取締役会は、その趣旨に沿って、E-Plan2025期間中も取締役会自身が取締役会の実効性評価を毎年行い、課題を抽出し、その解決を図りつつ、継続的にガバナンス改革を目指していきます。
取締役会の実効性評価は、2022年より、さらに実質的に深いレベルで実効性を検討・議論することを目指し、取締役会の内情をよく理解する取締役会議長が取締役全員との個別インタビューを実施することによる取締役個人の自己評価とピア(相互)評価の方式としました。E-Plan2025期間中もこの取組みを継続し、実効性のさらなる向上を図っていきます。

 

2 【事業等のリスク】

(1) 当社のリスクマネジメントの体制

荏原グループのリスク管理活動を統括し、審議、改善指導・支援を行う機関として、リスクマネジメントパネル(以下、「RMP」)を設置しています。RMPを中心としたリスクマネジメントの体制は下掲の図のとおりです。 RMPは代表執行役社長を議長とし、全執行役により構成しています。また、リスク管理における監督機能を発揮するために非業務執行の取締役が陪席し、必要に応じて助言等を行っています。RMPの審議状況は取締役会に報告され、取締役会が情報を的確に捉えて、監督機能を発揮できる体制を整備しています。あわせて、リスク対応の重要度に応じ全社的に対応が必要な場合には代表執行役社長を本部長とする対策本部を立ち上げ、全社で迅速に報告・連絡・判断をとるようにしています。

当社グループの事業活動に関するリスクについては、執行役の職務分掌に基づき各執行役がそれぞれに管理し、重要事項については経営会議(代表執行役社長が意思決定を行うために必要な審議を行う業務執行会議体。詳細は「第4  提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください)で審議します。事業活動を通じたサステナブルな社会・環境の構築にかかるリスクについてはサステナビリティ委員会(事業活動を通じてサステナブルな社会・環境の構築に寄与し、企業価値を継続的に向上させるため、事業とそれを支える活動の対応方針の審議、KPI及び目標の決定、並びに成果の確認を行う業務執行会議体。詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください)が審議します。RMPはリスク管理活動を統括し、当社グループ全体のリスク対応体制を整備し、リスク対応活動を支援します。

これらの執行会議体とガバナンス体制の全体像としては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」およびホームページhttps://www.ebara.co.jp/ir/governance/information/Basic-Policy-and-Framework.htmlを参照ください。


 

(2) 事業継続マネジメント

大地震や大規模な感染症などの発生時、国民の生命・財産にかかわる重要な施設の機能継続や早期復旧を支援するために製品・サービスを提供することは、当社の重要な業務と考えています。そこで、事業継続マネジメントシステムを構築し、組織体制や計画をまとめています。

これについては、代表執行役社長を本部長とした統括本部を設置して、初動活動から事業継続および事業復旧まで一貫して全社の活動情況を把握し、全社的な指示や情報発信を行いつつ、「初動活動」においては、地域毎に設置した現地本部が避難、救助、消火等、社員等の安全確保や資産の保全のための活動を指揮する一方、「事業継続及び事業復旧活動」においては、重要業務の継続及び速やかな復旧をカンパニーが指揮する体制としています。

 


 

(3) リスク分析と当社グループの重要リスク

当社グループの事業等に関するリスクについて、長期ビジョン「E-Vision2030」及び中期経営計画「E-Plan2025」の策定にあたっては、中長期的な社会情勢や市場環境の変動をシナリオプランニングによって分析しています。また、足下の当社グループを取り巻くリスクについては、事業特性に照らし想定し得るリスクのうちから当社グループにとっての発生可能性、影響度及び対策後の残存リスクを分析する、全社リスクアセスメントを定期的に実施しています。

リスクアセスメントでは、当社グループの事業運営において想定される100を超える様々なリスク項目の中から、当社グループにとっての影響度と発生可能性がともに大きいもの、さらに「それらの対策が十分であるか」を評価の上で、グループ重要リスクとして特定し、主管部門や報告先執行会議体などのリスク対応体制を再整備し、RMPに報告しています。

シナリオ分析では、長期ビジョンの設定と平仄をあわせて、TCFD の枠組みに沿って、気候変動因子を中心に2℃以下シナリオを含む複数のシナリオによって、事業への影響についてシナリオ分析をおこなっています。

それらに基づき、リスクについて全社共通のリスクと、当社が対面している市場別のリスクにまとめると、以下の表のとおりです。

当社グループはリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。

 

①    全社共通のリスク

項目

影響度×起こりうる可能性

リスク内容

当社の対策

地球環境・気候変動

影響度大×起こりうる可能性大

・脱炭素の動きにより炭素税などのコスト負担増があり得、また化石燃料の代替など産業構造が大きく変わる可能性がある。

・台風、山火事等の自然災害激甚化

 

 

・長期的・多様なシナリオ分析に基づくリスクと機会の予測と対策を実施
→TCFD提言に基づくシナリオ分析については 
https://www.ebara.co.jp/sustainability/think/information/tcfd.htmlを参照ください。

・カーボンニュートラル施策の推進
→当社グループの2050カーボンニュートラルに向けた大方針を策定しました。詳細は
https://www.ebara.com/sustainability/environment/information/carbon-neutrality.htmlを参照ください。

・ハザード情報等に基づくBCM計画整備と継続的改善

 

国際情勢・地政学上のリスク

影響度大×起こりうる可能性大

・米中摩擦の激化、中東の紛争、ウクライナ情勢等による経済や金融、貿易への影響により事業活動上の想定外の制約や費用が発生
(関連するリスク)

・個別の事変に対しては状況により社長を本部長とし関連執行役をメンバーとする対策本部を設置する

・全体として、リスクに鑑みたグローバルでのサプライチェーン・バリューチェーン構築

 

市況等の変化

影響度大×起こりうる可能性大

・景気変動や市況変化に対応できないリスク

・顧客ニーズの変化を読み落とすリスク

・技術革新のキャッチアップに遅れ陳腐化するリスク

・特定顧客や市場に依存するリスク

経営上の事業戦略にかかる判断リスクであり、職務分掌に基づき各執行役がそれぞれにリスクの把握と管理を行なうものとし、重要事項については経営会議で審議

感染症リスク

影響度大×起こりうる可能性大

・人命や健康はもとより、新型コロナウイルス感染症拡大で直面したロックダウンやそれに端を発するサプライチェーン機能不全、働き方の変化や情報セキュリティの課題など、将来発生しうる新たな感染症でも甚大な影響が想定される。

・感染症のBCM計画強化

・産業医と連携した感染予防・拡大防止策の実施

・サプライチェーン管理能力強化

サイバーセキュリティリスク

影響度大×起こりうる可能性中

・外部からのサイバー攻撃、自社や委託先での人為的過失のみならず、自然災害やインフラ障害など不測の事態により、重要な業務やサービスの停止、機密情報・個人情報の漏洩、重要データの破壊・改ざんが発生する可能性

・ソフト/ハード対策強化、ISO27001準拠レベル体制整備

・情報セキュリティに関する社員および派遣社員等への教育・訓練の実施

・サプライチェーン管理能力強化

為替変動リスク

影響度中×起こりうる可能性大

・為替レートの変動による業績への影響

・為替予約等、適切な為替リスクヘッジの実施

品質偽装リスク

影響度大×起こりうる可能性小

・当社グループではグローバルの品質管理体制を強化しているが、他メーカーで散発しており、当社グループで起こさぬよう警戒。

・データ計測に人の判断が入らないシステムの整備運用

・客先仕様について見積段階でフロントローデイングデザインレビューの実施

・ヒアリング等を通じ組織風土品質風土の継続改善を図っていく

 

 

サプライチェーンリスク

影響度大×起こりうる可能性中

(国際情勢や感染症によるサプライチェーンに関するリスクに加えて)

・サプライヤが人権抑圧などのESG/SDGs問題を起こすリスク

・サプライヤの後継者問題による廃業等の事業継続リスク
 
 

・サプライヤに対する人権その他ESG項目の監視強化

・代替調達先確保 

・サプライチェーンBCMの協力体制構築
 
 

働き方と人材のリスク

影響度中×起こりうる可能性小

・E-Vision2030達成のために必要な人材の増員と強化にかかるリスク、急激な働き方の環境変化に追随した教育や育成についてのリスク

・新型コロナウイルスまん延により、社員の働き方が急速に変わり、メンタルヘルスなどにも影響してきている。

・人材データバンク整備と利活用、処遇制度や教育制度の強化と見直し

・コミュニケーションの工夫、メンタルヘルス対策

・グローバルエンゲージメントサーベイ結果に基づくエンゲージメント向上対応

10

契約リスク

影響度中×起こりうる可能性小

・賠償責任条項により問題発生時の損失が非常に大きくなる可能性がある。

・契約締結時の交渉体制およびリーガルチェック体制の継続強化

11

M&Aリスク

影響度中×起こりうる可能性小

・事業投資の成果が出ない

・E-Vision2030を達成する上で、グローバル市場への展開は必要であり、M&Aは有効な一つの手段であるが、当社グループにおいてはまだまだM&Aは経験豊富といえないため。

・デューデリジェンスの徹底、外部アドバイザとの協力体制強化

・M&A実務経験者を増やし暗黙知を含めた経験値の継受を図る

・速やかに荏原グループ経営に組み込むためのPMI体制強化

 

 

 

② 対面市場別リスク

セグメント

対面市場

当社の主要製品

主なリスク

当社の対策

建築・産業

建築設備・

産業設備

 

ポンプ、冷凍機、送風機、冷却塔

・需要増加地域での規制強化と価格競争激化

・人口減少地域での建築設備需要減による市場縮小に伴う収益悪化

・製品開発による差別化、S&S事業への注力や業務効率化による競争優位性の確保

・グローバル市場でのリソースの戦略的最適化

エネルギー

石油・ガス
電力
新エネルギー

 

コンプレッサー、タービン、ポンプ、送風機

・石油価格の変動により、急激な需要変動が発生

・脱炭素社会への移行により、客先の需要動向が変化

・景気後退時に受注量や販売価格が下落し、生産能力の余剰が発生する等、損益を圧迫する一方、景気好転時にはサプライチェーン起因を含む生産能力不足等が生じ、シェアを低下させるリスク

・水素等、次世代エネルギー関連事業の促進

・需要の変化に対し、先行指標の確認等による、高い予測精度での投資計画の策定・実施とリソース管理

・需要の変化に対し、リードタイム短縮や設計・製造の自動化等、効率化による損益分岐点の低下

・需要の変化に対し、S&S事業比率の上昇による安定収益の確保

インフラ

水インフラ
換気

 

ポンプ、送風機

・海外市場での規制強化と価格競争激化

・官製談合への巻き込まれなどによるコンプライアンス問題の発生

・製品開発による差別化、S&S事業への注力や業務効率化による競争優位性の確保

・グローバル市場へのリソースのシフト

・継続的なコンプライアンス教育と内部監査の実施

 

 

環境

固形廃棄物処理

ごみ焼却プラント

・人口減少と循環経済への移行による焼却処理する廃棄物の減少

・労働市場の縮小による、施設オペレーションの人材不足の懸念

・公共事業特有のコンプライアンスリスク

・新技術やライフサイクルアセスメント(LCA)などによる差別化、業務効率化による競争優位性の確保

・継続的なコンプライアンス教育と内部監査の実施

精密・電子

半導体製造

 

CMP装置、ドライ真空ポンプ、排ガス処理装置

 

 

・半導体需要の動向により、客先の投資や稼働が大きく変動

・景気後退時に受注量や販売価格が下落し、生産能力の余剰が発生する等、損益を圧迫する一方、景気好転時にはサプライチェーン起因を含む生産能力不足等が生じ、シェアを低下させるリスク

・需要の変化に対し、先行指標の確認等による、高い予測精度での投資計画の策定・実施とリソース管理

・需要の変化に対し、リードタイム短縮や設計・製造の自動化等、効率化による損益分岐点の低下

・需要の変化に対し、S&S事業比率の上昇による安定収益の確保

 

 

 

(4) 顕在化したリスクへの対応状況

経営に重要な影響を及ぼすような重要かつ全社的に対応が必要な事態が発生した場合には、リスク対応体制として代表執行役社長を本部長とする対策本部を立ち上げ、全社で迅速に報告・連絡・判断ができるようにしています。158期に発生したリスクおよびその対応としては以下のとおりです。

 

   新型コロナウイルス感染症対策

新型コロナウイルス感染拡大に対して、当社グループでは、社長を本部長とする新型コロナウイルス感染対策本部を設置し、グループの感染状況を週次で確認しながら、感染予防策を継続的に講じ、従業員及び家族、協力会社等へのワクチン職域接種を進め、Withコロナ期間における新しい働き方を実践してきました。その間取締役会は感染状況と取組状況を把握しつつ中長期視点での対策を監督する一方、各拠点では各国政府・地域の方針に準じて、感染拡大防止に努めながら、事業活動を継続してきました。これからも、ポストコロナ期間への移行に対応して、新型コロナウイルス感染拡大の経験を生かし、未知の新型感染症に対する備えを社内で再整備した上で、社員及びお客様をはじめとするステークホルダーの皆さまの健康と安全、感染拡大の防止を第一に、いっぽうで感染予防策を継続的に講じながら社会や産業に製品・サービスを提供する企業として、お客様の事業や生活への影響を最小限に抑える事業活動を、新しい働き方の下で継続していきます。

 

② ウクライナ情勢

ウクライナ情勢について、当社グループでは2022年2月の事態の急変を受け、速やかに社長を本部長とする対策本部を設置し、従業員およびパートナー企業をはじめとするステークホルダーの皆さまの安全を最優先に、情報収集と情報分析、グループ内の意思統一を図ってきました。当社グループは、各国の法規制を遵守しつつ、社会や産業に製品・サービスを提供する企業として必要な対応をおこなっています。

当社グループのロシア及びベラルーシ向けの取引は相対的に小さいものであり、ウクライナ情勢に直接起因する事業全体への影響は軽微です。

また、その他地政学上の問題については、懸念される事象に対して幅広く情報収集情報分析をおこなったうえで、状況に応じ、社長を本部長とする対策本部を構築し、危険地域からの退避やその他の従業員およびパートナー企業への行動指針、グローバルサプライチェーンの見直し等を、事前の準備に沿って実施していきます。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営成績

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率 (%)

受注高

771,483

815,218

43,735

5.7

売上収益

603,213

680,870

77,656

12.9

営業利益

61,372

70,572

9,199

15.0

売上収益営業利益率 (%)

10.2

10.4

親会社の所有者に帰属する

当期利益

43,616

50,488

6,871

15.8

基本的1株当たり当期利益 (円)

463.44

548.61

85.17

18.4

 

 

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症対策が徐々に緩和され、経済活動の正常化によって持ち直しの動きがみられました。日本経済においても、新型コロナウイルス感染症の抑制対策と経済活動の正常化が進む中で、設備投資は持ち直しの動きがみられました。一方、国内外の経済における先行きについては、原材料価格の高騰や半導体不足、ウクライナ情勢に伴う資源価格への影響、為替変動など依然として不透明な状況が継続しました。

当社グループの主要市場である建築設備市場や石油・ガス市場においては、新型コロナウイルス感染症の対策緩和による需要回復が進む一方で、インフレ懸念や長期化するウクライナ情勢などの影響によって一部投資案件に遅れがみられました。半導体市場においては、足元ではメモリ価格下落や米国による対中国輸出規制強化を受け、一部では設備投資の延期などがみられるものの、全体としては、半導体の需要および顧客の設備投資は高水準で推移しました。また、日本の国土強靭化関連の公共投資については引き続き堅調に推移しました。

このような事業環境下、当連結会計年度の受注高は、環境プラント事業で前期を下回りましたが風水力事業および精密・電子事業が堅調に推移したことで、全社としては前期を上回りました。売上収益については3事業共に前期を上回りました。風水力事業では、販売価格の改善やサービス&サポート需要の取り込みを着実に進めてきたことで、国内・海外ともに順調に売上収益を伸ばしました。環境プラント事業では、EPC工事進行売上が順調に進捗したことで前期を上回りました。精密・電子事業においては、部材不足や出荷遅れの状況は依然として継続していますが、人員体制の強化や増産体制を整備してきたほか、顧客側での高水準の工場稼働にも対応してきたことで、製品・サービス&サポート共に売上収益を伸ばしました。

営業利益は、原材料価格高騰の影響や人件費を中心とした固定費増加によるマイナス要因はありましたが、風水力事業や精密・電子事業における増収や収益性が改善したことに加え、円安がプラスに寄与したことで、全体としては前期を上回りました。

これらの結果、当連結会計年度における受注高は8,152億18百万円前期比5.7%増)、売上収益は6,808億70百万円前期比12.9%増)、営業利益は705億72百万円前期比15.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は504億88百万円前期比15.8%増)となり、いずれの項目においても過去最高額を更新しました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

(単位:百万円)

セグメント

受注高

売上収益

セグメント損益

前連結
会計年度

当連結
会計年度

増減率

(%)

前連結
会計年度

当連結
会計年度

増減率

(%)

前連結
会計年度

当連結
会計年度

増減率

(%)

風水力

354,810

406,488

14.6

336,980

383,393

13.8

24,793

32,038

29.2

環境プラント

129,496

105,810

△18.3

71,824

73,738

2.7

5,632

3,669

△34.9

精密・電子

285,401

301,551

5.7

192,791

222,259

15.3

28,035

36,183

29.1

報告セグメント計

769,708

813,849

5.7

601,596

679,391

12.9

58,461

71,890

23.0

その他

1,775

1,368

△22.9

1,617

1,478

△8.6

1,168

△1,216

調整額

1,743

△101

合計

771,483

815,218

5.7

603,213

680,870

12.9

61,372

70,572

15.0

 

 

<風水力事業>

受注高は前期から516億77百万円増4,064億88百万円、売上収益は464億13百万円増3,833億93百万円、営業利益は72億44百万円増320億38百万円で、受注高、営業利益は過去最高額を更新しました。

ポンプ事業は、前期比増収増益で、主に建築設備市場向けの標準ポンプ事業が好調に推移しました。海外、国内ともに価格改定や、円安のプラス効果もあり受注高、売上収益、営業利益いずれも前期を上回りました。トップラインの成長においては、海外を中心としたオーガニック成長に加え、21年と22年に実施したM&Aによるインオーガニック成長分も寄与しました。一方でカスタムポンプ事業は、低調な中国市場の影響を受け、石油・ガス市場向けの売上が伸び悩みました。

コンプレッサ・タービン事業は、新規製品市場ではインフレやウクライナ情勢の長期化など先行き不透明感を受け、顧客の投資判断には慎重な姿勢が継続して見られる状況でした。一方、定期修繕工事などのサービス&サポートの需要は増加し、リードタイムが短く比較的採算性の高い売上案件も多かったことから、同事業全体としては前期比増収増益となりました。

冷熱事業は、中国市場の需要が堅調で増収でしたが、営業利益はほぼ横這いで推移しました。

 

<環境プラント事業>

受注高は前期から236億85百万円減1,058億10百万円、売上収益は19億13百万円増737億38百万円、営業利益は19億62百万円減36億69百万円となりました。

受注案件数は前期比で増加しましたが案件規模の違いもあり受注高は減少しました。売上収益はEPC工事案件の工事進捗が進み増収となりました。営業利益の減少は、国内のEPC案件で一過性の追加コストが発生したことや、ごみ処理施設での発電をベースに行っている売電事業において市場調達コストが増加したことによるものです。海外においても中国子会社での機器の製造委託案件での追加コストの発生や、海外案件の売上期ずれにより収益性が低下しました。

※EPC(Engineering, Procurement, Construction)…プラントの設計・調達・建設

 

<精密・電子事業>

受注高は前期から161億50百万円増3,015億51百万円、売上収益は294億68百万円増2,222億59百万円、営業利益は81億47百万円増361億83百万円いずれも過去最高額を更新しました。

年度末に向けてメモリ価格低下の影響などにより、一部の顧客で設備投資計画を見直す動きや工場稼働を調整する動きなどがみられましたが、年間を通じて顧客の設備投資は高水準で推移しました。依然として部材不足に起因する出荷遅れの影響などはあるものの、コンポーネント、CMPともに受注高、売上収益は堅調で前期を上回りました。営業利益については、売上増に加え、ドライ真空ポンプの自動化工場稼働による生産性の向上や、サービス&サポートの需要増などが寄与し前期を上回りました。

 

《セグメント別の事業環境と事業概況》

セグメント

2022年12月期の事業環境

2022年12月期の事業概況と

受注高の増減率 (注)1

風水力

ポンプ

 

<海外>

石油・ガス市場は、前期と比較すると回復基調にあり、サウジアラビア、カタールなどで大型案件が始動している。一方、中国では計画されている超大型石油化学コンプレックスや旧式小型製油所の統合・効率化案件がCO2排出量調整のために遅延している。

水インフラ市場は、中国や東南アジアの案件に動きがあり回復傾向にある。北米では価格競争が厳しいものの老朽化設備更新案件が再開している。

建築設備市場は、原材料価格高騰などによる投資抑制傾向にある。また、中国はゼロコロナ政策解除後も、需要回復のペースは鈍い。

<国内>

建築設備市場は、建築着工棟数は回復傾向にある。

社会インフラの更新・補修に対する投資は、堅調に推移している

<海外>

・石油・ガス関連の受注は前期を上回る。

水インフラの受注は前期を下回る

建築設備向けの受注は前期を上回る。

 

<国内>

建築設備向けの受注は前期を上回る。

公共向けの受注は総合評価案件やアフターサービスの受注拡大などの施策効果はあるものの、大型案件の受注があった前期を下回る。

 

 


コンプレッサ・

タービン

 

新規製品市場は、中東では石油化学市場など案件に動きがあり、北米ではウクライナ情勢やインフレなどの影響もあるが一部案件に動きが出てきている。中国では経済の先行き不透明感の高まりにより低調に推移している。

サービス市場は、全般的にメンテナンス・修理・部品などの需要が堅調に推移している。

LNG市場(クライオポンプ)は、一部案件に動きが出てきており、回復傾向にある。

 

製品の受注は、一部案件の発注時期の見直しにより前期を下回る。

サービス分野の受注は移動制限の緩和により前期を上回る。


冷熱

 

国内では、産業系市場に続き、建築市場でも設備投資が回復している。

・中国は脱炭素化規制を見越した設備投資が活発であるが、原材料価格高騰が継続しており、電力不足や物流の混乱などが懸念される。

 

国内の受注は前期を上回る

・中国の受注は製品の受注が堅調なため前期を上回る。


環境プラント

(注)2

公共向け廃棄物処理施設の新規建設需要は例年通りに推移している。

・既存施設のO&Mの発注量は例年どおり推移している。

民間向けの木質バイオマス発電施設や廃プラスチックなどの産業廃棄物処理施設は、一定の建設需要が継続している。

 

大型案件は前期を上回る7件を受注したが、今期の受注高は1件当たりの案件規模が大きかった前期と比較すると下回る。

<大型案件の受注状況>

公共向け廃棄物処理施設のEPC案件(1件)

公共向け廃棄物処理施設のDBO案件(1件)

公共向け長期包括運営契約(3件)

・公共向け基幹的設備改良工事(2件)

 


精密・電子

半導体不足を背景として、半導体メーカの投資は活発化しており、半導体製造装置市場は、前期の規模を上回るが、足下ではメモリ価格下落や米国による対中国輸出規制強化を受け、一部で設備投資の延期などがみられる。

 

一部の半導体メーカで投資減速の動きがあったものの、市場全体としては好調を継続し、また中国顧客の投資拡大の影響を受け、受注は前期を上回った。

 


 

(注)

1.

矢印は受注高の前期比の増減率を示しています。

 

 

 

+5%以上の場合は


、△5%以下の場合は


、±5%の範囲内の場合は


で表しています。

 

 

2.

O&M(Operation & Maintenance)

………プラントの運転管理・メンテナンス

 

 

DBO(Design, Build, Operate)

………プラントの設計・調達・建設に加え、建設後の運転管理・メ

   ンテナンスを一定期間請け負う。

 

 

生産、受注及び販売の状況は以下のとおりです。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

報告セグメント

 

 

 風水力

384,788

14.1

 環境プラント

21,455

3.4

 精密・電子

183,489

22.0

  報告セグメント計

589,733

16.0

 その他

391

29.3

合計

590,124

16.0

 

 

② 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

報告セグメント

 

 

 

 

 風水力

406,488

14.6

269,788

20.2

 環境プラント

105,810

△18.3

317,491

11.3

 精密・電子

301,551

5.7

230,811

62.8

  報告セグメント計

813,849

5.7

818,091

25.6

 その他

1,368

△22.9

67

△61.8

合計

815,218

5.7

818,158

25.6

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

報告セグメント

 

 

 風水力

383,393

13.8

 環境プラント

73,738

2.7

 精密・電子

222,259

15.3

  報告セグメント計

679,391

12.9

 その他

1,478

△8.6

合計

680,870

12.9

 

(注)

上記①から③の金額は、いずれも販売価格によっており、セグメント間取引消去後の金額です。

 

 

 

 

(2)財政状態

① 資産

当連結会計年度末における資産総額は、前年度末に比べて棚卸資産が599億47百万円、営業債権及びその他の債権が215億43百万円、のれん及び無形資産が201億28百万円増加したことなどにより1,083億13百万円増加し、8,280億49百万円となりました。

セグメントごとでは、風水力事業は4,295億17百万円(前年度末比685億31百万円増)、環境プラント事業は646億56百万円(前年度末比95億93百万円増)、精密・電子事業は2,289億75百万円(前年度末比478億35百万円増)、その他は435億7百万円(前年度末比87億74百万円増)となりました。

 

② 負債

当連結会計年度末における負債総額は、前年度末に比べて営業債務及びその他の債務が328億33百万円、契約負債が133億96百万円、その他の流動負債が71億68百万円増加したことなどにより、602億43百万円増加し、4,583億23百万円となりました。

 

③ 資本

当連結会計年度末における資本は、配当金を182億16百万円支払った一方、親会社の所有者に帰属する当期利益504億88百万円を計上し、在外営業活動体の換算差額が141億34百万円増加したことなどにより、前年度末に比べて480億69百万円増加し、3,697億25百万円となりました。

親会社の所有者に帰属する持分は3,599億66百万円で、親会社所有者帰属持分比率は43.5%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益は堅調であったものの、棚卸資産の増加による支出544億11百万円があった結果、370億70百万円の収入超過(前期比357億88百万円の収入減少)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出243億47百万円や連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出146億75百万円などにより、383億24百万円の支出超過(前期比69億62百万円の支出増加)となりました。

営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、12億54百万円の支出超過(前期は414億97百万円の収入超過)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及び長期借入金が純額で80億29百万円減少したことや、配当金の支払い182億16百万円などにより、237億49百万円の支出超過(前期比57億39百万円の支出減少)となりました。

以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前年度末から203億51百万円減少し、1,161億37百万円となりました。

 

② 財務戦略の基本方針

当社グループは、資本効率と財務健全性のバランスに配慮しつつ、適宜適切なタイミングで資本の調達と配分を行うことを財務戦略の基本と考えています。現在の事業推進に必要十分と考える「シングルAフラット(※)」の信用格付け維持を基本とし、D/Eレシオを財務規律としつつ負債の活用を図ります。また、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善と非効率資産の選別/処分を通じ投下資本の効率的活用を促進します。その上で、株主還元として連結配当性向35%以上を維持しつつ、企業価値向上に繋がる投資対象への資本投下の機を逃さずに行い、「長期的な企業価値の最大化」を目指します。

(※)格付投資情報センター(R&I)による格付

 

 
③ 資金調達について

当社グループは、事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための投資資金として、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく金融機関からの借入や社債の発行などの外部資金を有効に活用していきます。D/Eレシオは0.3~0.5を基準に負債の活用を進め、資本コストの低減・資本効率の向上を図ります。

また、現金・預金等の水準(手元流動性)については、連結売上収益の2か月分を目安に適正水準の範囲でコントロールする方針です。これに加えて、金融上のリスクに対応するためにコミットメントライン契約等を締結することで、代替流動性を確保しています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金を当社に集中する制度を運用しています。

 

代替流動性

当座貸越契約 50億円

コミットメントライン契約 800億円

いずれの契約においても、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。

詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1)技術導入契約

記載すべき重要な契約はありません。

 

(2)技術供与契約

記載すべき重要な契約はありません。

 

(3)業務提携契約

記載すべき重要な契約はありません。

 

(4)買収に関する契約

記載すべき重要な契約はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループでは、2020年に策定した“価値創造ストーリー”である「E-Vision2030」の実現に向け、重要課題とした「5つのマテリアリティ」を解決するプロセスを通じて持続的に社会に貢献するため、風水力事業、環境プラント事業、精密・電子事業、及びこれら事業と連携を取るコーポレート研究開発組織で、研究開発に取り組んでいます。

各事業部及び各グループ会社では、新技術の実用化・新製品応用のための研究開発、及び技術や製品の高付加価値化に向けた研究開発を、業務提携などの外部との協業も活用して効果的に進めました。

コーポレート研究組織では、これらの事業を支える共通基盤と重要なコア技術の強化、及び中長期的展望に基づいた技術シーズの探索と実用化を、大学等の外部研究機関との共同研究も積極的に活用して進めました。さらに、新事業創出のための制度であるEIX(Ebara Innovation for X)制度を活用し、製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向け、xR技術や金属3Dプリンタを活用した新しいものづくり技術の構築を加速させています。また、持続可能な社会づくりに不可欠な水素社会の実現のため、グループ全社で挑戦するCP水素関連事業プロジェクトを発足しました。荏原が有する技術やノウハウを活かし、「つくる」「はこぶ」「つかう」のすべての分野でクリーン水素関連技術の社会実装を目指した活動を開始しています。“共創”を基本理念に、産官学連携を強め、組織横断的に取り組むことで、大規模水素サプライチェーンの構築、水素発電などに必要不可欠な遠心式の液体水素ポンプや水素コンプレッサ、水素ステーション向けのプランジャポンプの開発を進めるとともに、廃プラスチックからの水素製造や天然ガスを使ったターコイズ水素製造など、クリーン水素の製造分野の社会実装に取り組んでいます。さらに、液体水素などの極低温燃料を用いた衛星用ロケットの燃料供給ポンプも開発し、航空宇宙分野への参画を進めています。

当連結会計年度の研究開発費は15,264百万円です。

セグメントごとの研究開発活動の状況は、以下のとおりです。

 

(風水力事業)

風水力事業分野では、中長期的に成長の持続が期待される、水インフラ、エネルギー(ガス、電力)、機能性化学、医薬医療、建築設備分野などのグローバル市場向け製品に関し、海外グループ会社との連携強化を含め、ラインナップ拡充や製品力強化に取り組んでいます。

標準ポンプでは、省エネ・省資源・環境負荷低減を指向し機電・通信・制御を一体化した製品群の開発を継続して進めており、小型・省スペース、省エネを実現した小型キャンドポンプや通信機能を備えたインバータ一体型PMモーターIVMのラインナップ拡充、顧客の省人化・省力化に貢献するICT技術製品の開発を進めています。

カスタムポンプでは、エネルギー分野で脱炭素のニーズに応えられるアンモニアポンプ、水利分野において省エネ・省資源・環境負荷低減を指向した製品群の開発を継続して進めています。

コンプレッサ・タービン分野では、省エネ・省資源に貢献する新型高効率タービンの開発を完了し、販売開始に向けて準備を進めています。また、圧縮機、タービン、クライオポンプの性能改善、信頼性向上に向けて、要素技術の開発を進めています。

冷凍機分野では、環境負荷低減ニーズの高まりに応えるため、地球温暖化係数の小さい冷媒を使用する冷凍機の開発を継続し、ラインナップ拡充、応用範囲拡大を進めており、低GWP冷媒を採用した水冷スクリューチラーを市場投入しました。また、高度情報化社会の進展に伴い増大している半導体需要に応えるため、同製造プロセスに用いられ、生産性の向上に寄与する温調装置の開発を進めています。

基盤技術に関しては、コーポレート研究開発組織とも連携し、「数値シミュレーションと新しい最適化手法による性能向上手法の開発」、「3DCADの自動化も含めたデジタル設計・解析プロセスの効率化」による開発スループットの一層の向上、「IoT技術によるポンプの状態予知手法の構築」などを進めています。

当連結会計年度の研究開発費は7,452百万円です。

 

 

(環境プラント事業)

環境プラント事業分野では、廃棄物処理施設の建設工事(EPC)から施設運営・維持管理(O&M)までを長期的に一括して行うDBO事業、既存施設の延命化を提案する延命化事業、既存施設のO&Mを長期にわたり運営委託を受ける長期包括事業に取り組んでおり、これまで以上に提案力や、品質、コスト競争力強化が求められています。これらの状況を踏まえ、施設更新に伴う機能強化、ライフサイクルコスト低減を可能とする新技術・新製品開発、保守運営技術の改良開発に加え、これらを支えるAIやIoT技術の活用を推進しています。また、再生可能エネルギーの1つとしての木質バイオマス発電や、産業廃棄物処理の需要を見込み、発電効率や運転の安定性を向上するための要素技術の開発に取り組んでいます。さらに、最近の世界的な動きとなっているカーボンニュートラルやプラスチックによる海洋汚染抑制に寄与すべく、廃プラスチックのケミカルリサイクルに適用する資源化技術の開発を行っています。

当連結会計年度の研究開発費は1,170百万円です。

 

(精密・電子事業)

精密・電子事業分野では、半導体デバイス製造プロセス装置において、チップの微細化や3次元集積化だけでなく、重要度が増している新しいパッケージング技術などの開発要求や、急成長するAI、IoT分野に関する技術開発要求にも対応するよう、装置の改良・改善及び新機種の開発に取り組んでいます。コンポーネント製品においては、更なる省エネ化及び環境負荷低減に貢献できる製品や総合排気機器メーカの強みを活かした製品の開発や、さらには、DX技術やxR技術による生産性や品質の向上及びアフタービジネスの強化にも取り組んでいます。

また、顧客との共同開発・コンソーシアムへの参画、さらには各大学との共同研究などを通して、次世代半導体プロセス技術の研究も継続しています。

当連結会計年度の研究開発費は6,641百万円です。