第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、コーティング・ラミネーティング技術と乾燥技術及び走行制御技術を柱に、高精密・高精度の製造装置を市場に供給することで、社会の進歩発展に貢献することを基本理念としております。

 また、株主・取引先・社員など全てのステークホルダーの信頼と期待に応えることを行動指針として、事業活動を行っております。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、最先端技術分野への高精密・高精度な製造装置メーカーとしてリーディングカンパニーを目指し、「顧客満足度の向上」・「環境エネルギー市場への拡販」・「コスト競争力の強化」を最優先に各業界へ技術革新に対応した最新機器を提供すべく製品開発を行い、グローバルな活動を推進してまいります。

 営業及び開発・設計・製造さらに据付からアフターサービスに至るまで、グループ一体となりさらなる企業価値向上を目指し、「より高い精度の製品を供給し続けること」を念頭におき活動してまいります。

 当社グループは、エネルギー分野を中心とした活発な受注環境に支えられ、高水準な受注残高となっております。しかし、製作における資材価格の高止まりや外注費用の高騰、さらには市場の変化に伴う顧客の設備投資計画の変更など、生産活動及び収益への影響も懸念されますため、納期管理や生産性向上の推進を徹底的に実施し、利益改善に努めてまいります。

 また、当社は、2023年5月12日に公表した長期ビジョン2030及び2024年5月10日に公表した2027年度を最終年度とする中期経営計画の達成に向け、様々な施策に取り組んでまいりました。しかしながら、至近のEV市場の減速やトランプ政権下における米国の財政政策や通商政策等の影響により、主要顧客の設備投資の停滞や、取引先による破産申請の公表といった事象が発生する等、中期経営計画策定時における市場環境の前提との乖離が生じております。

 こうした状況を踏まえ、総合的に検討した結果、当社は、現行の中期経営計画の見直しを実施することとし、詳細につきましては2025年11月を目途に公表させていただく予定であります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、持続的な成長により企業価値を向上させるという観点から株主資本効率及び株主還元の適切なバランスを検討し、経常利益率を重要な指標としております。経常利益率10%以上を確保するとともに、キャッシュ・フローを重視した経営を進めてまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 インバウンド需要の拡大や雇用・所得環境の改善を背景とした個人消費の持ち直しの動きが見られ、企業の設備投資が比較的好調に推移するなか、追加利上げも実施される等、景気は緩やかに回復基調となっている、一方で依然エネルギー価格や原材料価格の高騰が継続しており、米国新政権による関税引き上げへの懸念が高まり、企業の設備投資の停滞や、長期化するロシアによるウクライナ侵攻や中東紛争の緊迫化等の地政学リスクもあり、金融資本市場等の経済の先行きは不透明な状況で推移しております。

 このような状況のもと、当社グループは、幅広い市場への納入実績を活かし、北米以外の地域や様々な市場へも積極的に受注活動を行い、設備の新設のみならず、改造及び移設・各種部品の供給等、潜在的な需要の開拓及びカスタマーサービス体制を強化し、利益水準の向上に努めてまいります。

 昨今の市場のニーズが急速に変化する環境下においては、新技術の開発が不可欠であるとの認識のもと、積極的に技術開発を推進し、さらなる企業価値向上を目指しております。具体的には、当社のコア技術である「高クリーン・超薄膜コーティング技術」及び「ウェットコーティングとドライコーティングの融合」を軸とした新技術の開発に注力しております。

 また、安定した技術の継続的な提供や市場ニーズに対する最適な新技術の開発は、当社グループの持続的な成長と発展において重要であります。その実現に向けては、次代を担う優秀な人材の育成は不可欠であると考えており、継続的な人材採用を進めるとともに、OJTや各種研修による人材育成を積極的に実施し、経営層及び技術者層のさらなる強化を図ってまいります。

 さらに、財務上の課題としましては、近年、輸出案件の増加傾向が見られる一方で、世界情勢の不安定化により景気の先行きが不透明な状況にあります。このような環境下においては、与信限度の適切な管理及び売掛金の確実な回収が重要な課題であります。これに対応するため、営業部門における契約時の回収条件の適正化、並びにコーポレート部門における債権管理を徹底し、早期回収及び貸倒れの未然防止に努めてまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

 当社は、2022年4月より様々なリスクに対処するため代表取締役社長が委員長を務めるリスク管理委員会を設置いたしました。本委員会において必要なリスク管理体制及び管理手法を整備し、リスクを総括的かつ個別に管理しております。近年の急速な環境変化による様々なリスク及び機会に対応していくために、サステナビリティに関わる課題の検討についても、本委員会にて取り組んでおります。

 リスク管理委員会にて特定したサステナビリティに関する課題を含むリスク及び機会については、その内容が取締役会に報告されることで、取締役会の監督が適切に図られる体制を整えております。

 

(2)戦略

・サステナビリティ全般に関するリスク及び機会について

 人的資本を含むサステナビリティへの取組については、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上に欠かせないものであると考えております。

 2024年5月10日に公表いたしました中期経営計画を基に、以下の取組を実施してまいります。

 

取組内容

環境

事業を通じた地球環境への貢献

・リチウムイオン電池分野や次世代太陽電池開発への貢献

・メンテナンス事業を強化することによる設備の長寿命化

・デジタルツイン技術開発等により、塗工技術の最適化を図り材料の無駄を省く

事業活動における地球環境への

貢献

・太陽光発電活用によるCO2排出量の削減

社会

事業を通じた人々の暮らしへの

貢献

・生活に欠かせない様々な電子機器の発展・普及への寄与

人的資本への積極投資

・階層別研修や技術習得に向けた計画的なOJTの実施等、人材育成研修の充実化

・勤務形態の多様化による柔軟な働き方ができる環境の整備

地域コミュニティの活性化

・Bリーグのバンビシャス奈良やJリーグの奈良クラブとのオフィシャル

 パートナー契約、地域福祉活動への協賛等を通じた地域社会への貢献

ガバナンス

全てのステークホルダーにとっての企業価値向上

・将来を見据えた収益源の多様化、戦略投資・集中投資、非財務取り組みの強化

経営の透明性・効率性の向上

・取締役会の活性化、意思決定の迅速化、透明性の確保

 特に人的資本に関しては事業継続や企業成長への影響度が大きいと認識しているため、本報告書では当社の人材に関する方針とリスク及び機会について記載いたします。

 サステナビリティに関するその他の項目について、企業のサステナビリティパフォーマンスを評価する国際的な機関であるエコバディスに参加し、企業の環境、社会、倫理、持続可能な調達の4つの取組を強化してまいります。

 

・人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針

 当社グループは、「最新の技術で最善の創造、最適な製品で最大の信頼」というポリシーを掲げており、人材はその源泉であると考えています。

 「人と技術と未来を創る」というコンセプトに基づき、従業員一人一人の育成に取り組むことにより、多様化・高度化する社会のニーズに応えられる会社であり続けることを目指しています。技術者の育成には特に注力しており、中長期的な視点からじっくりと時間をかけて教育を行っております。

 多様な人材が働きがいと働きやすさをもって活躍できる職場環境及び組織風土を構築・維持し、会社の価値創造の源泉となる人材の採用と育成に努めております。

 また当社グループは、全従業員の健康と安全が全てにおいて優先されると考えています。「安全衛生規程」のもと、安全衛生マネジメントの整備と実行、安全に対する意識の醸成と教育を行い、労働災害ゼロを目指します。

全従業員が、心身ともに健康で、ワークライフバランスをもって働ける職場づくりを推進してまいります。

 

・人的資本に関するリスク及び機会と取組

 人的資本に関しては、①人材育成、②人材確保、③柔軟な働き方ができる環境の整備、の大きく3つのカテゴリについて、当社の事業継続・企業成長における重要度が高いと考えております。

 

①人材育成

 少子化や価値観の多様化が進むなかで、それらを考慮した後進育成の制度を構築しなければ中長期的に技術力の低下に繋がるリスクがあると考えております。階層別研修やマネジメント教育をはじめとする人材育成研修の充実を図り、「最新の技術で最善の創造、最適な製品で最大の信頼」 というポリシーを実現してまいります。

 

②人材確保

 ①と同様に少子化や価値観の多様化から、専門性を有した人材の獲得競争が激化しており、短期的に見ても十分な人員を確保できなくなるリスクがあります。採用手法を充実させるとともに、大学の研究室や地元の高等学校等との関係性を強化し、専門性を有した人材を継続的に採用できるよう努めます。

 

③柔軟な働き方ができる環境の整備

 中期的な機会として、従業員が仕事と生活を両立させることができる働きやすい環境を作ることにより、全ての従業員がその能力を発揮できるようになると考えております。一部、従業員の希望により、始業及び就業時刻を変更することができる時差勤務制度を導入し実施しております。

 また設計部門においてはすでにリモート技術の導入も進めており、お客様の要望への迅速な対応の実現とともに、働き方の多様化を進めてまいります。

 

(3)リスク管理

 サステナビリティに関するリスク及び機会については、リスク管理委員会を中心として、識別し、重要度を評価してまいります。

 識別したリスク及び機会についてはそのほかのリスクと統合したうえで、必要なリスク管理体制及び手法を整備・審議し、取締役会への報告を行い、管理体制の有効性をレビューして、グループ全体のリスクマネジメントを行ってまいります。

 

(4)指標及び目標

 人的資本に関する指標と目標及び実績のうち、重要なものは以下のとおりです。

指標

目標

実績

2023年度

2024年度

労働災害件数

0

1件

2

一人当たり教育投資費

80,000以上

63,084円

75,001

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)新規設備等の投資需要に関するリスク

 当社グループが製造販売する産業用機械業界は、消費マインドの低下や市場の動向により左右されます。また、原油の高騰又はテロ等世界経済の動向にも大きく左右されるため、社会的混乱やグローバル経済下での市場経済環境の大きな変化による設備投資需要の動向いかんによっては、計画の見直し又は中止により受注済案件のキャンセルに伴う棚卸資産の評価損失や、客先の経営環境の悪化による不良債権の発生など、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 近年、EV市場の拡大を背景に、当社はエネルギー関連分野を注力分野と位置付け、経営資源を集中させる戦略を進めてまいりました。しかしながら、世界的なEV需要の減速や米国新政権の政策変更等の影響で、市場環境が急速に変化し、一部に停滞が見られる状況となっており、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 こうした外部環境の変動に対応するため、幅広い市場への納入実績を活かし、北米以外の地域や様々な市場へも積極的に受注活動を行い、設備の新設のみならず、改造及び移設・各種部品の供給等、潜在的な需要の開拓及びカスタマーサービス体制を強化してまいります。

 

(2)技術者の確保と育成に関するリスク

 当社グループは多岐にわたる市場に技術を提供しており、提供先の設備の更新並びに増設の頻度は様々であります。数年から数十年にわたり利用される製品ゆえに、継続的な固有の技術からその時代に応じた新技術が求められます。しかしながら、労働市場の逼迫等により採用、育成や雇用に支障をきたす事態等の発生により従業員が大量に退職した場合には、当社グループの事業展開が制約される可能性があります。

 このため、次代を担う優秀な人材を育成し、固有技術の確実な継承と新技術の開発力の強化が必須であると考えており継続的な人材採用、OJTや研修等による人材育成を積極的に実施しております。

 

(3)材料調達に関するリスク

 当社グループの製品は他社にはない独自の革新的な技術のもとに成り立っており、当製品における製造原価のうち約6割を鋼材・部材等が占める他、各種電気部品等の供給についても外部からの購入に依存しております。

 市場の急激な変化により原材料や部材等及びそれらに含まれている加工費等の価格が高騰する等のリスクがあります。それによる調達コストの上昇を販売価格に転嫁できない場合や、半導体不足等による電気部品が長納期化することによる納期遅延など、当社グループの生産活動に支障が生じる場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 このため、常に材料価格や人件費の市場動向に注視するとともに、関連部品の先行手配や、複数の仕入先を確保し、仕入価格の安定及び調達に努めております。

 

(4)退職給付債務に関するリスク

 当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響額は将来にわたり認識されるため費用に影響を及ぼします。よって当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 このため、定期的に財政再計算を実施し基礎率の見直しを行っており、主幹の運用機関から運用に関するアドバイスを受けるようにしております。また、年金資産については、運用に当たり当社が定めた運用基本方針に基づき、委託した運用受託機関において運用を行っております。所管部署である当社総務部では、運用受託機関との定期的な情報交換を行い、定量的・定性的な評価を実施し、運用状況を適切に管理しております。

 

(5)知的財産等に関するリスク

 当社グループは当連結会計年度末時点で、特許を178件保有しておりますが、製品や事業分野において第三者の特許が成立した場合や、当社グループが認識していない特許等が現在成立している場合、当該第三者より当該特許に関する対価の支払請求、又は損害賠償及び製品の販売差止め等の訴えを提起される可能性があります。

 また、当該特許等技術を使用した製品の納入先(顧客)より、当該製品が使用できなくなった場合や一部地域の法的制度の違い等の事由に関して、損害賠償等の訴えを提起される可能性があります。このような場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは特許管理部門が、複数の特許事務所と連携し定期的に関連の知的財産の確認及び当社グループが保有する特許等の適切な管理を実施しリスク回避を行っております。

 

(6)災害・感染症等に関するリスク

 当社グループでは、地震、台風等の自然災害及びウイルス等による感染症の流行や、その他の社会的混乱により操業を停止せざるを得ないような事態に備え、従業員の安全確保、災害及び感染症の未然防止、早期復旧、取引先との連携等リスク分散を実施しております。

 本社工場につきましては、自治体より隣接する河川の大規模な氾濫により3m未満の浸水が予想されている地域にあります。そのため、生産工場や屋外キュービクルなど水防対策に取り組む他、操業停止による影響を最小限に抑えるため、BCP(事業継続計画)も考慮した木津川工場(京都府木津川市)を第二の拠点として稼働させ、リスクの低減を図っております。

 しかしながら、予想を超える規模の被災により両拠点の建物・設備の倒壊・破損や感染症の発生などにより生産活動の休止等が生じた場合、客先への製品の供給が遅れること等により、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)海外子会社の事業活動に関するリスク

 当社グループは、2023年3月にアメリカにメンテナンスサービス並びに各種工事を実施する子会社を設立いたしました。運営に際しては、相手国の政治・社会・経済等の環境変化に起因した様々なリスクが発生する恐れがあります。また、設立間もないことから投資利益実現までには一定の期間と資金を要する可能性があり、当初予定どおりに事業展開、及び収益が得られない可能性があります。

 このため、子会社及び各種専門家との連携を進め、経営判断の早期化によりリスク軽減に努めてまいります。

 

(8)為替変動に関するリスク

 当社グループでは、海外子会社の財務諸表を連結財務諸表作成のために円換算しております。そのため、金融市場が混乱し大幅な為替変動が生じた場合は、輸出入の取引、連結財務諸表における財政状態や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 このため、このようなリスクに対応して、当社グループは取引の一部を円建てとする他、仕入と売上げの決済通貨を統一するなど、急激な為替変動に備え適切なリスクヘッジ等の検討を行っており、リスクが顕在化した場合は速やかに意思決定できるように体制構築を目指してまいります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、インバウンド需要の拡大や雇用・所得環境の改善を背景とした個人消費の持ち直しの動きが見られ、企業の設備投資が比較的好調に推移するなか、追加利上げも実施される等、景気は緩やかに回復基調となりました。一方で、依然エネルギー価格や原材料価格の高騰が継続しており、為替や株価の動きが不安定になる等、先行きの不確実性は払拭されない状況で推移いたしました。

世界経済は、高金利水準が継続する欧米の状況や年度後半には米国新政権による関税引き上げへの懸念が高まり、企業の設備投資が停滞する場面も見られました。

また、中国におきましては、不動産市場の停滞が継続しており、景気の減速感は払拭されず不透明な状況となっております。その他長期化するロシアによるウクライナ侵攻や中東紛争の緊迫化等の地政学リスクもあり、金融資本市場等の経済の先行きは不透明な状況で推移しております。

当社グループにおきましては、「成長基盤の確立~収益性・生産性の拡大」をスローガンとし、新たにスタートした『中期経営計画2024-2027年度』のもと、企業価値向上に向け邁進いたしましたが、北米におけるEV市場が減速する等、市場は大きく変化いたしました。

その結果、売上高は48,355百万円(前期比3.0%増)となり、利益面では営業利益は1,681百万円(前期比48.0%減)、経常利益は1,894百万円(前期比44.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は905百万円(前期比62.8%減)となりました。

エネルギー分野を中心とした北米での付帯工事の貢献により、売上高は堅調に推移いたしましたが、長納期に伴う産業資材や人件費の高騰に加えて、至近のEV市場の減速やトランプ政権下における米国の財政政策や通商政策等の影響により、主要顧客の設備投資計画が見直されました。このため、納期の延期要請等に伴う保管場所や外注先の確保等の経費が増加した結果、大きく業績に影響を及ぼしました。

当該分野の需要に対して経営資源を集中する戦略を取ってきましたが、EV市場の減速に加えて米国新政権の関税政策の影響を見守る動きもあり、受注環境は厳しいものとなりました。

当連結会計年度における受注高は33,106百万円(前期比10.9%増)、受注残高は47,559百万円(前期末比24.3%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(塗工機関連機器)

当セグメントは、北米における機械装置の架台や電気工事などの付帯工事が堅調に推移し、売上高は42,020百万円(前期比12.4%増)、うち国内は1,379百万円(前期比13.3%増)、輸出は40,641百万円(前期比12.4%増)となりました。利益面におきましては、EV市場の減速に加え、部材・人件費の高騰や米国政権交代による政策不透明感が影響し、顧客要請に関する費用が増加したこともあり、生産コストは上昇傾向となり、セグメント利益は2,543百万円(前期比19.7%減)となりました。

受注残高につきましては、40,335百万円(前期比27.7%減)、うち国内は5,418百万円(前期比10.0%増)、輸出は34,917百万円(前期比31.3%減)となりました。

 

(化工機関連機器)

当セグメントは、中心となる電子材料関連の成膜装置の売上高が低調となり、売上高は4,645百万円(前期比40.8%減)、うち国内は2,541百万円(前期比37.6%減)、輸出は2,104百万円(前期比44.3%減)となりました。利益面におきましては、売上高の減少による固定比率の上昇に加え、一部の案件にて顧客との仕様決定並びに機械装置の調整に伴うコストが大幅な増加となり、セグメント利益は293百万円(前期比76.7%減)となりました。

受注残高につきましては、6,531百万円(前期比8.0%増)、うち国内は1,983百万円(前期比44.0%減)、輸出は4,547百万円(前期比81.5%増)となりました。

 

(その他)

当セグメントは、染色整理機械装置、各種機器の部品の製造及び修理・改造などを行っております。

売上高は1,688百万円(前期比1.9%減)、セグメント利益は271百万円(前期比0.8%増)となりました。

受注残高につきましては、692百万円(前期比30.7%減)となりました。

なお、当社グループは2024年11月13日に繊維染色機器事業の一部について事業譲渡契約を締結いたしました。

当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ1,236百万円減少し、61,693百万円となりました。以下において主な科目別に説明いたします。

 

(資産)

流動資産は前連結会計年度末に比べ1,133百万円減少し、48,505百万円となりました。その主な要因は、売上債権及び契約資産が590百万円、前渡金が965百万円それぞれ増加したこと、並びに現金及び預金が2,523百万円、その他に含まれる未収消費税等が427百万円それぞれ減少したことによります。

また、固定資産は前連結会計年度末に比べ102百万円減少し、13,187百万円となりました。その主な要因は、無形固定資産が143百万円減少したことによります。

 

(負債)

流動負債は前連結会計年度末に比べ459百万円減少し、22,505百万円となりました。その主な要因は、支払手形及び買掛金が4,482百万円増加したこと、及び電子記録債務が3,919百万円、前受金が1,043百万円それぞれ減少したことによります。

また、固定負債は前連結会計年度末に比べ454百万円減少し、947百万円となりました。その主な要因は、繰延税金負債が323百万円減少したことによります。

 

(純資産)

純資産は前連結会計年度末に比べ321百万円減少し、38,240百万円となりました。その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益を905百万円計上したこと、その他有価証券評価差額金が215百万円増加したこと、並びに配当金を1,587百万円支払ったことによります。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ2,488百万円減少し、11,252百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、724百万円の支出(前連結会計年度は5,530百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,389百万円、減価償却費821百万円、貸倒引当金の増加435百万円等による資金の増加があった一方で、破産更生債権等の増加478百万円、前渡金の増加876百万円、前受金の減少1,117百万円等により資金が減少したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、147百万円の支出(前連結会計年度は85百万円の収入)となりました。これは主に、投資有価証券の売却及び償還による収入340百万円があった一方で、有形固定資産の取得による支出508百万円があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、1,776百万円の支出(前連結会計年度は5,004百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入320百万円があったものの、長期借入金の返済による支出505百万円及び配当金の支払額1,585百万円による支出があったことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

塗工機関連機器

36,581,848

+14.6

化工機関連機器

4,018,183

△35.5

その他

1,233,342

△4.2

合計

41,833,373

+6.1

(注)金額は生産原価で、上記には外注生産によるものを含んでおります。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前期末比(%)

塗工機関連機器

26,596,309

+9.8

40,335,534

△27.7

化工機関連機器

5,127,770

+23.6

6,531,532

+8.0

その他

1,382,779

△6.4

692,447

△30.7

合計

33,106,859

+10.9

47,559,514

△24.3

(注)金額は販売価額によっております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

塗工機関連機器

42,020,870

+12.4

化工機関連機器

4,645,805

△40.8

その他

1,688,851

△1.9

合計

48,355,528

+3.0

(注)1.金額は販売価額によっております。

2.当連結会計年度において主要な販売先に該当する社数が3社ありますが、販売先と秘密保持契約を締結しているため主要な販売先及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その社名、金額及び割合の公表は控えさせていただきます。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループは、最先端技術分野への高精密・高精度な製造装置メーカーとしてリーディングカンパニーを目指し、「顧客満足度の向上」・「環境エネルギー市場への拡販」・「コスト競争力の強化」を最優先に各業界へ技術革新に対応した最新機器を提供すべく製品開発を行い、グローバルな活動を推進してまいります。

 営業及び開発・設計・製造さらに据付からアフターサービスに至るまで、グループ一体となりさらなる企業価値向上を目指し、「より高い精度の製品を供給し続けること」を念頭におき活動してまいります。

 当連結会計年度の財政状態及び経営成績につきましては、エネルギー分野を中心とした北米での付帯工事の貢献により、売上高は堅調に推移いたしましたが、長納期に伴う産業資材や人件費の高騰に加えて、至近のEV市場の減速やトランプ政権下における米国の財政政策や通商政策等の影響により、主要顧客の設備投資計画が見直されました。このため、納期の延期要請等に伴う保管場所や外注先の確保等の経費が増加し、大きく業績に影響を及ぼした結果、売上高は48,355百万円となりました。

 売上総利益は6,522百万円となりました。また、売上総利益率は13.5%となりました。

 営業利益は1,681百万円となり、経常利益は1,894百万円となりました。

 また、親会社株主に帰属する当期純利益は905百万円となりました。

 セグメントごとの経営成績の状況につきましては、塗工機関連機器部門では、北米における機械装置の架台や電気工事など付帯工事が堅調に推移しました。しかし、EV市場の減速に加え、部材や人件費の高騰、さらに米国政権交代による政策の不透明感が影響し、顧客要請に関する費用が増加したこともあり、生産コストは上昇傾向となりました。化工機関連機器部門では、中心となる電子材料関連の成膜装置の売上高が低調に推移しました。売上高の減少による固定比率の上昇に加え、一部案件で顧客との仕様決定並びに機械装置の調整に伴うコストが大幅な増加となりました。

 今後につきましては、インバウンド需要の拡大や雇用・所得環境の改善を背景とした個人消費の持ち直しの動きが見られ、企業の設備投資が比較的好調に推移するなか、追加利上げも実施される等、景気は緩やかに回復基調となっておりますが、一方で、依然エネルギー価格や原材料価格の高騰が継続しており、米国新政権による関税引き上げへの懸念が高まりによる企業の設備投資の停滞や、長期化するロシアによるウクライナ侵攻などの地学的リスクもあり、金融資本市場等の経済の先行きは不透明な状況で推移しております。

 このような状況のなか、当社グループといたしましては、幅広い市場への納入実績を活かし、北米以外の地域や様々な市場へも積極的に受注活動を行い、設備の新設のみならず、改造及び移設・各種部品の供給等、潜在的な需要の開拓及びカスタマーサービス体制を強化し、利益水準の向上に取り組んでまいります。

 また、当社グループは、2023年5月12日に公表した長期ビジョン2030及び2024年5月10日に公表した2027年度を最終年度とする中期経営計画の達成に向け、様々な施策に取り組んでまいりましたが、至近のEV市場の減速やトランプ政権下における米国の財政政策や通商政策などの影響により、主要顧客の設備投資の停滞の発生や、取引先が破産申請を公表するなど、中期経営計画策定時における市場環境の前提との乖離が生じております。上記を踏まえ、総合的に検討した結果、当社は、現行の中期経営計画の見直しを実施することとし、詳細につきましては2025年11月を目途に公表させていただく予定であります。

 なお、2024年度業績予想と比較した当連結会計年度の実績は、売上高48,355百万円(予想比4,355百万円増)、営業利益1,681百万円(予想比1,218百万円減)、経常利益1,894百万円(予想比1,105百万円減)、経常利益率3.9%(予想6.8%)となりました。

 エネルギー分野を中心とした北米での付帯工事の貢献により売上高は目標を達成し、顧客との価格交渉・生産性改善による原価ロス削減に取り組んでまいりましたが、産業資材や人件費の高騰に加え、EV市場の減速、米国の財政政策や通商政策等の影響により、主要顧客の設備投資計画が見直され停滞が発生し、納期の延期要請等に伴う保管場所や外注先の確保等の経費が増加したことにより、2024年5月に予想した経常利益率6.8%を下回った厳しい結果となりました。

連結経営目標数値                                     (単位:百万円)

 

2025年3月期予想

2025年3月期実績

計画比増減

売上高

44,000

48,355

+4,355

営業利益

2,900

1,681

△1,218

経常利益

3,000

1,894

△1,105

 当社グループが製造販売する塗工機関連機器、化工機関連機器、その他の産業用機械業界は世界経済の動向に左右されるため、消費マインドの低下やテロ等の特殊要因による社会的混乱、グローバル経済下で国際商品市場の高騰による素材価格の急騰、災害及び感染症の流行等の影響で、操業を停止せざるを得ないような事態により製品の供給が遅れる場合は、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 当社グループは財務基盤の強化を図るとともに、将来見込まれる成長分野への設備投資を進めてまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品部材の仕入、法人税等の支払、設備投資、研究及び技術開発費用、借入金の返済、配当金の支払等であり、投資資金については、営業活動で獲得した資金と、金融機関からの借入れにより資金の調達を行っております。その調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、調達規模、既存の借入れの弁済時期等を総合的に考慮し、実施しております。

 また、株主還元については、企業の収益状況により決定するものと考えており、安定的な配当の維持を基本としております。

 なお、2024年度~2027年度の配当金につきましては、中期経営計画(2024年度~2027年度)の株主還元方針を維持し、安定的かつ継続的な株主配当の充実を目的としてDOE3.5%または配当性向60%のいずれか高い金額を目安に実施いたします。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、報告数値に影響を与える見積りは、その時点で最も合理的と考えられる基準にて実施しておりますが、見積り等の不確実性があるため実際の結果は異なる場合があります。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループのトータルコンセプトである「人と技術と未来を創る」は、世界的な高まりを見せている持続可能な開発目標(SDGs)と志を共にする基本理念であり、その実現に向け連続生産性に優れた特徴を持つ塗工・成膜装置の高速・広幅化・高精度化・高品質化からなる未来を創る技術を磨いてまいりました。

当社グループでは、実験設備「テクニカム」に、ユーザー各社の市場に合わせた複数の設備技術開発機の他、試料の構造を可視化する走査電子顕微鏡(SEM)や液体材料の物性を数値化するレオメーター、表面張力計などの精密計測機器を整備し、生産現場に直結した加工プロセスの実証確認や、ユーザーや大学などの研究機関との共同開発を進めております。

世界的な地産地消ニーズ、デジタル技術と通信技術の発達により、生産条件と製品品質の安定とスマートファクトリーの要求は急速に高まっております。当社では、長年培ってきた数値制御技術と3D-CAD、最新のオートメーション技術を組み合わせ、塗工操作の自動化やデジタルツインの実現に向けた取り組みを実施しております。

さらに、製品の差別化と安定供給を目指し、コア部品である高精度ロールとスロットダイの生産拡大のための設備投資に取り組み、技術と生産ノウハウの蓄積を進めております。

また、ヒラノ技研工業株式会社では、光学フィルム、多孔質フィルム、液晶ポリマーフィルムなどの高機能性フィルムに関する延伸・熱処理・ラミネート装置に加え、次世代の二次電池用乾式電極製膜プロセス構築を目的とした新規粉体製膜テスト装置をテクニカムに設置完了し、自社テスト並びに顧客テストを継続しております。

株式会社ヒラノK&Eは、独自技術である連続式スパッタ装置を幅広い用途へ展開するなかで、電子素材の性能向上に貢献する基材の表面洗浄や活性化など製品性能向上を目的とした前処理工程を付与した製品の出荷も開始しております。

 

当社グループでは、基礎技術研究、製品開発のなかから生まれた新技術や成果の知財化を進めており、当社グループの連結会計年度末時点での保有特許は178件となっております。

 

現在、研究開発活動は当社の開発部、設計技術部及びヒラノ技研工業株式会社、株式会社ヒラノK&Eの技術担当を含む合計約30名、総社員の1割に当たる要員で業務の対応に努めております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、490,420千円となっております。

 

(塗工機関連機器)

塗工機械分野では、EV用リチウムイオン二次電池市場が直近では停滞感を示しておりますが、長期展望におけるエネルギー関連の重要性は不変と位置付けており、次世代電池を含む当該市場における塗工乾燥装置の開発と生産性向上の要求に対する技術開発について継続してまいります。

近年、次世代太陽電池として位置づけられている、ペロブスカイト太陽電池向けの塗工機開発並びに将来の塗工機の自動化を担うDX化につきましても、外部メーカー並びに国内外の大学研究機関と共同で研究開発を進めております。現在、ペロブスカイト太陽電池向けの標準機の導入を進め、来年度弊社「テクニカム」に設置し、ユーザーの試作テストを受付ける予定となっております。同標準機には塗工・乾燥・ウェブハンドリングの条件最適化を行うヒラノオリジナルのデジタルツインを搭載する予定となっております。

当部門に関わる研究開発費は、308,046千円となっております。

 

(化工機関連機器)

化工機械分野では、DX化に伴う通信技術の拡大や自動車に代表される自動運転、半導体生産増強等から、電子材料の製造も安定的に増産傾向にあることから、さらなる高精度化、高機能化を進めてまいります。

プリント基板材料分野では搬送・高温加圧・貼合技術に改善を加え、電子機器の小型化に寄与する薄物、高集積積層基板の実用化に貢献いたしました。

当社グループでは、透明ポリイミドフィルムの成膜技術開発、炭素繊維等のシート成形、高温延伸機、高温熱処理装置、連続スパッタ装置など次世代を担う材料に対応する設備開発を進めてまいります。

当部門に関わる研究開発費は、182,373千円となっております。