(1)会社の経営の基本方針
当社グループは今日まで「農家を過酷な労働から解放したい」という創業の理念を連綿と受け継ぎ、2025年には創立100周年を迎えます。2026年以降の次の100年間においても、当社グループが農家に最も寄り添う存在であり続けるためにも、新中期経営計画の5年間でしっかりと礎づくりを実行し飛躍を果たします。
私たちが次の100年に向けて目指す基本理念は、「お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供」を通じ豊かな社会の実現へ貢献する、としています。これからは製品の提供だけではなくサービス(情報・コト・機能など)にも注力し、お客さまに喜ばれる井関として活動を続けてまいります。

(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業環境が大きく変化する中で、農業機械総合専業メーカーとして培ってきた知見、経験などをコアに社会課題を解決し、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指してまいります。目標とする経営指標を「2025年までに連結営業利益率5%」として企業価値向上を図ってまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
1)前中期経営計画(2016年~2020年)の振り返り
当社グループは、創立100周年となる2025年には「農業機械総合専業メーカーとして、国内・海外市場で確固たる地位を築く」の実現に向け、2016年に前半5ヶ年を重要なステップと位置付け中期経営計画を策定し活動してまいりました。その後、市場環境の変化を踏まえ、数値目標の達成時期を2年後ろ倒しとしました。
しかしながら、日本国内では消費増税前の駆け込み需要とその反動減や自然災害などが農機需要に影響を与え、海外では成長エンジンと位置付けたアセアン・中国市場で成長の踊り場状態が継続するなど、国内・海外ともに当初想定していた事業環境に大きな変動がありました。加えて、昨年からの新型コロナウイルス感染症の影響も大きく中期経営計画の数値目標を大幅に下回る結果となりました。
これらのことから当社は、売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換が大きな課題となっており、そのためには固定費の低減をはじめとした収益性の改善が欠かせません。
一方、基本戦略に沿った取り組みは、国内販売会社における修理や部品などメンテナンス収入の向上や、海外向け商品の収益改善、PT.ISEKI INDONESIAの採算性向上など一定の成果として結びつけることができました。前中期経営計画での成果を継続して成長させていくとともに残課題の解決に向けて、今回、2021年から2025年の5年間の新中期経営計画を策定しました。

2)事業環境と課題
・事業環境
当社グループを取り巻く事業環境は、国内では、農家戸数の減少と農業の大規模化や作付転換、スマート農業化などが見られ、農業構造は大きく変化してきております。海外では、地域ごとに環境は異なりますが、多様なニーズや競争激化など、事業環境は常に変化しております。
また、国内外共通事項としては、新型コロナウイルス感染症の影響、世界的な食糧問題、気候変動リスクなど多岐に亘っております。
・新型コロナウイルス感染症の影響について
2020年は新型コロナウイルス感染の拡大が国内外の経済活動に大きな影響を与えました。当社グループの事業環境においても、国内は展示会をはじめとした営業活動の自粛による農機製品の売上減少がありました。海外は、北米向けコンパクトトラクタの巣ごもり特需があった一方、欧州でのロックダウン影響やタイでのコロナ影響による農家所得の低下に伴う出荷減少がありました。次期の当社グループを取り巻く環境は、国内外ともに新型コロナウイルス感染症が依然残るものの、ワクチンの普及等により徐々に収束に向かい、2021年度中には社会活動や経済活動も緩やかに回復していくものと仮定しております。その中で、Webを活用したバーチャル実演会や小規模ロングラン商談会など営業活動の工夫や在宅勤務、分散業務等新しい働き方をはじめとしたニューノーマルなビジネススタイルを推し進めてまいります。
また、このコロナ禍において、食料の安定供給や食料自給率の向上など食への関心が高まっております。食を支える農業や、人々の暮らしを支える景観整備事業は止めてはならないエッセンシャルビジネスとして重要度が再認識されております。これらを支える当社グループは、今後も変革し続け存在感を示していかなければなりません。
・経営課題
上記の環境認識のもと、当社グループは①需要、ニーズ変化への対応②財務体質改善、収益拡大③ESGへの取り組み強化④技術革新の実現を経営課題と認識し、長期ビジョンの実現に向けて各種の施策を推し進めてまいります。

3)新中期経営計画(2021年~2025年)
当社グループは、2030年の長期ビジョンを
「食と農と大地」のソリューションカンパニー
~夢ある農業と美しい景観を支え、持続可能な「食と農と大地」の未来を創造する~
としました。
「農」は「食」と「大地」を守り、豊かな「人・社会」を実現しています。その「農」と「農家」を支えるのが当社グループであり、これらに関連する課題を解決していく企業であり続けたいという想いを込めています。この長期ビジョンの実現に向けて、当社グループは7つの誓いを胸に変革してまいります。

・基本戦略
長期ビジョンの実現に向けて、当社グループでは2つの基本戦略に沿って経営課題を解決してまいります。
①ベストソリューションの提供(お客さまに向けて)
需要やニーズの変化、技術革新への対応等の課題には、主要機種毎に市場の伸びやニーズ等を分析したうえで中期商品開発テーマを設定し、お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供を、開発、製造、営業が三位一体となって実行してまいります。
国内においては農業の大規模化やスマート農業化の加速、コメ以外の作物への作付転換など農業構造の変化に合わせた商品開発および営業戦略を展開してまいります。特に大規模化は今後ますます進行していくことが予想され、開発、営業のリソースを傾注してまいります。
サービス面でも、従来より実施している大型整備拠点の拡充や大規模農家のニーズに応える教育などは引き続き強化していくことに加え、サービスの概念を「情報」にも広げてまいります。現在、デジタル技術を導入した新しい農業が始まっています。これを広めていくことも当社グループの役割です。スマート農機から得られたデータを活用する新しい営業サービスや商品開発を展開するなど、トータルICTソリューションによりビジネスモデルの進化を図ってまいります。
海外においては、北米、欧州、アジアを中心に各地域での戦略パートナーとの協力関係を強化し事業領域を拡大してまいります。北米は、昨年はコロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり特需がありましたが、中長期的には安定市場であると考えております。OEM先との協力関係強化に加え、商材を拡充し売上拡大を図ってまいります。欧州は景観整備市場向けを中心に展開しており、当社グループの歴史は長く井関ブランドの認知度が高い地域です。引き続き市場ニーズに合った商品開発を進めるとともに、電動製品の研究開発も進め、景観整備市場でのポジションアップを図ってまいります。アジアは、農業市場の拡大が最も期待できる地域です。特にアセアンでは、前期末に連結子会社化したIST Farm Machinery Co.,Ltd.を核として、日本で培った技術やノウハウを展開し、売上拡大を図ってまいります。
②収益とガバナンス強化による企業価値向上(従業員、株主、取引先に向けて)
当社の課題である収益性については、構造改革と経営効率化により改善を図ってまいります。構造改革では、生産体制の再編成及び事業・商品・リソースの選択と集中を基本的な考え方とし、特に国内製造所の最適生産体制の構築を重点施策として進めてまいります。これにより、グループの人材・設備を活性化し生産性の向上を図ります。また、経営効率化では、これまで取り組んできた業務効率化に加え、デジタルツールを活用した営業の効率化や、共通設計、型式削減などによる投資効率の改善、グループ全体での人員フル活用による効率的な経営に変革してまいります。これらの取り組みにより、売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換を果たしてまいります。
ガバナンスの強化については、取締役候補者の選任プロセスを透明化するため、独立社外取締役を主要な構成員とする「指名諮問委員会」を2018年に設置し、2020年には取締役の報酬における審議・答申の機能を追加し「指名報酬委員会」として再編いたしました。また、取締役会の機能のさらなる向上を目的とした取締役会実効性評価の実施など、取り組みを進めてまいりました。今後は、2021年に予定されているコーポレートガバナンス・コード改訂を契機とし、さらなる態勢強化に努めてまいります。また、ESGの取り組みについては新中期経営計画策定に合わせてマテリアリティ(重要課題)を見直しました。井関らしい取り組みを通じて、社会的責任を果たしてまいります。
経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めてまいる所存であります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
1)経済情勢及び農業環境の変化
当社グループは、農業機械の開発・製造・販売を主な事業内容としております。主な事業基盤である国内農業においては、農業従事者の高齢化、担い手不足による農家戸数の減少等の構造的な課題を抱えています。また、政府による農業政策転換等の影響に加え、天候に左右されやすい農作物の価格次第では農家の購買意欲に影響を及ぼします。
こうした農業機械市場特有の構造に加え、国内外の景気の低迷等により農業機械需要が減少し、業績が悪化する可能性があります。
2)為替レートの変動
当社グループは、海外事業を展開し、当連結会計年度の連結売上高における海外売上高比率
は22.4%です。当社グループが国内で生産し輸出する事業においては、円高の進行により価格競争力の低下を招く可能性があります。また、当社グループの連結財務諸表の作成にあたり、現地通貨で作成される海外関連会社の財務諸表を円換算しているため、現地通貨における価値が変わらなくても、為替レートの変動による影響を受けます。
当社グループでは、輸出における外貨と円貨の為替折半取引や為替予約に加え、海外生産に
おいての現地調達比率の向上等により、為替リスクの軽減を図っておりますが、外国為替相場
の急激な変動が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
3)原材料の価格高騰、調達難、サプライチェーンの混乱
当社グループは、多数の取引先から原材料や部品を調達しており、調達価格が予想を大きく上回る急激な高騰や供給逼迫の長期化、サプライチェーンの停滞等のリスクがあります。
このようなリスクを回避するため、各種原材料や部品等を複数の取引先からの調達を図っていますが、調達に関するリスクを完全に払拭できるものではなく、リスクが顕在化した場合や、サプライチェーンの停滞に起因する生産減等が当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
4)特定の取引先、調達先への依存
当社グループの連結売上高のうち、主要販売先上位3社の占める割合は、当連結会計年度において20%となっております。また、当社製の製品に使用している原材料や購入部品には、調達先が特定されているものがあります。
当社グループと特定の販売先や調達先の取引関係は、安定的に継続しており、今後とも良好な関係を維持していく予定ですが、特定の販売先や調達先の方針変更や業績不振、倒産等により業績が悪化する可能性があります。
5)他社との競争
当社グループが属する国内農業機械市場においては、現在2025年までに担い手農家のほとんどがデータを活用する「スマート農業の社会実装」が政策目標として掲げられ、先端技術の導入・実証が進んでいます。市場では、スマート農業に対応する高機能製品の開発や、農業資材低減ニーズを受けた低価格化等の面で、競合他社との厳しい競争が展開されております。
海外では、地域ごとに環境は異なりますが、多様なニーズや環境意識の高まりなど、事業環境は常に変化しております。
こうした環境や競争に、当社グループがアフターサービスを含めた商品競争力を強化できなければ、業績が悪化する可能性があります。
6)商品やサービスの重大な瑕疵や欠陥の発生
当社グループは、お客さまに満足いただける商品を提供するための品質管理・品質保証体制 を構築し、社内で定められたプロセスに沿って製品の開発・生産・アフターサービスを行っております。また、品質問題の発生に備え、生産物賠償責任保険の加入等によりリスクをヘッジしています。
しかしながら、製品の開発・製造等における品質上のすべてのリスクを排除することは困難であり、商品やサービスに重大な瑕疵や欠陥が発生した場合、または当社グループおよび当社製品への信頼が失われた場合、当社グループの業績が悪化する可能性があります。
7)株式市場の動向、土地およびその他の固定資産の価値下落
当社グループは、有価証券で時価のあるもの、および事業用の土地等を保有しております。当連結会計年度末における有価証券で時価のあるものが4,341百万円、土地が44,690百万円となっております。そのため、株価や地価が大きく下落した場合には、減損損失、評価損または売却損等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は有価証券のうち保有目的が純投資目的である投資株式は保有しておりません。当社が保有する政策保有株式については、毎年、取締役会において個別の銘柄ごとに保有に伴う便益やリスク等について、定性と定量の両面から総合的に勘案のうえ、保有の意義を検証しております。検証の結果、保有意義が希薄となった有価証券については、売却検討対象としています。
また、当社グループが保有するその他の固定資産等については、経営環境の著しい悪化等に伴う収益性の低下や、市場価格の下落等により減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
8)環境問題等の公的規制や問題の発生、気候変動への対応
当社グループは、事業活動をするうえで大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理、有害物質の排除等に関する国内外の環境規制を受けており、規制に対応するために必要な経営資源を投入しています。現状では、環境負荷軽減に対応する商品の生産や事業活動における対応をしておりますが、規制や市場の要求が厳格化した場合のコスト負担や、環境問題発生時の是正措置、訴訟等により、業績が悪化する可能性があります。
また、気候変動をはじめとする環境課題につきましては、対応次第で当社グループの業績に好影響を及ぼす可能性がある一方で、対応を誤れば悪影響を及ぼす可能性もあります。全世界で長期的に進む気温上昇に伴い、当社の事業基盤である農業においては作物体系の変化や農地の減少などにより需給が変動し、当社グループの商品構成や販売量をはじめ事業活動全般に大きな影響を及ぼし、適切な対応ができなければ業績が悪化する可能性があります。
9)国際的な事業活動に伴うリスク
当社グループは、海外事業展開を進展させていますが、国際的な事業活動をする上で、各国の税・法制度や貿易政策の予期せぬ変化、政情不安等により業績が悪化する可能性があります。
また、当社グループはアジア地域への事業展開に注力しておりますが、主に同地域における人材確保の困難性、未成熟な技術水準や不安定な労使関係などが、当社グループの事業展開を阻害する可能性があります。
10)法令違反リスク
当社グループは、法令順守と倫理に基づいた「井関グループ倫理行動規範」を定め、内部統制の体制を整え、グループ一丸となって法令順守及び倫理行動規範の徹底に努めております。それにもかかわらず、当社グループの役職員が法令に違反する行為を行った場合には、当社グループの事業活動が制限され、業績が悪化する可能性があります。
11)自然災害や予期せぬ事故、感染症の拡大等に関するリスク
当社グループの国内外の主要拠点において、地震、台風、水害等の自然災害、予期せぬ事故、感染症等が発生した場合、当社グループの事業活動に直接的または間接的に影響を受ける場合があります。
そのような場合に備え、被害を極小化し、事業の継続を図るべく、火災や風水害の各種保険の付保に加え、事業継続計画を整備しその対応に努めておりますが、実際に発生した場合には、当社グループの業績が悪化する可能性があります。
また、当社グループは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、従業員への安全面・健康面への配慮を優先しつつ、政府や地方自治体の指針にしたがい、出張制限や勤務形態の見直しをはじめ、Webを活用した各種施策の継続的な実施により、事業活動への影響の低減を図っております。しかしながら、感染拡大の事態が深刻化、長期化した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
12)他社との業務提携、合弁事業及び戦略的投資
当社グループは、必要に応じて他社との業務提携、合弁事業、戦略的投資を行うことがあります。これらの施策は双方の経営資源を有効に活用し、タイムリーに開発、生産、販売するうえで有効な手段であると当社グループは考えております。
しかしながら、業務提携や合弁事業において、財政状態やその他の理由により、当事者間で利害の不一致が生じた場合には、提携を維持できなくなる可能性があります。また、買収等戦略的投資については、事業、技術、商品及び人材などの統合において、期待する成果や効果が得られない可能性があり時間や費用などが想定以上にかかる可能性があります。従って、これらの施策の成否は当社グループ事業に重大な影響を及ぼし、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
13)借入金のリスク
当社は、取引金融機関とシンジケート・ローン契約及びコミットメント・ライン契約を締結しており、これらの契約に付されている財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上返済義務が生じる可能性があり、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当連結会計年度末における当社グループの借入金の連結貸借対照表計上額は、61,574百万円と、総資産の32.9%を占めております。そのため、借入金利の上昇により業績が悪化する可能性がありますが、当社グループでは、固定金利等の種々の借入条件を適宜組み合わせることで、急激な金利変動に備えております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定)
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、資産・負債の評価及び収益・費用の認識について、重要な会計方針に基づき見積り及び判断を継続して行っております。重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りの仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 追加情報」に記載しております。
連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、特に重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産の回収可能性の評価)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収可能見込額を計上しております。
事業計画や経営環境の変化により、将来の課税所得見積りに変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しまたは追加計上により、税金費用が変動する可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産について、継続的に収支の把握がなされている単位を基礎としてグルーピングを行い、減損損失を認識する必要のある資産グループについては、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損損失の認識の判定、使用価値の算定に用いられる将来キャッシュ・フローは、事業計画などの企業内部の情報、経営環境などの企業外部の要因に関する情報に基づく合理的な仮定により算定しております。
事業計画や経営環境の変化により、回収可能価額に変動が生じた場合には、減損損失の金額の増加または新たな減損損失が発生する可能性があります。
当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が続く中、感染拡大防止と社会経済活動維持を両立していく政府の取り組みもあり、企業収益の減少幅が縮小するなど持ち直しの動きもみられましたが、秋以降の感染再拡大により回復は緩やかなものにとどまりました。海外についても、徐々に経済活動が再開され緩やかな回復の兆しが見られましたが、先行き不透明な状況が続きました。
このような状況の中、当社グループは、国内では、新商品の投入や顧客対応の充実など、農業構造変化への対応強化に、海外では、主力市場である北米、欧州、中国、アセアンでの販売強化に努めてまいりましたが、連結経営成績は以下のとおりとなりました。
〔当期連結業績〕
当期の売上高は、前期比594百万円減少し、149,304百万円(前期比0.4%減少)となりました。国内においては、補修用部品および修理整備等のメンテナンス収入が堅調に推移したほか、施設工事で大型物件の完工があり増収となった一方、消費増税前駆け込み需要の反動減に加え、新型コロナウイルス感染拡大に伴う展示会中止など、営業活動の自粛により農機製品が減少し、国内売上高は前期比1,810百万円減少の115,907百万円(前期比1.5%減少)となりました。海外においては、北米向けコンパクトトラクタの巣ごもり特需があったものの、仕入エンジン入荷遅れに伴う出荷減少、アセアンは、タイで干ばつ等の天候影響が徐々に薄れてきたものの、コロナ影響による農家所得の低下に伴う減少や、インドネシア向けトラクタの出荷減などにより減少、一方、中国、韓国および台湾向けの出荷が伸びたことに加え、欧州では、上期にロックダウンの影響があったものの、下期からは回復傾向となったことやフランス連結子会社の決算期を統一(15ヶ月決算)したことにより増加し、海外売上高は前期比1,215百万円増加し、33,397百万円(前期比3.8%増加)となりました。
営業利益は、減収による粗利益の減少を、販管費の削減で吸収しきれず、前期比661百万円減少の2,084百万円(前期比24.1%減少)となりました。
経常利益は、為替差損および持分法投資損失の縮小等により、前期比593百万円増加の1,702百万円(前期比53.6%増加)となりました。
税金等調整前当期純損失は、中国の持分法適用関連会社の出資比率低下に伴う持分変動利益の計上はあったものの、減損損失の計上により7,114百万円(前期は税金等調整前当期純利益1,302百万円)となりました。
親会社株主に帰属する当期純損失は、再評価に係る繰延税金負債の取崩しに伴う税金費用の減少もあり5,641百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益723百万円)となりました。
〔当期個別業績〕
当期の売上高は79,251百万円(前期比12.0%減少)、営業損失は1,358百万円(前期は営業利益992百万円)、経常損失は257百万円(前期は経常利益2,241百万円)、当期純損失は13,291百万円(前期は当期純利益1,555百万円)となりました。
商品別の売上状況につきましては、次のとおりであります。
〔国内〕
整地用機械(トラクタ、乗用管理機など)は22,894百万円(前期比9.8%減少)、栽培用機械(田植機、野菜移植機)は8,869百万円(前期比2.0%減少)、収穫調製用機械(コンバインなど)は16,883百万円(前期比9.2%減少)、作業機、補修用部品、修理収入は42,000百万円(前期比2.9%増加)、その他農業関連(施設工事など)は25,259百万円(前期比5.7%増加)となりました。
〔海外〕
整地用機械(トラクタなど)は24,667百万円(前期比2.6%減少)、栽培用機械(田植機など)は1,701百万円(前期比44.5%増加)、収穫調製用機械(コンバインなど)は2,307百万円(前期比35.3%増加)、作業機・補修用部品は3,218百万円(前期比14.8%増加)、その他農業関連は1,502百万円(前期比27.6%増加)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ10,083百万円減少し187,428百万円となりました。資産の部では、流動資産が前連結会計年度末に比べ2,820百万円増加し、固定資産が12,903百万円減少しました。主に、現金及び預金の増加2,383百万円、受取手形及び売掛金の増加2,104百万円、商品及び製品の減少2,545百万円、土地の減少6,069百万円、リース資産の減少2,666百万円、機械装置及び運搬具の減少1,720百万円によるものであります。
負債の部は、前連結会計年度末に比べ3,249百万円減少し125,009百万円となりました。主に、仕入債務の減少880百万円、流動負債その他の減少2,057百万円によるものであります。
純資産の部は、前連結会計年度末に比べ6,833百万円減少し62,419百万円となりました。主に、利益剰余金の減少2,532百万円、土地再評価差額金の減少3,787百万円によるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ2,383百万円増加し10,752百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、9,694百万円の収入(前期比814百万円の収入減)となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純損失7,114百万円、減価償却費6,987百万円、減損損失9,301百万円、たな卸資産の減少額3,299百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、5,167百万円の支出(前期比1,936百万円の支出減)となりました。主な内訳は、設備投資による支出6,626百万円、貸付金の減少額1,174百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,179百万円の支出(前期比216百万円の支出減)となりました。主な内訳は、長期借入による収入10,900百万円、長期借入金の返済11,288百万円、リース債務の返済による支出2,108百万円であります。
当社グループの主な資金需要は、部品原材料の購入及び製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用に係る運転資金のほかに、生産設備の更新や営業拠点の整備等の設備投資資金であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、これらの資金は、自己資金及び金融機関からの借入金により調達しております。なお、当社は、資金の流動性確保と新型コロナウイルス感染症影響の深刻化・長期化等による緊急的な資金需要が発生する場合に備え、主要取引銀行と総額20,030百万円のコミットメント・ライン契約を締結しております。
当連結会計年度末における有利子負債(リース債務含む)の残高は69,350百万円、現金及び預金の残高は10,787百万円となっております。
当社グループは、創立100周年となる2025年には「農業機械総合専業メーカーとして、国内・海外市場で確固たる地位を築く」の実現に向け、2016年に前半5ヶ年を重要なステップと位置付け中期経営計画を策定し、基本戦略及び数値目標(連結売上高1,900億円、連結営業利益90億円、ROE(自己資本利益率)8.0%以上)を定めました。
しかしながら、日本国内では消費増税前の駆け込み需要とその反動減や自然災害などが農機需要に影響を与え、海外では成長エンジンと位置付けたアセアン・中国市場で成長の踊り場状態が継続するなど、国内・海外ともに当初想定していた事業環境に大きな変動がありました。加えて、昨年からの新型コロナウイルス感染症の影響も大きく、重視する経営指標の結果は以下のとおりとなりました。
当社グループでは、前中期経営計画での成果を継続して成長させていくとともに、残課題の解決に向けて、今回、2021年から2025年の5年間の新中期経営計画を策定しました。
長期ビジョンである「食と農と大地」のソリューションカンパニーの実現に向けて、基本戦略及び目標数値(2025年までに連結営業利益率5%)を定め、取り組みを進めてまいります。
当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別生産実績を記載しております。
(注) 金額は販売価格で表示しており、消費税等は含まれておりません。
主として需要見込みによる生産方式であり、受注生産はほとんど行っていないため記載をしておりません。
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別販売実績を記載しております。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合。
当連結会計年度は当該割合が10%未満のため、記載を省略しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
該当事項はありません。
当社グループは、創業以来「お客様に喜ばれる製品」の提供を企業理念の一つに掲げ、お客様に満足して使っていただける、お求めやすい商品をタイムリーに提供することをモットーに研究開発活動を展開しています。お客様のニーズに応えるため、徹底した調査に基づき、省エネ・低コスト農業、安全作業・環境保全への配慮など積極的に取り組んでいます。
国内においては、主力である稲作機械をはじめとして、省力化ニーズの高い畑作・野菜作分野への機械化に注力しているほか、ICTやロボット技術を活用した超省力化農業、経験と勘の農業から誰もができる農業、データを駆使した戦略的な農業を可能とするスマート農業にも積極的に取り組んでいます。海外においては、北米や欧州向コンパクトトラクタ市場への対応や、中国・アセアンそして韓国やインドへ日本で培った稲作技術を活用した商品展開など、地域のニーズに対応した商品展開に積極的に取り組んでいます。
近年は、変化し続ける事業環境に迅速に対応するため、産学官との連携や、自前主義にこだわらず、パートナーとの幅広い連携による技術力の向上と画期的な商品・サービスの開発・提供にも積極的に取り組んでいます。
また、毎年、技術研究発表会を開催し、研究開発の成果や発明情報の共有とともに、討論を重ね グループ全体のスキルアップを図っています。
なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
(トラクタ)
・大型化が進む国内農機市場においても、20~60馬力クラスのトラクタは依然として大きな割合を
占めています。このたび、高い静粛性と高い次元の振動低減、粘り強いトルクを発揮する当社内製
新エンジンを搭載したジアスNTA・NT5シリーズを市場投入しました。
・欧州市場では、環境規制対応により、高機能顧客層(プレミアム)とシンプル低価格志向顧客層(エコノミー)に需要の二極化が進んでいます。このたび、欧州ノンロードディーゼルエンジン排出ガス第5次規制(EU StageV)に適合した当社内製新エンジンを搭載し、高機能顧客層向けのTGシリーズと、シンプル低価格志向顧客層向けのTLEシリーズをモデルチェンジし、市場投入しました。
いずれのシリーズにも、メカ仕様(主に農用)とHST仕様(主に景観整備用)をラインアップし、欧州市場の幅広いニーズに応えます。
(コンバイン)
・当社主力コンバインHFRシリーズに、当社内製新エンジン搭載し、新たなHFRシリーズとして市場投入しました。新エンジンは従来機に比べ低騒音、トルク向上を実現しており、快適作業や高い負荷でもより粘り強い作業を可能にします。また、作業状態時にエンジン負荷、車速、揺動棚の層厚に応じて作業回転範囲内(グリーンゾーン)でエンジン回転を自動的にコントロールするIQ脱穀制御などの新機能を搭載しています。これにより、コーナー旋回や倒伏作業などの低速作業時に唐箕の風量を最適化して脱穀ロスを低減します。
(田植機)
・農業構造が急速に変化している国内市場において、更なる高能率・高精度・省力化が求められています。今回、当社田植機「さなえ」誕生50年の節目の年に、デザインを先進的で高能率なイメージに一新、“オペレスタ・ターン”を始めとする新機能を搭載した乗用田植機PRシリーズ(5条~7条植)を市場投入しました。この新機能は、2017年に市場投入した、GNSSの測位情報を活用した直進アシスト機能(オぺレスタ)に加え、旋回作業のハンドル操作を田植機が自動でアシストするものです。
さらに、当社の国内最上位モデル「Japan」と位置づけ、担い手層向けとしてPRJシリーズ(8条植)を市場投入しました。これにより、トラクタ(TJシリーズ)・コンバイン(HJシリーズ)とともに、「ISEKI All Japan」で日本農業を応援してまいります。
(野菜作商品)
・広がりを見せる野菜作市場においても、生産者1軒あたりの栽培面積拡大により、植付、収穫作
業の更なる効率化や省力化が求められています。
移植機においては、水田転作で増加傾向のあるたまねぎやレタスなどの多条植ができる、「ナウ
エルナナ」PVHR400(4条植え)を市場投入しました。
また、収穫機においては、市場要望に応えた新機能や新エンジンを搭載しただいこん収穫機VHD1250シリーズを市場投入しました。
(その他商品)
・当社乗用管理機JKB23(キャビン仕様)用の作業機「スマート追肥システム(IHB200LX-SET)」を市場投入しました。水稲の追肥作業は、収量を確保し品質を安定させるために行われ、6~8月の時期に稲の生長に合わせた適正時期でのタイミングが重要です。これまでは、各ほ場に作業者が入り、生育状態を葉色と葉色板と比較しながら施肥量を調整しており、熟練の技術を要し、且つ重労働でした。スマート追肥システムは生育センサーでリアルタイムに生育状況を取得しながら、状態に合わせて最適量の追肥(施肥)を自動で行います。これにより、省力化と高精度な追肥作業を実現します。
(本商品は、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)次世代農林水産業創造技術」の研究を通して国立大学法人鳥取大学、株式会社トプコン、初田工業株式会社と共同開発した商品となります。)
当社は、「ISEKIレポート」「知的財産報告書」等において当社グループの研究開発の考え方、活動、知的財産戦略等について情報開示を行っております。「特許行政年次報告書」(特許庁編)によれば、日本における分野別登録数(2014年までは分野別公開数)および全産業を対象とした特許査定率において上位を維持し続け、2019年度はいずれも第1位となりました。
(分野別登録数・分野別公開数の年度別推移)
※ 特許査定率 = 特許査定件数 / (特許査定件数 + 拒絶査定件数 + 取下・放棄件数)
取下・放棄件数 … 拒絶理由通知後に取下げまたは放棄した件数