(1)会社の経営の基本方針
当社グループは今日まで「農家を過酷な労働から解放したい」という創業の理念を連綿と受け継ぎ、2025年には創立100周年を迎えます。2026年以降の次の100年においても、当社グループが農家に最も寄り添う存在であり続けるために、2021年に策定した5か年の中期経営計画で礎づくりを実行し飛躍を果たします。
当社グループが次の100年に向けて目指す基本理念は、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」、としています。
これからは製品の提供だけではなくサービス(情報・コト・機能など)にも注力し、お客さまに喜ばれる井関として活動を続けてまいります。

(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業環境が大きく変化する中で、農業機械総合専業メーカーとして培ってきた知見、経験などをコアに社会課題を解決し、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指してまいります。目標とする経営指標を「2025年までに連結営業利益率5%」として企業価値向上を図ってまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
1)事業環境と課題
当社グループを取り巻く事業環境は、国内では、農家戸数の減少と農業の大規模化や作付転換、スマート農業化などが見られ、農業構造が大きく変化してきております。海外では、地域ごとに環境は異なりますが、多様なニーズや競争激化など、事業環境は常に変化しております。
また、国内外共通事項としては、新型コロナウイルス感染症の影響、世界的な食料問題、気候変動リスクなど多岐に亘っています。
上記の環境認識のもと、当社グループは①需要、ニーズ変化への対応②財務体質改善・収益拡大③ESGへの取り組み強化④技術革新の実現を経営課題と認識し、長期ビジョンの実現に向けて各種の施策を推し進めてまいります。

2)新中期経営計画(2021年~2025年)
当社グループの長期ビジョンは、「『食と農と大地』のソリューションカンパニー」
~夢ある農業と美しい景観を支え、持続可能な「食と農と大地」の未来を創造する~
としています。
「農」は「食」と「大地」を守り、豊かな「人・社会」を実現しています。その「農」と「農家」を支えるのが当社グループであり、これらに関連する課題を解決していく企業であり続けたいという想いを込めています。この長期ビジョンの実現に向けて、当社グループは7つの誓いを胸に変革してまいります。

・基本戦略
長期ビジョンの実現に向けて、当社グループでは2つの基本戦略に沿って経営課題を解決してまいります。
①ベストソリューションの提供(お客さまに向けて)
需要やニーズの変化、技術革新への対応等の課題には、主要機種毎に市場の伸びやニーズ等を分析したうえで中期商品開発テーマを設定し、お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供を、開発・製造・営業が三位一体となって実行してまいります。
国内においては、農業の大規模化やスマート農業化の加速、コメ以外の作物への作付転換など農業構造の変化に合わせた商品開発および営業戦略を展開してまいります。特に大規模化は今後ますます進行していくことが予想され、開発、営業のリソースを傾注してまいります。大型農機については、当期春に田植機PRJシリーズが本格稼働となり、大規模生産者向け高性能・高耐久「ALL Japanシリーズ」が勢ぞろいしました。また、スマート農業については普及・拡大に向けた動きが加速しております。特に、田植機のGPSを活用した直進アシスト仕様の割合は年々増加してきており、作業の最適化による農業の効率化に加え、燃料使用量削減による温室効果ガス削減にも寄与しております。
サービス面でも、従来より実施している大型整備拠点の拡充や大規模農家のニーズに応える教育などは引き続き強化していくことに加え、サービスの概念を「情報」にも広げてまいります。現在、デジタル技術を導入した新しい農業は一歩ずつ進化してきています。これを広めていくことも当社グループの役割です。スマート農機から得られたデータを活用する新しい営業サービスや商品開発を展開するなど、トータルICTソリューションによりビジネスモデルの進化を図ってまいります。
海外においては、北米、欧州、アジアを中心に各地域での戦略パートナーとの協力関係を強化し事業領域を拡大してまいります。北米は、新型コロナウイルス感染症の影響はあったもののライフスタイルの変化も見られ、中長期的には安定市場であると考えております。OEM先との連携関係強化に加え、商材を拡充し売上拡大を図ってまいります。欧州は、景観整備市場向けを中心に展開しており、当社グループの歴史は長くISEKIブランドの認知度が高い地域です。引き続き市場ニーズに合った商品開発を進めるとともに、電動製品の研究開発も進め、景観整備市場でのポジションアップを図ってまいります。稲作を中心としたアジアでは、農機市場の拡大が最も期待できる地域です。特にアセアンでは、連結子会社のIST Farm Machinery Co.,Ltd.を核として、日本で培った技術やノウハウを展開し、売上拡大を図ってまいります。
②収益とガバナンス強化による企業価値向上(従業員、株主、取引先に向けて)
当社の課題である収益性については、構造改革と経営効率化により改善を図ってまいります。構造改革では、生産体制の再編成及び事業・商品・リソースの選択と集中を基本的な考え方とし、特に国内外製造所の最適生産体制の構築を重点施策として進めてまいります。これにより、グループの人材・設備を活性化し生産性の向上を図ります。また、経営効率化では、業務面に加え、営業面はデジタルツールの活用、開発面は共通設計・型式削減など低コスト設計の徹底、グループ全体での人材フル活用など、開発・生産・販売・サービスのそれぞれのステージで手法を抜本的に見直す「創業的変革」を図ってまいります。これらの取り組みにより、売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換を果たしてまいります。
ガバナンスの強化については、取締役の選解任に関する株主総会議案の提案、執行役員の選任・解任、代表取締役の選定・解職等指名に関する事項に加え、取締役及び執行役員の報酬における取締役会の諮問機関として、代表取締役2名及び独立社外取締役3名で構成する「指名報酬委員会」(委員長:独立社外取締役)を設置しています。また、取締役会の機能のさらなる向上を目的とした取締役会実効性評価の実施など、取り組みを進めてまいりました。コーポレートガバナンス・コード改訂を契機とし、さらなる体制強化に努めております。
ESGの取り組みについては中期経営計画策定に合わせてマテリアリティ(重要課題)を見直しました。2021年5月にはグリーンイノベーション推進室を新設し、脱炭素社会の実現に向け、電動化や水素活用など製品のゼロエミッション化技術戦略の立案や商品化を更に推進する体制を整えました。また、7月にはサステナビリティ委員会を設置し、持続可能な社会の実現及び中長期的な企業価値の向上や、環境・ガバナンスなどの課題対応に関し、取締役会における監督など経営陣の関与を強化し、事業活動を通じてサステナビリティを巡る課題への対応を推進しております。今後も井関らしい取り組みを通じて、社会的責任を果たしてまいります。
この基本戦略を着実に遂行することで、2025年営業利益率5%を目指すとともに企業価値向上を図ってまいります。

経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めてまいる所存であります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
1)経済情勢及び農業環境の変化
当社グループは、農業機械の開発・製造・販売を主な事業内容としております。主な事業基盤である国内農業においては、農業従事者の高齢化、担い手不足による農家戸数の減少等の構造的な課題を抱えています。また、政府による農業政策転換等の影響に加え、天候に左右されやすい農作物の価格次第では農家の購買意欲に影響を及ぼします。
こうした農業機械市場特有の構造に加え、国内外の景気の低迷等により農業機械需要が減少し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2)為替レートの変動
当社グループは、海外事業を展開し、当連結会計年度の連結売上高における海外売上高比率は25.8%です。当社グループが国内で生産し輸出する事業においては、円高の進行により価格競争力の低下を招く可能性があります。また、当社グループの連結財務諸表の作成にあたり、現地通貨で作成される海外関連会社の財務諸表を円換算しているため、現地通貨における価値が変わらなくても、為替レートの変動による影響を受けます。
当社グループでは、輸出における外貨と円貨の為替折半取引や為替予約に加え、海外生産においての現地調達比率の向上等により、為替リスクの軽減を図っておりますが、外国為替相場の急激な変動が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
3)原材料の価格高騰、調達難、サプライチェーンの混乱
当社グループは、多数の取引先から原材料や部品を調達しており、調達価格が予想を大きく上回る急激な高騰や供給逼迫の長期化、サプライチェーンの停滞等のリスクがあります。また、生産品の出荷・運搬に際し、輸送用コンテナやトラックの不足等から出荷が停滞するリスクがあります。
このようなリスクを回避するため、調達および出荷の両面で取引先を複数とすることや複数の輸送手段等の確保を図っていますが、リスクを完全に払拭できるものではなく、リスクが顕在化した場合、サプライチェーンの停滞に起因する生産減や出荷の停滞、製造コストの上昇による収益性の低下等が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
4)特定の取引先、調達先への依存
当社グループの連結売上高のうち、主要販売先上位3社の占める割合は、当連結会計年度において約21%となっております。また、当社製の製品に使用している原材料や購入部品には、調達先が特定されているものがあります。
当社グループと特定の販売先や調達先の取引関係は、安定的に継続しており、今後とも良好な関係を維持していく予定ですが、特定の販売先や調達先の方針変更や業績不振、倒産等により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
5)他社との競争
当社グループが属する国内農業機械市場においては、現在2025年までに担い手農家のほとんどがデータを活用する「スマート農業の社会実装」が政策目標として掲げられ、先端技術の導入・実証が進んでいます。市場では、スマート農業に対応する高機能製品の開発や、農業資材低減ニーズを受けた低価格化等の面で、知的財産権の獲得を含め競合他社との厳しい競争が展開されております。
海外では、地域ごとに環境は異なりますが、多様なニーズや環境意識の高まりなど、事業環境は常に変化しております。
こうした環境や競争に、当社グループがアフターサービスを含めた商品競争力を強化できなければ、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
6)商品やサービスの重大な瑕疵や欠陥の発生
当社グループは、お客さまに満足いただける商品を提供するための品質管理・品質保証体制 を構築し、社内で定められたプロセスに沿って製品の開発・生産・アフターサービスを行っております。また、品質問題の発生に備え、生産物賠償責任保険の加入等によりリスクをヘッジしています。
しかしながら、製品の開発・製造等における品質上のすべてのリスクを排除することは困難であり、商品やサービスに重大な瑕疵や欠陥が発生した場合、または当社グループおよび当社製品への信頼が失われた場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
7)株式市場の動向、土地およびその他の固定資産の価値下落
当社グループは、有価証券で時価のあるもの、および事業用の土地等を保有しております。当連結会計年度末における有価証券で時価のあるものが4,790百万円、土地が44,475百万円となっております。そのため、株価や地価が大きく下落した場合には、減損損失、評価損または売却損等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は有価証券のうち保有目的が純投資目的である投資株式は保有しておりません。当社が保有する政策保有株式については、毎年、取締役会において個別の銘柄ごとに保有に伴う便益やリスク等について、定性と定量の両面から総合的に勘案のうえ、保有の意義を検証しております。検証の結果、保有意義が希薄となった有価証券については、売却検討対象としています。
また、当社グループが保有するその他の固定資産等については、経営環境の著しい悪化等に伴う収益性の低下や、市場価格の下落等により減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
8)環境問題等の公的規制や問題の発生
当社グループは、事業活動をするうえで大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理、有害物質の排除等に関する国内外の環境規制を受けており、規制に対応するために必要な経営資源を投入しています。現状では、環境負荷軽減に対応する商品の生産や事業活動における対応をしておりますが、規制や市場の要求が厳格化した場合のコスト負担や、環境問題発生時の是正措置、訴訟等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
9)国際的な事業活動に伴うリスク
当社グループは、アジアをはじめとして海外にも生産拠点を持ち、また国内の生産拠点において海外の取引先から原材料や部品を調達して生産し、製品を内外の顧客に供給しています。こうした国際的な事業活動をする上で、各国の税・法制度や貿易政策の予期せぬ変化に加え、米中関係等の国際関係の変化や東欧地域をはじめとする紛争等により、サプライチェーンや生産・営業活動が制限を受け、顧客への製品供給に支障をきたす場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループはアジア地域への事業展開に注力しておりますが、主に同地域における人材確保の困難性、未成熟な技術水準や不安定な労使関係などが、当社グループの事業展開を阻害する可能性があります。
これらに対応するため、当社グループでは各国の税制・輸出規制や雇用情勢等の情報収集と分析、関係先との情報共有を行い、必要に応じ操業形態やサプライチェーンの見直し等を行うことにより、事業への影響の低減を図っています。
10)法令違反リスク
当社グループは、法令順守と倫理に基づいた「井関グループ倫理行動規範」を定め、内部統制の体制を整え、グループ一丸となって法令順守及び倫理行動規範の徹底に努めております。それにもかかわらず、当社グループの役職員が法令に違反する行為を行った場合には、当社グループの事業活動が制限され、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
11)自然災害や予期せぬ事故、感染症の拡大等に関するリスク
当社グループの国内外の主要拠点において、地震、台風、水害等の自然災害、予期せぬ事故、感染症等が発生した場合、当社グループの事業活動に直接的または間接的に影響を受ける場合があります。
そのような場合に備え、被害を極小化し、事業の継続を図るべく、火災や風水害の各種保険の付保に加え、事業継続計画を整備しその対応に努めておりますが、実際に発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、従業員への安全面・健康面への配慮を優先しつつ、政府や地方自治体の指針にしたがい、出張制限や勤務形態の見直しをはじめ、Webを活用した各種施策の継続的な実施により、事業活動への影響の低減を図っております。しかしながら、感染拡大の事態が深刻化、長期化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
12)他社との業務提携、合弁事業及び戦略的投資
当社グループは、必要に応じて他社との業務提携、合弁事業、戦略的投資を行うことがあります。これらの施策は双方の経営資源を有効に活用し、タイムリーに開発、生産、販売するうえで有効な手段であると当社グループは考えております。
しかしながら、業務提携や合弁事業において、財政状態やその他の理由により、当事者間で利害の不一致が生じた場合には、提携を維持できなくなる可能性があります。また、買収等戦略的投資については、事業、技術、商品及び人材などの統合において、期待する成果や効果が得られない可能性があり時間や費用などが想定以上にかかる可能性があります。従って、これらの施策の成否は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
13)借入金のリスク
当社は、取引金融機関とシンジケート・ローン契約及びコミットメント・ライン契約を締結しており、これらの契約に付されている財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上返済義務が生じる可能性があり、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当連結会計年度末における当社グループの借入金の連結貸借対照表計上額は、54,939百万円と、総資産の29.3%を占めております。そのため、借入金利の上昇により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループでは、固定金利等の種々の借入条件を適宜組み合わせることで、急激な金利変動に備えております。
14)人材の確保、人材不足
当社グループが持続的成長と企業価値の向上を果たしていくためには、それを実現する優秀な人材が必要です。そのため、従業員の離職や、事業に必要な人材の確保・育成が進まなかった場合は、長期的に当社グループの競争力が低下し、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対応するため、当社グループは、従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みを強化するとともに、国籍や性別を問わず、優れた知識・能力・経験を有する人材の採用・育成を進めています。また、人材の適正配置や業務効率化などを通じて従業員がより働きやすい職場づくりを進めるとともに、事業のグローバル化や技術革新に伴う専門性の深化に対応するため、設計基本技術トレーニングセンター(IETC)、ヰセキテクニカルトレーニングセンター(ITTC)、ISEKIグローバルトレーニングセンター(IGTC)を設置し、研修の充実により、開発・生産・営業サービス等の「人づくり」を強化しています。
15)情報セキュリティのリスク
当社グループは、業務上必要となる個人情報を含む各種の情報を情報システム上で管理しております。これらの情報管理につきましては取扱規程の整備やコンピュータウイルス対策の実施、データセンタやクラウドサービス等を活用し、セキュリティ対策の強化に努めております。
しかしながら、サイバー攻撃による不正アクセスやコンピュータウイルス感染等により、情報漏洩及びシステム停止・破損等が発生した場合、当社グループの信用が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
16)気候変動のリスク
気候変動は、当社グループの事業基盤である農業においては、作物体系の変化や農地の減少などにより需給が変動し、当社グループの商品構成や販売量をはじめ事業活動全般に大きな影響を及ぼし、適切な対応ができなければ業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
気温上昇を+2℃未満に抑えるシナリオ(主として移行リスク)においては、脱炭素化に向けた政府等の規制強化による運営コストや脱炭素化の進展に伴う調達コストの増加、脱炭素需要に対応できないことによる事業機会の損失等が、業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクに対し、当社グループは、再生可能エネルギーの活用、エネルギー消費の低減等により、影響の抑制を図っていきます。一方、脱炭素化に向けた農業機械や農法の変化は、当社グループにとって事業展開の機会でもあると分析しています。例をあげますと、農業機械の電動化や効率的な農作業や施肥の最適化のためのロボット農機・スマート農機の導入、また農業分野のGHG排出の一定割合を占める水田のメタン排出量削減に資する農法の普及が進み、それらへのソリューションの需要拡大が想定されます。
また、気温上昇が+4℃となるシナリオ(主として物理的リスク)においては、風水害の甚大化によるサプライチェーンを含む生産・販売拠点などの被災影響、また、平均気温上昇に伴う稲作可能地域の減少や米の品質低下等を受け稲作用の農機需要の減少が懸念され、業績に影響を与える可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループは、事業継続計画の継続的見直し、商品構成や販売網の見直し等により、影響の抑制を図っていきます。一方、自然環境の変化に対応するため、ロボット農機による農作業の代替関連技術、AIによる気象データ・生育データの分析の自律化等、持続可能な農業生産基盤の構築に資するソリューションの需要拡大が見込まれ、これらは当社グループにとって事業展開の機会でもあると分析しています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定)
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、資産・負債の評価及び収益・費用の認識について、重要な会計方針に基づき見積り及び判断を継続して行っております。重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りの仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大影響から、政府の緊急事態宣言再発出や、まん延防止等重点措置を受けた経済活動の自粛など厳しい状況が続きました。また、個人消費や企業収益などで一部持ち直しの動きも見られた一方で、変異株による新たな感染拡大など先行き不透明な状況が続きました。海外では、同感染症の感染拡大防止に向けたワクチン接種の進展に伴い、一部で持ち直しの動きが見られたものの、変異株による新たな感染拡大やサプライチェーンの混乱などにより、先行き不透明感が残りました。
このような状況の中、当社グループは、国内においては顧客対応の充実など農業構造変化への対応強化、海外においては主力市場である北米、欧州、アジアでの販売強化に努めた結果、連結経営成績は以下のとおりとなりました。
〔当期連結業績〕
当期の売上高は、前期比8,887百万円増加し、158,192百万円(前期比6.0%増加)となりました。国内においては、消費増税反動減からの回復や経営継続補助金などに伴う需要喚起もあり農機製品及び作業機が増加したほか、修理整備等のメンテナンス収入が堅調に推移し、国内売上高は前期比1,489百万円増加の117,396百万円(前期比1.3%増加)となりました。海外においては、ライフスタイルの変化に伴い、北米では好調なコンパクトトラクタ市場を背景に増加、欧州ではコンシューマー向けを中心に販売が伸長、為替円安影響もあり、両地域で増収となりました。また、アジアでは前期末にタイの販売代理店を連結子会社化したことや、中国向け生産用部品の出荷増などにより、海外売上高は前期比7,398百万円増加し、40,795百万円(前期比22.2%増加)となりました。
営業利益は、増収による売上総利益の増加に加え、前期に計上があった部品在庫評価損の剥落などもあり、前期比2,063百万円増加の4,147百万円(前期比99.0%増加)となりました。
経常利益は、為替差損益の好転や持分法投資損失の縮小に加え、受取和解金の計上等により、前期比2,984百万円増加の4,687百万円(前期比175.3%増加)となりました。
税金等調整前当期純利益は、前期に計上があった固定資産の減損損失の減少などにより、4,366百万円(前期は税金等調整前当期純損失7,114百万円)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、3,196百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失5,641百万円)となりました。
〔当期個別業績〕
当期の売上高は91,792百万円(前期比15.8%増加)、営業利益は854百万円(前期は営業損失1,358百万円)、経常利益は3,825百万円(前期は経常損失257百万円)、当期純利益は2,924百万円(前期は当期純損失13,291百万円)となりました。
商品別の売上状況につきましては、次のとおりであります。
〔国内〕
整地用機械(トラクタ、乗用管理機など)は23,937百万円(前期比4.6%増加)、栽培用機械(田植機、野菜移植機)は9,076百万円(前期比2.3%増加)、収穫調製用機械(コンバインなど)は16,642百万円(前期比1.4%減少)、作業機・補修用部品・修理収入は43,358百万円(前期比3.2%増加)、その他農業関連(施設工事など)は24,382百万円(前期比3.5%減少)となりました。
〔海外〕
整地用機械(トラクタなど)は30,820百万円(前期比24.9%増加)、栽培用機械(田植機など)は2,225百万円(前期比30.8%増加)、収穫調製用機械(コンバインなど)は2,347百万円(前期比1.8%増加)、作業機・補修用部品・修理収入は3,660百万円(前期比13.7%増加)、その他農業関連は1,741百万円(前期比15.9%増加)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ256百万円増加し187,684百万円となりました。資産の部では、流動資産が前連結会計年度末に比べ1,123百万円増加し、固定資産が867百万円減少しました。主に、現金及び預金の増加4,062百万円、商品及び製品の減少2,349百万円、流動資産その他の減少735百万円、機械装置及び運搬具の減少725百万円によるものであります。
負債の部は、前連結会計年度末に比べ3,885百万円減少し121,123百万円となりました。主に、仕入債務の増加2,406百万円、短期借入金及び長期借入金の減少6,635百万円、流動負債その他の増加981百万円によるものであります。
純資産の部は、前連結会計年度末に比べ4,141百万円増加し66,561百万円となりました。主に、利益剰余金の増加3,196百万円、その他有価証券評価差額金の増加342百万円によるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ4,048百万円増加し14,800百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、14,233百万円の収入(前期比4,539百万円の収入増)となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益4,366百万円、減価償却費6,563百万円、たな卸資産の減少額2,418百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、2,039百万円の支出(前期比3,128百万円の支出減)となりました。主な内訳は、設備投資による支出4,646百万円、貸付金の減少額1,624百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、8,338百万円の支出(前期比6,158百万円の支出増)となりました。主な内訳は、短期借入金の減少6,342百万円、長期借入による収入7,360百万円、長期借入金の返済8,060百万円、リース債務の返済による支出2,059百万円であります。
当社グループの主な資金需要は、部品原材料の購入及び製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用に係る運転資金のほかに、生産設備の更新や営業拠点の整備等の設備投資資金であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、これらの資金は、自己資金及び金融機関からの借入金により調達しております。なお、当社は、資金の流動性確保と新型コロナウイルス感染症影響の深刻化・長期化等による緊急的な資金需要が発生する場合に備え、主要取引銀行と総額20,030百万円のコミットメント・ライン契約を締結しております。
当連結会計年度末における有利子負債(リース債務含む)の残高は62,178百万円、現金及び預金の残高は14,850百万円となっております。
当社グループは、長期ビジョンである「『食と農と大地』のソリューションカンパニー」の実現に向けて、2021年から2025年の5年間の中期経営計画を策定し、基本戦略及び数値目標(2025年までに連結営業利益率5%)を定めました。重視する経営指標の状況は以下のとおりであります。
当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別生産実績を記載しております。
(注) 金額は販売価格で表示しており、消費税等は含まれておりません。
主として需要見込みによる生産方式であり、受注生産はほとんど行っていないため記載をしておりません。
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別販売実績を記載しております。
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
該当事項はありません。
当社グループは、創業以来「お客様に喜ばれる製品」の提供を企業理念の一つに掲げ、お客様に満足して使っていただける、お求めやすい商品をタイムリーに提供することをモットーに研究開発活動を展開しています。お客様のニーズに応えるため、徹底した調査に基づき、省エネ・低コスト農業、安全作業・環境保全への配慮など積極的に取り組んでいます。
国内においては、主力である稲作機械をはじめとして、省力化ニーズの高い畑作・野菜作分野への機械化に注力しているほか、ICTやロボット技術を活用した超省力化農業、経験と勘の農業から誰もができる農業、データを駆使した戦略的な農業を可能とするスマート農業にも積極的に取り組んでいます。海外においては、北米や欧州向コンパクトトラクタ市場への対応や、中国・アセアンそして韓国やインドへ日本で培った稲作技術を活用した商品展開など、地域のニーズに対応した商品展開に積極的に取り組んでいます。
近年は、変化し続ける事業環境に迅速に対応するため、産学官との連携や、パートナーとの幅広い連携による技術力の向上と革新的な商品・サービスの開発・提供に積極的に取り組んでいます。
また、毎年、技術研究発表会を開催し、研究開発の成果や発明情報の共有とともに、討論を重ね グループ全体のスキルアップを図っています。
なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
(トラクタ)
・大型化が進む国内農機市場において、70馬力以上の需要が増加するとともに、低コスト機へのニーズが高まっています。このたび、大規模農家が求める「高機能」「高能率」「高い作業適応性」はそのままに、装備を厳選したTJV885-Eを市場投入しました。また、シンプル・低価格で好評のTJX743には、輸入作業機などのよりけん引力が求められる作業向けのタイヤ幅の広いラジアルタイヤ仕様を市場投入しました。
・担い手への農地集約が進む中、スマート農業による作業の軽労・省力・効率化が活発化しており、今後も需要拡大が見込まれます。このたび、高い静粛性、振動低減そして粘り強いトルクを発揮する当社内製新エンジンを搭載したジアスNTA・NT5シリーズに、田植機でも好評を得ている直進アシストシステム「オペレスタ」を搭載し市場投入しました。熟練者の確保が難しい場合など、不慣れな人でも簡単に操作することができるので、人手不足の解決に貢献します。
(コンバイン)
・コンパクトで作物にやさしい普通型コンバインHC403に、当社内製新エンジンを搭載し、新たな普通型コンバインHC405として市場投入しました。新エンジンは従来機に比べ低騒音、トルク向上を実現しており、快適作業や高い負荷でもより粘り強い作業を可能にします。また、作業状態時にエンジン負荷、車速などに応じて作業回転範囲内(グリーンゾーン)でエンジン回転を自動的にコントロールするIQ脱穀制御などの新機能を搭載しています。これにより、コーナー旋回や倒伏作業などの低速作業時に唐箕の風量を最適化して脱穀ロスを低減します。
(田植機)
・当社は全ての機種を横断する自動操舵イノベーションの総称を「ISEKIドリームパイロット」と名付け、センシング技術、営農管理システムを合わせた3分野のICT化を進めることにより日本農業の発展に貢献してまいります。このたび、自動化技術を織り込んだ有人監視型ロボット田植機PRJ8を市場投入しました。オペレータが監視することで安全性を確保しながら、田植機での自動作業を可能にしました。田植作業の省力化と作業効率の向上に寄与するほか、オペレータの疲労軽減や不慣れな作業者の習熟にかける時間コスト等の課題解決に貢献します。
(野菜作商品)
・広がりを見せる野菜作市場においても、生産者1軒あたりの栽培面積拡大により、植付、収穫作業の更なる効率化や省力化が求められています。
移植機においては、高い作業効率とコンパクトな扱いやすさで好評を得ている歩行型全自動野菜移植機に、市場要望を織り込んだPVZ100シリーズ、エンジン変更に伴い作業性を向上させた、歩行型半自動野菜移植機PVH103・203シリーズ、乗用型半自動野菜移植機PVHR203・403シリーズを市場投入しました。
また、防除を中心に水田から畑作まで様々な作業を1台で対応でき好評を得ている乗用管理機に、機体構成の見直しによる適応性の向上や先端技術を採用した乗用管理機JKZ23を市場投入しました。作業の効率化・高精度化、疲労軽減で日本農業を応援してまいります。
(その他商品)
・コンパクトで簡単に耕うんができるミニ耕うん機として農家からホビーユーザまで幅広く好評を頂いているKCRシリーズ、KMRシリーズをモデルチェンジしました。また、中山間地域や広い家庭菜園などで活躍するロータリ専用機は、基本性能を踏襲しながら安全性を向上させたKVR753を投入、プロ農家の野菜作りに欠かせないうね作りやマルチ作業などの管理作業に最適な2輪管理機は、安全性、整備性の向上を図ったKKシリーズをモデルチェンジし市場投入しました。
当社は、「ISEKIレポート」「知的財産報告書」等において当社グループの研究開発の考え方、活動、知的財産戦略等について情報開示を行っております。「特許行政年次報告書」(特許庁編)によれば、日本における分野別登録数(2014年までは分野別公開数)および全産業を対象とした特許査定率において上位を維持し続け、2020年度は分野別登録数で第2位、特許査定率で第1位となりました。
(分野別登録数・分野別公開数の年度別推移)
※ 特許査定率 = 特許査定件数 / (特許査定件数 + 拒絶査定件数 + 取下・放棄件数)
取下・放棄件数 … 拒絶理由通知後に取下げまたは放棄した件数