第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営環境

①全般

当社を取り巻く外部環境は、世界の多極化、地政学リスク、気候変動、人口動態の変化、技術革新等のメガ

トレンドの影響を受け、めまぐるしく変化し、不確実性は依然として高く、経済環境は見通し難い状況です。外部環境を常に念頭におきながら当社のコア・コンピタンスである、技術開発力と技術を目利きする力、課題を解決するエンジニアリング力、全体最適を実現するプロジェクトマネジメント力を掛け合わせ、導かれる事業機会に対して、「エネルギーと素材」、「ライフサイエンス」を主な事業領域として設定しています。

エネルギーや先端素材の安定供給の確保、中長期的な脱炭素トレンド、循環型社会の構築といった事業機会を背景に、エネルギートランジションのスピード感の変化はあるものの、「エネルギーと素材」の事業領域における当社事業の需要は堅調と捉えています。

また、超高齢化社会、高度医療社会への期待による事業機会を背景に「ライフサイエンス」の事業領域における需要も旺盛と捉えています。

そして、分野を横断しての産業基盤の維持・更新に関しては、当社の知見を活かしたフィジカル・デジタル両面でのO&M-Xソリューションの提供機会が今後更に増大すると捉えています。

 

<事業環境/事業領域>

 

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②エネルギーと素材

当社は、特にLNG・石油・石油化学の領域でEPCコントラクターとして世界およそ60の国と地域で300を超えるプロジェクトの豊富な実績を積み重ねてきました。商業プラントのEPCだけでなく、触媒やプロセスの技術開発、商業化のためのスケールアップや、プラントの操業フェーズにおける技術提供も数多く手掛けてきました。これらの強みを活かし、LNG、石油・石油化学は勿論のこと、脱炭素・先端素材の分野において事業を拡充します。

 

当社の強み

・実績に裏打ちされたEPCコントラクターとしての知見・顧客基盤

・プラントの開発・スケールアップに必要な技術と知見

・設備保全の高度化支援、解析・診断技術

展開する領域

・LNG(含むCleaner LNG)、石油・石油化学

・脱炭素(水素、低炭素燃料、CCUS、エネルギーマネジメント等)

・金属・先端素材(非鉄金属精錬、蓄電池・半導体材料等)

・O&M-Xソリューション

 

③ライフサイエンス

当社は、石油化学領域、医薬品領域で培った連続生産技術の知見やスケールアップノウハウを活かして、特に医薬品プラントの領域でEPCコントラクターとして60年で600件以上の実績を積み重ねてきました。これらの強みを活かし、付加価値の高いバイオライフサイエンスのソリューションプロバイダーとして、医薬品のEPC領域のみならず、細胞培養・植物バイオ領域の開発受託、宇宙低軌道の実験プラットフォーム等の分野において事業を拡充します。

 

当社の強み

・培養領域(抗体・細胞)のプロセス開発・スケールアップ知見

・合成領域の連続生産・固相/液相法の知見

・国際宇宙ステーションの実証試験装置開発

・設備保全の高度化支援・解析・診断技術

展開する領域

・医薬品・食品(低・中分子、高分子、微生物、細胞医薬他)

・製法開発受託(細胞培養、植物バイオ、低軌道プラットフォーム)

・O&M-Xソリューション

 

 

(2)再生計画(2019年~2024年)の振り返り

再生計画期間中の徹底したリスクマネジメント、遂行管理等により、再生計画実施後に受注したプロジェクトにおいては、完工時に赤字の案件が一件も無く、順調に進捗中、若しくは、完工を迎えております。

しかしながら、再生計画期間の定量目標(受注高、純利益)は、未達となりました。純利益の目標が未達となった主要因である、21、23年度の二度の赤字計上は、再生計画実施前に受注した夫々一件ずつの大型LNGプロジェクトで発生した損失が原因です。一件のプロジェクトで、他の複数のプロジェクトではカバーしきれないほどの損失が発生し、会社全体が赤字に追い込まれたボラタイルな企業体質からの脱却が再生計画期間後に残された課題であり、2025年5月に公表した新中期経営計計画(以下、「経営計画2025」)における主要なテーマになっています。

また、事業ポートフォリオの拡充に関してもEPC事業が大宗を占めており、引き続き中長期で取り組む課題と認識しております。

 

<再生計画の振り返り>

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(3)経営計画2025(2025年~2027年)の概要

①新中計策定に込めた想い

当社は2019年3月期の経営危機後、グループ一丸となって再生に向けて取組み、事業基盤の強化を図ってきました。再生計画前に受注した大型LNGプロジェクト含め略全ての損失処理を完了し、安定収益体質への転換に一定の成果を挙げることができたと考えています。一方、2024年3月期決算において、大型プロジェクト中心の受注計画が思い通りに進まなかったり、大型プロジェクトの遂行過程における予測不能な事態が発生したりすることなどによって、会社業績が大きく左右されるボラティリティの高い当社の収益構造を克服すべき課題として改めて強く認識するに至りました。これを踏まえ、収益の安定化と多様化を実現する為の「自己変革」をテーマとする経営計画2025を取り纏めました。

この自己変革を成し遂げ、強固な安定収益基盤の実現と、収益多様化の将来像を示すことによって、当社の企業価値向上を図り、再生計画スタート時に資金支援を受けた優先株あるいは劣後融資などへの対応に早期に目途をつけ、同時に、成長戦略を着実に進めていきたいと考えています。

 

②10年後の目指す姿

大型プロジェクトへの集中から脱し、収益の安定化と多様化のための自己変革を成し遂げ、10年後には、純利益300億円、内Non-EPC事業の比率20%という安定・高収益企業になることを目指します。

純利益300億円達成のため、2025年から2027年までの3年間は、平均150億円の純利益を達成し、経営を安定化させ、盤石な会社経営の土台をつくります。同時に事業共創による収益多様化、Non-EPC収益化の種をまき、2028年以降からこれらを本格的に伸ばし、10年後には共同事業者の立場から事業投資等を通じた収益獲得などの大きな果実に繋げたいと考えております。

海外EPCについては、本経営計画2025の期間内で事業の安定性を高めることを優先課題とし、2028年以降の成長軌道への回帰に道筋を付けます。

国内EPCについては、安定的に一定収益を計上できており、今後も国内の旺盛な需要に最大限応えていきます。

Non-EPCは、成長性の高い市場において安定的な収益の柱を確立することを目指し、EPCとも連動しながら事業開発を継続いたします。

 

<経営計画2025から10年後の目指す姿へ>

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③定量目標

収益の安定化と多様化を実現する定量目標を以下のとおり設定します。

・純利益:150億円(3年平均)

・Non-EPC事業での純利益:10億円(2027年度)

 

また、目標達成に向けた関連指標を以下のとおり設定します。

・粗利益:10%以上(3年平均)

・受注高:9,500億円(3年累計)

・売上高:3,800億円(3年平均)

・受注残:6,000億円(3年平均)

 

④重点取組1: 海外既存大型PRJの着実な遂行

本中計期間では、大型EPCプロジェクトとして、NFEプロジェクトとGPXプロジェクトを遂行します。2024年11月に成功裡に完工したインドネシア銅製錬プロジェクトにおける経験も含めて、当社が有する強みを最大限発揮し、着実な案件遂行に注力します。

 

⑤重点取組2: 海外取り組み改革(受注方針)

海外プロジェクトの受注方針を改革し、リスク分散の効いたポートフォリオを構築して、より競争力のあるプロジェクトを選別できる体質に改善します。

これまでの主な海外プロジェクトの受注実績は、契約金額規模も投入要員規模も大きい一括請負契約形態のプロジェクトが大宗を占めており、1件のプロジェクトの受注金額や損益に大きな影響を受ける経営体質が残っておりましたが、今後は、投入する要員規模が一定予測可能、又は小規模であり、過度なリスク負担を負わない契約が叶うプロジェクトを積極的に探索・組成すると共に、多様化するニーズに応え顧客の事業価値向上に貢献していきます。

 

<海外プロジェクト受注ターゲットのイメージ>

 

 

 

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⑥重点取組3: 国内プロジェクト収益拡大

これまで培ってきたEPCでの実績をベースに、成長するライフサイエンスや脱炭素分野に対する旺盛な需要に応える事業基盤を整備します。具体的には、プロジェクトマネージャーやエンジニアのマルチタレント化を進めることや、協力会社の皆様との連携推進、さらにパートナー会社との戦略的提携により強化していき、多様なニーズに対応できる体制を整えていきます。

 

⑦重点取組4: 事業共創の拡充

当社はこれまでEPCコントラクターとしての業態を中心に、技術開発から顧客に伴走する社会実装や、設備保全における操業支援へと価値提供の幅を広げてきました。この取り組みを更に強化し、加えて、技術側から事業側へと提供価値を最大化し、共同での事業投資も手掛けるといった「事業共創」を実現する顧客のパートナーとなることを目指します。

技術開発基盤、豊富なEPC実績、そして多様なステークホルダーとの共創のネットワークに裏付けされる当社の強みを掛け合わせ、顧客・パートナーとの事業共創を拡充していきます。

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⑧重点取組5: 分厚い中核人財像の形成

現状、当社の人財ポートフォリオは、コア事業であるEPC遂行の人財が中心です。本中計期間では、顧客の多様

化するニーズに数多く応えるため、EPCを担う中核となる人財を特に拡充し、併せて、事業共創の拡充に向けたNon-

EPCの中核となる人財育成も推進していきます。将来的には、EPCと技術・事業開発の知見を併せ持つ事業共創の中

核人財の拡充を目指します。

<中核人財の拡充イメージ>

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

■サステナビリティへの取組み方針

当社は、1948年に「技術による社会への奉仕」をスローガンに、エンジニアリング会社の草分けとして創設され、以来、エンジニアリングの力で、社会的課題に対して高度な技術力を用いてソリューションを提供し、社会とともに歩みを続けてきました。

当社グループのミッションである「エネルギーと環境の調和」のもと、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会など、すべてのステークホルダーから信頼され、共感していただける企業グループ経営を目指し、時代の変化を捉えて着実に歩みを進めてきました。

2015年に国連で採択された「パリ協定」では、気候変動の取り組みとして脱炭素社会を目指すという国際社会のコンセンサスが打ち出され、「持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals(SDGs)」を世界共通のゴールとして、企業も事業を通じたグローバルな課題解決への取り組みが強く求められています。

「社会の“かなえたい”を共創(エンジニアリング)する」ことをパーパス(存在意義)として掲げている当社グループでは、新しい社会価値の創出に向け、マルチステークホルダーに影響を与える重要な課題をマテリアリティとして再定義しました。

マテリアリティは、当社グループが中長期に取組むべき重要な社会課題であり、広く事業活動を進めていく上で、リスクまたは機会となることから、経営計画2025や、事業計画、および当社グループの事業方針・戦略策定の基軸として、その実現や課題解決を着実に実行していきます。

また、今般再定義したマテリアリティの実現に向け、それぞれの項目ごとに達成を目指す「目標(KPI)」を設定、事業活動を行う本部単位レベルにまで落とし込んで展開することで、サステナビリティに関する意識の深化や事業との連関を社員個々人にまで浸透させるべく進めていきます。

 

■ガバナンス(サステナビリティ推進体制)

 

当社グループにおけるサステナビリティの更なる深化のため、サステナビリティを経営の中枢に据えることで企業価値向上とともに持続可能な成長を目指し、社長がCSO(Chief Sustainability Officer)を兼務します。社長がCSOを兼務することで、サステナビリティ課題を当社グループの経営戦略や経営目標に反映させる責任を負うこととなります。2022年4月に設置したサステナビリティ委員会では、主要なサステナビリティ課題である気候変動対応、人権・サプライチェーンマネジメント、人的資本経営に係る取り組みについて討議しています。当社にとって特に重要な取り組み課題である気候変動についてはサステナビリティ委員会の下部組織であるサステナビリティ協議会内に気候変動WGを設置し、部署横断的な排出量削減や情報開示などの課題について継続的に検討・議論を行っています。

また、2024年度は同協議会内に人権WGを新たに設置し、各部門が事業活動と人権との関連性を特定・理解した上で、組織横断の対話・協議を通じて、当社グループの事業のリスク・特性・実務を踏まえた実効性のある人権尊重の取組みを進めていきます。サステナビリティ委員会は社長=CSOの諮問機関として、原則年2回開催し、当委員会にて審議した内容を取締役会に報告し、取締役会が都度、上記の報告事項について適切に監督を行うための体制を構築しています。

取締役会は、サステナビリティ委員会から報告を受けたサステナビリティに関するリスクと機会の特定・評価、事業戦略への反映、対応方針の決定を含むすべての意思決定の監督責任を負っています。また、取締役会は、サステナビリティ課題を当社グループの経営戦略や経営目標に反映させる責任を負っています。

取締役会を構成する12名の取締役は、経営、財務会計、法務コンプライアンス、海外、プロジェクト、技術などさまざまな分野で知見、経験および実績を有しており、取締役会は、サステナビリティ課題をさまざまな角度から多角的にとらえて経営方針を定めるとともに、その方針に基づく活動の実効性を監督する役割を担っています。

当社のサステナビリティ課題<千代田グループのマテリアリティ>は、本部ごとに目標(KPI)として設定され、本部長自らが進捗管理を行います。目標(KPI)進捗管理、報告、そして評価・改善のPDCAはサステナビリティ委員会にてモニタリングし、取締役会に報告されます。

 

2024年度主な活動内容:サステナビリティ委員会 2回開催  サステナビリティ協議会 7回開催

取締役会への報告 サステナビリティ委員会開催後の取締役会へ報告(1回)

 

 

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*1  統合戦略委員会:

各本部の事業計画・要員計画の見直しを定期的に行い、最新の内部環境、外部環境を踏まえたうえで、全社最適の観点から人的、財務的リソース配分案を策定する。

*2  新規分野事業推進委員会:

脱炭素ビジネスの開発・拡張・収益化に向けた戦略の策定、実行を担う。

 

(1) 気候変動の取り組み

■戦略

当社グループにとって、地球環境や人間・企業活動に重大な影響を及ぼす「気候変動」は、リスクであると同時に、新たな事業機会をもたらすものと考えています。「エネルギーと環境の調和」というミッションに沿って、グローバルな課題解決に取り組んできた歴史の中で、気候変動対応は、当社グループのパーパスである「社会の“かなえたい”を共創(エンジニアリング)する」とも密接に繋がっている重要なサステナビリティ課題の一つです。気候変動により平均気温が上昇することはグローバルに事業を行う当社グループにとっては大きな脅威であると同時に、高度なエンジニアリング力を駆使することで、新たな事業創造の機会にも通じるものと認識しています。当社グループは2019年に、企業が気候変動関連の財務情報を開示し対応状況を具体的に開示する取り組みを推奨する国際的な組織である「気候関連財務情報開示タスクフォース:Task force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD)」 TCFDに賛同し、グローバル規模での気候変動リスク・機会のシナリオ分析を実施しました。不確実性の高い気候変動について、2040年社会(当時は20年後社会における主なリスクと機会分析を実施)を当社グループが取組む事業の視点から、シナリオ分析し、事業リスク及び機会の獲得に向けての事業の方向性を検討しました。

 

<気候変動による主なリスクと機会>

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また、昨今の事業環境の変化のスピードが著しく早いことから、2025年度に検討範囲や前提条件などを見直したシナリオ分析を実施し、その結果を有価証券報告書等にて適宜開示する予定です。

なお、当社グループが2022年4月1日付けにて公表したカーボンニュートラル宣言に基づき、GHG排出量(Scope1及び2)の削減目標達成に向けた取組み、ならびに脱炭素・炭素循環社会に実現にむけ、以下のステップで取り組んでいます。

 

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■リスク管理

気候変動や地政学リスクの顕在化、生成AIに代表される技術進化など、私たちを取り巻く環境は劇的に変わっていく中、当社グループが直面するサステナビリティリスクは新たな局面を迎えていると認識しています。

当社グループでは、一段と激しくなる事業環境や経営環境の変化を踏まえ、64ページで記載の通りリスク管理体制を構築しています。サステナビリティ委員会は、全本部と協議の上、気候変動リスク・人権リスク等を含むサステナビリティに関するリスクの洗い出しを行い、事業におけるリスクと機会の分析、並びに課題解決に向けた対応策についての協議等を適宜実施しております。また、そこで特定した重要リスクに関する対応方針については、サステナビリティ委員会や内部統制委員会を通じ、取締役会に報告し、了承を得て、全社的なリスク管理に取り込んでいます。

気候変動と人権に関してはとりわけ重要な事業リスクととらえ、サステナビリティ委員会傘下の協議会にワーキンググループを設けています。気候変動に関しては、TCFDに基づくシナリオ分析を改めて実施することにしており、事業インパクト評価や対応策について、サステナビリティ委員会を通じてサステナビリティ課題に責任を持つ取締役会に報告し、全社的なリスク管理プロセスに統合します。

 

■指標と目標

千代田グループのマテリアリティに関する指標及び目標は「サステナビリティへの取り組み方針」で記載しております〈気候変動を含む重要なサステナビリティ関連課題(マテリアリティ)〉の通りです。エンジニアリング企業としてこれまで培ってきた強みを活かし、事業を通じてその実現や課題解決を着実に実行していきます。

環境への取組みに関する過年度のESG定量データについては、以下のとおりです。

 

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※1:CO2排出量は、2020年度よりScopeごとの開示とし、当社グループオフィスには、海外グループ企業も含めて

います。

※2:国内オフィスはみなとみらい本社および子安オフィス・リサーチパーク(東京オフィスを除く)が対象。

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(2) 人的資本経営

■戦略

 当社グループの最大の財産は人財です。組織風土と人財開発の両面から人的資本経営を推進し、組織と人財のWell-Beingの実現を目指します。組織と人財の可能性を最大限に引き出すことで、社会とステークホルダーへ提供する価値を増幅させ、また、その価値提供が組織と人財のWell-Beingを更に増幅させていくと考えています。

 経営計画2025では、収益の安定化と多様化に向けた自己変革を成し遂げるために、事業をリードする中核人財の輩出に注力していきます。

 

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■推進体制

当社では、最高人事責任者(CHRO:Chief Human Resources Officer、現在はCDO:Chief Digital Officerが兼任)の下、人財育成責任者(HRO:Human Resources Officers)を職種ごとに任命し、事業と連動した全社一体の人的資本経営を推進しています。

 2022年4月に、経営諮問会議の下部機関としてCHROを委員長、全本部長を委員とする人財マネジメント委員会を設立し、統合事業戦略に接合する人財開発と人員配置を推進してきました。2023年4月からは、機能を分割し、人財育成や人財登用戦略については人財開発委員会において、事業戦略に応じたリソース配分については統合戦略委員会の下部組織である人財マネジメントワーキンググループにおいて議論する体制とし、実行力を更に高めています。

 また、これらの体制を通じて、人的資本に関する主なリスク及び機会を継続的に把握・評価し、各委員会において対応方針を協議・実行することで、リスクの最小化と人的資本の持続的な強化を図っています。

 

■重点項目

① 相互に尊重し、挑戦し続ける自由闊達な組織風土

当社の強みは、エンジニアリングを通じて培ってきた多様な個性を活かす自由闊達な組織風土です。この強み

を伸ばし、社会課題に応じてしなやかに変容することで、社会とステークホルダーへ価値を提供し続けます。

 

 a. 組織風土の変革に向けた取り組み

組織風土の変革を着実に推進していくために、組織課題・風土の可視化とその改善を目的とした組織風土調査を

導入しています。組織経営者を中心に、資格や役職を問わず全社員が組織風土の変革に取り組む土壌を整えています。

 

  <組織風土調査の活用>

2023年度より、当社及び主たる国内グループ企業では、組織風土調査を年に1回実施しています。調査結果は当社における人的資本経営の重要KPIとして位置付け、進捗状況をモニタリングしています。

2024年度より、各本部の運営計画の策定や個人の目標設定等の既存のPDCAサイクルに、調査結果を用いた対話を通して現状を深掘りするプロセスを組み込み、自律的な組織風土変革の取り組みを促しています。

 

  <組織経営者の育成>

2024年度には、組織経営者が備えるべき要素(スキル・マインドセット)を定義し、組織経営者育成のための教育体系を構築しました。リスク管理に必要不可欠な知識の習得に加え、個人や組織の力を高めるためのスキルを獲得する教育を、資格や役職に応じて実施していきます。

組織経営者として個人や組織の力を高めるための実践の場として、対話の機会を重視しています。個人の目標設定は本人のキャリア志向を踏まえて上司・部下間での対話を通して行います。また、期中においても、本部全体で部下一人ひとりの状況について対話をします。これらの対話を通して、一人ひとりのキャリアを多面的に確認することで、部下の適切な育成につなげると同時に組織経営者自身の組織経営力の向上に寄与しています。

 

<組織経営者の世代交代の実践>

管理職への昇格は年齢を問わず、登用は本部の垣根を越えて、HROを含む広く多面的な視点で検討し、決定しています。持続的に新たな組織経営者を輩出し、組織の活性化を図っています。

2022年度より、同一ポジションへの滞留年数に上限を設け、異動を含む交代を促進しています。2023年度からは、部長以上の全ポジションの後継計画を策定し、候補者を特定する取り組みを開始しています。長期滞留の管理職は計画どおり交代が進捗しており(2022年度は19名、2023年度は8名、2024年度は1名)、引き続き長期滞留とならないよう計画的な交代を推進していきます。

 

 b. ダイバーシティ&インクルージョン

多様な個性を尊重し、社員一人ひとりが活き活きと能力を発揮できる組織風土を実現し、ダイバーシティ&インクルージョンを浸透させていくことはパーパスの実現に不可欠です。社員一人ひとりが、その属性によらず、多様な意見を発信し、能力を発揮できる環境を整えるための第一歩として、2023年10月にダイバーシティ&インクルージョンポリシーを制定しました。ダイバーシティ&インクルージョンの風土・意識の改善を進めていくために、ダイバーシティ&インクルージョンをテーマとした研修を管理職に実施しています。

 

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女性活躍の推進は、ダイバーシティ&インクルージョンポリシーの実現に重要なテーマの一つです。女性社員の更なる定着とリーダーとしての活躍を目指し、数値目標として総合職に占める女性の割合15%を掲げ、女性のキャリア継続のための施策及び採用強化に重点的に取り組んでいます。2024年度の総合職に占める女性の割合は14%でした。

また、2024年度の男性育児休業の取得実績は73.8%でした。数値目標に75%以上を掲げ、性別にかかわらず仕事と家庭の両立支援を強化することで、働きやすい環境の整備を推進しています。

 

 c. 健康経営

2020年4月に健康経営宣言を発表後、社員が心身ともに健康的に働ける職場づくりに取り組んでいます。2022年4月にCWO(Chief Wellness Officer、現在は副社長が兼任)を議長とする健康経営推進会議を設置しました。人事部内には健康経営とダイバーシティを推進する専任組織を設け、健康経営を強力に推進しています。健康に関する各種データの分析、ストレスチェックの集団分析結果を組織へフィードバックし、職場改善活動につなげる等、実効性の高い施策を実施しました。また、2024年度の当社の総合健康リスクは78(※100を超える場合は全国平均と比べて休職者が発生する可能性が高い)と全国平均を下回る数値となっています。上記取り組みにより、2025年3月には健康経営優良法人に5年連続(5回目)で選定されました。

 

 d. 健全な労使関係

社会情勢や当社グループの事業の変化に対応する人事制度や採用競争力の強化を労使間での重要課題と位置付けてきました。人財の多様化を受け、離職対策を含む組織風土にかかわる課題についても積極的に協議しています。

 

② 誇りと情熱を持って社会課題に挑戦を続ける人財

人財開発基本方針に定める、専門領域における業務遂行力と組織経営力の伸長をベースに、多様化・複雑化する社会課題に対し、マインドをしなやかに変容させ、事業の変革に挑戦しています。グローバルなフィールドでの多様な経験と各種教育を組み合わせた育成戦略を展開することで、一人ひとりのキャリア形成を支援しています。

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<人財開発におけるHROの役割>

当社では4つの職種(Ex:エンジニアリングプロフェッショナル職、Bx:ビジネスインキュベーション職、Px:プロジェクトマネジメント職、Cx:コーポレートプロフェッショナル職)と専任職(多岐に渡る当社組織の円滑なオペレーションを主体的に支える)を定義しており、職種ごとにHROを任命しています。

HROは社員本人との対話を通してキャリア志向に伴走し、並行して上司、本部長とも対話をします。個人のキャリア志向と事業戦略を結びつけた異動、アサイン、評価・昇格、登用を主導する当社の人財開発の要です。

 

a. 事業の中核人財の拡充

中核人財とは、「自ら社会課題を特定、社内外との共創をリードし、より高い付加価値と収益獲得を実現できる人財」を指します。経営計画2025で掲げる収益の安定化と多様化のための自己変革を達成するためには、事業の中核人財を拡充していく必要があります。顧客の多様化するニーズに応えるため、EPCの中核人財を更に拡充し、併せて事業共創の拡充に向けたNon-EPCの中核人財の育成を進めていきます。

 

 b. 業務遂行力伸長のための取り組み

専門領域における業務遂行力の強化を通じて、当社の競争力を維持・向上する人財を育成しています。2022年4月に卓越した専門能力を持つ人財をフェローとして登用する制度を設けました。フェローは、当社の事業戦略を

リードするだけではなく、ロールモデルとしての役割を果たしています。今後のフェロー人財の育成と拡充を目指し、候補となる人財群を23名選抜しています。

また、各本部の育成戦略を体系化し、全社の育成戦略とすることで、より多くの社員に必要な教育機会を提供していきます。専門教育を含む教育基盤についても定期異動等で得る職務経験との接合を確認しながら再整備し、人財開発を一層高い次元で進捗させていきます。

 

c. シニア層の更なる活躍の推進

国内の労働人口の減少や、建設業の人手不足は重要な課題であり、高度な専門知見を持つシニア層の活躍は当社の最重要テーマの一つです。定年後も事業の最前線で重責を担うシニア層のモチベーションを維持・向上できるよう、2024年10月に職務型の人事制度を導入し、新たに会社業績賞与の支給対象としました。また、環境変化を捉え、自発的にキャリア形成に取り組むマインドを醸成するためのキャリア研修を2022年度から重点的に実施しており、今後も継続していきます。

 

d. デジタル人財の育成

デジタルトランスフォーメーション(DX)の原動力としてデジタル人財の育成やDX意識・文化の醸成を進めています。当社では、CDO(現在はCHROが兼任)、各本部から選出されたDO(Digital Officer)、デジタル変革エバンジェリストで組織するCDO室を2021年7月に開設し、以降CDO室を中心として全社の業務変革を加速しています。

業務課題を特定し、課題解決の道筋を想定して変革の戦略を立てる人財群をデジタルコア人財と定義し、全社DXを推進しています。2023年度より、育成プログラムを開始、拡充しており、2024年度には、経営陣が変革をリードするべく、会長、社長をはじめとする社員(18名)にDXトレーニングを行いました。また、全社員のリテラシー向上とDXマインド醸成に向けて、日々の業務に生かせるデジタル技術の習得として、e-learningを112名(注)に提供し、生成AI活用に向けた研修を271名(注)に実施しました。さらに、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が創設・運営するAI人財の育成を目的とした資格であるE資格の取得を奨励しており、2024年度は2名(累計20名)が取得しています。

(注)継続雇用制度に基づき当社に勤務するシニア社員等を含む

 

■指標及び目標(単体)

 

 組織風土調査結果を当社における人的資本経営の重要KPIとして位置付けています。同調査では肯定的回答率65%以上が強みとして認識されています。

 

施策区分

指標(組織風土調査結果)

2025年度目標値

2024年度実績(注)

① 相互に尊重し、挑戦し続ける

  自由闊達な組織風土

社員を活かす環境度数

肯定的回答率

65%以上

68%

② 誇りと情熱を持って社会課題に

  挑戦を続ける人財

社員エンゲージメント度数

62%

(注)継続雇用制度に基づき当社に勤務するシニア社員等を含む

 

 

(3)人権尊重の取組み

■人権尊重への対応に関する考え方及び取組み

当社グループは、人権の尊重は全ての事業活動の基盤となる重要な要素であると位置付けています。今般再定義したマテリアリティの取組みの1つに「すべての人々の人権を尊重」を掲げ、また「当社グループ行動規範」において人権の尊重とその侵害行為の防止、国際的な人権規範の尊重を定めています。

当社グループは、国際連合「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする人権に関する国際規範や法令の遵守、人権デュー・ディリジェンスの継続的な実施、当社グループにおける人権に関する重点課題などを記載した「人権基本方針」を制定し、公表しています。

https://www.chiyodacorp.com/jp/about/policy/

「人権基本方針」は、当社グループの事業活動および取引関係を通じて影響を受ける可能性のあるあらゆる個人・グループを対象としています。また、当社グループ全ての役員と従業員に適用するとともに、当社グループの事業活動に関係する全ての取引関係者・ビジネスパートナーやその他関係者にも、「人権基本方針」を理解・支持し、人権の尊重に努めて頂くよう継続して働きかけていきます。

 

■戦略

当社グループは、「人権基本方針」等に基づき、ステークホルダーとの対話や外部専門家との連携を行いながら、人権デュー・ディリジェンスの取り組みを行っています。人権デュー・ディリジェンスの取り組みは、国際連合「ビジネスと人権に関する指導原則」に則って進めています。

 

2024年度までの主な取組み

従前より、当社グループ役職員へのハラスメント防止教育、労働者の安全・労働環境の整備などの取組みは実施していましたが、「ビジネスと人権」への取組みとしては以下のとおり2018年度から開始しました。

 

 

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当社は総合エンジニアリング会社として「人権に配慮した事業運営」を、当社が中長期的に取組むべき重要な課題である「マテリアリティ」の目標のひとつに定めており、経営計画2025や、事業計画および当社の事業方針・戦略策定の基軸としております。国内・海外を問わず当社のサプライチェーン全体において人権侵害を可能な限り排除することを目指し、2025年度は、人権デュー・デリジェンスプログラムの策定及び人権デュー・デリジェンスの実施体制の構築に取り組みます。また、国際連合「ビジネスと人権に関する指導原則」が求める要件に照らし、昨年度に引き続き被害者が効果的な救済を受けるための実効性のあるプロセスの構築や相談・通報制度の改善に努めていきます。

 

■リスク管理

前述2「サステナビリティに関する考え方及び取組」の「リスク管理」に記載のとおりです。

当社グループは、自社の役職員のみならず、取引先の役職員、事業活動が行われる地域の住民など、当社グループの事業に関わる全ての人権を尊重します。外部専門家の評価も得て、「人権基本方針」において以下の7項目を「当社グループが優先的に対応すべき人権に関する重点課題」と定めております。なお、2024年度の人権WGの活動を通じ、これらの重点課題に変更がないことの確認、及び優先的に取り組むべき重点課題の特定を行いました。(以下人権リスクマップの通り)

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人権に関するリスクに適切に対応せず、委託先や調達先等のサプライチェーンを含む当社グループの事業活動のすべての過程において人権を侵害する行為や人権に関する法令の違反が発生した場合、当社グループにおいても行政罰、顧客との取引停止、社会的信頼の喪失・企業価値の毀損などにつながり、ひいては経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの事業に関わる人権リスクへ確実に対応するため、人権デュー・ディリジェンスの実施によってリスクを把握・特定し、予防・軽減を図っていきます。特に、国際的な調達の際、そのサプライチェーンで働く労働者の人権リスクが高いとの認識から、サプライヤーとの取引前に、質問状や書面調査により、人権尊重の取り組みの状況を確認・評価し、懸念事項が確認された場合には、サプライヤーとコミュニケーションを取り、防止・軽減に努めるよう促しています。サプライヤーと締結する契約には、サプライチェーンにおいて人権尊重の取り組みを担保するための条項を規定しています。また、サプライチェーン全体で取り組んでいただきたい事項を取りまとめた「取引先の皆様へのお願い」を周知のうえ、サプライチェーン全体での人権尊重の取り組みを進めていきます。

サステナビリティ委員会の枠組みのもと、関連組織が連携して人権デュー・ディリジェンスの実施や救済メカニズムの整備などの人権尊重の取り組みを推進するとともに、継続的な研修機会の実施や情報の開示等を通じ、当社グループの社員一人ひとりの人権尊重へ向けた意識向上を図っていきます。

 

■指標及び目標

当社グループの事業に関連する人権リスク及び機会の実績を評価・管理するべく、外部専門家のサポートを得て、当社グループの事業に関連する人権リスクや重点課題を踏まえた「指標」及び「目標」を設定しました。2025年度以降は、これらの「指標」及び「目標」を踏まえた人権の取り組みを推進していきます。

 

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(注) 1. 当社グループ全従業員向けに、ハラスメント・ビジネスと人権・贈収賄禁止などを含むコンプライ

アンスEラーニングを毎年実施し、人権の尊重を定めている「当社グループ行動規範」遵守の宣誓を取得しています。2025年3月31日時点の、当社グループの国内外グループ会社の全役職員(派遣社員を含む)の人数で計算しています。

2. 「人権監査」として会社が計画的に実施したもののみを対象としています(個別のプロジェクト等が独自で実施したものは除いています)。

3. 千代田グループの役職員向けに実施している匿名アンケートにおいて、「職場でコンプライアンス違反(又はそのおそれ)が生じたときに、当社のコンプライアンス相談窓口を信頼して相談・通報すると思う。」という設問に対する回答として、非常にそう思う・そう思う・どちらとも言えない・そう思わない・全くそう思わないの5つの選択肢のうち、「肯定的回答(非常にそう思う・そう思う)」の回答者の割合で計算しています。

4. 当該年度中に工事が開始される海外プロジェクトを対象とします。

5. 人権に対する負の影響の重大性・負の影響の及ぶ範囲・救済困難度の観点から、深刻度が高いと判断さ

れるものの当社グループ及び当社グループの取引先(当社事業に関連するものに限定)における件数です。

6. グループ共通・相談窓口及びグループ各社が設置している相談・通報窓口で受領した相談・苦情件数で

す。

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項、及びそれらへの対応は以下のとおりです。

 当社グループは、これら事項の発生の可能性を認識したうえで、発生の低減に注力するとともに、発生した場合にはその影響を最小限に抑えるべく可及的速やかな対応に努めます。

 なお、以下記載事項については、当連結会計年度末現在において認識したものです。

 

(a)景気動向、経済・社会・政治情勢の変動による影響

 世界的な景気動向や社会・政治情勢の変化、保護貿易・経済制裁・国交の状況、各国のエネルギー政策の転換、原油・LNG・金属資源価格の市場動向等により、顧客の投資計画に中止・延期や内容の変更が発生する、或いは顧客・パートナーの財務状況が悪化する等、当社グループの業績に影響を及ぼす場合があります。特に、 米国の第2次トランプ政権による関税措置が一部の国において適用されており、今後適用対象国が拡大した場合、主要国経済に影響を及ぼすことが想定され、先の見通しが立たない状況となっています。これを受け、各市場も先行きの確信が持てず不安定となっていることが当社グループ業績に不透明さを与える要因となる可能性があります。

 当社グループでは、経済・社会情勢の変動を注視しつつ案件実現性・受注確度等を見極めながら、営業活動を行うとともに、顧客とのリスクの最適な分担を図っています。また、顧客投資計画の突然の中止・遅延といった事態に備えるため、受注計画には常にバックアップ案件を織り込み作成しています。加えて、新規分野を中心に幅広い分野でのスタディ業務やNon-EPC業務にも積極的に取り組んでおります。

 

 

(b)地震等の自然災害、ウイルスによる感染症、地政学リスク、テロ・紛争等の不可抗力

 地震、地球的気候変動による大規模降雨・洪水・台風等の自然災害や、ウイルスによる感染症拡大、テロ・紛争等の不可抗力の発生により、工事従事者の生命への危険、機器資材の工事現場への搬入遅延、現場工事の中断等、遂行中案件の工事現場或いは国内外の事業所において直接的又は間接的な損害発生の可能性があります。

 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻、2023年10月に始まったイスラエルとハマスの武力衝突が他中東諸国へ与えるリスク等により、全世界的に地政学リスクが一層高まり、世界経済を巡る不確実性、経済制裁の応酬等の動きが更に顕在化することが懸念されます。こうした不安定な世界情勢が、顧客及びジョイントベン

チャーパートナーの財務状況悪化、サプライチェーンの混乱、機器資材費等の高騰につながり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、危機管理担当部門を設置し情報の収集・分析を行うとともに適切な対策を講じるために

セキュリティコンサルタントを雇用し、刻々と変化する危険地域の状況把握に努める等、人命と安全確保を最優先に考えた常なる備えとして危機管理組織を強化しています。特にカタールでは大型プロジェクトを遂行中であり、在カタール当社グループ従業員及びその家族の安全に十分配慮するとともに、他国にて遂行中の案件への影響を今後も注視、対処していきます。また、有事の際には緊急対策本部を立ち上げ、顧客等関係先と迅速に情報共有するとともに、適時に適切な対応策を実施することで、これらの危機事象発生に伴う影響を最小限に留めるよう有事対応の手順を定めています。さらに、大規模地震等を想定したBCPを策定し、災害発生時には即時の安否確認・ス

ムーズな初動対応・優先業務を立ち上げられるよう、平時から訓練を重ねることで事業継続力の向上に取り組んでいます。

 

 

(c)パートナーリスク

 当社グループの事業領域では、案件の規模や複雑さ、リスクシェア等の事由により、パートナーとジョイント

ベンチャー又はコンソーシアムを組成し、受注することがあります。パートナーの債務不履行や財政状態の悪化、遂行能力面での著しい問題等が生じた場合は、当社グループが契約上の連帯責任を負う場合があるため、当社

グループの経営に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、協業を決定する際に、パートナー候補の財務状況及び遂行能力を十分に分析するとともに、取引開始後もモニタリングを継続し、早期にリスクを発見・対処できる体制を敷いています。

 

 

(d)機器資材費の高騰

 プラント建設では契約見積時と遂行発注時にタイムラグが生じます。そのため、国家・地域間の戦争・紛争勃発といった急激な社会情勢の変化を受けて、機器資材の価格が予想を超えて高騰するリスクに曝されています。特にプラント建設で主要部分を占める鉄鋼製品の価格は原材料である原料炭と鉄鉱石の価格の変動に大きく影響を受けます。さらに、銅・ニッケル・アルミニウム・亜鉛などの市場価格の変動は予想し難いものです。また、原油価格や保険料の上昇等により海上輸送費も大きく影響を受けます。

 当社グループでは、これらのリスクを回避し影響を最小化するために、市場動向の調査に加え、世界各地からの購入先の分散を図る等の調達先の多様化、競争環境の維持、機器資材の早期発注、有力な業者との協力関係構築などの対策を講じています。さらに、世界的なインフレ進行による資機材・労務価格の高騰に対しても、顧客・ベン

ダー・サブコントラクター等の事業パートナーやステークホルダーとの協議・交渉を通じて適切な対応を心がけています。

 

 

(e)工事従事者・機器資材の確保困難

 プラント建設では、建設工事に必要な工事従事者等の人的資源の不足、工事に要するインフラ確保の不調、及びサプライチェーンの寸断等、機器資材の調達が計画どおりに進まないことにより、工程遅れが生じ、その回復のために追加費用を投入する場合があります。

 当社グループでは、国内及び海外においては労働力の逼迫する国や気候の過酷な地域での工事において、想定を超える工事コストの高騰リスクに対し、モジュール工法の採用等建設手法の工夫や有力な工事業者・機器資材供給業者との協力関係を基礎にして、これらのリスクの回避及び顕在化した場合の影響の最小化を図っています。

 また、世界的な感染症や疫病の影響やストライキ等により工事中断を余儀なくされた場合には、顧客や現地関係機関と連携して適切な対応を取り、影響の最小化を図っています。

 

 

(f)気候変動による事業環境変化に関するリスク

 気候変動が社会に与える影響は地球規模であり、グローバル社会が共通して直面している最も重要な社会的課題の1つです。当社グループは、気候変動の拡大に伴う物理的リスクと移行リスクによる顧客の投資環境や事業ポートフォリオが変化することで、当社の経営及び事業戦略に大きな影響を及ぼす可能性があると認識しています。

 このような中、複雑化・高度化する社会や顧客の課題を的確に捉え、解決していくために、各国のエネルギー

情勢や気候変動政策の見直し、法規制等を注視するとともに、政府、関係官庁、顧客等のネットワークから適時・適切に最新の情報を入手し、経営計画を策定することで対処しています。

 一方、当社グループは、気候変動を新たな事業機会としても捉えています。脱炭素・炭素循環型社会実現に向け、水素社会への移行の加速、LNGを含む低炭素エネルギー及び再生可能エネルギーの更なる普及といった当社

グループを取り巻く事業環境の大きな変化や、重要顧客の戦略見直し、及び当社グループにとっての新たな市場機会の成長を踏まえて、事業ポートフォリオの革新を更に加速し、環境負荷低減社会の実現に貢献します。

 複雑な制約・課題に対し最適なソリューションを提供する課題解決力、設計を最適化し高い品質を保証するEPC遂行力、及び基礎研究力とEPC知見を融合する新技術の社会実装力という創業以来の実績に裏打ちされた当社が

培ってきた強みを活かして、水素社会をはじめとする脱炭素社会への移行を加速し、削減と循環の両輪で2050年の

カーボンニュートラル達成に貢献します。

 

 

(g)プラント事故

 当社グループが建設中の又は建設したプラントに、何らかの原因によって爆発や火災等の重大事故が発生し、その原因が当社グループの責任と判断された場合は、損害賠償責任の負担等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、このような不測の事態が発生しないよう、計画時の安全設計、建設現場での無事故・無災害を最優先に品質管理・工事安全管理等について万全を期すことはもとより、適切な保険の付保、損害の負担にかかわる顧客との合理的な分担を定めた契約条件の獲得等によりこれらのリスクの回避・影響の最小化を図っています。なお、当社グループでは工事安全を確保するためのあらゆる取組みを“C-Safe”と名付け、その旗印のもと安全文化の醸成に弛まぬ努力を注いでいます。

 

 

(h)為替レートの変動

 海外向け工事では、機器資材調達や下請工事代金の決済が顧客から受領する対価と異なる通貨で行われる場合が

あるため、為替レートの変動は業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、支出を予定する複数の通貨での工事代金受領や、為替予約の手当によって為替レート変動の

リスクを回避し、影響を最小化するよう努めています。

 

 

(i)コンプライアンス違反

 国内外で事業を展開するにあたり、当社グループの本社・子会社・事務所及び事業遂行地が所在する国・地域等の法令・諸規制に従う必要があります。それら法令・諸規制に違反する行為、又は違反を疑われる行為が万が一発生した場合には、事業の遂行に多大な影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、これら違反の防止、及び疑義を持たれる事象の回避のため、事業活動を行うに際して全ての役職員が取るべき行動の指針として「千代田化工建設グループ行動規範」を策定し、研修そのほかの施策を通じてその浸透を図っています。また、社内規程・ルールの整備・運用により法令・諸規制の遵守を徹底することに加えて、CCO(Chief Compliance Officer:チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を委員長とし各組織のコンプライ

アンス・オフィサーを委員とするコンプライアンス委員会、及びCCOを議長としグループ各社社長を委員とする

グループ会社コンプライアンス連絡会を設置し、コンプライアンス施策の組織横断的 な展開を行いコンプライ

アンスへの対応を確実に業務プロセスへ取り込んでいます。さらに、内部通報制度を整備・運用し、又発覚後の調査・対応体制を整備することで、法令・諸規制に違反する行為やその疑いの早期発見、是正・再発防止に努めています。

 

 

(j)情報セキュリティへの脅威

 当社グループは、事業の遂行に必要な顧客や取引先情報を多数管理しているほか、技術・営業・その他事業に関する秘密情報を保有しています。多くの基幹業務や商取引がITシステムを駆使して世界中の拠点で行われています。重要な情報システムやネットワーク設備へのサイバー攻撃に備え、防御施策を強化しながらそのリスク低減を図っておりますが、完全なリスク回避はできるものではなく、不測の事態により、システム障害、秘密情報の漏洩、サイバー詐欺被害、重要な事業情報の滅失等が発生して当社の事業へ影響を与える可能性があります。一般企業がサイバー攻撃に巻き込まれるリスクはますます高まっています。

 当社及び一部のグループ会社において、ISMS認証*1を取得しており、ISMS認証やNIST CSF*2等に基づき、サプライチェーンの情報セキュリティを意識した体制構築・強化しています。また、社内向けの定期的な教育や監査等の情報セキュリティマネジメントを徹底し、これらのリスクの回避・影響の最小化に努めています。

 

 

(k)事業投資にかかわる損失

 当社グループは、新会社の設立や既存会社への出資・買収等の事業投資を行うことがあります。事業投資においては、多額の資本拠出や投資先に対する貸付・保証等の信用供与を行う場合がありますが、事業環境の変化等により、投資先の収益が当初計画どおりに上がらない、業績の停滞等に伴い投資にかかわる損失が発生する、又は投融資の追加が必要となる事態に直面する等のリスクがあります。

 当社グループでは、投融資に関する社内基準やルールに基づき事前検討を十分に行うことに加えて、損失リスクに相応する当社グループの財務許容力を慎重に見極めたうえで投資可否を決定しています。更に実行後は投資先の事業計画の進捗をモニタリングしつつ、必要に応じて要員、資金等の各種支援を行うことにより、損失の回避や軽減に努めています。

 

 

(l)継続企業の前提に関する重要事象等

 当社グループと米国テキサス州にてGPXプロジェクトを共同遂行していた米国Zachry Industrial, Inc.(Zachry社)が、2024年5月に、米国連邦破産法第11章に基づく申し立てを行い、法的再建手続きに入りました。本事象を受け、前連結会計年度においては、Zachry社のGPXプロジェクトからの離脱の可能性に伴う影響を考慮し、営業損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上したこと、また単体財務諸表において債務超過となったことにより、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在していました。

 2024年8月に現地裁判所によるZachry社のGPXプロジェクトからの離脱に関わる基本合意書が最終承認され、これにてZachry社のGPXプロジェクトからの離脱が正式に確定しました。また、同年11月にジョイントベンチャー

パートナーである米国CB&I LLC(CB&I社)及び米国の当社グループ会社であるChiyoda International Corporation(CIC社)が再度見積もったコストをベースとした第1系列に係るEPC契約(設計・調達・建設工事請負契約)の改定につき、顧客である米国Golden Pass LNG Terminal LLC(GPX社)と合意に達し、当該合意による採算改善を当連結会計年度において反映しております。残る第2系列及び第3系列に係るEPC契約の改定に関しては、GPX社との協議が進捗し、翌連結会計年度の調印を見込んでいます。早期のEPC契約の改定・合意を目指すとともに、合意が行われた時点で、その内容を踏まえ、見積りの見直しを行ってまいります。

 資金面では、2024年7月に株式会社三菱UFJ銀行と融資契約を締結の上、同月に借入を実行するなど、取引金融機関とは密なコミュニケーションと緊密な連携関係を維持しており、当連結会計年度末において十分な資金を有しています。

 上記に加えて、当連結会計年度において、海外完工済み案件での追加収益の計上、他国内外の進行中案件の着実な進捗等により244億21百万円の営業利益、269億87百万円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上しました。また、単体財務諸表では36億9百万円の営業利益、148億86百万円の当期純利益を計上した結果、純資産は31億68百万円となり、債務超過を解消しています。翌連結会計年度以降も、2025年5月8日に公表した2026年3月期を初年度とする経営計画2025のとおり、収益安定化ならびに多様化に向けた施策を着実に実行し、当社グループの企業価値向上を目指してまいります。

このような状況を総合的に判断した結果、当連結会計年度末において、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象又は状況は存在しないと判断しています。

 

 

*1 ISMS: Information Security Management System (情報セキュリティマネジメントシステム)

*2 NIST CSF: 米国国立標準技術研究所 National Institute of Standards and Technology (National Institute of Standards and Technology米国国立標準技術研究所) が発行した、重要インフラのサイバーセキュリティを向上させるためのフレームワーク(Cybersecurity Framework)

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において判断したものです。

 

<経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容>

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりです。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、先進国を中心に回復基調が続いた一方、中東情勢やロシア・ウクライナ情勢等の地政学リスクの影響や米国による関税引き上げの影響等もあり、先行きは依然として不透明な状況が継続しました。

当社グループを取り巻く事業環境においては、気候変動問題への対応として低・脱炭素社会の実現に向けた需要が継続する一方、エネルギーの安定供給に向けたLNG需要も拡大するなど、人と地球の持続的で豊かな未来の実現が求められています。

 

 当連結会計年度における業績は、次のとおりです。

 

(受注工事高)

 受注工事高は、前連結会計年度比11.1%減の2,112億60百万円となりました。なお、当連結会計年度末受注残高は

7,398億57百万円となりました。受注工事高の概要は、「報告セグメントであるエンジニアリング事業の分野別概況」に記載のとおりです。

 

(完成工事高)

 完成工事高は、前連結会計年度比9.7%減の4,569億69百万円となりました。完成工事高の概要は、「報告セグメントであるエンジニアリング事業の分野別概況」に記載のとおりです。

 

(完成工事総損益)

 完成工事総損益は、GPXプロジェクト第1系列に係る契約の改定につき顧客であるGPX社と合意したこと、海外完工済案件での追加収益の計上、および国内外で進行中の案件の着実な進捗が寄与し、前連結会計年度の完成工事総損失1億57百万円に対し、423億19百万円の完成工事総利益となりました。また、完成工事総利益率は前連結会計年度の0.0%から9.3ポイント増加し9.3%となりました。

 

(販売費及び一般管理費)

 販売費及び一般管理費は、物価上昇に対応するためのベースアップや成長戦略を推進するための研究開発費の継続等により、前連結会計年度に比べ30億47百万円増加し178億97百万円となりました。また、販売費及び一般管理費比率は前連結会計年度の2.9%から1.0ポイント増加し3.9%となりました。

 

(営業損益)

 営業損益は、完成工事総損益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ394億28百万円増加し244億21百万円となりました。

 

(営業外収益・営業外費用)

 営業外収益は、受取配当金や海外プロジェクト資金の運用利益の減少により、前連結会計年度に比べ10億20百万円減少し115億17百万円となりました。また、営業外費用は、為替差損等により、前連結会計年度に比べ7億50百万円増加し37億42百万円となりました。この結果、営業外収支は77億74百万円の収益となりました。

 

(経常損益)

 経常損益は、完成工事総損益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ376億57百万円増加し321億96百万円となりました。

 

(特別利益・特別損失)

 特別利益及び特別損失は、前連結会計年度が6億97百万円の損失超過であったのに対し、当連結会計年度は、退職給付制度終了益の計上により1億89百万円の収益超過となりました。

 

(法人税、住民税及び事業税・法人税等調整額)

 税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ385億45百万円増加し323億86百万円の収益となりました。

 法人税、住民税及び事業税は47億20百万円、法人税等調整額は40百万円となり、前連結会計年度に比べ37億79百万円の減少となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純損益)

 親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ428億18百万円増加し269億87百万円となりました。

 

報告セグメントであるエンジニアリング事業の分野別概況は、次のとおりです。

 

[エネルギー分野]

(LNG・その他ガス関係)

 海外では、カタール、米国でLNGプラントのEPC(設計・調達・建設)業務を遂行中です。年産800万トンのLNGプラント4系列の増設案件であるカタールNorth Field East LNG輸出基地案件(NFEプロジェクト)の建設工事が進捗しています。米国のGolden Pass LNGプロジェクト(GPXプロジェクト)は、顧客である米国Golden Pass LNG Terminal LLC(GPX社)及びジョイントベンチャーパートナーである米国CB&ILLC(CB&I社)と協調して完工を目指すことを確認しており、2024年11月に顧客とLNGプラントの第1系列の契約改定に合意し、同第2系列及び第3系列についても引き続き契約改定の交渉を進めています。

その他ガス分野では、カタールで当社グループ会社がLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件に係る複数の設計業務を遂行中です。

国内では、第7次エネルギー基本計画において「トランジション燃料」と位置付けられたLNGの受入基地に係る複数の検討業務を完了しました。加えて、新規LNG受入基地案件の増設工事を受注しました。また、当社グループが建設したLNG受入基地の改造・改修工事を遂行中です。

 

 当連結会計年度の受注工事高は693億64百万円(前連結会計年度比37.5%増)となり、完成工事高は2,549億93百万円(同4.1%増)となりました。

 

(石油・石油化学関係)

 国内では、石油会社向けに、製油所の設備更新工事や省エネ、カーボンニュートラルに資する各種検討業務などを遂行中であり、出光興産㈱よりSAF(Sustainable Aviation Fuel)製造装置導入に係る基本設計業務を受注し、遂行中です。また、国内製油所や石油・石油化学事業所に対して、これまで培った高度解析技術(3次元流動解析やダイナミック・シミュレーション、構造解析、耐震)と最新のデジタル技術を組み合わせ、運転最適化と設備保全効率化ならびに運転・保全業務のDX推進に向けたO&M(Operation & Maintenance)事業を展開しています。

また、マイクロ波化学㈱、三井化学㈱とマイクロ波加熱を利用した革新的ナフサクラッキング技術の共同開発を進めています。本事業は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム重点課題推進スキーム」にて実施遂行しています。本技術の確立により、従前の化学業界の重要課題である「ナフサの熱分解で排出されるCO2の大幅な削減」に貢献します。

 当連結会計年度の受注工事高は381億85百万円(同2.1%増)となり、完成工事高は332億50百万円(同9.6%増)となりました。

 

[地球環境分野]

(医薬・生化学・一般化学関係)

 医薬・生化学分野では、AGC㈱をはじめ複数の顧客向け医薬品製造設備のEPC業務を遂行中です。また、バイオ医薬品のFS(Feasibility Study)業務を完了し、次のステップである設計業務を新たに受注しました。このほかバイオ関連製造施設のFS業務を新規受注しました。

EPC関連事業以外では、NEDO助成事業にて、産学連携で「植物による高度修飾タンパク質の大量生産技術の開発」を引続き進めています。本開発では、ベンチスケールからパイロットスケールに至るまでの生産が可能な実証用設備を子安オフィス・リサーチパーク内に建設し、高度修飾タンパク質の生産技術の実証運転を開始しました。本設備はNEDO助成期間終了後は、植物バイオものづくりの実用化開発に利用することなどを予定しており、各種受託サービスの充実に努めます。

そのほか、国立大学法人筑波大学と継続してきた特別共同研究事業の一環として、同大学付属病院内に細胞培養加工施設(Cell Processing Facility)を設置しました。これにより、当社は、当該細胞培養加工施設に加え、既に同大学内に開設済みの「つくば幹細胞ラボ」、当社子安オフィス・リサーチパークと合わせて3つの拠点を得たことで、基礎研究から製造開発支援までの一貫した解決策を顧客に提供可能な「伴走型技術コンサルテーション」サービスの提供を進めています。

併せて、一般社団法人アイディーフォーの研究用疾患iPS細胞の提供拡大を目指す「iPS細胞提供プラットフォーム」を構築する実証実験(第二期)に参画し、今後の細胞系事業展開に資するiPS細胞のデータベース構築や流通経路の最適化を検討していきます。

一般化学分野では、㈱クレハ向けフッ化ビニリデン樹脂生産設備のEPC業務を遂行中です。

 当連結会計年度の受注工事高は264億77百万円(同70.3%減)となり、完成工事高は356億99百万円(同14.7%増)となりました。

 

(環境・新エネルギー・インフラ関係)

 環境分野では、インドにおける環境規制強化により石炭火力発電所への排煙脱硫設備の導入が進む中、当社のCT-121排煙脱硫プロセスが複数の案件に活用されています。

新エネルギー分野では、再生可能エネルギーの効率的な活用に資する蓄エネルギー活用や地域分散型のエネルギー供給システムへの取組みを強化しています。加えて、洋上風力分野では、国内事業者に対する着床式発電所に関する各種ソフト業務・遂行支援や、浮体式発電所建設のFS業務等を進めています。

インフラ分野では、インドネシアで単一製造ラインとして世界最大規模となる銅製錬工場が2024年11月に完工しました。

国内では、主に電気自動車における航続距離拡大・充電時間の短縮・安全性向上が期待される全固体電池に関して、出光興産㈱向けに固体電解質の小型実証プラントプロジェクトを完工しました。また、全固体電池実用化に向けた中間原料である硫化リチウム(Li2S)の大型装置建設工事を、更には固体電解質の大型パイロットプラントの基本設計業務を受注し遂行中です。さらに2024年7月に鹿児島県喜界町と地域脱炭素ビジョン推進に関する包括連携協定を締結しました。同町のゼロカーボンアイランド構想実現に向けて取り組んでまいります。そのほか、2024年1月に発生した能登半島地震に因る工場被災の復旧工事が完工しました。

 当連結会計年度の受注工事高は701億21百万円(30.6%増)となり、完成工事高は1,266億53百万円(同35.0%減)となりました。

 

≪脱炭素ビジネスの取組み≫

 水素・アンモニア、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)/CCUS(Carbon dioxide Capture and

 Utilization and Strage)、エネルギーマネジメントの取組みは以下のとおりです。

 

(水素・アンモニア)

 水素分野では、当社の独自技術であるSPERA水素TM技術の優位性を生かした水素サプライチェーンの構築に向けて、海外、国内で具体的な案件や検討を進めています。

シンガポールでは、同国での水素利用拡大に向け、2024年6月から現地の南洋理工大学、PSA Singapore(PSA社)、三菱商事㈱と共同で、PSA社が運営する港湾内のコンテナヤードに当社の小型脱水素装置を設置し、大型燃料電池車への水素供給の実証運転を継続しています。

オーストラリアでは、ENEOS㈱より直接メチルシクロヘキサン電解合成(Direct MCH®)を活用した大規模実証プラント建設工事を受注し、遂行中です。

国内では、水素バリューチェーン推進協議会の理事会社として、社会実装プロジェクトの創出と政策支援の実現に向けて活動しています。

また、2024年2月にトヨタ自動車㈱と大規模水電解システムの共同開発及び戦略的パートナーシップの構築に係る協業基本合意書を締結、発表しました。同システム標準パッケージを開発して、2026年度からトヨタ自動車㈱本社工場水素パーク内への同システムの導入を開始します。

そのほか、政府が目指す2050年までのカーボンニュートラル実現の為、2024年1月に川崎重工業㈱をリーダーとして、東洋エンジニアリング㈱、日揮グローバル㈱、当社の4社によるJV協定書を締結し、オーストラリアにおいて、日本水素エネルギー㈱が取り組んでいる液化水素サプライチェーンの商用化実証を目的としたFEED(Front End Engineering Design)業務を完了しました。

アンモニア関連分野では、当社が主幹事会社となり、NEDOのグリーンイノベーション基金事業として、産学官連携で製造コストの低減を実現する新規アンモニア合成技術の開発を進めています。さらに、㈱JERA、㈱日本触媒と共同で既存の技術より競争力のあるアンモニア分解技術の開発を進めており、NEDOの技術開発事業にて実施遂行しています。

そのほか、国内におけるアンモニア受入設備や水素燃料供給に関する複数の検討業務を遂行中です。

 

(CCS/CCUS)

 CO2の回収・CCSシステム設計におけるグローバルリーダーであるPace CCS社とCCS分野での協業に関する覚書を締結し、CCSプロジェクトのFS業務やコンセプトデザインからFEED/EPC業務まで幅広く展開していきます。

また、大規模な天然ガス火力発電所で発生する排ガスから固体吸収材を用いてCO2を分離・回収する技術開発をNEDOのグリーンイノベーション基金事業として進めています。

東南アジアでは、インドネシア国営石油会社プルタミナ社と2023年3月に締結した炭素循環技術に係る共同検討業務契約に基づいて、当社のCO2リフォーミング技術を適用した検討を実施しました。これは、わが国の提唱するアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想の一端に係る案件と位置付けられ、関連閣僚会議等で進捗等について都度報告されています。

また、西オーストラリア州におけるCO2サプライチェーン構築に関する実現可能性検討業務を豪州のPilot Energy Limited社から受注し、遂行中です。

当社、日本郵船㈱、Knutsen NYK Carbon Carriers AS社は、液化CO2のCCUSの技術として想定される常温昇圧(EP)・中温中圧(MP)・低温低圧(LP)の3方式について、回収したCO2の液化から一時貯蔵、海上輸送などCCUSバリューチェーンを通じた経済性や実現性検証に関する共同検討を2023年度に実施しました。今後事業者に対してEP方式に関する具体的な提案を行うべく、技術面を含む詳細検討を実施しています。

また、三菱重工業㈱と、同社CO2回収技術の包括ライセンス契約を締結し、国内向けCO2回収プロジェクトを対象に、同社が関西電力㈱と共同開発したCO2回収技術である「KM CDR ProcessTM」及び「Advanced KM CDR ProcessTM」のライセンス供与を受け、戦略的に協業を推進しています。

そのほか、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による2024年度の先進的CCS事業に採択された三菱商事㈱、電源開発㈱、出光興産㈱、石油資源開発㈱ほか、各事業者の計画に係る複数の検討業務を受注・遂行し、2025年度においても複数件の受注の獲得へ向け各事業者と協議を実施していきます。

さらに、液化CO2バリューチェーン共通化に向けた協議会への参画等、CCUSバリューチェーン全体に対応すべく展開を行っています。

CCU分野では、産学官連携で、CO2の回収・資源化やCO2を原料とするパラキシレン製造の研究開発に取組んでいます。既に本研究のため当社子安オフィス・リサーチパークに設置したパイロットプラントにてCO2由来のパラキシレンの製造に成功しており、当社のほか、㈱ゴールドウイン、三菱商事㈱、Neste Oyj、SK geo centric Co., Ltd.、Indorama Ventures PCL、India Glycols Ltd.の7社で構築したサステナブルなポリエステル製造のサプライチェーンプロジェクトにポリエステル繊維の原料として供給し、㈱ゴールドウインが日本展開するブランドであるザ・ノース・フェイスのスポーツユニフォームに採用されています。

CO2と水素を用いた合成燃料製造に関し、ENEOS㈱向けの1BD(1 Barrel per day)合成燃料実証試験設備建設工事を2024年6月に完工しました。そのほか、㈱INPEX向けの400Nm3-CO2/h メタネーション(合成メタン(e-methane))試験設備工事を遂行中です。また、CCU分野における主要原料の一つであるCOの製造に関し、積水化学工業㈱よりCO2→CO変換プラント(中型試験機)のEPC業務を受注し遂行中です。

 

(エネルギーマネジメント)

 2023年3月に完工した北海道北部風力送電㈱向け世界最大級の大型蓄電池システムの長期に亘る保守業務を遂行中です。加えて、㈱ニジオ(東京ガス㈱100%出資子会社)向け大型蓄電所建設工事を受注し遂行中です。電力需給のバランスの安定化や出力変動の課題解決のため、国内では広く蓄電池の活用が求められており、当社の経験と実績が高く評価されています。

 そのほか、スタートアップ企業であるGrid Beyond社とのVPP事業(Virtual Power Plant)における協業に関しては、国内顧客複数社とシステム導入に係る契約を締結し、2025年度に電力市場取引のサービス開始を予定しています。

また、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて今後国内ではエネルギー会社を中心にアンモニア・CCS/CCUS等の脱炭素分野への投資が多く見込まれる状況にあり、当社は脱炭素分野のFS/FEED業務、EPC業務を確実に受注・遂行するためにJFEエンジニアリング㈱との間で両社の保有するエンジニアリング力の効果的活用、人的資本の相互補完・最適配置等を軸とした協業の検討を開始しました。

 

≪DXの取組み≫

 「社会の“かなえたい”を共創(エンジニアリング)する」の実現のために、全社DXを加速させています。この取り組みを広く社内外で共有するため、当社グループのDXを「Chiyoda DX STORY」と名付けました。Chiyoda DX STORYではコーポレートDX、及びプロジェクトDXで、自社の変革を推し進め、全社員がデジタルプラットフォーム上で業務を行うことにより、業務が効率化・自動化されると同時に広く情報が共有され、意思決定を加速することを目指しています。また、デジタルとフィジカルを融合したO&M-X事業にて業界の変革を顧客と協業して推進しています。そして、それらの変革の原動力としてデジタルコア人財の育成・拡充を進めています。

コーポレートDXでは、リソースマネジメントシステムにより受注計画と人員稼働状況をもとに事業計画シナリオを描くことが定着しました。また、人財育成プラットフォームであるタレントマネジメントシステムではAIを活用した社員の過去の業務経歴や実績に基づいたキャリアの広がりや、目指すプロジェクトポジションに求められるスキルや経験者の知見を集約する等、キャリア設計に必要な提供情報を充実させ、社員一人一人のキャリア設計ができるようになっています。また、コントラクターである当社の重要な業務のひとつである契約締結業務の変革のため、契約のドラフティングから締結、履行サイクルの適切な管理と、その情報が活用できるデジタル基盤の構築に着手しました。この狙いはすべてのステークホルダーとの契約内容とその関連情報を集約し、締結時又はプロジェクト遂行上のトラブルの対応で必要となる情報をタイムリーに提供することで、リスクの低減や対応スピードが向上することを 意図しています。

加えて、働き方改革の一環として、ノーコード・ローコードによるRPA(Robotic Process Automation)の市民開発環境や、様々なデータを統合・可視化し分析するためのデータ分析基盤、業務用生成AIサービスの提供を開始し、意見交換・議論を目的としたコミュニティサイトも設置しました。

プロジェクトDXでは、EPC遂行管理力の進化を目指してかねてより開発・適用を開始していたAWP(Advanced Work Packaging)が海外主要プロジェクトに本格適用され、サブコントラクターとの透明性のある情報共有により作業効率が明確に向上しています。また、中小案件にも対応したデジタルEPCプラットフォームの構築を進めており、業務をプラットフォーム上で行い、情報の可視化/構造化を実現する環境の構築を始めています。これにより情報の把握・意思決定の即時化、業務の自動化、精密なガバナンスを実現することを目指しています。そのほか2024年度から、プロジェクト図書管理の国内案件適用を開始しております。

デジタル変革ビジネスでは、プラント運転・保守ソリューションとDX事業を再編・統合し、顧客のプラント運転・保全業務の変革を支援するソリューション事業を展開し、新たなO&MトータルソリューションサービスとしてplantOS®の提供を開始しました。plantOS®は、千代田エクスワンエンジニアリング㈱をはじめ、当社グループがこれまで提供してきた産業/プラント向けメンテナンス分野におけるフィジカルサポートと当社が長年培ってきた高度解析・診断、IOT、AI等のデジタル技術をハイブリッドに融合したO&M向けサービスです。これまで提供してきた当社のAIプロダクトEFEXIS®については、当社のプロセス知見や独自のシミュレータを活用したプロセスデジタルツインとして、plantOS®の重要なソリューションの一部と位置付けることとしています。また、当社はBasetwo Artificail Intelligence, Inc.(ベーストゥー社)と資本業務提携を行い、ベーストゥー社が提供するAIツールを「EFEXIS Studio」としてplantOS®に実装しました。これにより、当社は専門知識を持ち合わせないプラントオーナーやオペレータに対し、自身で様々なデータ源からデータを収集、活用する環境を提供することが可能となります。

そのほか、plantOS®の構築・提供に際し各種のサービスプロバイダーとの連携を進めております。plantOS®のクラウドシステム構築では日本ビジネスシステムズ㈱との覚書を締結し、また、回転機診断のためのソリューション開発においては中山水熱工業㈱との協業を開始しております。plantOS®の中核であるデジタルツインソリューションをプラント運転・保守の領域において効果的に活用するため米国のデジタルツインコンソーシアムに加入し、既に協業を開始しているVisionaize社のV-Suiteを活用したデジタルツインソリューションの提供を開始しております。

さらに、㈱センシンロボティクスと資本業務提携関係を構築し、同社がインフラ保全領域で磨いてきた技術力を融合、ロボットやドローン、AR/VR技術を使ってデータを収集し3Dデジタルツインプラットフォームへ集約、新たな価値を生み出すソリューションの共創を開始しております。また、圧力計専業メーカーである㈱木幡計器製作所のIoTセンサ(製品名Salta®)を、plantOS®のパートナー製品として連携活用する業務提携を締結いたしました。plantOS®にSalta®を組み込むことで、従来IoT化が難しかったアナログゲージの遠隔モニタリングを可能とし、デジタルツインと連携したタイムリーなプラント状態可視化を実現します。

加えて、plantOS®提供事業の一環として、インドネシアのPT Donggi Senoro LNG(ドンギ・スノロ社)より技術サポート提供業務を受注しました。本件はドンギ・スノロ社が保有するLNGプラントにおけるエンジニアリングサービス、プロセス安全サポートなどを対象としています。当社がこれまで培ってきたコンサルティング能力や先進的なデジタル技術を活用し、プラントの安全・安定運転の実現に向けてドンギ・スノロ社に最適なソリューションを提供していきます。

PlantStream®に関しては、多くのユーザーに利用が開始され、プラントエンジニアリングを変革し、業界の発展に寄与したこと等、当社の㈱PlantStream設立意義の実現に一定の成果を上げたと判断し、2025年3月17日付で保有する㈱PlantStreamの全株式を共同出資者である㈱Arentへ譲渡しました。引き続き㈱Arent及び㈱PlantStreamとの技術提携を通じてPlantStream®の機能強化を図り、当社の初期設計や建設計画効率化をすすめていきます。

 

 

 経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項、および、それらへの対応については、3.事業等のリスクに記載しています。

 大型プロジェクトであるGPXプロジェクト及びNFEプロジェクトのほか、手持ちEPC案件を着実に遂行していくことに加え、当社を取り巻く事業環境と当社グループの強みを掛け合わせ、顧客にとっての良き事業共創パートナーを目指し、事業・技術の開発から操業まで広範囲に伴走し、多様で柔軟な事業ポートフォリオの確立に努めていきます。

また、当社グループのパーパス「社会の“かなえたい”を共創(エンジニアリング)する」を実現するための重要な基盤は、当社グループの最大の資産である人財です。組織風土と人材開発の両面から組織と人財のWell-Beingを高め、社会とステークホルダーとの価値の循環を持続し、双方の価値を高めていきながら、人的資本経営を推進していきます。収益性向上やガバナンスの強化のみならず、人的資本経営を推進することで、中長期的な企業価値の向上に努めていきます。

 

 

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

 ① 受注実績

事業部門の名称

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

受注高

受注残高

受注高

受注残高

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

<前年同期比>

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

1 エンジニアリング事業

236,975

99.8

993,878

100.0

210,637

99.7

739,857

100.0

(113,423)

<11.1%減>

(△8,312)

エネルギー

分野

(1) LNGプラント関係

48,494

20.4

708,960

71.3

34,437

16.3

486,616

65.8

(90,741)

<29.0%減>

(△6,542)

(2) その他ガス関係

1,936

0.8

4,158

0.4

34,926

16.5

34,299

4.6

(△20)

<1,704.0%増>

(△31)

(3) 石油・石油化学関係

37,402

15.8

32,214

3.2

38,185

18.1

37,014

5.0

(△1,494)

<2.1%増>

(△135)

地球環境

分野

(4) 医薬・生化学

  ・一般化学関係

89,233

37.6

98,021

9.9

26,477

12.5

87,575

11.9

(△2,793)

<70.3%減>

(△1,224)

(5) 環境・新エネルギー

  ・インフラ関係

53,675

22.6

145,055

14.6

70,121

33.2

88,267

11.9

(26,962)

<30.6%増>

(△254)

(6) その他

6,233

2.6

5,467

0.6

6,488

3.1

6,084

0.8

(27)

<4.1%増>

(△123)

2 その他の事業

569

0.2

622

0.3

(   -)

<9.3%増>

(   -)

総 合 計

237,545

100.0

993,878

100.0

211,260

100.0

739,857

100.0

(113,423)

<11.1%減>

(△8,312)

 

  なお、国内及び海外の受注高並びに受注残高の内訳は、次のとおりです。

国内外内訳

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

受注高

受注残高

受注高

受注残高

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

<前年同期比>

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

国   内

159,463

67.1

164,237

16.5

131,538

62.3

192,404

26.0

(△2,068)

<17.5%減>

(△1,570)

海   外

78,081

32.9

829,640

83.5

79,721

37.7

547,453

74.0

(115,492)

<2.1%増>

(△6,741)

合   計

237,545

100.0

993,878

100.0

211,260

100.0

739,857

100.0

(113,423)

<11.1%減>

(△8,312)

(注)  受注残高の( )内の数字は、前連結会計年度以前に受注した工事の契約変更等による減額及び外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額の合計を加味しています。

 

 ② 売上実績

事業部門の名称

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

<前年同期比>

構成比(%)

1 エンジニアリング事業

505,412

99.9

456,346

99.9

<9.7%減>

エネルギー

分野

(1) LNGプラント関係

241,931

47.7

250,239

54.8

<3.4%増>

(2) その他ガス関係

2,920

0.6

4,754

1.0

<62.8%増>

(3) 石油・石油化学関係

30,347

6.0

33,250

7.3

<9.6%増>

地球環境

分野

(4) 医薬・生化学

  ・一般化学関係

31,116

6.2

35,699

7.8

<14.7%増>

(5) 環境・新エネルギー

  ・インフラ関係

194,712

38.5

126,653

27.7

<35.0%減>

(6) その他

4,383

0.9

5,748

1.3

<31.1%増>

2 その他の事業

569

0.1

622

0.1

<9.3%増>

総 合 計

505,981

100.0

456,969

100.0

<9.7%減>

 

  なお、国内及び海外の売上実績の内訳は、次のとおりです。

国内外内訳

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

<前年同期比>

構成比(%)

国   内

85,404

16.9

101,802

22.3

<19.2%増>

海   外

420,576

83.1

355,166

77.7

<15.6%減>

合   計

505,981

100.0

456,969

100.0

<9.7%減>

  (注) 1  当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載していません。

       2  主な相手先別の売上実績及び総売上高に対する割合は次のとおりです。

前連結会計年度

当連結会計年度

 相手先

金額

(百万円)

割合

(%)

 相手先

金額

(百万円)

割合

(%)

カタールエナジー

188,383

37.2

カタールエナジー

207,154

45.3

ピーティー・フリーポート・インドネシア

172,252

34.0

ピーティー・フリーポート・インドネシア

101,286

22.2

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は2,212億38百万円となり、前連結会計年度末残高より550億29
  百万円増加しました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりです。

 

営業活動による資金収支

税金等調整前当期純利益の計上に加え、契約負債の増加などにより、当連結会計年度における営業活動による資金収支は511億75百万円のプラスとなりました。

 

投資活動による資金収支

無形固定資産及び有形固定資産の取得などにより、当連結会計年度における投資活動による資金収支は41億81百万円のマイナスとなりました。

 

財務活動による資金収支

リース債務の返済による支出などにより、当連結会計年度における財務活動による資金収支は2億98百万円のマイナスとなりました。

 

② 資金需要

当社グループの資金需要のうち主な内訳は、当社が受注した国内外のプラント建設に関わる費用、販売費及び一般管理費のほか、今後の成長戦略を支えるための投資です。販売費及び一般管理費のうち主な内訳は、従業員給与手当等の人件費のほか、業務委託費等です。当社の研究開発費は、研究開発に携わる従業員の人件費が過半を占めています。

LNGや金属、医薬品といった既存EPC分野の事業基盤を維持しながら、今後の成長戦略を支える、水素やCCSを含む脱炭素ソリューション、バイオ、先端素材、O&M-Xソリューション、エネルギーマネジメント等の新規分野の事業機会創出に向けた投資を継続して進めていきます。

 

③ 財務政策

当社グループは、資金需要に対して、内部資金還流または外部借入により資金調達する方針です。外部借入に関しては、三菱商事株式会社の子会社である三菱商事フィナンシャルサービス株式会社との間で総額100億円の借入枠を確保することで、流動性を維持しています。

上記財源を適切かつ効果的に活用し、事業ポートフォリオの革新と高収益体質への変革、サステナブルな社会の実現への貢献を進め、当社グループを安定的に運営する資金を継続して創出していきます。

 

(4) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。一般に公正妥当と認められる連結財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産及び負債の報告額や、報告対象期間中の収益及び費用の報告額に影響する判断及び見積りを行うことが要求されます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて判断及び見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。

 当社グループの見積りや判断を含む重要な会計方針は、連結財務諸表注記の「4 会計方針に関する事項」に記載しています。また、会計方針の適用において使用される当社の判断と見積りのうち、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられるものについては、連結財務諸表注記の「4 会計方針に関する事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

5【重要な契約等】

(業務提携等)

契約会社名

相手方の名称

国名

契約締結日

契約内容

千代田化工建設株式会社

(当社)

三菱商事株式会社

日本

2008年3月31日

第三者割当増資による普通株式の発行を含む資本業務提携

千代田化工建設株式会社

(当社)

三菱商事フィナンシャルサービス株式会社

日本

2019年6月28日

再生支援の枠組みとしての融資契約

(注1)

千代田化工建設株式会社

(当社)

三菱商事株式会社

日本

2019年6月27日

再生支援の枠組みとして三菱商事フィ

ナンシャルサービス㈱に対する連帯保証の契約

 

千代田化工建設株式会社

(当社)

株式会社三菱UFJ銀行

日本

2019年6月28日

再生支援の枠組みとしての融資契約

(注2)

(注)1 2024年3月28日付で融資契約を更新しています(ただし、借入限度額は変更)。詳細は、同日に公表の「三菱商事フィナンシャルサービス株式会社との融資契約の更新に関するお知らせ」をご参照ください。

 2 2024年7月24日付で融資契約を更新しています。詳細は同日に公表の「株式会社三菱UFJ銀行との融資契約に関するお知らせ」をご参照ください。

 3 「企業内容等の開示に関する内閣府令」第二号様式記載上の注意(33)h(a)により記載すべき事項のうち、改正府令の施行日(2024年4月1日)前に締結された契約については、これまで継続的に記載していた上記表中の契約を除き、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年12月22日 令和5年内閣府令第81号)附則第3条第4項の経過措置に基づき、記載を省略しております。

 

 

6【研究開発活動】

 当社は、1951年に研究施設(現 子安オフィス・リサーチパーク)を設置後、70年以上にわたり、ミッションである「エネルギーと環境の調和」を目指し、高度なエンジニアリングの技術力を通じて、それぞれの時代、或いは、将来の社会・顧客課題の解決、それを通じたビジネスの発掘とともに付加価値の増大、技術優位性の確立等に寄与する新たな技術・商品の開発を進めてきました。

 事業環境が急激に変化を遂げる中、当社は「社会の“かなえたい”を共創(エンジニアリング)する」を念頭に、エネルギーという枠を超えた領域での取組みをより一層加速させていきます。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は3,340百万円です。

 

(1) カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に向けた取組み

 (水素サプライチェーン構築)

 脱炭素社会の実現に向けた社会的要請に応えるべく、当社は様々な再生可能エネルギーに関連する取組みを

行っています。このうち、燃焼時にCO2が排出されない水素は、究極のクリーンエネルギーとしてその利用の

実現が期待されていますが、その普及には、取扱いに留意を要する水素を石油や天然ガスのように大規模に

貯蔵・輸送する技術の確立が社会的な課題となっています。

 当社は、将来の水素エネルギー社会へ対応するため、有機ケミカルハイドライドを用いて水素をガソリンの

主要成分であるトルエンに固定し、常温・常圧で取り扱いやすいメチルシクロヘキサンとして輸送/貯蔵するSPERA水素TM技術の開発を実施しています。

本技術は、日本と同様に海外からのエネルギー輸入に依存するシンガポールからも注目されており、2022年3月から、シンガポール政府からの助成金交付を得て現地大学Nanyang Technological University及びNational University of Singaporeの研究者と共に水素サプライチェーン構築のための連携プログラムを進めています。本連携プログラムにて脱水素触媒の改良に取り組んでおり、その成果検証を行うことを目的に、当社の小型脱水素装置をシンガポール港湾ターミナルに設置し、2024年6月から輸入MCHを活用した大型燃料電池車向けの水素利活用実証運転を開始しています。

 

 (アンモニア利用拡大)

 水素と同様に、燃焼時にCO2が排出されないアンモニアは、石油や天然ガスのように大規模な貯蔵・輸送する技術が既に確立されていることから、今後、火力発電所や船舶等で化石燃料の代替としての利用拡大が期待されています。しかし、既存のアンモニアの製造方法(ハーバーボッシュ法)は高温・高圧環境が必要であり、複雑な

製造設備を必要とするため、製造コストが低減しない一因となっています。

 当社は、東京電力ホールディングス㈱、㈱JERAと共同で、既存の触媒以上の高い活性を持つ新触媒をコアと

する国産技術の開発と、製造コストの低減を実現するため複雑な製造設備を要さない低温・低圧環境でのアンモニア製造プロセスの技術実証を進めており、NEDOのグリーンイノベーション基金事業に採択されています。新触媒開発においては、精力的に触媒性能向上に向けて大学・研究機関と共同で開発を進めるとともに、新触媒を活用したプロセスの開発も進めています。

 また、早期の水素社会実現のためにアンモニアから水素を取り出すアンモニア分解技術の高効率化・低コスト化が求められています。当社は、水素キャリアとしてのアンモニア利用拡大に向け、㈱JERA、㈱日本触媒と共同で既存の技術より競争力のあるアンモニア分解技術の開発を進めており、NEDOの技術開発事業に採択されています。当社では、㈱日本触媒の開発する触媒の特徴を活かせるプロセスの開発を進めています。

 

 (CCS/CCU関連)

 火力発電などから排出されるCO2の削減は、地球温暖化対策として炭素循環社会を実現するために重要であり、CO2を資源として捉えて、回収・貯蔵し、有効利用するCCS/CCUの拡大が社会から求められています。しかし、燃焼効率の高い天然ガスを使用する火力発電所から排出されるCO2は濃度が低く、既存の技術では大型・高コストな分離・回収設備が必要なことから、本格的な社会普及を実現するには、設備の小型化・低コスト化を

実現する技術の開発が必要です。

 当社は、㈱JERA、公益財団法人地球環境産業技術研究機構と共に、CO2吸収技術開発に関して、NEDOから

グリーンイノベーション基金事業の採択を受け、天然ガス火力発電所のガスタービンから排出されるCO2

分離・回収を小面積・低コストで実現するための固体吸収材をコアとする国産技術の開発に着手しました。

2022年から30年までの9年間で革新的なCO2分離・回収技術の確立を目指します。

 CO2の有効利用の方法として、NEDO事業において共同研究者である国立大学法人富山大学、日鉄エンジニア

リング㈱、日本製鉄㈱、ENEOS㈱、ハイケム㈱及び三菱商事㈱と協力して、CO2からパラキシレンを製造する触媒の改良、量産技術の開発やCO2削減効果を含めた事業性検討を進めています。2023年3月には、CO2を原料として製造した化合物から、パラキシレンを取り出すことに成功し、事業化に向けた動きを加速させています。

 また、NEDOのムーンショット型研究開発事業では、国立研究開発法人理化学研究所、古河電気工業㈱、UBE㈱、清水建設㈱、マクセル㈱、国立大学法人東京大学及び国立大学法人大阪大学と共に回収したCO2を、電気還元してオレフィンやアルコールに転換する技術開発を進めています。さらに㈱カーリット、日本化薬㈱が加わり、2027年度まで当該研究開発事業の延長が決定しています。

 

 (触媒・脱硫装置関連)

 大気汚染への対応が世界的な課題となる中、ガソリン及び軽油中の硫黄分の削減は、大気汚染物質の排出抑制に繋がり、環境負荷の低減に大きな役割を果たします。当社が開発した、水素化脱硫触媒(CT-HBT®)は、灯油・軽油の精製時に、原料油に含まれる硫黄酸化物(大気汚染や酸性雨の原因物質)を大幅に削減するものです。

当製品は国内の商業装置へ7件の納入実績を有し、顧客からも高い評価をいただいています。加えて、本触媒の担体は高機能素材として触媒以外への適用の可能性も見込まれるため、用途の検討を進めています。

 また、石炭・重油燃焼ボイラーなどの排煙から少ない消費電力で二酸化硫黄成分(SO2)を吸収することが

できるCT-121排煙脱硫プロセスは、石炭火力発電所向けに多く導入され、海外でも広くライセンスを展開して

おり、2016年にはインドの大手重工メーカーであるLarsen&Toubro社と技術供与契約を締結しました。経済成長に伴う大気汚染が深刻化し、火力発電所等から排出される硫黄酸化物の除去が社会要請となっている同地に

おいて、10件超の案件を受注しており、更なる拡大を目指しています。

 

(2) バイオ・医薬・ライフサイエンス分野に係る取組み

 ヒト細胞に培養等の加工を施して用いる細胞医薬品は、これまで有効な手段がなかった様々な疾患に対する効果が期待されている一方で、普及のためには、産業利用可能な規模での実用化に向け、製造の安定性向上やコストの低減が必要となっています。

 当社は、これらの課題に対応するため、当社子安オフィス・リサーチパーク内にラボを設置し、iPS細胞等幹細胞の品質評価・製造プロセスに関する技術開発を進めています。また、国立大学法人筑波大学と特別共同研究事業を実施しており、2020年11月には、同大学内に「つくば幹細胞ラボ(TSL)」を開設し、当分野における最先端の技術を当社事業に導入できる体制を構築しています。そして、2024年9月に同大学との共同研究の一環として同大学付属病院内に細胞培養加工施設(Cell Processing Facility)名称:「TACT(Tsukuba Advanced Cell Therapy Facility)」を設置完了しました。当社は、当該細胞培養加工施設に加え、TSL、子安オフィス・リサーチパークの合わせて3拠点を得たことで、基礎研究から製造開発支援までアカデミア・医療機関・企業が近い距離で、再生医療等製品の製造工程の条件や細胞の特性評価系を構築し、さらには治験製造レベルの製造実証に至るまでの「伴走型技術コンサルテーション」サービスの拡大を進めていきます。

 また、化石資源に依存せず、植物や微生物の生体機能を利用して有用な物質の生産を行う、バイオものづくり産業の更なる発展に貢献するため、㈱ニッピ、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人大阪大学と共同で、植物による高度修飾タンパク質の大量生産技術の開発を遂行中です。本件は、NEDOの助成事業である「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」に採択されており、従来、動物素材からの抽出が必要であった機能性タンパク質を、植物を用いてヒト生体適合型に改変したうえで、大量かつ安価に生産する技術とシステムを開発中です。また、子安オフィス・リサーチパーク内にて実証デモプラントを2025年1月末に完工し、NEDO助成事業期間が終了する2025年5月まで実証運転を実施していきます。その後は、植物によるバイオものづくりの実証基盤「植物バイオファウンドリ」として、様々な受託サービスを展開していく予定です。

 さらに、当社は、ガス・石油・環境分野で培った触媒開発・スケールアップの知見を活かし、低分子医薬品原薬・中間体開発のスピードアップと生産時の品質や作業安全性を向上とする連続生産技術の開発を行っています。また、この技術の早期社会実装を目指し、製薬企業やCDMO企業(医薬品開発製造受託機関)との委託開発事業も実施していきます。

 

(3) DX促進等による業務効率改善に向けた取組み

 (最適設計技術、安全設計技術)

 プラント建設において様々なプロセスを設計・改良するうえで、シミュレーションや解析技術は極めて重要な技術として位置付けられています。

 当社は、設計の各段階で、3次元解析(FEM解析、熱流動解析等)やプラントの起動・停止・異常時の挙動を再現するダイナミック・シミュレーションの技術を活用して、精度の高い設計を進めるほか、プラント運転の最適化、定量・定性リスク評価による安全設計、最適保全計画の策定などを行っています。

 

 (プラント設備最適配置と空間自動設計技術)

 ㈱PlantStreamが開発した空間設計システム「PlantStream®」によって、

プラント計画時にプラント設備や機器装置の最適配置を検討し、また配管や配線の配置を効率的に設計しています。これにより設計や調達の手戻りを解消し、プロジェクト全体の遂行リスクを軽減します。さらに電気、計装品や小口径配管などへ自動設計技術を適用し材料の早期拾い出しを行い、購入量の最適化や輸送コストの軽減に寄与しています。

 

 (プロジェクト遂行技術)

プラント建設における工事業務の円滑な遂行を管理する手段として、各業務を管理可能な単位で分割(パッケージ化)したうえで遂行スケジュールを策定し、各業務に必要な図面、資機材、人員等のリソースを計画・管理する手法であるAWP(Advanced Work Packaging)が一般的になりつつあります。当社は、このAWPの手法にプラントエンジニアリングの専門知識、これまでのプロジェクト遂行で得た知見及び複数のデジタルソリューションを組み込み、建設工事の上流段階である設計・調達業務を含めて図面、資機材、人員等のリソースを包括的に計画・管理する手法「Chiyoda AWP」をプラント建設の現場で実践しています。

これにより、プロジェクトの進捗状況を含む膨大なデータの可視化を実現し、工事の待機時間を減少させるとともに、不測の事態に対する工事計画の修正を早期に行うことを可能にし、サブコントラクターとの透明性のある情報共有により作業効率が明らかに向上しています。今後は「Chiyoda AWP」を規模の比較的小さいプロジェクトのマネージメントに適用できるよう手順を確立していく計画です。

 

(4) O&M(Operation & Maintenance)事業の革新に係る取組み

 (耐震診断・補強対策・老巧化対応技術)

 3次元解析やダイナミック・シミュレーションを中心とした運転最適化と設備保全技術を活かし、国内製油所・油槽所を中心とするプラント設備や燃料供給基地において、国土強靭化基本法に沿った耐震診断、補強対策検討、老朽化対応等を実施しています。今後も我が国の要となるエネルギー供給設備の強化事業に参画していきます。

 

 (EFEXIS®開発)

 解析・診断技術等、当社がこれまでに培ったプラントエンジニアリングの専門知識や知見と最新のクラウド技術、IoT技術を融合させたEFEXIS®ソリューションは、国内外の顧客プラントで導入が進んでおり、従来、熟練した操作員の知見や感覚に頼ることが多かった部分の自動化・効率化による操業中プラントの収益性向上に貢献しています。EFEXIS®FCC最適運転AIシステム(FCC AI Optimizer®)を導入した太陽石油㈱四国事業所では、重油を高温下で触媒と反応させガソリンや軽油を製造する残油流動接触分解装置(RFCC装置)の運転最適化が実現し、安定操業に寄与するなど大きな導入効果が出ています。

 また、西部石油㈱と共同で実施している、装置監視AIを活用した運転支援システム構築事業は、一般社団法人社会実装推進センターの2020年度補正産業保安高度化推進事業費補助金に採択されており、EFEXIS®の更なる展開・効果検証を推進しています。

 

(5) その他の取組み

 (宇宙関連)

 当社はエンジニアリングの技術や知見を宇宙利用の拡大に活かすことを視野に入れ、1990年代から国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)向けに、画像処理・通信装置、細胞培養実験・植物生育実験に用いる科学機器といった国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に搭載する機器設備の開発を中心に取組みを継続してきました。

 現在、JAXAとインド宇宙開発機関との国際共同ミッションとして、2025年に打ち上げを目標にしている月極域探査ミッションで使用する月探査ローバに搭載される水資源分析計や、2026年以降にアメリカ、カナダ、欧州及び日本の宇宙開発機関の協働での組立が予定されている月周回有人拠点(月探査ゲートウェイ)に設置するCO2除去装置の開発を担当しています。地球低軌道にある国際宇宙ステーションから月面に向けて事業領域の拡大を進めています。