文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、経営の基本となる考え方を示す「グループ経営理念」の下に、高品質の商品、素材、サービスを通じ、お客様に最高の利便性と快適性を提供し続ける企業として、技術基盤の向上に挑戦するとともに、資本の論理の経営を徹底し、企業価値の最大化を目指します。また、高い倫理性と公正な競争をベースとしたフェアな企業活動、タイムリーで適切な情報開示と説明責任の遂行、地球環境への積極的対応、地域社会への積極的貢献などを、グループ共通の行動指針とし徹底して実行するとともに、グループ内での情報の共有化の徹底や時々の課題解決に最適な柔構造の組織運営の徹底など、当社の良き伝統である「フラット&スピードの経営」の一層の高度化を図り、グループ全体の収益力向上、事業拡大に全力を尽くしてまいります。
(2)目標とする経営指標
企業価値の最大化を経営の最重要課題のひとつとして位置づけ、FCF(フリーキャッシュフロー)、DVA(ダイキン流経済的付加価値)、ROA(総資本利益率)、ROE(株主資本利益率)など「率の経営」指標を経営管理の重要指標として、積極的な事業展開と経営体質の強化を推進しております。特に企業価値の源泉であり、同時に全ての管理指標を向上させる総合指標としてFCFを最重視し、収益の増加、投資効率向上策にあわせて、売上債権及び在庫の徹底圧縮など運転資本面からもキャッシュフローを創出すべく取り組んでまいります。
(3)中期的な会社の経営戦略
本年6月には、2025年度を目標年度とする戦略経営計画「FUSION25」を策定しました。環境・社会課題の解決に貢献しながら事業を拡大し、成長・発展し続けることをめざし、重点戦略9テーマを掲げました。成長戦略3テーマとして「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」、既存事業強化テーマとして「北米空調事業」を設定すると同時に、経営基盤の強化に向けては「技術開発力の強化」「強靭なサプライチェーンの構築」「変革を支えるデジタル化の推進」「市場価値形成・アドボカシー活動の強化」「ダイバーシティマネジメントの深化による人材力の強化」のテーマに取り組んでまいります。
(4)企業集団の対処すべき課題
今後の世界経済については、新型コロナウイルスのワクチンの普及や各国の大型経済対策により景気拡大に転じる見通しです。大規模な財政支出を継続する中国や米国の経済拡大が先行し、時期は遅れるものの欧州、日本についても緩やかな景気回復が見込まれます。
このような状況のもと、当社グループでは2021年のグループ年頭方針を“「大きな変化」をチャンスととらえ、新たなテーマに挑戦しよう”と定め、機器単品販売にとどまらないソリューション事業の強化、ヒートポンプ式暖房・給湯機のさらなる拡販、生産地から消費地までのコールドチェーンをつなぐ低温事業の構築、空気・換気に対するニーズの高まりや地球環境・気候変動問題の解決を見据えた商品・サービスの提供、デジタルも活用した販売力・営業力の強化をはじめ、柔軟な生産・調達、品質向上、人材力強化、固定費削減や変動費コストダウンなどに取り組んでまいります。また、技術開発においては、産学連携やベンチャー企業を含む産産連携による差別化技術の獲得にも努めてまいります。
また、IEA(国際エネルギー機関)によると、新興国の発展に伴って空調需要は2050年に現在の3倍以上になると予測されております。主力事業が空調事業である当社グループにとってこれは大きな機会である一方、気候変動が世界的な課題となり「脱炭素」が求められる中、空調に伴う電力消費の抑制や化石燃料の使用低減、温室効果を有する冷媒の漏洩防止などにより、温室効果ガスの排出抑制に尽力しなければ、当社グループにとってリスクとなりかねません。このため、当社グループでは、低温暖化冷媒の開発・普及、高効率空調機の開発・普及のほか、建物全体でエネルギーを効率的に活用するソリューションの創出などにより、環境影響の低減に取り組んでおります。2018年には、2050年に向けて安心で健康な空気環境を提供しながら温室効果ガス排出実質ゼロを目指す「環境ビジョン2050」を掲げました。さらに、2019年5月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しました。気候変動を事業継続に影響を及ぼす重要課題として、事業に与えるリスク・機会を分析し、経営戦略に反映するとともに、気候変動をはじめとした社会課題の解決に貢献しながら、さらなる成長をめざします。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与え、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると経営者が認識している主なリスクは以下のとおりであります。
なお、以下に記載の内容は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 市場環境に関連するリスク
①市場環境の変化に関連するリスク
当社グループは、空調をはじめとする各事業領域において、開発・調達・生産・販売・サービスなどの事業活動をグローバルに展開し、販売網強化によるシェア向上、競争力ある商品・サービスの提供、固定費削減などにより、事業拡大と収益性向上に努めております。
しかしながら、政治・外交情勢の不安定化、貿易摩擦、景気の後退、天候不順、新型コロナウイルスをはじめとした感染症のまん延などにより、当社グループが事業展開する国・地域の市場環境が悪化した場合、事業拡大・収益性向上が計画通りに進まない可能性があります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②為替相場・資金調達環境の変動に関連するリスク
当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は高く、今後もグローバル展開の加速により、海外売上高の割合がさらに増加する見込みです。連結財務諸表の作成にあたっては、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目を円貨換算しております。従って、換算時の為替レートにより、これらの項目は、各地域の現地通貨における価値が変わらなかったとしても円貨換算後の価値が影響を受けることになります。また、部材の調達、商品やサービスについて外貨建てで取引しているものもあり、為替動向によって製造コストや売上高に影響する可能性があります。当社グループでは、これらの為替リスクを回避するため、短期的には為替予約などによりリスクヘッジを行っており、中長期的には為替変動に連動した最適調達・生産分担の構築、通貨毎の輸出入バランス化等により為替変動に左右されない体質の実現に取り組んでおります。
また、当社グループでは事業活動に必要となる資金を、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーや社債によって調達しており、経済環境が変動した際に、金融機関の貸出姿勢や資金調達市場の状況が変化し、必要な資金が調達できないリスク及び調達金利が上昇するリスクがあります。これらのリスクに備え、コミットメントラインの設定、金利スワップ等による金利の固定化などの取り組みを行っておりますが、資金調達コストが上昇し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響する可能性があります。
③有価証券の時価の変動に関連するリスク
当社グループは、戦略的観点から当社の企業価値の向上が期待できる企業の株式を保有しておりますが、株式市況の動向によっては、評価額が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響する可能性があります。
(2) 事業活動に関連するリスク
①技術・商品・サービスに関連するリスク
当社グループは、顧客価値・社会的価値の創出を目指し、常にお客様に満足頂ける技術・商品・サービスの開発に注力しております。しかしながら、当社グループの想定とは異なる新たな技術・商品・サービスの出現や、新規参入を含む競合激化などの急激な環境変化により、技術・商品戦略の修正や転換が必要となる可能性があります。
このような場合、新商品・サービスの投入や新たな事業の立ち上げが遅れ、競合他社や新規参入企業に対する優位性が低下し、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②買収・他社との提携等に関連するリスク
これまで当社グループは、事業のグローバル展開や品揃え・販売体制の強化などのために、既存の経営資源を活用した自前での成長に加えて、企業買収を活用してきました。今後、事業領域の拡大や事業構造の転換を加速させるためにも、提携・連携・M&Aを積極的に行ってまいります。案件の検討段階では、事業拡大に向けた戦略に留まらず、事業運営上のリスクについても検証を行うなど、案件の実行後には事業統合が円滑に進むように努めております。しかしながら、案件の実行後に、市場環境の悪化や、対象企業の経営資源が十分に活用できない、対象企業との連携が円滑に進まないなど、統合が計画通りに進まない可能性があります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③商品・サービスの品質と責任
当社グループでは、世界150カ国以上で事業を展開しており、現地のニーズに合致した商品・サービスの提供に努めております。また、各地域において厳格な設計審査と品質検査を実施し、品質・安全性の確保に万全を期しております。しかし、万一商品の安全性に関する問題が発生した場合には、顧客の安全を第一に考え、事故の発生や拡大を防止するため、修理・交換、新聞などでの告知、販売事業者等社外の関係者への情報開示など、製造物責任法に基づく責務を果たします。
これらの対策には多額の費用が発生する可能性があるため生産物賠償責任保険等に加入していますが、保険の補償限度額を超える場合やブランドイメージの低下により売上が減少する場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④調達に関連するリスク
当社グループでは、サプライヤーの経営状況の悪化、自然災害や事故の発生等の状況下においても、原材料や部品等が安定的かつタイムリーに、また合理的な価格で供給されることを確保するため、サプライヤーの複数化・自国・自地域内調達化、部品の共通化・標準化等の対応を進めております。しかしながら、上記のような対応が短期的には困難な場合があるほか、世界的な感染症の拡大や大規模災害などの想定を超えるような甚大な事象が発生した場合には、原材料や部品等の供給不足、納入遅延等が発生し、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループとサプライヤーは、契約により原材料や部品等の価格を決定しております。長期契約の活用など安定した価格で調達できるよう努めておりますが、急激な需給環境の変化や為替相場の変動等により、調達価格の高騰が避けられないこともあります。
このような場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤法的規制
当社グループは、世界150カ国以上で事業を展開しており、競争法・贈賄防止法・人権や労働関係法・安全規制関連法・環境規制関連法等の世界各国・各地域の法律や規制の適用を受けております。各国において、より厳格な法規制の導入や当局の法令解釈や運用指針の変更により、当社グループの事業活動が制限される可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスの徹底に向け、各種教育を実施するとともに、年1回、法令・規程どおりに日々の業務を行っているかをセルフチェックする「自己点検」を導入し、コンプライアンス意識を高めるとともに、監査を実施し、遵守状況を確認しております。
しかしながら、法令違反が生じた場合には、課徴金等の行政処分を受ける可能性があります。また、ブランドイメージの低下により売上が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥情報セキュリティ
当社グループは、事業を展開するにあたり、第三者の機密情報や顧客の個人情報を取得することがあり、また、当社独自の機密情報も扱っております。このため、ハッカーによる不正アクセスやサイバー攻撃を受け、個人情報や機密情報が外部へ流出したり、各拠点の生産ラインや物流システムが停止したりするなど、事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
これらの事象の発生を防ぐため、情報セキュリティシステムの強化、秘密表示の徹底、外部からのアクセス制限、社内規程の整備や教育研修などの対策を講じておりますが、そのような事態が生じた場合、多額の損害賠償金や制裁金の支払を要する場合があります。さらに、多大な対策費用を支払うことになり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 気候変動等環境に関連するリスク
気候変動はグローバルに取り組むべき社会課題の一つであり、当社グループは、「環境社会をリードする」とのグループ経営理念に基づいて、省エネ高効率空調機や低温暖化冷媒の開発・普及、建物全体でエネルギーを効率的に利用するソリューションの創出などにより、温室効果ガス(CO2・フロン)の排出を抑制し、気候変動の緩和に積極的に取り組んでおります。しかしながら、低炭素社会への移行に伴い、温室効果を有する冷媒ガスの使用・排出規制や省エネルギー規制がさらに強化される場合、規制に適合するために必要なコストが増加する可能性があります。また、仮にこれらへの十分な対応が困難であったり、遅れが生じた場合には、製品の販売に支障が出るなど、円滑な事業活動に影響が及ぶ可能性があります。物理的なリスクとしては、異常気象に伴う大規模災害発生時に当社グループの従業員、生産設備、システム、サプライチェーン等に被害が発生し、事業活動に大きな影響を受ける可能性があります。
また、当社グルーブでは、事業活動による環境汚染の発生を防止すべく、規制の遵守は当然のこと、より厳しい自主基準を設けるなど万全を期しております。しかしながら、当社が排出した化学物質等に起因して結果的に環境問題が発生した場合には、これに対して浄化処理、損害賠償等の対応を行う必要が生じ、そのための費用が発生する可能性があります。
以上のようなリスクの顕在化により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
(4) その他
①固定資産の減損
当社グループは、事業用の資産や企業買収の際に生じるのれんなど様々な有形・無形の固定資産を計上しており、これらの資産については、減損損失の兆候の有無を判定しております。減損の兆候があると認められる場合には、将来キャッシュ・フローの総額を見積り、減損損失の有無を判定しております。判定に必要な将来キャッシュ・フローは経営計画を基礎とし、将来の不確実性を考慮して見積っております。今後の業績変動等により減損損失を認識する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、継続的な業績のモニタリングを行っており、投資に対する回収が困難となる前に対策を講じるように努めております。
②自然災害等
当社グループは、世界中に研究開発・製造・販売・サービスの拠点を有しております。近年わが国では、地震・津波・台風・豪雨などの自然災害に見舞われております。当社では、このような自然災害に備え、各事業場で施設の耐震化を進めるほか、津波・大雨・洪水等に対する対策を進めております。また、自然災害に関する防災規程を制定し、定期的に防災訓練を実施するなどにより、自然災害による影響の極小化を図っております。しかしながら、甚大な自然災害により、当社グループの従業員・生産設備・システム等に被害が発生し、事業活動に大きな影響を受ける可能性があります。海外においても、各種の自然災害のほか、テロや暴動・戦争等によって、当社グループの事業拠点だけではなくサプライチェーンや顧客が被害を受けることも考えられ、これらにより当社グループの事業活動に障害や遅延が発生する可能性があります。
さらに、感染症の拡大が当社グループの事業にとってリスクとなっております。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、当社グループでは、従業員の健康と安全の確保を第一に感染防止対策を徹底しております。また、グローバルでの調達・生産・在庫・物流の構えの強化、需要の減少や需要者の購買行動の変化に対応したオンライン販売の促進、空気質・換気への意識の高まりを捉えた換気商材の拡販、差別化商品の開発などを重要経営課題として取り組んでおり、世界各国でワクチンの接種も進展しております。しかしながら、変異株が流行するなど、新型コロナウイルス感染症の収束時期を見通すことは困難であり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当期の世界経済は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により経済活動が停滞し、景気が大きく減速しました。一部の国では回復の動きが見られたものの、感染が再拡大した地域もあり、影響が長引いています。米国経済は、前半は個人消費の減少から景気が減速しましたが、後半からは政府の経済対策や好調なオンライン販売が消費を下支えし、景気回復に向かいつつあります。欧州経済は、活動制限の長期化により個人消費の減速が続いたものの、輸出の回復が景気を下支えしました。アジア・新興国経済は、活動制限により内需が低迷しましたが、輸出の持ち直しや財政支出により景気回復の兆しが見られました。中国経済は、いち早く経済活動が再開され、輸出の増加や情報通信、エネルギー分野での政府のインフラ投資もあり、景気回復傾向が持続しました。わが国経済は、中国向け輸出や生産活動が持ち直しつつあるものの、個人消費の低迷が景気を下押ししました。
このような事業環境のもと、当社グループでは、部門横断のプロジェクトを立ち上げ、生産・調達・販売といった事業運営面でのコロナ禍への対応に注力しました。とりわけ、空気・空間の安全・安心に対する意識の高まりを捉え、空気清浄機や換気商材などの新たな空気関連商品の開発・投入に取り組みました。また、各国で販売網・生産拠点・サプライヤーからの調達が影響を受ける中で、商品の供給体制維持に努めました。市場環境は国や地域により異なるものの、売上は住宅用空調機器を中心に回復基調を取り戻しつつあります。
さらに、当社グループでは、2020年のグループ年頭方針を「3つの協創を加速して、変化の時代を勝ち抜こう」(3つの協創:顧客との協創、外部との協創、グループ内の協創)と定め、各地域において、販売力・営業力の強化、新商品開発、柔軟な生産・調達の構え、品質向上、人材力強化、固定費削減や変動費コストダウンなどに取り組みました。
当期の経営成績については、売上高は2兆4,933億86百万円(前期比2.2%減)となりました。利益面では、営業利益は2,386億23百万円(前期比10.1%減)、経常利益は2,402億48百万円(前期比10.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,562億49百万円(前期比8.5%減)となりました。
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
① 空調・冷凍機事業
空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前期比1.5%減の2兆2,738億21百万円となりました。営業利益は、前期比5.5%減の2,231億10百万円となりました。
国内業務用空調機器の業界需要は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、店舗市場をはじめとして落ち込みました。当社グループは、換気・除菌などの空気質ニーズが高まる中、室内の温度を変えずに換気ができる高機能換気設備『ベンティエール』の新たなラインナップを発売するなど、空調機器と換気機器を組み合わせたシステムでの空気環境提案を拡大しました。また、オンラインを活用した非対面営業の展開に加え、換気・除菌を切り口とした広告宣伝による需要の喚起、顧客の悩みに直接答える「空気の相談窓口」の開設など空調メーカーとしての期待に応えるべく、市場に価値を伝える取り組みを強化しましたが、需要が減少したことなどが影響し、業務用空調機器の売上高は前期を下回りました。
国内住宅用空調機器の業界需要は、在宅時間の増加に伴う家電製品の需要拡大に加え、リモートワークなど住宅用途の変化に伴う空調機器の買い足し需要も見られ、ルームエアコン・空気清浄機ともに前期を上回りました。当社グループは、ルームエアコン『うるさらX(エックス)』や『うるるとさらら空気清浄機』をはじめ、除菌ストリーマ・無給水加湿・ルームエアコン給気換気などの独自技術を用いた高付加価値商品を次々と発売し、市場のニーズに応えました。また、新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの混乱なども見られた中、当社グループは安定的な供給体制の維持に努め、販売を拡大しました。これらの取り組みもあり、住宅用空調機器の売上高は前期を上回りました。
米州では、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、地域全体の売上高は前期を下回りました。住宅用空調機器は、天候に恵まれたことや、巣ごもり・リモートワークによる需要のプラス効果がありました。しかし、米国全域での感染拡大の影響や工場を一時的に閉鎖し、供給が逼迫した時期があったことなどにより、売上高は前期を下回りました。また、業務用空調機器は、小売業や飲食業など特定の業種におけるプロジェクトの見直し・中止などにより、売上高は前期を下回りました。大型ビル(アプライド)空調分野は、販売網強化やルーフトップ・エアハンドリングユニット(業態や部屋用途によって異なる多彩な空調ニーズに応える大型の業務用空調機器)を中心に換気商材の拡販に取り組みました。しかし、感染拡大により市場が減速したため、売上高は前期を下回りました。
中国では、市場の変化に対応した空気・換気商材の品揃えを強化するとともに、オンラインを活用した販売を展開しました。4月・5月は、販売活動制限の影響を受けましたが、7月以降は販売が回復し、年間の売上高は前期を上回りました。利益面では、固定費削減やコストダウンを推進し、高水準を維持しました。回復が早い住宅市場では、当社グループ独自の専売店「プロショップ」とインターネットを組み合わせた販売を展開し、併せてオンライン販売を強化することにより新規顧客・更新需要を取り込み、販売を拡大しました。店舗・オフィスなど需要回復が遅れている業務用小売り市場では、換気・洗浄を切り口に顧客との接点を拡大し、更新・追加需要を取り込みました。大型物件市場では、大手デベロッパーとの協業を推進し、売上高を確保しました。アプライド空調機器市場では、インフラ関連、データセンターなどの情報関連、保守・メンテナンスなどの成長分野での販売を強化しました。
アジア・オセアニアでは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う各国政府の発令により、4月は多くの国で事業活動が停止し、販売が大きく落ち込みました。しかし、5月以降は販売を強化することで制限緩和に伴う需要増加を取り込み、第4四半期(1~3月)の販売はほぼ前年同期並みに回復しました。住宅用空調機器については、事業活動の制限は残るものの、制限緩和が進み、事業活動停止期間の需要減少の反動や在宅時間増加による巣ごもり需要を取り込みました。また、事業活動の制限により家電量販店が入るショッピングモールが各国で閉鎖される中、当社グループの独自販売店ルートを通じた販売促進を行いました。業務用空調機器では、感染拡大の影響で、建設現場での労働者不足や新型コロナウイルス検査義務付けのため、市場全体で着工遅れ・工期延期が発生する厳しい状況が続きました。年間では、アジアの空調ピークシーズンである第1四半期(4~6月)での感染拡大の影響が大きく、地域全体の売上高は前期を下回りました。
欧州では、各国で新型コロナウイルス感染拡大による厳格なロックダウンの影響で、厳しい事業環境でのスタートとなりました。しかしながら、オンラインを駆使した営業・販促活動やソーシャルディスタンスを確保した状況下においても安定した域内生産・供給体制を構築しました。また、コロナ禍で顕在化したリモートワーク・巣ごもり需要や換気・除菌などの空気質への意識の高まりといった新たなニーズの取り込みなどで業績を伸ばしたことにより、地域全体の売上高は前期を上回りました。住宅用空調機器では、巣ごもり需要に加え、フランスやスペインなどでの猛暑効果で需要が急増する中、チェコやトルコの最寄り工場を活かした供給対応により、需要を最大限に取り込みました。さらに、住宅用ヒートポンプ式温水暖房機器は、各国の景気刺激策として2030年の温室効果ガス削減目標の達成に向けた欧州グリーンディールによる補助金が新設・増額されたことを追い風に、新規販売店の開発で販売網を強化し拡販しました。特に、新機種の投入効果や営業力強化により、ドイツやイタリアでは販売を大きく伸ばしました。これらの結果、住宅用空調機器全体の売上高は前期を上回りました。業務用空調機器においては、各国での度重なるロックダウンの発動の影響で、主要用途のオフィス・ホテル・レストラン・店舗向けの需要が減少しました。業績が好調な食料品販売店でも、店舗の新築や改修工事の中断・延期が発生しました。このように市場環境が厳しく、顧客・現場への訪問などの営業活動も制約される中、オンラインツールを効果的に活用した提案営業の展開などで販売を最大化しましたが、業務用空調機器の売上高は前期を下回りました。
中近東・アフリカでは、住宅用空調機器の販売は前期を上回りましたが、原油安の影響によるプロジェクト案件の減少などにより業務用空調機器の販売が低調であったため、売上高は前期を下回りました。トルコでは、住宅用空調機器・暖房機器の販売が牽引し、現地通貨での売上高は前期を上回りましたが、トルコリラ下落の影響により円貨換算後の売上高は前期並みとなりました。
フィルタ事業は、新型コロナウイルス感染拡大による影響で世界的に業務用市場が落ち込む中、空気質を訴求した高付加価値商品の拡販及び他社に先駆けた感染症対策商材を市場に投入しました。米国では住宅向けを中心に高性能フィルタの販売が好調に推移し、国内では補助金の効果もあり、陰圧機や空気清浄機の販売が拡大しました。しかしながら、欧州では業務用途のエンドユーザーへの販売がメインであることからロックダウンの影響を大きく受け、また、ガスタービン・大規模プラント等の業務用集塵システムも顧客の投資抑制があり、フィルタ事業全体の売上高は前期並みとなりました。
舶用事業は、海上コンテナ冷凍装置の販売台数増加により、売上高は前期を上回りました。
② 化学事業
化学事業セグメント合計の売上高は、前期比8.7%減の1,641億65百万円となりました。営業利益は、前期比52.2%減の113億71百万円となりました。
フッ素化学製品全体の販売は、半導体・自動車分野を含め広範囲での新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減少や、欧州ガス市場の需要の落ち込みなどにより、全般的に厳しい状況となりました。
フッ素樹脂は、世界的な半導体及び自動車関連の需要が中国市場を中心に回復基調にあるものの、上期での落ち込みの影響が大きかったことに加え、米国での建築・航空機需要の落ち込みもあり、売上高は前期を下回りました。また、フッ素ゴムについても、自動車関連分野の需要は中国市場を中心に回復してきているものの、売上高は前期を下回りました。
化成品のうち、表面防汚コーティング剤は、中国での販売が順調に推移し、売上高は前期を上回りました。また、半導体向けのエッチング剤も需要回復を捉えた拡販により、売上高は前期を上回りました。しかし、全般的に新型コロナウイルスの影響により需要が減少したこともあり、化成品全体の売上高は前期並みとなりました。
フルオロカーボンガスについては、グローバルでの販売の落ち込みの影響が大きく、ガス全体の売上高は前期を大きく下回りました。
③ その他事業
その他事業セグメント合計の売上高は、前期比9.6%減の553億99百万円となりました。営業利益は、前期比25.5%減の41億32百万円となりました。
油機部門では、産業機械用油圧機器は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う国内設備投資抑制、アジア・欧米市場の需要減少の影響により、売上高は前期を下回りました。また、建機・車両用油圧機器は、感染拡大に伴う国内・欧米市場の需要減少の影響により、売上高は前期を下回りました。
特機部門では、在宅酸素医療機器は、酸素濃縮装置の販売が堅調に推移したことに加え、新型コロナウイルス感染拡大に伴うパルスオキシメータ(採血することなく血中酸素飽和度を簡易に測定できる医療機器)の需要を取り込んだことにより販売が拡大しましたが、防衛省向けの砲弾の販売が減少したことにより、売上高は前期を下回りました。
電子システム事業では、新型コロナウイルス感染拡大に伴う投資抑制により、製造業を中心に販売している設計・開発分野向けデータベースシステム『SpaceFinder(スペースファインダー)』の販売が減少し、売上高は前期を下回りました。
総資産は、3兆2,396億62百万円となり、前連結会計年度末に比べて5,721億50百万円増加しました。
流動資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べて4,289億34百万円増加し、1兆7,333億61百万円となりました。
固定資産は、投資有価証券の時価変動による増加等により、前連結会計年度末に比べて1,432億16百万円増加し、1兆5,063億1百万円となりました。
負債は、長期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて3,362億46百万円増加し、1兆5,411億67百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて2,359億3百万円増加し、1兆6,984億95百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の53.8%から51.4%となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の4,904.46円から5,691.85円となりました。
また、有利子負債については、長期借入金の増加等により、前連結会計年度に比べて1,974億6百万円増加し、7,512億13百万円となり、有利子負債比率(有利子負債/総資産)は、20.8%から23.2%となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動では、仕入債務の増加等により、前連結会計年度に比べて725億24百万円収入が増加し、3,746億91百万円の収入となりました。投資活動では、投資有価証券の売却による収入の減少等により、前連結会計年度に比べて34億79百万円支出が増加し、1,596億66百万円の支出となりました。財務活動では、長期借入れによる収入の増加等により、前連結会計年度に比べて2,688億75百万円収入が増加し、989億42百万円の収入となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べて3,871億57百万円増加し、3,411億73百万円のキャッシュの増加となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は販売価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループの製品は、大部分見込み生産であるため、受注高及び受注残高の記載は省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 いずれの相手先についても総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合の記載を省略しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
以下に記載の内容については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の計上、当連結会計年度における収益、費用の計上については、現況や過去の実績に基づいた合理的な基準による見積りが含まれております。
なお、連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
また、新型コロナウイルス感染症の影響については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
(2) 財政状態
①資産
総資産は、3兆2,396億62百万円となり、前連結会計年度末に比べて5,721億50百万円増加しました。
流動資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べて4,289億34百万円増加し、1兆7,333億61百万円となりました。
固定資産は、投資有価証券の時価変動による増加等により、前連結会計年度末に比べて1,432億16百万円増加し、1兆5,063億1百万円となりました。
②負債及び純資産
負債は、長期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて3,362億46百万円増加し、1兆5,411億67百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて2,359億3百万円増加し、1兆6,984億95百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の53.8%から51.4%になり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の4,904.46円から5,691.85円となりました。
(3) 経営成績
①売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比2.2%減の2兆4,933億86百万円となりました。
空調・冷凍機事業では、住宅用空調機器を中心に回復基調を取り戻しつつありますが、世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたことにより、売上高は前連結会計年度比1.5%減の2兆2,738億21百万円となりました。
化学事業では、半導体・自動車分野を含め広範囲での新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減少と欧州ガス市場の需要の落ち込みなどにより売上高は前連結会計年度比8.7%減の1,641億65百万円となりました。
その他事業全体では、建機・車両用油圧機器をはじめ新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減少のため、売上高は前連結会計年度比9.6%減の553億99百万円となりました。
②営業費用、営業利益
売上原価は、前連結会計年度比2.2%減少し、1兆6,292億50百万円となりました。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度比1.0%増加し、6,255億13百万円となりました。人件費の増加が主な要因であります。
以上の結果、営業利益は前連結会計年度比10.1%減の2,386億23百万円となりました。
なお、セグメントの営業損益については、空調・冷凍機事業では、前連結会計年度比5.5%減の2,231億10百万円の営業利益となり、化学事業では、前連結会計年度比52.2%減の113億71百万円の営業利益となり、その他事業は前連結会計年度比25.5%減の41億32百万円の営業利益となりました。
③営業外損益、経常利益
営業外損益は、補助金収入が減少したこと等により、前連結会計年度に比べて18億86百万円増加幅が減少し、16億25百万円のプラスとなりました。
経常利益は、前連結会計年度比10.7%減の2,402億48百万円となりました。
④特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益
特別損益は、減損損失が減少したこと等により、前連結会計年度に比べて111億39百万円減少幅が減少し、17億5百万円のマイナスとなりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比8.5%減の1,562億49百万円となりました。
(4) キャッシュ・フロー
営業活動では、仕入債務の増加等により、前連結会計年度に比べて725億24百万円収入が増加し、3,746億91百万円の収入となりました。投資活動では、投資有価証券の売却による収入の減少等により、前連結会計年度に比べて34億79百万円支出が増加し、1,596億66百万円の支出となりました。財務活動では、長期借入れによる収入の増加等により、前連結会計年度に比べて2,688億75百万円収入が増加し、989億42百万円の収入となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べ3,871億57百万円増加し、3,411億73百万円のキャッシュの増加となりました。
当社グループでは、投資は成長の基盤と考えており、投資によって事業拡大を図るとともに、財務体質の強化、企業価値の一層の向上と株主への利益還元の向上を図ってまいります。具体的には、新製品に対応した設備投資、生産性向上・生産能力拡大のための投資などに加え、各戦略的投資を実行し、グローバルでの事業拡大及び競争力強化を図ってまいります。これらの投資に必要な資金は内部留保の蓄積を基本とした自己資金に加え、必要に応じ、金融機関からの借入や社債等で調達します。当連結会計年度では、営業活動によるキャッシュ・フロー(3,746億91百万円)が、投資活動によるキャッシュ・フロー(1,596億66百万円)を上回りました。
株主への配当は、安定的かつ継続的に実施していくことを基本に、連結純資産配当率(DOE)3.0%を維持するように努めるとともに、連結配当性向についてもさらに高い水準を目指していくことで、株主への還元の一層の拡充に取り組んでまいります。
キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息支払額を使用しております。
提出会社
(1) 合弁契約
当社グループは、世界規模での地球温暖化やエネルギー問題への関心の高まりを受け、地球環境問題に対して積極的に貢献し事業拡大するべく、テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を中心に、先端技術の研究開発に取り組んでおります。
また、当社独自のコア技術の高度化に加えて、外部との協創による技術獲得にも取り組んでおります。
2019年度には、世界のスタートアップ企業への出資や支援にまつわるコーポレートベンチャーキャピタル活動全般の役割を担う「テクノロジー・イノベーションセンターCVC室」を設立しました。
2020年度には、同志社大学との「包括的連携協力」にもとづき、温室効果ガス排出の削減に向け、両者でCO2の回収・分解・再利用技術の実用化や、空調機のさらなる高効率化に取り組みました。また、世界的な空気質ニーズの高まりを受け、換気機器向けの「透湿膜全熱交換エレメント」及び大型空調機向けの「低圧力損失エアフィルタろ材」を株式会社ダイセル様と共同で開発しました。
既に提携している東京大学や中国の清華大学、スタートアップ企業などとの産官学連携を推進し、協創することでイノベーションを生み出し、環境・社会課題の解決、事業拡大に取り組んでまいります。
グローバルに広がる研究開発基盤を活用したこれらの取り組みにより、研究開発の大幅な効率化とスピードアップを図り、グローバル各地域で差別化商品を生み出してまいります。
当連結会計年度におけるグループ全体の一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費は、
① 空調・冷凍機事業
国内空調事業においては、コロナ禍で人々の空気に対する意識が高まる中、住宅用市場では、当社独自の技術である「無給水加湿」を応用し、冷暖房を行いながら換気できるルームエアコン『うるさらX』を2019年11月に発売しました。その後、習慣化したお家での「換気」をサポートするため、「換気ができるエアコン」の機種を拡大し、2020年11月より『うるさらX』『うるさらmini』『Vシリーズ』『うるるとさらら 天井埋込カセット形 シングルフロー タイプ』『うるるとさらら床置形』を順次発売しました。
飲食店舗やオフィス等の不特定多数が利用する施設においては、「換気」「ウイルス抑制」が急務となり、業務用空調機向けに菌やウイルスを吸着する「チタンアパタイトフィルター」を2020年5月に発売しました。
また、後付け設置ができる全熱交換器ユニットの露出設置形『ベンティエール』を2020年9月に発売しました。この露出設置形『ベンティエール』は既存建物への追加設置時に発生する天井の張替工事が不要になるだけでなく、天井面や内壁、軒下など様々な設置方法ができるため、より換気機器の導入が容易になります。また、業界初となる屋外設置が可能な「屋外設置形」、天井内にスペースがない学校等への後付けに適した「天井吊形」、小空間にも対応可能な「露出設置形(150㎥/hタイプ)」の3商品を新たに開発し、2021年5月から随時発売します。
さらに、窓が無い小空間や、絶え間なく使用する会議室など、換気しにくい空間に短時間でウイルス抑制効果を発揮する『UVストリーマ空気清浄機』を2021年4月より発売予定です。本商品は、ウイルスや菌の抑制効果が高い波長265nmの深紫外線を照射するUVC LEDを旭化成株式会社様と協業し、業界で初めて空気清浄機に採用しました。
『UVストリーマ空気清浄機』は、従来の静電HEPAフィルターに抗菌剤を添着した集塵フィルター「抗菌HEPAフィルター」で捕捉したウイルスや菌に、当社独自の強力な分解力を持つ「ストリーマ」と、ウイルスや菌の抑制効果が高い265nmの深紫外線を照射して、ウイルスを30分で99%以上抑制し、菌を従来のストリーマ空気清浄機に比べ約10倍の速さで抑制します。なお、本商品は需要変動に対応し、スピーディな供給を目指すことを目的に、国内生産による供給体制を整えます。
当社は今後、「ストリーマ技術」と「UVC LED」を組み合わせた空気清浄技術を活用し、「換気」「ウイルス抑制」に役立つ機器を開発し、さらなる空気質向上に貢献できる商品を拡充してまいります。
また、住宅用市場では、在宅ワーク・自宅学習など、家にいる時間が増えた事により、エアコンが付いていない部屋に新たにエアコンを設置する需要が高まっています。この様な需要に対し、薄さと質感で部屋に馴染むデザインの壁掛形ルームエアコン『risora』と、小さな個室や廊下・洗面室など非居室向けの小空間マルチカセット形『ココタス』の新シリーズを2021年3月に発売しました。
『risora』は、新たな表情を持つ室内機の前面パネルを2種用意しました。やわらかな色合いで木の質感を感じさせるパネル「ナチュラルウッド」は、家で過ごす時間が増えた中、落ち着いた表情で部屋に溶け込みます。もう一つの新パネル「アルミニウムシルバー」は、見る角度や光の加減で表情が変わるデザインに仕上げております。
『ココタス』は従来1台の室外機で2台以上の室内機を接続するマルチタイプのエアコンでしたが、小空間の空調需要の高まりを受け、この度、1台の室外機に1台の室内機を接続するペアタイプを開発し、設置性を向上しました。
また、業務用市場では、クリニックや学習塾、保育園など加湿を求める店舗ユーザー向けに無給水加湿ユニット『うるるユニット』を2020年6月に発売しました。ルームエアコンで培った無給水加湿技術の応用で給気換気しながら加湿ができ、室内の空気質向上を実現します。2021年2月には設備用エアコン『ベルトレスタイプ』の屋外設置対応形を発売しました。室内機を屋外へ設置することで施設内のスペースを有効活用することができます。また設置工事や保守・メンテナンス時も室内に立ち入ることなく作業ができるため、工場の操業時間への影響を軽減できます。高まる換気ニーズに対しても「外気処理モード」を使用することで、室内に新たに設置スペースを設けることなく換気量を増やすことができます。
アプライド機器においては、北米では、専用外気処理システム(DOAS)の新モデルを2020年7月に上市しました。運転効率の向上により、外気取入れのエネルギー消費量を削減します。また、2020年10月には、業界最小級の室内エアハンドリングユニットを上市しました。設置自由度の高いコンパクト設計を用いながら、大型モデルと同等の機能と性能を実現しました。さらに高性能エアフィルターやコンタミ防止構造を採用することで、より良い室内空気質を提供します。
欧州では、2020年9月に、低GWP冷媒R1234zeを採用した水冷スクリューヒートポンプチラーを上市しました。当社上市済みの空冷ヒートポンプチラーとの併用により、空調のみならず、給湯用途にも対応できます。
中国では、2020年4月にモジュール式磁気軸受ターボチラーを上市しました。かつてないコンパクト性と軽量性を実現し、フォークリフトや乗用エレベーターでの運搬を可能にしました。さらに、現地での簡易施工でユニットの連結(冷房能力拡張)が可能となり、既存物件の部分更新、増設や分割投資の需要に対応します。また、2021年3月に、中小型のデータセンター向けの、サーバー冷却効率を大幅に向上できるフリークーリング機能を搭載したモジュール式スクロールチラーを上市しました。
空調・冷凍機事業に係る研究開発費は、
② 化学事業
化学事業の研究開発は、豊富なフッ素素材や多岐にわたるフッ素化学関連技術を元に新商品開発及び用途開発を行っております。
フッ素樹脂、ゴムではフッ素材料の得意とする耐熱性や耐薬品性、誘電特性などを活かし、自動車、半導体、ワイヤー&ケーブル(IT分野)などでの差別化新商品研究を行っております。フッ素の非粘着性、耐薬品性を活かしたコーティング材料開発、撥水撥油性を活かしたテキスタイル処理剤、カーペット処理剤の開発、さらには含フッ素化合物の機能性を活かした情報通信・情報端末用材料の開発や、医薬中間体の受託合成研究など、フッ素に関する幅広い研究開発を行っております。これらの開発に加え、周辺事業領域の研究開発や用途開発としてはフィルムなどの加工品や他素材との複合材料開発を、先端材料研究としてはメディカル分野、光学分野、環境分野、電池エネルギー分野などで新たな部材・デバイスビジネスの探索を進めることによってフッ素化学グローバルNo.1、オンリーワンのケミカルソリューション事業展開を目指しております。特に車載電池分野では、グローバルで連携し市場の更なる開拓に注力します。また、SDGsの観点で、様々な環境対応型商品開発を推進しております。
これらの研究開発を加速・推進するべく、化学事業部では新商品開発の確実な実行を担い、TICにおいては、化学事業につながる次世代テーマの探索を実施しております。
化学事業に係る研究開発費は、
③ その他事業
油機関連では、油圧技術とインバータ技術を融合させた商品であるハイブリッド油圧システムの特徴を活かし、従来の油圧システムではなし得ない省エネ性と高機能を実現しております。また、国内外での採用拡大に取り組む中低圧・小容量市場に加え、高圧・大容量市場への用途開発を進めております。
プレスなどの産業機械向けの『スーパーユニット』は工場の電力削減の切り札として省エネ性で高い評価を得ており、低騒音、発熱低減、タンク油量削減による作業環境改善や環境負荷低減にも寄与しております。
また、電動に匹敵する高い応答性と省エネ性を実現した成形機向けの大型システムも市場に投入し、異電圧電源対応などアジア各国、その他の地域特性に合わせた機種シリーズを拡充し、各地域での採用が進んでおり、プレスなど、他の用途でのグローバル展開、拡販も進めております。
さらに、特殊車両用の省エネシステムについても開発を進めており、車両向けの油圧ハイブリッドシステムが実機採用されております。
このように従来の油圧システムに加えて、その枠を超えた先進的な環境対応商品をグローバルに提供する商品と技術の開発を進めております。
特機関連では、主に防衛省向け砲弾・誘導弾弾頭と在宅酸素医療用機器に関する研究を行っております。
その他事業に係る研究開発費は、