文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループの使命・責任は、世界中の人に快適と安心を提供し続けることであり、経営の基本となる考え方を示す「グループ経営理念」の下、さまざまな社会課題の解決・地球環境への対応に積極的に取り組むとともに、高品質のプロダクト、素材、サービス、ソリューション、独自の技術革新の追求を通じて、お客様や社会に新たな価値を提供し続けることで、企業価値を高めてまいります。
また、高い倫理性と公正な競争をベースとした企業活動を推進し、タイムリーで透明性のある情報開示と説明責任の遂行、地域社会への積極的貢献、ビジネスパートナーとの相互成長などをグループ共通の行動指針として徹底して実行するとともに、働く人の意欲と納得性を引き出し、一人ひとりの力を組織の力へと高めていくという「人を基軸におく経営」の実践、侃々諤々の議論をベースにした「フラット&スピードの組織運営」の徹底、一人ひとりの個性を活かす「ダイバーシティ経営」の推進など、当社の良き伝統に一層の磨きをかけることで、グローバルグループとして進化し続け、持続可能で豊かな未来を切り拓いてまいります。
(2)目標とする経営指標
企業価値の最大化を経営の最重要課題の一つとして位置づけ、FCF(フリーキャッシュフロー)、ROIC(投下資本利益率)、ROA(総資本利益率)、ROE(株主資本利益率)など「率の経営」指標を経営管理の重要指標として、積極的な事業展開と経営体質の強化を推進しております。特に企業価値の源泉であり、同時に全ての管理指標を向上させる総合指標としてFCFを最重視し、収益の増加、投資効率向上策にあわせて、売上債権及び在庫の徹底圧縮など運転資本面からもキャッシュフローを創出すべく取り組んでまいります。
(3)中期的な会社の経営戦略
当社グループでは、2023年に、2025年を最終年度とする戦略経営計画「FUSION25」の後半3ヵ年計画(2023~2025年度)を策定し、実行を開始しました。成長戦略3テーマ「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」をはじめ、「FUSION25」策定当初から掲げる重点戦略9テーマに「インドの一大拠点化」「高機能・環境材料事業」を新たに加え、重点戦略11テーマの施策展開を進めることで、経済価値・環境価値・社会価値の創出に取り組んでおります。
(4)企業集団の対処すべき課題
昨年の主要国での政権交代に加えて、米国新政権による大幅な政策変更により、マクロ経済環境は先行き不透明な状況にあります。特に、関税引き上げや貿易摩擦など、サプライチェーンを寸断する動きが世界経済の下振れリスクを高めており、世界経済の不確実性が高まっています。
こうした中、当社グループは本年のグループ年頭方針を「独自の強みと実行力で、変化の波を乗り越えよう」と定めました。激しい事業環境変化が続く中、「FUSION25」の最終年度である2025年度は、後半3ヵ年計画で掲げた重点戦略11テーマの成果創出を加速させるとともに、収益力・競争力の強化、さらには将来を見据えた事業体質課題・事業構造課題の克服に取り組むことで、最大限の成果創出に邁進してまいります。2025年度の具体的なテーマは以下のとおりです。
・販売価格政策の推進と当社シェアの向上の両立
・米国新政権の関税政策に向けた対応策の構築と、状況変化に応じた迅速な実行
・新商品・差別化商品投入の加速
・グループトータルでのコスト力・調達力の抜本的強化
・グローバルでのアプライド空調事業の積極的拡大と、用途や市場ごとの付加価値提供による業務用ソリュー
ション事業の収益拡大
・既存固定費の抜本的効率化と、システム投資等の投資効果極大化
・全社最適でのグローバル生産拠点の最大活用、実行してきた買収案件の成果創出
当社グループは、経営の基本的な考え方「グループ経営理念」を前提として、戦略経営計画「FUSION」によってグループの発展の方向を5年ごとに定めるとともに、サステナビリティの重点テーマを特定しています。重点テーマのうち、とりわけ重視しているのが環境(気候変動対応)と人材(人的資本)です。
気候変動対応については、長期的視野に立ち、深刻化する地球環境課題の解決に貢献するため、2018年度に「環境ビジョン2050」を策定しました。また、2019年5月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しました。環境ビジョンを踏まえながら、戦略経営計画「FUSION」で目標・施策を立案、実行し、事業を通じた社会課題の解決に取り組むことで社会の持続可能な発展に貢献します。
また人的資本については、当社の発展・成長を担う人材をタイムリーに確保・配置・育成していくことが当社の重点課題と捉え、戦略経営計画「FUSION25」の経営基盤強化テーマの一つに「ダイバーシティマネジメントの深化による人材力強化」を定め取り組んでおります。
詳細につきましては当社ホームページにて開示しておりますサステナビリティレポートをご参照下さい。当該開示資料は以下のURLからご覧いただくことができます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(サステナビリティ共通)
サステナビリティを経営の重要課題の一つと捉え、CSR担当役員を委員長とする「CSR委員会」が、活動の方向付けと進捗管理を担っております。
「CSR委員会」では、従来のスタッフ部門であるCSR・地球環境センターに加え、関連するコーポレート部門が共同で事務局を担い、グループのサステナビリティを統括的・横断的に推進しております。環境(気候変動対応)や人材(人的資本)をはじめとした重点テーマそれぞれの担当役員を委員として年1回開催、社会動向や重点テーマの進捗状況、推進課題について共有し議論しております。委員会の決定事項は「取締役会」に報告されます。
2024年度のCSR委員会では、当社のサステナビリティ取り組みの全体像を確認した上で、世界で要請が高まるサステナビリティ情報開示に関する規制への当社の対応や、人権、サプライチェーン・マネジメント、カーボンニュートラルなどの取り組みについて議論しました。
なお、サステナビリティを含むガバナンス体制の詳細については、
当社グループは、事業を通じて社会の課題解決と持続的発展(サステナビリティ)に貢献するために新たな価値創造に向けたマネジメントを行っております。
経営の基本的な考え方「グループ経営理念」を前提として、戦略経営計画「FUSION」で、グループの発展の方向を5年ごとに定め、それに基づく全社重点戦略と定量目標・実行計画を設定し行動しております。また、2018年度には長期的視野に立ち、深刻化する地球環境課題の解決に貢献するために「環境ビジョン2050」を策定しました。環境ビジョンを踏まえながら、戦略経営計画「FUSION」で目標・施策を立案、実行し、事業を通じた社会課題の解決に取り組むことで社会の持続可能な発展に貢献します。
戦略リスクは、当社の主要な経営会議体である「最高経営会議」や「執行役員会」などで、経営幹部が審議しております。財務報告の内部統制リスク及びオペレーションリスクは、代表取締役社長兼COOを委員長とする「内部統制委員会」にて、年2回、グループのリスクマネジメントを含めた内部統制全体について、適切に機能しているか点検・確認しております。その上で、PL・品質、安全、生産・販売活動、労働慣行、災害等をはじめとするオペレーションリスクについて「企業倫理・リスクマネジメント委員会」にてグループ横断的なリスク対応策を推進・管理しております。
自社と社会の2軸で影響評価を分析した結果と戦略経営計画「FUSION25」を踏まえて、サステナビリティに関する重要なテーマについて、指標と目標を定めて推進しております。指標と目標の詳細は
(気候変動)
ガバナンス
・CSR担当役員を委員長とする「CSR委員会」で、気候変動を含めた環境に関するリスク・機会、取り組み方針、目標についての議論や実績の進捗を確認しております。
・特に気候変動は、空調事業を主力とする当社グループの重要課題であり、「カーボンニュートラルへの挑戦」を戦略経営計画「FUSION25」の成長戦略テーマの一つに位置付け、定期的に進捗を取締役会に報告しております。
戦略
・国際エネルギー機関(IEA)の論文「The Future of Cooling」などに基づき気候関連シナリオの分析を実施しております。
・空調需要は、2050年に現在の3倍以上に拡大すると予測されており、空調に伴うエネルギー規制強化や高い温室効果を有する冷媒に対する規制強化などがリスクとなり得る一方、当社グループが強みとする環境性に優れた製品・サービスを拡大する機会にもつながります。
・2050年に温室効果ガス排出実質ゼロをめざす「環境ビジョン2050」を掲げ、その実現に向けた温室効果ガス排出削減目標と主な施策を、戦略経営計画「FUSION25」で具体化しております。

・気候変動に伴うリスクと機会には、規制の強化や技術の進展、市場の変化など脱炭素社会への移行に起因するものと、急性的な異常気象や慢性的な気温上昇など気候変動の物理的な影響に起因するものが考えられます。
・当社では、気候変動に伴う様々な外部環境の変化について、その要因を「移行リスク」と「物理的リスク」に分類のうえ、当社事業への影響を評価し、重要なリスクと機会を特定しております。
<気候関連リスク・機会の特定・評価・管理プロセス>

<気候関連リスクと機会>
リスク管理
・シナリオ分析に基づき、世界各地域の事業拠点から気候関連リスクを収集し、優先度を評価して、戦略に反映すべき気候関連リスクを特定しております。
・気候関連リスクを事業戦略に大きな影響を与えるリスクの一つとして認識し、全社リスクマネジメントプロセスに統合しております。
・代表取締役社長兼COOを委員長とする「内部統制委員会」で全社リスクの管理状況について確認し、「取締役会」に報告しております。
指標及び目標
・当社は、2018年に「環境ビジョン 2050」を策定し、バリューチェーン全体で温室効果ガス排出量(Scope 1,2,3)を削減します。
・戦略経営計画「FUSION25」で、当社事業による温室効果ガス実質排出量削減目標「2019年を基準年とし、未対策のまま事業成長した場合の排出量(BAU:Business As Usual)と比べ、実質排出量(温室効果ガス排出量から排出削減貢献量を引いたものと定義)を2025年に30%以上、2030年に50%以上の削減」を設定しております。
・「科学的根拠」に基づく「温室効果ガス排出削減目標」を立てることを支援・認定する国際的イニシアティブであるSBTi(Science Based Targets initiative)より認定を取得しました。
・温室効果ガス実質排出量の実績につきましては、当社ホームページにて開示しております
https://www.daikin.co.jp/csr/report

(人的資本・多様性)
戦略
(1)人材育成の方針
・当社はグループ経営理念に「一人ひとりの成長の総和が企業の発展の基盤」と掲げ、企業の競争力の源泉は「人」であり、変革の担い手は「人」以外にあり得ないという信念を徹底して貫いてきました。
・人材育成については、「人は仕事の経験を通じて成長する」という考えのもと、一人ひとりの適性を見極めて仕事を任せチャレンジするOJTを軸とした人材育成を展開しております。そのうえで、OJTを補完するものとして、Off-JTも含めた育成の機会の充実を図っております。
・例えば、当社の戦略・事業の方向性、時代変化も踏まえ、グローバル事業の第一線で活躍できる経営幹部層を育成する「ダイキン経営幹部塾」、若手をグローバル人材として育成するための「海外拠点実践研修」、AI分野の技術開発などを担う人材を育成する「ダイキン情報技術大学」など、必要な領域ごとに対象者を選抜した多様な育成策を展開しております。さらには、各大学との連携強化を通じた人材育成と多様な専門性・経験の取り込みによる新たな価値の創造など、積極的な人材への投資を行っております。

<主な研修プログラム>
(2)社内環境整備
・世界170カ国以上で事業展開し、2024年度の海外売上高比率は83%となっております。グループ従業員約10万3千人のうち、海外従業員比率は8割を超えております。
・グローバルでの提携・連携、M&Aなどにより事業が急拡大し、当社グループを構成するメンバーや価値観が多様性を増す中、国籍・年齢・性別等に関わらず、一人ひとりの個性や強みを組織の力とするダイバーシティマネジメントは、当社の最大の強みであると考えております。
・外部環境が大きく変化する中、当社の持続的な成長・企業価値の向上を実現し続けるためには、企業活動の担い手である「人材」が今後ますます重要になります。これまで当社が実践してきたダイバーシティマネジメントにさらに磨きをかけていくとともに、目に見える属性だけではなく、多様な経歴、仕事経験、バックグラウンド、働き方、価値観などに注目し、組織の力にしていくことが不可欠であります。
そのため当社では、戦略経営計画「FUSION25」において「ダイバーシティマネジメントの深化による人材力強化」を経営基盤強化テーマの一つと定めるとともに、あらゆる層一人ひとりが挑戦・成長し、能力を発揮してより活躍し続けられる環境の実現に取り組んでおります。
・当社グループは、2024年の創業100周年の節目に、これからのさらなる成長発展を支える経営の基本となる考え方として、「グループ経営理念」の見直しを行いました。今回の新たな経営理念では、社会課題の解決や、持続可能な発展への貢献など、新たな価値の提供を目指し続ける企業姿勢を示すと同時に、当社の強み・競争力の源泉として、「人を基軸におく経営(People Centered Management)」「世界をリードする技術力」「グローバルグループ間の連携」などを継承・強化していくことを強調しています。
・また、「人を基軸におく経営」のさらなる理解と実践に向けて、当社グループ社員一人ひとりに求める行動指針「PCM Behaviors」を新たに策定し、2024年5月、国内外の従業員約2,000人が参加した100周年記念式典を皮切りに、周知展開を進めています。その翌日から4日間にわたって開催されたグループ経営会議では、国内外の経営幹部275人が参加して経営理念・PCM Behaviorsについてのディスカッションを実施し、各自の理解を深めました。その後、各拠点で経営幹部が中心となり、さらなる展開策の実行に移しています。
・例えば、技術開発のコア拠点であるテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)では、幹部から従業員に向けた説明会を実施しました。その後、改めてTICの全従業員約910人が一堂に会し、所属グループを横断した小チームに分かれ、PCM Behaviorsをどのように自身の行動に落とし込むのかを議論し、実践につなげることをめざしました。
・また経営理念・PCM Behaviorsは、英語・中国語などの計19言語に翻訳しています。海外では、各拠点で説明会を実施したうえで、独自の施策を展開しました。例えば、ダイキンアプライドアメリカズ社では、自社で制定し定着しているミッション・ビジョン・バリューに経営理念・PCM Behaviorsを融合させ、従業員が日頃から意識できる状態をめざしています。
・国内外のあらゆる拠点・職場において、従業員一人ひとりが理解し、自分ごととして捉えて実践に移していくための工夫をしています。

<あらゆる層が活躍できる環境づくり>
65歳までの定年延長及び人事・処遇制度の見直し
・当社は今後の事業拡大に向けて、カーボンニュートラルへの挑戦、ソリューション事業の推進、国内外における生産拠点の設立等、多くの挑戦テーマが目白押しの状況であり、その担い手である人材が不足しています。このような状況に対応するため、外部からのキャリア採用も拡大しておりますが、今、社内にいる人材の能力を従来以上に引き出し、活かしていくことが最も重要だと考えております。
・このような背景から、2021年に本人が希望すれば70歳まで働き続けることができるよう再雇用制度を拡充しました。さらに2024年4月1日より、定年年齢を従来の60歳から65歳へ延長するとともに、若手からベテランまで一人ひとりの挑戦・成長を加速する人事・処遇制度の見直しを進めております。
・新制度では、これまで56歳としていた管理職の役職定年を廃止するとともに、59歳以下に適用していた資格等級・評価・賃金制度を、定年の65歳まで継続して運用します。これにより賃金水準は65歳まで一貫性のある体系へと見直され、年齢で一律的に賃金が下がることのない仕組みになります。
・同時に、若手・中堅を含むあらゆる年齢層の能力成長や成果により報いることができるよう制度運用を見直し、若手優秀層の昇格の早期化や思い切った基幹職登用を進め、組織全体の活性化につなげてまいります。
・当社では2001年から年齢給・勤続給といった一律的な賃金項目を廃止しておりますが、今回の制度見直しにより、一律的な年齢要素をさらに極小化し、従来以上に多様な人材が挑戦・成長し、成果を創出する風土へとつなげていきたいと考えています。
一人ひとりの無限の可能性を引き出す人材育成・配置の実現に向けたグローバル人材データベースの構築
・当社グループの競争力の源泉・強みである「人」の力を最大限引き出していくための一つの基盤として、人材データベース「DAIKIN People」を構築し、2023年10月より国内従業員を対象に利用を開始しました。「所属」「役職」「社内歴」といった従業員一人ひとりの基本情報に加え、本人が「強みや専門性」「仕事・キャリアの考えや希望」などを記入し、それに対し上司が「育成の方向性」を記入します。さらに上司および本人が「対話記録」を記入し、情報を蓄積・更新する仕組みです。一人ひとりが持てる力をさらに発揮するためのツールとして活用し、タイムリーな人材育成・配置につなげていきます。
・また、従業員の仕事のやりがいや成長実感を把握するため、「この会社で働くことを誇りに思う」「自分の業務にやりがいを感じている」「自分の業務を通じて成長を感じている」「自分の業務は自分の強みを活かせている」という4つの質問を設定しました。2024年度は、いずれの質問に対しても7割以上の従業員がポジティブな回答をしており、とりわけ「この会社で働くことを誇りに思う」の質問については、8割以上の従業員がポジティブな回答をしています。
<質問の回答結果>対象者の90%以上が回答
※回答の「とてもそう思う」「ややそう思う」「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」のうち、「とてもそう思う」「ややそう思う」を「ポジティブな回答をした割合」として集計しています。
・同時に、部門ごとに回答の内容を分析し、人事本部と各部門が一体となり、一人ひとりの挑戦・成長意欲の醸成や働きがいの向上、組織課題の解決に向けた対策を実施しています。
・2025年度以降、グローバル関係会社への展開を開始し、グループ全体での人材把握と一人ひとりの活躍につなげていきます。
(3)当社独自の人材育成の場
・当社では、従業員が所属部門を超えて、組織横断で取り組むプロジェクトや全社イベントへの参加を推奨しています。例えば毎年8月に各製作所で開催され、多くの地域住民の方に来場いただいている納涼祭では、各製作所の従業員が実行委員・当日スタッフとして参画しています。特に実行委員は、様々な部門から集まった若手従業員が中心を担っており、企画の立案から当日の運営に向けた社内外の関係先との連携・調整を行っています。
・他にも、毎年3月に沖縄県で開催される女子プロゴルフツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」では、全社プロジェクトとして各拠点から100名以上が企画・運営に参画しています。
納涼祭の実行委員・当日スタッフ人数(堺製作所、淀川製作所、滋賀製作所、草加事業所の合計):3,350人
オーキッド参加人数:108人
・こうしたプロジェクトでは、「地域の皆様や来場者に楽しんでいただくためにはどうすればいいか」という顧客目線を徹底し、それぞれの従業員が自ら独自性ある企画を考え、実行しています。
年齢・役職を問わず専門性や思いの強い人がテーマの核となり、それ以外の関係者がサポートする「コアパーソン&サポーター」や、納得いくまでお互いの意見を出し尽くしたうえで、リーダーが衆議独裁で意思決定する「フラット&スピード」など、当社が「人を基軸におく経営」において大切にしている理念や仕事の仕方を実践することで、結果として一人ひとりが大きく成長する機会となっています。またプロジェクトを通じて培われる、組織の枠を超えたチームワークや人的ネットワーク、企画実現に向けた思考力・実行力・課題解決力などは、各職場における日々の業務でも活かされており、当社独自の人材育成として機能しています。
指標及び目標
(1)経営幹部・ビジネスリーダーの育成
・変化の激しい市場環境に対応し、さらなる成長・事業拡大を加速するためには、永年培ってきた当社の良さ、強みにさらに磨きをかけ、新たな価値創造につなげる力を身につけ、グローバル事業の第一線で活躍できる幹部人材を継続的に育成することが重要となります。
・当社では、今後のグローバルでの成長・発展を担う経営幹部・ビジネスリーダーの育成をグループ全体で実施しております。育成対象を役員、事業部長・部長クラス、課長・リーダークラスの3層に分け、それぞれ専用の育成プログラムを実施しております。同時に各地域・拠点での幹部・リーダー育成策も実施しております。

目標:幹部・リーダー育成プログラム参加人数 年間50名前後
実績:38名(2024年度実施人数)
(2)海外拠点の経営幹部への登用
・当社は、急速に海外事業を拡大する中で、現地の文化を認め、地域に密着したビジネス展開ができるよう、積極的に権限委譲を進めてきました。現地従業員の現地経営幹部への登用を積極的に進め、海外拠点の経営のグローバル化を推進してきました。2024年度、海外拠点の現地人社長の比率は42%、取締役の比率は46%にのぼります。
・今後も引き続き、現地経営幹部候補の育成を加速し、国籍に関わらず、優秀な人材を適材適所で経営幹部ポジションへ登用してまいります。
目標:現地人社長比率の維持向上
実績:過年度及び2024年度の実績は以下の通り
(3)イノベーションを創出するダイキン独自のAI・IoT人材を育成
・産業構造や社会構造の大きな変革期に対応するため、「デジタル人材」を育成する「ダイキン情報技術大学」を設立しました。大阪大学を中心とした教育機関、先端研究機関などの講師を招いて、数学などの基礎知識からプログラミング、機械学習やAI応用まで幅広い教育を行っております。
・管理職、既存社員、新入社員それぞれの育成を加速し、2024年度末にデジタル人材約1,800人の育成を達成しました。現在は2025年度末までに2,000人の育成を目標に取り組みを進めております。
・2024年度末までに2年間の教育を修了した新入社員約490人を各部門に配属し、デジタル技術を核とした新たな事業創出テーマ、業務プロセスの効率化テーマに取り組んでおります。
・当社では、当社及び国内外のグループにおける、大きな成果を創出した取り組みや、優れたイノベーション、革新的な新商品開発等を、毎年「社長表彰」として表彰しておりますが、本年の表彰案件約47件のうち、約3割の14件の取組みに情報技術大学の卒業生が参画しており、具体的な成果創出に結びつきつつあります。
デジタル人材の育成
目標:2,000人(2025年度末)
実績:約1,800人(2024年度末)
人的資本経営・多様性に関するその他の取り組みや詳細については、
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与え、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると経営者が認識している主なリスクは以下のとおりであります。
なお、以下に記載の内容は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 市場環境に関連するリスク
①市場環境の変化に関連するリスク
当社グループは、空調をはじめとする各事業領域において、開発・調達・生産・販売・サービスなどの事業活動をグローバルに展開し、販売網強化によるシェア向上、競争力ある商品・サービスの提供、固定費削減などにより、事業拡大と収益性向上に努めております。
しかしながら、政治・外交情勢の不安定化、貿易摩擦、景気の後退、天候不順、感染症のまん延などにより、当社グループが事業展開する国・地域の市場環境が悪化した場合、事業拡大・収益性向上が計画通りに進まない可能性があります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②為替相場・資金調達環境の変動に関連するリスク
当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は高く、今後もグローバル展開の加速により、海外売上高の割合がさらに増加する見込みです。連結財務諸表の作成にあたっては、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目を円貨換算しております。従って、換算時の為替レートにより、これらの項目は、各地域の現地通貨における価値が変わらなかったとしても円貨換算後の価値が影響を受けることになります。また、部材の調達、商品やサービスについて外貨建てで取引しているものもあり、為替動向によって製造コストや売上高に影響する可能性があります。当社グループでは、これらの為替リスクを回避するため、短期的には為替予約などによりリスクヘッジを行っており、中長期的には為替変動に連動した最適調達・生産分担の構築、通貨毎の輸出入バランス化等により為替変動に左右されない体質の実現に取り組んでおります。
また、当社グループでは事業活動に必要となる資金を、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーや社債によって調達しており、経済環境が変動した際に、金融機関の貸出姿勢や資金調達市場の状況が変化し、必要な資金が調達できないリスク及び調達金利が上昇するリスクがあります。これらのリスクに備え、コミットメントラインの設定、金利スワップ等による金利の固定化などの取り組みを行っておりますが、資金調達コストが上昇し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響する可能性があります。
③有価証券の時価の変動に関連するリスク
当社グループは、戦略的観点から当社の企業価値の向上が期待できる企業の株式を保有しておりますが、株式市況の動向によっては、評価額が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響する可能性があります。
(2) 事業活動に関連するリスク
①技術・商品・サービスに関連するリスク
当社グループは、顧客価値・社会的価値の創出を目指し、常にお客様に満足頂ける技術・商品・サービスの開発に注力しております。しかしながら、当社グループの想定とは異なる新たな技術・商品・サービスの出現や、新規参入を含む競合激化などの急激な環境変化により、技術・商品戦略の修正や転換が必要となる可能性があります。
このような場合、新商品・サービスの投入や新たな事業の立ち上げが遅れ、競合他社や新規参入企業に対する優位性が低下し、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②買収・他社との提携等に関連するリスク
これまで当社グループは、事業のグローバル展開や品揃え・販売体制の強化などのために、既存の経営資源を活用した自前での成長に加えて、企業買収を活用してきました。今後、事業領域の拡大や事業構造の転換を加速させるためにも、提携・連携・M&Aを積極的に行ってまいります。案件の検討段階では、事業拡大に向けた戦略に留まらず、事業運営上のリスクについても検証を行うなど、案件の実行後には事業統合が円滑に進むように努めております。しかしながら、案件の実行後に、市場環境の悪化や、対象企業の経営資源が十分に活用できない、対象企業との連携が円滑に進まないなど、統合が計画通りに進まない可能性があります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③商品・サービスの品質と責任
当社グループでは、世界170カ国以上で事業を展開しており、現地のニーズに合致した商品・サービスの提供に努めております。また、各地域において厳格な設計審査と品質検査を実施し、品質・安全性の確保に万全を期しております。しかし、万一商品の安全性に関する問題が発生した場合には、顧客の安全を第一に考え、事故の発生や拡大を防止するため、修理・交換、新聞などでの告知、販売事業者等社外の関係者への情報開示など、製造物責任法に基づく責務を果たします。
これらの対策には多額の費用が発生する可能性があるため生産物賠償責任保険等に加入していますが、保険の補償限度額を超える場合やブランドイメージの低下により売上が減少する場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④調達に関連するリスク
当社グループでは、サプライヤーの経営状況の悪化、自然災害や事故の発生等の状況下においても、原材料や部品等が安定的かつタイムリーに、また合理的な価格で供給されることを確保するため、サプライヤーの複数化・自国・自地域内調達化、部品の共通化・標準化等の対応を進めております。また、サプライチェーンCSR推進ガイドラインを策定し、サプライヤーに対して人権・環境・コンプライアンス等のCSR取り組みの実施をお願いしております。しかしながら、上記のような対応が短期的には困難な場合があるほか、世界的な感染症の拡大や大規模災害などの想定を超えるような甚大な事象が発生した場合には、原材料や部品等の供給不足、納入遅延等が発生する可能性があります。また、サプライチェーン上において労働者の権利侵害等の重大な法令違反があった場合には、発注元として当社の社会的信用が低下する可能性があります。
当社グループとサプライヤーは、契約により原材料や部品等の価格を決定しております。長期契約の活用など安定した価格で調達できるよう努めておりますが、急激な需給環境の変化や為替相場の変動等により、調達価格の高騰が避けられないこともあります。
これらの場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤法的規制
当社グループは、世界170カ国以上で事業を展開しており、競争法、贈賄防止法、個人情報保護法、デジタル・AI規制関連法、経済安全保障規制関連法、人権や労働関係法、製品・サービス安全規制関連法、環境規制関連法、サステナビリティ規制関連法等の世界各国・各地域の法律や規制の適用を受けております。各国において、より厳格な法規制の導入や当局の法令解釈や運用指針の変更により、当社グループの事業活動が制限される可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスの徹底に向け、役員・従業員一人ひとりが取るべき行動を明示した「グループ行動指針」及び「グループ人権方針」等の具体的な取り組み方針を定めております。各テーマについて教育研修を実施するとともに、年1回、法令・規程どおりに日々の業務を行っているかをセルフチェックする「自己点検」を導入し、コンプライアンス意識を高めるとともに、監査を実施し、遵守状況を確認しております。
しかしながら、法令違反が生じた場合には、課徴金等の行政処分を受ける可能性があります。また、ブランドイメージの低下により売上が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥情報セキュリティ
当社グループは、事業を展開するにあたり、第三者の機密情報や顧客の個人情報を取得することがあり、また、当社独自の機密情報も扱っております。このため、ハッカーによる不正アクセスやサイバー攻撃を受け、個人情報や機密情報が外部へ流出したり、各拠点の生産ラインや物流システムが停止したりするなど、事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのような事態が生じた場合、多額の損害賠償金や制裁金の支払を要する場合があります。さらに、多大な対策費用を支払うことになり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
これらの事象の発生を防ぐため、当社では、情報セキュリティ担当役員を委員長とする審議機関「情報セキュリティ委員会」を設置し、情報セキュリティ戦略・対策方針を審議し、情報セキュリティシステムの強化、秘密表示の徹底、外部からのアクセス制限、社内規程の整備や教育研修などの対策を講じております。同委員会で審議した重要事項や全社へ周知・徹底すべき事項は、「企業倫理・リスクマネジメント委員会」、代表取締役社長兼COOを委員長とする「内部統制委員会」へ報告するとともに、取締役会にも報告を行っております。また、海外グループ会社を含めた全社のセキュリティ管理体制を強化しております。
(3) 気候変動等環境に関連するリスク
気候変動はグローバルに取り組むべき社会課題の一つであり、当社グループは、「環境社会をリードする」とのグループ環境基本方針に基づいて、省エネ高効率空調機や低温暖化冷媒の開発・普及、建物全体でエネルギーを効率的に利用するソリューションの創出などにより、温室効果ガス(CO2・フロン)の排出を抑制し、気候変動の緩和に積極的に取り組んでおります。しかしながら、低炭素社会への移行に伴い、温室効果を有する冷媒ガスの使用・排出規制や省エネルギー規制がさらに強化される場合、規制に適合するために必要なコストが増加する可能性があります。また、仮にこれらへの十分な対応が困難であったり、遅れが生じた場合には、製品の販売に支障が出るなど、円滑な事業活動に影響が及ぶ可能性があります。物理的なリスクとしては、異常気象に伴う大規模災害発生時に当社グループの従業員、生産設備、システム、サプライチェーン等に被害が発生し、事業活動に大きな影響を受ける可能性があります。
また、当社グループでは、事業活動による環境汚染の発生を防止すべく、規制の遵守は当然のこと、より厳しい自主基準を設けるなど万全を期しております。しかしながら、当社が排出した化学物質等に起因して結果的に環境汚染問題が発生した場合には、これに対して浄化処理、損害賠償等の対応を行う必要が生じ、そのための費用が発生する可能性があります。また、社会的信用の低下が発生する可能性があります。
以上のようなリスクの顕在化により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
(4) その他
①固定資産の減損
当社グループは、事業用の資産や企業買収の際に生じるのれんなど様々な有形・無形の固定資産を計上しており、これらの資産については、減損損失の兆候の有無を判定しております。減損の兆候があると認められる場合には、将来キャッシュ・フローの総額を見積り、減損損失の有無を判定しております。判定に必要な将来キャッシュ・フローは経営計画を基礎とし、将来の不確実性を考慮して見積っております。今後の業績変動等により減損損失を認識する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、継続的な業績のモニタリングを行っており、投資に対する回収が困難となる前に対策を講じるように努めております。
②自然災害等
当社グループは、世界中に研究開発・製造・販売・サービスの拠点を有しております。近年わが国では、地震・津波・台風・豪雨などの自然災害に見舞われております。当社では、このような自然災害に備え、各事業所で施設の耐震化を進めるほか、津波・大雨・洪水等に対する対策を進めております。また、自然災害に関する防災規程を制定し、定期的に防災訓練を実施するなどにより、自然災害による影響の極小化を図っております。特に南海トラフ地震等の巨大地震時に、当社が事業継続に関して行う基本的事項を全社規程として定め、巨大地震に備えています。しかしながら、甚大な自然災害により、当社グループの従業員・生産設備・システム等に被害が発生し、事業活動に大きな影響を受ける可能性があります。海外においても、各種の自然災害のほか、テロや暴動・戦争等によって、当社グループの事業拠点だけではなくサプライチェーンや顧客が被害を受けることも考えられ、これらにより当社グループの事業活動に障害や遅延が発生する可能性があります。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当期の世界経済は、欧米を中心に厳しい局面が続きました。米国経済は、個人消費が堅調だったものの、住宅ローン金利高止まりの影響により住宅投資は低迷しました。欧州経済は、インフレ鎮静化と賃金上昇でサービス需要を中心に回復の動きが見られましたが、高金利と外需不振が経済の重石となりました。中国経済は、輸出産業が堅調だったものの、内需が伸び悩みました。日本経済は、物価高が経済を下押しする中、デジタル関連を中心に設備投資が拡大しました。アジア経済は、個人消費やインフラ投資、輸出の回復が経済を支えました。
このような事業環境のもと、当社グループは、2025年を最終年度とする戦略経営計画「FUSION25」の後半3ヵ年計画(2023~2025年度)の完遂に向けて、成長戦略3テーマ「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」をはじめとした重点戦略11テーマの施策展開を加速させ、経済価値・環境価値・社会価値の創出に取り組みました。
また、当期は、全社収益構造及び利益率の改善・向上と、グループ総合力を結集したグローバル横断での成果創出に向けて、以下のテーマに取り組みました。
(全社収益構造と利益率の改善・向上に向けたテーマ)
・ 販売価格政策の推進と当社シェアの向上の両立
・ 限界利益率の向上に向けた、グローバル横断でのコスト力強化
・ 強靭なサプライチェーンの構築に向けた、グローバルでの生産・調達・物流改革の実行
・ 既存固定費の削減と、先行投資・戦略投資の優先順位付け
・ 実行してきた買収案件・生産能力増強投資・研究開発投資の成果創出
(グローバル横断、グループトータルの総合力で大きな成果創出をめざすテーマ)
・ グローバルでのアプライド空調事業の積極的拡大と、用途や市場ごとの付加価値提供による業務用空調ソリュ
ーション事業の収益拡大
・ 差別化商品の投入、サービス力の強化、工事の省施工・省人化対応
各地域で需要が低迷するなど厳しい事業環境が続く中、これらの取り組みを徹底実行し、それぞれの地域・事業の進捗状況をきめ細かくフォローしながら、事業環境の変化に対して臨機応変に先手を打つことで、当社事業へのマイナス影響を極小化するとともに、インド・日本など堅調な地域やアプライド空調事業・業務用空調ソリューション事業など好調な事業でのさらなる販売拡大やDXを活用した業務効率化などによる収益力向上に努めました。また、収益力強化につながる生産能力増強投資や研究開発投資、販売網・サービス網の拡充に向けた投資、今後の事業展開の加速に向けた人材育成・確保等の人的投資など、中長期の成長を見据えた投資も継続しました。
当期の経営成績については、売上高は4兆7,523億35百万円(前期比8.1%増)となりました。利益面では、営業利益は4,016億69百万円(前期比2.4%増)、経常利益は3,664億46百万円(前期比3.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,647億57百万円(前期比1.7%増)となりました。
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
① 空調・冷凍機事業
空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前期比8.8%増の4兆3,845億48百万円となりました。営業利益は、前期比5.3%増の3,509億87百万円となりました。
国内空調では、業務用市場の需要は、大型再開発やオフィスビル、商業施設の新設や改修など、設備投資が増加し、前期を上回りました。また、住宅用市場の需要は、4月から平均気温が平年を上回り、記録的な猛暑と残暑による需要の拡大もあり、前期を上回りました。当社グループは、このような状況下で、業務用空調機器市場においては、高い省エネ性能の「FIVE STAR ZEAS」、個別運転ニーズに応える「machi(マチ)マルチ」、既設の冷媒配管を利用しスムーズな空調機器更新が可能な更新用ビル用マルチエアコン「VRV Q」シリーズなど、高付加価値商品を拡販し、売上高は前期を上回りました。住宅用空調機器市場においては、電気代高騰による省エネニーズの高まりと夏季シーズンでの空調機器の使用時間が大幅に増えたことを背景に、高い省エネ性の『うるさらX』を中心に省エネ提案により高付加価値商品を拡販し、売上高は前期を上回りました。
米州では、住宅用空調機器については、冷媒規制による製品切り替えにおいて価格上昇や供給懸念から現行冷媒機(R410A機)に対する駆け込み需要が増加しました。当社グループは、R410A機の増産に努めたことに加え、環境性と省エネ性に優れた低温暖化冷媒R32の新モデル機の販売加速・増産、省エネ性能の高い環境プレミアム商品『Fit(フィット)』の拡販を実行しましたが、R410A機の需要を取り込みきれず、独立系のディストリビューター(卸)への出荷が進まなかったため販売は減少しました。為替のプラス効果により、円貨換算後の売上高は前期を上回りました。アプライド空調機器については、メキシコでの新工場立ち上げ、既存工場やカスタムエアハンドリングユニットメーカーでの生産能力増強により、成長するデータセンター及び製造業市場の需要を取り込み、販売は伸長しました。また、ソリューション事業の拡大と新規買収も寄与し、売上高は前期を大きく上回りました。
中国では、不動産不況の影響により需要が大きく減速し、地域全体の売上高は前期を下回りました。利益面では、高付加価値商品の拡販、コストダウン等に取り組み、これまでの高水準を維持しました。住宅用空調機器市場では、景気が減速する中、ユーザーダイレクトのオフラインの小売販売に加え、ショールームを活用したライブ放送・Web戦略・SNSなどオンラインを組み合わせた当社グループ独自の販売活動を強化しました。また、空調・換気・ヒートポンプ床暖房・空気質センサーなどのシステム商品の販売に加え、IoTやデータ分析を活用し、顧客ごとに最適な空気質やライフスタイルに応じた提案を行うホームソリューションを強化しました。業務用空調機器市場では、カーボンニュートラル政策の推進による政府物件・工場・グリーンビル(環境性能が高まるよう配慮して設計された建物)などの市場の伸びを受け、省エネを切り口とした提案を強化しました。アプライド空調機器市場では、インフラ・半導体・医療関連など底堅い需要がある分野に資源を投入したことに加え、保守・メンテナンス事業を強化しました。
アジア・オセアニアでは、好調な経済を背景にインドでの販売が大きく伸長し、地域全体の売上高は前期を上回りました。住宅用空調機器については、販売店や消費者への販促施策の展開に加え、需要が拡大しているインドにおいて地方都市の販売店網を強化し、売上高は前期を上回りました。業務用空調機器については、景気の先行き不透明感の高まりもありプロジェクトの遅延や投資の見直しが発生する中、販売店の開発・育成により販売を拡大し、売上高は前期を上回りました。アプライド空調機器については、工場・データセンター向けの販売を拡大し、売上高は前期を上回りました。
欧州では、前年度より続いている住宅用ヒートポンプ式温水暖房機器の需要の落ち込みはあるものの、業務用空調機器の拡販により地域全体の売上高は前期を上回りました。住宅用空調機器では、需要減少に伴う流通在庫の高止まりにより販売が一時減速しましたが、イタリアや中欧等での拡販により、売上高は前期を上回りました。住宅用ヒートポンプ式温水暖房機器については、主要市場(イタリア・ドイツ・フランス等)での各国政府の補助金制度の縮小による需要減に底打ちの兆しが見られますが、いまだエンドユーザーの間では買い控えが継続しています。このような状況に対し当社グループでは、商品ラインナップ拡充に加え、販売店開発や補助金申請支援などの販売力強化に継続して取り組みましたが、売上高は前期を下回りました。一方、業務用空調機器では、好調な観光セクターを追い風に拡大するホテル・レストラン向けの需要や、オフィス・店舗の省エネニーズを着実に取り込み、売上高は前期を上回りました。アプライド空調機器では、データセンター向けの販売が拡大したこと等により、売上高は前期を上回りました。
中近東・アフリカでは、売上高は前期を大きく上回りました。サウジアラビアの政府系物件やUAEのデータセンター向けなどの業務用物件の受注増加が販売を牽引しました。トルコでは、住宅用空調機器において猛暑による需要増加や販売店支援等により販売が増加しました。
フィルタ事業では、欧州の景気減速による販売低迷、半導体市場の回復遅れを受けた中国・東南アジアでの価格競争の激化等のマイナス影響がありましたが、需要が堅調に推移したことに加え、為替のプラス効果もあり、フィルタ事業全体の売上高は前期を上回りました。米国では、自前の販売店展開による高粗利商材の拡販などにより、業務用販売が伸長したことで、販売は増加しました。欧州では、北欧地域を中心に販売が伸長したものの、自動車産業を中心に不況の影響を受け、欧州全域での販売は前期並みとなりました。アジア・中東では、東南アジアにおいて安価な製品との競争が激化し、半導体市場での販売が減速したことに加え、中国では不動産不況の長期化による需要の停滞が続いていることもあり、中東・インドを含むアジア地域全体の販売は減少しました。また、国内では、建設業界の人手不足による工期延期、半導体製造装置向けでの在庫調整が続いておりますが、拡販施策の徹底により販売は増加しました。ガスタービン・集塵機事業は、油田向け特殊フィルタの販売地域を拡大し、販売は堅調に推移しました。
舶用事業では、海上コンテナ冷凍装置、舶用エアコン・冷凍機の販売を伸ばし、売上高は前期を上回りました。
② 化学事業
化学事業セグメント合計の売上高は、前期比0.3%減の2,630億28百万円となりました。営業利益は、前期比10.4%減の461億19百万円となりました。
フッ素化学製品全体の販売は、半導体・自動車分野を中心にした広範囲での需要低迷、それに伴う流通在庫調整の動きなどがありましたが、為替のプラス効果により売上高は前期並みとなりました。
フッ素樹脂は、LAN電線分野での需要低迷や半導体装置向け材料分野での需要悪化により販売が落ち込んだものの、為替のプラス効果により売上高は前期並みとなりました。一方、フッ素ゴムについては、自動車分野等での流通在庫調整の影響により、売上高は前期を下回りました。
化成品は、表面防汚コーティング剤や半導体プロセス向けエッチング剤の需要が回復したものの、撥水撥油剤や中間機能材分野での需要悪化により、売上高は前期並みとなりました。
フルオロカーボンガスについては、需要の落ち込みと市況軟化による厳しい環境の中で、拡販と価格維持に努めた結果、売上高は前期を上回りました。
③ その他事業
その他事業セグメント合計の売上高は、前期比2.1%増の1,047億57百万円となりました。営業利益は、前期比38.1%減の45億43百万円となりました。
油機事業では、産業機械用油圧機器は、米国向けの販売が高水準を維持したものの、国内市場及び欧州市場向けの販売が減少したことにより、売上高は前期を下回りました。建機・車両用油圧機器は、国内市場及び米国市場向けの販売が減少したことにより、売上高は前期を下回りました。
特機事業では、防衛省向けの受注が増加したことに加え、酸素濃縮装置及び低酸素システム(酸素濃度をコントロールすることで、短時間で高い運動効果が得られる高地空間を再現する機器)の販売が堅調に推移したことにより、売上高は前期を上回りました。
電子システム事業では、品質課題の解決・設計開発期間の短縮・コストダウン支援といった顧客ニーズに合致した設計・開発分野向けデータベースシステム『SpaceFinder(スペースファインダー)』と『Smart Innovator(スマートイノベーター)』の拡販に取り組みましたが、大口案件の減少などにより、売上高は前期を下回りました。
総資産は、5兆1,334億16百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,531億86百万円増加しました。
流動資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,270億56百万円増加し、2兆8,536億54百万円となりました。
固定資産は、建物及び構築物の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,261億30百万円増加し、2兆2,797億61百万円となりました。
負債は、長期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて737億95百万円増加し、2兆2,667億23百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて1,793億90百万円増加し、2兆8,666億93百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の54.0%から54.6%となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の9,009.19円から9,567.14円となりました。
また、有利子負債については、長期借入金の増加等により、前連結会計年度に比べて186億61百万円増加し、9,869億円となりましたが、総資産の増加により有利子負債比率(有利子負債/総資産)は、19.8%から19.2%となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動では、仕入債務の増加等により、前連結会計年度に比べて1,148億82百万円収入が増加し、5,144億50百万円の収入となりました。投資活動では、投資有価証券の売却による収入の減少等により、前連結会計年度に比べて1,102億17百万円支出が増加し、3,374億6百万円の支出となりました。財務活動では、短期借入金の減少等により、前連結会計年度に比べて238億45百万円支出が増加し、1,534億68百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べて598億99百万円減少し、256億8百万円のキャッシュの増加となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は販売価格によっております。
当社グループの製品は、大部分見込み生産であるため、受注高及び受注残高の記載は省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 いずれの相手先についても総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合の記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
以下に記載の内容については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の計上、当連結会計年度における収益、費用の計上については、現況や過去の実績に基づいた合理的な基準による見積りが含まれております。
なお、連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 財政状態
①資産
総資産は、5兆1,334億16百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,531億86百万円増加しました。
流動資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,270億56百万円増加し、2兆8,536億54百万円となりました。
固定資産は、建物及び構築物の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,261億30百万円増加し、2兆2,797億61百万円となりました。
②負債及び純資産
負債は、長期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて737億95百万円増加し、2兆2,667億23百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて1,793億90百万円増加し、2兆8,666億93百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の54.0%から54.6%になり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の9,009.19円から9,567.14円となりました。
(3) 経営成績
①売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比8.1%増の4兆7,523億35百万円となりました。
空調・冷凍機事業では、米州で住宅用空調の販売低迷や、欧州でヒートポンプ暖房の需要減少の影響を受けましたが、アプライド空調、業務用空調など需要が好調な事業や、インド・日本など好調な地域で販売を拡大したことにより、売上高は前連結会計年度比8.8%増の4兆3,845億48百万円となりました。
化学事業では、化成品の販売拡大に努めましたが、半導体向けの需要減速や自動車・LAN電線向けの需要回復遅れの影響を受け、売上高は前連結会計年度比0.3%減の2,630億28百万円となりました。
その他事業全体では、防衛省向けの受注増加や、酸素濃縮装置及び低酸素システムの販売拡大等により、売上高は前連結会計年度比2.1%増の1,047億57百万円となりました。
②営業費用、営業利益
売上原価は、前連結会計年度比8.3%増加し、3兆1,256億46百万円となりました。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度比9.6%増加し、1兆2,250億19百万円となりました。人件費の増加が主な要因であります。
以上の結果、営業利益は前連結会計年度比2.4%増の4,016億69百万円となりました。
なお、セグメントの営業損益については、空調・冷凍機事業では、前連結会計年度比5.3%増の3,509億87百万円の営業利益となり、化学事業では、前連結会計年度比10.4%減の461億19百万円の営業利益となり、その他事業は前連結会計年度比38.1%減の45億43百万円の営業利益となりました。
③営業外損益、経常利益
営業外損益は、受取利息が増加したこと等により、前連結会計年度に比べて24億22百万円増加し、352億23百万円のマイナスとなりました。
経常利益は、前連結会計年度比3.4%増の3,664億46百万円となりました。
④特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益
特別損益は、投資有価証券売却益が減少したこと等により、前連結会計年度に比べて211億53百万円減少し、96億48百万円のプラスとなりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比1.7%増の2,647億57百万円となりました。
(4) キャッシュ・フロー
営業活動では、仕入債務の増加等により、前連結会計年度に比べて1,148億82百万円収入が増加し、5,144億50百万円の収入となりました。投資活動では、投資有価証券の売却による収入の減少等により、前連結会計年度に比べて1,102億17百万円支出が増加し、3,374億6百万円の支出となりました。財務活動では、短期借入金の減少等により、前連結会計年度に比べて238億45百万円支出が増加し、1,534億68百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べ598億99百万円減少し、256億8百万円のキャッシュの増加となりました。
当社グループでは、投資は成長の基盤と考えており、投資によって事業拡大を図るとともに、財務体質の強化、企業価値の一層の向上と株主への利益還元の向上を図ってまいります。具体的には、新製品に対応した設備投資、生産性向上・生産能力拡大のための投資などに加え、各戦略的投資を実行し、グローバルでの事業拡大及び競争力強化を図ってまいります。これらの投資に必要な資金は内部留保の蓄積を基本とした自己資金に加え、必要に応じ、金融機関からの借入や社債等で調達します。当連結会計年度では、投資活動によるキャッシュ・フロー(3,374億6百万円の支出)は、営業活動によるキャッシュ・フロー(5,144億50百万円の収入)を下回りました。
株主への配当は、安定的かつ継続的に実施していくことを基本に、連結純資産配当率(DOE)3.0%を維持するように努めるとともに、連結配当性向についてもさらに高い水準を目指していくことで、株主への還元の一層の拡充に取り組んでまいります。
キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息支払額を使用しております。
提出会社
(1) 合弁契約
(注)新会社の設立及び事業開始は、2025年上期中を予定しております。
環境・社会貢献の重要性が増し、カーボンニュートラルの動きが加速するなど、外部環境は急速に変化しています。こうした変化に対応し事業拡大を支えるために、当社グループではテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を中心に、FUSION25で掲げた成長戦略に関わる技術領域・テーマに取り組んでおります。
さらに、当社独自のコア技術の高度化に加えて、外部との協創による技術獲得にも取り組んでおります。2023年度には、同志社大学との「包括連携協定」に基づき、カーボンニュートラルに向けて、溶融塩電解によりCO2をアセチレンとして再利用可能な技術を実証しました。また、地球温暖化ガス排出のさらなる抑制に寄与すべく、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社様及び国立研究開発法人理化学研究所様と共同で、世界で初めて、レーザーによりR32冷媒の漏えいを遠隔検知する技術を開発しました。2024年度には、圧縮機・モータ・インバータなどの空調コア技術を高度化し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するべく、東京科学大学と「ダイキン空調技術協働研究拠点」を設置し、共同研究を開始しました。また、VPP(仮想発電所)プラットフォーム開発会社の株式会社Shizen Connect様及び大手電力3社と共同で、再エネ余剰電力の有効活用に向けた共同実証を実施いたしました。2025年秋以降には、トヨタ自動車株式会社様が静岡県裾野市で建設を進める「Toyota Woven City(トヨタ・ウーブン・シティ)」において、「花粉レス空間」など心身ともにより快適で健康的に過ごせる空間づくりを実現する新たな空調システムの開発に向けた実証実験を開始します。
既に提携している東京大学や大阪大学、スタートアップ企業などとの産官学連携を推進し、協創することでイノベーションを生み出し、環境・社会課題の解決、事業拡大に取り組んでまいります。
グローバルに広がる研究開発基盤を活用したこれらの取り組みにより、研究開発の大幅な効率化とスピードアップを図り、グローバル各地域で差別化商品を生み出してまいります。
当連結会計年度におけるグループ全体の一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費は、
① 空調・冷凍機事業
国内空調事業においては、暮らしや、働き方の変化に対応した安心で快適な空気環境づくりを目指しています。
住宅用市場における空調製品では、消費電力量が削減できる独自機能「節電自動」に湿度コントロール技術を活かした新制御を搭載し、温度だけでなく湿度もコントロールして節電に貢献する壁掛形ルームエアコン『うるさらX(エックス)』を2024年11月より発売しました。電気料金・物価の上昇や、夏場の気温・湿度の上昇により高まる熱中症リスクの課題解決として、安定運転時に室内が不快にならないよう温度と湿度のバランスを取りながら消費電力量を削減します。
また、感性のままに空間をデザインするブランド『The Art Line(ジ・アートライン)』を2025年1月に新設しました。第1弾として、薄さを訴求したルームエアコン『risora(リソラ)』および『加湿ストリーマ空気清浄機(70タイプ)』の正面パネルに伝統工芸品やアート作品、自然素材などのビジュアルや質感を表現した57デザインの商品を展開いたします。The Art Lineは空気質だけでなく空間をもデザインし、アートを選ぶようにエアコンを選ぶ新たな考え方を創っていきます。
他の製品では、遠くの足元まで温風を届ける「足元暖房気流」を新たに搭載した『床置形ハウジングエアコン』を2025年5月に発売いたします。通常運転時と比較して、最大約1.6倍の距離まで温風が到達し、足元の快適性を向上させています。燃料費高騰や脱炭素化を背景に、燃焼式の暖房機器からエアコンへの転換が進む中、暖房性能の高いエアコンを提供してまいります。
住宅用給湯では、『ダイキンエコキュート2025年モデル(Z型)』を2025年9月に発売いたします。湯張りスピードを従来比で約10%向上させ、湯張りにかかる時間の短縮を実現しています。また、近年のユニットバスのカラーニーズに対応するため、ブラックカラーのリモコンを新たにラインナップに追加しました。当社は、暮らしのニーズや社会のニーズに対応しながら、快適で省エネな暮らしを実現する給湯機を提供してまいります。
業務用マルチエアコン「VRV」シリーズでは、R32冷媒を使用した新機種『VRV7』シリーズを2024年11月に発売しました。R32の特性に合わせた新型熱交換器と圧縮器を採用することで省エネ性を向上するのみならず、マルチ冷媒制御ユニットによって各室内ユニット単位で冷媒を制御し個室ごとに最適な運転が可能になりました。また、施工面に関しても引き続きフレアレスジョイントを標準搭載することで高品質施工を担保、新機種から前板を上下2分割することで省施工に配慮しております。2025年4月から開始するカスタマイズ販売では改装納期を従来から大幅に短縮し、約1ヵ月で対応することで現場の進行がよりスムーズになります。今後もお客様のニーズに合わせて順次カスタマイズメニューを充実させてまいります。
アプライド商品においては、欧米を中心にグローバルで急伸しているIT企業やデータセンター運用会社等の顧客向けに、大型空冷チラーのポンプ付きオプション、フリークリングオプション機のエチレングリコールフリー(環境)対応、電気ノイズフィルタオプション対応等の機種拡充を行い対応力を強めてまいりました。2次側商品においてもデータセンター向けに自社設計の小型直動ファンを使った拡張性の高い大型ファンウォール型エアハンドリングユニットを各地域の顧客要求に応じてグローバルで提供を始めました。
成長率の高い北米地域での学校・病院等の需要に対して2024年2月に省エネ性とコンパクト性を両立した自社インバータ圧縮機搭載のルーフトップユニットのラインナップを拡充しました。換気・外気取り込みや熱回収機能などのオプションも豊富に揃え幅広い顧客要望に対応できる商品を提供しております。
環境対応を強く要求される欧州でも、小型ヒートポンプチラーを2024年12月に発売しました。
中国では、年間を通じて使われる工場用途や発電設備の冷却用に適した高効率で低GWP冷媒を使った大型2000トンターボチラーの発売を皮切りに2024年度も容量ラインナップを追加してまいりました。シリーズを通じて低振動・静音性も実現しております。
また、ソリューション事業の拡大に向けて、空調機器にとどまらず、北米で先駆けて建物全体の制御・データ収集を行うBMS(Building Management System)の開発を強化しています。グローバルで高い実績を誇る「Niagara Framework」をプラットフォームとして採用し、他社製機器も含めた統合的な制御・監視を可能にするオープンなBMSを開発しました。また、現地でのエンジニアリング作業を効率化するため、GUI設定ツールや自動構成機能を独自開発し、導入負荷を軽減し、品質の均一化を実現しています。
空調・冷凍機事業に係る研究開発費は、
② 化学事業
化学事業の研究開発は、豊富なフッ素素材や多岐にわたるフッ素化学関連技術を元に新商品開発および用途開発を行っております。
フッ素樹脂、ゴムではフッ素材料の得意とする耐熱性や耐薬品性、誘電特性などを活かし、自動車、半導体、ワイヤー&ケーブル(IT分野)などでの差別化新商品研究を行っております。また、フッ素の非粘着性、耐薬品性を活かしたコーティング材料開発、さらには含フッ素化合物の機能性を活かした情報通信・情報端末用材料の開発や、医薬中間体の受託合成研究など、フッ素に関する幅広い研究開発を行っております。
これらの開発に加え、周辺事業領域の研究開発や用途開発としては他素材との複合材料開発を、先端材料研究としてはメディカル分野、光学分野、環境分野、電池エネルギー分野などで新たな部材・デバイスビジネスの探索を進めることによってフッ素化学グローバルNo.1、オンリーワンのケミカルソリューション事業展開を目指しております。特に電気自動車分野では、グローバルで連携し、新規カーエアコン用冷媒、電池材料等で、市場の更なる開拓に注力します。
また、冷媒の回収再生などのリサイクル技術開発、長年培ったポリマー設計・重合技術を活かした、テキスタイル用、カーペット用、紙用等の撥水・撥油処理剤などフッ素を含まない材料開発も推進しております。
これらの研究開発を加速・推進するべく、化学事業部では新商品開発の確実な実行を担い、TICにおいては、化学事業につながる次世代テーマの探索を実施しております。
化学事業に係る研究開発費は、
③ その他事業
油機関連では、油圧技術とインバータ技術を融合させた商品であるハイブリッド油圧システムの特徴を活かし、従来の油圧システムではなし得ない省エネ性と高機能を実現しております。また、国内外での採用拡大に取り組む中低圧・小容量市場に加え、高圧・大容量市場への用途開発を進めております。
工作機械向けの『エコリッチ』やプレスなどの産業機械向けの『スーパーユニット』は工場の電力削減の切り札として省エネ性で高い評価を得ており、低騒音、発熱低減、タンク油量削減による作業環境改善や環境負荷低減にも寄与しております。
また、工作機械などの設備や加工品の発熱を取り去ることで機械加工精度の向上に役立つ『オイルコン』は、高精度温調・省エネ性で高い評価を得ており、グローバルでの採用拡大に取り組み、異電圧電源対応など地域特性に合わせた機種シリーズの開発を進めております。
このように従来の油圧システムに加えて、その枠を超えた先進的な環境対応商品をグローバルに提供する商品と技術の開発を進めております。
特機関連では、主に防衛省向け砲弾・誘導弾弾頭と医療・ヘルスケア機器に関する研究を行っております。医療機器については在宅酸素療法に使用する酸素濃縮装置の新機種開発、ヘルスケア機器については低酸素空間でのフィットネスを実現する低酸素発生装置の開発を行っております。
その他事業に係る研究開発費は、