文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
■ 経営理念・長期経営ビジョン
当社グループは1946年の創業以来、長きにわたって水に関わるお客様のさまざまなご要望やそれぞれの時代のニーズに応えてまいりました。昨今これまでにないほど「水」そして「環境」がクローズアップされており、産業の発展に伴う水使用量の増大や環境汚染、地球温暖化、世界規模での飲料水の不足、資源の枯渇などさまざまな課題が顕在化し、その解決が求められています。当社グループは、これまで水で培ってきた技術・サービスを駆使して、産業分野で必要とされる高度な水処理や、社会の基盤となる自然環境の保全と人々の豊かな生活に必要な水の創造など、産業・環境・生活の調和に貢献することが我々の大きな使命であると考えており、以下の経営理念及び長期経営ビジョンを掲げ経営に取り組んでおります。
当社グループを取り巻く経営環境は、米国による関税政策の見直しなどもあり引き続き不確実性の高い状況が続いておりますが、国内外において半導体を中心とする電子産業分野での活発な投資に加え、一般産業分野や社会インフラ分野でも堅調な需要が続いており、水処理エンジニアリング事業及び機能商品事業のいずれの事業においても、当社グループの業績は拡大を続けています。
特に重点分野である電子産業分野においては、生成AIの進展を背景に先端半導体の需要が拡大しており、今後も市場全体の成長が継続する見通しです。また、先端半導体需要の拡大によって電子材料など周辺分野の市場拡大も期待されますが、チップの微細化や高性能化の進展に伴い、当社がこれまで水処理で培ってきた分離精製技術を半導体製造に用いられる各種の薬液や溶剤などの高度精製に応用・展開することが期待されるなど、新たな事業分野の拡大が期待出来ます。
地域別にみると米中対立や経済安全保障への対応、各国による支援策を受け、これまで中華圏に集中していた半導体製造拠点は、米国や欧州をはじめとする地域への回帰・再配置が進むほか、韓国・インドなどの地域でも半導体市場の成長が見込まれるなど、グローバルなサプライチェーンの構造も大きく変化しています。
一方、顧客ニーズも進化しており、従来の品質やコストに加え、環境負荷の低減、人権尊重、企業統治などのESG要素を重視する傾向が強まっています。また、水処理設備の運転管理を含むアウトソーシング需要の拡大も見られ、電子産業分野に限らず、一般産業・社会インフラ・機能商品といった幅広い分野において、進化する顧客ニーズに沿った事業成長戦略が必要になっております。
また、当社グループの事業活動を支えるバリューチェーンにおいては、少子高齢化、グローバルな人材獲得競争の激化、賃金水準の上昇、働き方の多様化の進行など、労働市場の変化が加速しています。加えて、原材料価格の高騰や人手不足に伴う供給不足も継続しており、バリューチェーンにおける各機能の強化がより一層必要な状況となっております。
当社グループは中長期の経営計画である“ORGANO 2030”を策定しております。これまで“ORGANO 2030”では2030年度までに売上高2,000億円以上、売上高営業利益率15%以上、ROE 12%以上を安定的に計上できる収益構造の構築を目標として掲げてまいりました。しかしながら、電子産業分野を中心に想定を上回る成長が見られ、2030年度の目標であった営業利益300億円を2024年度に達成することとなりました。そのため、電子産業分野の成長が今後も続き、他分野における水処理需要も堅調に推移するという想定のもと、2030年度の業績目標を見直し、売上高は2,500億円、売上高営業利益率は15%を必達目標として18%以上を目指し、ROEは15%以上を維持することといたしました。この達成に向けて、当社グループは「事業成長戦略」「バリューチェーン強化」「経営基盤の拡充」の3点を重要な課題として定め、それぞれの取組みを改めて整理いたしました。なお、当社グループは持続的な企業価値の向上と収益性改善の達成状況を評価するため、ROEと売上高営業利益率を重要な指標として位置付けております。
●事業成長戦略
当社グループの主力市場である電子産業分野においては、生成AIの進展によって先端半導体が市場の成長を牽引することが予想され、それに伴い電子材料をはじめとする周辺市場の拡大も期待されております。そのため、電子産業分野は引き続き当社グループの重点分野として、同市場への展開を起点に技術革新、エリア展開を加速させ、事業拡大を目指す方針を継続してまいります。また、今後さらなる成長を実現するためには、電子産業分野への取組みと並行して、事業ポートフォリオと世界展開における地理的なポートフォリオの強化が必要であると認識しております。
事業ポートフォリオについては、当社グループが展開する水処理エンジニアリング事業及び機能商品事業のシナジーを一層強化し、顧客価値の最大化を目指すとともに、ソリューション事業を、安定収益基盤として利益を創出する領域(フィールドソリューション)と競争力確保と将来の売上貢献のための成長投資をする領域(アドバンストソリューション)に区分し、それぞれの特性に応じた戦略を講じていくことにより、成長を目指してまいります。
世界展開のポートフォリオについては、新たな展開地域である米国市場の開拓を最優先課題としつつ、中華圏での継続的な成長の確保に努め、韓国やインドといった新たな地域への展開も積極的に進めてまいります。加えて、ASEAN地域については、当社グループのサプライチェーン、エンジニアリングリソース強化を担う拠点としての位置付けも考慮しながら事業展開を進めてまいります。
これらの成長戦略の実現にあたっては、オーガニックな成長施策にとどまらず、他社との提携やM&Aなどのインオーガニックな手段についても柔軟に検討しながら、優先順位を明確化し、経営資源の戦略的な配分を図ってまいります。
●バリューチェーン強化
事業戦略を実行に移すには、それを支えるバリューチェーン上の各機能の強化が不可欠であります。生産・納入キャパシティの拡充及び業務効率化に向けたエンジニアリング体制の強化、事業戦略と連動した技術開発や知財戦略の推進による競争優位性の確立、顧客接点の強化に向けた国内外の拠点・ネットワークの再整備に取り組むことにより、施策の実行力と戦略の実現性を高めてまいります。
●経営基盤の拡充
事業成長戦略及びバリューチェーン強化を着実に実行していくうえで、それらを支える経営基盤のさらなる拡充が不可欠であります。当社グループでは、持続的な企業価値の向上を実現するため、人材・デジタル・財務・ESGといった複数の観点から戦略的な取組みを進めてまいります。
中でも、人材は最も重要な経営資源であり、要員体制の強化と人材育成を基軸に据えております。さらに、それらを最大限に活かすために、デジタル技術の活用による業務プロセスの革新を推進し、継続的に生産性の向上を図ってまいります。また、事業継続の大前提である安全確保、コンプライアンス遵守を徹底するとともに、戦略的な財務運営やESGの取組みも強化し、経営基盤の持続的な強化を進めてまいります。


経営目標
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年6月26日)において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、当社グループの事業活動の持続可能性を高めるとともに、持続可能な社会および地球環境の実現に貢献するため、中長期経営計画とサステナビリティ方針を融合し、事業活動とESGへの取り組みが連動した経営を推進いたします。
2025年3月には人権方針を策定し、また、更なるコンプライアンスの徹底とガバナンスの強化によって事業の基盤をしっかりと固め、水で培った最適化技術を持続的に発展させることで、お客様のサステナビリティや水環境の保全、地球温暖化防止に貢献する製品やサービスを提供してまいります。
●サステナビリティ委員会
当社は、当社グループのサステナビリティ経営の執行機関として、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しています。同委員会では、気候関連の取組方針を含むサステナビリティに関わる基本方針、計画、目標の策定と、施策の実施状況や進捗のモニタリングを行っています。
2024年度は5回開催し、マテリアリティ、KPI、GHG排出削減目標値等の審議を行い、施策の実施・進捗状況やKPIの実績について確認しました。
また、同委員会で審議された重要な基本方針、計画、目標等は、取締役会に上程され最終的に決定されるとともに、重要な施策やKPIの実績・進捗状況は適宜取締役会に報告しています。2024年度は2回報告が行われました。
●サステナビリティ実行会議
当社は、サステナビリティ委員会の下部組織として基本方針、計画に基づいて具体的な施策を推進するために「サステナビリティ実行会議」を設置しています。同会議では、時機に応じたサステナビリティ課題毎にワーキンググループを立ち上げ、関係する部門・グループ会社からグループ員を選任し、課題解決に向けた取組みを進めています。同会議が実施する施策の実施状況や進捗はサステナビリティ委員会に報告されます。
●リスクマネジメント委員会
サステナビリティ関連のリスクマネジメントは、サステナビリティを含む当社グループ全体のリスクマネジメントに包含されます。リスクマネジメント委員会が中核(ハブ)となり、当社グループ内から洗い出されたリスクの分析・評価を実施し、当社グループの主要なリスクを特定し、対応主管部門を決定しています。なお、当該主管部門は、特定された主要リスクのリスク対応を主導します。
●サステナビリティ関連のガバナンス体制

当社グループは、国際社会の動向や当社の事業と関係性が深い社会課題を「ステークホルダーにおける重要度」、「当社における重要度」の二つの視点から評価し、重要度の高い課題を抽出いたしました。それらの課題について取締役会を含む社内会議で議論し、その中で特に重要度の高い課題を重要課題(マテリアリティ)に特定いたしました。


特定したマテリアリティに関する取組み姿勢については、以下のとおりであります。
当社グループにおけるサステナビリティを含むリスクマネジメントは、リスクマネジメント委員会が中核(ハブ)となり、サステナビリティ委員会とも連携をとり推進しております。短中期の主要リスクはリスクマネジメント委員会が主導的に管理し、長期(~2050年)の主要リスクはサステナビリティ委員会が引き続き主導的に管理していきます。
短中期のリスクマネジメントの詳細については、「
マテリアリティに設定した指標(KPI)、2030年度目標及び2024年度の実績は以下の通りであります。
*1 SBTi(Science Based Targets initiative:科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標を立てることを企業に求めるイニシアティブ)が定める二酸化炭素排出量の算定基準。
*2 実績値の集計範囲については、従来一部のグループ会社を除いておりましたが、当連結会計年度より国内外全てのグループ会社を対象としております。この変更に伴い、基準年の総排出量の数値についても国内外全てのグループ会社を含めた数値に変更しております。
*3 休業4日以上
*4 36協定で定める上限(特別条項)の超過を意味するものではありません。
当社グループは、気候変動問題を世界共通で取り組むべき重大な課題であると同時に、当社グループの事業活動に影響を及ぼす重要な課題の一つであると認識しております。
当社グループは、気候関連開示フレームワークに沿って、気候変動が当社グループの事業に与えるリスク・機会について、気候変動が激甚化した場合と脱炭素社会が実現した場合の2つのシナリオに基づき分析を行いました。この分析を通じて明らかになったリスク・機会を、今後、経営戦略・リスクマネジメントに反映させ、その進捗を適切に開示し、世界的な共通目標であるカーボンニュートラルの実現に向けて真摯に取り組むと共に、更なる成長を目指します。
「(1) サステナビリティ全般 ②ガバナンス」をご参照ください。
当社グループでは、1.5℃シナリオ(WEO2023 NZE:国際エネルギー機関(IEA)等を参照)と、4℃シナリオ(RCP8.5:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等を参照)に基づいてシナリオ分析を行いました。両シナリオについてリスク・機会を抽出し、各項目に対して財務影響度の評価を行い、重要かつ現時点で具体的な影響が予測可能なリスク・機会について財務影響の定量化試算を実施しました。リスクについては当社の対象年度利益に対する影響度を評価する一方で、機会に関する当社業績への具体的な影響度は今後の事業計画の検討を通じて検討する方針です。2024年度の分析は対象範囲を前年度より拡大し、国内外のグループ会社(一部のグループ会社を除く)も含めております。
1.5℃シナリオにおけるリスクと機会
発現時期:中期(2030年)、長期(2050年)
4℃シナリオにおけるリスクと機会
注:投資CF影響であるため、税引前利益に対する財務影響度評価からは除外
発現時期:中期(2030年)、長期(2050年)
1.5℃シナリオによる2030年度の主要な財務影響
・炭素税・GHG排出量規制の導入に伴う自社の炭素税負担、及びサプライヤー等の炭素税負担による調達コストや自社の製造設備費用の発生により、2030年度の税引前利益ベースで5億円強のコスト増加影響を見込んでいます。更に、電源構成の変化(再エネ・新燃料)による電気料金上昇や廃棄物処理コストの増加により、2030年度の税引前利益ベースで3億円弱のコスト増加影響を予想しています。
・1.5℃シナリオの世界では、EV推進や社会のスマート化に伴う半導体需要の増大が期待されることから、水回収プラントや薬品などの製品・サービスによる事業成長の機会は大きいと予想しています。
4℃シナリオによる2050年度の主要な財務影響
・4℃シナリオの世界では、当社のエンジニアリング業務における屋外作業人員の生産性が低下することにより、2050年度にはグループで8億円弱の外注人件費増加が見込まれます。
・当社の東南アジア拠点では、以前よりBCPの観点から機械設備・棚卸資産等に対しては水害を含む損害保険を手当てする等の対応を進めております。このため、現時点で認識している自然災害の激甚化等に伴う財務影響は限定的であると認識しております。
③ リスク管理
サステナビリティ委員会の監督の下、サステナビリティ実行会議が立ち上げた気候関連シナリオ分析ワーキンググループでは、国内外のグループ会社を含めて対象範囲を広げ、シナリオ分析を行いました。気候変動による将来の事業に対するリスクと機会を抽出し、財務影響の定量化分析を行いました。ワーキンググループで検討したリスクと機会の財務影響について、サステナビリティ委員会で重要度と顕在化可能性、影響を受ける時間軸等の観点から分析、評価を行い、主要なリスクを定量化しました。
当社グループにおけるサステナビリティを含むリスクマネジメントは、リスクマネジメント委員会が中核(ハブ)となり、サステナビリティ委員会とも連携をとり推進しております。短中期の主要リスクはリスクマネジメント委員会が主導的に管理し、長期(~2050年)の主要リスクはサステナビリティ委員会が引き続き主導的に管理していきます。
特定された気候関連の中長期の主要リスクへの対応については、長期経営計画推進会議で対応の方向性を決定したうえで、中期経営計画及び単年度の利益計画に反映し、計画は経営会議で審議のうえ、取締役会で決定します。気候関連の中長期のリスク対応の実施状況・進捗については、サステナビリティ実行会議からサステナビリティ委員会に報告がなされ、適宜取締役会に報告がなされます。
なお、これらのリスク・機会への対応として、多額の費用の支出、資産の取得・処分を実施する場合は、内容と金額の規模に応じて経営会議及び取締役会への付議の対象としています。
当社グループは、気候変動問題を世界共通で取り組むべき重大な課題と認識しており、持続可能な社会の実現に向けて、以下の通りGHG排出量の削減目標を設定し、削減に向けた取り組みを行っています。2024年度のScope1・2は、2021年度比で38%削減となりました。削減の主な要因は再生可能エネルギー由来電力の段階的な導入です。2024年度のScope3は、2021年度比で26%増加しました。
今後も継続して排出量削減に向けた取組を順次実施していきます。また、当社グループの各拠点での再生可能エネルギー導入を進める削減の取り組みを推進するとともに、達成状況の評価を行ってまいります。
(注) 実績値の集計範囲については、従来一部のグループ会社を除いておりましたが、当連結会計年度より国内外全てのグループ会社を対象としております。この変更に伴い、基準年の総排出量の数値についても国内外全てのグループ会社を含めた数値に変更しております。
当社グループは「オルガノグループ企業行動指針」において、「一人一人がその能力を発揮できる快適な職場をつくる」ことを掲げ、一人ひとりの人権、多様性、個性を尊重し、国籍、性別、信条、身体的条件、または社会的身分などによる差別を行わないことを定めています。
その上で、多様な価値観や専門性からイノベーションが生み出されることを共通認識とし、この実現に向けて、環境整備や社員の意識醸成、組織文化醸成に関わる様々な取り組みを推進しています。女性管理職の比率向上により意思決定の多様性を拡げると共に、育児や介護、健康課題等と仕事の両立、障がい者雇用、グローバル人材活用、シニア人材の活用といった諸施策に取り組んでいます。
(人材の育成方針及びその状況)
当社は一人ひとり多様な個性や経験を有する従業員の自律的な成長を支援する為、従業員のスキルの可視化を目的としたスキルマップの構築を進めています。研修体系には従来型のキャリアアップに備えた階層別研修に加え、スキルの可視化で顕在化した補強テーマを従業員自身が自律的に選択する選択型研修を備えています。特に近年はグローバル経営を担う従業員のグローバルスキルとDXに備えたデジタルスキルの取得が急務になっており、グローバル人材育成研修とデジタル人材育成研修を整備・強化しています。また、従業員の自己啓発を援助する制度として資格取得支援制度やオンラインによる外国語研修、オルガノ大学とネーミングした通信教育受講制度など、さまざまな教育の機会を提供しており、その中で、当社グループとして海外現地法人と本社との間の人的交流などのダイバーシティ&インクルージョンを目的とした取組も推進しています。
(社内環境整備方針及びその状況)
当社は、多様な価値観や専門性を有する従業員一人一人が、能力を発揮し、成長を実感できる環境構築を目指しています。男性社員が中心であった施工管理担当部署へ女性社員の配属、外国籍社員への日本語教育の充実化、社員食堂の配慮や祈祷室の設置等の取り組みを行っております。
2024年度より、全従業員向けに「女性の健康」に関する理解を深めるための健康教育を開始しました。今後も全ての従業員が心身ともに健康で働きがいを感じながら活躍できるように環境整備を進めて参ります。
また、当社は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づき、女性採用率や継続雇用率などの項目において一定基準を満たしており、女性の活躍推進に関する状況などが優良な企業が受けることができる「えるぼし(三ツ星)」を2017年より継続して認定を受けております。
2025年3月末現在の当社及び国内連結子会社における外国籍社員の管理職は1名となりますが、当社グループには一定数の外国籍社員が在籍しており、国籍に関係なく公正、公平に能力で評価し、管理職登用を行う考え方に基づき、今後管理職に登用していく見込みです。また、グローバルでの人材活用の視点から海外子会社における現地採用人材の幹部登用など、当社における外国籍社員の管理職登用にとどまらず当社グループ全体で取組みを進めてまいります。
中途採用者は、管理職・非管理職を問わず当社が求める人材を毎年一定数採用しており、今後も採用を継続してまいります。なお2024年度の当社及び国内連結子会社における中途採用者は124名となっております。
(人的資本投資)
当社の競争力の源泉は、幅広い産業分野や社会基盤を支える事業で長年培ってきた当社固有のスキル(=技術、知識、経験)を身につけた社員と、スキルを効果的に発揮するための組織であり、それらを強化することが人的資本投資の要となります。そのため、当社では社員一人ひとりが活力と働きがいをもって仕事をする結果、当社グループが成長し、個人も成長するという考えのもと、在宅勤務制度やスーパーフレックス制度など働き方を支援する諸制度の充実、一人あたり研修費用の増大方針の設定、求められる人材要件とのマッチングを定量的に把握するためのスキルマップの導入、経験者採用による要員増大、女性管理職や外国籍社員の活用、エンゲージメントサーベイの人事施策への反映といった人的資本の投資拡大に努めております。
中でも人材育成強化の施策としては、従来型の階層別研修に加え、全社員がアセスメントをきっかけに自律的に始める選択型研修、ビジネスの変革や創出が出来る人材育成を目的としたデジタル人材の育成制度、将来の経営層育成に向けて管理職から選抜した社員に対する重点的な教育投資、高度な専門能力体系をもった社員をエキスパート職として処遇する制度、挑戦する風土の醸成のため業務改善を実現した部門に対して業務改善表彰制度の導入をしております。また、能力開発や学ぶ意欲、挑戦に対する支援を拡大するために、資格取得支援制度を拡充し、2024年度にはキャリア相談窓口の開設をしております。そしてエンゲージメントの強化に向けては1on1を導入し、上司と部下の人間関係強化を実施しており、人事異動(ローテーション)を推進することで経験と知による挑戦と変革を実現する取り組みを推進しております。
当社グループでは、人材の多様性確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。なお、以下の一部の指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体例な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社で行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績の内一部のものは、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社と国内連結子会社を含むものを記載しております。
(注) 36協定で定める上限(特別条項)の超過を意味するものではありません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年6月26日)において当社グループが判断したものであります。
<リスク管理プロセス>
当社では主要なリスクを適切に管理するためにリスクマネジメント委員会を設置し、同委員会が中心となってリスクマネジメントを推進していく体制をとっております。なお、同委員会は業務執行取締役及び役付執行役員並びに主要リスク主管部門の部門長及び子会社の社長の中から選任された者で構成されております。
当社グループでは、リスクごとにリスク対策の方向性が大きく異なることから、リスクをリスク起因(内部要因・外部要因)と経験(新規性が高い・反復的)を軸とした4象限に区分しております。
各部署・各グループ会社は毎年リスクを洗い出し、戦略リスクは「影響度」と「不確実性」、オペレーショナルリスクは「影響度」と「顕在化可能性」の2つの評価軸に基づいて評価を行います。リスクマネジメント委員会は、一定以上の評価結果となったリスクを抽出しそれらを統合・評価した上で主要なリスクの候補を抽出するとともに、主要なリスクごとにリスク対応の主管部門を選定します。抽出された主要なリスク及びその主管部門は取締役会にて議論した上で決定されます。
(リスクの4象限)

(リスク評価のイメージ図)

リスク対応の主管部門はリスク管理計画を策定し、リスクマネジメント委員会が当該計画を決議します。決定した管理計画は主管部門の主導で実行し、リスクマネジメント委員会で状況をモニタリングします。リスクマネジメント委員会が取締役会へリスク管理計画の進捗状況を報告することで、取締役会はリスク対応の進捗状況を監督いたします。
また、監査室が独立した立場からリスク管理プロセスの運用状況について内部監査を実施することにより、リスク管理の有効性を高めます。
以下の主要リスクの記載順は各象限内の重要性を反映しており、有価証券報告書提出日現在(2025年6月26日)における認識です。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、台湾、中国、東南アジア等を中心に海外での事業活動を展開しており、中長期の経営計画である“ORGANO 2030”では2021年度に進出した北米での事業拡大を狙うなどグローバルな事業展開を進めております。しかしながら、海外市場においては予期しない政治・経済の混乱や為替の変動、進出先の法規制や商習慣への対応などのリスクが内在しております。近年では第2次トランプ政権による関税政策の影響により、輸出入への規制強化や自国での半導体製造拡大などサプライチェーンへの影響や、世界的な半導体製造拠点である台湾をめぐる緊張の高まりなど、当社グループの重点地域においても地政学的なリスクが高まっております。特に、台湾有事のリスクについては、軍事侵攻時だけではなく、中台関係・米中対立の先鋭化によっても当社グループの事業活動の制限が想定され、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、直近では米国による関税政策の影響もあり、半導体市場の先行きに対する不透明感が強まっております。このため、電子産業分野のプラント事業においては、市況や景気動向によって設備投資の時期や規模が変動することで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。一方、一般産業や電力・上下水分野、ソリューション事業や機能商品事業については、市況の影響を受けにくく、収益性の高い事業であると認識しており、市況が悪化する局面においても安定的な収益基盤として期待できます。また、当社グループのビジネスはいわゆる地産地消型が中心であり、全体の取引に占めるクロスボーダーの取引の割合は限定的であることから、現時点では関税率の引き上げの直接的な影響は軽微にとどまると想定しております。プロジェクトによっては、顧客の要求や仕様等に基づき、材料や設備のモジュールユニットなどの輸入量が大きくなる場合もありますが、輸送費や関税などの費用も積算コストに含めたうえで契約金額が決定されるケースが多くなっております。
[対応策]
事業を展開する地域に対する情報収集を進め、継続的なモニタリングを行うことに加え、当社独自の差別化技術を開発・展開することでサプライチェーンに対する規制が強化された場合でも影響を受けにくいビジネスモデルの構築を目指してまいります。また、新たな地域・市場への展開を加速させ、特定の地域への集中によるリスクの分散に努めてまいります。
米国の輸出規制については、規制の遵守を徹底するとともに、代替品を採用するなど当社グループへの影響を最小限に留める対応を進めております。台湾有事のリスクについてはシナリオ分析を行い、リスクシナリオごとに当社事業への影響の評価及びリスク対応策の検討を行っており、台湾・中国における危機管理計画を策定し、経営陣による計画の演習を実施する等、継続的に対応を進めております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
地震や台風等の想定を超える大規模な自然災害が発生した場合、事業活動の遅延・停止による損失、復旧費用等が発生するなど、その規模や範囲によっては業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
当社グループは、自然災害発生時に事業への影響を最小限にとどめるため、主要事業の事業継続計画(BCP)を策定しております。事業に重大な影響を及ぼす事態の発生に際しても、影響を最小限にとどめるため、BCPの拡充や範囲拡大、グループ全体での管理体制強化などさらなる対応を進めてまいります。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社の親会社は東ソー株式会社であり、同社は当社議決権の44.46%(間接所有を含む。)を所有しております。当社は同社の企業グループと関連した事業を営んでおりますが、両社の扱っている製品や取引先の点で明確な棲み分けがなされており、当社は上場会社として事業活動や経営判断において一定の経営の独立性が確保されていると認識しております。また、当社は同社から水処理薬品の原材料の一部などの仕入れを行うとともに、同社に対し各種水処理装置及び関連薬品を販売するなどの営業取引を行っておりますが、当社の営業取引関係における依存度は僅少であります。しかしながら、今後、同社の資本政策や経営戦略に変更が生じた場合、当社グループの事業展開や株価等に影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
当社グループは、同社との適切なコミュニケーションを継続することで同社が資本政策等の変更を行った際の影響を軽減できるよう努めてまいります。また、当社は同社グループと少数株主間の利益相反問題を監視・監督し、少数株主の利益を適切に保護するために、独立社外取締役のみで構成される特別委員会を設置しております。同社グループと当社との間に重要な取引等が生ずる場合には、同委員会にて取引内容を審議し、取締役会に対して答申又は報告を行います。また更なる少数株主の利益保護及び経営の独立性の向上のため、2023年6月29日開催の第78回定時株主総会以後、取締役会に占める独立社外取締役の比率を過半数にしております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループにおける各種ITツールやクラウドを活用した業務範囲は年々拡大しておりますが、コンピュータウイルスや不正アクセスなどのサイバー攻撃、システム障害等により情報システムが機能不全に陥り業務の停滞が生じた場合、重要な機密情報が漏えいした場合などには、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
情報システム部門を中心にウイルス検知や対策ツールの導入、ゼロトラストネットワークへの移行、セキュリティ教育の強化などグループ全体の情報セキュリティ対策を継続して行ってまいります。さらには、継続的な情報インフラの強化、各種システムのクラウドサービスへの移行にも取り組んでおります。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループはお客様の水環境の保全、地球温暖化防止に貢献する製品やサービスの提供に努めていますが、より低いCO2排出製品やサービスへのニーズに応えられないことによる売上の低下や、当社グループ自身のGHG排出量に伴う炭素税費用の増加等が、サステナビリティの取組の中短期的なリスクとして業績に影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
当社グループにとって事業拡大の機会でもあり、当社の強みである高度な分離精製技術や水処理の総合エンジニアリング企業としての幅広い実績の活用を目指し、事業機会の指標化によるGHG削減貢献製品・サービスの増加を図ってまいります。また、主要工場での再生エネルギーの導入による自社のGHG排出量の削減にも取り組んでいきます。
詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動問題への対応」に記載しております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループにおいては、水処理エンジニアリング事業が連結売上高の約80%を占めており、半導体や電子部品等をはじめとする電子産業分野がその半分以上(当連結会計年度は70.0%)を占めております。特に半導体市場においては、顧客企業や設備の再編・統廃合が進む中、一件当たりの設備投資規模が拡大するなど、国内・台湾・中国などにおける主要顧客の動向が当社の業績に大きく影響する状況が続いております。また、当連結会計年度末における営業債権のうち43.3%が上位3社に対するものとなるなど、特定顧客への集中度が高い状態が続いております。
このような案件規模拡大の動きは当社グループのさらなる成長への機会となる一方、戦略上重要な案件を受注出来なかった場合には失注による直接的な収益への影響の他、将来のソリューション売上への影響など、当社グループの業績へ大きな影響を及ぼす可能性があります。また、特定の大型案件へのリソースの集中によって他の分野の受注機会を喪失するリスクや、顧客の事業戦略に当社が適切に対応できなかった場合や、顧客に予期せぬ財政状態の悪化や経営破綻等が生じた場合、市況が大きく悪化した場合など、リスクが顕在化した際の影響が大きくなる可能性があります。
さらに、市場参加者が限定されている電子産業分野において、新たな市場参加者が台頭した場合や、代替技術や代替製品の開発によって参入障壁が低くなった場合などは競争がさらに激化し、将来の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
当社グループは、電子産業市場に対するマーケティング機能の強化に取組み、顧客ニーズに基づいた技術開発を加速させることで、顧客への提供価値の最大化を目指してまいります。2025年度以降も複数の半導体大型プロジェクトの受注を計画しており、重要な大型案件の確実な受注をすると同時に、設備保有型サービスなどのソリューションサービスや水処理薬品の拡販などの取組みを進めることでプラント分野の受注変動の影響を安定化する取組みも進めております。
また、案件規模・案件数の増加に対応するため、デジタル技術を活用した設計業務の自動化・効率化、グローバルエンジニアリングセンター(GEC)や外注の活用による効率化を進めるなど、グループ全体で納入体制の拡充に努めております。加えて客先の与信管理の強化などに取り組むことでリスクの低減を図っております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、製造や建設等に使用する資材を外部から調達するとともに工事等を外部へ委託しております。主要資材であるイオン交換樹脂などについては、その仕入れを特定の取引先に依存しているため、供給元の経営戦略の変更や取引条件の大幅な変更等により調達が困難になった場合や納期が長期化した場合などには、業績に影響を及ぼす可能性があります。エネルギー価格の高騰や円安の進行などの影響による資材価格の上昇は続いておりますが、サプライチェーンの混乱による重要資材の納期の長期化などの状況は落ち着きを取り戻しており、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性は低下いたしました。また、大型プロジェクトに必要な設計や現地工事などを担うパートナー企業の能力にも依存しており、電子産業分野の案件規模の拡大の影響を受ける可能性があります。
今後、市況の変動等により資材価格・工事費等の高騰が加速した場合や工事等の協力企業が確保できない場合などには、仕入価格や工事原価の上昇により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
当社グループは重要な取引先との安定的な関係の維持に取り組むとともに、複数の取引先からの調達や代替品の検討など中長期的な調達・供給機能の強化に向けた取組みをグローバルな視点で進めております。また、顧客との交渉の継続や、海外を含む調達先の新規開拓により価格高騰のリスクの軽減に努めるとともにM&Aも視野に入れたパートナー企業の開拓などを進め、業績への影響を最小限に抑えるよう努めてまいります。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループ及び当社グループの主要な顧客はグローバルに事業を展開しているため、多くの国・地域における法規制を受けております。近年では、企業の社会的責任や調達活動を含むサステナビリティに関する取組みに対し、規制当局や顧客の関心が高まっており、中でも人権に関する課題については特に関心が高まっております。これらの関心の高まりなどによって法規制等が強化された場合は、対応に係るコストが増加するだけではなく、当社グループの事業活動に制約が生じる可能性があります。また、万が一対応に不備があった場合には、当社グループに対する社会的信頼が低下し、顧客の喪失等につながる可能性があります。
[対応策]
当社グループは、「人権の尊重」及び「サプライチェーンマネジメントの強化」を重要課題(マテリアリティ)として定めており、当社グループだけでなくサプライチェーン全体で人権保護の推進に向けた取組みを強化する方針としております。具体的には、「オルガノグループサプライチェーン CSR推進ガイドブック」を整備した上で、主要サプライヤーに対して労働者の人権保護の項目を含むCSRアンケートを実施しております。また、サプライヤー向けにグリーン調達説明会を開催するなど、サプライヤーとの連携強化にも取り組んでおります。さらには、人権方針を策定し、人権に関する問題発生を未然に防ぐ仕組みの構築を推進しております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの事業展開においては、いずれも技術開発の強化が成長のドライビングフォースとなっております。そのため、主要顧客である半導体業界が進める微細化や積層化に対応する技術開発の遅れや、ソリューションサービスにおけるICT/AI技術の活用遅れなどによる競争力の低下、サステナビリティ課題に着目した商材の不足などが発生した場合には、成長戦略を進めることが著しく困難になり業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
これらのリスクに対応するため、当社グループは、連結売上高の2.5%を目途に研究開発費を増加させるなど研究開発の強化に継続して取り組んでおります。具体的には、「未来社会課題と新技術を融合し新たな価値を創出する」ことを目指し、半導体業界が進める高純度化対応技術やサステナブルな社会に貢献するCO2削減、水・資源循環技術の開発を強化しております。今後も技術研究投資を積極的に行っていくほか、顧客の技術開発ロードマップに基づいた研究開発を推進し、重点分野に研究開発投資を集中させるとともに、中長期的な研究開発テーマ創出を目的とするリサーチ機能と外部共創機能を強化するなど、リスクの軽減に取り組んでまいります。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社は、客先構内に設備を保有し顧客に水処理サービスを提供する設備保有型サービスを展開しておりますが、近年、電子産業分野の設備規模の拡大に比例して、同サービスの設備投資規模も拡大しております。設備保有型サービスの金額は連結貸借対照表においてリース投資資産として計上されており、当連結会計年度末のリース投資資産は35,512百万円となっております。設備保有型サービスは、投資の回収が長期にわたるため、顧客の信用リスクに晒されており、顧客の予期しない財政状態の悪化などが発生した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは長期的な成長に向けて、M&Aなどインオーガニックな成長に向けた投資の拡大、エンジニアリング・キャパシティ拡大に向けた国内外のパートナー企業の開拓を進めていく方針ですが、M&Aによって期待する成果が得られない場合やパートナー企業の力量不足などが発生した場合などは、当社グループの将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
当社グループは、今後さらに拡大が見込まれる設備保有型サービスやM&A等リスク資産に対する投資枠を設定し、成長と資本効率性を意識しつつ許容できるリスクを決定することで、リスクが顕在化した場合でも財務の健全性が一定程度維持できるように適切なリスクテイクの実現を促進してまいります。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
長期的に予想される市場の拡大に対応するためには、さらなるリソースの拡充・体制の強化が不可欠な状況にあります。また、電子産業分野を中心にイオン交換樹脂は需要が拡大しておりますが、その供給の一部は当社工場の生産能力に依存しております。これまでもキャパシティの拡充に向けて各種の取組みを進めておりますが、これらの取組みによって期待する成果が得られない場合には、リソース不足による成長機会を逸するだけでなく、競合他社への切替えによる市場シェアの低下、既存顧客からの信頼喪失などに繋がる可能性があります。
[対応策]
当社グループは、生産・納入能力拡大のために、エンジニアを中心としたグローバルでの人員増加を計画している他、デジタル技術を活用した設計業務の自動化・効率化、グローバルエンジニアリングセンター(GEC)や外注の活用による効率化を進めるなど、グループ全体で納入体制の拡充に努めております。また、イオン交換樹脂の供給能力向上に向けた投資など、安定供給確保に向けた取組みも進めております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの競争力は、優れた知識・能力・経験を持つ各国の従業員によって支えられております。このため、従業員の離職や人材確保に失敗した場合などは生産キャパシティや納入品質の低下、受注機会を喪失するなどの影響が生じる可能性があります。特に電子産業分野の受注が拡大している中、従業員の離職や人材確保の失敗はその影響が大きくなる可能性があり、非常に重要なリスクであると認識しております。また、少子・高齢化社会を背景に優秀な人材や特にデジタル化を担う人材の確保については世界的に競争が激しくなることが予想されます。加えて、人材の多様性の確保に失敗した場合には、意思決定の同質化に陥る危険性があります。このため、多様性の確保を含む人材の確保や育成が進まなかった場合は、長期的に当社グループの競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
当社グループは、人材の活用に向けて適正配置や業務の見直し、デジタル技術を活用した業務効率化、協力会社の活用などを進めております。また、人的資本の観点からも対策を推進すべく、階層別研修や機能別研修を実施しているほか、デジタル人材育成のための教育を進めるなど、人材育成のための取組みを進めております。また、当社グループは、「多様な人材が活躍し働きがいのある職場づくり」をマテリアリティとしており、多様な人材の確保に向けて、国籍や性別を問わず優秀な人材の採用、育成の強化に努めております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが提供する製品・サービス等において重大な契約不適合、事故等の品質問題が発生した場合は、製品・サービス等の品質に対する信頼性の低下によって顧客基盤の喪失や保険の補償範囲を超える損害賠償責任の発生などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。設備保有型サービスなどの拡大に伴い、運転管理の受託も拡大しているため、設備の安定稼働に対する重要性が増加しております。
水処理エンジニアリング事業は、電子産業分野に限らず個別受注生産を主としており、設備の建設期間や規模・契約形態などに応じて長期契約となるケースも多いため、受注後の仕様や工程の変更、資材価格・工事費等の変動や災害の発生などに伴い見積りに対して実績のコストが超過する可能性があるほか、顧客の要求する仕様や納期などに未達となった場合の損害賠償や費用負担等の発生が業績に影響を及ぼす可能性があります。
[対応策]
当社グループは、品質マネジメントシステムの整備や取引先の品質調査の強化、生産プロセスの改善などの取組みを通して継続的な品質の確保及び向上に努めるとともに、発生した不適合については、関係部署へ水平展開することで再発防止に努めております。また、各種保険の拡充を進めることでリスクが顕在化した際の影響の低減に努めております。
長期契約特有のリスクについては、取締役会や経営会議において大型案件の受注審議を実施しているほか、月次事業報告会において受注案件の予算実績状況の報告・確認を行うことで長期契約特有のリスク軽減に努めております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが行う水処理設備の製作・納入、メンテナンス、運転管理等においては、顧客工場における建設工事や自社工場での組立・製造作業など生産活動を伴います。また、当社グループは水以外の各種溶剤の分離精製に関する事業展開を進めており、開発センターや顧客工場で有機溶剤等の化学物質を取り扱っております。当社グループの事業規模拡大への対応やキャパシティ拡大のために人員の増強と育成を図っておりますが、それに伴う若年者や作業経験の浅い作業員も比例して増加しており、リスクの重要性はより高まっております。これらの生産活動や化学物質の取扱いに関して、重大な労働災害や事故等が発生した場合は大幅な納期遅延等の発生に伴う費用の増加や損害賠償の発生などの直接的損害に加えて、当社グループの安全性に対する顧客の信頼及び社会的評価が失墜するなど重大な影響が生じる可能性があります。
[対応策]
当社グループは「労働安全衛生の推進」をマテリアリティの一つとしており、「安全はすべてに最優先する」との考えのもと、事業年度ごとに安全衛生管理方針を策定した上で、重点実施事項等を計画・実行しております。新入社員や若手へ向けたKY実習による危険察知能力の向上、監督者への関連法規教育による安全意識の醸成を図り、パトロールの強化と作業前リスクアセスメントの確実な実施により、現場の安全確認を徹底してまいります。また、外部専門家による安全監査の実施、労働安全衛生マネジメントシステムの的確な運用と改善を続け、安全教育やイントラネットを通じた労働災害等の発生状況の報告や改善策の情報共有を行い、安全意識のさらなる向上に努めてまいります。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの事業展開は、各国・各地域の各種法令や関係する許認可・規制等を遵守して進めてまいります。しかし、意図せずに法令や規制に違反したと判断された場合や共謀による不正などが発生した場合などには、社会的信用の低下を招くほか、行政処分等の措置を受けるなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは顧客情報を含む様々な秘密情報を扱っておりますが、社内の情報管理不備により故意又は過失による秘密情報漏洩を防ぐことが出来なかった場合は、当社グループの信用が失墜するなど、重要な影響が生じる可能性があります。
[対応策]
当社グループは、代表取締役社長自らがメッセージを発信し不正が発生しない企業風土の醸成に努めているほか、マテリアリティとして「コンプライアンスの強化」を設定し、社員教育の充実など内部統制の強化に努めております。また、当社グループは役員と従業員が遵守すべき基本的な行動指針として「オルガノグループ企業行動指針」を定め、海外子会社への展開やアンケートの実施など企業行動指針の浸透に向けた取組みを継続しております。また、コンプライアンス委員会によるコンプライアンス体制の構築およびコンプライアンス教育の実施や、内部通報制度の国内外での整備、その内容を従業員へ周知することで、コンプライアンス違反等の未然防止・早期発見に努めております。情報管理については、外部デバイスの接続制限やPCログの取得等のハード面での対策とともに、社内管理体制の更新や社員教育などのソフト面についても適切に運用を継続することで、情報漏洩リスクの低減を図っております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、他社の権利を尊重しつつ、保有する知的財産権の適切な保全に努めておりますが、第三者が当社グループの知的財産権を侵害して不正に使用することを完全に防止することは困難であります。当社グループが、意図せず他社の知的財産権を侵害してしまう場合などには、損害賠償責任を負うなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、当社グループは新たな展開地域として北米での事業拡大を掲げており、展開地域の拡大によって海外における知的財産権に関するリスクの重要性が増加していると認識しております。
[対応策]
これらのリスクを低減するため、当社グループは、自社技術を国内はもとより中国等の新興国にも積極的に特許出願することによって確実に保護するとともに、海外を含めた他社出願状況を定期的に監視し、他社の知的財産権を侵害することのないよう努めております。
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの事業は、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、廃棄物処理、有害物質などに関する様々な環境規制の適用を受けております。今後これらの規制が強化された場合は対応に係るコストが増加するだけではなく、当社グループの事業活動に制約が生じる可能性があります。また、不測の事態等によって環境汚染を引き起こしてしまった場合や規制に違反してしまった場合は、対応のための多額の費用負担が発生するだけでなく、当社グループに対する社会的信頼が低下し、顧客の喪失等につながる可能性があります。
[対応策]
これらのリスクに対しては、リスクアセスメントの実施によりリスクを事前に抽出するとともに、公害防止法令についての講習や予防教育の実施など、教育の充実化によってリスクの予防に努めているほか、適切な設備納入・管理、モニタリングを徹底することで、リスクの未然防止に努めております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要、これらに関する経営者の視点による認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における世界経済は、中国の景気低迷や中東情勢などの地政学的リスクの影響がみられたものの、米国を中心に底堅い動きが継続し、国内経済も雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、緩やかな回復基調がみられました。一方で米国の通商政策による世界経済への影響が懸念され、先行きについては不透明感がみられます。
当社グループの主力市場である電子産業分野においては、生成AI(人工知能)関連の半導体需要増加を受け、最先端半導体の設備投資が拡大するなど全体として好調な状況が継続いたしました。一方で、電気自動車(EV)やスマートフォン向けをはじめとするAI用途以外の半導体については需要が減少するなど、一部では停滞感も見られました。一般産業分野においては電子産業分野の設備投資拡大に連動して国内の電子周辺分野の設備投資が拡大しているほか、全体としてもメンテナンス需要が高い水準で推移いたしました。また、電力・上下水など社会インフラ分野においても設備の更新や各種メンテナンスなど堅調な状況が継続いたしました。
このような状況の下、当社グループは国内外で大型プロジェクトの受注・納入活動を進めるとともに、プラントエンジニアリングプロセスの効率化を目指したDX関連の投資や、グローバルでの人材育成・活用施策の推進など生産・納入キャパシティの増強に取り組んでまいりました。また、次世代の技術や新たな事業の創出を目指した研究開発活動の拡充、採用や研修の拡充など人的資本の強化、サステナビリティやガバナンスの高度化、効率的かつ合理的なデジタル経営の推進に向けた基幹システムの刷新への取組みなど、各種施策を進めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の業績は受注高151,272百万円(前連結会計年度比4.7%増)、売上高163,269百万円(同8.6%増)、営業利益31,120百万円(同38.0%増)、経常利益31,639百万円(同35.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益24,150百万円(同39.5%増)となり、ROE(自己資本当期純利益率)は21.7%(前連結会計年度は18.4%)となりました。受注高は期初計画を下回ったものの前年度の実績を上回る受注高を確保いたしました。売上高及び各利益は前年度の実績及び期初の計画を上回り、前年度に続いて過去最高となる水準を達成いたしました。また、翌年度以降の売上のベースとなる繰越受注残は105,778百万円(同8.5%減)となり、引き続き高い水準の受注残高を確保しております。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法等を変更しているため、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいております。

■受注高
受注高は前連結会計年度比4.9%増となる126,327百万円となりました。電子産業分野では、国内・中国・東南アジアで大型案件の受注時期に遅れがみられたため期初の想定を下回ったものの、台湾で想定を上回る受注を獲得したことなどにより、プラント事業の受注高が増加いたしました。また、設備保有型サービスや各種メンテナンスなど国内・海外ともにソリューション案件が好調に推移したことから、ソリューション事業の受注高も増加いたしました。一般産業分野においても好調なソリューション案件の影響に加えて、ハイパーカミオカンデ向けの超純水設備や電子周辺分野の大型案件を受注した影響などから受注高が増加いたしました。一方で、社会・インフラ分野は国内の発電所の更新工事の受注などがあったものの、浄水場の案件が減少したことにより受注高が若干減少する結果となりました。
■売上高
売上高は前連結会計年度比9.3%増となる138,130百万円となりました。電子産業分野では、主に台湾において大型案件の工事が順調に進捗したことに加えて、国内で展開している設備保有型サービスや、納入設備に対する各種メンテナンスや消耗品交換、改造工事などのソリューション案件が国内外で好調に推移したことなどから売上高が増加いたしました。また、一般産業分野においても前年度以前に受注したプラント案件が順調に進捗したことや、ソリューション案件が好調に推移したことなどから売上高が増加し、社会・インフラ分野も国内の発電所を中心に堅調に推移したことにより売上高が増加いたしました。
■営業利益
営業利益は、前連結会計年度比43.3%増となる27,382百万円となりました。プラント案件の売上増加のほか、プラント事業よりも収益性が高いソリューション事業の売上が拡大したこと、利益率の改善があったことなどから営業利益が増加いたしました。利益率は、プラント事業において好調な設備投資を背景に受注環境が良好に推移したことや、収益性改善に向けた各種取組みなどによって改善したほか、ソリューション事業でも比較的収益性の高い設備保有型サービスの伸長などによって改善いたしました。


■受注高・売上高
受注高は前連結会計年度比3.7%増となる24,944百万円、売上高は同4.9%増となる25,139百万円となりました。好調な半導体需要を背景に、電子産業向けのRO膜処理剤や排水処理剤などの販売が好調に推移したことにより水処理薬品分野の売上高が増加したほか、電子材料の分離・精製に用いられるイオン交換樹脂などの機能材の販売が伸長したことなどから、標準型機器・機能材分野でも売上高が増加いたしました。一方で、加工食品等に向けた食品添加剤などを扱う食品分野では、不採算取引の整理を進めたことなどから減収となりました。
■営業利益
営業利益は前連結会計年度比8.9%増となる3,738百万円となりました。全般的な売上高の増加に加えて、比較的利益率の高い電子産業向けの水処理薬品や機能材などの売上が拡大したことや、原材料価格の上昇に伴う価格改定などの利益改善策を進めたことなどから営業利益が増加いたしました。

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記の金額は販売価格をもって表示しております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
3 当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前年同期比については組替え後の数値に基づき算出しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前年同期比については組替え後の数値に基づき算出しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前年同期比については組替え後の数値に基づき算出しております。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
4 Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.については、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.及び同一の企業集団に対する売上高を含めております。
(資産)
当連結会計年度末における総資産の残高は、前連結会計年度末に比べ11,692百万円増加し、194,396百万円となりました。
流動資産は、設備保有型サービスの設備完成によってリース投資資産が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ10,897百万円増加し、164,367百万円となりました。
固定資産は、建設仮勘定など設備投資額の増加によって有形固定資産及び無形固定資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末から795百万円増加し、30,028百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ7,354百万円減少し、73,201百万円となりました。
流動負債は、主に大型の工事案件や設備保有型サービスの設備建設のための仕入債務が増加したものの、短期借入金が減少したことによって、前連結会計年度末に比べ8,201百万円減少し、64,401百万円となりました。
固定負債は、主に長期借入金の調達によって前連結会計年度末から846百万円増加し、8,799百万円となりました。なお、当連結会計年度末における借入金合計は前連結会計年度末に比べ13,907百万円減少し、22,557百万円となっております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ19,046百万円増加し、121,194百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金18,075百万円の増加によるものであります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法等を変更しているため、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいております。
水処理エンジニアリング事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ12,970百万円増加し、169,371百万円となりました。これは主に、契約資産、設備保有型サービスの設備完成に伴うリース投資資産の増加によるものであります。
機能商品事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ821百万円減少し、18,086百万円となりました。これは主に棚卸資産などの減少によるものであります。
当社グループのキャッシュ・フローは、大型プロジェクトの工事進捗や代金の回収スケジュールに影響される傾向があります。そのため、当社は、プロジェクトの収益管理を徹底するとともに、安定収益源であるソリューション事業や機能商品事業の拡大に取り組むなど収益基盤の安定化に取り組んでいます。また財務基盤についても受注の急減やプロジェクトの採算悪化など不測の事態やキャッシュ・フローの変動に備えた安全化・健全化に取り組みつつ、資本効率と株主還元の最適なバランスを追求することが重要であると考えています。
そのためには、収益性の向上、効率性の改善、財務レバレッジの活用を図りROEを向上させることが重要であると考えています。現状の当社の株主資本コストは7~9%程度と想定しておりますが、近年は収益性の改善によってROEが株主資本コストを大きく上回っています。また、増配継続などの株主還元施策やIR活動の強化などにも取り組んでおり、株価は上昇傾向で推移し、PER・PBRも大きく改善しました。2025年3月末は米国の関税政策などを背景にした株式市場の混乱により株価は下落したものの、PBRは2倍を超える水準を維持しております。

また、中長期経営計画である"ORGANO 2030"では、はROE15%以上を安定的に計上できる体制を目指すこととし、収益性・効率性・財務レバレッジのそれぞれに方針を定め、さらなる改善を目指しています。当連結会計年度におけるROEの分析は次の通りです。当連結会計年度においては、水処理エンジニアリング事業における利益率の改善が寄与し、収益性が大きく改善しましたが、効率性についてはキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の短縮に向けた取組みを進めていますが、道半ばであり改善の余地がある状態と分析しております。また、人件費の拡大などキャパシティ拡大に向けた投資などにも積極的に取り組んでおりますが、M&Aなどインオーガニックな成長に向けた投資も含めた更なる投資の拡充が必要であります。財務健全性を十分に確保しながら、借入金など財務レバレッジを活用することで成長投資を拡大させてまいります。

<キャピタルアロケーション>
2026年3月期から2028年3月期の3年間におけるキャピタルアロケーションは次の通りです。売上拡大や設備保有型サービスの回収本格化に加えて、借入金の活用やCCC短縮化への取組みによって収入の増加を想定する一方で、人件費やDX・RD投資や設備投資・M&Aなどの成長投資の積極的な拡大を計画するとともに、設備保有型サービスへの投資増加を見込んでいます。株主還元は増配の継続と配当性向の改善を継続する計画としております。
なお、現預金は現行の水準である月商の1.5~2.0倍程度を目安とすることで事業運営に必要な資金の流動性を確保することとしております。

<株主還元>
株主還元については、重要な経営課題の一つとして考えており、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針としたうえで、収益の状況を勘案した利益配分に努めることとしております。具体的には、増配の継続と連結配当性向30%以上の水準を目標とし、成長投資の拡大と株主還元の強化を両立させることを目指してまいります。2025年3月期においては、業績の上方修正に伴い年間配当も期初計画から160円(連結配当性向30.5%)まで増額いたしました。2026年3月期も継続増配となる170円(連結配当性向32.3%)を計画しており、株主還元と成長投資の両立と拡大を目指してまいります。

(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ891百万円減少し、当連結会計年度末には16,751百万円となりました。活動ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
当社グループは、水処理エンジニアリング事業が売上高の84.6%を占めており、同事業のキャッシュ・フローの状況によってグループ全体のキャッシュ・フローが大きく変動します。中でもプラント事業においては、大型装置の設計・製作・納入は長期にわたることがあり、債権の回収時期、原材料・外注費等の支払時期などによって営業活動によるキャッシュ・フローが大きく増減することがあります。また、設備を自らが設置・所有し、顧客にサービスを提供する設備保有型サービスにおいては、所有権移転外ファイナンス・リース取引として会計処理しておりますが、設備の製作から資金の回収までが長期にわたるため設備の製作や納入段階においては支出が大きく先行する傾向にあります。
当連結会計年度においては、設備保有型サービスへの投資などによる資金の減少に対し、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の回収などによる資金の増加があったことにより、前連結会計年度に比べ17,374百万円増加し、21,100百万円となりました。
なお、キャッシュ・フロー計算書におけるリース投資資産の増加額7,697百万円及び棚卸資産の増加額472百万円には、設備保有型サービスの設備完成に伴う棚卸資産からリース投資資産への振替額が含まれております。
当連結会計年度における投資活動によって支出された資金は、前連結会計年度に比べ714百万円増加し、2,130百万円となりました。政策保有株式の売却による収入があったものの、設備投資が増加したことなどから支出が増加しました。なお、設備投資の概要については、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」をご参照ください。
<当社の設備保有型サービスへの投資額のキャッシュ・フロー計算書上の表示について>
当社は、顧客工場・敷地内に水処理設備を当社の設備として設置し、当該設備をもとに水処理サービスを長期間にわたって提供する設備保有型サービスを展開しております。当社のキャッシュ・フロー計算書においては、この設備保有型サービスへの投資額(設備製作に係る支出)を、営業キャッシュ・フローの区分に表示しております。これは、当該サービスが当社の主目的たる営業取引であり、貸借対照表においては流動資産のリース投資資産(建設中は仕掛品)に計上しているためであります。
一方で、この設備保有型サービスでは設備の製作に投下した資金の回収が長期間にわたるため、当該製作に係る支出は設備投資に近い性質も同時に有していると考えております。そのため、仮に当該支出を投資活動として捉えた場合には、当社のキャッシュ・フロー計算書は、その分だけ営業活動による支出額が大きく、投資活動による支出が小さく表示されていることになります。
なお、当該支出を営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローに組み替えた場合のキャッシュ・フローの状況を示すと以下のとおりとなります。

当連結会計年度における財務活動によって支出された資金は前連結会計年度に比べ20,179百万円増加し、20,821百万円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローの増加に伴い短期借入金が減少したことに加えて、配当金の支払額の増加などによって支出が増加いたしました。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しております。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりであります。
(特に重要な会計上の見積り)
水処理エンジニアリング事業における大型案件は当社グループの売上高に占める割合が大きく、その収益認識の基礎となる工事原価総額の見積りが業績に与える影響は非常に大きいと認識しており、特に大型の案件では作業内容の特定やその原価の見積りに高い不確実性が伴います。また、工事着手後に生じる資材価格の変動や作業内容の変更などを適時・適切に工事原価へ反映する必要があることに加えて、工事原価総額の見積りは工事損失引当金の金額にも影響することなどから当社は、工事契約に係る会計処理を特に重要な会計上の見積りに該当すると考えております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
(その他の重要な会計上の見積り)
棚卸資産の評価は、原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)によっております。営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難であるため、過去の実績から見積った年数及び割合を基に規則的に簿価を切り下げております。実際の正味売却価額が切下げ後の簿価と比べて大きく異なる場合は、棚卸資産の期末残高が過小もしくは過大になるほか、売上原価に影響を及ぼします。
完了した請負工事に係る瑕疵担保等に備えるため、将来の保証見込額を製品保証引当金として計上しております。見積りには、個別に見積可能なものについては、その見積額を計上しておりますが、多くの請負工事は個別の見積りが困難であるため、主に過去2年間の実績を基礎に見積りを行っております。しかし、想定を上回る重大な瑕疵や事故等の品質問題が発生した場合は、将来の業績が変動します。
当社グループは、固定資産の減損の兆候判定、認識及び測定にあたり、将来の事業計画を基礎とした各資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りを行っております。その将来キャッシュ・フローの見積りを修正した場合には、評価の結果が変わり、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額等を考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額は業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合や予期しない変化などが生じた場合は、回収可能性の評価の見直しを行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
当社グループの退職給付債務及び費用は、死亡率、退職率、昇給率や給与の変更及び割引率等の数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されています。
割引率は、日本の国債の利回りを基に、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用して算出しております。また、長期期待運用収益率については、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより設定しております。
これらの前提条件の見積りは合理的であると判断しておりますが、割引率の低下が数理計算上の退職給付債務の増加をもたらす可能性があるなど、主要な前提条件が実際の結果と異なった場合、退職給付債務及び費用が変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
連結子会社の株式譲渡契約
当社は、2024年11月29日開催の取締役会において、連結子会社であるPT Lautan Organo Waterの当社が保有する株式の一部を、合弁相手であるPT Lautan Luas Tbk(以下「LTL」)の子会社であるPT Lautan Air Indonesiaに譲渡することについて決議し、1月24日付で当社とLTLグループとの間で株式譲渡に関する契約を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社が技術援助及び販売権を受けている契約
(注) 上記の契約は1年毎に更新されます。
当社グループの研究開発活動は、提出会社以外は行っておりません。なお、提出会社の研究開発活動は次のとおりであります。
当社は、水処理エンジニアリング事業、機能商品事業を促進するため、顧客満足度の高い価値ある技術・商品を市場に提供すべく研究開発活動に努めております。
研究開発体制といたしましては、水処理エンジニアリング事業、機能商品事業ともに開発センターを中心に、研究者、技術者、営業担当が連携しながら研究開発活動を進めております。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費(技術研究費)の総額は
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
[水処理エンジニアリング事業]
当事業における研究開発活動では、先端半導体製造をはじめとした電子産業分野で求められる超純水や溶剤・薬液などの更なる高度純度を目指し、分離精製技術、高度分析技術の開発を進めています。加えて、当社が提供するサービスにつながる、センシング技術をはじめとした安定運転に関する技術開発や、サステナビリティ課題に対応する水・有価物回収、省エネルギーシステム等の技術開発に取り組んでいます。
当連結会計年度では、超純水の水質を高感度で測定可能なモニタリング装置(UPW-ICA)を開発しました。また、水処理設備の運転状況を監視し、管理の省力化や廃棄物・CO2削減に寄与するセンシングシステム(オルスマートシリーズ)を開発しました。加えて、電子産業向け溶剤の高純度化や、当社エンジニアリング業務の効率化に寄与する技術開発を推進しました。
なお、当事業の研究開発費(技術研究費)は
[機能商品事業]
当事業における研究開発活動では、水処理薬品、新規機能材、ラボ・医療機関向け小型超純水製造装置、食品加工向けの食品添加物・素材などの開発を行っております。
当連結会計年度では、冷却水向け高機能薬剤(オルリッチecoシリーズ)、およびセンシング技術(オルチェイサーⅤ)を開発しました。加えて、水処理用分離膜向け高機能薬剤の研究開発を推進しました。
なお、当事業の研究開発費(技術研究費)は