(1)経営の基本方針
[企業理念]
[長期ビジョン]
[行動指針]
(2)経営環境及び対処すべき課題
① 第2次中期経営計画の総括
2021年度~2024年度の4年間は統合によるシナジー効果の創出期間であるとともに、長期ビジョン実現のための基盤づくりを行う期間と位置づけ「RAIZNEXT SYNERGY POWER」をテーマに取り組みを推進してきました。
「経営基盤の強化」、「メンテナンス事業の強化」、「エンジニアリング事業の強化」、「タンク事業の強化」を基本戦略とし各種施策を推進した結果、完成工事高(連結)目標1,450億円に対し実績1,573億円、営業利益(連結)目標105億円に対し実績108億円、親会社株主に帰属する当期純利益(連結)目標70億円に対し実績81億円、ROE目標8.0%に対し実績9.6%、連結配当性向目標40%以上に対し実績60.3%となり、すべての業績目標および経営指標の目標値を達成いたしました。
また、第2次中計テーマである2019年の経営統合に伴うシナジー効果については、完成工事高累計目標200億円以上に対し実績266億円、経常利益累計20億円以上に対し実績25億円と、こちらも目標を達成いたしました。
第2次中期経営計画期間における取り組み成果と課題は次のとおりです。
1)経営基盤強化
コーポレートガバナンス・リスクマネジメント体制の整備、安全・品質管理体制の高度化を図るとともに、持続的な会社の成長と企業価値向上を目指し、サステナビリティ経営を推し進めるため外部へのESGデータの開示やGHG排出量削減目標(Scope1&2)の策定・開示を行いました。
また2024年時間外労働上限規制への対応においては、時間外労働ガイドライン作成・人員採用等、各種施策の確実な実行と改善を継続しています。
従業員に対しては、働きやすい職場環境実現のため、制度改革や工事現場仮設事務所等における執務環境の改善を継続し、老朽化した事業所事務所の建て替え、ネットワークインフラ更新等のBCP対策も積極的に進めました。第2次中期経営計画期間中に構築した各体制やインフラの適切な運用と強化により、さらなるガバナンスの強化、人材確保と育成、安全・品質向上が必要と認識しております。
2)メンテンナス事業の強化
全体最適を目的に組織統合を実施した結果、機動的な人員配置が可能となり、大規模定期修理工事や新たな工場への参入など受注・収益の拡大を果たしました。また、協力会社を含めた技能者育成や施工体制の強化を図り、安全性向上・効率化に向けた施工作業の自動化、機械化の推進にも取り組みました。
コア事業としての競争力を一層強化すべく、労働生産性向上を目指し、リソース管理の高度化、さらなる機械化・自動化の加速が必要と認識しております。
3)エンジニアリング事業の強化
エンジニアリング事業においては、新規メガソーラー発電所やグリーンアンモニア製造プラントの建設工事等、カーボンニュートラル社会に向けた新たな分野の工事受注を進めました。
また、閉鎖製油所の将来計画への積極的な参画に努め、プラント無害化工事や設備撤去工事等の基盤整備工事の受注に加え、顧客と協働して新規事業の事業化に向けた検討にも取り組みました。電気自動車の普及や社会のIT化などにより需要が旺盛な非鉄金属分野においても、工場の新設および増設工事を継続して受注しております。
GX推進に伴う設備投資拡大に対応すべく、DX推進によるエンジニアリングのさらなる高度化・遂行力強化が足元の課題と認識しております。
4)タンク事業の強化
タンク事業においては、設計から施工計画・施工支援までの一気通貫体制を構築し、全国事業所ネットワークを活かして、未参入の石油備蓄・製油所のタンク工事を新規受注いたしました。また、溶接技術者等の人材不足および作業環境の改善に向けて自動溶接技術の確立およびロボット実装化の推進、化石燃料に替わるエネルギーとして期待される水素やアンモニア貯蔵タンクの設計・施工技術の検討にも取り組みました。
LNGや液化水素などの低温タンク分野への進出を目指すべく、カーボンニュートラル案件受注体制の早期確立、製作/検査ロボットの早期実装が課題と認識しております。
② 第3次中期経営計画の概要
当社を取り巻く事業環境においては、第2次中期経営計画期間における事業環境から継続し、ESGに関する社会意識の高まりに伴うカーボンニュートラル社会への対応、建設業界における労働人口減少への対応、デジタル革命進展への対応など、様々な課題への対応が求められています。
レイズネクストグループでは、第2次中期経営計画の課題と当社を取り巻く事業環境を踏まえ、2025年3月に第3次中期経営計画を策定しました。
第3次中期経営計画における基本戦略は、これまでの取り組みから継続し、「経営基盤の強化」、「メンテナンス事業の強化」、「エンジニアリング事業の強化」、「タンク事業の強化」を柱とし、「RAIZNEXT X CHALLENGE」(X:トランスフォーメーションを指す)をテーマに、従来のやり方にとらわれず各種取り組みに挑戦し、長期ビジョン実現の総仕上げとなる第4次中期経営計画に向けチャレンジしていきます。
1)経営基盤強化
経営基盤における“X”としてDXによる「業務プロセス改革(安全/品質管理の高度化、業務改革の推進、データドリブン経営等)」や、「人材育成の強化」、「健康経営の促進」、「新しい働き方の推進」に取り組み、さらなるガバナンスの強化、人材確保と育成、安全・品質向上を実現します。
2)メンテンナス事業の強化
メンテナンス事業の“X”として「施工作業のさらなる機械化/自動化による安全性向上、省力化、効率化」、「次世代メンテナンス技術の開発/導入」、「施工管理業務の高度化」などに取り組み、コア事業としての競争力を一層強化していきます。
3)エンジニアリング事業の強化
エンジニアリング事業の“X”として「3D設計/AI設計推進、BIM/CIM構築」、「先進的プロジェクト管理システム導入」、「高度な解析ソリューション」などに取り組み、エンジニアリングのさらなる高度化・遂行力強化を目指します。
4)タンク事業の強化
タンク事業の“X”として「低温タンク(LNG/液化水素)分野での受注体制構築」、「製作/検査のロボット化」、「自動溶接の現場実装」などに取り組み、タンク事業のさらなる拡大を目指します。
なお、第3次中期経営計画では、次の経営数値目標を掲げております。
① 業績計画
第3次中期経営計画最終年度(2028年度 2029年3月期)業績目標
<連結>
② 経営指標の目標値
自己資本当期純利益率(ROE)・・・ 9.5%以上
連結配当性向 ・・・・・・・・・・60%以上
(注)上記KPIについては、有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に
基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
長期ビジョン、第3次中期経営計画の詳細につきましては、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、そちらをご参照願います。(https://www.raiznext.co.jp/)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ経営
サステナビリティ基本方針
レイズネクストグループは、「産業インフラを支える。豊かな未来を拓く。」という企業理念のもと、健全で透明性の高い経営と社会・環境に調和した事業活動を通じて、ステークホルダーの皆さまの信頼をより確かなものにするとともに、社会の持続的発展への貢献と中長期的な企業価値の向上を図るため、積極的にサステナビリティへの取り組みを推進します。
社会の持続的発展への貢献と中長期的な企業価値の向上を目的として、当社は社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ経営に関する戦略を中心に協議しています。
また、サステナビリティ委員会の下部組織「サステナビリティ推進会議」にて、その戦略に基づく具体的施策の進捗状況の管理等を行う体制としています。
なお、サステナビリティ委員会における協議結果は、取締役会に報告し、取締役会にて適切に監督されています。

② 戦略
2050年へ向けてのカーボンニュートラル社会を目指す世界的潮流において、当社はエネルギー産業を支える会社として、社会的な課題に対する挑戦に貢献できるものと考えております。このようなエネルギー産業の変革の時期を踏まえて、当社は2021年に、長期ビジョンRAIXNEXT Group V-2032を策定し、2032年までの中長期的に目指す“ありたい姿”を掲げ、カーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組んでおります。


③ リスク管理
当社は、長期ビジョンの実現に向けて、企業価値向上およびサステナブルな事業をおこなうため、サステナビリティ経営に関わる重要課題(マテリアリティ)を特定しております。特定された重要課題(マテリアリティ)ごとに、リスクを把握したうえで、取り組み項目を決めております。
また、リスクに関しては、全社的リスクマネジメント委員会において、サステナビリティ経営に関わる事項も含めてリスクを管理しております。全社的リスクマネジメント委員会において管理されたリスクの中で、サステナビリティ経営に関わる重要課題(マテリアリティ)に関するリスクは、翌年度のサステナビリティに関する取り組みを決定する際に確認され、必要に応じて取り組み項目に反映しております。
当社は、サステナビリティに関する事業上のリスクを特定したうえで、当社のマテリアリティを選定し、毎年取り組み項目を定めております。2024年度の取り組み項目および指標は以下のとおりです。



(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
① ガバナンス
・気候変動に関わる基本方針や重要事項、リスク(脅威と機会)などについては、経営企画部管掌役員を議長とする「サステナビリティ推進会議」ならびに社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」で討議・検討・評価します。
・「サステナビリティ委員会」で協議された内容は、取締役会に年1回報告し、取締役会が管理・監督を行います。
・取締役会で報告された内容は、各部門に展開され、それぞれの経営計画・事業運営に反映します。
② 戦略
中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスクを踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、当社はIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(2℃シナリオおよび4℃シナリオ)※を参照して、2040年までの長期的な当社への影響を考察し、メンテナンス事業とエンジニアリング事業を対象にシナリオ分析を実施しました。
※2℃シナリオ(移行):気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ
4℃シナリオ(物理):気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ

③ リスク管理
・気候変動リスクの優先順位付けとして、リスクの自社への発生可能性と影響度の大きさを勘案しながら、重点リスク要因に注力して取り組みます。
・気候変動リスクの管理プロセスとして、「サステナビリティ委員会」を通じて、気候変動リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践していきます。
・「サステナビリティ委員会」で分析・検討された内容は、経営会議に報告後、取締役会に報告し、全社で統合したリスク管理を行います。
④ 指標と目標
・気候変動リスクが経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量を指標とします。従来からの取り組みに加えて、再生可能エネルギーや新エネルギー関連技術の導入、脱炭素の資材や機材の使用等で、脱炭素社会への貢献に向けて取り組んでいきます。
・対象範囲をレイズネクスト株式会社および連結子会社とし、当社グループは自社の事業活動に関わるScope1とScope2の排出量について、2030年度までに2021年度比で30%の削減を目指します。

(注)記載事項のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、入手可能な情報等に基づいて基づいた予測です。
(3)人的資本
当社は、企業理念や行動基準、行動指針をきちんと認識し、コンプライアンスや社会規範を守りながら、既存の枠組みに捉われず、新たな発想で積極的に挑戦できる人材を継続的に育成しています。また、従業員ひとりひとりの個性、考え方、ライフプラン等を尊重し、個々の成長に向けた自主的な取り組みを積極的に支援する体制を整備しています。
具体的には、「マルチステークホルダー方針」に基づき経営資源を有効に活かし企業価値を向上させるため、人事部に採用育成グループを設置し、体系的な知識や専門的なスキルを身につける教育を実施するとともに、自己啓発を奨励する制度を整えております。また、当社事業の核である監督者育成については、工務部に教育・訓練グループを設置し、個人の力量に応じた各種技術研修を実施することで、施工管理能力の維持・向上を図っております。
① ガバナンス
当社は、年に2回教育訓練検討会議を開催し、教育・訓練の基本方針、教育・訓練計画などを協議・決定しその内容を社内に公表しています。
② 人材育成の方針
当社にとって、最大の資産は「人」です。「生涯育成」をテーマに、新入社員からベテラン社員までの全階層に、さまざまな成長の機会を提供しています。
その一つとして、技術系社員については、入社後6年目までの教育プログラムを策定し、当社事業の柱であるメンテナンスとエンジニアリングの両事業で活躍できる監督者の早期育成に努めております。


③ 社内環境整備方針
当社は、企業理念(『産業インフラを支える。豊かな未来を拓く』)の実現に向けて、従業員それぞれの人格や 性別、年齢、国籍、思想信条、宗教、障がいの有無、人権、ライフステージ等の多様性を尊重し、ワークライフバランスと心身の健康を保ち、安全、安心で、やりがいをもって働ける社内環境(労働環境や諸制度など)を整備しています。
また、既存の取り組みに捉われず、新たな発想で積極的に挑戦できる人材を計画的に育成するために、従業員がお互いを高め合いながら、自主的に努力を継続でき、成果が適正に評価される仕組みをつくっています。
具体的には、テレワークや男性の育児休業取得を推進し働きやすい環境を整えることで、従業員の定着化および多様な人材の確保を図っております。さらに、企業理念や経営戦略の共有、社員の多様な意見の吸い上げを図るべく、社長と若手社員の意見交換会を、また、女性活躍推進という観点から、推進部門を立ち上げ、女性社員がそれぞれの能力を発揮できる環境整備を推進します。加えて、経営統合後、従業員意識アンケートを継続的に実施し、その結果を踏まえて、社員が、より力を発揮できる働きやすい環境への改善を進めております。
④ 指標と目標・実績
2025年度の指標としては、前述当社サステナビリティにおける指標および目標に記載のとおり、マテリアリティ「全ての人にとって、働きがいのある魅力的な職場環境の実現」への取り組みとして、人材育成、社内環境整備への取り組み項目、KPIを掲げております。
当事業年度の実績
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等の所得割合を算出したものであります。
3.なお、連結子会社については、一部の会社のみが具体的取組を行っているため、上記の実績は提出会社のみを記載しております。
当社グループの事業に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、以下のような項目があります。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生回避および発生した場合の対応に努める所存であります。なお、これらの項目のうち、将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(2) 特定の取引先・製品・技術等への依存
(3) 特有の法的規制・取引慣行・経営方針
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり、景気は緩やかに回復しております。他方、アメリカの通商政策等の影響による国内景気の下振れリスクが高まっているほか、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響なども、国内景気を下押しするリスクとなっております。
当社を取り巻く事業環境につきましては、国内の石油製品需要は、電気自動車の普及や低炭素燃料への転換等によるエネルギー構造の変化の影響を受け、引き続き減少していく見込みであります。一方で、政府の「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され、産業界では、カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組みが加速することが期待されます。
当社グループにおきましては、前期比で、メンテナンス分野では主に定期修理工事により、エンジニアリング分野では主に中小規模工事により、受注高、完成工事高ともに増加しました。その結果、完成工事総利益も増加しました。
(財政状態)
当連結会計年度末の資産合計は、1,151億96百万円で前連結会計年度末より、44億50百万円増加しました。これは、現金及び預金が89億16百万円減少したものの、受取手形、完成工事未収入金及び契約資産が131億47百万円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は、295億41百万円で前連結会計年度末より、29億18百万円増加しました。これは、短期借入金が14億99百万円、未払法人税等が8億4百万円、賞与引当金が4億57百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産合計は、856億54百万円で前連結会計年度末より、15億31百万円増加しました。これは、利益剰余金が6億17百万円増加したこと等によるものであります。
(経営成績)
当社グループの連結の業績は、受注高1,617億47百万円(前期比6.6%増)、完成工事高1,573億71百万円(前期比12.1%増)、営業利益108億58百万円(前期比8.9%増)、経常利益110億94百万円(前期比8.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益81億円(前期比11.7%増)となりました。
当社単体の業績は、受注高1,523億92百万円(前期比5.7%増)、完成工事高は1,487億69百万円(前期比12.2%増)、営業利益99億48百万円(前期比9.0%増)、経常利益107億50百万円(前期比11.8%増)、当期純利益80億99百万円(前期比20.6%増)となりました。
受注高の工事種類別内訳 (単位:百万円)
完成工事高の工事種類別内訳 (単位:百万円)
(注)その他事業は、前期は不動産の賃貸業務等、当期は人材派遣業等であります。
当連結会計年度末における連結ベースの現金および現金同等物は、前連結会計年度末に比べ88億70百万円(前期比71.3%)減少し、期末残高は35億75百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、△1億7百万円となり、前連結会計年度に比べ36億73百万円の減少になりました。主な支出は、売上債権の増加額129億45百万円、主な収入は、税金等調整前当期純利益114億85百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、△23億4百万円となり、前連結会計年度に比べ5億66百万円の増加となりました。主な支出は、有形及び無形固定資産の取得による支出34億53百万円、主な収入は、有形及び無形固定資産の売却による収入6億86百万円、投資有価証券の売却による収入6億95百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、△64億90百万円となり、前連結会計年度に比べ6億91百万円の減少となりました。主な支出は、配当金の支払額76億50百万円、主な収入は、短期借入金増加額15億円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
事業セグメント別
事業セグメント別
工事種類別
(注) 1 当社グループでは、エンジニアリング業以外は受注生産を行っておりません。
2 当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載を省略しております。
3 主な相手先別の完成工事高および総完成工事高に対する割合は、次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、期末日現在の資産、負債および期間中の収益、費用の報告額に影響する判断および見積りが要求され、過去の実績および状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて行っております。
当社グループは特に以下の会計方針の適用において見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。
1)貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等の特定の債権については、保守的に見積った回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。
取引先の財政状態および業績が見込以上に悪化した場合等、貸倒懸念債権等の特定の債権の回収可能性の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において貸倒引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
2)工事損失引当金
当社グループは、受注工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における未引渡工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積もることができる工事について、損失見込額を工事損失引当金として計上しております。
実際の工事施工状況が予定から乖離する等、工事損失発生の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において工事損失の追加計上が必要となる可能性があります。
3)完成工事補償引当金
当社グループは、完成工事に係る瑕疵担保等の費用に備えるため、過去の経験割合に基づく一定の算定基準を基礎に、期末日現在において予定されている瑕疵担保等の費用を合理的に見積った補償見込額を加味して完成工事補償引当金として計上しております。
瑕疵担保等の費用の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において補償損失の追加計上が必要となる可能性があります。
4)退職給付に係る負債
当社グループは、従業員の退職給付に備えるため、見積りを反映した各種の仮定に基づく数理計算により算出された退職給付に係る負債を計上しております。
これらの各種仮定には、割引率、長期期待運用収益率、予想昇給率等が含まれており、実際の結果が見積りの前提と異なる場合、または前提が変更された場合、来期以降の連結財務諸表において退職給付債務および費用に影響する可能性があります。
5)繰延税金資産
当社グループは、期末日後将来的に発生する課税所得を見積り、当該課税所得に係わる税金負担を軽減する効果を有すると判断した回収可能額を繰延税金資産として計上しております。
将来課税所得の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において繰延税金資産の調整額の計上により損益に影響する可能性があります。
6)収益及び費用の計上基準
当社グループは、履行義務の充足に係る進捗度の合理的な見積りができる工事については、一定期間にわたり履行義務が充足されると判断し、履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しております。進捗度は、当連結会計年度末までの既発生原価累計額を工事完了までの見積総原価と比較することにより測定しております。また、履行義務の充足に係る進捗度の合理的な見積りができない工事については、原価回収基準、工事期間が短いメンテナンス工事については、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識しております。
実際の工事施工状況が予定から乖離する等、工事収益総額および工事原価総額の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において工事損益に影響する可能性があります。
7)固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについては、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、並びに減損損失の認識および測定の前提となる割引前将来キャッシュ・フローの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
1) 経営成績等の状況
当社グループの当期の経営成績は、受注高1,617億47百万円(前期比6.6%増)、完成工事高1,573億71百万円(前期比12.1%増)、営業利益108億58百万円(前期比8.9%増)経常利益110億94百万円(前期比8.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益81億円(前期比11.7%増)となりました。
ア 受注高および完成工事高
受注高が前期比で99億65百万円増加、完成工事高が前期比で170億5百万円増加となった要因は、メンテナンス分野では主に定期修理工事が、エンジニアリング分野では主に中小規模工事が増加したことによるものです。
イ 営業利益
営業利益は、総利益が完成工事高の増加により前期比で増加となったことにより、前期比8億89百万円増加の108億58百万円となりました。
ウ 経常利益
経常利益は、営業外損益において収支差し引きでプラス2億35百万円となり、前期比8億33百万円増加の110億94百万円となりました。
エ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比で8億51百万円増加の81億円となりました。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3事業等のリスク」に記載したとおりであります。当社グループを取り巻く環境は、石油業界では、国内需要の低下により、製品需要は減少傾向が継続するものの、閉鎖製油所や遊休地の有効活用に向けた基盤整備工事の需要が新たに発生するものと予想され、これら需要の取り込みが当社の課題と考えております。
当社グループの当期末における現金および現金同等物は、前期末に比べ88億70百万円(71.3%)減少し、期末残高は35億75百万円となりました。概要については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当期におけるキャッシュ・フロー施策として、新規分野、新規事業への参入を行い、健全なキャッシュ・フローを維持できる収益の確保に努めてまいりました。
また、金融機関との取引関係の維持、調達先の分散など、資金調達リスクを軽減するため様々な対策をとっております。
当社グループは、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題」に記載したとおり、将来の事業環境を踏まえ、2021年3月に「2032年度までに当社グループがありたい姿」を描いた長期ビジョンである「RAIZNEXT Group V-2032」を策定いたしました。また、第2次中期経営計画の課題と当社を取り巻く事業環境を踏まえ、2025年3月に第3次中期経営計画を策定しました。計画の詳細につきましては、2025年5月14日に開示しております「第3次中期経営計画を策定について」をご参照ください。当該計画では「RAIZNEXT X CHALLENGE」をテーマとし、従来のやり方にとらわれず、あらゆる変革に挑戦する期間と位置付けて、目標の達成を目指してまいります。
該当事項はありません。
当社グループでは、当社が顧客に提供するソリューション・サービスに係る技術力の強化を目指し、「メンテナンス事業の強化」をキーワードに研究開発活動を展開しています。
当期は安全・品質向上、作業の非熟練化、軽労化、作業の機械化および現場業務のIT化を目指し、DX(Digital Transformation)の推進を図ると共に、各種先進技術の導入・活用を進めてまいりました。
なお、当期の研究開発費の総額は
(1)メンテナンス作業の機械化
既存技術の付加価値向上に加え、安全・品質向上、作業員の非熟練化、および軽労化を目的とした作業の機械化に取り組みました。
①熱交換器チューブバンドルのリチュービング(チューブ取替)作業に関連する技術
技術者不足の懸念がある熱交換器チューブバンドルのリチュービング作業の機械化に向けて取り組んでおります。当期ではリチュービング用機材であるMAUS社製GRIPPULの有効性について、当社保有訓練施設における実機テストによる評価ならびに定期修理工事現場におけるフェルール(熱交換器チューブに挿入された内管)取外し作業による評価を行い、機械化による優位性の確認を行いました。検証結果から一定の評価が得られたため、次期では機材のパッケージング化を行うことで早期に現場へ展開し、作業の安全品質向上を目指します。
②熱交換器チューブ内面洗浄の自動化
作業者の高齢化が深刻な熱交換器チューブの高圧水洗浄作業に対して、当期はチューブ自動内面洗浄機の実機検証を行い、更なる改良とその評価を行いました。当該自動内面洗浄機は、熱交換器のチューブ配列を入力する事で半自動的に洗浄を行うもので、アジア圏では初導入になります。次期では機材の保有台数を追加し、チューブ洗浄作業自動化の普及を図ることで更なる省人化を推進いたします。
③配管切断技術
継続研究テーマであるウォータージェットを利用した切断機の導入について、様々な配管サイズに対応する専用機材の設計を行い、改良と検証を行いました。また、海外製品である本機材は補修部品の入手が困難であるため、国内製品への切り替えと補修部品の確保により、安定的に稼働できる対応を行いました。すでに当社連結子会社の港南通商株式会社への移管を完了しており、火気を使用できない配管(原油配管等)への適用を中心に当該技術の普及を目指しています。
④タンク自動溶接技術
当期ではタンク側板自動溶接技術(水平継手)を縦継手に適用するための最適な溶接条件の検討および実証を行いました。今後需要が高まる低温タンクの建設に対しても当該技術は有効であり、次期も継続して自動溶接による溶接品質の安定・向上と効率化に向けた研究を推進いたします。
⑤タンク底板検査ロボット開発
タンク工事おける監督者や検査員による溶接線の目視検査を補助する技術として、タンク底板溶接線の自動走行目視検査ロボットの開発に着手いたしました。溶接線および近傍の表面欠陥の検出、すみ肉溶接線の脚長の測定と合否判定を自動的に行い、検査員による判定を支援することで検査業務の品質向上を目指しています。次期では製作機材の現場検証を行い、改良を進めながら現場への展開を図ります。
(2)現場業務のIT化
現場で必要となる情報の一元化、情報取得の省力化等により、現場管理業務を効率化および業務品質の向上を目指して、ITツールの開発とその活用に取り組みました。
①プロット情報共有システム
当社が開発した通行止め情報等を共有する旧プロット情報共有システムから、最新のITを活用して従来以上にユーザーフレンドリーなシステムへ抜本的な見直しを行い、試験運用から段階的に現場への適用拡大を進めています。また、導入現場からのフィードバックを反映した改良により、更なる利便性向上を図りました。
今後は、当社の工事情報共有システム(SPIRIT)や、その他の社内システムとの連携も視野に入れたシステムにグレードアップすることにより、社内業務の更なる効率化を目指します。
②画像認識技術の活用に向けた基礎研究
従来から安全品質に関するトラブル防止に向けた研究として、現場管理の「目を増やす」ことを目的としたクラウド型携帯カメラsafie等のカメラ導入を進めてきましたが、当期では技術進歩が目覚ましい画像認識技術の活用による安全・品質向上、作業性向上、省力化を目指し、クレーン作業時の立入り防止措置を中心に自動化・高精度化に向けた既存製品の調査検証を行いました。次期ではこの中でも特に安全・品質向上に重点を置いた製品の検証、評価を継続して行い、現場への適用と普及を目指します。
③溶接施工管理分野へのICT導入
重大な溶接施工品質トラブルを未然に防止し、品質保証・品質確保を行うことを目的として、膨大な管理項目や書類作成業務を抱える溶接検査業務に対してICTの導入に着手いたしました。実務の洗い出しと課題の抽出結果から目指すべき姿を描いたロードマップを基に新規システムを開発し、当期では初期開発の段階で現場へ試験導入を行い、検証結果による改良、および更なる機能を充実化したシステムの開発を行いました。次期では最新のシステムを現場へ適用し、現場のフィードバックからシステムの利便性の向上を目指し、AIによる業務効率化等も含めて、品質の向上、および当社業務への標準化を目指します。
当社グループの主要顧客である石油業界や石油化学業界においては、既存プラント設備の老朽化が進み、安全・安定操業に対するニーズの高まりや経年劣化による事故・トラブルの未然防止への取組みに加え、先進技術を活用したスマート保安の動きが広がりを見せるなど、プラントメンテナンスの重要性がますます高まっております。このような事業環境において、当社のようなメンテナンス企業に対する労働安全、品質管理への要求が厳しくなっていることに加え、先進技術の活用による生産性向上に対する要求も強まってきています。さらに社内においては時間外労働時間の削減が重要課題となっており、業務効率化を含めた働き方改革が早急に求められています。
当社グループは、こうした顧客ニーズや事業環境の変化に対応するため、研究開発のテーマ選定にあたっては、今後も国内のみならず欧州や米国等における技術および市場調査の成果を有効に活用するほか、DXの推進に向けて社内連携を強化し、デジタル技術や先進技術を活用したテーマの研究を積極的に推進いたします。