第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営の基本方針

 

[企業理念]

産業インフラを支える。豊かな未来を拓く。

 

・安全で安定的なプラントの操業を支え、人、暮らし、環境の未来に貢献します。

・メンテナンスとエンジニアリングによって、プラントおよび設備の最適化を実現します。

・多様性・自主性を尊重し、従業員・パートナー企業の幸せを追求します。

 

 

[長期ビジョン]

 

 RAIZNEXT Group V-2032


変革の時代に、進化したプラントサービスを

 

・エネルギーに携わる企業としての社会的責任を全うし、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

・常に最新の技術を導入・洗練し、メンテナンス・エンジニアリングの両輪でパートナー企業と共に最大限の顧客価値を提供し続けます。

・人々の暮らしを支えるプラントの安定稼働を守る柱であるというプライドを持ち、従業員がやりがいをもって働くことのできる会社を目指します。

 

 

 

[行動指針]

進取果敢

 

既存の枠組みに捉われず

新しい発想で積極的に

挑戦します。

 

誠心誠意

 

お客様によりそい

一つひとつの仕事に

心を込めて取り組みます。

 

共存共栄

 

関係する全ての人を尊重し

ステークホルダーとともに

発展します。

 

 

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

① 第2次中期経営計画の総括

 2021年度~2024年度の4年間は統合によるシナジー効果の創出期間であるとともに、長期ビジョン実現のための基盤づくりを行う期間と位置づけ「RAIZNEXT SYNERGY POWER」をテーマに取り組みを推進してきました。

「経営基盤の強化」、「メンテナンス事業の強化」、「エンジニアリング事業の強化」、「タンク事業の強化」を基本戦略とし各種施策を推進した結果、完成工事高(連結)目標1,450億円に対し実績1,573億円、営業利益(連結)目標105億円に対し実績108億円、親会社株主に帰属する当期純利益(連結)目標70億円に対し実績81億円、ROE目標8.0%に対し実績9.6%、連結配当性向目標40%以上に対し実績60.3%となり、すべての業績目標および経営指標の目標値を達成いたしました。

 また、第2次中計テーマである2019年の経営統合に伴うシナジー効果については、完成工事高累計目標200億円以上に対し実績266億円、経常利益累計20億円以上に対し実績25億円と、こちらも目標を達成いたしました。

 第2次中期経営計画期間における取り組み成果と課題は次のとおりです。

1)経営基盤強化

 コーポレートガバナンス・リスクマネジメント体制の整備、安全・品質管理体制の高度化を図るとともに、持続的な会社の成長と企業価値向上を目指し、サステナビリティ経営を推し進めるため外部へのESGデータの開示やGHG排出量削減目標(Scope1&2)の策定・開示を行いました。

 また2024年時間外労働上限規制への対応においては、時間外労働ガイドライン作成・人員採用等、各種施策の確実な実行と改善を継続しています。

 従業員に対しては、働きやすい職場環境実現のため、制度改革や工事現場仮設事務所等における執務環境の改善を継続し、老朽化した事業所事務所の建て替え、ネットワークインフラ更新等のBCP対策も積極的に進めました。第2次中期経営計画期間中に構築した各体制やインフラの適切な運用と強化により、さらなるガバナンスの強化、人材確保と育成、安全・品質向上が必要と認識しております。

2)メンテンナス事業の強化

 全体最適を目的に組織統合を実施した結果、機動的な人員配置が可能となり、大規模定期修理工事や新たな工場への参入など受注・収益の拡大を果たしました。また、協力会社を含めた技能者育成や施工体制の強化を図り、安全性向上・効率化に向けた施工作業の自動化、機械化の推進にも取り組みました。

コア事業としての競争力を一層強化すべく、労働生産性向上を目指し、リソース管理の高度化、さらなる機械化・自動化の加速が必要と認識しております。

3)エンジニアリング事業の強化

 エンジニアリング事業においては、新規メガソーラー発電所やグリーンアンモニア製造プラントの建設工事等、カーボンニュートラル社会に向けた新たな分野の工事受注を進めました。 

また、閉鎖製油所の将来計画への積極的な参画に努め、プラント無害化工事や設備撤去工事等の基盤整備工事の受注に加え、顧客と協働して新規事業の事業化に向けた検討にも取り組みました。電気自動車の普及や社会のIT化などにより需要が旺盛な非鉄金属分野においても、工場の新設および増設工事を継続して受注しております。

GX推進に伴う設備投資拡大に対応すべく、DX推進によるエンジニアリングのさらなる高度化・遂行力強化が足元の課題と認識しております。

4)タンク事業の強化

 タンク事業においては、設計から施工計画・施工支援までの一気通貫体制を構築し、全国事業所ネットワークを活かして、未参入の石油備蓄・製油所のタンク工事を新規受注いたしました。また、溶接技術者等の人材不足および作業環境の改善に向けて自動溶接技術の確立およびロボット実装化の推進、化石燃料に替わるエネルギーとして期待される水素やアンモニア貯蔵タンクの設計・施工技術の検討にも取り組みました。

LNGや液化水素などの低温タンク分野への進出を目指すべく、カーボンニュートラル案件受注体制の早期確立、製作/検査ロボットの早期実装が課題と認識しております。

 

② 第3次中期経営計画の概要

 当社を取り巻く事業環境においては、第2次中期経営計画期間における事業環境から継続し、ESGに関する社会意識の高まりに伴うカーボンニュートラル社会への対応、建設業界における労働人口減少への対応、デジタル革命進展への対応など、様々な課題への対応が求められています。

レイズネクストグループでは、第2次中期経営計画の課題と当社を取り巻く事業環境を踏まえ、2025年3月に第3次中期経営計画を策定しました。

 第3次中期経営計画における基本戦略は、これまでの取り組みから継続し、「経営基盤の強化」、「メンテナンス事業の強化」、「エンジニアリング事業の強化」、「タンク事業の強化」を柱とし、「RAIZNEXT X CHALLENGE」(X:トランスフォーメーションを指す)をテーマに、従来のやり方にとらわれず各種取り組みに挑戦し、長期ビジョン実現の総仕上げとなる第4次中期経営計画に向けチャレンジしていきます。

1)経営基盤強化

 経営基盤における“X”としてDXによる「業務プロセス改革(安全/品質管理の高度化、業務改革の推進、データドリブン経営等)」や、「人材育成の強化」、「健康経営の促進」、「新しい働き方の推進」に取り組み、さらなるガバナンスの強化、人材確保と育成、安全・品質向上を実現します。

2)メンテンナス事業の強化

 メンテナンス事業の“X”として「施工作業のさらなる機械化/自動化による安全性向上、省力化、効率化」、「次世代メンテナンス技術の開発/導入」、「施工管理業務の高度化」などに取り組み、コア事業としての競争力を一層強化していきます。

3)エンジニアリング事業の強化

 エンジニアリング事業の“X”として「3D設計/AI設計推進、BIM/CIM構築」、「先進的プロジェクト管理システム導入」、「高度な解析ソリューション」などに取り組み、エンジニアリングのさらなる高度化・遂行力強化を目指します。

4)タンク事業の強化

 タンク事業の“X”として「低温タンク(LNG/液化水素)分野での受注体制構築」、「製作/検査のロボット化」、「自動溶接の現場実装」などに取り組み、タンク事業のさらなる拡大を目指します。

 

 なお、第3次中期経営計画では、次の経営数値目標を掲げております。

 

① 業績計画

第3次中期経営計画最終年度(2028年度 2029年3月期)業績目標

<連結>                               

 

2028年度目標(2029年3月期)

完 成 工 事 高

1,710億円

営 業 利 益

136億円

親会社株主に帰属する当期純利益

 93億円

 

 

② 経営指標の目標値

     自己資本当期純利益率(ROE)・・・ 9.5%以上

 連結配当性向 ・・・・・・・・・・60%以上

 

   (注)上記KPIについては、有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に

      基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

 長期ビジョン、第3次中期経営計画の詳細につきましては、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、そちらをご参照願います。(https://www.raiznext.co.jp/)

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ経営

  サステナビリティ基本方針

 レイズネクストグループは、「産業インフラを支える。豊かな未来を拓く。」という企業理念のもと、健全で透明性の高い経営と社会・環境に調和した事業活動を通じて、ステークホルダーの皆さまの信頼をより確かなものにするとともに、社会の持続的発展への貢献と中長期的な企業価値の向上を図るため、積極的にサステナビリティへの取り組みを推進します。

 ① ガバナンス

 社会の持続的発展への貢献と中長期的な企業価値の向上を目的として、当社は社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ経営に関する戦略を中心に協議しています。

 また、サステナビリティ委員会の下部組織「サステナビリティ推進会議」にて、その戦略に基づく具体的施策の進捗状況の管理等を行う体制としています。

 なお、サステナビリティ委員会における協議結果は、取締役会に報告し、取締役会にて適切に監督されています。

 


 

 ② 戦略

 2050年へ向けてのカーボンニュートラル社会を目指す世界的潮流において、当社はエネルギー産業を支える会社として、社会的な課題に対する挑戦に貢献できるものと考えております。このようなエネルギー産業の変革の時期を踏まえて、当社は2021年に、長期ビジョンRAIXNEXT Group V-2032を策定し、2032年までの中長期的に目指す“ありたい姿”を掲げ、カーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組んでおります。

 


 


 

 ③ リスク管理

 当社は、長期ビジョンの実現に向けて、企業価値向上およびサステナブルな事業をおこなうため、サステナビリティ経営に関わる重要課題(マテリアリティ)を特定しております。特定された重要課題(マテリアリティ)ごとに、リスクを把握したうえで、取り組み項目を決めております。

 

 また、リスクに関しては、全社的リスクマネジメント委員会において、サステナビリティ経営に関わる事項も含めてリスクを管理しております。全社的リスクマネジメント委員会において管理されたリスクの中で、サステナビリティ経営に関わる重要課題(マテリアリティ)に関するリスクは、翌年度のサステナビリティに関する取り組みを決定する際に確認され、必要に応じて取り組み項目に反映しております。

 

 ④ 指標及び目標

 当社は、サステナビリティに関する事業上のリスクを特定したうえで、当社のマテリアリティを選定し、毎年取り組み項目を定めております。2024年度の取り組み項目および指標は以下のとおりです。

 


 

 


 

 


 

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

 ① ガバナンス

 ・気候変動に関わる基本方針や重要事項、リスク(脅威と機会)などについては、経営企画部管掌役員を議長とする「サステナビリティ推進会議」ならびに社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」で討議・検討・評価します。

 ・「サステナビリティ委員会」で協議された内容は、取締役会に年1回報告し、取締役会が管理・監督を行います。

 ・取締役会で報告された内容は、各部門に展開され、それぞれの経営計画・事業運営に反映します。

 

 

 ② 戦略

 中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスクを踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、当社はIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(2℃シナリオおよび4℃シナリオ)※を参照して、2040年までの長期的な当社への影響を考察し、メンテナンス事業とエンジニアリング事業を対象にシナリオ分析を実施しました。

※2℃シナリオ(移行):気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ

  4℃シナリオ(物理):気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ

 


 

 ③ リスク管理

 ・気候変動リスクの優先順位付けとして、リスクの自社への発生可能性と影響度の大きさを勘案しながら、重点リスク要因に注力して取り組みます。

 ・気候変動リスクの管理プロセスとして、「サステナビリティ委員会」を通じて、気候変動リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践していきます。

 ・「サステナビリティ委員会」で分析・検討された内容は、経営会議に報告後、取締役会に報告し、全社で統合したリスク管理を行います。

 

 

 

 ④ 指標と目標

 ・気候変動リスクが経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量を指標とします。従来からの取り組みに加えて、再生可能エネルギーや新エネルギー関連技術の導入、脱炭素の資材や機材の使用等で、脱炭素社会への貢献に向けて取り組んでいきます。

 ・対象範囲をレイズネクスト株式会社および連結子会社とし、当社グループは自社の事業活動に関わるScope1とScope2の排出量について、2030年度までに2021年度比で30%の削減を目指します。

 


(注)記載事項のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、入手可能な情報等に基づいて基づいた予測です。

 

(3)人的資本 

 当社は、企業理念や行動基準、行動指針をきちんと認識し、コンプライアンスや社会規範を守りながら、既存の枠組みに捉われず、新たな発想で積極的に挑戦できる人材を継続的に育成しています。また、従業員ひとりひとりの個性、考え方、ライフプラン等を尊重し、個々の成長に向けた自主的な取り組みを積極的に支援する体制を整備しています。

 

 具体的には、「マルチステークホルダー方針」に基づき経営資源を有効に活かし企業価値を向上させるため、人事部に採用育成グループを設置し、体系的な知識や専門的なスキルを身につける教育を実施するとともに、自己啓発を奨励する制度を整えております。また、当社事業の核である監督者育成については、工務部に教育・訓練グループを設置し、個人の力量に応じた各種技術研修を実施することで、施工管理能力の維持・向上を図っております。

 

 ① ガバナンス

 当社は、年に2回教育訓練検討会議を開催し、教育・訓練の基本方針、教育・訓練計画などを協議・決定しその内容を社内に公表しています。

 

 

 ② 人材育成の方針

  当社にとって、最大の資産は「人」です。「生涯育成」をテーマに、新入社員からベテラン社員までの全階層に、さまざまな成長の機会を提供しています。

  その一つとして、技術系社員については、入社後6年目までの教育プログラムを策定し、当社事業の柱であるメンテナンスとエンジニアリングの両事業で活躍できる監督者の早期育成に努めております。

 

 


 

 


 

 ③ 社内環境整備方針

 当社は、企業理念(『産業インフラを支える。豊かな未来を拓く』)の実現に向けて、従業員それぞれの人格や 性別、年齢、国籍、思想信条、宗教、障がいの有無、人権、ライフステージ等の多様性を尊重し、ワークライフバランスと心身の健康を保ち、安全、安心で、やりがいをもって働ける社内環境(労働環境や諸制度など)を整備しています。

 また、既存の取り組みに捉われず、新たな発想で積極的に挑戦できる人材を計画的に育成するために、従業員がお互いを高め合いながら、自主的に努力を継続でき、成果が適正に評価される仕組みをつくっています。

 具体的には、テレワークや男性の育児休業取得を推進し働きやすい環境を整えることで、従業員の定着化および多様な人材の確保を図っております。さらに、企業理念や経営戦略の共有、社員の多様な意見の吸い上げを図るべく、社長と若手社員の意見交換会を、また、女性活躍推進という観点から、推進部門を立ち上げ、女性社員がそれぞれの能力を発揮できる環境整備を推進します。加えて、経営統合後、従業員意識アンケートを継続的に実施し、その結果を踏まえて、社員が、より力を発揮できる働きやすい環境への改善を進めております。

 

 

 

社内制度

  支援制度の特徴

 

 

 

 

従業員の健康管理

定期健康診断

法定外検査や女性向けに特化した検査

メンタルヘルスケア

各種相談窓口(社外含む)

・ハラスメント相談窓口

・面談カウンセリング

・なんでも相談窓口

・育休専用相談窓口

・介護専用相談窓口

年1回のストレスチェックを実施

 

 

 

ワークライフバランス支援

産前産後休暇(女性)

休業から復帰した後も1日の勤務時間を短縮できる制度があり、家庭と仕事の両立しやすい

育児・介護休業制度

マタニティ休暇(女性)

妊娠期間中の社員が、体調不良または通院するときに、妊娠期間内に20日まで休暇を取得できる

フレックスタイム制度

コアタイム外の時間帯において始業および終業時刻を従業員が自由に設定

テレワーク勤務制度

従業員が働く場所を選ぶことができ、家庭と仕事の両立がしやすい

リフレッシュ休暇制度

一定の勤続年数に達するたびに、連続3日の休暇および給付金の支給

従業員エンゲージメント

従業員と経営層の意見交換会

若手社員が直接、社長、副社長と意見を交わす意見交換会を開催

従業員意識調査アンケート

全社員の意識調査を実施し、その結果を方針等に反映

 

 

 ④ 指標と目標・実績 

 2025年度の指標としては、前述当社サステナビリティにおける指標および目標に記載のとおり、マテリアリティ「全ての人にとって、働きがいのある魅力的な職場環境の実現」への取り組みとして、人材育成、社内環境整備への取り組み項目、KPIを掲げております。

 

    当事業年度の実績

当事業年度

管理職に
占める
女性労働者の割合
(注)1

男性労働者の
育児休業等
取得率
(注)2

 
労働者の男女の
賃金の差異
(注)1

 
障がい者
雇用率

 
年次有給
休暇取得率

 
定期
健康診断

1.6

91.4

全労働者

68.6%

2.94%

84.4%

2実施

正規雇用労働者

71.1%

有期労働者

52.8%

 

注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

      2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等の所得割合を算出したものであります。

      3.なお、連結子会社については、一部の会社のみが具体的取組を行っているため、上記の実績は提出会社のみを記載しております。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、以下のような項目があります。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生回避および発生した場合の対応に努める所存であります。なお、これらの項目のうち、将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 連結会社(当社および連結子会社)の経営成績等の状況の異常な変動

 

分類

内容

統制活動の内容

受注工事高減少(メンテナンス事業)

 当社グループの事業は、石油・石油化学・一般化学等のプラント関係のメンテナンスをコアビジネスとしております。

 ここ数年は、当社グループが特に影響を受けやすい石油燃料に関わるプラントの停止等がみられ、プラントメンテナンス市場の縮小に伴う受注工事高の減少が今後も懸念されます。

 メンテナンス事業においては、受注工事高の大幅な減少など経営成績に大きな影響を及ぼすことのないよう、既存顧客のシェア拡大や新規顧客の開拓など、各種の施策を推進してメンテナンス事業に係る受注工事高減少に対処しております。

受注工事高減少(エンジニアリング事業)

 当社グループは、メンテナンス事業と並んで、石油・石油化学・一般化学等のプラント関係のエンジニアリング事業(新設および改修工事)にも力を入れております。

 エンジニアリング事業においては、主要顧客の既存領域については、製品の需要動向等の要因から設備投資が減少しており、これに伴う受注工事高の減少が懸念されます。

エンジニアリング事業においては、大型装置改造・改修工事、FS・FEED業務からの参入によるプラント建設工事に加え、新たな事業領域としてカーボンニュートラル案件等の脱炭素社会に向けた投資案件の受注拡大を目指すなど、中期的な投資計画の情報収集を行い、エンジニアリング事業に係る受注工事高減少に対処しております。

資機材価格高騰

 プラントのメンテナンスおよび建設関係に使用する資機材等の価格が高騰した際、それを請負金額に反映することができずに業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 特に、工期が長期間にわたる場合に、当社が見積り・受注する時点と、協力会社等に工事を発注する時点との間にタイムラグがあり、この間に価格が高騰した場合には、当初の想定よりも収益が低下する恐れがあります。

 資機材価格の高騰に関して、それぞれの価格動向に関する情報の収集・発信に努めるとともに、資機材の早期発注、多様な調達先の確保、契約内容への価格高騰時の条件盛り込み、工事価格への転嫁等の対策を実施し、リスクの低減に努めております。

工事従事者不足

 工事監督者や工事作業員等の工事従事者が不足した場合、定期修理工事や建設工事の遅延が発生する恐れがあります。

 プラント市場における建設労働力の動向や将来の中期的な工事需要の予測に基づき、必要な工事従事者数の把握に努めております。また、これらの情報を協力会社と共有化して連携を強化することにより、工事従事者不足のリスク低減を図っております。

賃金高騰

 工事従事者の賃金が高騰した場合には、工事原価の増加により工事採算が悪化し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 工事従事者の賃金の高騰に関して、工事価格への転嫁や工事需要に基づいて安定的・計画的に協力会社等へ工事を発注することにより、急激な賃金高騰リスクの低減に努めております。

 

 

 

(2) 特定の取引先・製品・技術等への依存

 

分類

内容

統制活動の内容

特定業界・特定取引先への依存

 当社グループの事業は、石油・石油化学業界が主要な顧客であり、当該顧客に対する受注高・完成工事高が大きなウエイトを占めております。

 このため、国内におけるエネルギー政策や石油製品の需要、設備の合理化や事業再編等、業界の動向が当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 石油・石油化学業界では、将来的な石油製品需要の減少が予想され、業界再編や設備再編等が進展する一方で、これら設備廃止等で遊休となった用地への再生可能エネルギー設備の新設やグリーン水素関連のインフラ設備計画など、新たな設備投資が見込まれています。

 当社では、既存プラントの経年化対策工事や安全・安定稼働のためのメンテナンス需要に対応して業績の維持・拡大に努めるとともに、カーボンニュートラル案件等の新規領域における受注拡大を目指しております。

 

(3) 特有の法的規制・取引慣行・経営方針

 

分類

内容

統制活動の内容

コンプライアンス

 当社グループは、建設業法をはじめ様々な関係法令の適用を受けております。

 当該法令のみならず、当社の社内規程の遵守を含めた当社グループのコンプライアンス体制が十分に機能しなかった場合、当社グループが行政処分や訴訟等の対象になるなど、当社グループの信用、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、行動基準の第1項に「法令および社内規程の遵守」を掲げ、公正で透明性の高い企業活動を行う旨宣言しており、これを当社グループ内に周知・徹底しております。

 また、次のとおり、当社グループのコンプライアンス体制を整備・運用しております。

1.コンプライアンス委員会を年2回開催し、コ 

 ンプライアンス体制強化に係る年度活動計画の 

 策定および活動状況のチェックを行う

2.全員参加型の自主点検活動である「遵法状況

 点検」を毎年実施し、遵守法令の確認、コンプ

 ライアンス上疑義のある行為の早期把握・是正

 に努める

3.社内法務部および社外の法律事務所を窓口と

 した「コンプライアンス・ホットライン制度」

 の整備・適正運用を図る

4.建設業法、安全保障貿易管理関連等重要法令

 に係るコンプライアンス関連教育・研修を実施

 する

5.執行部門から独立した内部監査部門による内

 部監査を実施する

内部統制

 内部統制体制が十分に機能しない場合、業務の適正を確保できなくなり、当社グループの業績および財政状態、財務報告の信頼性等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、社会的信頼の失墜につながる不正行為の未然防止や会社目標達成に向けたルールや仕組み作り等、内部統制システムの整備・運用を図っております。

 具体的には、当社取締役会で決議された「内部統制システムの整備・運用に関する基本方針」に基づき、業務の適正を確保する体制を構築・運用しています。体制としては内部統制委員会を設置し、この委員会において毎年定期的に内部統制システムの整備・運用状況の確認およびこれに係る計画を確認したうえ、その結果を経営会議において審議し取締役会で報告しています。また、財務報告の信頼性確保のため金融商品取引法に基づく内部統制にも対応しております。

 

(4) 重要な訴訟事件等の発生

 

分類

内容

統制活動の内容

重要な訴訟

 当社グループの事業活動に関連して、当社グループに対して訴訟その他法的措置が提起された場合、その内容によっては、当社グループの信用、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 各事業活動に係る契約の事前審査、社内決裁や取締役会決議に先立つ徹底したリーガルチェックの実施など、コンプライアンス体制の整備・適正運用を通じて、訴訟リスクの未然防止・軽減に努めております。また、取引先との間で紛争に発展する恐れのある事態に備え、あらかじめ社内法務部門に相談する体制を整備しております。さらに、万一、訴訟等が提起された場合に備え、社外の法律事務所と連携し、訴訟等に的確に対応する体制を整備しております。

 

 

(5) その他投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項

 

分類

内容

統制活動の内容

品質管理

 設計・施工の品質管理には万全を期しておりますが、契約不履行責任および製造物責任に基づく損害賠償が発生した場合には、当社グループへの信頼、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 事業に関連する各種法令や、ISO9001に基づく品質マネジメントシステム、各種技術基準等の遵守をはじめ、社内教育の充実や適正な人員配置等のマネジメント強化、業務遂行に関するルール・手順の見直し・整備、情報共有の強化などにより、品質向上に資する仕組を整備し、設計や施工等の品質確保と品質不適合の発生防止に努めております。

 また、当社の契約不履行による品質トラブルが発生した場合に備え、これに対応する各種保険に加入することにより、費用負担の軽減に努めております。

情報セキュリティ

 当社グループは、事業の遂行に必要な顧客や取引先情報、個人情報を管理しているほか、技術・営業・施工・経営情報等の事業に関する機密情報等を保有しております。

 コンピュータウイルスの感染、外部からの不正なアクセス、標的型のメール、サイバー攻撃、その他不測の事態により、重要な情報が社外に漏洩した場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、顧客や取引先の情報、個人情報、技術情報等についての秘密保持に係る規程を整備するとともに、取引基本契約に秘密保持条項を盛り込む等の対策をとっております。

 コンピュータのウイルス感染やサイバー攻撃については、情報漏洩、悪用を防ぐためのセキュリティ対策や、定期的な教育、標的型攻撃メール訓練の実施等を通じて従業員の意識の向上に努める等、これらのリスクの回避・影響の最小化に努めております。

自然災害

 地震、台風等の自然災害によって、正常な事業活動ができなくなる可能性があります。

 当社グループでは、「危機管理規程」に基づき、大地震、台風等の自然災害のリスクが顕在化した場合の対応に備えております。災害発生時においては、ただちに従業員の安否確認を実施するなど、人命と安全に最大限に配慮しつつ、顧客との連携を密にして、プラントの早期復旧に取り組むこととしております。

 また、東日本大震災以降、主要仕入先の所在地・在庫品目・在庫量等について都度モニタリングを行い、不測の事態が発生した場合も供給体制が整えられるよう努めております。

 なお、平時においては、安否確認システムの整備、非常用物資の備蓄、情報資産のクラウド化、顧客との災害時応援協定の締結、社内教育および訓練の実施など災害発生時に備えております。さらに、首都直下地震により本社が被災した場合に備え、首都圏外の事業所に暫定的な対策本部を設置することなどを含む事業継続計画を策定し、当該計画の運用・見直しを進めております。

プラント事故

 当社グループがメンテナンスや建設工事に携わったプラントに、何らかの原因によって操業停止、爆発、火災等の重大事故が発生し、その発生原因が当社グループの責任である場合には、損害賠償責任、プラントの復旧に係る負担等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、「危機管理規程」に基づき緊急事態に備えております。また、事業に関連する各種法令や、ISO9001に基づく品質マネジメントシステム、現地工事安全衛生管理基準、作業安全基準、各種技術基準等の遵守を徹底することで、施工上の事故や品質不適合の発生防止に努めております。加えて、事故や契約不履行が発生した場合に備え、各種保険に加入することにより、費用負担の軽減に努めております。

 

 

 

分類

内容

統制活動の内容

労働災害

 当社グループは、プラントのメンテナンスや建設工事にあたり、工事上の安全について徹底した管理を行っております。しかしながら、万一、労働災害、事故が発生した場合は、当社グループへの信頼の失墜につながり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 プラントのメンテナンスや建設工事にあたり、安全衛生に係る各種法令や規程・マニュアル等の遵守および各種現場パトロールでの安全衛生実施状況の確認と指導による徹底した安全管理を行うとともに、労働災害・事故が発生した場合に備えて各種保険に加入することにより、費用負担の軽減に努めております。また、事業活動に重大な影響を及ぼす労働災害が発生した場合には、「危機管理規程」に基づき対応することとしております。

人材の確保

 当社グループは、事業の維持・成長に必要な人材の確保に努めております。国内の少子・高齢化や景気動向による労働市場の需給バランスの変化、人材の流動化の進展等により、人材の確保が想定どおりに進まない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 安定的に事業を継続するためには、長期的な視点に立った人材の確保が必要です。人材の確保については、新卒採用だけでなく、積極的な中途採用を進めるとともに、女性社員の積極的採用と育成、人材の多様化促進にも取り組んでまいります。また、人事諸制度に基づいた公平な評価、処遇の充実など仕組みの構築を図り、従業員の帰属意識を高める施策により人材の定着を図っております。

 なお、人材育成については、若手技術系社員への教育プランを実施することで、早期育成に取り組んでおります。

労働基準法改正への対応

 法改正に基づき、2024年4月から、建設業の労働時間の上限規制が施行されております。上限規制を遵守できない場合は罰則が科せられ、その結果、当社グループへの信頼を失い、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、時間外労働時間の削減、健康管理への取組み、有給休暇取得の推進・強化のための各種施策の徹底を図っております。

 具体的には、2020年度より「時間外労働管理ガイドライン」を制定し、時間外労働時間の管理・徹底を図るとともに、人員の増加・適正な配置等も計画的に実施しております。

 また、現場においては大型案件に従事する人員の調整や負荷の多い責任者クラスの早期育成による増員対策にも取り組んでおります。あわせて、人手不足や工事の集中化などによる長時間労働の対策として、工事工程の調整や休日の確保などの施策を顧客と協力して取り組み、労働時間のさらなる削減に努めております。

新技術への対応

 新技術やデジタル技術の活用が遅れ、生産性の向上が図られず、競争優位性が損なわれ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、各種工事の機械化に加え、デジタルツールを用いた工程管理システム等を積極的に導入し、業務効率化を図っております。

 また、2023年度よりデジタル戦略部を設置しデジタル技術の活用を進めており、2025年度からDX本部に組織改編し全社的なDX推進を強化しております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
 ① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度のわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり、景気は緩やかに回復しております。他方、アメリカの通商政策等の影響による国内景気の下振れリスクが高まっているほか、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響なども、国内景気を下押しするリスクとなっております。

 当社を取り巻く事業環境につきましては、国内の石油製品需要は、電気自動車の普及や低炭素燃料への転換等によるエネルギー構造の変化の影響を受け、引き続き減少していく見込みであります。一方で、政府の「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され、産業界では、カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組みが加速することが期待されます。

 当社グループにおきましては、前期比で、メンテナンス分野では主に定期修理工事により、エンジニアリング分野では主に中小規模工事により、受注高、完成工事高ともに増加しました。その結果、完成工事総利益も増加しました。

 

(財政状態)

 当連結会計年度末の資産合計は、1,151億96百万円で前連結会計年度末より、44億50百万円増加しました。これは、現金及び預金89億16百万円減少したものの、受取手形、完成工事未収入金及び契約資産131億47百万円増加したこと等によるものであります。

 当連結会計年度末の負債合計は、295億41百万円で前連結会計年度末より、29億18百万円増加しました。これは、短期借入金14億99百万円未払法人税等8億4百万円賞与引当金4億57百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。

 当連結会計年度末の純資産合計は、856億54百万円で前連結会計年度末より、15億31百万円増加しました。これは、利益剰余金6億17百万円増加したこと等によるものであります。

(経営成績)

 当社グループの連結の業績は、受注高1,617億47百万円(前期比6.6%増)、完成工事高1,573億71百万円(前期比12.1%増)、営業利益108億58百万円(前期比8.9%増)、経常利益110億94百万円(前期比8.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益81億円(前期比11.7%増)となりました。

当社単体の業績は、受注高1,523億92百万円(前期比5.7%増)、完成工事高は1,487億69百万円(前期比12.2%増)、営業利益99億48百万円(前期比9.0%増)、経常利益107億50百万円(前期比11.8%増)、当期純利益80億99百万円(前期比20.6%増)となりました。

 

    受注高の工事種類別内訳                          (単位:百万円)

 

受注高

前連結会計年度(2024年3月期)

当連結会計年度(2025年3月期)

前期比

増減率

 

メンテナンス

105,736

114,405

8,669

8.2%

 

エンジニアリング

46,045

47,341

1,295

2.8%

エンジニアリング業

151,781

161,747

9,965

6.6%

 

 

    完成工事高の工事種類別内訳                        (単位:百万円)

 

完成工事高

前連結会計年度(2024年3月期)

当連結会計年度(2025年3月期)

前期比

増減率

 

メンテナンス

100,288

113,002

12,713

12.7

 

エンジニアリング

39,975

44,333

4,358

10.9

エンジニアリング業

140,264

157,336

17,072

12.2

その他事業

101

35

△66

△65.0

合 計

140,366

157,371

17,005

12.1

 

 

  (注)その他事業は、前期は不動産の賃貸業務等、当期は人材派遣業等であります。

 

  ② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金および現金同等物は、前連結会計年度末に比べ88億70百万円(前期比71.3%)減少し、期末残高は35億75百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、△1億7百万円となり、前連結会計年度に比べ36億73百万円の減少になりました。主な支出は、売上債権の増加額129億45百万円、主な収入は、税金等調整前当期純利益114億85百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、△23億4百万円となり、前連結会計年度に比べ5億66百万円の増加となりました。主な支出は、有形及び無形固定資産の取得による支出34億53百万円、主な収入は、有形及び無形固定資産の売却による収入6億86百万円、投資有価証券の売却による収入6億95百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、△64億90百万円となり、前連結会計年度に比べ6億91百万円の減少となりました。主な支出は、配当金の支払額76億50百万円、主な収入は、短期借入金増加額15億円によるものであります。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

 1) 受注実績

事業セグメント別

区分

前連結会計年度(百万円)

当連結会計年度(百万円)

エンジニアリング業

 

 

  石油・石油化学関係

106,679

111,904

  一般工業関係

45,102

49,843

合計

151,781

161,747

 

 

 2) 売上実績

事業セグメント別

区分

前連結会計年度(百万円)

当連結会計年度(百万円)

エンジニアリング業

 

 

  石油・石油化学関係

104,418

113,489

  一般工業関係

35,845

43,846

140,264

157,336

その他の事業

101

35

合計

140,366

157,371

 

 

工事種類別

区分

前連結会計年度(百万円)

当連結会計年度(百万円)

エンジニアリング業

 

 

  メンテナンス

100,288

113,002

  エンジニアリング

39,975

44,333

140,264

157,336

その他の事業

101

35

合計

140,366

157,371

 

(注) 1 当社グループでは、エンジニアリング業以外は受注生産を行っておりません。

2 当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載を省略しております。

3 主な相手先別の完成工事高および総完成工事高に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

完成工事高(百万円)

割合(%)

完成工事高(百万円)

割合(%)

ENEOS株式会社

57,037

40.6

66,882

42.5

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、期末日現在の資産、負債および期間中の収益、費用の報告額に影響する判断および見積りが要求され、過去の実績および状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて行っております。

当社グループは特に以下の会計方針の適用において見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。

1)貸倒引当金

当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等の特定の債権については、保守的に見積った回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。

取引先の財政状態および業績が見込以上に悪化した場合等、貸倒懸念債権等の特定の債権の回収可能性の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において貸倒引当金の追加計上が必要となる可能性があります。

2)工事損失引当金

当社グループは、受注工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における未引渡工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積もることができる工事について、損失見込額を工事損失引当金として計上しております。

実際の工事施工状況が予定から乖離する等、工事損失発生の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において工事損失の追加計上が必要となる可能性があります。

3)完成工事補償引当金

当社グループは、完成工事に係る瑕疵担保等の費用に備えるため、過去の経験割合に基づく一定の算定基準を基礎に、期末日現在において予定されている瑕疵担保等の費用を合理的に見積った補償見込額を加味して完成工事補償引当金として計上しております。

瑕疵担保等の費用の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において補償損失の追加計上が必要となる可能性があります。

4)退職給付に係る負債

当社グループは、従業員の退職給付に備えるため、見積りを反映した各種の仮定に基づく数理計算により算出された退職給付に係る負債を計上しております。

これらの各種仮定には、割引率、長期期待運用収益率、予想昇給率等が含まれており、実際の結果が見積りの前提と異なる場合、または前提が変更された場合、来期以降の連結財務諸表において退職給付債務および費用に影響する可能性があります。

5)繰延税金資産

当社グループは、期末日後将来的に発生する課税所得を見積り、当該課税所得に係わる税金負担を軽減する効果を有すると判断した回収可能額を繰延税金資産として計上しております。

将来課税所得の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において繰延税金資産の調整額の計上により損益に影響する可能性があります。

6)収益及び費用の計上基準

当社グループは、履行義務の充足に係る進捗度の合理的な見積りができる工事については、一定期間にわたり履行義務が充足されると判断し、履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しております。進捗度は、当連結会計年度末までの既発生原価累計額を工事完了までの見積総原価と比較することにより測定しております。また、履行義務の充足に係る進捗度の合理的な見積りができない工事については、原価回収基準、工事期間が短いメンテナンス工事については、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識しております。

実際の工事施工状況が予定から乖離する等、工事収益総額および工事原価総額の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において工事損益に影響する可能性があります。

7)固定資産の減損

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについては、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。

減損の兆候の把握、並びに減損損失の認識および測定の前提となる割引前将来キャッシュ・フローの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1) 経営成績等の状況

当社グループの当期の経営成績は、受注高1,617億47百万円(前期比6.6%増)、完成工事高1,573億71百万円(前期比12.1%増)、営業利益108億58百万円(前期比8.9%増)経常利益110億94百万円(前期比8.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益81億円(前期比11.7%増)となりました。

  ア 受注高および完成工事高

 受注高が前期比で99億65百万円増加、完成工事高が前期比で170億5百万円増加となった要因は、メンテナンス分野では主に定期修理工事が、エンジニアリング分野では主に中小規模工事が増加したことによるものです。

 イ 営業利益

 営業利益は、総利益が完成工事高の増加により前期比で増加となったことにより、前期比8億89百万円増加108億58百万円となりました。

 ウ 経常利益

 経常利益は、営業外損益において収支差し引きでプラス2億35百万円となり、前期比8億33百万円増加の110億94百万円となりました。

 エ 親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比で8億51百万円増加81億円となりました。

 

2) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3事業等のリスク」に記載したとおりであります。当社グループを取り巻く環境は、石油業界では、国内需要の低下により、製品需要は減少傾向が継続するものの、閉鎖製油所や遊休地の有効活用に向けた基盤整備工事の需要が新たに発生するものと予想されこれら需要の取り込みが当社の課題と考えております。

3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの当期末における現金および現金同等物は、前期末に比べ88億70百万円(71.3%)減少し、期末残高は35億75百万円となりました。概要については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当期におけるキャッシュ・フロー施策として、新規分野、新規事業への参入を行い、健全なキャッシュ・フローを維持できる収益の確保に努めてまいりました。

また、金融機関との取引関係の維持、調達先の分散など、資金調達リスクを軽減するため様々な対策をとっております。

4) 経営戦略の現状と見通し

当社グループは、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題」に記載したとおり、将来の事業環境を踏まえ、2021年3月に「2032年度までに当社グループがありたい姿」を描いた長期ビジョンである「RAIZNEXT Group V-2032」を策定いたしました。また、第2次中期経営計画の課題と当社を取り巻く事業環境を踏まえ、2025年3月に第3次中期経営計画を策定しました。計画の詳細につきましては、2025年5月14日に開示しております「第3次中期経営計画を策定について」をご参照ください。当該計画では「RAIZNEXT X CHALLENGE」をテーマとし、従来のやり方にとらわれず、あらゆる変革に挑戦する期間と位置付けて、目標の達成を目指してまいります。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、当社が顧客に提供するソリューション・サービスに係る技術力の強化を目指し、「メンテナンス事業の強化」をキーワードに研究開発活動を展開しています。

当期は安全・品質向上、作業の非熟練化、軽労化、作業の機械化および現場業務のIT化を目指し、DX(Digital Transformation)の推進を図ると共に、各種先進技術の導入・活用を進めてまいりました。

 なお、当期の研究開発費の総額は85百万円であり、主な取り組み内容は次のとおりです。

 

(1)メンテナンス作業の機械化

既存技術の付加価値向上に加え、安全・品質向上、作業員の非熟練化、および軽労化を目的とした作業の機械化に取り組みました。

①熱交換器チューブバンドルのリチュービング(チューブ取替)作業に関連する技術

技術者不足の懸念がある熱交換器チューブバンドルのリチュービング作業の機械化に向けて取り組んでおります。当期ではリチュービング用機材であるMAUS社製GRIPPULの有効性について、当社保有訓練施設における実機テストによる評価ならびに定期修理工事現場におけるフェルール(熱交換器チューブに挿入された内管)取外し作業による評価を行い、機械化による優位性の確認を行いました。検証結果から一定の評価が得られたため、次期では機材のパッケージング化を行うことで早期に現場へ展開し、作業の安全品質向上を目指します。

②熱交換器チューブ内面洗浄の自動化

作業者の高齢化が深刻な熱交換器チューブの高圧水洗浄作業に対して、当期はチューブ自動内面洗浄機の実機検証を行い、更なる改良とその評価を行いました。当該自動内面洗浄機は、熱交換器のチューブ配列を入力する事で半自動的に洗浄を行うもので、アジア圏では初導入になります。次期では機材の保有台数を追加し、チューブ洗浄作業自動化の普及を図ることで更なる省人化を推進いたします。

③配管切断技術

継続研究テーマであるウォータージェットを利用した切断機の導入について、様々な配管サイズに対応する専用機材の設計を行い、改良と検証を行いました。また、海外製品である本機材は補修部品の入手が困難であるため、国内製品への切り替えと補修部品の確保により、安定的に稼働できる対応を行いました。すでに当社連結子会社の港南通商株式会社への移管を完了しており、火気を使用できない配管(原油配管等)への適用を中心に当該技術の普及を目指しています。

④タンク自動溶接技術

当期ではタンク側板自動溶接技術(水平継手)を縦継手に適用するための最適な溶接条件の検討および実証を行いました。今後需要が高まる低温タンクの建設に対しても当該技術は有効であり、次期も継続して自動溶接による溶接品質の安定・向上と効率化に向けた研究を推進いたします。

⑤タンク底板検査ロボット開発

タンク工事おける監督者や検査員による溶接線の目視検査を補助する技術として、タンク底板溶接線の自動走行目視検査ロボットの開発に着手いたしました。溶接線および近傍の表面欠陥の検出、すみ肉溶接線の脚長の測定と合否判定を自動的に行い、検査員による判定を支援することで検査業務の品質向上を目指しています。次期では製作機材の現場検証を行い、改良を進めながら現場への展開を図ります。

 

(2)現場業務のIT化

現場で必要となる情報の一元化、情報取得の省力化等により、現場管理業務を効率化および業務品質の向上を目指して、ITツールの開発とその活用に取り組みました。

①プロット情報共有システム

当社が開発した通行止め情報等を共有する旧プロット情報共有システムから、最新のITを活用して従来以上にユーザーフレンドリーなシステムへ抜本的な見直しを行い、試験運用から段階的に現場への適用拡大を進めています。また、導入現場からのフィードバックを反映した改良により、更なる利便性向上を図りました。

今後は、当社の工事情報共有システム(SPIRIT)や、その他の社内システムとの連携も視野に入れたシステムにグレードアップすることにより、社内業務の更なる効率化を目指します。

②画像認識技術の活用に向けた基礎研究

従来から安全品質に関するトラブル防止に向けた研究として、現場管理の「目を増やす」ことを目的としたクラウド型携帯カメラsafie等のカメラ導入を進めてきましたが、当期では技術進歩が目覚ましい画像認識技術の活用による安全・品質向上、作業性向上、省力化を目指し、クレーン作業時の立入り防止措置を中心に自動化・高精度化に向けた既存製品の調査検証を行いました。次期ではこの中でも特に安全・品質向上に重点を置いた製品の検証、評価を継続して行い、現場への適用と普及を目指します。

③溶接施工管理分野へのICT導入

重大な溶接施工品質トラブルを未然に防止し、品質保証・品質確保を行うことを目的として、膨大な管理項目や書類作成業務を抱える溶接検査業務に対してICTの導入に着手いたしました。実務の洗い出しと課題の抽出結果から目指すべき姿を描いたロードマップを基に新規システムを開発し、当期では初期開発の段階で現場へ試験導入を行い、検証結果による改良、および更なる機能を充実化したシステムの開発を行いました。次期では最新のシステムを現場へ適用し、現場のフィードバックからシステムの利便性の向上を目指し、AIによる業務効率化等も含めて、品質の向上、および当社業務への標準化を目指します。

 

当社グループの主要顧客である石油業界や石油化学業界においては、既存プラント設備の老朽化が進み、安全・安定操業に対するニーズの高まりや経年劣化による事故・トラブルの未然防止への取組みに加え、先進技術を活用したスマート保安の動きが広がりを見せるなど、プラントメンテナンスの重要性がますます高まっております。このような事業環境において、当社のようなメンテナンス企業に対する労働安全、品質管理への要求が厳しくなっていることに加え、先進技術の活用による生産性向上に対する要求も強まってきています。さらに社内においては時間外労働時間の削減が重要課題となっており、業務効率化を含めた働き方改革が早急に求められています。

当社グループは、こうした顧客ニーズや事業環境の変化に対応するため、研究開発のテーマ選定にあたっては、今後も国内のみならず欧州や米国等における技術および市場調査の成果を有効に活用するほか、DXの推進に向けて社内連携を強化し、デジタル技術や先進技術を活用したテーマの研究を積極的に推進いたします。