第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社グループは、ものづくり企業として創業者から受け継ぐ”大同致遠”の精神をコアに、ミッション、ビジョン、バリューを体現し笑顔と笑顔がつながる社会の実現に向けて、取り組んでまいります。

0102010_001.png

SPIRIT

“大同致遠”

「大いなる目的のため、一致団結して高遠なる理想実現に努力すべし」

VISION

地球のすみずみまで、笑顔と笑顔がつながる社会へ

MISSION

「技術」に尽くし、

「つくる」に尽くし、

「社会」に尽くす

VALUE

①私たちは「笑顔」を大切にします

②私たちは「相互で信頼」しあいます

③私たちは「実直」であり続けます

④私たちは「真剣」であり続けます

⑤私たちは「チャレンジ」していきます

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは、第13次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)において、売上拡大を継続しつつ、2025年度までに2021年度と同等の営業利益率の達成及び当社資本コストを上回るROEを目標に設定いたします。利益面を重視した計数目標とし、実行・達成することで企業価値向上に努めてまいります。

(3) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

 当社は、「『伝える』『運ぶ』を究める実行力で、世界に大同ならではの笑顔を広げます」という会社方針のもと、2024年に長期ビジョン「DID MUGENDAI SMILE VISION 2035」を発表いたしました。あわせて第13次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を策定しており、2025年度はその2年目にあたります。

 この中期経営計画では、今後の事業拡大に向けた「稼ぐ力」の強化、すなわち利益創出の仕組みづくりに注力しています。3カ年の計画期間中に事業課題を確実に解決し、創立100周年に向けた成長の基盤を築くとともに、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。

■既存事業領域

自動車・二輪車・産業用分野で培った技術力を活かし、さらなる拡販と収益改善を推進します。高度塑性加工や表面処理などの強みを磨き、お客様の期待に応える製品を提供してまいります。

■新事業領域

既存事業で培った技術をもとに、物流・農業分野など新たな事業領域への挑戦を検討しています。今後、事業化に向けた可能性を見極め、拡大を図ってまいります。

■株主還元方針

株主の皆様への利益還元を経営上の重要施策と位置づけ、安定配当の維持を基本としつつ、業績や経営環境、中長期的な財務体質の強化を踏まえ柔軟な対応を行ってまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社は創立90周年を機に、私たちが目指す社会の実現のため、フィロソフィー「DID MUGENDAI」を刷新しました。その中で、「地球のすみずみまで、笑顔と笑顔がつながる社会へ」をビジョンと定めています。これは、当社のグローバルに広がるフットプリントを活用し、サステナブルな事業を創出、展開することで、世界中に貢献することを宣言したものです。フィロソフィーで掲げたビジョンの実現に向け、2035年時点での目指すべき方向性、社会に対して果たすべき役割を明確にすべく、長期経営ビジョン「DID MUGENDAI SMILE VISION 2035」及び「第13次中期経営計画」をスタートさせ、長期戦略の軸として「グローバル拡大」「サステナビリティ事業創造」「人的資本経営」に取り組んでいます。

 長期経営ビジョン「DID MUGENDAI SMILE VISION 2035」の詳細は、当社ホームページ(https://www.did-daido.

co.jp/uploads/download/E086VgVAA)を参照ください。

 なお、当社のサステナビリティに関する取組等の詳細は、2025年9月頃に発行予定の、「大同工業株式会社 統合報告書2025」を参照ください。

(1)ガバナンス

 当社は、「サステナビリティ基本方針」と「サステナビリティ経営行動指針」を定め、特に重要と考える項目を重要課題(マテリアリティ)として特定し、特にESGに関連した事業基盤として、「持続可能なものづくり体制」「多様な人財の育成と働きがい」「公正・健全・透明な企業運営」の構築に取り組んでいます。さらなる推進体制の強化を図るため、CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を設置しており、サステナビリティ委員会は、各事業本部・センターやグループ会社、各種委員会からの情報に基づき、活動方針やリスク分析、マテリアリティごとの重要テーマ、活動の進捗などについて検討・議論・決定し管理する、グループ全体に対しての統括的な役割を担っています。

0102010_002.png

(2)戦略

 当社は、IEAやIPCCなどの気象変動シナリオを参考として、国が定めた脱炭素目標に準拠して脱炭素に取り組む方針であり、当社グループの事業における気候変動関連のリスクと機会を抽出し、それらの性質を分析しました。

区分

詳細区分

時間軸

リスク及び機会の内容

当社の対応方針

 

エネルギーコストの上昇

短期

エネルギーコストの上昇に伴う費用増大

消費エネルギー量削減の強化

再生可能エネルギー(太陽光発電システム)の導入

移行

リスク

法・規制の強化に関連するリスク

中長期

エネルギー効率や非化石電力導入の達成目標が強化されることに伴う対策費用の増加

取り組み中のCO2排出量削減、廃棄物削減の強化

非化石電力導入比率の段階的引き上げ

 

テクノロジー及び市場変化に関連するリスク

中長期

電動化の加速に伴う既存商品に関わる市場変化

サステナビリティに貢献出来る技術・製品の開発加速

物理的リスク

風水害や山火事等の災害激甚化に関連するリスク

短期

事業拠点の被災

BCPの検討を強化

耐災害性の強い建屋の建設

機会

テクノロジー及び市場変化に関連する機会

中長期

電動化の加速に伴う新商品に関わる市場開拓

サステナビリティに貢献出来る技術・製品の開発加速

 サステナビリティに貢献出来る技術・製品の開発加速については、長期経営ビジョンにおける戦略軸の一つでもあり、事業活動におけるCO2排出削減と併せて注力することとしています。

 当社では、多様な人財の育成と働き甲斐の向上のために、「能力の開発を通じて、自己充足、働きがい及び組織の活性化を実現する」という理念のもと、社会発展へ貢献できる「ものづくり」を行うために必要な資質や能力を保有する人財の育成に向けて、能力開発体系を整え、日々、人財育成を行っています。

 「能力を発揮したい」、「キャリアを伸ばしたい」と考える全ての従業員に等しく機会を提供し、会社が各従業員の能力開発を支援することで、多様な人財がそれぞれの能力と個性を最大限発揮できるよう、取り組んでいます。

 能力開発体系をもとに、年間の全社教育計画を作成し、階層別・職能別教育を実施しています。その中でも、階層別教育には力を入れており、若手の育成、OJTとの相乗効果を生み出す階層別教育に注力しています。

0102010_003.png

 

(3)リスク管理

 当社は、サステナビリティ経営に係るリスクアセスメントを実施して潜在リスクを発生確率・頻度と影響度合いから重要度で分類しています。リスクアセスメントを前提に、重要リスクに対するリスク顕在化抑止策について、「サステナビリティ委員会」において報告・審議し、抑止策の徹底やリスクの顕在化低減を図っています。

(4)指標及び目標

 当社は、気候変動に関連する対策として、Scope1、Scope2のGHG排出量を2030年度末までに2013年度比46%削減することを目標としています。2024年度には2013年度比17.7%のGHG排出量の削減を達成しました。

 当社グループの各社についても、今後同様の取り組みを加速する方針です。

 当社は、人財育成に関する指標として各種育成制度の利用人数を用いております。

 海外人材の育成においては、新型コロナウイルスの影響で一時中断していましたが、海外トレーニー制度を展開しております。2024年度までの累計で、海外トレーニー制度では33名で、現時点においては4名の従業員がトレーニーとして海外拠点で研修に取り組んでいます。今後もこの制度を通じて海外人材を育成することで、海外拠点における赴任者や経営幹部候補の育成に注力してまいります。

 また、自身が携わっている業務に限らず、様々なことを学びたいと思っている成長意欲と向上心の高い従業員に対し、自由に学べる環境を整えるため、2022年度からeラーニングを導入しており、利用者は1か月あたり20名程度で推移しています。引き続き、利用者増加に向けた周知・浸透活動に取り組んでまいります。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下の通りであります。

 なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。当社では様々な危機事態に備えるため、各種委員会等を設置しており、危機発生時には随時、各種の委員会等を召集、開催し対応することでリスク発生時の影響の極小化に努めております。

 文中の将来に関する事項の記載については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)景気変動について

 当社グループは、国内のほか海外市場にも製品を販売しており、各国の市場における急激な景気変動や需要変動が、業績に影響を与える可能性があります。

(2)有利子負債依存度について

 当社グループは設備投資に要する資金を主に金融機関からの借入金等により調達しており、総資産に対する有利子負債が高い割合で推移しております。近年は低金利の状況が続いておりますが、今後の金利変動によって業績に影響を与える可能性があります。

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

(百万円)

(百万円)

(百万円)

総資産(A)

73,029

79,121

77,803

有利子負債額(B)

24,883

25,579

24,587

(B)/(A) %

34.1

32.3

31.6

売上高(C)

55,054

56,041

57,515

支払利息(D)

242

330

392

(D)/(C) %

0.4

0.6

0.7

 

(3)原材料の市況変動の影響について

 当社グループが製造販売しているチェーン、コンベヤ、リム、ホイール、スポーク・ボルト等は主に鋼材、アルミ材を原材料としております。従って、鋼材、アルミ材の市況が変動する局面では、取引先より価格変更の要請の可能性があります。随時市況価格を注視し取引先との価格交渉にあたっておりますが、今後、原材料価格が急激に変動した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4)為替相場の影響について

 当社グループの海外売上高比率は、2023年3月期59.0%、2024年3月期58.1%、2025年3月期59.8%とおおむね半分を占めております。当社グループが行う輸出取引は、商社等を通じて行う円建取引と直接行う外貨建取引がありますが、外貨建取引が増加しており、為替変動の影響が大きくなってきております。このため、為替予約等によるリスクヘッジを行っておりますが、そのリスクを全て排除することは不可能であり、業績に影響を与える可能性があります。

(5)品質不良の影響について

 当社グループの製品に対する欠陥や品質不良によりクレーム又はリコールが発生した場合には、当社グループ製品に対する顧客の信頼が低下し、業績に影響を与える可能性があります。また、欠陥や品質不良により多額の損害賠償が発生し、製造物責任保険等で賠償額を十分に補填できない場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(6)競争激化について

 現状、複数の企業による激しい価格競争が生じておりますが、より品質の高い低コストの商品を供給できる競合先が台頭し、市場でのシェアを急速に獲得した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、当社グループは付加価値の高い商品を開発するために、投資を積極的に行っているものの、競合他社との激しい競争において、十分な効果が反映されない場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(7)有価証券投資の影響について

 当社グループは、取引金融機関、取引先の銘柄を中心に株式を保有しております。保有株式の個々の銘柄の価格変動が業績に影響を与える可能性があります。

(8)各国の社会的・政治的影響について

 当社グループの生産拠点において、法律、規制の変更及び政治、経済要因の変動等により生産活動に支障が生じた場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(9)固定資産の減損について

 当社グループは、固定資産の減損に係る会計処理を適用しており、保有する固定資産は減損リスクにさらされております。経営環境の著しい悪化等により固定資産の回収可能価額が低下した場合には、減損損失の計上により業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(10)繰延税金資産の回収可能性の評価について

 当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を合理的に見積もった上で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上しておりますが、実際の課税所得が予測と異なり回収可能性に疑義が生じた場合、もしくは税率の変更等を含む各国の税制の変更があった場合には、繰延税金資産の計算の見直しが必要となります。

 その結果として、繰延税金資産の取崩が必要となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(11)自然災害について

 当社グループでは、不測の自然災害等に備え、損害の発生を最小限に抑えるべく点検・訓練の実施、連絡体制の整備、損害保険の付保等リスク管理に努めております。ただし、当社グループの生産拠点の被災等により、生産活動が停滞し、製品の供給が滞ることにより、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、同様に主要顧客においても自然災害による被災等により、生産停止や生産減少が余儀なくされることで、当社グループもその影響を受け、業績に重大な影響を与える可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当期における我が国経済は、雇用や所得環境の改善に伴い、緩やかな回復基調で推移しました。しかし、国際情勢の不安定さや米国通商政策の動向、物価上昇率の高さやエネルギー価格の高止まりなどが重なり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 この様な状況のもと、当社グループにおきましては、エネルギー価格や人件費等のコスト上昇を価格転嫁することで採算性の改善に努めてまいりました。また、本社生産拠点の再編・拡張工事や基幹システムの刷新に向けた取り組みを継続して行うなど、将来を見据えた抜本的な構造改革を推進すると共に、事業領域の拡大と新規事業の創出に向けた活動を推進してまいりました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,318百万円減少し、77,803百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,420百万円減少し、41,016百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ101百万円増加し、36,787百万円となりました。

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高57,515百万円(前期比2.6%増)、営業利益1,382百万円(前期比508.3%増)、経常利益1,434百万円(前期比84.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,192百万円(前期比247.8%増)となりました。

セグメント別の概況は次のとおりであります。

(日本)

 外部顧客への売上高は26,269百万円(前期比0.3%減)、営業損失は3百万円(前期は602百万円の営業損失)となりました。売上高については、国内完成車メーカーによる在庫調整の影響で二輪車用アルミリムの受注が低迷したことに加え、海外向けトラクターの販売不振による農機用ホイールの受注が減少したことなどが主な減収要因であります。一方で、価格転嫁による原価改善の効果もあり、利益面では前期比で大きく改善したものの、製品不具合に伴う交換費用の引当が発生したため、最終的には営業損失を継続する結果となりました。

(アジア)

 外部顧客への売上高は18,146百万円(前期比6.8%増)、営業利益は806百万円(前期比103.7%増)となりました。円安の影響に加え、インド・中国・インドネシアにおける完成車メーカー向け二輪車用チェーンの受注が好調であったことから、売上高が増加しました。さらに、価格転嫁による利益改善効果も加わり、営業利益の増加に寄与しました。

(北米)

 外部顧客への売上高は3,140百万円(前期比7.2%増)、営業利益は87百万円(前期比92.3%増)となりました。米国の金融政策や政治情勢の不透明感から産業機械用チェーンの受注は減少しましたが、円安の影響と補修市場向け二輪車用チェーンの好調な受注が業績改善に貢献しました。

(南米)

 外部顧客への売上高は5,207百万円(前期比4.2%増)、営業損失は9百万円(前期は99百万円の営業利益)となりました。完成車メーカー向け及び補修市場向けともに、二輪車用チェーンの受注は堅調に推移し、売上高は前年同期を上回りました。一方で、干ばつの影響による物流費の増加に加え、現地競合企業の台頭により産業機械用チェーンにおける価格競争が激化したことから、利益を圧迫し、営業損失を計上する結果となりました。

(欧州)

 外部顧客への売上高は4,753百万円(前期比0.6%減)、営業利益は465百万円(前期比10.8%増)となりました。売上高は、円安の進行及び産業機械用チェーンにおけるグループ内商流の再編が寄与し改善を見せましたが、完成車メーカーの減産の影響などにより、二輪車用チェーンの受注が低調に推移した結果、前期並みとなりました。利益面では、価格転嫁による利益改善効果もあり、増益となりました。

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ432百万円増加し、8,702百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は4,637百万円(前期は2,782百万円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益1,774百万円(前期は707百万円)、減価償却費3,181百万円(前期は3,053百万円)を計上し、法人税等の支払額678百万円(前期は916百万円)等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は2,812百万円(前期は2,838百万円の使用)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入738百万円(前期は1,410百万円の収入)、有形固定資産の取得による支出3,683百万円(前期は4,115百万円の支出)等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は1,700百万円(前期は241百万円の使用)となりました。これは主に、借入金の減少額が1,082百万円(前期は519百万円の増加)、自己株式の取得による支出209百万円(前期は187百万円の支出)、配当金の支払額155百万円(前期は159百万円)、非支配株主への配当金の支払額79百万円(前期は191百万円)等によるものであります。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

28,243

14.4

アジア

16,772

2.2

北米

3

南米

5,154

△6.5

合  計

50,175

7.7

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

26,193

3.0

4,839

△1.5

アジア

17,859

6.1

4,360

△6.2

北米

3,182

8.2

959

4.7

南米

5,119

△0.6

1,310

△6.3

欧州

4,826

△0.5

1,560

4.9

合  計

57,181

3.6

13,030

△2.5

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

26,269

△0.3

アジア

18,146

6.8

北米

3,140

7.2

南米

5,207

4.2

欧州

4,753

△0.6

合  計

57,515

2.6

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当期における主な相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産が912百万円、建物及び構築物が961百万円増加したものの、投資有価証券が3,082百万円減少したことなどにより1,318百万円減少し、77,803百万円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末の負債合計は、支払手形及び買掛金が375百万円増加したものの、借入金が888百万円、繰延税金負債が915百万円減少したことなどにより1,420百万円減少し、41,016百万円となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、その他有価証券評価差額金が2,391百万円減少したものの、利益剰余金が1,036百万円、為替換算調整勘定が880百万円、非支配株主持分が536百万円増加したことなどにより101百万円増加し、36,787百万円となりました。

2)経営成績

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、57,515百万円(前期比2.6%増)となりました。セグメント別の売上高につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(売上総利益)

 当連結会計年度における売上総利益は、11,136百万円(前期比14.4%増)となりました。また、売上総利益率は19.4%(前期比2.0ポイント増)となりました。

(営業利益)

 当連結会計年度における販売費及び一般管理費は9,753百万円(前期比2.6%増)となりました。これは主に、原材料価格やエネルギー価格の高騰、干ばつによる物流費用の増加等の影響を受けたためであります。

 以上の結果、当連結会計年度の営業利益は1,382百万円(前期比508.3%増)、営業利益率は2.4%(前期比2.0ポイント増)となりました。

(経常利益)

 当連結会計年度における営業外収益は981百万円(前期比25.5%減)、営業外費用は929百万円(前期比21.4%増)となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の経常利益は1,434百万円(前期比84.2%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、当社の不採算事業の固定資産について「固定資産の減損に係る会計基準」に従い、将来の回収可能性を検討した結果、減損損失を計上したものの、当社が保有する政策保有株式の売却に伴う投資有価証券売却益を計上したこと等により、1,192百万円(前期比247.8%増)となりました。

3)経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績、株価及び財政状況に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは市場動向、為替動向、資材費動向、金利動向等があります。詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りであります。

 当社は、「『伝える』『運ぶ』を究める実行力で、世界に大同ならではの笑顔を広げます」という会社方針のもと、2024年に長期ビジョン「DID MUGENDAI SMILE VISION 2035」を発表いたしました。あわせて第13次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を策定しており、2025年度はその2年目にあたります。

 この中期経営計画では、今後の事業拡大に向けた「稼ぐ力」の強化、すなわち利益創出の仕組みづくりに注力しています。3カ年の計画期間中に事業課題を確実に解決し、創立100周年に向けた成長の基盤を築くとともに、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。

■既存事業領域

自動車・二輪車・産業用分野で培った技術力を活かし、さらなる拡販と収益改善を推進します。高度塑性加工や表面処理などの強みを磨き、お客様の期待に応える製品を提供してまいります。

■新事業領域

既存事業で培った技術をもとに、物流・農業分野など新たな事業領域への挑戦を検討しています。今後、事業化に向けた可能性を見極め、拡大を図ってまいります。

■株主還元方針

株主の皆様への利益還元を経営上の重要施策と位置づけ、安定配当の維持を基本としつつ、業績や経営環境、中長期的な財務体質の強化を踏まえ柔軟な対応を行ってまいります。

4)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、第13次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)において、最終年度の2027年3月期に売上高680億円、営業利益率6.5%、自己資本利益率(ROE)8%以上の達成を目標としております。当連結会計年度における売上高、営業利益、営業利益率については、「2)経営成績」に記載のとおりであり、自己資本利益率(ROE)は3.9%であります。

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、当社グループの動力伝動搬送関連製品等の製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備資金需要としては、製造設備投資に加え、情報処理のための無形固定資産投資等があります。

財政政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入と社債の発行により資金調達を行っております。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は24,587百万円であります。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物は8,702百万円であります。

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっての重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に記載しております。

 また、連結財務諸表の作成にあたっての会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

a. 固定資産の減損損失

 当社グループは、固定資産について、独立したキャッシュ・フローを生み出す管理会計上の最小単位でグルーピングを実施しており、減損損失の測定のステップに至り、当該グルーピングの単位から得られる回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

 回収可能価額の見積りは事業計画や経営環境等により変動するため、当該見積りに影響を与える要因が発生した場合は、固定資産の評価に影響を与える可能性があります。

b. 繰延税金資産

 当社グループは、将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を検討し、回収が不確実であると考えられる繰延税金資産について評価性引当額を計上しております。

 将来の課税所得の見積りは事業計画や経営環境等により変動するため、当該見積りに影響を与える要因が発生した場合は、繰延税金資産の回収可能性に影響を与える可能性があります。

5【重要な契約等】

相 手 方 の 名 称

国 名

契約品目

契 約 内 容

契 約 期 間

D.I.D ASIA CO.,LTD.

タイ

スプロケットキット・スポークニップル

スプロケットキット・スポークニップルに関する商標の使用許諾

自 2016年8月8日

至 2026年8月7日

(以後、5年毎に自動更新)

大同鏈条(常熟)有限公司

中国

チェーン・コンベヤ

チェーン及びコンベヤに関する技術・製造のノウハウの供与

自 2020年1月1日

至 2029年12月31日

(以後、5年毎に自動更新)

DAIDO INDUSTRIAL E

COMERCIAL LTDA.

ブラジル

チェーン

商標の使用許諾

自 2025年1月1日

至 2025年12月31日

(以後、1年毎に自動更新)

DAIDO INDUSTRIA DE CORRENTES DA AMAZONIA LTDA.

ブラジル

チェーン

チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾

自 2021年12月12日

至 2026年12月11日

(以後、5年毎に自動更新)

P.T.DAIDO INDONESIA

MANUFACTURING

インドネシア

チェーン・リム

チェーン及びリムに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾

自 2020年9月13日

至 2025年9月12日

(以後、5年毎に自動更新)

DAIDO SITTIPOL

CO.,LTD.

タイ

チェーン

チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾

自 2021年3月4日

至 2026年3月3日

(以後、5年毎に自動更新)

P.T.FSCM MANUFACTURING

INDONESIA

インドネシア

チェーン

チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与

自 2023年5月1日

至 2026年4月30日

 

 

相 手 方 の 名 称

国 名

契約品目

契 約 内 容

契 約 期 間

INTERFACE SOLUTIONS CO.,LTD.

タイ

コンベヤ

コンベヤに関する技術・製造ノウハウの供与

自 2022年11月13日

至 2027年11月12日

(以後、5年毎に自動更新)

DAIDO INDIA PVT.LTD.

インド

チェーン

チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾

自 2022年11月7日

至 2027年11月6日

(以後、5年毎に自動更新)

DAIDO CORPORATION OF AMERICA

米国

チェーン

チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾

自 2025年2月19日

至 2030年2月18日

(以後、5年毎に自動更新)

D.I.D VIETNAM CO.,LTD.

ベトナム

チェーン

チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾

自 2017年9月26日

至 2027年9月25日

(以後、5年毎に自動更新)

Atlas Autos (Private) Limited

パキスタン

チェーン

チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾

自 2023年11月13日

至 2026年11月12日

(以後、3年毎に自動更新)

D.I.D PHILLIPINES INC.

フィリピン

チェーン

チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾

自 2019年1月9日

至 2029年1月8日

(以後、5年毎に自動更新)

ATLAS DID (PRIVATE) LTD.

パキスタン

チェーン

チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾

自 2022年10月1日

至 2025年9月30日

(以後、3年毎に自動更新)

IWIS-DAIDO LLC

米国

合弁会社の事業運営に必要な知的財産の使用許諾

2021年1月1日~

(重大な契約違反、解消等がない限り存続)

DID EUROPE S.R.L.

イタリア

チェーンルーブ・チェーンクリーナー

チェーンルーブ・チェーンクリーナーに関する商標の使用許諾

自 2021年3月22日

至 2031年3月21日

(以後、5年毎に自動更新)

オリエンタルチエン工業㈱

日本

チェーン

チェーンの相互製品供給・生産委託業務提携

自 2021年11月30日

至 2026年11月29日

(以後、3年毎に自動更新)

 (注)1 オリエンタルチエン工業㈱との契約以外については、ロイヤリティとして売上高の一定率を受け取っております。

2 上記の技術援助契約及び商標の使用許諾契約は提出会社が締結しているものであります。

(経営統合契約及び株式交換契約の締結)

 当社は、2025年5月14日付の取締役会決議により、当社及び株式会社椿本チエイン(以下「椿本チエイン」といい、当社と椿本チエインを総称して、以下「両社」といいます。)との間で経営統合を実施すること及び当社を株式交換完全子会社、椿本チエインを株式交換完全親会社とする株式交換(以下「本株式交換」といいます。)を実施することを決定し、同日、両社間で経営統合契約及び株式交換契約を締結いたしました。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりです。

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、新製品の研究開発及び既存商品の基礎研究、用途開発であります。グループ全体の研究開発活動を当社およびINTERFACE SOLUTIONS CO.,LTD.が担っており、当連結会計年度の研究開発費の総額は672百万円であります。

(1)動力伝動搬送関連製品

①カーボンニュートラル対応およびEV化への対応

 当社は社会情勢の変化を注視し、市場ニーズに即した既存商品の用途開発を継続しております。さらに、EV化に対応した技術や高度塑性加工技術、表面処理加工技術などの新たな要素技術を強みとして磨き上げ、積極的に新市場への挑戦を推進しております。特に、プレス技術による高度塑性加工では、3D形状を効率的に生産できる技術を活用し、DIDブランドを支えるドライブチェーンの軽量化と剛性の相反特性を追求した新たな製品群(MotoGP向けドライブチェーン等)の開発を行っております。

 また、金属塑性加工だけでなく、プレス技術の応用として非金属材料の圧縮粉砕を行い、リサイクル技術に繋がる研究開発も推進しております。表面処理技術においては、特にセラミックコーティング技術の強化に注力し、物理蒸着法(PVD)の自社技術化を目指しております。この技術は既存商品の付加価値向上のみならず、新たな市場開拓にも貢献することを期待しております。

②ゴム技術の自前化

 当社は、シールチェーン用のシール開発を含むゴム技術の自前化に向けた研究開発を推進しております。シール開発と評価を終了し、海外拠点での生産を開始しております。今後も、差別化可能な技術の研究開発を続け、新商品への適用を進めてまいります。

③革新技術の研究開発

 「伝える」「はこぶ」という経営スローガンのもと、新たな吸引式搬送ユニットの提案を行い、新分野での採用が始まっております。並行して、次世代型の研究開発にも取り組み、革新的なものづくり技術としてのニーズに即した製品開発を推進しております。また、海外グループ会社と共同で、自立走行搬送ロボット(AMR)の新たな用途開発にも注力しております。

 今後も、駆動・搬送システムを中心にメカトロニクス技術を融合させ、「伝える」「はこぶ」社会の期待を超える技術開発に取り組んでまいります。

(2)その他

 当社は福祉分野においても、階段昇降装置の製造・販売を行っております。特に、車いす利用者が介助なしで使用できるモデルの開発を東京大学と共同で進めており、本年3月にはJR掛川駅の連絡階段に同モデルを設置いただきました。引き続き、同モデルに対する需要は高まっており、新たなニーズに応じた開発を継続してまいります。

 さらに、アルミ加工品の開発においては、ホイールやハンドルパイプを対象とした設計・評価技術の拡充に努め、新たな市場の開拓に貢献しております。