第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは伝動用ローラチェーンを主体とした、各種チェーン、スプロケット類等の製造・販売を通して、国内外の産業に貢献する「伝動と搬送の総合メーカー」を目指しております。

 このために、多様化する顧客の品質、用途に対するニーズを掌握し、十分な研究・開発した製品を供給して、顧客から安心、安全な会社だと評価を受ける努力を続けてまいります。

 今後とも当社グループの製品は「世界一の品質」を目指して弛まぬ研究を行いグローバルな市場の要望に応えてまいります。

 当然のことながら、企業としての責務であります企業倫理、法令遵守、環境保護活動への取り組みを強化し、社会の信頼に応えてまいります。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、チェーン事業基盤の強化を図ることを目的に、2024年7月に寺田精工株式会社及び徳清澳喜睦鏈条有限公司の2社を連結子会社といたしました。

 また、チェーン事業及び金属射出成形事業における生産能力増強を目的に、2024年11月本社工場敷地内に新工場を竣工いたしました。

 これらは当社グループが市場の多様なニーズへの対応力を高め、景気動向に左右されない持続的な成長を成し得る企業集団となり、企業発展の基盤をより確かなものに築きあげるためのものです。

 今後、当社グループの限りある経営資源を適切に拡大すべき事業分野に集中させ、企業体質の改善を行い、企業の質的な向上を図り、継続して利益を生み出す企業にしてまいります。

 既存製品についてはより高品質化し、顧客の求める差別化した製品を供給して行くことと、生産性の向上、より効率的な多品種、小ロットの生産システムを構築してコストの低減、納期の短縮を図ってまいります。

 顧客と共同で開発する新製品、市場のニーズを汲み上げた新製品、ナンバーワン・オンリーワン製品の開発を積極的に行ってまいります。

 

(3)経営環境

 日本経済は、企業収益の改善による設備投資の増加等の要因により経済の回復が期待されますが、東欧・中東地域をめぐる情勢や米国の政策動向による影響、原材料・燃料価格等の物価上昇、不安定な為替市場、国内金利の上昇等販売には足枷となる様々な要因が多く、先行きについては不透明な経営環境が続くと見込まれます。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 先行きが不透明な状況での増収に向けての取り組み

 チェーン事業部門においては、国内営業につきましては、当社のブランドネームである「OCM」の周知を図るため、当社のナンバーワン・オンリーワン製品の提案を突破口として、新規顧客の開拓を積極的に推し進めてまいります。海外営業につきましては、既存の自動者関連業界向けの特殊チェーンの増販に加えて、各種業界向けの特殊チェーンの拡販を図ってまいります。また、スプロケットにつきましては寺田精工株式会社を子会社化したことで売上高、利益の増加につなげてまいります。

 金属射出成形事業部門においては、自動車・自動二輪車・医療機器・精密機器分野などの様々な部品を製造しております。当社はこの金属粉末射出成形の技術の中でも難易度が高く、国内メーカーでも数社しか採用していない「中空MIM製法」も手掛けており、今後も医療機器業界の高性能な治療機器分野においてシェアを伸ばしていく方針です。また、受注の増加に対応するため工場の増築を行い生産能力を増強致しております。

 課題克服のための必要な資金を十分に確保するため、金融機関と密接に対話を行い低利安定資金の調達を継続的に推し進めてまいります。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針及び経営戦略等に則り、2026年3月期においては営業利益率3.7%以上を目標として設定し、企業価値の向上と安定した配当を目指しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

当社グループは「社会から信頼される製品、信頼される会社をつくります」という企業理念のもとに、サステナビリティに関する諸課題に対処しております。持続可能な社会の実現に向けて、環境・社会・ガバナンスを重視したESG経営の取り組みを行っております。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、サステナビリティを推進するために、取締役会を中心にした体制を構築しております。マテリアリティに関する方針や諸施策の立案、社内・グループ会社への展開、施策の進捗管理を行うため、適宜関係各部門の部門長を集め検討を行い、取締役会へ報告し、活動の推進を行っております。

 

(2)戦略

世界的な気候変動や社会環境の変動、人権といった様々な社会課題が深刻化し、これらの解決に向けての対応が急務とされる中、当社グループにおいても環境問題への対応を重要課題として取り組んでまいります。高耐食性ローラチェーン・NDセルーブチェーン等環境負荷の低減に貢献する製品の販売・開発を推進し、脱炭素社会に貢献してまいります。ものづくり企業として、環境負荷低減につなげる生産体制の構築を目指し、イノベーションによる社会課題の解決に貢献してまいります。

 

人的資本について

当社グループは、多様な従業員一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮できるとともに、安心して働くことができる企業環境の実現に向けて、各種取り組みを行っております。

一人ひとりが意識をもって行動する人材の育成を目指し、職場でのOJTを通じた教育に加え、能力、知識や専門性の向上を目的にした研修を役割等に応じて展開しております。

個人の人格・人権を尊重し、求人・雇用・昇進等において、性別・信条・社会的身分などによる不当な差別を行うことなく、全ての従業員がその能力を発揮できるような企業環境を目指し、障害のある従業員や女性従業員の活躍促進、ワークライフバランスに配慮した支援制度の整備(出産・育児・介護に関する支援制度等)、有給休暇取得の促進等の取り組みを今後も進めてまいります。

 

(3)リスク管理

当社グループは、会社経営に重大な影響を及ぼすと思われる不測の事態、リスクが発生する可能性が生じた場合に対処するため、リスク管理委員会(常勤会)を設置しており、対応を審議、対策の立案とその実行を行っております。

サステナビリティに関連するリスクについても、当委員会で審議し、リスク発生時には適切な対応を実施します。特に環境面については、太陽光等の再生可能エネルギーの活用や生産工程における廃棄物の削減といった対応策を検討し、取り組んでまいります。

 

(4)指標及び目標

環境問題への取組は、企業の存続と活動に必須の要件であることと認識しております。現在のところ明確な数値目標は定めておりませんが、環境負荷低減を優先目標としております。工場から排出する二酸化炭素排出量の削減や電力における再生可能エネルギーの発電設備の導入、カーボンフリー電力の購入などを進めております。工場から排出する二酸化炭素排出量削減ではガソリン仕様のフォークリフトを全廃し、電動仕様への切り替えが完了しました。また、2024年5月24日より太陽光発電オフサイトPPAサービスの利用を開始し、2024年度中に約300tのCO2排出量削減に寄与しております。

また、従業員が働きがいを高めるために人材の評価システムを構築してまいります。女性比率向上のために女性が活躍できる環境・制度を構築してまいります。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態の変動要因について、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のものがあります。なお、以下における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)売上高の変動について

当社グループの売上高は、伝動用ローラチェーンを主体とした既存製品及びその他関連製品チェーン事業と金属射出成形法による運搬機器関連や医療機器関連の製品売上等から構成されております。これらは以下により変動し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

・チェーン事業は、成熟製品の域にあり、安価なアジア製品の影響を受け受注価格の変動や輸入品の増加により、工場の生産高減少に伴う付加価値が減少する場合があります。

・チェーン事業の主体である伝動用ローラチェーンについては、海外の経済の減退による影響を受け輸出売上高が減少する場合があります。

・金属射出成形事業の製品は軌道に乗りましたが、製品自体のライフサイクルの短さやモデルチェンジの激しさから、これに係る製品の受注は大きく変動する場合があります。

 

(2)仕入価格の高騰について

当社グループが製造する製品の主原材料は、国内の鉄鋼メーカーが生産する特殊鋼を使用しておりますが、鉄鉱石や鉄スクラップの原料価格の上昇、中国の需要増加等により大幅に上昇する場合には、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)為替変動のリスクについて

当社グループの事業は、海外市場に当社グループ売上高の18%程を販売しており、為替の変動に影響を受けます。取引の多くはドル建てであるため、外国為替リスクを回避、軽減するために種々手段を講じておりますが、為替相場の変動によって業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)金利変動リスクについて

当社グループは有利子負債を減少させるべく資産の効率化を進めておりますが、市場金利の上昇は支払利息を増加させ、利益を減少させるリスクがあります。

 

(5)品質不良のリスクについて

当社グループは製造業であり、万が一製品のクレーム、リコール等の発生により損害金を製造物責任保険等で補てんできない場合、事業業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)繰延税金資産に関するリスクについて

当社グループは、現行の会計基準に基づき、会社分類の妥当性、将来の課税所得の十分性、将来減算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリング等を検討した上で繰延税金資産を計上しております。当社グループの業績や経営環境の著しい変化等により、繰延税金資産の全部または一部に回収可能性がないと判断した場合や税率の変更を含む税制改正、会計基準等の改正等により、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績、財務状況等に影響を与える可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概況

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当社グループは、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しておりますので、前連結会計年度及び前連結会計年度末との比較分析は行っておりません。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

当連結会計年度末における資産合計は、5,130百万円となりました。

当連結会計年度末における負債合計は、3,274百万円となりました。

当連結会計年度末における純資産合計は、1,855百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化が進み、景気回復については一部足踏みが見られるものの緩やかな回復基調で推移しました。一方で、東欧・中東地域をめぐる情勢、米国の政策動向による影響、不安定な為替市場、物価上昇等、景気に悪影響を及ぼす様々な要因があり、先行きが不透明な状況は今後も継続すると思われます。

このような状況下にあって当社は、事業基盤の強化を図ることを目的に、2024年7月寺田精工株式会社及び徳清澳喜睦鏈条有限公司の2社を連結子会社といたしました。また、チェーン事業及び金属射出成形事業における生産能力増強を目的に、2024年11月本社工場敷地内に新工場を竣工いたしました。市場の多様なニーズへの対応力を高めるとともに、お客様の要望に沿った製品の製造販売に努めております。

この結果、当連結会計年度の業績は、売上高は4,055百万円となり、営業利益142百万円、経常利益145百万円、親会社株主に帰属する当期純利益100百万円となりました。

 

セグメントごとの業績は次のとおりであります。

 

(チェーン事業)

チェーン事業は、輸出においては、一部の輸出相手国において輸出規制に伴う出荷遅延等が影響し、海外向け受注は低調に推移しました。一方、国内においては、生産ラインの更新案件等を獲得することができたことに加え、お客様の生産性向上・生産設備の維持修繕コスト削減に貢献するため、当社オリジナル製品である高耐食性チェーン等の営業に注力したことにより、製品選択が増加しました。これらの結果、売上高は3,797百万円、営業利益は337百万円となりました。

なお、当連結会計年度において新たに連結子会社となった寺田精工株式会社及び徳清澳喜睦鏈条有限公司は当セグメントに含めております。

 

(金属射出成形事業)

令和6年能登半島地震の影響により自動車部品関連の受注について一時的な停滞がありましたが、医療部品関連受注を伸ばすことが出来ました。この結果、売上高は217百万円、営業利益は31百万円となりました。

 

(不動産賃貸事業)

不動産賃貸事業につきましては、売上高は39百万円、営業利益は25百万円となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は308百万円となりました。

 

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローはマイナス7百万円となりました。これは主に、支払サイト短縮化に伴う仕入債務の減少232百万円、法人税等の支払額87百万円等があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス582百万円となりました。これは主に、製品増産を目的とした新工場建設に係る有形固定資産の取得による支出505百万円、生産性向上を目的としたソフトウエア開発に係る無形固定資産の取得による支出55百万円等があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローはプラス501百万円となりました。これは主に、支払サイト短縮化に伴う運転資金確保等に係る短期借入金の増額444百万円、設備投資資金に係る長期借入れによる収入400百万円、長期借入金の返済による支出298百万円等があったことによるものです。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメント

当連結会計年度

(自 2024年 4月1日

至 2025年 3月31日)

 チェーン事業    (千円)

3,358,114

 金属射出成形事業  (千円)

206,792

  報告セグメント計 (千円)

3,564,907

(注)1.金額は販売価格によっております。

2.セグメント間の取引はありません。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメント

当連結会計年度

(自 2024年 4月1日

至 2025年 3月31日)

 チェーン事業    (千円)

3,817,132

 金属射出成形事業  (千円)

240,001

  報告セグメント計 (千円)

4,057,133

(注)1.金額は販売価格で表示しております。

2.セグメント間の取引はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメント

当連結会計年度

(自 2024年 4月1日

至 2025年 3月31日)

 チェーン事業    (千円)

3,797,917

 金属射出成形事業  (千円)

217,808

 不動産賃貸事業   (千円)

39,957

  報告セグメント計 (千円)

4,055,683

(注)セグメント間の取引はありません。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討につきましては、「(1)経営成績等の状況の概況 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討につきましては、「(1)経営成績等の状況の概況 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

チェーン事業につきましては、市場の多様なニーズにより多く・迅速に対応するため、老朽化した設備を更新してまいります。

金属射出成形事業につきましては、既存分野からの安定的な受注量を確保し、新たな分野の開拓に向けて積極的に営業活動を行ってまいります。

不動産賃貸事業につきましては、安定した賃貸収益を維持してまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討については、「(1)経営成績等の状況の概況 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、設備投資に必要な資金ならびにその他の所要資金には手元資金を充当することを基本的な方針とし、必要な都度、金融機関からの借入による資金調達を行うこととしております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に繰延税金資産の回収可能性等であり、見積り評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる基準等に基づき行っております。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

 

5【重要な契約等】

(1)業務提携契約

当社が業務提携を締結している契約は次のとおりであります。

相手方の名称

国名

契約品目

契約締結日

契約内容

契約期間

大同工業株式会社

日本

産業機械用チェーン及び関連製品

2021年11月30日

相互製品供給

相互生産委託

相互技術交流及び協力

2021年11月30日から

2026年11月29日まで

以後3年ごとの自動更新

 

(2)子会社株式譲渡契約

当社は、2024年5月9日開催の取締役会において、寺田精工株式会社の全株式を取得して完全子会社することを決議し、2024年7月2日付で株式譲渡契約を締結いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項」の(企業結合等関係)をご参照ください。

 

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループの主力製品でありますチェーン事業につきましては、軽量化や疲労強度の向上及び耐環境性能を高めるための研究を、また、金属射出成形事業におきましては、顧客の要望に合わせるための開発を継続しております。これらに関する研究開発費は9,269千円であります。