第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は「優秀な製品による社会への貢献」を経営理念とし、法の下に社業を忠実に行い、職務を通じて社会の進歩と発展に寄与することが責任遂行の基本と考え、高性能、高品質の製品を開発し、国内外の顧客に供給することによって豊かな社会作りに貢献するとともに会社の限りない繁栄を実現することを経営の基本方針としております。

当社では上記の経営方針に則り、長きに亘り事業を通じて蓄積してきた技術と経験を活かしたモノづくりを行っておりますが、近年では国内需要の伸び悩みや海外メーカーとの競争が一層激化しております。さらに輸入物価上昇、各国の通商政策の影響、ウクライナ問題や中東情勢などの地政学リスク、中国経済の景気低迷など、当社を取り巻く事業環境は厳しい状況が続いております。

どのような環境下においても経営方針を遵守し、社会づくりの基盤たる建設機械メーカーとして絶やすことなく付加価値の高い製品を製造・販売していくことが当社の責務であり、事業を通じてあらゆるステークホルダーから共感・支持を得られる企業を目指してまいります

 

(2) 当社グループの経営環境

当社グループは、当社を中心に国内外にある子会社及び関連会社とともに、「建設用クレーン」、「油圧ショベル等」及び「その他の建設機械」の製造・販売を主要事業とする企業構造となっております。当社グループは構成単位ごとの独立性や採算性をもとに、取締役会が経営資源の配分の決定及び業績の評価を定期的に行っております。

当社グループの主要な市場は「日本国内」、「中国」、「欧州」及び「その他海外諸地域」(東南アジア、北米)であります。また、中国や欧州及びその他海外諸地域では、当該地域の市場ニーズをより詳細に反映するため、子会社が製造・販売活動を行っており、当該地域の製造・販売拠点を基礎として報告セグメントを決定しております。

現在の当社グループを取り巻く市場環境は、国内では緩やかな景気回復が継続している一方、海外においては、主力市場である米国の大統領選挙前の買い控えや欧州での急速な需要低迷など厳しい販売環境が続きました。

なお、2024年6月20日並びに2024年7月12日に公表のとおり、不動産市況に起因したインフラ投資の鈍化による需要低下や地場メーカーの台頭により業績の低迷が続いていた中国連結子会社2社については、事業環境について回復の目途が立たないことから、解散及び清算を決定いたしました。

 

(3) 中長期的な経営戦略及び対処すべき課題

① 中長期的な会社の経営戦略

当社グループでは、厳しい事業環境下でも収益の安定化を図り、さらなる成長を遂げることを目的に、2023年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画(2022-2024)を策定し、各施策を推進してまいりました。

中期経営計画(2022-2024)の概要および結果については以下のとおりです。

 

 

●テーマ

『スリムで骨太体質への変革』次なる飛躍に向けた徹底的な変革の3年

 

●基本方針・取組状況の評価及び結果

基本方針

評価

取組状況及び結果

収益性改善・強化

■ 原価率低減および黒字化達成

・KATO Reborn Project(KRP:収益性改善プロジェクト)の実践によ

 り、既存機種のコストダウン推進益性強化

・新機種開発(主要部品供給制限で一部遅延)

・販売価格の適正化

・販売拠点の見直し(統合)

財務体質の改善

■ 運転資本を適正化し、資金効率を向上

・資本収益性の改善に向けた事業ポートフォリオの見直し

 (海外事業の見直しと遊休又は非稼働資産売却)

・市況低迷により、一時的にたな卸資産が増加

将来の基盤構築

■ 将来への基盤構築推進

・生産機種の選択と集中を実施

・環境配慮型製品の開発推進

・インドでの合弁会社設立準備

 

 

●数値計画と結果

当中計期間においては、サプライチェーンの混乱や一部製品の主要部品に供給制約が発生し、生産面に影響が出たほか、計画策定時の想定を超える中国経済の低迷が続いたこともあり、数値計画は結果として未達となりました。

一方、中国に代わり成長市場として期待できるインドでの現地企業との合弁会社設立や市場競争力強化を目的にした既存機種のコストダウン推進プロジェクトなど、「将来の基盤構築」と「収益性改善・強化」にて掲げた施策は概ね達成いたしました。

(単位:億円)

連結業績

2022年3月期

(参考)

2023年3月期

(前中計1年目)

2024年3月期
(前中計2年目)

2025年3月期
(前中計3年目)

実績

計画

実績

計画

実績

計画

実績

売上高

635

641

575

644

574

664

529

製造原価率

89.6%

85.4%

84.2%

83.7%

81.7%

83.2%

83.8%

営業利益

△72

13

12

25

16

31

9

棚卸資産

320

310

315

318

355

327

452

 

 

② 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

中期経営計画(2022-2024)の最終年度となる2025年3月期は、生産面での懸念事項が大幅に解消され、テーマに掲げた『スリムで骨太体質への変革』が進んできたことから、期初に中計の数値計画を上回る売上高の予想をたて、大幅増収に向け増産体制を整備してまいりました。

しかしながら、国内においては高価格帯の大型ラフテレーンクレーン新型車の市場投入遅延に加え、中古車市場の価格低下に伴う買い替え需要の減少、建設工事に関わる人材不足による建機需要の伸び悩みなど、厳しい販売環境が継続いたしました。海外においても主力市場である米国においては、大統領選挙前の買い控え、欧州においては急速な需要低迷があり、結果として期初計画から売上高を下方修正することとなりました。また、増産に対して想定よりも販売が伸長しなかったことから、期末での棚卸資産が増加しております。取組状況の評価及び結果の通り、インド事業の着手や環境配慮型製品の開発など「将来の基盤構築」は進んだものの「収益性改善・強化」・「財務体質の改善」については、開発したコストダウン機の市場投入遅延や棚卸資産の増加を含めた運転資本の改善など一部に課題を残しております。

これらの状況を踏まえ、当社グループでは2026年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画(2025~2027)を新たに策定いたしました。新中計では、黒字転換のため合理化を優先した前中計から、業績伸長に向け事業力強化・拡大路線に軸足を移し、前中計で積み残した上記課題への対応に加え、持続的な成長を意識した企業価値の向上や成長戦略などを主要施策として織り込んでおります。

 

中期経営計画(2025~2027)の概要については以下のとおりです。

 

●テーマ

「飛躍、そして次の時代へ」~Leap & To The Next Era~

 

●基本方針

基本方針

主な取組み

企業価値の向上

・資本コストを意識した経営の実践
・PBR改善に向けた各種施策の実施

成長戦略の推進と有効投資

・前中計で種をまいた施策効果の確実な刈り取り
・成長分野への戦略的投資

収益性の更なる向上

・前中計で取り組んできた施策の深化による収益性向上
・外的要因に左右されにくい強固な経営基盤構築

サステナビリティ経営の実践

・サステナビリティ経営の強化による企業価値向上
・マテリアリティの推進

 

 

●数値計画

(単位:億円)

連結業績

2025年3月期

(参考)

2026年3月期

(1年目)

2027年3月期
(2年目)

2028年3月期
(3年目)

売上高

529

570

660

790

営業利益

17

25

36

営業利益率

1.7%

2.9%

3.7%

4.5%

ROE(%)

△12.7%

3.7%

5.4%

8.0%

 

 

③ 2026年3月期の業績見通しについて

2026年3月期の連結業績予想につきましては、米国における関税政策など不透明な事業環境は継続し、国内外市場における急激な需要増加は見込めないものの、前期市場投入が遅れた大型ラフテレーンクレーン新型車の期初からの販売に加え、期中からインド事業による増収が期待できることから、売上高は前期比7.7%増となる570億円を見込んでおります。

なお、最終損益につきましては、一過性の損失を計上した2025年3月期から大幅に改善する見込みであり、前中計からの施策効果に加え、新中計の各施策を遅滞なく推進していくことで、今後の連結業績と資本収益性は確実に向上していくものと認識しております。

(単位:百万円)

 

2025年3月期

2026年3月期(予想)

金額

金額

増減率

売上高

52,932

57,000

7.7%

営業利益

903

1,700

88.1%

経常利益

1,401

1,200

△14.4%

親会社株主に帰属する当期純利益

△6,033

1,200

 

※想定為替レートUSD/JPY=145円、EUR/JPY=155円、CNY/JPY=20円

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①サステナビリティ基本方針

当社は「優秀な製品による社会への貢献」を経営理念のもと、長年建設用クレーン、油圧ショベル等、その他の建設機械を開発して今日に至っております。

今後もより一層、新しい技術を通じ、環境・社会における課題解決に継続的に取り組み、あらゆるステークホルダーから共感・信頼を得られる企業として、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

②マテリアリティ(重要課題)特定及びKPI設定

サステナビリティ経営を重要課題の一つと考え、企業として求められる環境・社会問題への取り組みを推進するため、当社の経営理念およびサステナビリティ基本方針に基づき、ESG観点から当社が取り組むべき5つのマテリアリティを特定しております。また、マテリアリティの各テーマに対する目標と取り組みの進捗を測るためのKPIを新たに設定いたしました。

今後は、KPI達成に向けて各施策を実行し、さらなる企業価値の向上を目指してまいります。

 

<5つのマテリアリティ(重要課題)>

マテリアリティ

取り組みテーマ


社会を豊かにするイノベーションの創出

新たな価値を生む技術開発

人にやさしい製品開発

顧客満足度の向上


持続可能な地球環境への貢献

CO2排出量の削減

効率的なエネルギー利用

廃棄物の削減

環境配慮型製品の開発


働きがいのある職場づくり

安全で衛生的な職場環境の整備

多様な人材の採用と人材育成の強化

女性活躍の推進

ワークライフバランスの推進

従業員エンゲージメントの強化


サプライチェーンの強化

持続可能な調達活動の強化

サプライチェーン全体での品質向上

公正な取引の実践


責任ある組織体制の確立

取締役会の実効性向上

コンプライアンスの強化

リスクの評価と対応

 

 

<マテリアリティ(重要課題)の各テーマに対するKPI>

取り組みテーマ

KPI(2025年度-2028年度)

● 新たな価値を生む技術開発

・サステナビリティ製品技術ミーティング開催回数(年間4回以上)

・新たな価値を生んだ機種数(年間1機種以上)

・設計図面のマテリアリティ評価(新図発行時100%)

● 人にやさしい製品開発

・サステナビリティ製品技術ミーティング開催回数(年間4回以上)

・設計図面のマテリアリティ評価(新図発行時100%)

<基準値があるKPI>

 ・人(オペレータ)にやさしい基準を満たす機種数(年間1機種以上)

<基準値は満たさないが従来機種よりも改善されるKPI>

 ・人(オペレータ)にやさしくなった機種数(年間1機種以上)

● 顧客満足度の向上

・製品/サービス顧客満足度測定方法の改良検討会実施(年間4回)

・製品/サービス顧客満足度測定開始

● CO2排出量の削減

2018年度を基準年度として、2027年度までにCO2排出量を38%削減

(対象範囲:国内Scope1+2)

● 効率的なエネルギー利用

・エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下「省エネ法」という。)の2027年度エネルギー消費原単位で、対前年度比2%以上削減

(対象範囲:本社及び国内工場等の生産活動に関するエネルギー)

● 廃棄物の削減

・2017年度を基準年度として、2027年度までに廃棄物量を50%削減

 (売上高原単位=廃棄物量kg/売上高百万)

 (対象範囲:本社及び国内工場)

● 環境配慮型製品の開発

・サステナビリティ製品技術ミーティング開催回数(年間4回以上)

・設計図面のマテリアリティ評価(新図発行時100%)

<基準値があるKPI>

 ・環境配慮型製品の機種数(年間1機種以上)

<基準値は満たさないが従来機種よりも改善されるKPI>

 ・従来よりも環境配慮型製品に向上した機種数(年間1機種以上)

● 安全で衛生的な職場環境の整備

・重大休業災害0件とし、軽微な災害を含め前年度20%削減

・安全衛生教育の定期開催(年間2回以上)

● 多様な人材の採用と人材育成の強化

・女性管理職比率改善(現在数値から2.0%へ)

● 女性活躍の推進

・女性が働きやすい職場を目的にした管理職向け研修会の定期開催

(受講率100%)

● ワークライフバランスの推進

・年間平均年次有給休暇取得日数15日以上

・月平均残業時間:20時間以内の維持

・男性育児休業取得率30%以上

● 従業員エンゲージメントの強化

・新卒3年間定着率90%以上の維持

・従業員離職率5.0%以内

・全労働者における男女の賃金格差の是正縮小(男女比70%以上)

● 持続可能な調達活動の強化

・サプライヤーへの生産説明会の開催(年間2回)

・サプライヤーの事業継続性調査の実施 調査回収率90%

(年間1回) 

● サプライチェーン全体での品質向上

・サプライヤー表彰の実施(年間1回)

・サプライヤー向け品質向上のための勉強会実施 

 年間6社実施(外注3社 資材3社)  

● 公正な取引の実践

・サプライヤーへの生産説明会の開催(年間2回)

・資材調達の基本方針の更新回数(年間1回)

● 取締役会の実効性向上

・取締役会向け研修実施回数(年間2回以上)

・取締役会実効性評価アンケート実施と評価の共有およびアンケートの見直し(年間1回)

・取締役会でのサステナビリティ関連の議論回数(年間2回以上)

● コンプライアンスの強化

・全従業員対象のコンプライアンス研修の開催 (年間1回以上)

・重大なコンプライアンス違反および重大セキュリティインシデント発生0件を維持

● リスクの評価と対応

・リスク管理体制の強化検討会の実施(年間4回)

 

マテリアリティ(重要課題)特定およびKPIの詳細につきましては当社サステナビリティサイトに掲載しております。[※]

[※]https://www.kato-works.co.jp/sustainability/policy/

 

③気候変動対応について

当社は「優秀な製品による社会への貢献」を経営理念として創業以来、様々な製品の技術革新に長年取り組んでまいりました。昨今、世界規模で気候変動対策が叫ばれるなか、当社は本件の対応を重要な経営課題の1つと捉え、2020年に「エネルギー管理委員会」を設置し、生産拠点の使用エネルギーの把握と省エネルギー化に向けた取り組みを推進しております。また、2023年には取締役会の下に「サステナビリティ委員会」を新設し、会社全体で事業活動における脱炭素化、技術革新による持続可能な社会への貢献を目指した活動を進めております。

なお、当社は、2023年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)へ賛同を表明いたしました。以下、TCFDの提言に基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4項目の概要について説明いたします。

 

<ガバナンス>

当社は、サステナビリティ活動のさらなる推進を目的として、2023年に取締役会の下に代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会を新設いたしました。同委員会は、年2回開催され、その下部組織である「環境分科会」「人事分科会」で気候変動を含むサステナビリティへの対応について、検討・協議・戦略立案・実行計画の策定・目標の設定したものを同委員会にて審議および進捗モニタリングを行い、取締役会に報告し、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行っております。

 

■ガバナンス体制図


 

■会議体の説明

会議体

役割

取締役会

サステナビリティ委員会より定期的に報告を受けるとともに管理・監督を行う。

サステナビリティ委員会

「環境分科会」「人事分科会」での検討・協議・戦略立案・実行計画の策定・目標作成したものを審議し、活動の進捗状況を取締役会へ報告をする。

環境分科会

ESG、TCFD、SDGs等の気候変動全般の指標及び目標の立案や課題解決に取り組み、その進捗をモニタリングし、サステナビリティ委員会へ報告をする。

人事分科会

ESG、SDGs等の人材戦略やダイバーシティといった人事関連の課題への対応や取り組み目標の立案ならびに目標に対する進捗モニタリングを行い、サステナビリティ委員会へ報告をする。

 

 

<戦略>

当社の中長期的な成長には、気候変動への対応が不可欠であるとの認識から、今後も継続的なCO2排出量の削減に向け取り組んでまいります。また、当社ではTCFD提言に基づいたシナリオ分析により、2030年における各セクターの事業環境に対する変化とそれに伴う財務面での影響を予測いたしました。なお、シナリオ分析にあたっては、環境問題に関する積極的な政府政策が講じられる場合の1.5/2℃シナリオに加え、政府政策が消極的で、気候変動による物理的な影響が顕著になる4℃シナリオも含めた複数のシナリオを用いております。

 

■使用したシナリオの説明

分類

1.5/2℃シナリオ

4℃シナリオ

概要

21世紀末の平均気温が、産業革命以前と比較して1.5/2℃の上昇に抑制されるシナリオ。各国政府が現在公表している気候関連の公約が達成されるほか、より積極的な政策がとられることが想定されるため、社会的な変化(移行)による影響が大きい。

21世紀末の平均気温が、産業革命以前と比較して4℃上昇するシナリオ。気候変動が進行し、平均気温の上昇や異常気象の頻発化など、物理的な影響が大きい。

考察の対象

移行による影響

・Net-Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)

・Announced Pledges Scenario(APS)

・Stated Policy Scenario(STEPS)

物理的な

影響

・Representative Concentration Pathways(RCP2.6)

・Representative Concentration Pathways(RCP8.5)

 

当社はシナリオ分析の結果として、1.5/2℃シナリオおよび4℃シナリオにおいて、それぞれ当社事業に重大な影響を及ぼすと考えられるリスクと機会を特定いたしました。まず、1.5/2℃シナリオにおいては、炭素税の導入による操業費の増加、鉄鋼・アルミをはじめとする原材料価格の高騰などが代表的なリスクであると考えており、当社は事業活動全体でその対策を進めております。具体的な事例としては、照明機器のLED化、エアコンの温度設定管理、コンプレッサーの出力調整、夜間及び休日の待機電力削減、ボイラーの稼働時間調節など省エネ設備の導入や管理面の強化により、エネルギー使用量とCO2排出量の削減に取り組んでおります。併せて、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減、製品価格の安定化を目的に各サプライヤーとのコミュニケーションを強化し、CSR調達を推進しております。

一方、当社事業に関わる機会については、環境配慮型製品の需要が拡大することが想定されるため、環境配慮型製品の開発・販売を進めてまいります。2025年2月にかねてより開発していたハイブリッドラフターSR-250HV(ハイブリッド式ラフテレーンクレーン)の販売を開始いたしました。当機械は、エンジン&電動モータによるハイブリッド方式で走行し、減速時には回生エネルギーをバッテリーに充電、発進時の動力補助に利用することで、定地定速走行時に同クラスのエンジン機に比べ、最大約 40%のCO2削減効果があります。さらに外部電源を利用する油圧ユニット「EK-UNIT」から油圧供給を受けることで、クレーン作業時の実質的なCO2排出量をゼロ(外部電源油圧ユニット「EK-UNIT」を使用し、太陽光・風力・水力由来の電力を使用しての稼働の場合)にすることが可能となります。引き続き環境配慮型製品の開発と普及を推進し、CO2排出量削減に貢献するとともに、今後も総合建設機械メーカーとして市場ニーズに沿った製品の開発を進めてまいります。

4℃シナリオにおいては、異常災害の激甚化による事業活動の停止や労働環境の悪化といった生産面への低下を起因した収益性悪化をリスクとして考えております。これらのリスクに対し、当社は調達網の強化や高効率化を目指した設備投資などを対応策として講じる予定です。一方、機会については、各業界での労働環境の悪化によって、省人化、自動化への需要が高まることを想定しております。当社では、ラフテレーンクレーンやオールテレーンクレーンでの遠隔操作技術の中長期的な開発・研究を行っており、建設業界における人材不足に対する自動運転による省人化・効率化および生産性の向上に貢献できるよう引き続き、クレーンを含むKATO取扱い製品における遠隔操作技術の要素研究を推進してまいります。

 

■リスクと機会一覧

(時間軸)短期:0~3年 中期:4~10年(2030年) 長期:11~20年(2050年)

リスク項目

事業インパクト

大分類

中分類

小分類

時間軸

指標

考察:リスク

考察:機会

移行

政策規制

炭素価格

(炭素税)

中期~長期

支出

・電力使用量やCO2排出量に課税されるため、生産コストが増加する。

・炭素税導入による全般的に仕入れコストの増加、CNスチールへの転換のため、鋼材費が増加する。

省エネ設備の導入により、操業時の購入するエネルギー使用量の低減に寄与し、支出となる炭素税の支払いを抑えられる。

GHG排出規制への対応

短期~長期

支出/売上

・GHG排出量を削減するための設備投資が増加する。

・GHG排出規制に対応する研究開発費が増加する。

・環境配慮性の高い製品の需要が増加し、売上が増加する。

・建設現場のGHG排出量削減のため、総合建設業よりCN製品が工事に指名され、環境配慮性の高い製品の売上が増加する。

市場

エネルギー

コストの変化

短期~長期

支出

・電力やガスといった燃料価格が高騰する。

原材料コストの変化

中期~長期

支出

・鉄鋼、アルミなどの原材料価格が変動した場合に、調達コストが増加する。

・電炉により製造された鋼材等のCN材料、部品を採用することにより調達コストが増加する。

物理

急性

異常気象の激甚化(台風、豪雨、土砂、高潮等)

短期

支出/売上

・事業所が洪水や高潮などの自然災害で被災し、対応コストが発生する。

・サプライチェーンの寸断や遅延によって操業に支障が生じるため、販売機会が喪失する。

・災害発生時、インフラ復旧工事に資する製品の提供により、地域社会に貢献する。

・防災工事の増加により建設機械の需要が高まり、売上が増加する。

慢性

平均気温

の上昇

中期~長期

支出

・平均気温の上昇による労働環境悪化に対応するため、冷房コストが増加する。

・平均気温上昇により製品の冷却能力が必要となり、開発費や購入コストが増加する。

 

(注) CN:カーボンニュートラル

 

<リスク管理>

当社では、気候変動に関連するリスクは事業活動に重大な影響を及ぼすと捉えており、常に全社でリスクの管理・監督ができる管理体制を整備しております。当社は取締役会に加え、すべての執行役員が出席する経営執行会議においても、事業で発生する恐れがあるリスクについての情報共有を行っております。

また、各事業部門では、自部門が関与するリスクの特定・評価及び各リスクの詳細な発生確度や影響度合について、適宜必要に応じ経営会議体に付議し、議論を行っております。

なお、当社の気候変動に対するリスクと機会の一覧については、上記<戦略>をご参照ください。

 

<指標及び目標>

気候変動の国際的な枠組みが強化されるなか、事業活動で排出されるCO2を削減することは、現在当社を含めた多くの企業が直面する重大な課題と認識しております。当社は、2018年度を基準年として、2030年度までに事業活動におけるCO2排出量38%削減(国内事業所におけるScope1+2)の目標を設定いたしました。これらの目標を達成するため、当社は事業活動におけるエネルギー利用のモニタリングを行っております。

なお、2023年度のScope3排出量につきましては、国内の事業所における算定を終了いたしました。

 

■Scope1+2排出量(2018~)

 

2018年度

(基準年)

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

Scope1+2

(t-CO2

7,615

7,326

6,606

6,803

5,804

5,754

2018年度比

削減率

-

△3.8%

△13.3%

△10.7%

△23.8%

△24.4%

 

 


 

(注) 上記数値は、当社国内拠点の合計値であります。

 

■Scope3排出量

カテゴリー

2023年度

排出量

(t-CO2

割合

(%)

算出方法

Scope3

1.購入した製品・サービス

231,448

44.62

購入した製品・サービス金額データ×排出原単位

2.資本財

2,496

0.57

固定資産取得金額×排出原単位

3.Scope1、2に含まれない

 燃料及びエネルギー関連活動

1,168

0.23

Scope1、2でのエネルギー使用量×排出原単位

4.輸送、配送(上流)

1,077

0.21

調達金額×排出原単位

5.事業から出る廃棄物

397

0.08

廃棄物重量×排出原単位

6.出張

236

0.05

交通費支給額×排出原単位

7.雇用者の通勤

539

0.10

従業員数×営業日数×排出原単位

8.リース資産(上流)

-

-

対象外(Scope1、2に含めて算出)

9.輸送、配送(下流)

-

-

対象外(下流運送の把握が困難なため)

10.販売した製品の加工

-

-

 

11.販売した製品の使用

280,223

54.02

各製品モデルの販売台数×燃費×製品寿命×排出原単位

12.販売した製品の廃棄

704

0.14

廃棄物重量×販売台数×排出原単位

13.リース資産(下流)

-

-

 

14.フランチャイズ

-

-

 

15.投資

-

-

 

合計

Scope3

518,738

100.00

 

 

(注) 1 カテゴリーの小数点以下の数値の関係で合計が合わない場合があります。

   2 「-」は、非該当項目につき対象外

   3 算出対象は、国内のみとなります。

 

④人的資本多様性

<戦略>

当社における人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針は以下のとおりであります。

 

人材育成方針

当社は、人材が経営における最重要資源の一つであるという考えのもと、人材の育成とその活用について継続的に取り組んでまいります。当社では「創業以来のパイオニア精神を抱き新たなものを生み出し挑戦し続ける人材」、「社会の要求を的確に捉え機敏に対応し続ける人材」の育成を目指し、社員の個々の意見を尊重するとともに、その能力を伸ばしていく環境整備に努めてまいります。

 

 

人材の登用状況

当社は、持続的な成長を遂げるためには多様な価値観や経験値を持つ人材が重要と考え、性別、国籍、人種、民族、宗教、社会的身分、障害の有無、性的指向にとらわれることのない採用活動を行っております。区分別では中途採用者につきましては、従来よりスキル・経験等を総合的に勘案した積極的な登用を行っており、2025年3月現在の当社管理職のうち約28%が中途採用者となっております。

一方で、女性の管理職登用につきましては、建設機械業界という業種に加え、過去には現状に比べ、女性の担当する業務が限定されていたこともあり管理職・次期管理職候補者の女性比率が相対的に低い状況にあります。現在は、設計部門をはじめ、これまで配属機会が少なかった技術・技能枠での新卒採用、さらに就業環境の改善や出産・子育て支援制度の拡充など就業者数の拡大と離職率低減に繋がる施策を推進し、将来的に中核ポストを担う女性社員の増加に努めております。

2025年4月の新卒採用においては、5名の女性(全体の約17%)を採用いたしました。外国人につきましては、国内外の拠点で就業できる当社グループの強みを活かした採用活動を行っており、2024年度は年間で4名の外国人エンジニアを採用いたしました。また、新入社員については、長きにわたり当社で力を発揮してもらえるよう、性別、国籍等を問わず最長1年間の研修を実施しております。

なお、当社は人財確保はサスティナビリティ経営上、重要な経営課題と認識しており、女性活躍推進に対して豊富な経験・実績を有する社外取締役の協力を仰ぎつつ、目標数値が達成できるよう引き続き改善策を推進してまいります。

 

<指標及び目標>

業種や業務の特性上、当社において採用の中心が男性に偏重していた時期が長く続いたことが、結果として現在の低い女性管理職比率に繋がっております。上記に起因して男女の賃金においての差異も生じており、今後改善に向け、新卒中途を問わず女性の採用強化にこれまで以上に努めるとともに、女性が働きやすい職場環境の改善に注力してまいります。
 男性労働者の育児休業取得率につきましては、制度への社会的な理解増進に伴い一定数の取得者は発生しているものの、さらなる取得率向上を目指し、引き続き制度の案内等社内外への周知を徹底してまいります。その他、当社独自の仕事と子育てを両立させるための取り組みとして、有給休暇とは別にチャイルドケア休暇制度を設けており、小学校卒業までの子を養育する社員を対象にこどもの入学式、卒業式、運動会などの学校行事への参加やこどもの育児・看護のために使用できる休暇をこども1人につき最大25日付与しています。今後も男女を問わず仕事と子育てを両立出来る環境の維持向上を目指し、各種取り組みを推進してまいります。
 また、当社グループでは上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

なお、当社の人材育成に関する方針および取り組み状況につきましては当社サステナビリティサイトに掲載しております。[※]

[※] https://www.kato-works.co.jp/sustainability/

 

指標

目標

実績(2025年3月31日時点)

管理職に占める女性労働者の割合

2030年度まで3%

1.6

%

男性労働者の育児休業取得率

2030年度まで35%

30

%

全労働者の男女の賃金の差異

2030年度まで75%

68.6

%

 

(注) 上記数値は、当社単体の合計値であります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは下記に記すとおりです。

なお、文中に記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済、市場環境等の変動について

当社グループが扱う建設機械等の需要は、インフラ整備等の公共投資や資源開発、不動産の建設等に使用されることが多いことから、景気循環の影響を受け易い状況にあります。国内市場はもとより、各国のインフラへの公共投資、民間設備投資やエネルギー価格、地域紛争の影響による経済安全保障、通貨変動等の要因が、当社グループ製品の需要に影響を与える可能性があります。加えて、世界的規模で経済・市場環境が急激に悪化した場合も、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、経営企画部門が中心となって業績及び「中期経営計画2025-2027」における各施策の進捗状況を管理し、会社全体のPDCAサイクルの迅速化を図り、対応することによって、これらリスクの低減に努めております。

 

(2) 資金調達等について

当社グループでは、資金調達の機動性ならびに安定性向上のため、銀行借入に加え、コミットメントライン契約の締結を行っております。シンジケートローン契約やコミットメントライン契約及びその他一部の借入金には財務制限条項が付されており、特定の条項に抵触し、返済請求を受けた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

これに対し、当社グループでは、定期的な説明会を開催するなど金融機関との良好な関係を維持しつつ、資金調達手段の多様化に努めるとともに、運転資本の適正化や資本効率の向上など、財務体質の改善に取り組んでおります。

なお、当連結会計年度末において借入金に係る一部の契約について財務制限条項に抵触しておりますが、資金繰りに懸念はなく、取引金融機関より、期限の利益喪失の請求権を行使しない旨の同意を得ております。

 

(3) 為替レートの変動について

当社グループは、海外向け販売や海外からの資材調達を実施しているため、輸出入において為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、この変動リスクを回避するため、円建てによる輸出取引に加え、外貨建債権の為替予約取引を行うなど為替変動によるリスクを最小限に抑えるよう留意しております。

 

(4) 地政学リスクについて

当社グループは、海外販路の拡大を図るため世界各地において生産・販売の事業活動を展開しております。中東情勢の混迷や、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、北米の関税リスクなどの世界的な地政学リスクの高まりなどによるエネルギー価格及び原材料価格の高騰などが今後長期にわたり継続した場合、または、その他の国や地域等で新たな紛争等が発生した場合、当社グループの販売及び部品調達計画に影響を及ぼす可能性があります。

これに対し、当社グループは、海外子会社を通じ、政治・経済情勢や各種規制等の動向を定期的に収集し、地域毎の事業環境の変動や業績への影響を把握することで、事業に及ぼす影響を分析し、対応を行っております。

 

(5) 環境規制・気候変動等について

当社グループが取り扱う建設機械等は、製品及びその製造過程等においてCO2削減や排ガス、騒音、エネルギー規制等様々な環境規制の適用を受け、対応を求められております。今後、環境規制・気候変動への対応等が更に厳格化し、さらなる費用が必要となった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、各国の環境規制・気候変動への対応及び関連法規等を遵守するため、研究開発等に資金を投入し、必要な措置を講じているほか、「中期経営計画2025-2027」の基本方針において「サステナビリティ経営の実践」を掲げ、マテリアリティへの取り組みを深化させております。

 

(6) 自然災害・事故等について

日本を含め当社グループが事業展開を行っている国や地域において、自然災害等の発生や労働環境の違いによる労働争議等の発生、紛争・テロ、感染症の流行が発生し、大幅な需要の減少や、操業の中断などがあった場合、当社グループの事業計画や業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、地震、火災、風水害等、自然災害の発生に対し、リスク管理体制のもと、一定の防災対策を講じております。また、海外子会社については適切な管理者の派遣を行うとともに、カントリーリスク分析及びモニタリングを実施するなど、各社の独立性を保ちながらリスクの低減に努めております。

 

(7) 法的規制等について

当社グループは、国内外に事業を展開していることから、各国の法規制の適用を受けております。機械安全に係る保安事項はもとより、近年は環境保全のための排出ガス規制が年々強化される傾向にあります。そのため、法令の改正または新たな規制の制定等に対応するための費用が発生した場合、または、各国の政策による輸入制限、輸入禁止措置等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、事業展開に係る各国の法規制に関する情報収集を継続的に行い、早期に情報を把握し対策を実行することによりリスク軽減を図っております。

 

(8) 設備投資について

当社グループで扱う建設機械等を製造するには、一定程度の広さの敷地や多くの設備等を必要とし、工場敷地、生産設備等に高額の設備投資を要する場合があります。事業環境の悪化等により収益性が事業計画の想定を下回り、新たに減損損失を計上する必要がある場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、経営企画部門が中心となって業績及び「中期経営計画2025-2027」における各施策の進捗状況を管理しており、投資マネジメントを強化し、適正な設備投資判断と投資効率化のモニタリングを継続することで、これらリスクの低減に努めております。

 

(9) 提携・協力関係について

当社グループは、様々なビジネスパートナーとの提携を通じてグローバル戦略の構築を目指しておりますが、期待する効果を得られなかった場合や提携が解消された場合、また、未確認債務の判明や偶発債務が発生した場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、新規提携時および解消時には、外部専門家のアドバイスや適切なデューデリジェンスを実施することで、リスクの低減に努めております。

 

(10)原材料の調達及び生産について

当社グループの製品は、調達部品の比率が高く、原材料価格の高騰などによる原価高の発生や、部品や資材の仕入状況の悪化等が生産への影響、ひいては業績の悪化へとつながる可能性があります。

当社グループでは、社内における原価低減活動に加え、仕入先企業とのコミュニケーション強化を図り、最適価格の維持を図りつつ安定供給体制の維持に努めております。また、長期のリードタイムを要する調達部品、調達リスクの高い部品については特に在庫管理と生産計画管理の徹底を図っております。

 

(11)価格競争及び研究開発について

当社グループの製品・サービスが競合企業と比較して性能・品質・コスト面で十分な競争優位性を得られなかった場合は、売上の減少等により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの製品に、開発の遅れや市場ニーズとの不一致等が生じ、製品の競争力が低下した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、経営企画部門が中心となって業績及び「中期経営計画2025-2027」における各施策の進捗状況を管理しており、開発施策については、マーケティングを強化し、市場ニーズを取り込んだ高付加価値製品の提供とコスト削減に取り組むことで、更なる競争力のある製品の開発を進めております。

 

(12)債権管理について

当社グループが扱う建設機械等は、比較的高額な売買となり、債権の返済期間が長期になることがあります。その間取引先の財政状況が悪化するなどして予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、追加の引当計上が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、取引先の業態や資金状況に応じた与信管理を行うとともに、必要に応じて担保の提供を受けるなど、不良債権の発生防止に努めております。また、定期的に開催する債権審査会議では、一定の条件に該当する取引先について与信限度額の見直しを実施するほか、継続的なモニタリングを行っております。

 

(13)棚卸資産について

当社グループで扱う建設機械等は、一部の製品を除き需要予測にて見込生産をしております。予期せぬ需要の減少や製品販売価格の下落、在庫期間の長期化等により、棚卸資産の価値が低下し、評価損の計上を余儀なくされた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、需要予測精度を高めるための販売会議及び製造部門と販売部門の会議を開催し、棚卸資産の在庫管理について、短期・長期の需要予測を行い、その適正化に努めております。

 

 

(14)製品の不具合等について

当社グループでは、製品の欠陥による大規模リコールや市場対策措置の実施に伴う多額の措置費用、また大型の機械であるが故に製品事故が発生した場合、多額の賠償責任費用を負うリスクがあります。これらは当社グループの信用にも重大な影響を及ぼす可能性があり、また、その損害賠償額等が保険の保障額を超えた場合、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、品質マネージメントシステムを構築し品質を保証する仕組み・体制を整備しております。社内で定めた厳しい基準のもと、安全と品質の維持向上に努めております。また、市場品質情報を収集し、品質の改善に努めております。万が一の事故等に備え、製造物責任保険等で十分な保障額の付保を図ることで、費用や賠償責任の負担による財務状況への影響を最小限に抑えられるよう備えております。

 

(15)情報セキュリティ・知的財産について

当社グループは、事業活動において業務上必要な顧客情報や個人情報に接することがあり、営業上・技術上の機密情報を保有しております。万が一、サイバー攻撃による不正アクセス、情報漏洩、滅失等の事故が発生し、損害賠償責任を負ったり、当社グループの評判や信用の低下を招くこととなったりした場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの知的財産権が侵害され、製品・技術等の市場価値が低下した場合、または、当社グループが提供する製品・技術等が第三者の知的財産権に抵触し、訴訟が提起された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、情報の機密保持及び管理システムの安定稼働には細心の注意を払い、適時のセキュリティパッチの適用や不正侵入の防御と早期検知、インシデント発生時の復旧手順を定めるなど、外部からの不正アクセスや情報漏洩等を防ぐための適切な管理体制を強化しております。

また、知的財産部門を設置し、知的財産権の適切な管理に努めるほか、製品の開発や製造、販売、その他の事業等において第三者の保有する知的財産権を侵害することのないよう、事前の調査や継続的な監視等の措置を講じております。

 

(16)コンプライアンスリスクについて

当社グループは、役員及び従業員等が、事業活動にあたって各種法令や倫理基準並びに社内行動規範等から逸脱した行為を行うことがないよう、グループ全体へのコンプライアンスの徹底を図っております。しかし、万が一、役員及び従業員等による重大な不正、不祥事等が発生し、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、監督官庁等からの処分、訴訟の提起や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、法令や倫理を遵守した企業活動を行うよう「コンプライアンス規程」を定め、定期的なコンプライアンス教育・研修等を通じてコンプライアンス上の問題発生を未然に防止するよう努めるほか、内部通報制度やコンプライアンスを推進するための内部統制委員会を設置し、コンプライアンス体制の強化を図っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます)の状況の概要は次のとおりであります。

 

  ① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、輸入物価上昇の影響はあるものの、雇用所得環境の改善を背景に景気は緩やかに回復しました。

一方、世界経済は、各国の通商政策等の影響により一部に弱含みの動きもみられ、ウクライナ問題および中東情勢等の地政学リスクに加え、中国経済における不動産市況の低迷が長期化する等、依然として不透明な状況が続いております。

このような状況下、当社グループでは2023年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画の最終年度としてテーマに掲げた『スリムで骨太体質への変革』のもと、基本方針である「収益性改善・強化」「財務体質の改善」「将来の基盤構築」の各施策を継続的に取り組んでまいりました。特に本中計期間内においては、近年厳しい事業環境により業績の低迷が続いていた中国事業の抜本的な見直しと併せ、成長市場であるインド国内での現地企業との合弁会社設立に向けた準備を進めるなど「将来の基盤構築」を目的とした海外事業ポートフォリオの大幅な見直しを積極的に推進してまいりました。

結果として、当連結会計年度の経営成績は、売上高は529億3千2百万円(前年同期比92.1%)営業利益は9億3百万円前年同期比54.6%)、経常利益は14億1百万円(前年同期比54.4%)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は60億3千3百万円前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益42億3千5百万円)となりました。

 

 セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
 (日本)

国内向け建設用クレーンの売上高は、大型ラフテレーンクレーン新型車の市場投入時期の遅れがあったものの、295億6千4百万円(前年同期比99.6%)と前期比同水準となりました。海外向けの売上高は、39億8百万円(前年同期比87.4%)となり、アジア向けの大口販売があった前期から減収となりました。

国内向け油圧ショベル等の売上高は、競争激化による影響を受けたものの76億2千万円(前年同期比97.7%)と前期比同水準となりました。海外向け油圧ショベル等は、米国向け販売が大統領選挙に伴う需要引締まりによる影響を受け、売上高は44億9千5百万円(前年同期比54.3%)と前期比減収となりました。

以上を含めた日本の売上高は466億5千3百万円(前年同期比91.1%)、セグメント利益は6億2千1百万円(前年同期比30.7%)となりました。

 

 (中国)

中国は、不動産市況の低迷長期化により厳しい販売環境が継続しているなか、期中に解散を決議した現地子会社の在庫製品の販売注力により、売上高は27億3千7百万円(前年同期比119.1%)となり、セグメント損失は6千3百万円(前年同期はセグメント損失12億1千万円)となりました。

 

(欧州)

欧州は、需要減少により売上高は47億8千7百万円前年同期比84.8%)と減収し、原材料高騰の影響を受けセグメント損失は1千1百万円前年同期はセグメント利益7千1百万円)となりました。

 

 (その他)

その他地域は、欧州セグメントを分離したことにより売上高は発生せず、セグメント損失は5百万円(前年同期はセグメント損失7千6百万円)となりました。

 

財政状態については、次のとおりであります。

  (資産の状況)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末の1,053億3千万円に比べ25億8千2百万円減少し、1,027億4千7百万円となりました。これは主として、棚卸資産の増加97億5千万円、無形固定資産の増加6億1千2百万円現金及び預金の減少78億2百万円売掛金の減少80億9百万円繰延税金資産の減少4億4千3百万円によるものであります。

 

  (負債の状況)

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末の537億7千9百万円に比べ43億6千4百万円増加し、581億4千4百万円となりました。これは主として、短期借入金の増加76億1千6百万円長期借入金の増加30億5千1百万円電子記録債務の減少20億1千4百万円1年内長期借入金の減少10億5千3百万円によるものであります。

 

  (純資産の状況)

当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末の515億5千1百万円に比べ69億4千7百万円減少し、446億3百万円となりました。これは主として、中国子会社2社の解散・清算に伴う特別損失計上による利益剰余金の減少69億7千3百万円によるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は147億6千3百万円となり、前連結会計年度末と比べ76億2百万円の減少となりました。各キャッシュ・フローの状況につきましては、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金は、133億1千9百万円の減少となりました。その主な要因は、売上債権の減少83億1千7百万円子会社整理損71億3百万円の増加要因と棚卸資産の増加134億8千6百万円税金等調整前当期純損失55億9千8百万円破産更生債権等の増加44億9千6百万円仕入債務の減少32億9千1百万円貸倒引当金の減少11億4千6百万円の減少要因によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金は、9億3千万円の減少となりました。その主な要因は、有形固定資産の取得による支出8億1千2百万円の減少要因によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金は、66億3千8百万円の増加となりました。その主な要因は、長期借入による収入90億5千7百万円短期借入金の純増加額78億9百万円の増加要因と社債の償還による支出15億2千4百万円割賦債務の返済による支出3億4千万円配当金の支払額による支出9億3千5百万円長期借入金の返済による支出74億2千4百万円の減少要因によるものであります。

 

 

   キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2021年
3月期

2022年
3月期

2023年
3月期

2024年
3月期

2025年
3月期

自己資本比率(%)

43.6

42.0

46.2

47.9

43.4

時価ベースの自己資本比率(%)

11.7

8.9

12.3

17.1

14.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

17.2

4.2

5.3

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

10.2

32.9

20.4

 

(注)自己資本比率: 自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率: 株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率: 有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ: 営業キャッシュ・フロー/利払い

※いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を用いております。

※2024年3月期及び2025年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオにつきましては、営業キャッシュ・フロー数値がマイナスのため、表記を省略しております。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

56,904

 111.9

中国

850

 48.5

欧州

3,457

78.1

その他

合計

61,211

 107.3

 

(注)  1 金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

当社グループの主要製品の生産方式は、ほとんどが見込生産方式なので、受注実績の記載は省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

45,421

 91.6

中国

2,729

 119.0

欧州

4,781

85.1

その他

合計

52,932

92.1

 

(注)  1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。

なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。

また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況

1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等の分析

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下のとおりであります。

   (売上高)

当連結会計年度の売上高は529億3千2百万円(前年同期比92.1%)となりました。主要品目別の売上高の状況及び分析は以下のとおりです。

     建設用クレーン

 国内売上高は295億6千4百万円(前年同期比99.6%)と大型ラフテレーンクレーン新型車の市場投入時期の遅れがあったものの、前期比同水準となりました。海外売上高は、39億4千4百万円(前年同期比86.5%)とアジア向けの大口販売があった前期から減収となりました。よって、建設用クレーンの売上高は335億8百万円(前年同期比97.9%)となりました。

 

    油圧ショベル等

 国内売上高は、競争激化による影響を受けたものの、76億2千万円(前年同期比97.7%)と前期比同水準、海外売上高は米国向け販売が大統領選挙に伴う需要引締まりによる影響を受け、107億3千8百万円(前年同期比74.0%)と減収となりました。よって、油圧ショベル等の売上高は183億5千9百万円(前年同期比82.3%)となりました。

 

その他

その他の売上高は10億6千3百万円(前年同期比111.3%)と前期並みの水準で推移しました。

 

(売上総利益)

当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度に比べ19億2千1百万円減少し、85億9千9百万円前年同期比81.7%)となりました。販売戦略の徹底や製品コスト削減の取り組みの効果があったものの、期中を通じ建設用クレーンの主要部品供給制約による生産面への影響があり、結果として売上総利益率は2.1ポイント減少し、16.2%となりました。

 

(営業損益)

当連結会計年度の営業損益は、販売費及び一般管理費が前連結会計年度と比較し、7億5千万円減少したものの、売上高の減収影響により、営業利益は9億3百万円前年同期比54.6%)となりました。

 

(経常損益)

当連結会計年度の営業外収益は、不動産賃貸収益の増加、受取補償金の増加はあったものの、為替差益の減少により、2億7千7百万円減少し、15億1千7百万円前年同期比84.6%)となりました。営業外費用は、金利上昇に伴う支払利息増加により1億4千5百万円増加し、10億1千9百万円前年同期比116.7%)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の経常損益は、前連結会計年度に比べ11億7千3百万円減少し、経常利益は14億1百万円(前年同期比54.4%)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純損益)

当連結会計年度の特別利益は前連結会計年度に比べ12億5千3百万円減少し、1億6千3百万円となりました。これは、固定資産売却益を計上したことによるものです。特別損失は、中国子会社2社の解散・清算に伴う特別損失を計上したことにより、前連結会計年度に比べ62億7千8百万円増加し、71億6千4百万円となりました。

 法人税等調整額は3億6千2百万円計上したことにより、結果として親会社株主に帰属する当期純損失は60億3千3百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益42億3千5百万円)となりました。

 

b.キャッシュ・フローの状況及び、資本の財源及び資金の流動性についての分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

当社グループの資金需要は主に運転資金、設備投資資金、研究開発資金となります。

運転資金のうち主なものは、製品製造のための原材料や販売用部品の仕入費用や労務費及び製造経費をはじめ、販売費及び一般管理費などが該当します。また、部品・半製品を製造する上で相応のリードタイムを有すことから、安定的な生産を行うため部材の先行確保に加え、販売用部品の欠品を防ぐ必要性からも在庫負担が大きいという特徴があります。

設備投資資金は主として、生産活動に必要な工場設備であり、研究開発資金は新製品の開発に係る費用及び開発部門の人件費が該当します。

これらの資金需要のうち、短期資金需要については、手元資金や営業活動により得られたキャッシュ・フロー及びコミットメントライン等の融資枠による金融機関からの短期借入を基本としております。また、長期運転資金及び大規模な設備投資資金については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び金融機関からの長期借入や社債を基本としております。

 

当連結会計年度末における有利子負債の残高は441億2千9百万円、現金及び現金同等物の残高は147億6千3百万円となり、よってネット有利子負債は293億6千6百万円(前年同期比209.9%)となりました。有利子負債の約定返済進行と運転資金の増加に伴い、金融機関からの有利子負債残高も増加しました。

なお、現在のところ、新型工場建設等に係る大型設備投資についての案件はございませんが、コア事業及び将来成長に向けた新製品の開発には積極的かつ集中的に資金を振り向けてまいります。

 

 

c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社では2026年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画を新たに策定し、2025年3月27日に公表いたしました。同計画では「飛躍、そして次の時代へ」をメインテーマに「企業価値の向上」「成長戦略の推進と有効投資」「収益性の更なる向上」「サステナビリティ経営の実践」を基本方針に掲げ、外部要因に左右されにくい強固な経営基盤づくりと成長戦略に沿った有効投資を展開してまいります。

新中期経営計画の詳細につきましてはこちらをご覧ください。

https://www.kato-works.co.jp/ir/html/1_01plan.html

 

2025年3月期の連結業績につきましては、2025年5月14日公表の「通期連結業績予想と実績値との差異に関するお知らせ」のとおり、中国事業の見直しに伴う子会社整理損を計上した影響により親会社株主に帰属する当期純利益は一時的に悪化いたしました。

2026年3月期の連結業績予想につきましては、米国における関税政策など不透明な事業環境は継続し、国内外市場における急激な需要増加は見込めないものの、前期市場投入が遅れた高価格帯の大型ラフテレーンクレーン新型車の期初からの販売に加え、期中からインド事業による増収が期待できることから、売上高は前期比7.7%増となる570億円を見込んでおります。

なお、最終損益につきましては、一過性の損失を計上した前期から大幅に改善する見込みであり、前中期経営計画からの施策効果に加え、同年から開始する中期経営計画の各施策を遅滞なく推進していくことで今後の連結業績と資本収益性は確実に向上していくものと認識しております。

 

 

売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

一株当たり

当期純利益

(円)

2026年3月期

57,000

1,700

1,200

1,200

102.28

2025年3月期

(参考)

52,932

903

1,401

△6,033

△514.48

 

*想定為替レート 1米ドル=145円 1元=20円 1ユーロ=155円

 

 

d.経営成績等に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性がある事項については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

前述の地政学リスク拡大や中国市場における不動産開発需要の低迷に加え、足元では米国での関税政策をはじめとする各国通商政策問題も顕在化してきており、世界経済は先行きの不透明な状況が継続しております。

また、当社グループの製品においては、多くの部材や外注品、多種の油圧部品や電子・自動車部品を必要とすることから、世界的な部品調達難や物流価格の高騰により、以下の事態が発生した場合は当社の売上高及び利益に影響がでる場合があります。

・仕入先企業からの部品や資材の調達難による生産の見合わせ

・国内及び海外工場の生産調整、生産停止による稼働率の低下

・取引先からの受注の減少、キャンセルによる製品販売台数の減少、滞留在庫の増加

・製品の需給バランスが崩れることによる製品販売価格の下落

・取引先の財政状態悪化、信用不安による貸倒リスクの増加

 

これら認識のもと、当社グループでは常に市場や業界の動向に注視しつつ、特に調達・製造・販売体制と相互連携を強化していくことで経営成績に重要な影響がでないようリスクの低減と業績の安定化に努めております。

 

5 【重要な契約等】

(コミットメントライン契約)

2024年4月1日前に締結されたコミットメントライン契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。

 

(連結子会社持分の譲渡及び同連結子会社の債権放棄)

2024年7月12日開催の取締役会において、当社の連結子会社である加藤(中国)工程机械有限公司を解散及び清算することを決議いたしました。しかしながら同社の取得を検討している中国国内企業との間で条件面において双方の基本合意が図れたことから同社の解散・清算を取りやめ、当社が有する持分についての譲渡契約を締結する運びとなりました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)をご参照ください。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は主に開発本部において行われており、設計・ソフトウエア開発・試験検証などの部門が緊密に連携して研究開発に取り組んでおります。主な研究開発製品は、建設用クレーン、ショベル、産業車両、クローラキャリアなどであり、国内外の最新排出ガス規制に適合した製品開発の他、カーボンニュートラルに向けた各種電動化や代替燃料の利用、自動運転や遠隔操作などの先進的研究開発活動も積極的に推進しております。当連結会計年度における研究開発費は総額1,699百万円であります。

研究開発活動は主として日本セグメントで行っており、おもな取り組みは次のとおりであります。

 

(1) 建設用クレーン

国内向けのラフテレーンクレーンでは、最大吊上げ荷重60tの「SL-600RfⅢ」、50tの「SL-500RfⅢ」、および80tの「SL-850RfⅢ」をシリーズとして開発し、本年度より販売を開始いたしました。これらの機種は、国内最新の排出ガス規制に適合したエンジンを搭載し、各種の走行安全機能も備えています。

カーボンニュートラルへの取り組みとして開発を進めてきた、世界初のハイブリッド式ラフテレーンクレーン「SR-250HV」(ハイブリッドラフター)は、本年度より販売を開始いたしました。ハイブリッドラフターは、従来のディーゼルエンジンに加えて電動モーターを装備しており、充電切れの心配がないうえ、CO₂排出量の削減が可能なクレーン車です。また、クレーン作業時には、付属の油圧ユニット「EK-UNIT」を外部電源に接続して油圧を供給することで、実質的にCO₂排出量をゼロにすることが可能です。

国内向けのオールテレーンクレーンでは、欧州の排出ガス規制(Stage V)にも適合しているエンジンをキャリヤに搭載した、最大吊上げ荷重130tの「KA-1300R」を開発し、本年度より販売を開始いたしました。本機は、市場評価の高い従来機のコンセプトを継承しています。

海外向けのラフテレーンクレーンでは、最大吊上げ荷重70tの「SR-700LⅡ」を開発し、本年度に販売を開始いたしました。本機は、経済発展に伴い拡大を続けるアジア市場向けの仕様となっています。

装備品類では、クレーンオペレータの労働環境改善を目的として、エンジン停止時でも補機バッテリーで駆動可能な「パーキングクーラー」を新たに開発し、本年度より販売を開始いたしました。

その他、新技術の公共工事への積極的な活用を目的として、国土交通省が整備した新技術情報提供システム(New Technology Information System:NETIS)において、「2面領域制限機能付きクレーン」を本年度、新たに登録いたしました。

今後も建設用クレーンについては、重点開発製品群としてラインアップの拡充を図るとともに、操作性のさらなる向上やオペレータの負担軽減に向けた研究開発、また、カーボンニュートラル実現に向けた電動化・ハイブリッド化の技術開発を積極的に進めてまいります。

 

(2) ショベル・クローラキャリア

中・大型ショベルにおきましては、国内市場向けとして23tクラスの「HD823MR-8」を開発し、本年度より販売を開始いたしました。本機には、欧州の排出ガス規制(Stage V)にも適合している最新型エンジンを搭載しており、あわせて従来機で実績のある油圧機器を最適化することにより、信頼性を確保しつつ操作フィーリングの向上を実現しております。さらに、低燃費・低騒音化を図ることで、環境負荷の低減にも寄与しております。

ミニショベルにおきましては、バッテリー電動化製品の開発を進めており、来年度の販売開始を予定しております。

今後も、最新の排出ガス規制に適合した機種の市場投入を順次進めていくとともに、カーボンニュートラルの実現に向けた開発にも注力し、早期の市場投入を目指して積極的に取り組んでまいります。

クローラキャリアにおきましては、市場より高い評価を得ている積載量7tの全旋回式クローラキャリア「IC70R」のコンセプトを継承した大型機のシリーズ化開発を進めており、来年度の販売開始を予定しております。

今後もクローラキャリアのラインアップ拡充を図るとともに、カーボンニュートラルへの対応として電動化や遠隔操作・自動運転化の研究開発活動を、積極的に推進してまいります。

 

(3) その他製品

路面清掃車および除雪車におきましては、制限区域内における作業の安全性および生産性の向上、さらには深刻化する労働力不足といった課題の解決を目的として、自動運転(レベル2相当)による実証実験を実施いたしました。

今後は、本実証実験における成果を踏まえ、高機能車両の実用化に向けた研究開発活動を、引き続き積極的に推進してまいります。